平成25(ワ)2462 意匠権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年4月21日 大阪地方裁判所
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判決文本文12,430 文字)

平成26年4月21日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成25年(ワ)第2462号 意匠権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日 平成26年3月4日判決                    原告株式会社 ノ  ザ  ワ                            同訴訟代理人弁護士出縄正人              同小野 顕同髙橋祥子              同訴訟代理人弁理士飯島紳行              同藤森裕司                    被告三菱マテリアル建材株式会社                            同訴訟代理人弁護士近藤惠嗣              同重入正希              同前田将貴主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。事実及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1)被告は,別紙被告製品目録記載の製品を製造し,販売し,又は 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。事実及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1)被告は,別紙被告製品目録記載の製品を製造し,販売し,又は販売のために展示してはならない。(2)被告は,前項の製品及びその製造に供する金型を廃棄せよ。(3)被告は,原告に対し,199万2250円及びこれに対する平成25年3月22日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。(4)訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告主文と同旨第2 事案の概要 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)(1)当事者原告は,各種スレート及びセメント製建築材の製造,加工,販売等を目的とする株式会社である。被告は,押出成形セメント板その他一般建築材料の製造及び販売等を目的とする株式会社である。(2)原告の意匠権原告は,次の意匠登録(以下,「本件意匠登録」といい,同登録に係る意匠を「本件意匠」という。)に係る意匠権(以下「本件意匠権」という。)を有している。登録番号第1404691号出願日平成22年4月20日登録日平成22年12月3日意匠に係る物品建築用パネル本件意匠(部分意匠)別紙登録意匠目録記載のとおり(3)被告の行為ア被告は,本件意匠登録日の前である平成22年10月から,業として,別紙被告製品目録記載の建築用パネル(以下「被告製品」という。)を製造,販売している。イ被告製品の形状は,別紙被告意匠目録記載のとおりである(甲11,弁論の全趣旨)。ウ被告製品は建築用パネルであり,本件意匠に係る物品と同じである。 2 原告の請求原告は,被告に対し,本件 被告製品の形状は,別紙被告意匠目録記載のとおりである(甲11,弁論の全趣旨)。ウ被告製品は建築用パネルであり,本件意匠に係る物品と同じである。 2 原告の請求原告は,被告に対し,本件意匠権に基づき,被告の行為が,本件意匠権を侵害するとして,被告製品の製造,販売等の差止めと,被告製品及びその製造に供する金型の廃棄を求めるとともに,199万2250円の損害賠償及びこれに対する平成25年3月22日(本訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5%の遅延損害金の支払を求めている。 3 争 点(1)被告意匠と本件意匠の類否 (争点1)(2)本件意匠登録における無効理由の有無 (争点2)当業者が,登録第1360862号意匠公報(以下「乙1公報」という。)に記載された公知意匠(以下「乙1意匠」という。)に基づいて容易に本件意匠の創作をすることができたか(3)先使用による通常実施権の有無 (争点3)(4)原告の損害 (争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 被告意匠と本件意匠の類否(争点1)【原告の主張】(1)本件意匠の構成態様ア基本的構成態様本件意匠は,平面視において縦方向に形成されてなる幅の異なる4本のリブが,横方向に並列されている構成からなる。 