平成18(行ウ)29 強制退去処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年3月13日 広島地方裁判所
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判決文本文13,768 文字)

- 1 -平成18 年ウ第29 号強制退去処分等取消請求事件(行)主文 広島入国審査官が原告に対して平成18 年8 月17 日付けでした出入国管理及び難民認定法第24 条第4 号イ所定の退去強制事由に該当する旨の処分を取り消す。 広島入国管理局主任審査官が原告に対して平成18 年9 月7 日付けでした退去強制令書発付処分を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1請求1(主位的請求)主文第1項同旨(予備的請求)広島入国管理局長が原告に対して平成18 年9 月7 日付けで行った、異議の申出に理由がない旨の裁決を取り消す。 主文第2項同旨第2事案の概要中華人民共和国(以下「中国」という)国籍を有する原告が、①[A]主位的に広島入国管理局(以下「広島入管」という)入国審査官から平成18 年8 月 17 日付けで受けた出入国管理及び難民認定法(以下「法」という)24 条4 号イに該当する旨の認定(以下「本件認定」という、[B]予備的に本件認定につ)いての口頭審理における判定に対する異議申出に理由がない旨の広島入国管理局長の裁決(以下「本件裁決」という)の各取消しを求めるとともに、②上記各処分を前提として広島入管主任審査官が原告に対して平成18 年9 月7 日付けでした退去強制令書発付処分(以下「本件退令処分」という)が違法であるとしてその取消しを求める事案である。 - 2 - 前提事実(証拠等により認定した事実はその証拠を該当箇所に掲記する)原告(1)。 原告は1976(昭和51)年7 月6 日生れの中国国籍を有する外国人である事実経過(2)ア原告は、平成13 年4 月5 日広島空港に到着し、A日本語学校への入学を理由として広島入管入国審査官から在留資格「就学、在留期間1 月6 日生れの中国国籍を有する外国人である事実経過(2)ア原告は、平成13 年4 月5 日広島空港に到着し、A日本語学校への入学を理由として広島入管入国審査官から在留資格「就学、在留期間1 年の」上陸許可を受けて本邦に上陸した。同年10 月11 日、広島入管において許可期限を平成14 年4 月5 日とする法19 条2 項所定の資格外活動許可を受け、同月9 日、広島入管においてB大学への入学を理由として在留資格「留学、在留期間2 年の在留資格変更許可を受けた。同年5 月15 日、広」島入管において許可期限を平成16 年4 月5 日とする前同様の資格外活動許可を受け、同年3 月26 日、広島入管において在留期間2 年とする在留期間更新許可を受けた。そして、平成18 年4 月10 日、広島入管においてB大学大学院への入学を理由として、在留期間2 年とする在留期間更新許可を受けた(乙1 ~4 。 )イこの間の平成17 年9 月21 日、原告は長女を出産した(乙10 。 )ウ原告は、別紙不法就労状況一覧表記載のとおり、上記資格外活動許可の内容に違反して(ラウンジC、又は法19 条2 項所定の許可を受けること)なく(同店以外、それぞれホステスとして不法就労活動に従事した(乙)5、6、10 。 )、、(3)ア広島入管入国警備官は、平成18 年7 月14 日「ラウンジF」を摘発しその際、原告の不法就労事実を確認した(乙5 の①。 )イ広島入管入国警備官は、平成18 年7 月31 日及び同年8 月16 日、原告に係る違反調査を実施し、原告から事情を聴取した。そして、広島入管主任審査官は、同月15 日、原告が法24 条4 号イ(資格外活動)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして収容令書を発付し、同月16 日、- し、原告から事情を聴取した。