平成28(ワ)2720 特許権侵害差止請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年2月16日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-86558.txt

キーワード

判決文本文47,492 文字)

平成29年2月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成28年(ワ)第2720号特許権侵害差止請求事件口頭弁論の終結の日平成28年12月9日判決 原告フルタ電機株式会社同訴訟代理人弁護士小南明也 被告ニチモウ株式会社(以下「被告ニチモウ」という。) 被告株式会社ニチモウワンマン(以下「被告ワンマン」という。) 被告 A(以下「被告A」という。) 被告西部機販愛知有限会社(以下「被告西部機販」という。)被告ら訴訟代理人弁護士沖田哲義同道山智成同神邊健司同訴訟復代理人弁護士玉岡範久同補佐人弁理士伊藤高英 主文 1 被告ワンマンは,別紙物件目録1記載の「生海苔異物除去機」を,譲渡し, 貸渡しし,輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告ワンマンは,別紙物件目録2記載の「回転円板」を,譲渡し,貸渡しし,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 3 被告ワンマンは,その保持する別紙物件目録1記載の「生海苔異物除去機」及び同目録2記載の「回転円板」を廃棄せよ。 4 被告西部機販は,別紙物件目録1記載の「生海苔異物除去機」を,譲渡し,貸渡しし,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 5 被告西部機販は,別紙物件目録2記載の「回転円板」を,譲渡し,貸渡しし,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 6 被告西部機販は,その保持する別紙 くは貸渡しの申出をしてはならない。 5 被告西部機販は,別紙物件目録2記載の「回転円板」を,譲渡し,貸渡しし,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 6 被告西部機販は,その保持する別紙物件目録1記載の「生海苔異物除去機」及び同目録2記載の「回転円板」を廃棄せよ。 7 被告ワンマンは,原告に対し,444万3200円,及びうち409万9000円に対する平成28年2月6日から,うち34万4200円に対する同年11月3日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 8 被告ワンマンは,原告に対し,117万6200円及びこれに対する平成28年11月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 9 被告西部機販は,原告に対し,570万円及びこれに対する平成28年11月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告の被告ワンマン及び被告西部機販に対するその余の請求並びに被告ニチモウ及び被告Aに対する請求をいずれも棄却する。 11 訴訟費用は,原告に生じた費用の5分の1及び被告ワンマンに生じた費用の5分の3を被告ワンマンの負担とし,原告に生じた費用の10分の1及び被告西部機販に生じた費用の5分の2を被告西部機販の負担とし,その余の費用を全て原告の負担とする。 12 この判決は,第1項,第2項,第4項,第5項,第7項ないし第9項に限 り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告ニチモウは,別紙物件目録1記載の「生海苔異物除去機」を,譲渡し,貸渡しし,輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告ニチモウは,別紙物件目録2記載の「回転円板」を,譲渡し,貸渡しし,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 3 被告ニチモウは,そ ,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告ニチモウは,別紙物件目録2記載の「回転円板」を,譲渡し,貸渡しし,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 3 被告ニチモウは,その保持する別紙物件目録1記載の「生海苔異物除去機」及び同目録2記載の「回転円板」を廃棄せよ。 