- 1 -主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1請求 第1事件次の各処分を取り消す。 ( )横須賀税務署長が原告P1株式会社に対して平成16年12月28日付 けでした同12年1月分ないし同13年6月分,同年10月分ないし同15年1月分及び同年5月分ないし同年12月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の各納税告知処分の一部減額処分で減額した後のもの)( )横須賀税務署長が原告P1株式会社に対して平成16年12月28日付 けでした同12年1月分ないし同13年6月分,同年10月分ないし同14年12月分及び同15年5月分ないし同年12月分の不納付加算税の各賦課決定処分(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の不納付加算税の減額の各変更決定処分で減額した後のもの) 第2事件次の各処分を取り消す。 ( )横須賀税務署長が原告P2株式会社に対して平成16年12月28日付 - 2 -けでした同12年1月分ないし同15年12月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の各納税告知処分の一部減額処分で減額した後のもの)( )横須賀税務署長が原告P2株式会社に対して平成16年12月28日付 けでした同12年1月分ないし同15年7月分及び同年9月分ないし同年12月分の不納付加算税の各賦課決定処分(ただし,国税不服審判 横須賀税務署長が原告P2株式会社に対して平成16年12月28日付 けでした同12年1月分ないし同15年7月分及び同年9月分ないし同年12月分の不納付加算税の各賦課決定処分(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の不納付加算税の減額の各変更決定処分で減額した後のもの) 第3事件次の各処分を取り消す。 ( )横須賀税務署長が原告P3株式会社に対して平成16年12月28日付 けでした同12年1月分ないし同年11月分,同13年2月分ないし同年12月分及び同14年3月分ないし同15年12月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の各納税告知処分の一部減額処分で減額した後のもの)( )横須賀税務署長が原告P3株式会社に対して平成16年12月28日付 けでした同12年1月分ないし同年11月分,同13年2月分ないし同年12月分,同14年3月分ないし同15年3月分及び同年5月分ないし同年12月分の不納付加算税の各賦課決定処分(ただし,国税不服審判所長が同1- 3 -8年5月29日付け裁決で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の不納付加算税の減額の各変更決定処分で減額した後のもの) 第4事件次の各処分を取り消す。 ( )横須賀税務署長がP4株式会社に対して平成16年12月28日付けで した同12年1月分ないし同15年12月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分(ただし,横須賀税務署長が同17年5月24日付け異議決定で一部取り消し,国税不服審判所長が同18年5月29 付けで した同12年1月分ないし同15年12月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分(ただし,横須賀税務署長が同17年5月24日付け異議決定で一部取り消し,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決(ただし,平成18年6月12日付け裁決書訂正書により一部訂正した後のもの)で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の各納税告知処分の一部減額処分で減額した後のもの)( )横須賀税務署長がP4株式会社に対して平成16年12月28日付けで した同12年1月分ないし同15年12月分の不納付加算税の各賦課決定処分(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の不納付加算税の減額の各変更決定処分で減額した後のもの) 第5事件次の各処分を取り消す。 ( )横須賀税務署長がP5株式会社に対して平成16年12月28日付けで した同12年1月分ないし同15年12月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決で一- 4 -部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の各納税告知処分の一部減額処分で減額した後のもの)( )横須賀税務署長がP5株式会社に対して平成16年12月28日付けで した同12年1月分ないし同15年12月分の不納付加算税の各賦課決定処分(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の不納付加算税の減額の各変更決定処分で減額した後のもの) 第6事件次の各処分を取り消す。 ( )横須賀税務署長がP6株式会社に対して平成16年12 長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の不納付加算税の減額の各変更決定処分で減額した後のもの) 第6事件次の各処分を取り消す。 ( )横須賀税務署長がP6株式会社に対して平成16年12月28日付けで した同12年1月分ないし同年10月分,同年12月分ないし同15年9月分,同年11月分及び同年12月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の各納税告知処分の一部減額処分で減額した後のもの)( )横須賀税務署長がP6株式会社に対して平成16年12月28日付けで した同12年1月分ないし同年10月分,同13年1月分ないし同15年9月分,同年11月分及び同年12月分の不納付加算税の各賦課決定処分(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の不納付加算税の減額の各変更決定処分で減額した後のもの) 第7事件- 5 -次の各処分を取り消す。 ( )横須賀税務署長がP7株式会社に対して平成16年12月28日付けで した同12年1月分ないし同13年3月分,同年5月分ないし同年9月分,同年11月分ないし同14年10月分及び同15年1月分ないし同年12月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の各納税告知処分の一部減額処分で減額した後のもの)( )横須賀税務署長がP7株式会社に対して平成16年12月28日付けで した同12年1月分ないし同13年3月分,同年6月分ないし同年9月分 税の各納税告知処分の一部減額処分で減額した後のもの)( )横須賀税務署長がP7株式会社に対して平成16年12月28日付けで した同12年1月分ないし同13年3月分,同年6月分ないし同年9月分,同年11月分ないし同14年10月分及び同15年1月分ないし同年12月分の不納付加算税の各賦課決定処分(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の不納付加算税の減額の各変更決定処分で減額した後のもの)第2事案の概要1( )本件各訴えの原告は,当初,第1事件はP1株式会社(以下「原告P 1」という。),第2事件はP2株式会社(以下「原告P2」という。),第3事件はP3株式会社(以下「原告P3」という。),第4事件はP4株式会社(以下「原告P4」という),第5事件はP5株式会社(以下「原告P5」という。),第6事件はP6株式会社(以下「原告P6」という。),第7事件はP7株式会社(以下「原告P7」といい,これら7社を「原告- 6 -ら」という。)であったが,本件訴訟係属中の平成21年4月1日に,原告P1が原告P5及び原告P6を,また,原告P3が原告P4及び原告P7をそれぞれ吸収合併し,訴訟承継をしたものである。 ( )本件は,横須賀税務署長が,原告らが所有し運航する船舶に乗船してい る外国人漁船員の配乗等に関する業務を行った法人に対して原告らが支払った金員のうちの一部について,原告らが雇用する外国人漁船員の人的役務の提供の対価であり,非居住者に対する国内源泉所得の支払に該当するとして,原告らに対し源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分をしたのに対し,原告らが,原告らと外国人漁船員と 国内源泉所得の支払に該当するとして,原告らに対し源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分をしたのに対し,原告らが,原告らと外国人漁船員との間に雇用関係はなく,当該金員は国内源泉所得の支払に該当しないこと,外国人漁船員らは非居住者に該当しないことなどを理由に,前記各処分(ただし,審査裁決により一部取り消され,横須賀税務署長が平成20年11月26日付けでした各変更決定処分により減額された後のもの)は違法であるとして,その取消しを求めた事案である。 関係法令等の定め( )所得税法(以下「法」という。)2条1項は,法における用語の意義を定め ているところ,「国内」とはこの法律の施行地をいい(同項1号),「居住者」とは国内に住所を有し,又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいい(同項3号),「非居住者」とは居住者以外の個人をいう(同項5号)旨定めている。 ( )法5条2項(平成19年法律第6号による改正前のもの)は,非居住者 は,法161条に規定する国内源泉所得を有するときには,所得税を納める- 7 -義務がある旨定めている。 ( )法161条8号イは,俸給,給料,賃金,歳費,賞与又はこれらの性質 を有する給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち,国内において行う勤務その他の人的役務の提供(内国法人の役員として国外において行う勤務その他の政令で定める人的役務の提供を含む。)に基因するものは,国内源泉所得に当たる旨定めている。 ( )所得税法施行令(以下「令」という。)285条1項2号は,居住者又 は内国法人が運航する船舶又は航空機において行う勤務その他の人的役務の提供(国外における寄航地において行われる一時的な人的役務の提供を除く。)は,法161条8号 。)285条1項2号は,居住者又 は内国法人が運航する船舶又は航空機において行う勤務その他の人的役務の提供(国外における寄航地において行われる一時的な人的役務の提供を除く。)は,法161条8号イに規定する政令で定める人的役務の提供に当たる旨定めている。 ( )法212条1項(ただし,平成16年法律第14号による改正前のもの。 以下同じ。)は,非居住者に対し国内において法161条1号の2から12号までに掲げる国内源泉所得の支払をする者は,その支払の際,当該国内源泉所得について所得税を徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までに,これを国に納付しなければならない旨定めている。 ( )法213条1項1号は,法212条1項の規定により徴収すべき所得税 の額は,同項に規定する国内源泉所得の金額に100分の20の税率を乗じて計算した金額とする旨定めている。 ( )国税通則法67条1項ただし書は,納税の告知に係る国税を法定納期限 までに納付しなかったことについて正当な理由があると認められる場合は,不納付加算税を徴収しない旨定めている。 - 8 - 前提事実本件の前提となる事実は,次のとおりである。証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実等は,その旨付記した。