そして、広島入管主任審査官は、同月15 日、原告が法24 条4 号イ(資格外活動)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして収容令書を発付し、同月16 日、- 3 -広島入管入国警備官が収容令書を執行して原告を広島入管収容場に収容した。広島入管入国警備官は、翌17 日、原告を同法24 条4 号イ該当容疑者として広島入管入国審査官に引き渡した。広島入管入国審査官は、同日、広島入管において原告に係る違反審査をして本件認定をし、原告にこれを通知した(乙2、6、8 ~11)ウ原告は、同日、特別審理官による口頭審理を請求した。原告は同月 18 日西日本入国管理センターに移収され、同年9 月4 日、広島入管特別審理官は同センターにおいて口頭審理を行った結果本件認定に誤りはない旨判定して原告にその旨通知した(乙8、12、13)。 エ原告は、同日、法務大臣に対し、異議の申出をした。法69 条の2 及び同法施行規則61 条の2 により法務大臣から権限の委任を受けた広島入管長は、同月7 日、上記異議申出に対して本件裁決をし、同日広島入管主任審査官に同裁決を通知した。なお、本件裁決の際、併せて同法50 条による在留特別許可をしない旨の決定(以下「本件決定」という)をした(乙 14 ~17 。 )オ同日、同通知を受けた広島入管主任審査官は原告に本件裁決を告知するとともに本件退令処分をし、広島入管入国警備官は本件退令処分を執行した(乙18 の①。 )カ原告は、上記各処分を不服として、同月27 日、当裁判所に対し、上記各処分の取消しを求める本案訴訟を提起した。 原告は、平成18 年10 月18 日、当庁平成18 年ク第14 号の退去強制令書(4)(行)執行停止決定により西日本入国管理センターを出所した。 法の の取消しを求める本案訴訟を提起した。 原告は、平成18 年10 月18 日、当庁平成18 年ク第14 号の退去強制令書(4)(行)執行停止決定により西日本入国管理センターを出所した。 法の規定(ローマ数字は項、丸数字は号を表す) 2 条の2(在留資格及び在留期間)Ⅰ本邦に在留する外国人は、出入国管理及び難民認定法及び他の法律に特別の規定がある場合を除き、それぞれ、当該外国人に対する上陸許可若しくは当該外国人の取得に係る在留資格又はそ- 4 -れらの変更に係る在留資格をもつて在留するものとする。 Ⅱ在留資格は、別表第1 又は別表第2 の上欄に掲げるとおりとし、別表第 1 の上欄の在留資格をもつて在留する者は当該在留資格に応じそれぞれ本邦において同表の下欄に掲げる活動を行うことができ(中略)る。 別表第1 の4(抜粋)在留資格本邦において行うことができる活動留学本邦の大学若しくはこれに準ずる機関、専修学校の専門課程、外国において12 年の学校教育を修了した者に対して本邦の大学に入学するための教育を行う機関又は高等専門学校において教育を受ける活動 19 条(在留)Ⅰ別表第1 の上欄の在留資格をもつて在留する者は、次項の許可を受けて行う場合を除き、次の各号に掲げる区分に応じ当該各号に掲げる活動を行つてはならない。 ②別表第1 の(中略)4 の表の上欄の在留資格をもつて在留する者収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動Ⅱ法務大臣は、別表第1 の上欄の在留資格をもつて在留する者から、法務省令で定める手続により、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動の遂行を阻害しない範囲内で当該活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことを希望する旨の申請があつた場合において、相当と認めるときは、これ に応じ同表の下欄に掲げる活動の遂行を阻害しない範囲内で当該活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことを希望する旨の申請があつた場合において、相当と認めるときは、これを許可することができる。 24 条(退去強制)Ⅰ次の各号のいずれかに該当する外国人については、次章に規定する手続により、本邦からの退去を強制することができる。 ④本邦に在留する外国人(括弧内略)で次に掲げる者のいずれかに該当するものイ第19 条第1 項の規定に違反して(中略)報酬を受ける活動を専ら行つていると明らかに認められる者(括弧内略)- 5 - 70 条1 項次の各号のいずれかに該当する者は、3 年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300 万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。 ④第19 条第1 項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行つていると明らかに認められる者 73 条第70 条第1 項第4 号に該当する場合を除き、第19 条第1 項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行つた者は、 1 年以下の懲役若しくは禁錮若しくは200 万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。 争点 本件各処分の違法性(原告が法24 条4 号イに該当するか否か、仮に該当するとして本件裁決がその裁量を逸脱・濫用したものといえるか) 争点に関する当事者の主張被告の主張(1)ア本件認定の適法性以下のとおり、原告には法24 条4 号イ所定の退去強制事由がある。 法24 条4 号イの解釈(ア)当該資格外活動が①本来の在留資格に基づく活動への阻害の有無・程度、②資格外活動の継続性及び有償性とその程度、③資格外活動の許容性を総合考慮し 退去強制事由がある。 法24 条4 号イの解釈(ア)当該資格外活動が①本来の在留資格に基づく活動への阻害の有無・程度、②資格外活動の継続性及び有償性とその程度、③資格外活動の許容性を総合考慮して、在留目的たる活動が在留資格たる活動から変更されたと評価できる程度まで在留資格外の活動を行っている場合は法24 条 4 号イに該当するというべきである。 a法は、我が国における外国人の入国及び在留管理の基本となる制度として在留資格制度を採用し、人の社会生活上の活動を在留資格により限定類型化することにより我が国社会にとって有益な外国人に限ってこれを受け入れようとしている。 - 6 -「留学」の在留資格を有する者が本邦において行うことのできる活動は、法別表第1 の4 の「留学」の項に記載された「教育を受ける活動」に限定され、報酬を受ける就労活動を行ってはならないと定められている(法19 条1 項2 号。そして、法7 条、法施行規則6 条にお)いて、留学目的で本邦に上陸しようとする外国人は「留学」の在留、資格を申請する際に、本邦在留中の一切の経費の支弁能力を証する文書を提出しなければならないとされている(法施行規則別表第3 。 )このように「留学」の在留資格を取得するためには本邦に滞在する、ための費用を支弁する十分な資力や支弁のための手段を有することを必要とされていることからすれば、法は、本邦において報酬を受ける活動をしながらその報酬によって勉学する活動を維持しようとする外国人を受け入れる出入国管理政策を採用しておらず「留学」の在留、資格を付与しない立場を採っている。 そのため、留学の在留資格をもって本邦に在留する外国人が資格外の就労活動を行い、それによって本邦滞在中の必要経費を賄おうとするにまでに至っている場合には、学業の遂行自体が 与しない立場を採っている。 そのため、留学の在留資格をもって本邦に在留する外国人が資格外の就労活動を行い、それによって本邦滞在中の必要経費を賄おうとするにまでに至っている場合には、学業の遂行自体が就労によって阻害されていないとしても、在留目的たる活動が「留学」から変更されたと評価されるべきである。したがって、このような場合には無許可で報酬を受ける活動を「専ら行つている」に該当する。 なお、以上によれば、法24 条4 号イの「専ら」に該当するか否かを判断するに当たって原告が主張するような事情はいずれも考慮の対象外である。 