4 主文第1 項ないし第6項同旨 5 被告ニチモウ,被告ワンマン及び被告Aは,原告に対し,連帯して546万円,及びうち410万円に対する訴状送達の日の翌日(被告ニチモウにつき平成28年2月5日,被告ワンマンにつき同月6日,被告Aにつき同月7日)から,うち136万円に対する平成28年11月3日(同年10月28日付け訴え変更申立書⑵の送達の日の翌日)から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6(1) 主位的請求被告ニチモウ,被告ワンマン,被告A及び被告西部機販は,原告に対し,連帯して1390万円及びこれに対する平成28年11月3日(上記訴え変更申立書の送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 予備的請求ア被告ニチモウ,被告ワンマン及び被告Aは,原告に対し,連帯して820万円及びこれに対する平成28年11月3日(上記訴え変更申立書の送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イ主文第9項同旨 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,発明の名称を「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」とする特許第3966527号(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が,別紙目録1記載の生海苔異物除去機(以下「本件装置」という。)が上記特許発明の技術的範囲に属し,別紙物件目録2記載の回転円板(以下「 う。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が,別紙目録1記載の生海苔異物除去機(以下「本件装置」という。)が上記特許発明の技術的範囲に属し,別紙物件目録2記載の回転円板(以下「本件回転円板」という。)が本件装置の「生産にのみ用いる物」(特許法〔以下「法」という。〕101条1号)であると主張して,次の各請求をする事案である。 (1) 差止請求(法100条1項)ア被告ニチモウ及び同ワンマンに対し,本件装置の譲渡,貸渡し,輸出又は譲渡若しくは貸渡しの申出の差止めを求める。(上記第1の1,4)イ被告西部機販に対し,本件装置の譲渡,貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出の差止めを求める。(上記第1の4)ウ被告ニチモウ,同ワンマン及び同西部機販に対し,本件回転円板の譲渡,貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出の差止めを求める。(上記第1の2,4)⑵ 廃棄請求(法100条2項)被告ニチモウ,同ワンマン及び同西部機販に対し,本件装置及び本件回転円板の各廃棄を求める。(上記第1の3,4)⑶ 損害賠償請求ア被告ワンマンによる本件装置の販売(下記イの販売は含まれない。)に係る損害賠償請求被告ワンマン及び同ニチモウに対し,本件特許権侵害の共同不法行為に基づき,また,被告Aに対し,会社法429条1項に基づき,連帯して,損害賠償金546万円,及び,うち410万円に対する不法行為日 より後の日である各訴状送達の日の翌日から,うち136万円に対する不法行為日より後の日である平成28年10月28日付け訴え変更申立書⑵の送達の日の翌日から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。(上記第1の5)イ被告ワンマンの被告西部機販に対する本件装置の販売及び被告西部機販による の送達の日の翌日から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。(上記第1の5)イ被告ワンマンの被告西部機販に対する本件装置の販売及び被告西部機販による転売に係る損害賠償請求(ア) 主位的請求被告ワンマンの被告西部機販に対する本件装置の販売及び被告西部機販による転売につき,被告ワンマン,同ニチモウ及び同西部機販に対し,共同不法行為に基づき,また,被告Aに対し,会社法429条1項に基づき,連帯して,損害賠償金1390万円及びこれに対する不法行為日より後の日である上記訴え変更申立書の送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。(上記第1の6(1))(イ) 予備的請求a 被告ワンマンによる販売につき,被告ワンマン及び同ニチモウに対し,共同不法行為に基づき,また,被告Aに対し,会社法429条1項に基づき,連帯して,損害賠償金820万円及びこれに対する不法行為日より後の日である上記訴え変更申立書の送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。(上記第1の6(2)ア)b 被告西部機販による転売につき,被告西部機販に対し,不法行為に基づき,損害賠償金570万円及びこれに対する不法行為日より後の日である上記訴え変更申立書の送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。(上記第1の6(2)イ) 2 前提事実(当事者間に争いがないか弁論の全趣旨から容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告原告は,産業機械器具及びその部分品の製造,販売,賃貸,修理等を目的とする株式会社(昭和35年1月23日設立)であり,海苔製造加工に必要な機械の製造販売を行ってい (1) 当事者ア原告原告は,産業機械器具及びその部分品の製造,販売,賃貸,修理等を目的とする株式会社(昭和35年1月23日設立)であり,海苔製造加工に必要な機械の製造販売を行っている。 