主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 処分行政庁が,平成22年3月25日付けで株式会社a(営業所の所在地:熊本県天草市α×番地30)に対してした製造たばこ小売販売業の許可処分を取り消す。 2 被告は,原告に対し,26万7011円を支払え。 第2 事案の概要本件は,九州財務局長(処分行政庁)が株式会社a(以下「訴外会社」という。)に対し,平成22年3月25日付けでした製造たばこ小売販売業の許可処分(以下「本件処分」という。)について,同許可に係る営業所の近隣で同小売販売業の許可を受けて同業を営む原告が,本件処分の取消しを求めるとともに,本件処分により財産的損害を被ったとして被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害の賠償を求める事案である。 1 関連法令等の定め(1) たばこ事業法(昭和59年法律第68号。乙1。以下「法」という。)ア 1条(目的)この法律は,たばこ専売制度の廃止に伴い,製造たばこに係る租税が財政収入において占める地位等にかんがみ,製造たばこの原料用としての国内産の葉たばこの生産及び買入れ並びに製造たばこの製造及び販売の事業等に関し所要の調整を行うことにより,我が国たばこ産業の健全な発展を図り,もつて財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする。 イ 22条(製造たばこの小売販売業の許可) 1項製造たばこの小売販売(消費者に対する販売をいう。以下同じ。)を業として行おうとする者は,当分の間,その製造たばこに係る営業所(以下第37条まで及び第49条において「営業所」という。)ごとに財務大臣の許可を受けなければならない。(以下略)2項及び3項 (略)(なお,本条による許可制 の間,その製造たばこに係る営業所(以下第37条まで及び第49条において「営業所」という。)ごとに財務大臣の許可を受けなければならない。(以下略)2項及び3項 (略)(なお,本条による許可制を,以下「本件許可制」という。なお,法44条及びたばこ事業法施行令(昭和60年政令第21号。乙2。以下「令」という。)8条によって,財務大臣の上記権限は財務局長等に委任されている。 ウ 23条(許可の基準)財務大臣は,前条第1項の許可の申請があった場合において,次の各号のいずれかに該当するときは,許可をしないことができる。 1号及び2号 (略)3号営業所の位置が製造たばこの小売販売を業として行うのに不適当である場合として財務省令で定める場合であるとき。 4号製造たばこの取扱いの予定高が財務省令で定める標準に達しないと認められるとき。 5号~7号 (略)(なお,本条柱書の許可の申請を,以下「製造たばこ小売販売業許可申請」といい,本条4号の定める基準を,以下「取扱高基準」という。)(2) たばこ事業法施行規則(昭和60年大蔵省令第5号。乙7。以下「規則」という。)ア 20条(営業所の位置が不適当な場合)法第23条第3号に規定する営業所の位置が製造たばこの小売販売を業として行うのに不適当である場合として財務省令で定める場合は,次に掲げる場合とする。 1号 (略)2号予定営業所と最寄りの小売販売業者の営業所との距離が,特定小売販売業(劇場,旅館,飲食店,大規模な小売店舗・・・その他の閉鎖性があり,かつ,消費者の滞留性の強い施設内の場所を営業所として製造たばこの小売販売を業として行うことをいう。)を営もうとする場合その他財務大臣の定める場合を除き,予定営業所の所在地の区分ごとに,25メートルから300メート 性の強い施設内の場所を営業所として製造たばこの小売販売を業として行うことをいう。)を営もうとする場合その他財務大臣の定める場合を除き,予定営業所の所在地の区分ごとに,25メートルから300メートルまでの範囲内で財務大臣が定める距離に達しない場合3号 (略)(なお,本条2号の「予定営業所」とは,製造たばこ小売販売業許可申請に係る営業所を意味する(規則18条参照)。また,「小売販売業者」とは,法22条1項の許可を受けた者を意味し(法9条6項,規則1条5号参照),たばこ専売法(昭和59年法律第68号により廃止)の下において指定を受けた製造たばこの小売人(たばこ事業法施行の際,現に小売人である者)は小売販売業者とみなされ(同法附則10条1項),小売販売業者とみなされる小売人は「継続小売販売業者」と定義されている(同条2項)。以下,小売販売業者及び継続小売販売業者を併せて「既存の小売販売業者」といい,本条2号による距離基準を「距離基準」,同基準に係る規制を「距離規制」という。)イ 21条(製造たばこの取扱いの予定高の標準)法第23条第4号に規定する財務省令で定める標準は,財務大臣の定める場合を除き,月間4万本とする。 (なお,以下,本条による標準を「標準本数」という。)。 (3) 平成10年大蔵省告示第74号(乙8。以下「告示」という。)告示では,規則20条2号及び21条に基づき財務大臣が定める事項について,概ね次のとおり定められている。 ア 1項(規則20条2号に規定する「財務大臣が定める距離」)「予定営業所と既設営業所との通常人車の往来する道路に沿って測定し」,別紙1「別表一に規定する地域の区分に応じ」,別紙1「別表二に定める基準による環境の区分に応ずる」別紙2の表に掲げる距離(以下「標準距離」という。) 所との通常人車の往来する道路に沿って測定し」,別紙1「別表一に規定する地域の区分に応じ」,別紙1「別表二に定める基準による環境の区分に応ずる」別紙2の表に掲げる距離(以下「標準距離」という。)イ 2項(同号に規定する「財務大臣の定める場合」(距離基準の特例))(1)号申請者が,身体障害者等(身体障害者福祉法4条に規定する身体障害者に該当する者又は母子及び寡婦福祉法6条3項に規定する寡婦若しくは同条6項に規定する配偶者のない女子で現に児童を扶養しているものに該当する者をいう。)である場合で,既設営業所と予定営業所との距離が標準距離に100分の80を乗じて得た距離に達している場合(以下「身体障害者等の特例(標準距離の緩和)」という。)(2)号 (略)(3)号予定営業所の位置が,以下の一に該当する営業所(以下「低調店」という。)の周辺の場所にある場合で,当該営業所以外の既設営業所と予定営業所との距離が標準距離に達している場合(以下「低調店の特例」という。)① 営業所の所在地が繁華街(A)又は繁華街(B)の場合月間4万本未満(製造たばこの販売数量。以下同じ。)② 営業所の所在地が市街地の場合月間2万5000本未満③ 営業所の所在地が住宅地(A)の場合月間2万本未満④ 営業所の所在地が住宅地(B)の場合月間1万5000本未満(4)号~(7)号 (略)(8)号予定営業所の位置が,駅等の交通の拠点の周辺の場所にあり,かつ,予定営業所と既設営業所が当該交通の拠点を中心にそれぞれ明ら かに異なる人の流れに面している場合で,当該営業所以外の既設営業所と予定営業所との距離が標準距離に達している場合(以下「人の流れが異なる場合の特例」という。)