bまた、前記①~③のいずれかの要素についてその基準を大幅に逸脱しているときは、他の要素をことさらに斟酌するまでもなく法24 条 4 号イに該当すると解すべきである。 本件におけるあてはめ(イ)- 7 -a原告は「留学」の在留資格で在留していたものの、以下のとおり、違法に在留資格外の報酬を受ける活動を行い、その程度が本邦滞在中の必要経費を賄う以上といえるまでに至っていたというべきである。 ①原告が資格外活動許可を受けないままホステスとして稼働しており、稼働状況は別紙不法就労状況一覧表記載のとおりであって、ラウンジFでは主力として稼動しており、さらに同表記載のもの以外にも同伴出勤等ホステスとしての稼動に付随する活動を行っていたこと②原告の両親に経費支弁能力がなかったこと③原告は本国から送金を受けていないのにこれを受けたなどと虚偽の供述をし、また、これからの経費支弁方法についても虚偽の供述をしている疑いが濃厚であること④原告は、ホステスとして稼働していたことを秘匿して奨学金を不正に受給していたのであるから、法7 条1 項2 号の基準を定める省令の要件(申請人が本邦に在留する期間中の生活に要する費用を支 こと④原告は、ホステスとして稼働していたことを秘匿して奨学金を不正に受給していたのであるから、法7 条1 項2 号の基準を定める省令の要件(申請人が本邦に在留する期間中の生活に要する費用を支弁する十分な資産、奨学金その他の手段を有すること)を満たさないこと⑤原告は、学費や生活費以外にもかなりの額を使える程の金銭(本邦滞在中の必要経費以上の収入)をホステス活動により得ており、本国の家族にも大金を送金していることbまた、a で主張した事実に加えて以下の事実も考慮すれば、少なくとも在留目的たる活動が在留資格たる活動から変更されたと評価できる程度まで在留資格外の活動を行っているといえるから、法24 条 4 号イの退去強制事由に該当する。 ①原告は本邦において外国人芸能人を本邦の招聘会社に斡旋紹介して報酬を得る活動を職業的に行っていたと認められること- 8 -②原告は夫及び妹の不法就労先を斡旋するなど家族ぐるみでの不法就労を維持・発展させるための中心的な役目を果たしており、自らの在留資格を利用して蓄財をしていたこと③原告は、平成13 年12 月24 日の出国当日に原告名義の口座から 92 万円(乙61 の②、67、68 、平成14 年2 月21 日の出国の2 日前)に同口座から30 万円(乙61 の②、67、68 、平成15 年12 月20 日)の出国直前に原告名義の口座から合計627 万円、夫名義の口座から合計200 万円(乙61 の②、63 の②、64 の①、67 ~69 、平成) 16 年8 月7 日の出国当日原告名義の口座から合計165 万円(乙 61 の②、67 ~69 、平成18 年4 月25 日の出国5 日前に原告名義の)口座から20 万円(乙61 の②、67 ~69 、原告の義母が出国した平)成19 年 から合計165 万円(乙 61 の②、67 ~69 、平成18 年4 月25 日の出国5 日前に原告名義の)口座から20 万円(乙61 の②、67 ~69 、原告の義母が出国した平)成19 年1 月25 日当日に原告名義の口座から100 万円、原告の夫名義の口座から合計190 万円が引き出されており(乙61 の②、65 の②、67、55 、中国との貨幣価値の違いを考慮すればこれらは莫大)な金額であるところ、これらの金員は原告らが本邦において就労するなどしたことによる蓄財であり、原告らが出国する際に本邦から中国に持ち出されたと推認されること④原告は内容虚偽の申請を行うなどして奨学金の支給を受けたり家賃が安価な市営住宅に入居したりしており、本邦にいる間にできるだけ多くの金を稼いで蓄財しようという強い目的・意思が認められること⑤原告が勉学に費やした時間(平成18 年6 月では合計73 ~74 時間)とホステスとして稼動した時間(同月では合計143 時間)の比較という観点からみても、原告は主としてホステス活動をしていたと評価でき、実質的に学業活動の遂行を疎かにしていたことは否定できないこと- 9 -その他の要件(ウ)原告は、法24 条4 号イの定めるその他の要件も満たしている。 