イ被告ら(ア) 被告ニチモウは,機械,器具,電機,計器,度量衡器,電子機器,空気調整装置,公害防止装置,医療機器,救命器具の販売及び整備等を目的とする株式会社(大正8年8月17日設立)である。 (イ) 被告ワンマンは,海苔乾燥機及びそれに付随する資材,海苔養殖資材の製造,販売等を目的とする株式会社(平成14年9月2日設立)であり,被告ニチモウによって設立された被告ニチモウの完全子会社である。 (ウ) 被告Aは,被告ワンマンの設立時から平成28年6月2日まで,同社の代表取締役に就任し,同月3日以降,同社の代表取締役を辞任し,同社の取締役に就任している(弁論の全趣旨)。 (エ) 被告西部機販は,海苔製造機械,器具の販売及び保守,修理等を目的とする特例有限会社(平成4年5月1日設立)である。 (2) 原告の特許権ア原告は,発明の名称を「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」とする本件特許(特許第3966527号。出願日:平成10年6月12日,登録日:平成19年6月8日,訂正審決日:平成22年2月25日。)に係る特許権(本件特許権)を有している。 なお,本件特許は,訂正審判事件(訂正2010-390006)に 係る平成22年2月25日付け審決(同年3月9日確定)により訂正が認められている。 イ特許請求の範囲上記訂正後の本件特許に係る特許請求の範囲の請求項3の記載は,次のとおり,特許審決公報(甲3)中の特許訂正明細書(以下「本件訂正明細書」という。)に記載のとおりである(以下,請求項3に係る発 範囲上記訂正後の本件特許に係る特許請求の範囲の請求項3の記載は,次のとおり,特許審決公報(甲3)中の特許訂正明細書(以下「本件訂正明細書」という。)に記載のとおりである(以下,請求項3に係る発明を「本件発明」という。)。 「生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。」ウ本件発明の構成要件本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである。(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件A1」のようにいう。)A1 生海苔排出口を有する選別ケーシング,A2 及び回転板,A3 この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,A4 並びに異物排出口A5 をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,B 前記防止手段を,B1 突起・板体の突起物とし, B2 この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成としたC 生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。 (3) 本件装置及び本件回転円板についてア本件装置について本件装置は,渡邊機開工業株式会社(以下「渡邊機開」という。)が,従前製造販売していた生海苔異物除去機(型名「WK-500」,「WK-550」,「WK-600」,「WK-700」。以下,これらを総称して「旧製品」とい 工業株式会社(以下「渡邊機開」という。)が,従前製造販売していた生海苔異物除去機(型名「WK-500」,「WK-550」,「WK-600」,「WK-700」。以下,これらを総称して「旧製品」という。)の部品である固定リング及びそのうち内側に回転自在に遊嵌された回転円板の形状を変更し,平成27年4月頃から販売を開始した生海苔異物除去機である(ただし,型名「LS-8」の製品については,平成28年1月時点のカタログにおいて「発売予定」とされている。甲32の1,2)。 本件装置の構成に係る各当事者の主張は,別紙「本件装置の構成」記載のとおりである。 本件装置は,回転円板の個数(枚数)及び直径によって次のとおり区別できる(以下,本件装置の特定の型名のみを表す場合,単に,型名「LS-○」と表記する。)。 (ア) 型名「LS-R」,「LS-S」(別紙物件目録1記載(1)⑵)回転円板(直径(φ):約190mm)が4枚のタイプ。 (イ) 型名「LS-G」(同目録1記載⑶)回転円板(直径(φ):約190mm)が6枚のタイプ。 (ウ) 型名「LS-L」(同目録1記載(4))回転円板(直径(φ):約280mm)が6枚のタイプ。 (エ) 型名「LS-8」(同目録1記載⑸)回転円板が8枚のタイプ。 イ本件回転円板について本件回転円板の図は,別紙「本件回転円板(図面)」のとおりである(ただし,凸部Dの構成要件充足性に係る解釈につき,当事者間に争いがある。)。なお,本件回転円板は,本件装置の生産にのみ用いるものである。 ウ本件装置の構成要件充足性本件装置は,上記(2)ウの各構成要件のうち,構成要件B1を除く構成要件をいずれも充足する。 (4) 被告ワンマン及び被告西部機販の行 産にのみ用いるものである。 ウ本件装置の構成要件充足性本件装置は,上記(2)ウの各構成要件のうち,構成要件B1を除く構成要件をいずれも充足する。 (4) 被告ワンマン及び被告西部機販の行為ア被告ワンマンの行為(ア) 被告ワンマンは,被告ニチモウが開発・製造した全自動乾海苔製造装置「ニチモウワンマン」を主とした海苔機資材の製造・販売部門に関する同被告の完全子会社である。 