(9)号予定営業所の位置が,繁華街又は市街 る人の流れに面している場合で,当該営業所以外の既設営業所と予定営業所との距離が標準距離に達している場合(以下「人の流れが異なる場合の特例」という。)(9)号予定営業所の位置が,繁華街又は市街地の場所にあり,予定営業所の面している街路から,直接かつ容易に既設営業所が見えない場合で,当該営業所以外の既設営業所と予定営業所との距離が標準距離に達している場合(以下「視認性がない場合の特例」という。)(11)号予定営業所と既設営業所とが,往復合計4車線以上の道路を隔てて位置する場合(両者の間又は両者の概ね20メートル以内に横断歩道その他これに準ずるもの(以下「横断歩道等」という。)があり,かつ,通行人の主たる流れがこれを通行する立地条件にあると認められる場合は除く。)で,当該営業所以外の既設営業所と予定営業所との距離が標準距離に達している場合(以下「4車線道路の特例」という。なお,上記のとおり,告示の文言上,「両者の概ね20メートル以内」とされているが,これは「予定営業所又は既設営業所から」概ね20メートル以内の意味であると解される。)(12)号~(17)号 (略)ウ 3項(規則21条に規定する「財務大臣の定める場合」)(1)号申請者が,身体障害者等である場合で,予定営業所の取扱予定高が標準本数に100分の80を乗じて得た本数に達している場合(以下「身体障害者等の特例(標準本数の緩和)」といい,同特例(標準距離の緩和)と併せて「身体障害者等の特例」という。)(2)号~(10)号 (略)(4) 製造たばこ小売販売業許可等取扱要領(平成12年蔵理第4621号。 甲13。以下「取扱要領」という。)ア取扱要領では,財務省,b株式会社(以下「b」という。)等における 「製造たばこ小売販売業に関する許可等の基準の運用 要領(平成12年蔵理第4621号。 甲13。以下「取扱要領」という。)ア取扱要領では,財務省,b株式会社(以下「b」という。)等における 「製造たばこ小売販売業に関する許可等の基準の運用及び事務の取扱いは,この要領の定めるところによる」こととされ(第1章,第二),製造たばこ小売販売業許可申請を「許可しない」場合の一つとして,予定営業所と最寄りの既設営業所(既存の小売販売業者の営業所を意味する(第1章,第一,12)。なお,「営業所」とは,製造たばこの小売販売を反復継続して行う施設又は設備をいう(同5)。)との距離が,標準距離に達していない場合(距離規制)が挙げられ,「距離基準の特例」として,身体障害者等の特例(標準距離の緩和),低調店の特例,人の流れが異なる場合の特例,視認性がない場合の特例,4車線道路の特例等が挙げられており(第2章,第一,1(2)),また,「取扱高基準の特例」として,身体障害者等の特例(標準本数の緩和)等が挙げられている(第2章,第一,1(3))。 イまた,取扱要領では,「距離の測定方法」について,次のとおり定められている(第2章,第一,2)。 (ア) 「予定営業所から既設営業所までの距離は,原則として,予定営業所の営業行為を行う店舗の出入口の中央から既設営業所の営業行為を行う店舗の出入口の中央までを,通常人車の往来する道路に沿って測定し,最短のものを予定営業所から既設営業所までの距離とする」(同2(1))。 (イ) 予定営業所と既設営業所が道路を隔てて位置する場合(ただし,4車線道路の特例が適用される場合を除く。)は,①当該道路が道路交通法(昭和35年法律第105号)第13条第2項に規定する道路標識等により歩行者の横断が禁止されている道路(以下「横断禁止道路」という。)である場合は,最寄りの横 合を除く。)は,①当該道路が道路交通法(昭和35年法律第105号)第13条第2項に規定する道路標識等により歩行者の横断が禁止されている道路(以下「横断禁止道路」という。)である場合は,最寄りの横断歩道等を通行して測定し,②当該道路が横断禁止道路以外の道路である場合は,「両者の間又は両者の概ね20メートル以内に」横断歩道等があるときは,これを通行して測定し, これらのものがないときは,当該道路を直角に横断して測定する(同2(3)。以下,上記①及び②を「距離測定経路の特例」という。)。 2 前提事実(争いのない事実及び後掲の証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)(1) 当事者ア原告は,平成9年2月20日,製造たばこ小売販売業の許可(営業所の所在地:熊本県天草市β×番地の40)を受け,同営業所(以下「原告営業所」という。)の営業行為を行う店舗(別紙概略図上「原告店舗」と表示されている。以下「原告店舗」という。)において,製造たばこ小売販売業を営む者である。(甲1,2)イ訴外会社は,平成22年2月12日,営業所の所在地を熊本県天草市α×番地30として,製造たばこ小売販売業許可申請を行った(以下「本件許可申請」といい,上記営業所を「本件営業所」といい,同営業所の営業行為を行う店舗を「本件店舗」という。)。これに対して,処分行政庁は,同年3月25日,訴外会社に対し,本件処分をした。(乙3の1,3)ウ本件店舗(別紙配置図上「申請建物」と表示され,同概略図上「本件店舗」と表示されている。)は,訴外会社が所有者から賃借しており,訴外会社とc(以下「訴外人」という。)との間のフランチャイズ契約に基づき,訴外人がフランチャイジーとして本件店舗において「ad店」の名称でコンビニエンス・ストアを営業している。(乙3の3 ており,訴外会社とc(以下「訴外人」という。)との間のフランチャイズ契約に基づき,訴外人がフランチャイジーとして本件店舗において「ad店」の名称でコンビニエンス・ストアを営業している。(乙3の3,調査嘱託の結果)(2) 本件営業所に関する距離基準本件営業所の所在地の地域区分は「市制施行地」,環境区分は「市街地」に各該当するから,規則20条2号の「財務大臣が定める距離」は,150メートルとなる(告示1項)。したがって,本件営業所と原告営業所との距離(以下「本件営業所間距離」という。)が150メートルに達しない場合, すなわち,本件店舗の出入口中央と原告店舗の出入口中央とを「通常人車の往来する道路に沿って測定」した距離が150メートルに達しない場合には,本件許可申請は許可されないこととなる(関係法令等の定め(2)ア,同(3)ア,同(4)ア参照。以下「本件距離基準」という。)。(甲13,乙3の2,8)(3) b作成に係るマニュアルア製造たばこ小売販売業許可申請の「許可に関する事務」(許可の基準に適合するか否かの調査に関する事務等を含む。)は,bに対し委任され(法43条1項,令7条1号,規則37条1項),同社は,上記許可事務について,「社員の実務の参考」として,「製造たばこ小売販売業許可事務マニュアル」と題する書面(平成13年12月付け,以下「本件マニュアル」という。)を作成していた。なお,本件マニュアルは公開されていない。(乙10)イ本件マニュアルにおいては,「距離の測定方法」について,本件営業所間距離は,「原則として,予定営業所の営業行為を行う店舗の出入口中央から既設営業所の営業行為を行う店舗の出入口の中央までを,通常人車の往来する道路に沿って測定し,直近の既設営業所の距離」とする旨記載されていた(133 て,予定営業所の営業行為を行う店舗の出入口中央から既設営業所の営業行為を行う店舗の出入口の中央までを,通常人車の往来する道路に沿って測定し,直近の既設営業所の距離」とする旨記載されていた(133頁)。 