イ具体的構成態様(ア) 4本のリブは,左から右にかけて4段階に漸次幅広となるように連続して形成されており,その横幅の比率は,左から右にかけておよそ1:1.7:2.3:3.3の割合である。 (イ) 4本のリブの高さは,同一に形成されている。 (ウ) 4本のリブの間にある3つの溝は,等間隔の横幅に形成されている。 (2 かけておよそ1:1.7:2.3:3.3の割合である。 (イ) 4本のリブの高さは,同一に形成されている。 (ウ) 4本のリブの間にある3つの溝は,等間隔の横幅に形成されている。 (2)被告意匠の構成態様ア基本的構成態様被告意匠は,平面視において縦方向に形成されてなる幅の異なる4本のリブが,横方向に並列されている構成からなる。 イ具体的構成態様(ア) 4本のリブは,左から右にかけて4段階に漸次幅広となるように連続して形成されており,その横幅の比率は,左から右にかけておよそ1:1.3:1.8:2.2の割合である。 (イ) 4本のリブの高さは,同一に形成されている。 (ウ) 4本のリブの間にある3つの溝は,等間隔の横幅に形成されている。 (3)類否前記(1),(2)のとおり,本件意匠と被告意匠は,基本的構成態様及び具体的構成態様がほぼ同一であり,リブの横幅の比率において異なる。 しかし,上記差異は全体形状の中において部分的で微細なものであり,全体的な観察の下では,需要者による格別の注意を惹くものとはいえず,上記の基本的構成態様及び具体的構成態様の共通点を凌駕してその類否判断を左右するほどの影響を及ぼすことはない。 したがって,本件意匠と被告意匠とは,需要者の視覚を通じて起こさせる美感において共通し,全体として類似する。 【被告の主張】(1)本件意匠の構成態様本件意匠の基本的構成態様は認め,具体的構成態様については,リブの横幅の比率を除き認める。 リブの横幅の比率は,3:5:7:10である。 (2)被告意匠の構成態様被告意匠の基本的構成態様は認め,具体的構成態様については,リブの横幅の比率を除き認める。 被告意匠のリブの横幅は,順に13㎜,18㎜, :5:7:10である。 (2)被告意匠の構成態様被告意匠の基本的構成態様は認め,具体的構成態様については,リブの横幅の比率を除き認める。 被告意匠のリブの横幅は,順に13㎜,18㎜,23㎜,28㎜であり,その比率は3:4.2:5.3:6.5である。 (3)本件意匠の要部本件意匠登録出願前の公知意匠として,乙1意匠が存する。同意匠は,3本のリブを有し,リブの横幅の比率が3:5:7という素数比であることから,「バランスを保ったアンバランスなデザイン」となっている。 本件意匠におけるリブの横幅の比率(3:5:7:10)は,「バランスを保ったアンバランスなデザイン」性を一層高めたものであり,本件意匠の要部である。 (4)類否被告意匠におけるリブの横幅の比率は,前記(2)のとおりであり,本件意匠のそれと異なる。被告意匠は,本件意匠が有する美感を備えていない。 2 本件意匠登録における無効理由の有無(争点2)【被告の主張】(1)本件意匠登録前に公然知られた意匠(乙1意匠)乙1公報は,本件意匠登録が出願される平成22年4月20日の前である,平成21年6月1日に発行されている。同公報には,平面視において縦方向に形成されてなるリブが横方向に並列され,リブ間の溝の横幅は均等で,リブの横幅が3段階に3:5:7の割合で漸次幅広となる3本のリブを一組とし,その繰り返しを有する意匠(乙1意匠)が記載されている。 (2)容易創作仮に,リブの横幅の比率が本件意匠の要部でないというのであれば,乙1意匠の繰り返しの単位となるリブの本数を増加させて,漸次幅広となる4本のリブの繰り返しからなる意匠を創作することは,当業者にとって極めて容易というべきである。したがって,本件意匠は,乙1意匠に基づいて,当 しの単位となるリブの本数を増加させて,漸次幅広となる4本のリブの繰り返しからなる意匠を創作することは,当業者にとって極めて容易というべきである。したがって,本件意匠は,乙1意匠に基づいて,当業者が容易に創作し得たものである。本件意匠登録は意匠法3条2項に違反するから,同法41条,特許法104条の3第1項により,原告は,被告に対し本件意匠権を行使することができない。 【原告の主張】(1)本件意匠と乙1意匠との差異点が本件意匠の要部であることとの関係美感の異同を問題とする意匠の類否と,意匠の着想の新しさや独創性を問題とする意匠の創作容易性の有無とは,別異の視点で判断されるべきものである。したがって,リブの横幅の比率が本件意匠の要部ではないことと,本件意匠が乙1意匠から容易に創作できないこととは矛盾しない。 (2)創作容易性建築用パネルに係る意匠の創作においては,リブの形状,リブの横幅の比率,リブの本数について様々な意匠を選択する余地があり,建築用パネルの機能面からの制約を考慮すると,リブの形状をどのようなものとするか,リブの数を何本とするか,リブの横幅の比率を如何なるものとするかという限られた範囲において,創意工夫を要するものである。 