その余の事実は,当事者間に争いがない。 ( )原告らの業務,取引関係等 ア原告らは,いずれも水産物漁獲及び販売加工の業務等を業とする株式会社であり,別紙1記載の各船舶(以下「本件各船舶」という。)をそれぞれ所有し運航して遠洋まぐろ漁業を営んでいた。原告らのうち,原告P1以外の会社はいずれも原告P1の子会社又は孫会社であり,その代表者はいずれも原告P1の代表者が兼ねており,所在地も原告P1と同じであり,その事務はすべて原告P1が行っていた。本件に関する事 原告P1以外の会社はいずれも原告P1の子会社又は孫会社であり,その代表者はいずれも原告P1の代表者が兼ねており,所在地も原告P1と同じであり,その事務はすべて原告P1が行っていた。本件に関する事務手続も各社とも同じで,いずれかの会社だけが他の会社と異なる特殊な取扱いをすることはなかった。(甲F3の2,原告ら代表者,弁論の全趣旨)イ原告らは,平成12年1月から同15年12月までの間(以下「本件対象期間」という。),本件各船舶に,原告らの従業員である日本人の漁労長ら日本人漁船員のほかに,外国人漁船員ら(以下「本件外国人漁船員ら」という。)を乗船させて,遠洋まぐろ漁業を営んでいた。本件外国人漁船員らは,本件各船舶に乗り組んでいる間,原告らの指揮命令の下で漁労等の作業に従事した。本件外国人漁船員らは,いずれも外国籍の者であり,専ら国外で本件各船舶に乗船及び下船し,我が国に上陸することはなかった。 ウP8株式会社(以下「P8」という。),P9株式会社(以下「P9」- 9 -という。)及びパナマ法人である「P10」(以下「P1Coporation0」という。)の日本における代理店である株式会社P11(同社の原告らとの取引は専らP10の代理店としてのものであるため,以下「P11(P10)」という。以下「P8」,「P9」及び「P11(P10)」を併せて「本件各手配会社」という。)は,いずれも日本国内の法人であり,原告らと本件外国人漁船員らとの間で,本件外国人漁船員らが本件各船舶に乗船するための手配,連絡,調整等の業務を行っていた。原告らの本件各手配会社の利用関係は別紙1記載のとおりである。そして,本件各手配会社は,それぞれ外国の手配会社(以下「外国マンニング会社」という。)を利用して,本件外国人漁船員らの乗船の手配等を行っていた。 エ 各手配会社の利用関係は別紙1記載のとおりである。そして,本件各手配会社は,それぞれ外国の手配会社(以下「外国マンニング会社」という。)を利用して,本件外国人漁船員らの乗船の手配等を行っていた。 エ原告らは,本件各手配会社に対し,毎月,本件各手配会社から請求される金員(同金員のうち,本件外国人漁船員らの本件各船舶における労務提供に関する金員を「本件金員」という。)を送金していた。 ( )処分の経緯等(別表1ないし7参照) ア横須賀税務署長は,平成16年12月28日付けで,原告らに対し,それぞれ別表1-1,2-1,3-1,4-1,5-1,6-1及び7-1の各「納税告知処分等」欄記載の源泉所得税の各納税告知処分(以下「本件各納税告知処分」という。)及び不納付加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした(その各月分ごとの内訳は,別表1-2,2-2,3-2,4-2,5-2,6-2及び7-2各記載のとおりである。)。 イ原告らは,横須賀税務署長に対し,平成17年2月24日,前記アの各- 10 -処分につき異議申立てをしたところ,横須賀税務署長は,同年5月24日,同異議申立てをいずれも棄却する旨の決定をした。 ウ原告らは,国税不服審判所長に対し,平成17年6月24日,前記アの各処分につき審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,同18年5月29日,別表1-1,2-1,3-1,4-1,5-1,6-1及び7-1の各「審査裁決」欄記載のとおり,前記アの各処分について,いずれもその一部を取り消す旨の裁決をした(その各月分ごとの内訳は,別表1-3,2-3,3-3,4-3,5-3,6-3及び7-3各記載のとおりである。)。なお,国税不服審判所長は,原告P4に係る裁決書の平成14年8月分の源泉所得税に係る納税告知処分の金額の表 は,別表1-3,2-3,3-3,4-3,5-3,6-3及び7-3各記載のとおりである。)。なお,国税不服審判所長は,原告P4に係る裁決書の平成14年8月分の源泉所得税に係る納税告知処分の金額の表示が誤っていたことから,平成18年6月12日付け裁決書訂正書により,その部分を訂正しており,別表記載の額はその訂正後のものである。 エ原告らは,平成18年11月27日,本件各訴えを提起した。(当裁判所に顕著な事実)オ横須賀税務署長は,平成20年11月26日付けで,別表1-1,2-1,3-1,4-1,5-1,6-1及び7-1の各「本件各一部取消処分」欄記載のとおり,審査裁決により一部取消しがされた後の前記各処分について,各納税告知処分の一部減額処分(その各月分ごとの内訳は,A-2,B-2,C-2,D-2,E-2,F-2及びG-2の各「本件各納税告知処分の額」欄記載のとおりである。)並びに各賦課決定処分の減額の変更決定処分(その各月分の内訳は,A-3,B-3,C-3,D-3,E-3,F-3及びG-3記載の各「本件各賦課決定処分の額」欄記- 11 -載のとおりである。)をした(以下,横須賀税務署長の平成20年11月26日付けの前記各処分により減額された後の本件各納税告知処分及び本件各賦課決定処分を併せて「本件各処分」という。)。 被告が主張する本件各処分の根拠及び適法性( )原告らは,本件各船舶を運航して遠洋漁業を営むものであり,本件外国 人漁船員らは,本件各船舶において漁業に従事し,人的役務を提供している。 そして,原告らは,本件外国人漁船員らに対し,本件各手配会社を通じて,上記役務提供の対価として本件金員を支払った。 本件金員は,令285条1項2号の「内国法人が運航する船舶又は航空機において行う勤務その他の人的役務の提供」に基因す 員らに対し,本件各手配会社を通じて,上記役務提供の対価として本件金員を支払った。 本件金員は,令285条1項2号の「内国法人が運航する船舶又は航空機において行う勤務その他の人的役務の提供」に基因するものに該当し,法161条8号イの国内源泉所得に該当する。 ( )非居住者に対し,国内において法161条1号の2から12号までに掲 げる国内源泉所得の支払をする者は,その支払の際,当該国内源泉所得について所得税を徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までに,これを国に納付しなければならない(法6条,212条1項)。当該国内源泉所得の支払の際に徴収すべき所得税の額は,当該国内源泉所得の金額に100分の20の税率を乗じて計算した額である(法213条1項1号)。 本件外国人漁船員らは,日本国内に住所及び居所を有しないから,本件外国人漁船員らは法の「非居住者」に該当する(法2条1項5号,3号)。また,法212条1項に規定する「支払をする者」とは,支払対象となる国内源泉所得の支払義務を自ら負う者を指すのであり,支払対象が雇用契約に基づく役務提供の対価の場合は,雇用主がこれに当たる。そして,原告らは,- 12 -本件外国人漁船員らの雇用主であるから,本件金員の「支払をする者」に当たる。 ( )原告らが本件外国人漁船員らに支払った本件金員の額は,本件外国人漁 船員らの基本給,賞与及び各種手当(役職手当,寒冷地手当等)の合計であり,原告らごとの本件各船舶別,本件各手配会社別,本件対象期間の各月分(以下「本件各月分」という。)別の明細及び徴収すべき所得税額の明細は,別表A-1,B-1,C-1,D-1,E-1,F-1及びG-1各記載のとおりである。そして,原告らが本件金員の本件各月分の支払につき納付すべき税額は,それぞれ別表A-2,B-2,C-2, の明細は,別表A-1,B-1,C-1,D-1,E-1,F-1及びG-1各記載のとおりである。そして,原告らが本件金員の本件各月分の支払につき納付すべき税額は,それぞれ別表A-2,B-2,C-2,D-2,E-2,F-2及びG-2の各「徴収すべき所得税額」欄記載のとおりである。 本件各納税告知処分の額(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の各納税告知処分の一部減額処分で減額した後のもの)は,同各別表の「本件各納税告知処分の額」欄記載のとおりであり,いずれも徴収すべき所得税額と同額か,又はこれを下回る額である。 ( )原告らの本件各月分における源泉徴収すべき所得税に係る不納付加算税 の額は,それぞれ,別表A-3,B-3,C-3,D-3,E-3,F-3及びG-3の各「不納付加算税の額」欄記載のとおり,本件各納税告知処分の額(国税通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)を基礎として,同法67条1項の規定を適用し,100分の10の割合を乗じて算定した金額であり,本件各賦課決定処分の額(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決で一部取り消し,かつ,横- 13 -須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の不納付加算税の減額の各変更決定処分で減額した後のもの)は,同各別表の「本件賦課決定処分の額」欄記載のとおりであって,本件不納付加算税の額と同額である。 ( )したがって,本件各処分はいずれも適法である。 争点 ( )原告らと本件外国人漁船員らとの間に雇用関係があるか。 ( )原告らは国内源泉所得の「支払をする者」(法212条1項)に該当す るか。 ( )本件外国人漁船員らは,法の 争点 ( )原告らと本件外国人漁船員らとの間に雇用関係があるか。 ( )原告らは国内源泉所得の「支払をする者」(法212条1項)に該当す るか。 ( )本件外国人漁船員らは,法の規定する「非居住者」であるか。 ( )徴収すべき所得税額に係る被告主張は適法か。 ( )本件各処分は信義則に反するものでないか ( )国税通則法67条1項ただし書に規定する「正当な理由があると認めら れる場合」に当たらないか。 当事者の主張の要旨( )争点( )(原告らと本件外国人漁船員らとの雇用関係)について (被告の主張)原告らは,我が国の船員労働行政上の取扱いによって定められた枠組み(いわゆる海外基地方式)に基づいて本件外国人漁船員らとそれぞれ雇用契約を締結し,これにより,本件外国人漁船員らは,原告らの指揮監督の下,原告らに対して役務を提供し,原告らは,その対価として本件外国人漁船員らに対し賃金を支払っていた。 (原告らの主張)- 14 -原告らは,本件外国人漁船員らと雇用契約を締結しておらず,本件外国人漁船員らを雇用しているのは外国マンニング会社である。雇用契約というためには,一方が他方の指揮命令に服して,労務を提供し,労務の対価として他方から給付を受け取ることにつき,意思表示の合致があることが必要であるところ,本件外国人漁船員らとの間で,この意思表示の合致があるのは,外国マンニング会社である。また,本件外国人漁船員らは,外国マンニング会社から労務の対価としての給料やボーナスを受け取っている。さらに,本件外国人漁船員らの採用及び給与の決定権限は外国マンニング会社にある。 原告らと本件外国人漁船員らとの関係は,形式的には,通達で認められた海外基地方式という仕組みを踏まえているが,原告らの海外事務所はペーパ 人漁船員らの採用及び給与の決定権限は外国マンニング会社にある。 原告らと本件外国人漁船員らとの関係は,形式的には,通達で認められた海外基地方式という仕組みを踏まえているが,原告らの海外事務所はペーパーオフィスであり,その実態は異なる。 ( )争点( )(原告らは国内源泉所得の「支払をする者」といえるか)につい て(被告の主張)法212条1項の「支払をする者」は,具体的に支払行為を指すものではなく,支払対象となる国内源泉所得の支払義務を自ら負う者をいうものと解するべきである。原告らは,雇用契約に基づき本件外国人漁船員らに対して本件金員の支払をすべき義務を自ら負っているから,原告らは,本件金員の「支払をする者」に該当する。そして,原告らは,本件金員を国内の本件各手配会社に送金し,これによって本件金員を本件各手配会社を介して非居住者である本件外国人漁船員らに支払っているから,同項にいう「支払の際」は,本件各手配会社への送金時である。 - 15 -船員法53条は,船員に対する賃金の直接払の原則を定めているが,同法56条は,船舶所有者は,船員から請求があったときは,船員に支払われるべき給与その他の報酬をその同居の親族又は船員の収入によって生活を維持する者に渡さなければならないとして,直接払の原則の例外を規定している。 本件外国人漁船員らの長期間の海上労働という特殊性及び本件各当事者間の合理的意思解釈からすれば,本件外国人漁船員らは自らの賃金等を原告らが本件各手配会社へ送金することに同意しており,これは同法56条の定める場合と同視できるというべきであって,本件において同法53条違反の問題が生じないのはもとより,原告らが本件金員を本件各手配会社へ送金した時点で,原告らが本件金員を本件外国人漁船員らに交付したのと同様に,原告らの賃金支払債 きであって,本件において同法53条違反の問題が生じないのはもとより,原告らが本件金員を本件各手配会社へ送金した時点で,原告らが本件金員を本件外国人漁船員らに交付したのと同様に,原告らの賃金支払債務は消滅するというべきである。 (原告らの主張)原告らは,本件外国人漁船員らに対して本件金員を支払ってはおらず,本件各手配会社に対して本件金員を支払ったものである。本件各手配会社は,本件金員を,これを受領した月の本件外国人漁船員らの月額給料や賞与として取り扱っていない。よって,原告らは,本件外国人漁船員らに対し「支払をする者」に該当し得ない。 被告は,船員法53条の賃金直接払の例外である同法56条に定める船員から請求があった場合と同視できると主張する。しかし,本件各手配会社が,使用者側による搾取を禁じた同法53条を背景に規定された同法56条に定める「同居の親族又は船員の収入によって生計を維持する者」に準ずる存在になるはずがない。そして,本件外国人漁船員らは,雇用主が原告らである- 16 -こと,又は船主が雇用主であることについて認識がないから,同条にいう「請求」を行えるはずがない。 ( )争点( )(本件外国人漁船員らは「非居住者」か)について (被告の主張)本件外国人漁船員らは,外国人であり,専ら国外においてのみ本件各船舶に乗船及び下船し,我が国に上陸することはないから,本件外国人漁船員らが勤務外の期間中通常滞在する地は国外にあると認められ,法にいう「居住者」すなわち「国内に住所を有し,又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人」(法2条1項3号)に該当しない。したがって,同項5号の「非居住者」に該当する。 法にいう「この法律の施行地」(法2条1項1号)とは,地理的にある一定の地域(又は水域)を意味する概念であり,本件各船舶 法2条1項3号)に該当しない。したがって,同項5号の「非居住者」に該当する。 法にいう「この法律の施行地」(法2条1項1号)とは,地理的にある一定の地域(又は水域)を意味する概念であり,本件各船舶のような動産それ自体は,これに当たらない。また,法の規定する「住所」とは,個人の生活の本拠,すなわちその者の社会生活上の諸問題を処理する拠点をいうのであり,船員が船舶内に起居し,生活の大部分を公海上で過ごしていても,その意味では船舶は単なる勤務場所にすぎず,これを住所ということはできない。 「居所」も土地と一定程度密着した場所を前提とした概念であるから,船舶はこれに当たらない。 (原告らの主張)本件外国人漁船員らは,まぐろ遠洋漁業船の漁船員という1年以上の期間漁船に居住することが予定されている職業に従事するものであるところ,本件各船舶は日本籍船であるから,日本国の主権が及び,法の適用があるので,- 17 -「この法律の施行地」(法2条1項1号)であり,「国内」といえる。したがって,「在留期間が予め1年未満であることが明らかであると認められる場合」を除き,国内に住所を有すると推定される(所得税基本通達3-3,令14条1項1号)。 また,本件外国人漁船員らは,実際にも,普段の生活において必要な設備がすべて存在する本件各船舶の中において,およそ1年以上の長期間にわたり生活しており,家族その他の第三者と交信して社会生活上の諸問題を処理していたから,本件外国人漁船員らは,本件各船舶に「生活の本拠」であるところの「住所」があった。仮に,本件各船舶が「生活の本拠」といえないとしても,本件外国人漁船員らは,およそ1年以上も継続して本件船舶上で生活していたから,少なくとも,本件各船舶に「生活上,多少継続して居住する場所」すなわち「居所」があったというべきで 」といえないとしても,本件外国人漁船員らは,およそ1年以上も継続して本件船舶上で生活していたから,少なくとも,本件各船舶に「生活上,多少継続して居住する場所」すなわち「居所」があったというべきである。 したがって,本件外国人漁船員らは,法にいう居住者であるか,又は居住者と推定される。 ( )争点( )(被告の主張する源泉徴収すべき所得税額等の適法性)について (被告の主張)原告らが本件金員について徴収すべき源泉所得税額は,概算額の請求書や精算額の請求書などの客観的資料に基づき作成された信用性のある調査報告書のとおり,本件各船舶の航海すべてについて,当該船舶に乗船していた本件外国人漁船員ら全員の各人及び各月ごとに,適正に算出されている。したがって,被告が主張する原告らの本件各月分の支払額について納付すべき源泉所得税額も適正な額である。 - 18 -(原告らの主張)被告側で作成した調査報告書は概算額の請求書,精算額の請求書,総勘定元帳等に基づき作成されたというものの,同調査報告書に記載されたそれぞれの数字の由来は全く不明であって,その内容の当否を検証することは文字どおり不可能である。本件各処分については,これまでの間,6回にわたり変更がなされ,その都度被告側が主張する課税額に変更が生じている。被告が提出した調査報告書に基づく課税額が正確であるとの保障はどこにもなく,むしろ,依然として誤りを含むものと考える方が合理的である。調査報告書記載の数字の当否について確認することが不可能である以上,その正確性について確信を得ることもまた不可能であるから,本件では課税標準の立証がない。 ( )争点( )(信義則違反)について (原告らの主張)本件各処分は信義則違反である。 すなわち,原告らが外国人漁船員を乗船させるようになった平 あるから,本件では課税標準の立証がない。 ( )争点( )(信義則違反)について (原告らの主張)本件各処分は信義則違反である。 すなわち,原告らが外国人漁船員を乗船させるようになった平成2年度以降,横須賀税務署は,何度か税務調査も行い,原告らが「委託料」及び「派遣料」の支払について所得税の源泉徴収を行わずにいたことを熟知していながら,14年もの長きにわたり,源泉徴収をすべきであるとの指摘は一切なく,これを事実上是認していた。したがって,原告ら代表者が,横須賀税務署から外国人漁船員について所得税の源泉徴収を行う必要はないとの見解が示されていると考えたことに,何らの落ち度はない。 また,原告らが源泉徴収を行うためには,本件外国人漁船員らの各人ごと,- 19 -本件各月ごとに所得の額を把握しなければならないところ,本件外国人漁船員らに対する支払は専ら外国マンニング会社が行っており,原告らがそのような所得を把握することは不可能である。 (被告の主張)本件各処分は信義則違反に当たらない。 信義則の法理の適用の是非については,税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより,納税者がその表示を信頼してその信頼に基づいて行動したところ,後に当該表示に反する課税処分が行われ,そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか等を考慮して判断すべきところ,本件では,税務官庁が,原告らに対し,本件金員について所得税を源泉徴収する必要がない旨の公的見解を示したことはない。また,仮に,過去において,本件金員と同様の金員の支払について,原告らに対し,源泉所得税の納税告知処分が行わたことがなかったとしても,それによって処分行政庁が原告らに対し信頼の対象となる公的見解を示したものとはいえない。それどころか,国税当 員の支払について,原告らに対し,源泉所得税の納税告知処分が行わたことがなかったとしても,それによって処分行政庁が原告らに対し信頼の対象となる公的見解を示したものとはいえない。それどころか,国税当局は,P12の関係団体からの相談に対し,雇用主である船主に源泉徴収の義務がある旨の見解を示していた。 また,本件においては,原告らが本件各手配会社からの請求を受けて,その請求書に各人ごとに区分表示されている本件外国人漁船員らの基本給,賞与,各種手当の金額を含めた金員を送金した時点において,それらの金額に所定の税率を乗じて集計することにより,納付すべき源泉所得税額が算出できるものである。これらの計算に必要な情報は,原告らによって入手することが困難なものは含まれておらず,仮に必要な資料が手元になかったとして- 20 -も,本件各手配会社に対して必要な資料や情報を求めれば,本件各手配会社がその提供を拒むような事情は認められないから,これらの資料や情報を入手することは十分に可能であった。 ( )争点( )(国税通則法67条1項ただし書の正当な理由の有無) (原告らの主張)原告らが源泉所得税を納付しなかったことについて何の落ち度もないから,納付しない納税者との間の客観的な不公平を実質的に是正し,不納付による納税義務違反の発生を防止するという不納付加算税の趣旨に照らし,原告らには国税通則法67条1項ただし書に規定する「正当な理由」がある。 (被告の主張)国税通則法67条1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することができない客観的な事情があり,不納付加算税の趣旨に照らしても,なお,納税者に不納付加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当であって,単に源泉徴収義務者の法律の することができない客観的な事情があり,不納付加算税の趣旨に照らしても,なお,納税者に不納付加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当であって,単に源泉徴収義務者の法律の不知又は錯誤に基づくというのみでは,「正当な理由」に当たらないというべきである。本件において,原告らは,本件金員の支払に際し,所得税の源泉徴収をしなければならないことは十分認識し得たというべきであり,原告らは単に法の不知又は誤解により源泉徴収義務を怠ったにすぎず,「正当な理由」は認められない。 第3当裁判所の判断 認定事実前記第2の3の前提事実(以下「前提事実」という。)に加え,証拠及び弁- 21 -論の全趣旨(各事実の後に付記する。)によると,以下の事実を認めることができる。なお,当事者間に争いがない事実については,争いがない旨記載した。 ( )日本漁船への外国人漁船員の受入れに関する我が国の法令の定め,労働 行政上の取扱いとこれに沿う原告らの行為等ア船員法第4章「雇入契約等」は,船員の雇入契約の内容,成立,解除,終了等について規定しているところ,これらの規定においては,船舶所有者と船員との間で雇入契約が締結されることが前提とされている。 また,本件対象期間当時,船員職業安定法(平成16年法律第71号による改正前のもの。以下「旧船員職安法」という。)