被告ワンマンは,渡邊機開から本件装置及び本件回転円板を購入し,その販売,輸出等を行っている。 (イ) 被告ワンマンは,平成27年8月3日,(住所は省略)胸上漁協所属の海苔生産者に対し,型名「LS-G」3台を販売した(以下「本件販売1」という。)。 (ウ) 被告ワンマンは,平成28年9月30日,被告西部機販に対し,型名「LS-G」6台(以下「本件6台」という。)を販売した(以下「本件販売2」という。)(エ) 被告ワンマンは,同年10月11日,(住所は省略)の海苔生産者に対し,型名「LS-G」1台を販売した(以下「本件販売3」という。)。 イ被告西部機販の行為(ア) 被告西部機販は,①渡邊機開から本件装置を購入して,日本国内 の顧客に販売し,又は,②被告ワンマンの販売代理店として,被告ワンマンが渡邊機開から仕入れた本件装置を被告ワンマンから仕入れて顧客に販売している。 (イ) 被告西部機販は,平成28年9月30日,上記ア(ウ)のとおり被告ワンマンから購入した本件6台を鬼崎漁業協同組合に販売した(以下「本件転売」という。)。 ⑸ 先行訴訟及び特許無効審判の経緯ア原告は,平成27年5月11日,本件特許権に基づき,旧製品の販売差止等を被告らに求める訴訟を提起した(当庁同年(ワ)第12480号。 以下「先行訴訟」という。 行訴訟及び特許無効審判の経緯ア原告は,平成27年5月11日,本件特許権に基づき,旧製品の販売差止等を被告らに求める訴訟を提起した(当庁同年(ワ)第12480号。 以下「先行訴訟」という。)。 当庁は,平成28年6月30日,被告ワンマン及び被告西部機販による本件特許権の侵害を認め,原告の請求を一部認容する旨の判決をした。 なお,上記被告らは,上記判決を不服として控訴し,現在,控訴審において係属中である。 イ被告ニチモウと渡邊機開は,平成27年11月17日付けで,後記3⑵イ及びウの無効理由を主張して,特許無効審判請求をした(無効2015-800211号。乙14,15)。 ウ被告ニチモウ及び渡邊機開は,平成28年6月24日付けで,後記3(2)アの無効理由を主張して,特許無効審判請求をした(無効2016-800074号。乙32,33)。 3 争点(1) 構成要件B1の充足性(争点1)⑵ 本件特許に係る無効理由の有無(争点2)ア発明未完成,記載要件違反(争点2-1)イ拡大先願違反(争点2-2)ウ進歩性欠如(争点2-3) ⑶ 被告らによる共同不法行為等の成否(争点3)ア本件販売1及び3に係る共同不法行為等の成否(争点3-1)イ本件販売2及び本件転売に係る共同不法行為等の成否(争点3-2)⑷ 損害額(争点4) 4 争点に関する当事者の主張 ⑴ 争点1(構成要件B1の充足性)について(原告の主張)ア 「突起・板体の突起物」の意義構成要件B1の「突起・板体の突起物」における「突起(物)」とは,「ある部分が周囲より高く突き出ていること。また,そのもの。でっぱり。」の意味で用いられる語である。 ま 意義構成要件B1の「突起・板体の突起物」における「突起(物)」とは,「ある部分が周囲より高く突き出ていること。また,そのもの。でっぱり。」の意味で用いられる語である。 また,本件訂正明細書には,共回り防止手段を「突起・板体の突起物」とし,当該防止手段の例として,「図3,図4の例では,選別ケーシング33の円周端面33bに突起・板体・ナイフ等の突起物を1ケ所又は数ヶ所設ける。」「図5の例は,生海苔混合液槽2の内底面21に1ケ所又は数ヶ所設ける。」「図6の例は,回転板34の円周面34a及び/又は選別ケーシング33の円周面33a(一点鎖線で示す。)に切り溝,凹凸,ローレット等の突起物を1ケ所又は数ヶ所,或いは全周に設ける。」「図7の例は,選別ケーシング33(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが内嵌めされた構成のクリアランスSでは,このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を設ける。」「図8の例では,回転板34の回転方向に傾斜した突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を1ケ所又は数ヶ所設ける。」(段落【0026】)と記載され,【図3】ないし【図5】には,板状の部材を所定箇所に取り付けるためにボルトを用いた状態が,【図6】ないし【図8】には,他の部位に比較して突出した突起物が回 転板又は選別ケーシングに形成されている状態がそれぞれ記載されている。 このように,本件訂正明細書には,回転円板や選別ケーシングとは別の部材をボルト等の締結手段又はその他の手段によって固着する場合だけでなく,回転円板や選別ケーシングを作成する場合に最初から一体的に突起物を形成したり,作成後に不要部分を切削して形成する場合を包含した記載がされており,突起物の形成手段の一例として, 着する場合だけでなく,回転円板や選別ケーシングを作成する場合に最初から一体的に突起物を形成したり,作成後に不要部分を切削して形成する場合を包含した記載がされており,突起物の形成手段の一例として,「切り溝,凹凸,ローレット等」と説明されている。 