また,各構成部材である1つ1つのリブの外観のみにとらわれることなく,複数のリブを組み合わせた場合に,全体として一つのまとまりある物品としての美的外観が如何なるものとなるかという点にも,創意工夫を要する。 本件意匠は,乙1意匠の繰り返しの単位となるリブの本数を単純に増加させたものとは到底いえず,乙1意匠では採用されていなかった横幅の比率のリブが付加されたものである。乙1意匠に基づいて,本件意匠で採用されている4本目のリブの横幅の比率にすることが,建築用パネルの分野における は到底いえず,乙1意匠では採用されていなかった横幅の比率のリブが付加されたものである。乙1意匠に基づいて,本件意匠で採用されている4本目のリブの横幅の比率にすることが,建築用パネルの分野における当業者にとって容易に考えられることでもない。 さらに,本件意匠は,建築物の壁面に施された時に,乙1意匠と比較してより細かな直線のラインが演出されるため,看者に対しては,繊細さ,鋭さ,高級感を印象づけるものであるのに対して,乙1意匠は,リブ1つ1つの位置・大きさ・範囲の印象が強く残る程度の数である3本リブからなるため,看者に対しては,力強さ,重厚な質感を印象づけるものである。本件意匠におけるリブを4段階に漸次幅広となるように連続して形成された基本的構成態様は,全体として,乙1意匠にはない,創作者の意識が強く具体化された創作的要部である。 本件意匠は,建築用パネルの分野において,従来,リブを4段階に漸次幅広となるように連続して形成された意匠が存在しない中で,全体として統一された美的価値の実現を目指して創作されたものであり,このような本件意匠の創作活動は,今までになかった新たな価値の創出であり,乙1意匠から本件意匠を創作することは容易ではない。 3 先使用による通常実施権の有無(争点3) 【被告の主張】(1)被告製品の製造経緯被告は,顧客から乙1意匠の実施品(以下「乙1製品」という。)と同様の意匠を有する建築用パネルの製造を依頼されたが,調査の結果,乙1意匠に係る意匠権を侵害すると判断し,乙1製品の代替品を開発することとした。 その結果,被告担当者が3つの意匠を創作したが,そのうちの1つが被告意匠である。被告は,平成22年3月24日,被告製品の口金を発注し,同月31日にこれを受領した。 その後,被告は,被告製品を製 結果,被告担当者が3つの意匠を創作したが,そのうちの1つが被告意匠である。被告は,平成22年3月24日,被告製品の口金を発注し,同月31日にこれを受領した。 その後,被告は,被告製品を製造するに至っている。 (2)事業実施の準備の成否被告は,被告製品の製造販売事業のために必要な設備を備えている上,上記口金の発注により,被告製品の製造販売を実施する意図を有していたことも明らかである。また,上記口金の受領により,即時実施の意図が客観的に認識され得る状態になったといえる。 被告は,遅くとも本件意匠登録出願日である平成22年4月20日より前である同年3月31日までに被告製品の製造販売事業の準備を完了したといえる。 したがって,仮に,被告意匠が本件意匠に類似するとしても,被告は,意匠法29条の規定する範囲内において本件意匠権の通常実施権を有している。 【原告の主張】(1)被告製品の製造経緯について被告が,平成22年3月中に,被告製品の口金を発注し,これを受領した事実を否認する。 被告が,提訴前の原告との交渉において,先使用に係る資料として提出したものには,記載の不一致などの疑義があるほか,被告が被告意匠を創作し たと考えるには不自然な点がある。 また,3月24日に口金を発注し,同月31日に受領することは常識的に考えて不可能である。 (2)事業実施の準備の成否前記(1)のとおりであるから,被告が,平成22年3月中に,被告製品の製造販売の実施の準備をしたという事実を認めることはできず,被告の主張は前提を欠いている。 4 原告の損害【原告の主張】(1)被告製品の売上高被告製品の販売価格は,1㎡当たり6500円である。被告は,平成22年12月3日以降,5か所に被告製品を納入した。 上記 ている。 4 原告の損害【原告の主張】(1)被告製品の売上高被告製品の販売価格は,1㎡当たり6500円である。被告は,平成22年12月3日以降,5か所に被告製品を納入した。 上記5か所の納入数量は,次のとおりであり(合計1226㎡),売上高合計は,796万9000円である。 ① 175㎡② 68㎡③ 815㎡④ 18㎡⑤ 150㎡〔計算式〕6,500×1,226=7,969,000(2)被告の得た限界利益被告製品の販売による限界利益率は約25%である。 したがって,被告が被告製品を販売して得た利益は,199万2250円である。 〔計算式〕7,969,000×0.25=1,992,250(3)推定損害額上記(1),(2)によると,被告の行為により原告が被った損害は,199万2250円である(意匠法39条2項)。 