53条は,船員労務供給事業(供給契約に基づいて人を船員として他人の指揮命令を受けて労務に従事させること)を禁止し,その違反者は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する旨の罰則が定められていた(旧船員職安法65条5号)。 イ我が国の船員労働行政においては,従来から,日本漁船については,陸上労働分野の閣議了解を準用し,外国人漁船員を受け入れないよう指導されてきたが,平成2年3月, いた(旧船員職安法65条5号)。 イ我が国の船員労働行政においては,従来から,日本漁船については,陸上労働分野の閣議了解を準用し,外国人漁船員を受け入れないよう指導されてきたが,平成2年3月,海上漁場を確保するため外国人漁船員の受入れが求められていた当時の状況を踏まえ,外国人漁船員との混乗が求められている海外基地を利用する漁船を対象に,一定の制限を設けて外国人漁船員を受け入れることとされた(同月30日付け運輸省海上技術安全局船員部長通達(以下「本件部長通達」という。))。本件部長通達には,上記制限の1つとして,「外国人漁船員は,対象漁船の漁業者の海外事務所に雇用されるものであること」が明記され,我が国の漁業者は,我が国の- 22 -船員労働行政上の枠組みに基づいて外国人漁船員を対象漁船に乗り組ませようとする場合には,当該外国人漁船員を直接雇用する形態を採ることが要求されていた(以下,この本件部長通達に基づく外国人漁船員の受入方式を「海外基地方式」という。)。そして,本件部長通達においては,各地方運輸局長等に対し,その取扱いに当たっては厳正な審査を行い,遺漏なきを期されたいとされていた。(乙全1)そして,本件部長通達の取扱いに関して,平成2年3月30日付け運輸省海上技術安全局船員部労政課長・労働基準課長通達(以下「本件課長通達」という。)により,漁業者が対象漁船に外国人漁船員を乗り組ませようとするときは,地方運輸局労政課において,事前に当該漁業者から「海外基地を中心に操業する日本漁船に乗り組む外国人漁船員の配乗等に関する調書」(以下「配乗調書」という。)の提出を受けて審査することとされていた。(乙全2,3)ウ原告らは,P12連合会(以下「P12」という。)を介して,P13協議会(以下「P13」という。)に対し,本件各船舶へ 配乗調書」という。)の提出を受けて審査することとされていた。(乙全2,3)ウ原告らは,P12連合会(以下「P12」という。)を介して,P13協議会(以下「P13」という。)に対し,本件各船舶への外国人漁船員(本件外国人漁船員らを含む。)の乗下船等に関する業務を行うための海外事務所の登録を行った。(争いがない)その上で,原告らは,本件対象期間を通じ,本件部長通達及び本件課長通達の取扱いに従い,本件外国人漁船員らを本件各船舶に乗船させるに際し,それぞれその配乗調書を関東運輸局に提出した。その配乗調書には,①原告ら漁業者の名称,所在地,海外事務所の名称,所在地,②外国人漁船員を配乗する漁船である本件各船舶の船名,漁船登録番号等,③本件各- 23 -船舶に乗船する外国人漁船員である本件外国人漁船員らの氏名,生年月日,船員手帳番号,国籍等,④本件外国人漁船員らに係る労働協約の有無等が記載されていた。(争いがない)エ船員は,船員手帳を受有しなければならず(船員法50条1項),船員手帳の交付申請に当たっては,船舶所有者の発行する船員としての雇用関係(雇用の予約を含む。)を証する書面を添付しなければならない(船員法施行規則29条1項1号)とされているところ,本件外国人漁船員らが船員手帳の交付を申請する際には,原告らが本件外国人漁船員らについて発行する「雇用(予約)証明」又は「雇用契約(予約)証明書」と題する証明書(以下これらを併せて「本件雇用証明書」という。)が関東運輸局に提出されている。(争いがない)本件雇用証明書は,本件外国人漁船員らの氏名,生年月日,国籍,雇用契約期間,職種,乗組み船舶が記載されており,いずれも原告らが本件外国人漁船員らを本件各船舶の船員として雇用契約(又はその予約)を締結していることを証明する内容となっている。 ,生年月日,国籍,雇用契約期間,職種,乗組み船舶が記載されており,いずれも原告らが本件外国人漁船員らを本件各船舶の船員として雇用契約(又はその予約)を締結していることを証明する内容となっている。(乙A1の1から4まで,2の1から3まで,3の1及び2,4の1から3まで,乙B1,2の1から3まで,3,乙C1の1から4まで,乙D1の1及び2,2,3,乙E1の1から4まで,2の1及び2,3の1から3まで,乙F1の1及び2,2の1及び2,3,乙G1の1から4まで)オ原告らは,本件対象期間を通じ,P14組合(以下「P14」という。)P26支部との間で,本件各船舶に乗り組む外国人漁船員の雇用と労働条件について,P13の労働協約書のひな型(非居住船員用,乙全- 24 -4)に基づいて,労働協約を締結していた。(争いがない)カ以上のとおり,本件対象期間当時,船員職業安定法により船員労務供給事業は禁止され,供給元事業者が雇用した船員を供給先の船舶に乗船させ,供給先の指揮命令の下で働かせることはできないこととされ,違反者には,懲役刑も含む罰則が定められていた。そして,本件対象期間当時,我が国の漁業者が,我が国の船員労働行政上の枠組みに基づいて海外基地方式により外国人漁船員を漁船に乗り組ませるためには,当該漁船員を直接雇用することが要求されていたところ,原告らは,この枠組みに従って,海外事務所の登録を行い,本件外国人漁船員らを本件各船舶に乗船させるに際し,それぞれその配乗調書を関東運輸局に提出し,さらに,原告らが本件外国人漁船員らを直接雇用していること等を証明する内容の本件雇用証明書を発行しており,本件外国人漁船員らは,関東運輸局に対し本件雇用証明書を添付して船員手帳の交付申請をし,船員手帳の交付を受けていた。 そして,原告らは,P14P26支部 を証明する内容の本件雇用証明書を発行しており,本件外国人漁船員らは,関東運輸局に対し本件雇用証明書を添付して船員手帳の交付申請をし,船員手帳の交付を受けていた。 そして,原告らは,P14P26支部との間で,自らが使用者として,外国人漁船員の雇用や労働条件に関する労働協約書(非居住船員用)のひな型に基づく労働協約を締結していた。 このように,原告らは,本件対象期間当時の船員労働行政上の枠組みに従って,本件外国人漁船員らを自ら直接雇用して本件各船舶に乗船させていることを示す種々の行動をしていたことが認められる。 ( )本件外国人漁船員らの採用 ア国内手配会社がP8の場合における本件外国人漁船員らの具体的な採用手順は,次のとおりである。(甲全24,26)- 25 -①原告らが,P8に外国人漁船員の配乗等を電話又は依頼書等により依頼する。 ②P8が,原告らの依頼に基づき英文の連絡文書を作成し,外国マンニング会社に対し,ファクシミリにより送信する。 ③外国マンニング会社が,P8に対し,外国人漁船員の候補者リストをファクシミリにより送信する。 ④P8が,原告らに対し,上記候補者リストをファクシミリにより送信する。 ⑤原告らが,上記候補者リストの中から乗船させる漁船員を決定し,P8に対し,その結果と併せて乗船日及び乗船地を連絡する。 ⑥P8が,原告らの決定等の内容に基づき英文の連絡文書を作成し,外国マンニング会社に対し,ファクシミリにより送信する。 ⑦外国マンニング会社が,外国人漁船員を前記乗船日までに乗船地へ派遣する。 イ国内手配会社がP9の場合における本件外国人漁船員らの具体的な採用手順は,次のとおりである。(甲全3,6,証人P15,証人P16,原告ら代表者)①原告らが,P9に対し,乗船する船名,乗船日,乗船する港,船員 がP9の場合における本件外国人漁船員らの具体的な採用手順は,次のとおりである。(甲全3,6,証人P15,証人P16,原告ら代表者)①原告らが,P9に対し,乗船する船名,乗船日,乗船する港,船員の人数,職種等を電話で連絡して配乗手配を依頼する。 ②P9が,外国マンニング会社に対し,船主の名前,船名,必要な船員の人数と職種,航海する期間等について連絡する。P9の担当者は,原告らの担当者や漁労長と打ち合わせをして原告らの要望を綿密に確認す- 26 -る。 ③外国マンニング会社が,ストックリストに登録されている船員の中から候補者を選び,P9の担当者と一緒に面接をして,候補者を絞り込み,原告らの要望に合わせた人数分の船員名簿を作成し,それをP9に送付する。 ④P9が,原告らに対し,上記船員名簿を送付する。 ⑤外国マンニング会社が船員名簿に載せた船員について,原告ら又は原告らの意向を受けたP9が,経験不足等の理由で名簿から削除することがある。また,船員の人選について外国マンニング会社とP9とで意見が食い違うときは,原告らを交えた三者間協議を行って解決する。 ウ国内手配会社がP11(P10)の場合における本件外国人漁船員らの具体的な採用手順は不明であるが,原告らとP10との間で締結された配乗管理委託契約書(甲全20,22。以下「本件配乗管理委託契約書」という。)によれば,P10が船員の氏名,国籍,年齢,乗船経歴等の明細を「配乗船員承認申請書」に記載して原告らに提出し,原告らが「配乗船員承認書」に捺印してその配乗手配を承認すると定められている。(甲全20,22)エ本件外国人漁船員らは,外国マンニング会社に常時雇用されている者の中から選ばれるのではなく,特定の船主の所有する特定の船舶に乗り組んで稼働することについて,1航海ごとの乗船 (甲全20,22)エ本件外国人漁船員らは,外国マンニング会社に常時雇用されている者の中から選ばれるのではなく,特定の船主の所有する特定の船舶に乗り組んで稼働することについて,1航海ごとの乗船から下船までの期間を対象に雇用契約を締結するものであるところ(甲15,証人P16,原告ら代表者),原告らが行う遠洋まぐろ漁業は,遠洋の船上という閉鎖的空間にお- 27 -いて,長期間にわたり漁労作業を行うという特殊性があり,どのような船員を乗船させるかは,漁業の効率に大きな影響があり,それのみならず乗組員の生命身体の安全への配慮という観点からも,原告らにとって非常に重要な事柄であるため(争いがない),前記アからウまでのとおり,本件外国人漁船員らの採用に当たっては,原告らの意向が尊重されており,まずは外国マンニング会社が外国人漁船員らを選抜して船員名簿を作成しているものの,原告らが希望しない外国人漁船員については,最終的にはその船員名簿から外され,本件各船舶には乗船できないことになっている。 このことからすれば,原告らは,本件外国人漁船員らの採用の最終決定権を有していたものと認められる。 ( )本件外国人漁船員らの賃金の額の決定及び保険料の負担 外国人漁船員の賃金のうち,基本給の額については職種と経験年数によって基準となる相場があり,通常はこれによって決まっているものの,これを超える額にするときには原告らの従業員である漁労長の同意が必要とされていた。また,賃金のうち賞与の額については,一定の枠はあるものの,漁労長がその航海の終了時に判断して決定することになっている。以上からすると,原告らは,本件漁船員らの賃金の最終決定権を有していたものと認められる。 また,原告らは,本件外国人漁船員らの海外旅行傷害保険等の保険料を負担していることが認め ることになっている。以上からすると,原告らは,本件漁船員らの賃金の最終決定権を有していたものと認められる。 また,原告らは,本件外国人漁船員らの海外旅行傷害保険等の保険料を負担していることが認められる。(甲全20,22,証人P15,証人P16)( )原告らから本件各手配会社への本件金員の支払及び本件外国人漁船員ら - 28 -に対する支払関係ア国内手配会社がP9の場合(ア)P9が原告P1にあてた平成14年6月25日付け「P17インドネシア船員賃金表」と題する書面(乙E4)には,インドネシア共和国(以下「インドネシア」という。)の国籍を有する漁船員(以下「インドネシア人船員」という。)