イ本件装置は「突起・板体の突起物」を充足すること別紙「本件装置の構成」記載の【原告の主張】及び別紙「本件回転円板(図面)」のとおり,本件回転円板に形成される凸部Dは,①その平面部3b1が径方向側面部(側面壁)3c,エッジxによって回転円板の表面の一部である回転円板側凹部の底面部3b2との間で段差を形成することで突出し,②側面部(端面)3a1,平面部3b1,2カ所の径方向側面部(側面壁)3cなどから構成され,その平面形状は略扇形(中心を回転円板3の中心と共通にする。)であり,③回転円板側凹部の底面部3b2との間で直線状の境界線を呈することによって,回転円板3の外周側に薄板状部材を取り付けたような外観を呈するものである。 すなわち,凸部Dは,凹部Eを配置することによって,回転円板の凹部の底面部3b2との間で側面壁(径方向側面部)3cによる段差を形成することにより突出している。 そして,上記アの本件訂正明細書の記載によれば,共回りの防止手段として,回転円板や選別ケーシングの該当箇所に最初から凸部Dのような形状で形成しておくような場合が含まれるといえるから,本件回転円板に形成された凸部Dは,「突起・板体の突起物」に該当する。 よって,本件装置は,構成要件B1を充足する。 ウなお,被告らは,特許請求の範囲の記載によれば「突起・板体の突起物」を限定解釈すべきである,原告の出願経過における陳述内容によれば包袋禁反言の原則からも同様にいえる,凹部Eの形成と凸部Dの ウなお,被告らは,特許請求の範囲の記載によれば「突起・板体の突起物」を限定解釈すべきである,原告の出願経過における陳述内容によれば包袋禁反言の原則からも同様にいえる,凹部Eの形成と凸部Dの形成が同義ではなく作用効果も異なるなどと主張する。 しかしながら,被告らの上記限定解釈は独自の解釈にすぎない。また,被告らの指摘する原告の上記陳述内容は,内容を正解しないものである。 さらに,渡邊機開の平成27年2月13日付け出願(特願2015-26802。甲22の1。)を優先権基礎出願とする同年8月4日付け出願に係る特許公報(特許第5843273号公報。乙22。同出願に係る特許を「渡邊新特許」という。)では,「回転円板凹部71」と「回転円板5の上側平面76の上端外周縁70やその近傍で上側に向かって突出する突起部」が同じ作用を果たし,エッジの設定方法として,「回転円板突起部78」を設けることと「回転円板側凹部」を設けることが実質的に同一であると記載されているから,本件回転円板の凹部Eと凸部Dの形成も同一である。 (被告らの主張)ア 「突起・板体の突起物」の意義特許請求の範囲には,「突起・板体の突起物」に凹凸が含まれることが記載されていないから,文言上,「突起・板体の突起物」に凹凸は含まれないと解すべきである。 また,渡邊新特許に係る審査経過(乙20,21)に照らせば,凹凸部の構成は,渡邊新特許に係る明細書(段落【0066,0067】)のように具体的に記載されていなければならないが,本件訂正明細書には,凹凸部の具体的な構成は記載されていない。もっとも,本件訂正明細書の【図6】(【図7】を含む。)には,凹凸部の長手方向が環状隙間における生海苔の移動方向に貫通していることが開示されている。 そうすると,「突起・板 れていない。もっとも,本件訂正明細書の【図6】(【図7】を含む。)には,凹凸部の長手方向が環状隙間における生海苔の移動方向に貫通していることが開示されている。 そうすると,「突起・板体の突起物」に相当する凹凸部の構成は,凹凸部の長手方向が環状隙間における生海苔の移動方向に貫通していることと解すべきである。 イ本件装置は「突起・板体の突起物」を充足しないこと別紙「本件装置の構成」記載の【被告らの主張】のとおり,本件回転円板の表面3bの外周部分に形成された凹部Eは,①当該外周部分に,(周方向に所定長さ)×(側面部(端面)3aから径方向内側に所定長さ)×(表面3bから所定深さ(1mm弱~5mm程度(但し,この数値範囲に限定するものではない))の領域に亘って凹入形成され,②底面部3b2,2カ所の径方向側面部3c,側面部(端面)3dを有し,③略扇形の開口3e(a-b-c-dに囲まれている)をもって表面3bに開口しており,④略円筒形の開口3f(a-d-e-fに囲まれている)をもって(環状)隙間Cに対面するように開口していると共に,開口3fの周方向両端部の各端辺部分は隙間Cに突出しておらず,⑤隣の凹部E同士の間に回転円板3の表面3bと同一平面の平面部3b1を備えた非凹部に相当する凸部Dが形成されている。 すなわち,本件回転円板に設けられている凹部Eには,底面部3b2が存在し,凹部の長手方向(深さ方向)が環状隙間における生海苔の移動方向に貫通していない。 また,本件特許の出願経過における原告の意見書(乙7)によれば,本件発明に含まれない凹部の構成は,①環状隙間に対面する凹部であって,②環状隙間をその径方向に広げる凹部であることが必要となるところ,本件回転円板に設けられている凹部は,上記①及び②の構成を有するから,包袋禁 まれない凹部の構成は,①環状隙間に対面する凹部であって,②環状隙間をその径方向に広げる凹部であることが必要となるところ,本件回転円板に設けられている凹部は,上記①及び②の構成を有するから,包袋禁反言の原則からも,当該凹部は本件発明に含まれない。 さらに,本件回転円板の「回転円板側凹部E」の形成は,凸部Dの形成と同義ではなく,「回転円板側凹部E」の間に形成される非凹部は 「凸部D」に該当せず,それぞれの構成及び作用効果は異なる。 