また,「距離測定経路の特例」として,予定営業所と既設営業所が道路を隔てて位置する場合は,4車線道路の特例の場合を除き,①当該道路が横断禁止道路である場合は,横断歩道等までの距離に関係なく,最寄りの横断歩道等を通行して測定すること,②当該道路が横断禁止道路以外の道路である場合は,「両者の間又は両者の概ね20メートル以内に」横断歩道等があるときは,これを通行して測定し,これらのものがないときは,当該道路を直角に横断して測定することが記載され,「横断歩道までの概ね20m以内の距離の測定方法は,距離の起点から垂直に測定し,対象営 業所に近い道路に至った地点から,横断歩道の直近部分までとします。」,「※ここでいう概ね20メートルは,21メートルとします。」,「距離の起点から道路までの測定経路は,距離の起点から最短距離に経路をとり,測定対象営業所に近い道路に至る経路とします。」と記載されていた(136~138頁)。(乙10)(4) 本件営業所と原告営業所との位置関係及び距離ア本件営業所と原告営業所は,別紙概略図のとおり,国道○号(以下「本件道路」という。なお,横断禁止道路ではない。)を隔てて南北に位置している。 本件店舗の出入口中央から原告店舗の出入口中央までの距離は,γ交差点東側横断歩道(以下「本件横断歩道」という。)を通って本件道路を横断する経路(別紙概略図上の「Aルート」。以下「Aルート」という。)で測定した場合は約174ないし178メートル,本件横断歩道を通らず,本件道路を直角に横断する経路(同図上の「Bルート」。以下 を横断する経路(別紙概略図上の「Aルート」。以下「Aルート」という。)で測定した場合は約174ないし178メートル,本件横断歩道を通らず,本件道路を直角に横断する経路(同図上の「Bルート」。以下「Bルート」という。)で測定した場合は約136ないし140メートルとなる。 (甲2,乙3の2)イ本件店舗の出入口中央から(本件道路に対して)垂直に測定し,本件店舗に近い道路に至った地点(別紙概略図上の「本件交点」。以下「本件交点」という。)までは,約20メートルであり,本件交点から本件横断歩道の直近部分までは,20メートル以下である。また,本件店舗の出入口中央から本件横断歩道までの直線距離は20メートル以上ある。(甲2,乙3の2)(5) 本件処分本件許可申請については,bによって,本件営業所間距離が178メートルであることなどを内容とする小売販売業許可調査書(以下「本件調査書」という。)が作成され,処分行政庁によって,平成22年3月25日,本件 処分がされた。(乙3の1,2)(6) 本件処分に対する審査請求及び訴訟提起ア原告は,財務大臣に対し,平成22年4月20日,本件処分の取消しを求める審査請求を行ったところ,財務大臣は,同年5月24日,原告には,本件処分の取消しを求める法律上の利益がないとして,同請求を却下する裁決を行った。(甲3)イ原告は,同年8月12日,本件訴えを提起した。 3 本件の争点(1) 本案前の争点本件処分取消しの訴えに係る原告適格(2) 本案の争点ア本件処分の適法性(ア) 本件距離基準適合性(イ) 行政手続法5条2項及び3項違反の有無(ウ) 法22条違反の有無イ本件処分の国家賠償法上の違法性ウ損害の発生及びその額 4 争点に関する当事者の主張(要旨) 距離基準適合性(イ) 行政手続法5条2項及び3項違反の有無(ウ) 法22条違反の有無イ本件処分の国家賠償法上の違法性ウ損害の発生及びその額 4 争点に関する当事者の主張(要旨)(1) 争点(1)(原告適格)について【原告の主張】ア本件処分に係る法令の文言,趣旨及び目的告示及び取扱要領では,「距離基準の特例」として,人の流れが異なる場合の特例や視認性がない場合の特例等が定められ,人の流れや店舗の視認性,立地等が距離基準適用の有無の指標とされており(関係法令等の定め(3)イ,同(4)ア),製造たばこ小売販売業許可申請については,既設営業所の営業に与える影響を慎重に検討した上で審査されることが予定され ていることがうかがわれる。これは,法が既存の小売販売業者の経済的利益を保護していることを示している。そして,今日では,たばこによる健康被害が明らかとなっており,法の目的は,国民の健康促進にあると考えるべきところ,既存の小売販売業者の経済的利益を保護することは,国民の健康促進という公共の福祉のために必要である。 したがって,本件許可制によって保護されるべき既存の小売販売業者の経済的利益は,法律上保護された利益であるといえる。 イ本件処分において考慮されるべき利益の内容及び性質について違法な許可処分によって,既存の小売販売業者には,営業利益の減少という損害が生じるところ,営業活動の制約等(法36条,39条,40条等)に照らすと,既存の小売販売業者にとっては他の営業所との距離が重要となる。したがって,距離基準に反する違法な許可処分によって害される利益は大きい。 ウ前記ア及びイによれば,本件許可制によって保護される既存の小売販売業者の経済的利益は,法律上保護された利益であると解すべきであるから,原 に反する違法な許可処分によって害される利益は大きい。 ウ前記ア及びイによれば,本件許可制によって保護される既存の小売販売業者の経済的利益は,法律上保護された利益であると解すべきであるから,原告には,本件処分の取消しを求める原告適格がある。 【被告の主張】ア本件処分に係る法令の文言,趣旨及び目的法の目的規定(1条)には,小売販売業者の経済的利益を保護することを示唆する文言は存在せず,法は上記利益の保護を直接の目的とはしていない。 また,本件許可制の趣旨は,たばこ専売法の下での小売人指定制度の廃止に伴う激変を緩和して零細なたばこ小売人の保護を図ることにより,製造たばこの流通秩序を維持し,たばこ産業の健全な発展に資することにあり,既存の小売販売業者の経済的利益を確保することにはない。すなわち,法23条各号には,直接既存の小売販売業者の経済的利益を保護すること を明示した規定はない。また,告示及び取扱要領では,「距離基準の特例」として,低調店の特例,人の流れが異なる場合の特例,視認性がない場合の特例等(関係法令等の定め(3)イ,同(4)ア)が設けられているが,これは主として消費者の利便の確保を図るという目的によるものであって,既存の小売販売業者の経済的利益よりも消費者の利便が優先されることが示されている。また,身体障害者等の特例(標準距離の緩和)(同(3)イ)も,既存の小売販売業者の経済的利益よりも,身体障害者等の福祉が優先される場合があることを示すものである。 そして,製造たばこ小売販売業の許可に当たり,周辺の既存の小売販売業者に対する周知や意見聴取を義務付ける規定は設けられていない。 上記によれば,本件許可制は,既存の小売販売業者の経済的利益の保護を図る趣旨によるものではないというべきである。 イ本件処分に 売業者に対する周知や意見聴取を義務付ける規定は設けられていない。 