【被告の主張】争う。 第4 当裁判所の判断 1 はじめに事案の性質に鑑み,本件意匠と被告意匠の類否,本件意匠登録に無効理由があるか否かに先立ち,被告が先使用による通常実施権を有しているか否かを判断する。 後記2に述べるとおり,被告は,本件意匠登録出願の際,本件意匠を知らずに,被告意匠を創作し,被告意匠を有する被告製品の製造販売に係る事業の準備をしたと認めることができる。その結果,被告は,被告製品の製造販売について,被告意匠の範囲内において,先使用による通常実施権を有していると認めることができる。 2 先使用による通常実施権の成否(1)認定事実前提事実,証拠(後掲のもの)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。 ア被告は,平成21年7月14日,株式会社交建設計から,仙台市交通局の工事について見積依頼を受け 事実 前提事実,証拠(後掲のもの)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。 ア被告は,平成21年7月14日,株式会社交建設計から,仙台市交通局の工事について見積依頼を受けたが(乙3),その際,使用する建材として,原告が製造していた乙1意匠の実施品(以下「乙1製品」という。)と同様のデザインの建築用パネルを指定された。 乙1意匠は,平成20年6月18日,原告により登録出願され,平成21年4月24日,意匠登録されたものである(乙1)。 イ被告は,調査の結果,上記指定は,乙1意匠に係る意匠権を侵害すると判断し,乙1製品の代替製品を開発することとした。その結果,被告担当者が,3つの意匠を創作したが(乙4),そのうちの1つが,被告意匠である。 ウ上記工事の納入時期はしばらく先であったため,直ちに製造に着手しなかったところ,平成22年1月,株式会社錢高組(以下「錢高組」という。)から, 相模原新築工事の引き合いがあり,乙1製品の使用の可否を問い合わせてきた。被告は,乙1製品の使用はできないと回答するとともに,乙1製品の代替製品の開発を再開し,上記3つの意匠のうち被告意匠に係る製品(被告製品)の口金を製作することとした(乙5)。被告は,有限会社藤沼工機(以下「藤沼工機」という。)に対し,口金の製作を発注し,同年3月31日までに納入を受け,検収した(乙6)。 エ被告は,被告製品を自社製品のラインナップに加えることとし,これを平成22年6月版の製品カタログに掲載し(乙7),その後,同年10月,上記 相模原新築工事に使用するため,錢高組に被告製品を販売した。 オ原告は,その間,本件意匠を創作し,平成22年4月20日,登録出願し,同年12月3日,意匠登録(本件意匠登録)された 上記 相模原新築工事に使用するため,錢高組に被告製品を販売した。 オ原告は,その間,本件意匠を創作し,平成22年4月20日,登録出願し,同年12月3日,意匠登録(本件意匠登録)された(甲2)。 (2)本件意匠登録出願日における事業の準備前記(1)によると,被告は,錢高組の実施する 相模原新築工事に使用する被告製品を販売するため,その口金の製作を発注し,これを平成22年3月31日受領し,その後,被告製品を製造した上,錢高組に販売したことが認められる。したがって,遅くとも,上記口金を受領した平成22年3月31日の時点において,被告は,被告意匠を備えた被告製品の製造,販売に係る事業の即時実施の意図を有しており,その意図を客観的に認識される程度に表明したというべきである。すなわち,本件意匠登録出願日である平成22年4月20日に先立つ同年3月31日の時点で,被告意匠に係る被告製品の製造,販売に係る事業の準備をしていたと認めることができる。 (3)原告の反論について上記(2)の認定に対し,原告は,次のとおりの反論を述べるが,いずれも採用することはできない。 ア先使用の資料として提出したもののうち図面の記載の不一致原告は,被告が,平成22年3月中に,被告製品の口金を発注し,これを受領した事実を否認し,被告の提出する先使用に係る資料には疑義があると主張する。具体的には,本訴提起前における被告との交渉において被告が原告に送付した平成23年6月27日付回答書(甲16)に添付された資料と,被告の営業部長が作成し,平成23年8月1日に公証人の認証を受けた陳述書(甲17)に添付された資料(甲16の資料1と甲17の資料2:新規口金検討依頼書及び同添付図面。甲16の資料2と甲17の資料3:メース口金製作伺及び同 平成23年8月1日に公証人の認証を受けた陳述書(甲17)に添付された資料(甲16の資料1と甲17の資料2:新規口金検討依頼書及び同添付図面。甲16の資料2と甲17の資料3:メース口金製作伺及び同添付図面。甲16の資料6と甲17の資料8:設備発注依頼の件(正)及び同添付図面)の記載内容が本来同一であるべきにもかかわらず,相違点があると述べる。 