よって,上記各凹部は,「突起・板体の突起物」に含まれず,本件装置は構成要件B1を充足しない。 なお,「原告の主張する本件回転円板の凸部D」とは,本件装置における凹部を形成することによって形成される非凹部Dによって凹凸部を構成することになる凹部Eと凸部Dの組み合わせの一方の部分であり,凹部Eを凹入形成することによる結果として各凹部Eの間に非凹部として形成されるものにすぎない。 ⑵ 争点2(本件特許に係る無効理由の有無)についてア争点2-1(発明未完成,記載要件違反)について(被告らの主張)原告は,「突起・板体の突起物」に「凹凸…等の突起物」が含まれると主張するが,本件訂正明細書には,どのような構成の凹凸が本件発明の作用効果を発揮するかについて全く開示されておらず,本件発明の目的を達成することができないから,本件特許には,次の無効理由がある。 (ア) 本件発明は,未完成であり,自然法則を利用した技術的思想の創作であるとはいえず,法29条1項柱書違反の無効理由(法123条1項2号)がある。 (イ) 本件訂正明細書には,本件発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が,その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず,また,特許を受けよ 23条1項2号)がある。 (イ) 本件訂正明細書には,本件発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が,その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず,また,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されていない上,明確ではないから,本件特許には,平成14年法律第24号による改正前の特許法36条4項(実施可能要件),法36条6項1号(サポート要件)及び同条6項2号(明確性要件)に反する無効理由(123条1項4号)がある。 (原告の主張) 本件訂正明細書には,生海苔の共回りを防止する手段を「突起・板体の突起物」とすることが記載されている。そして,上記⑴(原告の主張)アのとおり,本件訂正明細書には,回転円板や選別ケーシングとは別の部材をボルト等の締結手段や他の手段によって固着する場合や他の手段によって固着する場合,あるいは,回転円板や選別ケーシングを作成する場合に最初から一体的に突起物を形成したり,作成後に不要部分を切削して形成する場合を包含した記載がされている。また,本件訂正明細書(段落【0026】)の「切り溝,凹凸,ローレット等の突起物」「突起・板体・ナイフ等の突起物」との記載によれば,当業者において,共回りの防止手段につき,回転円板や選別ケーシングの該当箇所に最初から凸部のような形状で形成しておくような場合が含まれることを極めて容易に看取し,それらの手段を採用して「突起・板体の突起物」を形成して,本件発明の作用効果を奏するか否かを検証することもでき,本件発明の課題(共回りの防止)を解決できることも容易に認識できる。 以上によれば,本件特許に上記無効理由はない。 イ争点2-2(拡大先願違反)について(被告らの主張)(ア) 本件発明は,その出願日 止)を解決できることも容易に認識できる。 以上によれば,本件特許に上記無効理由はない。 イ争点2-2(拡大先願違反)について(被告らの主張)(ア) 本件発明は,その出願日前の実用新案登録出願であって本件特許の出願日後に発行された登録実用新案公報(登録実用新案第3053035号公報。乙1)に係る実用新案登録出願(実願平10-3304号)の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下「乙1文献」という。)に記載された考案(以下「乙1考案」という。)と実質的に同一である。 まず,本件発明及び乙1考案は,いずれも特開平8-140637号公報(乙4。以下「乙4文献」という。)に記載された異物分離機構を備えた生海苔異物分離除去装置に係る発明(以下「乙4発明」と いう。)を従来技術としている。そして,乙1考案の目的は,「従来装置におけるクリアランスに詰まった異物を除去しなければならないという問題を解消すること」であるところ,①乙1考案の【課題を解決するための手段】及び【考案の効果】に共回りの発生を防止できるとの作用効果が明記されており,乙1考案の目的には,共回りの防止も含まれているといえる。また,②乙1考案に係る出願日前から,乙1考案及び乙4発明の出願人である株式会社親和製作所(以下「親和製作所」という。)により,全国的に「目づまり防止付」のシンワ式原草海苔異物除去洗浄機CFW-36型(以下「シンワ装置」という。)の宣伝広告(乙8~11)がされており,乙4発明に係る生海苔異物除去装置に目詰まりの問題点があり,これを解決すべき手法が開発されていることが当業者において周知であったといえる。そうすると,乙1考案の上記目的は,本件発明の目的(従来装置における共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目詰まりを無くすこ 決すべき手法が開発されていることが当業者において周知であったといえる。