上記によれば,本件許可制は,既存の小売販売業者の経済的利益の保護を図る趣旨によるものではないというべきである。 イ本件処分において考慮されるべき利益の内容及び性質本件許可制によって保護される利益は,原告主張によっても経済的利益であるにすぎず,人の生命,身体の安全や健康等と比較し,要保護性の低いものであって,これが個々人の個別的利益として保護されているか否かは慎重に吟味されるべきものである。そして,前記アによれば,本件許可制によって既存の小売販売業者の経済的利益が保護されているとしても,それは本件許可制による反射的利益にすぎず,法律上保護された利益とはいえない。 ウ前記ア及びイによれば,既存の小売販売業者の経済的利益は,法律上保護された利益であるとはいえないから,原告には,本件処分の取消しを求める原告適格はなく,同取消しを求める訴えは却下されるべきである。 なお,仮に,法22条に身体障害者等以外の小売販売業者を保護する趣旨が含まれているとしても,当該小売販売業者は零細経営者に限られるべきである(最高裁平成3年(行ツ)第148号同5年6月25日第二小法 廷判決・集民169号175頁(以下「平成5年判決」という。)参照)ところ,原告が零細経営者であることを認めるに足りる証拠はない。 (2) 争点(2)ア(本件処分の適法性)について【被告の主張】処分行政庁は,本件調査書を受けて,本件許可申請の審査を行った結果,本件営業所の本件距離基準適合性が認められ,その他,法23条各号に該当する事由がなかったことから,本件処分をしたのであって,本件処分は適法である。 ア本件距離基準適合性について(ア) 取扱要領の定める「距離の測定方法」(関連法令等の定め( ,法23条各号に該当する事由がなかったことから,本件処分をしたのであって,本件処分は適法である。 ア本件距離基準適合性について(ア) 取扱要領の定める「距離の測定方法」(関連法令等の定め(4)イ)の趣旨は,歩行者が通常歩行する経路に沿って距離を測定することによって,予定営業所と既設営業所が実質的にどの程度離れているかを判断することにある。そして,店舗の敷地が接する道路の近隣に横断歩道等があれば,歩行者は通常,当該横断歩道等を通行して当該道路を横断すると考えられるから,予定営業所又は既設営業所から横断歩道等までの距離は,予定営業所又は既設営業所の店舗の敷地に接する道路で,出入口から最も近い位置を起点とし,横断歩道等までを測定して,概ね20メートル以内であるか否かを判断するのが妥当である。 (イ) ところで,本件店舗の敷地に接する道路で,同店舗出入口から最短の地点は本件交点であり,本件交点から本件横断歩道までは20メートル以内であるから,本件営業所間距離は,Aルートで測定すべきことになる。そして,この距離は約178メートルであるから,本件営業所は,本件距離基準に適合している。 イ行政手続法5条2項及び3項違反は認められないことについて(ア) 行政手続法5条3項(審査基準の公開義務)違反について本件マニュアルは,bにおいて定められた取扱規程にすぎず,同条の 「審査基準」には当たらないから,本件マニュアルの非公開は同項違反にはならない(以下,同項の義務を「公開義務」という。)。 (イ) 同条2項(審査基準の具体化義務)違反について取扱要領における予定又は既設営業所の「概ね20メートル以内」という基準(関連法令の定め(4)イ(イ)②)は,両営業所間の距離に係る距離基準自体ではなく,両営業所が横断禁止道路以外の道路 について取扱要領における予定又は既設営業所の「概ね20メートル以内」という基準(関連法令の定め(4)イ(イ)②)は,両営業所間の距離に係る距離基準自体ではなく,両営業所が横断禁止道路以外の道路を隔てて位置する場合において,両営業所間の距離について,横断歩道等を通行して測定するか否かを判断するための基準にすぎないから,距離基準と同程度の厳格性が必要とされるものではない。むしろ,行政庁が個々の許可申請に係る予定営業所の特殊性等を踏まえた適切な判断をするためには,ある程度の幅を持たせておくのが合理的である。したがって,取扱要領の上記基準に係る定めは同項に違反するものではない(以下,同項の義務を「具体化義務」という。)。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)によれば,製造たばこ小売販売業許可申請に係る審査基準は,行政手続法5条2項及び3項のいずれにも違反しない。 なお,審査基準は専ら許認可等の申請者に対して,許認可等がなされるか否かの予測可能性を与えるためのものであるところ,原告は本件許可申請の申請者ではないから,仮に,審査基準に係る具体化義務違反又は公開義務違反が認められるとしても,これらの義務違反は,原告にとって「自己の法律上の利益に関係のない違法」である。したがって,これらを理由として原告が本件処分の取消しを求めることはできない(行政事件訴訟法10条1項)。 ウ法22条違反は認められないことについて製造たばこ小売販売業許可申請は,「製造たばこの小売販売(消費者に対する販売をいう。以下同じ。)を業として行おうとする者」がするものとされているところ(法22条1項),フランチャイズ契約による営業は, フランチャイザー(本部)及びフランチャイジー(加盟店)による共同経営と認められ,訴外会社は,訴外人と共同して製造たばこ小売販売業 るところ(法22条1項),フランチャイズ契約による営業は, フランチャイザー(本部)及びフランチャイジー(加盟店)による共同経営と認められ,訴外会社は,訴外人と共同して製造たばこ小売販売業を営む者であるといえるから,訴外会社が本件許可申請を行ったことは,同項に違反しない。また,訴外会社は,本件店舗を自ら賃借した上で,本件店舗の所在地を「営業所の所在地」(同条2項4号)として許可申請をしたのであるから,これを偽ったものでもない。したがって,本件許可申請は,同条に違反しない。 【原告の主張】ア本件距離基準違反について(ア) まず,取扱要領では,「距離の測定方法」として,予定営業所と既設営業所との距離測定について,店舗出入口を起点とすることとされているところ(関係法令等の定め(4)イ(ア)),「距離測定経路の特例」も「距離の測定方法」における特例として定められているから,同特例②に係る営業所から横断歩道等までの距離測定についても,営業所間の距離測定と同様,店舗出入口を距離測定の起点とすべきである。また,消費者は,横断歩道を通行するかどうかについて,通常,店舗出入口を出て直ちに判断する(そして,横断歩道を通行する場合には,横断歩道の方向へ向かって敷地内を移動し,横断歩道を渡らずに既設営業所へ向かう場合には,そのまま敷地内を既設営業所の方向に向かって移動するはずである)と考えられることから,この意味でも,営業所から横断歩道までの距離については,店舗出入口を起点として測定すべきである。 (イ) ところで,本件店舗の出入口と本件横断歩道との距離は,20メートルを超えているから(前提事実(4)イ),距離測定経路の特例において,本件営業所の「概ね20メートル以内」に横断歩道があるときには当たらず,本件営業所間距離は,本件道路を直 道との距離は,20メートルを超えているから(前提事実(4)イ),距離測定経路の特例において,本件営業所の「概ね20メートル以内」に横断歩道があるときには当たらず,本件営業所間距離は,本件道路を直角に横断して測定すべきこと(すなわち,Bルートで測定すべきこと)になる(関係法令等の定 め(4)イ(イ)②)。