イ本件裁決及び本件退令処分の適法性本件の事実関係を前提にすれば、法務大臣の原告に在留特別許可を付与しない旨の判断が裁量権の濫用ないし逸脱であるとされる余地はなく、本件裁決及び以上を前提とする本件退令処分も適法である。 原告の主張(2)原告に法24 条4 号イ所定の退去強制事由があることは争う。 ア本件認定処分の違法性(主位的主張)法24 条4 号イの解釈(ア)法24 条4 号イの退去強制事由は、当該活動の継続性、有償性、生計等の依存度、 4 号イ所定の退去強制事由があることは争う。 ア本件認定処分の違法性(主位的主張)法24 条4 号イの解釈(ア)法24 条4 号イの退去強制事由は、当該活動の継続性、有償性、生計等の依存度、本来の在留資格に基づく活動の有無又は程度等を総合的に勘案し、当該外国人の活動が、その有する在留資格に属する者の行うべき活動から、他の在留資格に属する者の行うべき活動に変更されてしまったと認められる状態にあることを指す。その典型例は、留学の在留資格でありながら、ほとんど大学に出席せず、終日稼働し、収入の大半を本国の家族等に送金しているような場合である。 本件におけるあてはめ(イ)a本件では、以下の各事情を総合的に勘案すれば、法24 条4 号イの退去強制事由に該当するとはいえない。 ①原告は資格外活動をしていたものの、その活動時間帯は学業に支障を及ぼすものではなく、また、資格外活動許可を受けた場合に認められる稼働時間(週28 時間)を超えなかったこと②その報酬は主として学費その他の学生生活における必要経費、出産費用、生活費の補完に充てられており、資格外活動による報酬を本国に送金した事実もないこと- 10 -③原告の得た報酬の額は、本邦での滞在期間で平均すれば、月額 7 万9000 円程度に過ぎないこと④資格外活動の内容は性風俗などの悪質性の高いものではないこと⑤極めて真面目に学校に通い、学部ではA 評価以上が53 %、大学院の前期では5 科目全てA 評価という優秀な成績を修めていたこと⑥したがって、原告は法24 条4 号イの予定する典型的な場合に当てはまらないこと⑦刑事処分では不起訴になっていることb被告がア(6 頁)で主張する事実のうち原告の両親に経費支弁(1)(イ)能力がなかったことは争う。送金について虚偽 型的な場合に当てはまらないこと⑦刑事処分では不起訴になっていることb被告がア(6 頁)で主張する事実のうち原告の両親に経費支弁(1)(イ)能力がなかったことは争う。送金について虚偽の申告をしたこと、奨学金を不正に受給していたこと、必要経費を超える支出(贅沢品の購入等)のためにホステスをしていたこと、大金を本国に送金したことはいずれも否認する。 イ本件裁決の違法性(予備的主張)既に述べた事情に加えて、本件裁決当時原告が5 年3 か月にわたって適法な在留資格に基づき本邦に滞在していたこと、夫、長女、妹と4 人で共同生活をしていることなども考慮すれば、原告に対して在留特別許可をしなかった本件裁決には裁量を逸脱した違法があり、取消しを免れない。 ウ本件退令処分の違法性ア、イで主張したところによれば、違法な本件認定処分及び本件裁決を前提とする本件退令処分もまた違法であり、取消しを免れない。 第3争点に対する判断 法24 条4 号イの要件のうち「専ら」の解釈について、当裁判所の解釈(1)ア法は、在留資格の制度を採用して在留資格ごとに本邦において行うこ(ア)とができる活動の内容を規定し、これを外国人が本邦に在留することの- 11 -基礎としている。外国人の在留資格が「留学」の場合に本邦で行うことのできる活動は「教育を受ける活動」とし(法2 条の2、別表第1 の 4 、留学の在留資格において本邦に在留する外国人が報酬を受ける活)動等を行うことを原則として禁止しながら(19 条1 項2 号。例外は法務大臣等の許可を受けた場合。同条2 項、単に同項2 号に違反したと)いうだけで退去強制事由に当たるものとはせず、退去強制の対象を無許可の資格外活動を「専ら行つている」者に限定している(法24 条4 号イ。 )』。 合。同条2 項、単に同項2 号に違反したと)いうだけで退去強制事由に当たるものとはせず、退去強制の対象を無許可の資格外活動を「専ら行つている」者に限定している(法24 条4 号イ。 )』。 (イ)「専ら」とは『広辞苑第5 版(岩波書店)によれば「その事ばかりそれを主として。全く」を『大辞泉増補・新装版(小学館)によれ、』ば「他はさしおいて、ある一つの事に集中するさま。また、ある一つの事を主とするさま。ひたすら。ただただ」を『大辞林第2 版(三省、』堂)によれば「他の事にかかわらないで、そのことだけをするさま」を意味するものとされている。 以上の法の規定及び「専ら」の語義からすれば、資格外活動を「専ら(ウ)行つている」とは、外国人の主たる在留目的がその在留資格に基づき本邦において行うことができる活動から資格外活動に変更されたと認められる程度に資格外活動を行っている場合をいい、外国人留学生に限定して論ずるならば、当該外国人が「教育を受ける活動」を法が期待する程度に行っている場合は、当該活動が専ら資格外活動を維持する目的で行われているものでない限り、前記定義には該当しないものと解される。 その根拠は次のとおりである。 ①法24 条4 号イは、侵害処分の要件を定めるものであるのみならず同法70 条1 項4 号の罰則規定における構成要件と全く同じ要件を定めるものであり、その要件について同号と異なる緩やかな解釈をする根拠はないから、同号同様に明確性が特に強く要求される。すなわち、- 12 -法24 条4 号イ該当性は厳格に解釈すべきであって、本来の語義の範囲を超えた解釈(類推解釈)をすることは許されない。 ②個人の社会生活における活動は複数存在しうる。 例えばこれが甲乙2 つ存在する場合に当該個人が甲の活動を「専ら」行って であって、本来の語義の範囲を超えた解釈(類推解釈)をすることは許されない。 ②個人の社会生活における活動は複数存在しうる。 例えばこれが甲乙2 つ存在する場合に当該個人が甲の活動を「専ら」行っているというためには、相対的にみて乙の活動より甲の活動に比重が置かれているというだけでは足りず、乙の活動がそれ自体として実質的に重要性を持たない場合や専ら甲の活動を維持・助長する目的で従として行われている場合であるなど、乙の活動を考慮の対象外とすることができるだけの事情が存在しなければならない。 ③前記のとおり外国人の在留資格が「留学」の場合に本邦で行うことのできる活動が「教育を受ける活動」とされていることからすれば、当該留学生が法の期待する程度に「教育を受ける活動」を行っている場合、当該外国人にとって「教育を受ける活動」は社会生活における実質的に重要な活動のひとつをなすものとみるべきである。 ④以上をふまえると、当該外国人が「教育を受ける活動」を法の期待する程度に行っているといえる場合は、法24 条4 号イ該当性の判断に当たってこれを度外視することが原則として許されない結果、たとえ同人が社会生活上の他の重要な活動として資格外活動を行っておりその比重が相対的に高いとしてもなお、それだけでは資格外活動を「専ら」行っているとはいえないことになる。この場合は原則として法24 条4 号イ該当性が阻却されるものと解すべきである。 但し、この場合であっても「教育を受ける活動」が専ら資格外活、動を維持・助長する目的で行われているに過ぎないなど「教育を受ける活動」を捨象して判断すべき特段の事情が存在すると認められるときは、例外的に法24 条4 号イに当たる余地があると解される。 被告の主張に対する補足説明(2)- 13 -ア以上に対し、被告は、法及 」を捨象して判断すべき特段の事情が存在すると認められるときは、例外的に法24 条4 号イに当たる余地があると解される。 被告の主張に対する補足説明(2)- 13 -ア以上に対し、被告は、法及び同法施行規則が留学の在留資格については経費支弁能力を前提としており、同資格で在留する外国人が資格外活動を行って本邦滞在中の必要経費を賄おうとしている場合は法24 条4 号イの事由があるなどと主張する。しかし、既に述べたところから明らかなとおり被告の主張する解釈は「専ら」の本来の語義の範囲を超えた類推解釈にほかならないから、採用できない。 