そうすると,乙1考案の上記目的は,本件発明の目的(従来装置における共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目詰まりを無くすこと)と実質的に同一といえる。 次に,本件発明の構成要件A1~5は,本件発明の出願経過等に照らせば,乙1文献に実質的に記載されているといえる。また,構成要件B1の「前記防止手段を,突起・板体の突起物として」については,「突起物」が突起・板体のみに限定されることなく突起・板体以外の切り溝,凹凸,ローレットからなる構成物を含むと解すると,「前記防止手段」は,異物を排出して適正な生海苔原料として取り出すという,乙1考案における「凹部」と同一の作用効果を発揮するといえる。 さらに,本件発明の構成要件B2「この突起物を,回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした」については,乙1文献に開示されている構成(クリアランスを構成する第二環状固定板の鉛直向きの内周面に凹部が(図2,3),水平向きの上面に凹部が(図 4)それぞれ形成された構成)と実質的に同一である。加えて,乙1文献の【図4】と本件訂正明細書の【図6】を見ると,乙1考案と本件発明は,いずれも多数の凹凸を全周に形成するとほぼ同一の構成となり,両者における本件発明の防止手段の一態様となる凹部は,全く同一に形成され,全く同一の作用効果を発揮することになる。なお,乙1文献には,凹部が対向する第二回転板に設けられていることは記載されていないが,本件特許の出願日前に頒布された刊行物である登録実用新案第3017060号公報(乙2。以下「乙2文献」という。)及び特開平8-112081号公報(乙3。以下「乙3文献」という。)によれば,本件特許の出願当時において,海苔の異物を除去するため 録実用新案第3017060号公報(乙2。以下「乙2文献」という。)及び特開平8-112081号公報(乙3。以下「乙3文献」という。)によれば,本件特許の出願当時において,海苔の異物を除去するためのスリット(クリアランスに相当する。)を形成する対向面に対して,①生海苔のスリットの通過量を制御する手段として凹凸部を設けること,②凹凸部を設ける場合にはスリットを形成する対向面の双方に設けることは,当業者において周知技術であったといえ,同技術によれば,凹部を第二回転板に設けることは,乙1文献に記載されているに等しいといえる。 (イ) 以上のとおり,本件発明と乙1考案は実質的に同一であるが,本件発明の発明者と乙1考案の考案者は同一ではなく,本件特許の出願時にその出願人と乙1考案に係る実用新案登録出願の出願人も同一ではない。 よって,本件発明は法29条の2に違反し,本件特許には無効理由(法123条1項2号)がある。 (ウ) 原告は,本件訂正明細書に記載されている凹凸が乙1文献に記載された凹部とは全く異なる旨主張するが,本件訂正明細書(【段落0026】)には,凹部を形成する例として「切り溝」が記載され,当該「切り溝」は乙1考案の凹部の構成と同一であるから,本件発明に おける「突起物」の構成は乙1考案における凹部の構成と同一である。 (原告の主張)本件発明と乙1考案は,実質的に同一であるとはいえない。 乙1文献には,乙4発明を先行技術とし,回転板方式における目詰まりを解消する必要性という課題認識が示されており,この点において本件発明と一部共通する。しかし,乙1考案には,「共回り」という課題や「共回り」の発生原因,「共回り防止」の必要性及び課題解決手段は記載されていない。 また,乙1考案は,クリアラン この点において本件発明と一部共通する。しかし,乙1考案には,「共回り」という課題や「共回り」の発生原因,「共回り防止」の必要性及び課題解決手段は記載されていない。 また,乙1考案は,クリアランスの目詰まりの原因となっている「茎部の付いている生海苔」を,他のクリアランスよりも幅広にした部分にあえて通過させることによって,それまで異物として廃棄対象としていたものを原料として使用可能にし,それによってクリアランスの目詰まりを解消しようとしたものであるのに対し,本件発明は,「茎部の付いている生海苔」を異物として除去対象としようとするものであり,課題の認識及び課題解決の方向性が全く異なる。加えて,乙1考案の出願者による後願(甲27の15の1)段階において,従来技術とされた乙1考案につき,「間隙に詰まる異物を除去しようとすること」が未解決の課題であると指摘されている。 このように,乙1考案は,生海苔の共回りを防止しようとするものではないから,乙1文献には,本件発明の構成要件A1ないし5及びBに相当する構成は記載されていない。 ウ争点2-3(進歩性欠如)について(被告らの主張)(ア) 本件発明は,次のとおり,本件特許の出願日前に日本国内で頒布された刊行物である乙4文献に開示された発明(乙4発明)に,乙3文献及び乙2文献に開示された各発明を適用することにより,当業者 が容易に想到することができる構成であり,進歩性を欠くから,本件特許には,法29条2項違反の無効理由(法123条1項2号)がある。 a 本件発明と乙4発明との一致点及び相違点本件発明は,いずれも乙4発明の改良発明であり,構成要件A1,A2,A4及びA5については乙4文献にも実質的に記載されているといえるから,この点において,乙4発明と本件発明は一致す 致点及び相違点本件発明は,いずれも乙4発明の改良発明であり,構成要件A1,A2,A4及びA5については乙4文献にも実質的に記載されているといえるから,この点において,乙4発明と本件発明は一致する。 