これに対し,被告は,甲17(陳述書)は,先使用を基礎付ける事実を陳述書に記載し,その資料を原本のまま添付したものを,公証人による認証を受けた上で,当時の被告代理人が保管していたものであり,甲16(原告に対する回答書)の資料として添付したものは,原告に対する回答として十分であると考えた範囲で,適当に図面を添付したため,齟齬が生じた旨説明している。 甲16と甲17の書面の作成目的が上記のとおり異なる以上,添付資料を必要に応じて,適宜選択したとしても不自然とはいえない。 確かに,甲17の作成日,認証日は,平成23年8月1日であり,甲16は,これより前である平成23年6月27日に作成されていることから,甲17に添付された資料と同じもの(写し)を回答書に添付する支障はなかったということもできる。このため,念のため,相違点について子細に検討してみたが,次に述べるとおり,被告が特別な意図をもって,あえて添付資料を差し替えたと認めることはできない。 甲16の資料6と甲17の資料8とを比較すると,本文については印影の有無(甲16の資料6の本文には「P1」の印影がないが,甲17の資料8の本文には「P1」の印影がある。),添付図面については手書きの訂正の有無(甲16の資料6の添付図面には,甲17の資料8の添付図面の記載に手書きの訂正が加えられている。)という相違点がある。被告の担当者としては 1」の印影がある。),添付図面については手書きの訂正の有無(甲16の資料6の添付図面には,甲17の資料8の添付図面の記載に手書きの訂正が加えられている。)という相違点がある。被告の担当者としては,手書きの訂正が加わった図面(甲16の資料6の図面)の方が,より正確な情報であると考えて,甲16の資料6の図面を選択したものと考えることができる。その結果,本文についても,甲17の資料8とは別に保管されていた甲16の資料6のものをコピーして,回答書〔甲16〕に添付したと考えることができる(「P1」の印影のあるものとないものとが併存する理由については,「P1」の印影がない段階のものの写しが作成されており,これが甲16の資料6とされたからであると考えるのが合理的である。)。 また,甲16の資料1,2の図面と甲17の資料2,3の図面とを比較すると,前者の図面は,寸法の記載が印字されたものであるのに対し,後者の図面は,寸法が手書きされた部分がある。しかし,両者に実質的な違いはなく,被告の担当者としては,単に手書き部分の少ない図面(甲16の資料1,2の図面)を選択したと考えることも可能である。 一方,これらの相違点に加え,原告の主張する他の相違点について,改めて検討しても,品番の「S6」が抹消されているとか,寸法の記載の有無とかいうものに過ぎない。そもそも,添付資料のうち,被告製品の図面とされる書面に記載された図形自体に違いはなく,寸法の齟齬などもなく(甲16の資料6と甲17の資料8については,上記のとおり,寸法が訂正された結果,最新のものを伝えたものと推測できる。),これらの相違点について,被告があえてねつ造や改ざんをしなければならない理由は見当たらない。 そうすると,原告の主張する相違点を検討しても,前述した事情以外に,あえ と推測できる。),これらの相違点について,被告があえてねつ造や改ざんをしなければならない理由は見当たらない。 そうすると,原告の主張する相違点を検討しても,前述した事情以外に,あえて被告が,甲17の資料に添付された図面を甲16の資料に添付された図面に差し替える必要性は窺えず,原告の主張する相違点をもって,被告製品の口金の製作の経緯に関する甲16,17の信用性を否定することはできず,前記(2)の認定を左右するものではない。 なお,差し替え前の乙4(甲18)が,前記(2)の認定を左右することもないというべきである。 イ先使用の資料として提出したもののうち図面の日付に関する疑義(被告が被告意匠を創作したことに対する疑義)原告は,被告の提出する先使用に係る資料について,被告が被告意匠を創作したと認めるには不自然な点があると主張する。具体的には,被告意匠を示す図面に日付のないもの(甲16の資料1,甲17の資料2,甲17の資料3)が存在すると述べる。 これに加えて,甲16の資料2の「メース口金製作伺」の本文が平成22年1月12日付であるのに,添付図面の作成日が(同年)1月20日付になっていることや,その後,甲17の資料3に添付された図面に日付がないこと(前記アと同じ問題)が不自然であるとも述べる。 しかし,新規口金の製作の検討依頼や,製作伺の段階における図面に日付がないこと自体がさほど不自然であるとは思えない。 また,稟議書である「メース口金製作伺」(甲16の資料2)の本文の日付(平成22年1月12日)と,添付図面の日付(平成22年1月20日)の齟齬については,前記アで検討したのと同様の状況により,齟齬が発生したと認めることができる。