イ被告は、また、前記のように解すると、①教育機関の授業等を受け(ア)(1)ずに資格外活動として許可されうるアルバイトを長時間行った外国人は退去強制や罰則の対象になるのに、②授業等を受けながらより悪質な不法就労活動である風俗店における接客業等を行った外国人は退去強制や罰則の対象にならないことを指摘して、法の趣旨の沿わない結果となるばかりか、外国人の無許可の資格外活動を助長促進する結果となると指摘する。 ホステスとしての不法就労活動は許可を受ける余地がないなどという(イ)被告指摘の点は、法24 条4 号イの定める要件のうち「第19 条第1 項の規定に違反して」の部分に関するものであって「専ら」の要件に関す、るものではないから、の指摘は当たらない。 (ア)また、被告の指摘する①の場合は教育を受ける活動がされていない(ウ)(ア)うえ無許可の資格外活動時間も長いのに対し、②の場合は教育を受け(ア)る活動がされているうえ無許可の資格外活動時間も短いのであるから、一概に①より②のほうがより退去強制や処罰の必要性が大きいとい(ア)(ア)うことはできないのであって、で述べた解釈を採ることに 活動がされているうえ無許可の資格外活動時間も短いのであるから、一概に①より②のほうがより退去強制や処罰の必要性が大きいとい(ア)(ア)うことはできないのであって、で述べた解釈を採ることによって不合(1)理な結論になるわけではない。 さらに、で述べた解釈を採用しても、法19 条1 項2 号に違反した(エ)(1)場合は同法73 条による処罰の対象となるのであるから、外国人による無許可の資格外活動が助長促進されるものではない。 - 14 - 本件における具体的検討認定事実(1)前記前提事実、証拠(甲6 ~20、27、乙2、6、7、10、23、33 の①②、47、原告本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 ア原告は平成14 年4 月にB大学経済科学部に入学して平成18 年3 月に卒業し、同年4 月から同大学大学院経済科学研究科に在籍して金融論を専攻している。同月11 日、同年度前期後期ともそれぞれ講義各4 コマ及び集中講義1 コマの履修登録をした。 イ学部の講義には病気の場合を除いて必ず出席しており無断欠席をすることはなく、大学院進学後も所用で帰国していた平成18 年4 月25 日から同年5 月16 日までの間(講義があったのはそのうち7 日間)と当局による身柄拘束中以外は全て出席しており、大学側からは出席状況は非常に良好であると評価されている。 また、原告は、講義の準備のために毎週10 ~17 時間を要し、それ以外にも指導教授から課題として与えられた300 ~400 頁ほどの日本語の専門書を読む必要があったことなどから、講義が終わった後も大学図書館に残って資料の調査・レポート作成・金融政策の勉強などを行い、帰宅は通常午後4 時~5 時頃であった。 成績は、学部においては全取得単位数7 読む必要があったことなどから、講義が終わった後も大学図書館に残って資料の調査・レポート作成・金融政策の勉強などを行い、帰宅は通常午後4 時~5 時頃であった。 成績は、学部においては全取得単位数73 科目140 単位のうちAA(90 ~ 100 点)が7 科目13 単位、A(80 ~89 点)が32 科目68 単位等であるなど良好であった。また、大学院に進学した平成18 年前期に履修した5 つの授業科目の成績も全てA(80 ~100 点。大学院の成績としては普通)であり、学部、大学院とも授業料等免除の特別待遇を受けていた。平成 17 年度には「学業、人物ともに優れ」ていることなどを支給要件とする奨学金「学習奨励費」の支給を受けていた。 - 15 -ウ指導担当のG・経済科学部教授の平成18 年8 月10 日付けの「Hさんの出席状況並びに勉学状況について」と題する書面(甲8)では、原告は与えられた課題はこなしていたが最近ははっきりした進歩がみられず停滞気味であると評されている。 エ原告が不法就労活動としてホステスを選んだのは、仕事内容の他、給与が高額であること、稼働の時間帯が夜間であるため学業と両立することが主たる理由であった。 