そして,この距離は約140メートルであるから,本件営業所は,本件距離基準に適合していない。 イ行政手続法5条2項及び3項違反について(ア) 行政手続法5条3項(審査基準の公開義務)違反について本件マニュアルは,bが作成したものであるが,同マニュアルには,距離基準に係る距離の測定方法が記載され,製造たばこ小売販売業許可申請に係る「審査基準」となっているにもかかわらず,「公に」されていないから,同項に反する。 (イ) 同条2項(審査基準の具体化義務)違反について取扱要領は「審査基準」に当たるところ,取扱要領では,予定又は既設営業所から横断歩道等までの距離について,当該営業所の「概ね20メートル以内」と定められているのみであり,具体的ではないから,上記定めは,同項に反する。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)によれば,製造たばこ小売販売業許可申請に係る審査基準は,行政手続法5条2項及び3項に違反しており,本件処分は,このような審査基準に従ってなされたものであるから,違法である。 なお,原告は,本件許可申請の申請者ではないが,同条の趣旨は,処分行政庁の恣意を抑制し,予測可能性を担保することにあるから,原告も同条違反を主張することができる。 ウ法22条違反について製造たばこ小売販売業許可申請は,予定営業所において小売販売業に従事する者が申請するものとされているところ(法22条1項),本件許可申請は,訴外人ではなく,訴外 きる。 ウ法22条違反について製造たばこ小売販売業許可申請は,予定営業所において小売販売業に従事する者が申請するものとされているところ(法22条1項),本件許可申請は,訴外人ではなく,訴外会社により行われたものである。また,本件店舗は,訴外会社の営業所ではないから,訴外会社が本件店舗の所在地を「営業所の所在地」(同条2項4号)として本件許可申請をしたことは,これを偽った虚偽申請となる。したがって,本件許可申請は同条に違反し ており,本件処分は,このような不正の手段によるものであるから,違法である。 (3) 争点(2)イ(本件処分の国家賠償法上の違法性)について【原告の主張】前記(2)の【原告の主張】のとおり,本件処分は違法であるから,国家賠償法上も違法となる。 【被告の主張】アまず,前記(1)の【被告の主張】のとおり,原告には,本件処分によって侵害される法律上保護された利益がないから,原告との関係において,本件処分が国家賠償法上違法とされる余地はない。 イまた,前記(2)の【被告の主張】のとおり,本件処分は適法にされたものであるから,何ら違法性は存在しない。仮に,本件処分に何らかの瑕疵があり,取り消される場合であっても,直ちに公務員の行った行為が国家賠償法上違法になるのではない。そして,本件処分は,法,令,規則,告示及び取扱要領に従ってなされた(本件距離基準の適合性については,bが本件マニュアルに従って測定した本件営業所間距離を認定資料として,判断された)ものであるから,本件処分を行うに当たり,公務員が職務上の法的義務に違反したことはなく,本件処分が国家賠償法上違法となることはない。 (4) 争点(2)ウ(損害の発生及びその額)について【原告の主張】原告の平成20年度及び平成21年度における の法的義務に違反したことはなく,本件処分が国家賠償法上違法となることはない。 (4) 争点(2)ウ(損害の発生及びその額)について【原告の主張】原告の平成20年度及び平成21年度における純利益は1か月当たり平均21万4375円であったところ,本件処分の後,平成22年4月から同年7月までの間の純利益額は59万0489円にとどまった。同期間における純利益額は26万7011円(21万4375円×4か月-59万0489円)減少したが,その原因としては,本件店舗で製造たばこが販売されたこ と以外には考えられない。したがって,原告には,本件処分によって,上記純利益額相当の損害(逸失利益)が発生したというべきである。 【被告の主張】製造たばこの売上げ(純利益)の減少は,様々な要因により生ずるものであり,本件店舗での販売と原告の純利益の減少との間には因果関係が認められない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(原告適格)について(1) 行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによる の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項参照。以上につき,最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年1 2月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁参照)。 上記の見地に立って,原告が本件処分の取消しを求める訴えの原告適格を有するか否かについて検討する。 (2) 本件許可制に係る法令の文言,趣旨及び目的アまず,法1条(目的規定)には,一般的公益に加えて,小売販売業者の経済的利益等の個々人の個別的利益をも保護することを示す文言は含まれていない。 イしかしながら,法22条1項は,製造たばこの小売販売業を行おうとする者は,当分の間,営業所ごとに財務大臣の許可を受けなければならない旨規定しており(本件許可制),これは,たばこ専売法の下において指定を受けた製造たばこの小売人には零細経営者が多いことや身体障害者福祉法等の趣旨に従って身体障害者等についてはその指定に際して特別の配慮が加えられてきたことなどにかんがみ,たばこ専売制度の廃止に伴う激変を回避することによって,たばこ事業法附則10条1項に基づき製造たばこ小売販売業を行うことの許可を受けた者 の指定に際して特別の配慮が加えられてきたことなどにかんがみ,たばこ専売制度の廃止に伴う激変を回避することによって,たばこ事業法附則10条1項に基づき製造たばこ小売販売業を行うことの許可を受けた者とみなされる小売人(継続小売販売業者)の保護を図るため,当分の間に限り,製造たばこ小売販売業について許可制を採用することとしたものである(乙5,6。平成5年判決参照)。 ウそして,法(たばこ事業法)は,昭和59年8月10日,成立し,昭和60年4月1日,施行されたものであり,本件処分は平成22年3月25日になされたものであるが,本件処分時においても,身体障害者福祉法24条1項及び母子及び寡婦福祉法26条1項は,身体障害者や寡婦が製造たばこ小売販売業許可申請をした場合において,法23条各号の規定に該当しないときは財務大臣はその者に当該許可を与えるよう努めなければならない旨規定しており,身体障害者等の特例(関連法令等の定め(3)イの(1)号,同(3)ウ)に照らしても,製造たばこ小売販売業を営もうとする身体障害者等 の保護の趣旨の意義は失われていないというべきである。