同じ「メース口金製作伺」(甲16の資料2,甲17の資料3)であるにもかかわら 付(平成22年1月20日)の齟齬については,前記アで検討したのと同様の状況により,齟齬が発生したと認めることができる。同じ「メース口金製作伺」(甲16の資料2,甲17の資料3)であるにもかかわらず,添付図の日付の記載があったり(甲16の資料2),なかったり(甲17の資料2)という違いがあることについても,同様の説明が可能である(むしろ,意図的なねつ造や改ざんがあったというのであるなら,このような齟齬は考えにくい。)。 したがって,原告の主張する図面の日付の有無をもって,前述した先使用の事実の認定を左右するものではない。 ウ被告製品の口金の製作期間原告は,被告製品の口金の製作期間について,被告の主張する期間(3月24日に発注し,同月31日に受領したというもの)では短すぎるため,被告の主張する口金の発注自体が疑わしいと主張し,その理由として,口金を製作するためには7つの部品を作成する必要があるとか,焼き入れ処理をする必要があるなどと述べる。 しかし,上記主張は,原告の主張する方法ないし工程によると,その程度の日数を必要とするというものにすぎず,直ちに,被告製品の口金が,原告の主張する方法によって製作されたことになるとはいえない。 むしろ,前記(1)のとおり,被告が被告製品の口金の製作を発注した相手は藤沼工機であるが,証拠(甲17の資料6,乙9)によると,藤沼工機は,被告とは長い取引関係にあり,仕掛品を常備している上,正式な発注日である平成22年3月24日の前から,被告製品の口金の見積を依頼されるなど,口金の製作の予定が伝えられ,その準備をしていたことが認められる。 そもそも,前記(1)のとおり,平成22年6月に発行された被告作成の不燃建材総合カタログ(乙7)に被告製品が掲載されており,発行時点で,被告製 が伝えられ,その準備をしていたことが認められる。 そもそも,前記(1)のとおり,平成22年6月に発行された被告作成の不燃建材総合カタログ(乙7)に被告製品が掲載されており,発行時点で,被告製品が完成していたと見ることができる(原告は,発行日以降に生産することを前提としているが,そのような前提には理由がない。)。そして,上記カタログ発行前に,口金の製作期間,被告製品の製作期間,カタログの製作期間を要することなどを考えると,上記カタログの存在は,被告の主張する被告製品の製造に至る経緯事実に符合しているということができる。 したがって,口金の製作期間についての原告の主張によっては,先使用に係る前記判断は左右されないというべきである。 (4) 本件意匠についての認識被告が,本件意匠登録出願の事実を知っていたと認めることを窺わせる事情は見当たらず,前記(1)イ,ウの経緯のとおり,被告意匠を創作したと認められることからすると,被告は,原告による本件意匠の創作の事実を知らずに,被告意匠を創作したと認めることができる。 (5) まとめ以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,仮に,被告意匠が本件意匠に類似しているとしても,被告は,被告意匠及び上記被告製品の製造,販売の事業の範囲内において,本件意匠権の通常実施権を有するというべきである。 3 結論以上のとおり,原告の請求は理由がないから,これをいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法61条を適用して主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官松阿彌 隆 裁判 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官松阿彌 隆 裁判官西田昌吾は,転補につき,署名押印することができない。 裁判長裁判官山田陽三被告製品目録次の商品名,製品番号,形状を有する建築用パネル商品名 :「メース」デザインパネル製品番号: 62-7560形状 :(正面図)登録意匠目録【意匠に係る物品の説明】本物品は,建築物の外壁,間仕切壁,天井,ルーバーなどに用いる建築用パネルである。本物品は,正面図において,横幅が約600㎜,厚みが約75㎜に成型されている。【意匠の説明】実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。 一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。この意匠は平面図において上下のみ連続するものである。背面図は正面図と対象に表れるので省略する。【図面】【正面図】【左側面図】【右側面図】【平面図】【底面図】【意匠登録を受けようとする部分の参考拡大図】被告意匠目録【正面図】【左側面図】【右側面図】【平面図】【底面図】 【平面図】 【底面図】

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