それぞれの月額基本給及び月額ボーナス(推定)とその合計並びに月額管理費,派遣経費,寒冷地手当等の各種手当の額が諸経費として記載された上,「毎月の送金は,基本給合計,管理費合計,ボーナス引当金として一人US$100の合計をお送り頂く様お願い致します。」との記載があり,P9が原告P1に対し,P17の乗組員のインドネシア人船員の管理費と区別して,毎月,基本給やボーナス引当金という賃金の送金を依頼する内容となっている。(乙E4)(イ)P9から原告らに対する請求書については,例えば,平成14年7月22日付けの請求書(乙E5の3)には,請求金額に続いて,「但し,P17インドネシア船員7月分」として,「基本給」,「ボーナス引当」,「待機手当」及び「管理費」の各項目についてそれぞれその内訳の金額が記載されている。(乙E5の3)(ウ)原告らは,P9に対し,毎月10日ころ,請求された金額を送金しており,P9からP18へは,基本給部分をその前月25日ころに送金し,P18から毎月外国人漁船員らに支払われ,また,賞与引当部分については,P9でプールし,1 毎月10日ころ,請求された金額を送金しており,P9からP18へは,基本給部分をその前月25日ころに送金し,P18から毎月外国人漁船員らに支払われ,また,賞与引当部分については,P9でプールし,1航海の操業が終わり精算をするときに賞- 29 -与としてP18へ送金し,P18から外国人漁船員らにそのまま賞与として支払われていた。(乙E7,証人P15)イ国内手配会社がP11(P10)の場合(ア)本件配乗管理委託契約書には,別途覚書に定める業務委託料を支払う旨の定めがあり(第3条),その覚書(甲全21,23)には,各船員ごとの「給与・概算賞与」と「諸経費」と「管理手数料」を区別して記載した一覧表が添付されている。また,P10名義による請求書(乙C3の1から11まで)においても,「給与・概算賞与」と「管理手数料」と「諸経費」が区別されて請求されている。(甲全20から23まで,乙C3の1から11まで)(イ)P11(P10)が原告らから受領した本件外国人漁船員らの「給与」は,精算の準備が整いしだい,外国マンニング会社に対して送金され,「概算賞与」については,漁労長の査定により金額が確定されしだい,外国マンニング会社に対して送金されていた。(甲全32)ウ国内手配会社がP8の場合(ア)P8の原告らに対する請求書は,毎月の「請求書(概算)」(乙A6の1から4まで)においては,概算単価及び概算請求額しか記載されていないが,1航海終了時の「請求書(精算)」(乙A7の1から15まで)においては,各外国人漁船員ごとに,その航海期間全体の給料及びボーナスの額が雇用管理料と区別されて記載されている。(乙A6の1から4まで,乙A7の1から15まで)(イ)P8は,外国マンニング会社への支払を,シンガポールにあるP8- 30 -の子会社であるP ナスの額が雇用管理料と区別されて記載されている。(乙A6の1から4まで,乙A7の1から15まで)(イ)P8は,外国マンニング会社への支払を,シンガポールにあるP8- 30 -の子会社であるP19(以下「P19」という。)を介しPTE.LTD.て行っており,原告らから毎月受領する金員をP8から直接外国マンニング会社へ毎月送金することはせず,外国人漁船員らの下船時の精算までの間は,預り金として管理しており,外国マンニング会社が毎月外国人漁船員らに対して支払う資金は,P19が用意している。(甲全26)エ前記アからウまでの事実によれば,本件各手配会社は,原告らに対し,請求書等において,本件外国人漁船員らの労務提供に関する金員である本件金員については,本件各手配会社の収入となる管理料などとは区別してその明細を示しており,原告らはその請求に応じて,本件各手配会社に対し毎月本件金員を送金し,本件各手配会社は,本件金員のうち給与相当額については直接又は子会社を介して外国マンニング会社に毎月送金し,外国マンニング会社が本件外国人漁船員らに対して給与を毎月支払っていたことが認められる。また,原告らが毎月送金した本件金員のうち賞与引当部分については,1航海が終了し本件外国人漁船員らが下船する月まで,本件各手配会社が管理し,航海終了時に原告らの漁労長が決定した賞与額に基づき,原告らと本件各手配会社との間で精算の上,本件各手配会社から外国マンニング会社へ賞与として送金し,外国マンニング会社が本件外国人漁船員らに対して賞与として支払っていたことが認められる。 以上によれば,本件外国人漁船員らに対する給与及び賞与については,直接的には外国マンニング会社が支払っていたものではあるが,原告らと本件各手配会社との間で給与や賞与として決められた額をそのま れる。 以上によれば,本件外国人漁船員らに対する給与及び賞与については,直接的には外国マンニング会社が支払っていたものではあるが,原告らと本件各手配会社との間で給与や賞与として決められた額をそのまま支払っ- 31 -ていたにすぎず,原告らが,本件各手配会社及び外国マンニング会社を介して,本件外国人漁船員らに対し本件金員を支払っていたということができる。 ( )インドネシアの労働者派遣制度等 アインドネシアの法人であるP18は,P9による本件外国人漁船員らの配乗に関与していた外国マンニング会社のうちの1社である。P18は,インドネシアの労働大臣から労働者派遣業務許可を得ており,最新では,平成12年(2000年)5月31日付けで,KEP-204/MEN/1999「インドネシア人労働者の海外への派遣に関して」のインドネシア労働大臣決定(乙全10。以下「海外派遣大臣令」という。)に基づいて,海外へインドネシア人労働者を派遣する業務を行うことができる許可証(SIUP-PJTKI)を取得していた。インドネシアの制度では,この許可証がないと事業としてインドネシア人労働者を海外へ派遣することはできないこととされていた。P18の代表者である証人P16は,平成8年から同13年までP20協会の会長をし,インドネシア人船員の海外派遣に関する法令の立案にも関わっており,政府の定めた法令に基づいて最善のビジネスを行いたいと考え,高額の資本金や保証金,設備などを整え,前記許可証(SIUP-PJTKI)を取得して,日本のまぐろ漁船にインドネシア人船員を派遣していたものである。(甲全14,乙全10の1及び2,証人P16)イ海外派遣大臣令1条2項は,「インドネシア人労働者(TKI)とは,労働契約に基づき,一定期間海外で働くインドネシア国籍の男女のことを たものである。(甲全14,乙全10の1及び2,証人P16)イ海外派遣大臣令1条2項は,「インドネシア人労働者(TKI)とは,労働契約に基づき,一定期間海外で働くインドネシア国籍の男女のことを- 32 -いう。」と,同条3項は,「インドネシア人労働者船員(船員TKI)とは,海事労働契約に基づき,一定期間,国際航行用の外国船舶あるいは国内/国際航行用の外国船舶で働く,船員技能資格を持ったインドネシア人労働者のことをいう。」と,同条4項は,「インドネシア人労働者派遣会社(以下「TKI派遣会社」(PJTKI)という。)とは,国外へTKIの派遣業務を行う株式会社あるいは組合といった形態の団体のことをいう。」と,同条5項は,「TKI派遣業者の許可証(SIUP-PJTKI)とは,TKI派遣会社が国外へTKI派遣業務を行うことができる許可証のことをいう。」と,同条6項は,「TKIサービスの利用者とは,インドネシア人労働者を雇用する,外国の政府機関,法人,個人のことをいう。」と,同条14項は,「労働契約書とは,TKIと利用者との間で取り交わす契約書で,双方の権利と義務が記されている。」と,同令64条は,「船員TKIの派遣は,TKI派遣システムの枠内で実施され,関係する政府機関及び民間団体間で調整される。」とそれぞれ規定している。 (乙全10の1及び2)ウ前記ア及びイの事実からすれば,P18は,本件対象期間当時,海外派遣大臣令に基づくインドネシア人労働者派遣業の許可証(SIUP-PJTKI)を受けて,TKI派遣会社(PJTKI)として,日本のまぐろ漁船にインドネシア人船員を派遣する事業を営んでいたところ,同大臣令に基づくインドネシア人労働者派遣制度においては,派遣されるインドネシア人労働者を雇用するのは,労働者の派遣を受けるTKIサービス利用 船にインドネシア人船員を派遣する事業を営んでいたところ,同大臣令に基づくインドネシア人労働者派遣制度においては,派遣されるインドネシア人労働者を雇用するのは,労働者の派遣を受けるTKIサービス利用者である外国の法人等であり,インドネシアのTKI派遣会社ではないと- 33 -されていることが認められる。 ( )P18と本件外国人漁船員らが作成した船員雇用契約書の内容 アP18と本件外国人漁船員らのうちの1人であるP21がそれぞれ署名して2003年3月31日付けで作成された船員雇用契約書(甲全15。 以下「本件船員雇用契約書」という。)には,「本契約は,船員と,P22の所有者のエージェントとしての()PastheAgentforeignShipOwner18との間で締結された」旨が記載され,船員氏名やその生年月日等の記載に続いて,「以下の条件にしたがって,船員がP22(船籍:日本,運航:P1株式会社)に乗船することが合意された」と記載されている。そして,契約条項の中には,要旨次のような条項が含まれている。 (2項)雇用期間は,効力発生日から18箇月間とし,漁労長の判断により延長又は短縮する。 (3項b)賞与の額は,本契約終了後に,漁労長の判断により決定される。 (7項)船員は,漁労長その他の上級船員の指示に従う義務がある。 (10項)船員が正当な理由なく出頭しなかった場合又は酒気を帯びている状態にある場合は,乗船するのに不適切であるとみなされ,エージェント又は漁労長は本契約を終了させて,当該船員の賃金は支払われないものとすることができる。 契約書の各条項においてP18は「」と記載され,契約書末theAGENT尾のP18の署名欄の肩書にも「」と記載されている。(甲THEAGENT全15)イこのように,本件船員 できる。 契約書の各条項においてP18は「」と記載され,契約書末theAGENT尾のP18の署名欄の肩書にも「」と記載されている。(甲THEAGENT全15)イこのように,本件船員雇用契約書は,P18と船員が署名して作成され- 34 -たものであるが,同契約書において,P18は,P22の船主のエージェント()であると明記され,P18が雇用主であるとか船員を雇用Agentするといった記載はされていないこと,また,原告らの従業員である漁労長が,雇用期間の延長又は短縮,賞与の額の決定,更には一定の場合には契約を終了させることまでできることが定められていて,漁労長に大きな権限が与えられていることが認められる。 争点1(雇用関係)について( )ア前記1の認定事実(以下「認定事実」という。)によれば,本件対象 期間当時,船員職業安定法により船員労務供給事業は禁止され,原告らが主張するような外国マンニング会社が船員を雇用して,原告らの漁船に乗船させて原告らの指揮命令の下で働かせることはできず,違反者には,懲役刑も含む罰則が定められていた。そして,本件対象期間当時,我が国の漁業者が,我が国の船員労働行政上の海外基地方式の枠組みに基づいて外国人漁船員を漁船に乗り組ませるためには,当該漁船員を直接雇用することが要求されていたところ,原告らは,本件対象期間を通じて,本件外国人漁船員らを雇用していることを証する内容の配乗調書や本件雇用証明書を作成して関東運輸局に提出するなど,まさに法令や海外基地方式の枠組みに従って本件外国人漁船員らを乗船させていることを示す種々の行動をしていたものである。そうすると,これらの客観的事実によれば,原告らが本件対象期間を通じて,本件外国人漁船員らを雇用して本件各船舶に乗船させていたことが強く推認 乗船させていることを示す種々の行動をしていたものである。そうすると,これらの客観的事実によれば,原告らが本件対象期間を通じて,本件外国人漁船員らを雇用して本件各船舶に乗船させていたことが強く推認されるというべきである。 