そして,取扱高基準の内容(同(1)ウ,同(2)イ)及び身体障害者等の特例(標準本数の緩和)(同(3)ウ),また,距離基準の対象外とされる低調店の意義(同(3)イの(3)号)等によれば,一定の小規模,零細経営者の新規参入と存続が予定されているものと認められ(後記オ参照),本件処分時においても製造たばこ小売販売業者には零細経営者が少なからず存在することは公知の事実といえる。 そうすると,本件処分時においても,零細経営者や身体障害者等の保護の必要性が失われたとはいえない。 エ以上によれば,本件許可制は,継続小売販売業者のみならず,法(たばこ事業法)下で製造たばこ小売販売業の と,本件処分時においても,零細経営者や身体障害者等の保護の必要性が失われたとはいえない。 エ以上によれば,本件許可制は,継続小売販売業者のみならず,法(たばこ事業法)下で製造たばこ小売販売業の許可を受けた者(小売販売業者)の経済的利益の保護をもその目的とするものであると解するのが相当である。 そして,距離規制は,予定営業所と既設営業所との距離が距離基準に不適合の場合,当該予定営業所に係る製造たばこ小売販売業許可申請について許可しないこととするものであるから(関係法令の定め(4)ア),既存の小売販売業者(小売販売業者及び継続小売販売業者)に対し,一定の距離の範囲内での独占的な地位を保障することによって,経営の安定化を図り,その経済的利益を保護するものであり,前記イの本件許可制の目的を端的に実現するものであるといえる。 オところで,被告は,①距離基準の特例(低調店の特例,人の流れが異なる場合の特例,視認性がない場合の特例,身体障害者等の特例(標準距離の緩和)等)により,既存の小売販売業者の経済的利益よりも,消費者の利便や身体障害者等の福祉が優先されることが示されており,また,②製造たばこ小売販売業の許可に当たり,周辺の既存の小売販売業者に対する周知や意見聴取を義務付ける規定がないことから,本件許可制は既存の小 売販売業者の経済的利益の保護を目的とするものではないといえる旨主張する。 しかしながら,上記①の各特例は,距離規制による既存の小売販売業者の保護の「特例」であって,その限度で消費者の利便や身体障害者等の福祉と既存の小売販売業者の保護等との調和を図ったものと解される。また,人の流れが異なる場合の特例や視認性がない場合の特例については,既存の小売販売業者が受ける影響が限定的なものとなることから設けられた特例と考え 販売業者の保護等との調和を図ったものと解される。また,人の流れが異なる場合の特例や視認性がない場合の特例については,既存の小売販売業者が受ける影響が限定的なものとなることから設けられた特例と考えられ,むしろ距離規制の趣旨は既存の小売販売業者の経済的利益の保護にあることが示されているともいえる。 そして,上記②の点については,本件許可制の趣旨及び目的を考察する際の一考慮要素になると考えられるものの,この点のみから本件許可制が既存の小売販売業者の保護を目的としていないと結論付けることはできず,前記イないしエの検討結果に照らすと,被告の上記②の主張を採用することは困難である。 なお,被告は,本件許可制に,既存の小売販売業者を保護する趣旨が含まれているとしても,当該業者は零細経営者に限られるべきであるところ,原告が零細経営者であることを認めるに足りる証拠はない旨主張するが,そもそも零細経営者とは何かについて,被告において主張されておらず,本件許可制の内容等に照らし,被告の上記主張を採用することもまた困難である。 カ前記イないしオによれば,本件許可制は,既存の小売販売業者の経済的利益を個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むものというべきであって,法1条の目的は,このような既存の小売販売業者の利益を保護する趣旨をも含むものと解するのが相当である。 (3) 本件処分において考慮されるべき利益の内容及び性質について本件処分において考慮されるべき利益には,既存の小売販売業者の経済的 利益が含まれ,これは,生命,身体の安全等の利益と比べれば要保護性が低いものであるが,前記(2)イないしオの検討内容に照らせば,単なる反射的利益ではなく,個々人の個別的利益として保護されたものであるといえる。 (4) 前記(2)及び(3)によれば, れば要保護性が低いものであるが,前記(2)イないしオの検討内容に照らせば,単なる反射的利益ではなく,個々人の個別的利益として保護されたものであるといえる。 (4) 前記(2)及び(3)によれば,距離規制の範囲内において,既に製造たばこ小売販売業の許可を受けている(又は受けた者とみなされている)既存の小売販売業者は,当該距離規制に違反して製造たばこ小売販売業の許可がされたとして,他者に対する許可の取消しを求めるにつき,「法律上の利益を有する者」に当たると解するのが相当である。 したがって,原告は,本件処分の取消しを求める原告適格を有するものというべきである。 そこで,以下,本件処分の適法性(争点(2)ア)について検討する。 2 争点(2)ア(ア)(本件距離基準適合性)について(1) 認定事実前提事実並びに証拠(各項に掲記するもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実を認めることができる。 ア本件営業所付近の現地調査(距離基準適合調査等)は,b(熊本支店)によって実施され,本件営業所間距離については,まず,本件営業所から本件横断歩道までの距離につき,本件マニュアルに従って,本件交点を起点として17.9メートルと測定された。また,本件店舗の出入口中央と原告店舗の出入口中央との距離については,Aルートでは178.5ないし178.9メートル,Bルートでは136.5ないし136.9メートルと測定された。(乙3の2)イ前記アの調査に関する調査書(本件調査書)において,「予定営業所の場所的要件」に係る「位置の適否」及び「距離の適否」各欄は「財務(支)局で記入」され,「距離の適否」に係る「認定資料」欄はbが記載することとされていた。そして,同欄において,「標準距離」が150メ ートルと記載され,また,「予定営業所周辺の既設 「財務(支)局で記入」され,「距離の適否」に係る「認定資料」欄はbが記載することとされていた。そして,同欄において,「標準距離」が150メ ートルと記載され,また,「予定営業所周辺の既設店状況」として,原告営業所との距離(本件営業所間距離)は,前記アのとおり,本件交点から本件横断歩道までの距離が17.9メートル(20メートル以内)であることから,本件横断歩道を通行して測定した距離(Aルートによる距離)である178メートルと記載された。(乙3の2)ウ処分行政庁は,本件調査書を受け,本件許可申請の審査を行った結果,本件営業所の本件距離基準適合性が認められ,その他,法23条各号に該当する事由がなかったことから,本件処分をした。