なお、ホステスとして就労したことが大学・大学院における学業に実質的な悪影響を与えたという因果関係を認めるに足りる証拠はない。 オ原告が大学院に通う目的は、学歴を高めること、卒業後は我が国と中国との友好関係に役立つビジネスや我が国に在留する中国人研修生の力になることにある。 判断 (2)アア、イ及びエの各事実によれば、原告は成績、出席率、単位取得状況、(1)大学院進学後の勉学状況などいずれの面でも平均的な学生と同等かそれ以上に大学・大学院における学問を行っていたものといえる。同ウのG経済科学部教授の評価を 、原告は成績、出席率、単位取得状況、(1)大学院進学後の勉学状況などいずれの面でも平均的な学生と同等かそれ以上に大学・大学院における学問を行っていたものといえる。同ウのG経済科学部教授の評価を考慮しても、与えられた課題はこなしていたと評価されている以上、大学院における勉学が平均以下であったとまではいいがたい。そうすると、原告は本件認定処分当時少なくとも法が期待する程度に「教育を受ける活動」を行っていたものといえる。 また原告の「教育を受ける活動」が専らホステスとしての活動を維持・助長するために行われたことなど、法24 条4 号イ該当性を判断するに際して「教育を受ける活動」を考慮の対象外に置くことが許されるだけの事情が存在することを認めるに足りる証拠はない。かえって、既に述べたところに加えてオの事実も考慮すれば、原告にとって「教育を受ける活(1)動」は本邦在留の目標を実現するための手段であって、ホステスとしての- 16 -活動とは独立した重要な価値を有するものであったというべきである。 〕、イ被告の指摘する事実(第2・4ア〔6 頁以下)は、以下のとおり(1)(イ)いずれも法24 条4 号イ該当性を基礎付けるものではない。 経費支弁能力のないことをいう点が同号に該当することの理由となら(ア)ないことは既に判示したところから明らかである。 蓄財の事実・意欲や外国人芸能人の斡旋紹介をいう点は、法24 条(イ) 4 号イの要件のうち「第19 条第1 項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を(中略)行つている」ことを基礎付ける事実とはいえても、これだけで「専ら」の要件をも満たすものとは解されない。 虚偽申請、奨学金の不正受給、家族に対する不法就労先の斡旋等の事(ウ)実は、それ自体としてはいわば原 る」ことを基礎付ける事実とはいえても、これだけで「専ら」の要件をも満たすものとは解されない。 虚偽申請、奨学金の不正受給、家族に対する不法就労先の斡旋等の事(ウ)実は、それ自体としてはいわば原告の情状が悪いことを示すものに過ぎず、同号イの法律要件に当たることを直接基礎付けるものではない。これらの事実が蓄財の事実及び意欲を裏付けるものであるという側面についてどのように判断すべきかはで述べたとおりである。 (イ)勉学の時間(平成18 年6 月では73 ~74 時間)がホステスとしての(エ)活動時間(同月では143 時間)の半分程度にとどまるという被告の指摘は、相対的な比重の問題に過ぎないから、法24 条4 号イ該当性を基礎付けるものではない(もっとも、原告が学業に当てた時間が月70 時間程度にとどまるものであることを認めるに足りる証拠はない。 )その他被告が縷々主張するところはいずれも法24 条4 号イの誤った(オ)解釈を前提とするものであり、採用の限りでない。 以上で個別的に検討した被告の指摘するところについて、これを総合(カ)的に考慮しても、当裁判所の前記アの判断を左右するものではない。 ウ以上のとおり、被告の主張する事実は法24 条4 号イの退去強制事由に該当するということはできず、他に原告に同事由があるものと認めるに足- 17 -りる証拠はない。 本件認定処分及び本件退令処分はいずれも違法であり取消しを免れない。 よって原告の主位的請求は理由がある。 広島地方裁判所民事第2 部裁判長裁判官橋本良成裁判官佐々木亘裁判官相澤聡(別紙は省略)- 18 - 木亘裁判官相澤聡(別紙は省略)

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