イまた,認定事実によれば,原告らは,本件各船舶に乗船させる本件外国- 35 -人漁船員らの採用やその賃金についての最終決定権を有しており,本件外国人漁船員らについての保険料も負担していたことが認められるところ,これらの事実もまた,原告らが雇用主であることを強く推認させる事実であり,他方で,仮に外国マンニング会社が雇用主であるとすると,採用や賃金を決定する最終決定権がなく,その保険料も支払っていないのは不自然であるというべきである。 さらに,認定事実によれば,本件各手配会社は,原告らに対し,本件金員,すなわち本件外国人漁船員らの給与,賞与等の明細を雇用管理料などとは区別表示して請求している。仮に,外国マンニング会社が本件外国人漁船員らの雇用主であるとすれば,外国マンニング会社が本件外国人漁船員らに対しいくらの給与や手当を支払うかは原告らとは関係のないことであり,殊更その給与や手当などの明細を原告らに対して示す必要はなく,むしろ管理費や手数料なども含めた「派遣料」だけを記載すれば足りるはずである。そうすると,本件各手配会社があえてこのような方式で本件金員の請求をしていることも,原告らが雇用主であることを推認させるものというべきである。 そして,認定事実のとおり,原告らは,毎月,本件各手配会社から請求される本件金員を本件各手配会社に対して送金することにより,本件各手配会社や外国マンニング会社を介して,本件外国人漁船員らに対し,本件各船舶における労務提供の対価としての給与,賞与等の賃金を支払っていたということができる。 会社に対して送金することにより,本件各手配会社や外国マンニング会社を介して,本件外国人漁船員らに対し,本件各船舶における労務提供の対価としての給与,賞与等の賃金を支払っていたということができる。 前記ア及びこれらのことからすれば,原告らは,本件対象期間当時,本- 36 -件外国人漁船員らを雇用して,本件各船舶に乗船させていたと認めるのが相当である。 ウなお,認定事実によれば,P9が利用していた外国マンニング会社のうちの1社であるP18は,海外派遣大臣令に基づくTKI派遣業務の許可を受けて,同大臣令に基づいてインドネシア人船員らを本件各船舶へ派遣していたと認めることができるところ,同大臣令に基づくTKI派遣の場合,TKI派遣制度の利用者,すなわち派遣を受ける海外の法人等がインドネシア人労働者の雇用主であるとされていることは,原告らが雇用主であるとの前記の認定を裏付けるものということができる。 ( )原告らの主張について ア(ア)原告らは,海外基地方式の利用を書式上装ったにすぎず,関東運輸局長に提出された本件雇用証明書は,原告らと本件外国人漁船員らとの間の雇用契約の存在を裏付ける証拠ではないと主張する。 しかしながら,海外基地方式は,我が国の船員労働行政において,従来,日本漁船に外国人漁船員を受け入れないよう指導されてきたが,海上漁場を確保するため外国人漁船員の受入れが求められていた状況を踏まえ,一定の制限の下,外国人漁船員を受け入れることとして導入された方式であり,しかも,本件部長通達には,「その取扱いに当たっては厳正な審査を行」う旨記載されているのであるから,形式上,海外基地方式に沿った書類が提出されている以上,実体を伴っているものと推認するのが相当である。また,認定事実のとおり,船員法上は,船舶所有者と船員との間で雇入 旨記載されているのであるから,形式上,海外基地方式に沿った書類が提出されている以上,実体を伴っているものと推認するのが相当である。また,認定事実のとおり,船員法上は,船舶所有者と船員との間で雇入契約が締結されることが前提とされており,我が- 37 -国の国民が我が国の法令の枠組みに従って行動することは当然のことであるということができ,しかも,旧船員職安法53条に違反した場合には懲役刑を含む罰則が規定されていたのであるから,業界団体にも所属し,何隻もの船舶で遠洋まぐろ漁業を展開している原告らが,虚偽の雇用証明書を軽々に作成するとは考え難いところである。 なお,原告らは,本件各船舶は,公海か外国の排他的経済水域で操業するものであり,本件外国人漁船員らは,本件各船舶に外国で乗り組み,操業終了後も日本国内に一度も入国することなく外国の港で下船するのであるから,そのような本件について旧船員職安法53条が適用されるかは疑問であると主張する。しかしながら,本件のような場合において,同条の適用が除外されるとする法律上の根拠は見当たらず,海外基地方式の枠組みは,原則として外国人漁船員を受け入れないという国の政策の中で,同法に抵触することなく,一定の条件の下に外国人漁船員を配乗させることができるようにしたものと理解されており(甲全26),外国人漁船員についても同条の規定の適用があることが前提となっているというべきである。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 (イ)また,原告らは,P14P26支部との間の労働協約の締結及びP13への海外事務所の登録についても,いずれも形式的なものにすぎないと主張する。しかし,原告らが自ら外国人漁船員の使用者であるとして労働協約を締結したことは,原告らの外国人漁船員を雇用する意思の表れとみるのが自 務所の登録についても,いずれも形式的なものにすぎないと主張する。しかし,原告らが自ら外国人漁船員の使用者であるとして労働協約を締結したことは,原告らの外国人漁船員を雇用する意思の表れとみるのが自然である。また,仮に,原告らの海外事務所が形式的- 38 -なものであったとしても,直ちに原告らと外国人漁船員との間の雇用関係についてまで形式的なものであったということはできず,前記認定を左右するものではない。 そうすると,原告らの上記主張は,いずれも採用することができない。 イ(ア)原告らは,外国マンニング会社が本件外国人漁船員らと雇用契約を締結している旨主張し,その一例として本件船員雇用契約書を提出している。そして,証人P16及び証人P15は,いずれも外国マンニング会社が外国人漁船員を雇用していたと証言し,原告ら代表者も同旨の供述をしており,同人らの陳述書やP8の取締役の質問調書(甲全26)にも同旨の記載があること,原告らの船舶に乗船している外国人漁船員らが陳述書やアンケートにおいて,外国マンニング会社に雇用されているとの認識を記載していることなどから,外国マンニング会社と本件外国人漁船員らとの間に雇用契約の意思の合致があり,原告らと本件外国人漁船員らとの間にはそのような意思の合致はない旨主張している。 (イ)しかしながら,認定事実のとおり,本件船員雇用契約書には,「本asthe契約は,船員と,P22の所有者のエージェントとしての()P18との間で締結された」旨の記載があり,AgentforeignShipOwner契約書の各条項や末尾の署名においてもP18が一般に「代理人」を意味することが多い「」である旨明記されている。また,同契約書Agentでは,冒頭の船員の氏名等に続いて,「以下の条件にしたがって船員がP22( や末尾の署名においてもP18が一般に「代理人」を意味することが多い「」である旨明記されている。また,同契約書Agentでは,冒頭の船員の氏名等に続いて,「以下の条件にしたがって船員がP22(船籍:日本,運航:P1株式会社)に乗船することが合意された」と記載されており,原告らの会社名や船名が記載されている一方で,- 39 -P18を雇用主と表す記載やP18が船員を雇用するという記載はされていない。そして,契約条項には,原告らの従業員である漁労長が,雇用期間の延長や短縮の決定,賞与額の決定,更には一定の場合に同契約を終了させる権限まで有するとの規定もある。このように,本件船員雇用契約書は,P18を雇用主とする雇用契約書であるとは直ちに考え難い内容となっている。 この点につき,原告らは,本件船員雇用契約書における「」とAgentは「代理人」ではなく,原告らのために事務を取り扱うものを意味するにすぎないと主張し,証人P16は,特に意味もなくこのような記載をすることが多いなどと証言する。しかし,上記主張及び証言を裏付ける証拠は提出されておらず,むしろ,証人P16の証言によれば,P18は,海外派遣大臣令に基づく派遣業の許可証を受けて,TKI派遣会社としてインドネシア人船員の海外派遣事業を行っていたものであると認められるところ,認定事実のとおり,TKI派遣の枠組みにおいてはインドネシア人船員の雇用主はTKIサービス利用者,すなわち海外の法人である原告らであるとされているのであるから,本件船員雇用契約書においてP18があえて「」と表現されていることは,P18がAgent原告らの「代理人」として契約を締結していることを示すものか,雇用主ではなくTKI派遣会社であることを示すものと理解するのが自然である。 なお,原告らは,海外派遣大臣 ることは,P18がAgent原告らの「代理人」として契約を締結していることを示すものか,雇用主ではなくTKI派遣会社であることを示すものと理解するのが自然である。 なお,原告らは,海外派遣大臣令がP18等の外国マンニング会社に適用されるか否かは不明であり,P18による労働者の海外派遣業務が- 40 -同大臣令に基づいて行われたかどうかも不明であるなどと主張するが,原告申請の証人P16の証言内容に明らかに反しており採用できない。 また,原告らは,P18とは別の外国マンニング会社であるP23という会社が作成した契約書(甲全37)には「」との記載がないAgentなどとも主張するが,同契約書は,本件対象期間当時に作成されたものではなく,原告らに対し,本件納税告知処分がされ,異議決定や審査請求に係る裁決がされた後の平成18年7月に作成されたものであるから前記の認定を左右するものということはできない。 (ウ)そして,前記(イ)の事実に加え,原告らはP18の顧客であるという利害関係があることなどを併せ考えると,P18が本件外国人漁船員らを雇用している旨の証人P16の証言は信用することができない。また,外国マンニング会社が本件外国人漁船員らを雇用している旨の証人P15の証言及び陳述並びにP8の取締役の質問調書(甲全26)の内容についても,前記の認定事実や,P9及びP8が原告らとの利害関係を有していることなどからすれば,直ちに信用することはできず,同様に,原告ら代表者の供述についても信用することができない。 (エ)また,外国人漁船員らの陳述書やアンケートは,本件訴え提起後に本件訴訟の証拠として提出するために原告らの側で作成されたものである上,一部のアンケート(甲全8の1,9の1,10の1,11の1)においては,氏名,乗船期間以外は,同じ回 ケートは,本件訴え提起後に本件訴訟の証拠として提出するために原告らの側で作成されたものである上,一部のアンケート(甲全8の1,9の1,10の1,11の1)においては,氏名,乗船期間以外は,同じ回答が活字で記載されていること,他のアンケート(甲全28の1から4まで,29の1及び2,30の1から11まで,31の1から13まで)においては,「面接は,- 41 -いつ,どこで,何回くらいしましたか。」,「あなたに毎月の給料を支払うのは誰ですか。」などと,直接的には外国マンニング会社と外国人漁船員との間でやり取りが行われたことが明らかな質問事項を並べた上で,11番目の質問で「誰に雇われていると思っていましたか」という質問をするという形式となっており,雇用主が外国マンニング会社であるという回答を誘導する内容になっていることなどに照らせば,上記アンケートの結果から雇用関係についての合理的な意思を認定することはできないというべきである。 (オ)以上によれば,原告らの前記(ア)の主張は採用できない。 争点( )(原告らは国内源泉所得の「支払をする者」か)について ( )法212条1項の「支払をする者」とは,具体的に支払行為をする者を いうのではなく,支払対象となる国内源泉所得の支払義務を自ら負う者をいうものと解するのが相当である。前記2によれば,原告らは,雇用契約に基づき本件外国人漁船員らに対して本件金員の支払をすべき義務を自ら負っている者であるから,国内源泉所得である本件金員の「支払をする者」に該当する。 また,認定事実によれば,原告らが各手配会社に対し毎月本件金員を送金することによって,本件各手配会社(この項においてはP8の子会社であるP19を含む。)