(乙3の1,2)(2) ところで,製造たばこ小売販売業を営む営業所の敷地の形状や広さ,道路との位置関係や接道状況等については様々な状況が想定されるところ,当該営業所に係る店舗の利用者としては,当該道路を横断する場合には,当該敷地の接道部分に至り,その地点から見て,横断歩道が近接して設置されていれば,当該横断歩道を通行するであろうし,逆に,横断歩道が接道部分から離れていれば,横断歩道外で道路を横断するであろうと考えられる。 距離測定経路の特例として,予定営業所と既設営業所が横断禁止道路以外の道路を隔てて位置する場合において,当該営業所の「概ね20メートル以内」に横断歩道等がある場合には,両営業所間の距離は,当該横断歩道等を通行して測定することとされているのは,上記のような観点から設けられた基準であると解される。そして,利用者は,店舗出入口から接道部分までは最短距離で至る経路で通行するものと考えられるから,上記の場合に当たるかどうかについては,接道部分において店舗出入口から最短距離となる地点(通常は, 。そして,利用者は,店舗出入口から接道部分までは最短距離で至る経路で通行するものと考えられるから,上記の場合に当たるかどうかについては,接道部分において店舗出入口から最短距離となる地点(通常は,店舗出入口から道路に対して垂直に経路をとり,当該接道部分に至った点(以下「交点」という。)となる。)から,横断歩道等の直近部分までを測定して,これが「概ね20メートル以内」かどうかによって判断すべきであると解するのが相当である。 (3)ア前記(2)に関して,原告は,まず,利用者において横断歩道等を通行 するかどうかを判断するのは,接道部分(交点)ではなく,店舗出入口を出た時点である(そして,横断歩道等を通行する場合には,当該店舗出入口から横断歩道等の方向へ向かって敷地内を移動するはずである)から,営業所から横断歩道等までの距離については,当該営業所に係る店舗の出入口を起点として測定すべきである旨主張する。 しかしながら,原告の上記主張は,当該店舗出入口から横断歩道等まで直線的にアクセスできる状況(すなわち,当該店舗の敷地の形状や横断歩道等との位置関係がそのようなアクセスを可能とする状況)にあることを前提とするものと考えられるが,前記(2)のとおり,店舗の敷地の形状や道路との位置関係等については様々な状況があり得るのであり,上記前提は非現実的であると言わざるを得ない。 そして,利用者としては,店舗出入口から接道部分までの距離如何にかかわらず(例えば,同距離が20メートルを超えている場合であっても),接道部分に至った時点で,その時点で自らが立っている地点と横断歩道等との距離感によって,当該横断歩道等を通行して横断するか,当該横断歩道等外で横断するか,判断するものと考えられる。例えば,上記のとおり,店舗出入口から接道部分までで既に2 立っている地点と横断歩道等との距離感によって,当該横断歩道等を通行して横断するか,当該横断歩道等外で横断するか,判断するものと考えられる。例えば,上記のとおり,店舗出入口から接道部分までで既に20メートルを超えている場合であっても,上記地点に近接して横断歩道等が設置されている場合には,当該横断歩道等を通行するものと考えられる。 したがって,原告の上記主張を採用することは困難である。 イまた,原告は,取扱要領において,予定営業所と既設営業所との距離については,店舗出入口中央を距離測定の起点として測定することとされている(関係法令等の定め(4)イ)から,営業所の「概ね20メートル以内」に横断歩道等があるかどうかを測定するに当たっても,同様に,店舗出入口を起点として測定すべきである旨主張する。 しかしながら,横断歩道等までの距離の測定に当たって,店舗出入口を 起点とすると,店舗出入口から横断歩道等までの距離が20メートルを超えている場合には,たとえ,横断歩道等が接道部分(交点)から,極く近接した地点にあり,通行人は,通常,当該横断歩道等を通行するものと考えられる場合にも(前記ア参照),横断歩道等外を横断して通行するとして,営業所間の距離を測定することになり,不合理である。 加えて,店舗出入口を起点とすると,4車線道路の特例との関係でも著しく不合理な結果を招くことになる。すなわち,予定営業所と既設営業所が往復合計4車線以上の道路を隔てて位置する場合,いずれかの営業所の「概ね20メートル以内」に横断歩道等がある場合(で,かつ,通行人の主たる流れがこれを通行する立地条件にあると認められる場合)には,4車線道路の特例が適用されず,既設営業所は距離基準の対象となり,当該横断歩道等を通行して測定した距離が距離基準に適合するかどうかが審 主たる流れがこれを通行する立地条件にあると認められる場合)には,4車線道路の特例が適用されず,既設営業所は距離基準の対象となり,当該横断歩道等を通行して測定した距離が距離基準に適合するかどうかが審査されることになる(関連法令等の定め(3)イの(11)号)。ところが,店舗出入口を横断歩道等までの距離測定の起点とすると,店舗出入口から横断歩道等までの距離が20メートルを超えている場合には,横断歩道等がどの位置にあっても,4車線道路の特例が適用され,当該既設営業所が距離基準の対象外となる。すなわち,たとえ横断歩道等が接道部分(交点)の直近にあって,店舗の利用者が当該横断歩道等を通行することが十分に想定され,当該横断歩道等を通行する経路で測定した両営業所間の距離が,標準距離に満たない場合であっても,距離基準が適用されないこととなり,既存の小売販売業者の経済的利益が保護されず,本件許可制の趣旨が没却されることになってしまうのである。 以上によれば,原告の上記主張もまた失当である。 (4) 前記(1)ないし(3)のとおりであるから,予定又は既設営業所の「概ね20メートル以内」に横断歩道等があるかどうかを判断するに当たっては,当該営業所の営業行為を行う店舗の出入口から道路まで最短距離となる地 点(交点)を起点として,横断歩道等の直近部分までを測定すべきであると解するのが相当である(なお,本件マニュアルの記載内容(前提事実(3)イ)も同旨である。)。 上記によれば,本件営業所と本件横断歩道との距離は,本件交点を起点として測定されることとなり,本件交点から本件横断歩道までの距離が20メートル以内であることから,本件営業所間距離は,本件横断歩道を通行して測定した距離(Aルートによる距離)によるべきことになる。そして,同距離は約178メート 件交点から本件横断歩道までの距離が20メートル以内であることから,本件営業所間距離は,本件横断歩道を通行して測定した距離(Aルートによる距離)によるべきことになる。そして,同距離は約178メートルであるから(前提事実(4),認定事実ア,イ),本件営業所は本件距離基準に適合しているといえる。 したがって,この点に関して,本件処分を取り消すべき理由は認められない。 3 争点(2)ア(イ)(行政手続法5条2項及び3項違反の有無)について(1) 原告は,①本件マニュアルは同条の「審査基準」に該当するから,同マニュアルが公開されていないこと(前提事実(3)ア)が公開義務に反する,また,②取扱要領は審査基準に当たるところ,予定又は既設営業所から横断歩道等までの距離について「概ね20メートル以内」と定められているのみであるから,取扱要領の上記定めは,具体化義務に反する旨主張する。 (2) しかしながら,まず,上記①(公開義務違反)の点については,行政手続法5条にいう「審査基準」とは,「内閣又は行政機関が定める」ものであって,「申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう」ところ(同法2条8号柱書,ロ),本件マニュアルは,bによって,本件許可制に係る許可事務について社員の参考として作成されたものにすぎず(前提事実(3)ア,認定事実ウ),本件マニュアルがこれに当たらないことは明らかである。したがって,原告の前記(1)①の主張は失当である。 (3) 次に,上記②(具体化義務違反)の点については,行政手続法5条2項 では,審査基準を定めるに当たっては「許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない」とされているところ,製造たばこ小売販売業許可申請に係る許可の可否 政手続法5条2項 では,審査基準を定めるに当たっては「許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない」とされているところ,製造たばこ小売販売業許可申請に係る許可の可否の審査に当たっては,地域の特性や実態等を踏まえた上で,既存の小売販売業者の経済的利益の保護や身体障害者等の保護といった社会政策的観点等を考慮する必要があることに照らすと,許可基準の詳細については,行政機関に広い裁量が認められると解される。 そして,取扱要領における予定又は既設営業所の「概ね20メートル以内」という基準は,既設営業所と予定営業所との距離測定に当たって,距離測定経路を決定する際の一基準であって,当該営業所の敷地の形状や広さ,道路との位置関係,接道状況,交通事情等は様々であり得るところ,上記基準の趣旨(前記2(2)参照)に照らせば,上記距離測定経路の決定に当たっては,これらの諸事情を踏まえた上で判断することを要するから,ある程度の幅を設けておくことに合理性があるといえる。 したがって,上記基準に係る定めは,「できる限り」具体的なものということができ,これが同項に違反するということはできないから,原告の前記(1)②の主張もまた失当である。 (4) 前記(2)及び(3)によれば,本件処分については,前記(1)①及び②の各点に関し,違法であるとはいえない。 ところで,行政手続法は,処分等に関する手続等に関し,「行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について,その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。・・・)の向上」を図ることを目的とするものであるところ(同法1条1項),上記「透明性」に係る「国民」とは,不利益処分の相手方等の一定の利害関係人を意味すると解されている。 そして,同法5条は,同法1条を受けて, を図ることを目的とするものであるところ(同法1条1項),上記「透明性」に係る「国民」とは,不利益処分の相手方等の一定の利害関係人を意味すると解されている。 そして,同法5条は,同法1条を受けて,行政庁による申請処理の公正を確保し,その判断の透明性を向上させることを目的としており,その趣旨は, 審査過程における,行政庁の恣意・独断を排し,裁量権の濫用を防止するとともに,申請者にとって行政機関の応答の予測可能性を高め,申請人の手続的権利を保護することにある。 上記によれば,同条2項及び3項は,処分等の申請者ではない者の権利利益の保護をも目的とするものということはできない。そうすると,原告による前記(1)①及び②の各主張は,原告の権利利益を保護する趣旨で設けられたものではない法規に違反する旨の主張であり,原告にとって「自己の法律上の利益に関係のない違法」を理由として本件処分の取消しを求めるものであって,そもそも主張自体失当であると言わざるを得ない(行政事件訴訟法10条1項)。 4 争点(2)ア(ウ)(法22条違反の有無)について(1) 原告は,本件処分について,訴外会社が「製造たばこの小売販売(消費者に対する販売をいう。以下同じ。)を業として行おうとする者」(法22条1項)に該当しないにもかかわらず,本件許可申請を行っており,本件処分は,このような不正の手段によるものであるから,違法である旨主張する。 しかしながら,訴外会社は,自社のフランチャイズ事業として,本件店舗を自ら賃借した上,訴外人との間でフランチャイズ契約を締結し,訴外人において,同契約に基づき,訴外会社が開発した経営ノウハウ及び商標その他営業を象徴する標章を全面的に使用し,訴外会社による継続的な指導・援助の下,本件店舗においてコンビニエンス・ストア「a」d店 人において,同契約に基づき,訴外会社が開発した経営ノウハウ及び商標その他営業を象徴する標章を全面的に使用し,訴外会社による継続的な指導・援助の下,本件店舗においてコンビニエンス・ストア「a」d店の経営を行っているのであり(前提事実(1)ウ,乙3の3,調査嘱託の結果),同契約の内容(訴外会社と訴外人との事業遂行上の関係),本件店舗の権利関係等に照らせば,訴外会社は,訴外人を通じて,製造たばこの小売販売(消費者に対する販売)を業として行っているということができる。 また,法22条において,製造たばこ小売販売許可申請は,同小売販売を 業として行おうとする者がなすべきであるとされている趣旨は,名義貸しによる無許可営業の助長等によって,たばこ産業の健全な発展,財政収入の安定的確保という法の目的が阻害されることを防止することにあると解されるところ,本件において,訴外会社が製造たばこ小売販売業者許可の申請者となることによって,名義貸しによる無許可営業の助長等の弊害が惹起されるとは考え難い。 上記によれば,訴外会社が本件営業所の所在地を「営業所の所在地」として,本件許可申請をしたことについて,法22条違反の問題は生じないというべきである。 (2) 以上のとおり,本件許可申請について,法22条違反は認められないから,原告の前記(1)の主張は失当である。 5 争点(2)イ(国家賠償法上の違法性の有無)について前記2ないし4のとおり,本件処分について,原告主張に係る違法な点はないから,国家賠償法1条1項の違法性も存在しない。 したがって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の国家賠償請求には理由はない。 6 結論以上によれば,原告の各請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条 の争点について判断するまでもなく,原告の国家賠償請求には理由はない。 結論以上によれば,原告の各請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 熊本地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官片山昭人 裁判官中川正充 裁判官井上結美子
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