及び外国マンニング会社を介して,各船員に対し合意された額の給与が毎月確実に支払わ 配会社に対し毎月本件金員を送金することによって,本件各手配会社(この項においてはP8の子会社であるP19を含む。)及び外国マンニング会社を介して,各船員に対し合意された額の給与が毎月確実に支払われ,下船時には賞与等が確実に支払われる仕組みとなっていることが認められる。したがって,原告らは,本件各手配会社及び外国マンニング会社を介して,本件外国人漁船員らに対し,その人的- 42 -役務の提供の対価である本件金員を支払っているというべきであり,本件各手配会社及び外国マンニング会社は,本件金員の支払事務に関与しているにすぎないものというべきである。 そして,源泉徴収制度は,納税義務者の事後納税によって生じる煩雑な事務を軽減してその便宜を図るとともに,能率的かつ確実に租税を徴収するために採用されている制度であるから,その制度趣旨からすれば,本件金員が徴収義務者である原告らの手を離れる時点において,原告らが源泉徴収をして納付することが,納税義務者である本件外国人漁船員らの便宜を図ると同時に,租税を能率的かつ確実に徴収することができる合理的な方法である。 そうすると,本件において法212条1項にいう「支払の際」とは,原告らから本件各手配会社への送金時であると解するのが相当である。 ( )この点,原告らは,①原告らの本件各手配会社への支払が賃金の支払で あるとすると,船員法53条の賃金直接払の原則に反している,②P9からP18への送金は,原告らからP9への送金の前であり,賞与引当金は下船後の清算時までP9の口座で保管されていること,原告らのP10への支払と外国マンニング会社の外国人漁船員らに対する支払との連続性がないこと,P8から外国マンニング会社へは直接送金がされておらず,P19が外国マンニング会社へ送金していて,P8からP19への送金は本 払と外国マンニング会社の外国人漁船員らに対する支払との連続性がないこと,P8から外国マンニング会社へは直接送金がされておらず,P19が外国マンニング会社へ送金していて,P8からP19への送金は本件外国人漁船員らの下船後であることなど,本件各手配会社は,原告らからの送金を,これを受領した月の本件外国人漁船員らの月額給料や賞与と取り扱っていないから,原告らが本件各手配会社に本件金員を支払ったとしても,本件外国人漁船員らに対する「支払をする者」に該当しない旨主張する。 - 43 -しかしながら,認定事実のとおり,本件各手配会社は,原告らに対し,本件金員,すなわち本件外国人漁船員らの賃金(給与,賞与及び手当)を管理料等とは区別表示して請求しており(なお,P8は,毎月の請求書においては区別していないものの,最終的に精算の際の請求書において明確に区別して表示していることからすれば,他社と同様に区別して請求していると解することができる。),原告らは,本件各手配会社に送金する金額のうち,賃金に相当する部分,すなわち本件金員については雇用契約に基づく本件外国人漁船員らの賃金の支払として本件各手配会社へ送金し,本件各手配会社においても賃金として受領していたものと認めるのが相当である。そして,原告らが本件各手配会社へその請求に応じて送金することにより,本件各手配会社及び外国マンニング会社を介して本件外国人漁船員らに対し合意された賃金が確実に支払われる仕組みが構築されていることからすれば,仮に,原告らの支払方法が賃金直接払の原則に反し,また,本件各手配会社と外国マンニング会社間の送金について原告らが主張するような事情があったとしても,原告らから本件各手配会社への送金が,原告らによる雇用契約に基づく賃金の支払という性質を失うものではないから,この点の原告 マンニング会社間の送金について原告らが主張するような事情があったとしても,原告らから本件各手配会社への送金が,原告らによる雇用契約に基づく賃金の支払という性質を失うものではないから,この点の原告らの主張は採用することができない。 争点( )(本件外国人漁船員らは「非居住者」か)について ( )法令で人の住所について法律上の効果を規定している場合,異なる解釈 をすべき特段の事由がない限り,その住所とは,各人の生活の本拠(民法22条)をいい,ある場所がその者の住所であるか否かは,社会通念に照らし,その場所が客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かによって判断- 44 -されるべきである(最高裁昭和29年(オ)第412号同年10月20日大法廷判決・民集8巻10号1907頁,最高裁平成9年(行ツ)第78号同年8月25日第二小法廷判決・裁判集民事184号1頁参照)。 そして,法2条1項3号の「住所」の意義については,民法22条の「住所」と異なる解釈をすべき特段の事由があるとは認め難いことからすれば,法2条1項3号の「住所」は,社会通念に照らし,その場所が客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否か,すなわちその者がその地に定住する者として,その社会生活上の諸問題を処理する拠点となる地であるか否かによって判断されるべきである。 遠洋漁業船など長期間国外で運航する船舶の乗組員は,通常その船舶内で起居し,その生活の相当部分を公海上で過ごすことが多いと考えられるが,船舶内は,その者にとってあくまで勤務場所にすぎないのであって,その乗組員がその地に定住する者としてその社会生活上の諸問題を処理する拠点としての生活の本拠は,その乗組員が生計を一にする配偶者や親族の居住地,あるいはその乗組員が,船舶で勤務している期間以外に通常滞在して生活 その地に定住する者としてその社会生活上の諸問題を処理する拠点としての生活の本拠は,その乗組員が生計を一にする配偶者や親族の居住地,あるいはその乗組員が,船舶で勤務している期間以外に通常滞在して生活する場所であると解するのが相当である。所得税基本通達3-1が,「船舶又は航空機の乗組員の住所が国内にあるかどうかは,その者の配偶者その他生計を一にする親族の居住している地又はその者の勤務外の期間中滞在する地が国内にあるかどうかにより判定するものとする。」と規定しているのは,上記と同趣旨をいうものと解され,その取扱いには合理性があると認められる。 また,法2条1項3号にいう「居所」についても,民法23条の「居所」- 45 -と別異に解する特段の事由は認め難いところ,同条の「居所」とは,人が多少の期間継続して居住してはいるが,土地との密着度が生活の本拠といえる程度に達していない場所をいうと解するのが相当である。居所についても,住所と同様,一定の土地に居住することが前提とされているのであって,遠洋漁業船のようにそこで長期間起居する場合であっても,船舶はその乗組員にとって勤務場所にすぎず,居所とはなり得ないというべきである。 ( )本件外国人漁船員らは,いずれも外国籍の者であり,専ら国外で本件各 船舶に乗船及び下船し,我が国に上陸することはないのであるから,その乗組員が生計を一にする配偶者や家族の居住地,あるいはその乗組員が本件各船舶で勤務している期間以外に通常滞在して生活する場所は,国外にあって国内にないことは明らかであり,また,多少の期間であっても国内に継続して居住することはないから,居所も国内にないことが明らかである。そうすると,本件外国人漁船員らの住所は,国内にはないと認められる。 したがって,本件外国人漁船員らは「居住者」ではないから 国内に継続して居住することはないから,居所も国内にないことが明らかである。そうすると,本件外国人漁船員らの住所は,国内にはないと認められる。 したがって,本件外国人漁船員らは「居住者」ではないから,法2条1項5号の「非居住者」に当たる。 ( )原告らは,本件各船舶は日本船籍であり日本国の主権が及ぶから「この 法律の施行地」(法2条1項1号)であり「国内」に当たることを前提に,本件外国人漁船員らは,所得税基本通達3-3,令14条1項1号により,国内に住所を有すると推定されるべきであり,また,本件外国人漁船員らは,1年以上も本件各船舶において生活しており,本件各船舶に「生活の本拠」であるところの「住所」があり,少なくとも「居所」があるから,「居住者」である旨主張している。 - 46 -しかしながら,法2条1項1号にいう「国内」とはこの法律の施行「地」とされていることや,同項2号において「国外」とはこの法律の施行地外の「地域」をいうとされていることからしても,「施行地」とは,地理的に一定の広がりのある地域(又は水域)を意味する概念と解するのが相当であり,動産であり移動する船舶それ自体は「国内」であるということはできない。 そうすると,船舶それ自体が「国内」に当たることを前提とする原告らの前記主張は,採用することができない。また,「住所」や「居所」も,前記のとおり地理的に土地と結びついた一定の場所に居住することを前提とした概念というべきであり,海上にあって移動する船舶は勤務場所にすぎないというべきであるから,この点からしても,原告らの主張は採用することができない。 争点( )(徴収すべき所得税額等に係る被告主張は適法か)について ( )被告主張額について ア証拠(乙全6,乙A6の1から4まで,7の1から15まで,8,9の ることができない。 争点( )(徴収すべき所得税額等に係る被告主張は適法か)について ( )被告主張額について ア証拠(乙全6,乙A6の1から4まで,7の1から15まで,8,9の1から17まで,10)によれば,調査報告書(乙A10)の原告P1のP8に対するP24に係る平成13年10月から同15年1月までの本件金員の支払額は,請求書等の資料に基づいて計算され,正確に記載されていることが認められる。 イ証拠(乙C3の1から11まで,4の1及び2,5,6)によれば,調査報告書(乙C6)の原告P3のP11(P10)に対するP25に係る平成13年2月から同13年12月までの本件金員の支払額は,請求書等の資料に基づいて計算され,正確に記載されていることが認められる。 - 47 -ウ証拠(乙全6,乙E4,5の1から15まで,6から8まで)によれば,調査報告書(乙E8)の原告P5のP9に対するP17に係る平成14年8月から平成15年9月までの本件金員の支払額は,請求書等の資料に基づいて計算され,正確に記載されていることが認められる。 エ本件各調査報告書(乙A10,乙B5,乙C6,乙D4,乙E8,乙F5,乙G2)は,いずれも東京国税局職員が,原告らに対する本件各手配会社の請求書,原告らの総勘定元帳等の原資料に基づき作成したものであるところ,その積算方法は合理的であると認められ,また,前記アからウまでのとおり,その一部について本件で証拠として提出されている本件各手配会社の請求書等と対照できる部分について確認すると,いずれも正確に記載されていることが認められることからすれば,その全体についても原資料から正確に作成したものと認めるのが相当である。 オそして,本件各調査報告書によれば,本件金員の額は,別表A-1,B-1,C-1,D-1, ることが認められることからすれば,その全体についても原資料から正確に作成したものと認めるのが相当である。 オそして,本件各調査報告書によれば,本件金員の額は,別表A-1,B-1,C-1,D-1,E-1,F-1及びG-1の各支払額欄記載のとおりであると認められる。原告らは,その支払の際,当該国内源泉所得について所得税を徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までに,これを国に納付しなければならないところ(法212条1項),国内源泉所得の支払の際に徴収して納付すべき所得税の額は,その国内源泉所得の金額に100分の20の税率を乗じて計算した額であり(法213条1項1号),同各別表の各税額欄(別表A-2,B-2,C-2,D-2,E-2,F-2及びG-2の各「徴収すべき所得税額」欄も同じ)記載のとおりとなるから,徴収すべき所得税額に関する被告の主張は適法である。 - 48 -( )原告らの主張について 原告らは,本件各調査報告書に記載された数字の当否について確認することは不可能であり,本件の各処分については6回も変更がされていることからすると誤りが含まれていると考えるのが合理的であって,その正確性について確信を得ることは不可能であるから,本件では課税標準の立証がない旨主張している。 しかしながら,前記( )のとおり,本件各調査報告書は,原告らが本件各 手配会社から受領した請求書や原告らの総勘定元帳に基づいて作成されており,被告が使用した為替換算レートや計算方法についても,本訴訟において被告は明らかにしているのであるから,原告らにおいてその数字の当否について確認することは可能であるというべきである。また,本件の各処分について変更がされた理由としては,本件金員の額の範囲をどう考えるか(例えば,待機料を含めるか否か),基礎資料として何を 字の当否について確認することは可能であるというべきである。また,本件の各処分について変更がされた理由としては,本件金員の額の範囲をどう考えるか(例えば,待機料を含めるか否か),基礎資料として何を用いるか,どの為替換算レートを使用するかなどの点について,処分行政庁の見解,国税不服審判所長の見解及び被告の見解が互いに異なっていたことによるものが主であり,そのことによって,本件各調査報告書の積算の正確性が否定されることにはならない。本件各調査報告書における支払額の積算方法には合理性があり,前記のとおり,正確性も認められるから,本件における課税標準の立証は十分であるというべきであり,原告らの主張は採用することができない。 争点( )(信義則違反)について ( )租税法規に適合する課税処分について,信義則の法理の適用により,当 該課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても,- 49 -租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては,同法理の適用については慎重でなければならず,租税法規の適用における納税者間の平等や公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れさせて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に,初めて同法理の適用の是非を考えるべきものである。そして,上記特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては,少なくとも,税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより,納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ,後に当該表示に反する課税処分が行われ,そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか,また,納税者が税務官庁の当該表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき 反する課税処分が行われ,そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか,また,納税者が税務官庁の当該表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮は不可欠のものであるといわなければならない(以上につき,最高裁昭和60年(行ツ)第125号同62年10月30日第三小法廷判決・判例時報1262号91頁参照)。 ( )証拠(甲全27,原告ら代表者)によれば,原告らが外国人漁船員を原 告らの船舶に乗船させるようになった平成2年度以降,横須賀税務署が原告らに対し何度か税務調査を行ったことがあったものの,平成16年に本件各処分をするまでの14年間,原告らに対し源泉徴収をすべきであるとの指摘をしたことはなく,納税告知処分もしなかったことが認められる。そして,原告らは,このことをとらえて,横須賀税務署から外国人漁船員について所得税の源泉徴収を行う必要はないとの見解が示されていると考えたことに落ち度はない旨主張している。 - 50 -しかしながら,単にこれまで相当期間の間に何度か税務調査が行われ,その際に横須賀税務署から指摘や処分がされなかったからといって,横須賀税務署が原告らに対し,所得税の源泉徴収の必要がないとの信頼の対象となる公的見解を示したということはできないから,この点の原告らの主張は採用することができない。 ( )原告らは,本件各処分が信義則に反することの根拠として,原告らが源 泉徴収を行うためには,本件外国人漁船員らの各人ごと,本件各月ごとに所得の額を把握しなければならないところ,本件外国人漁船員らに対する支払は専ら外国マンニング会社が行っており,原告らがそのような所得を把握することは不可能を強いるものであるとも主張している。 この原告らの主張は,要 なければならないところ,本件外国人漁船員らに対する支払は専ら外国マンニング会社が行っており,原告らがそのような所得を把握することは不可能を強いるものであるとも主張している。 この原告らの主張は,要するに,原告らに本件外国人漁船員らの国内源泉所得についての源泉徴収をさせるのは不可能を強いるものだということに尽きるのであって,そもそも信義則に違反するとの根拠になるとはいい難い。 また,原告らは,本件各手配会社からの請求を受けて,その請求書に各人ごとに区別して表示されている本件外国人漁船員らの基本給,賞与及び各種手当の金額を含めた金員を送金した時点において,それらの金額に所定の税率を乗じて集計することにより,納付すべき源泉所得税額を算出することができるものである。これらの計算に必要な情報には,原告らによって入手することが困難なものは含まれておらず,仮に必要な資料が手元になかったとしても,本件各手配会社に対して必要な資料や情報を求めれば,本件各手配会社がその提供を拒むような事情は認められないから,これらの資料や情報を入手することは十分に可能であったというべきである。 - 51 -したがって,この点の原告らの主張は,採用することができない。 争点( )(国税通則法67条1項ただし書の「正当な理由があると認められ る場合」に当たるか。)について( )国税通則法67条が規定する不納付加算税は,源泉徴収による国税が法 定納期限までに完納されなかったという客観的な事実があれば,原則として当該源泉徴収義務者に課されるものであり,これによって,法定納期限までに完納した者との間の不公平の実質的な是正を図るとともに,法定納期限までに完納すべき義務の違反の発生を防止し,源泉徴収制度の適正な運用の実現を図り,もって納税の実を上げようとする行政上の制裁措置 でに完納した者との間の不公平の実質的な是正を図るとともに,法定納期限までに完納すべき義務の違反の発生を防止し,源泉徴収制度の適正な運用の実現を図り,もって納税の実を上げようとする行政上の制裁措置である。 不納付加算税のこのような趣旨からすれば,例外的に不納付加算税を課さないこととする同条1項ただし書が規定する「正当な理由があると認められる場合」とは,法定納期限内に完納しなかったことについて源泉徴収義務者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,そのため,このような源泉徴収義務者に不納付加算税を課することが不当又は酷と評されるような場合であって,法定納期限内に完納した者との間の公平を損ねることになってもなおその制裁を免除するのが相当である場合をいうものと解するのが相当である。 ( )原告らは,源泉所得税を納付しなかったことについて何の落ち度もない から,納付しない納税者との間の客観的な不公平を実質的に是正し不納付による納税義務違反の発生を防止するという不納付加算税の趣旨に照らし,「正当な理由」があるというべきである旨主張する。 しかし,原告らは,前記のとおり,本件外国人漁船員らの船員手帳の交付- 52 -を申請するに際し,本件雇用証明書を提出して,原告らが本件外国人漁船員らを本件各船舶の船員として雇用していることを自ら証明し,また,非居住船員の使用者として,労働協約書を作成していることなどからすれば,本件金員の支払に際し,所得税を源泉徴収しなければならないことは十分認識することができたというべきである。また,原告らは,その主張を前提としても,単に過去において課税庁から納税告知処分等を受けたことがなかったというだけで,横須賀税務署から源泉徴収を行う必要はないとの見解が示されているものと考えたというのである。したがって,原告ら としても,単に過去において課税庁から納税告知処分等を受けたことがなかったというだけで,横須賀税務署から源泉徴収を行う必要はないとの見解が示されているものと考えたというのである。したがって,原告らは,単に法の不知又は誤解により源泉徴収義務を怠ったにすぎないというべきである。 そうすると,原告らの責めに帰することのできない客観的な事情があるということはできず,前記のような不納付加算税の趣旨に照らしても,原告らに不納付加算税を課することが不当又は酷と評されるような場合であるということはできないから,原告らに国税通則法67条1項ただし書の「正当な理由」があるとは認められない。 本件各処分の適法性( )本件各納税告知処分の適法性 以上のことからすれば,原告らと本件外国人漁船員らとの間には雇用関係があり,原告らの本件各手配会社に対する本件金員の支払は,本件外国人漁船員らの役務提供の対価の支払と認められ,非居住者に対する国内源泉所得の支払に該当する(法161条8号イ)。 そして,前記5のとおり,その支払額は,別表A-1,B-1,C-1,D-1,E-1,F-1及びG-1の各支払額欄記載のとおりであり,その- 53 -支払の際に徴収すべき所得税の額は,同各別表の各税額欄(別表A-2,B-2,C-2,D-2,E-2,F-2及びG-2の各徴収すべき所得税額欄も同じ)記載のとおりとなるところ,本件各納税告知処分(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決(ただし,原告P4については同年6月12日付け裁決書訂正書により一部訂正した後のもの)で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の各納税告知処分の一部減額処分で減額した後のもの)は,いずれもその額と同じかそれを下回るものであるから,適法である。 ( 取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の各納税告知処分の一部減額処分で減額した後のもの)は,いずれもその額と同じかそれを下回るものであるから,適法である。 ( )本件不納付加算税の賦課決定処分の適法性 適法な不納付加算税の額は,それぞれ,別表A-3,B-3,C-3,D-3,E-3,F-3及びG-3のとおり,本件各納税告知処分の額(国税通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)を基礎として,同法67条1項の規定を適用し,100分の10の割合を乗じて算定した金額であり,同各別表の「不納付加算税の額」欄記載のとおりである。本件賦課決定処分(ただし,国税不服審判所長が同18年5月29日付け裁決で一部取り消し,かつ,横須賀税務署長が同20年11月26日付けでした源泉所得税の不納付加算税の減額の各変更決定処分で減額した後のもの)は,これと同額であるから,適法である。 第4 結論 よって,原告らの請求はいずれも理由がないから,これらをいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 - 54 -東京地方裁判所民事第38部裁判長裁判官杉原則彦裁判官波多江真史裁判官家原尚秀
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