他方,構成要件A3,B1及びB2については,いずれも乙4文献に開示されておらず,この点において,乙4発明と本件発明とは相違する。 b 乙4発明に基づく容易想到性前記イ(被告らの主張)(ア)のとおり,本件特許の出願日前から,親和製作所によるシンワ装置の宣伝広告がされ,親和製作所以外の当業者である三社(甲27の6の1,27の10,27の18の1)により,本件特許の出願日前に,乙4発明にはクリアランスに目詰まりが発生する問題点の対策を進めて特許出願がされていたことからすれば,本件特許の出願時において,乙4発明に係る生海苔異物除去装置には,①目詰まりという問題点が発生していたこと,②当該問題点を解決すべき手法が開発されていること,③その問題点を解決すべき手法を開発すべき動機付けが存在していたことは,当業者において周知であったといえる。 そうすると,当業者にとって,目詰まりを防止するために乙2文献及び乙3文献に開示された周知技術(海苔の異物を除去するためのスリット〔クリアランスに相当する。〕を形成する対向面に対して,○ア生海苔のスリットの通過量を制御する手段として凹凸部を設けること,○イ凹凸部を設ける場合にはスリットを形成する対向 面の双方に設けること)を適用することは容易に想到できたといえる。また,上記適用により得られる発明の効果は,本件発明の効果と同等である。 以上のとおり,当業者は,乙4発明に上記周知技術を適用することによって本件発明の構成を容易に想到できるから,本件発明は進歩性を欠く。 (イ) 原告 効果は,本件発明の効果と同等である。 以上のとおり,当業者は,乙4発明に上記周知技術を適用することによって本件発明の構成を容易に想到できるから,本件発明は進歩性を欠く。 (イ) 原告は,乙4発明に技術思想の異なる乙2文献及び乙3文献に開示された技術を適用することはできない旨主張するが,上記各文献に開示された発明は,乙4発明と同様に海苔の異物を除去するための装置であって,乙4発明と技術分野は同一であるから,上記主張は理由がない。 (原告の主張)(ア) 上記イ(原告の主張)のとおり,単なる目詰まり防止と本件発明の共回り防止を同一視することはできず,乙4発明に接した当業者は,乙4発明に「共回り」という課題が存することを想起することはできない。また,シンワ装置に係る「目づまり防止付」との記載は,回転板を回転軸に沿って上下動させることで,隙間に詰まった異物等を筒状混合液タンク側に排出させるように構成したものを意味するにすぎないから,仮に,この回転板の上下動手段及び「目づまり防止付」との表現がいずれも公知であったとしても,そのこと自体から,本件発明の課題である「共回り」を想起することはできない。 (イ) また,乙2文献及び乙3文献に記載された発明ないし技術は,乙4発明における回転板方式ではなく従来型に関するものであり,周知技術ともいえないから,仮に,乙4文献に接した当業者において,乙4発明にクリアランスに異物や生海苔の詰まりが生じる問題があるとの課題を想起し得たとしても,乙4発明に,異物分離除去に係る技術 思想の異なる乙2文献及び乙3文献に開示された技術を適用する動機付けはない。 さらに,仮に,当業者において,乙4発明に乙2文献又は乙3文献に記載された発明の適用を試みたとしても,乙4発明と本件発明との 異なる乙2文献及び乙3文献に開示された技術を適用する動機付けはない。 さらに,仮に,当業者において,乙4発明に乙2文献又は乙3文献に記載された発明の適用を試みたとしても,乙4発明と本件発明との相違点に係る構成を容易に想到し得たとはいえない。 (ウ) したがって,本件特許に進歩性欠如の無効理由はない。 ⑶ 争点3(被告らによる共同不法行為等の成否)についてア争点3-1(本件販売1及び3に係る共同不法行為等の成否)について(原告の主張)(ア) 被告ワンマンの不法行為責任被告ワンマンが,本件装置を購入して第三者に譲渡し,貸渡しし,輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為は本件特許権を侵害する行為であり,本件回転円板を購入して第三者に譲渡し,貸渡しし,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為は本件特許権を侵害する行為とみなされる(法101条1号)。 よって,被告ワンマンによる本件販売1及び本件販売3は,いずれも不法行為に該当する。 (イ) 被告ニチモウの共同不法行為責任被告ニチモウは,自ら本件販売1及び3を行っていないが,その主体である被告ワンマンは,被告ニチモウの海洋事業のうち,被告ニチモウが開発・製造した全自動乾海苔製造装置「ニチモウワンマン」を主とした海苔機材又は海苔資材の製造・販売事業を担当する完全子会社である。そうすると,被告ニチモウは,被告ワンマンを実質的に支配し,被告ワンマンを自らの一事業部門として用いて事業を遂行しているものといえるから,被告ワンマンによる行為のうち,海苔機資材 の販売等に該当する本件販売1及び本件販売3は,実質的に被告ニチモウの行為と考えるべきである。 よって,本件販売1及び3は,被告ニチモウによる本件特許権の侵害行為にも該当し,被告ニチモウには被告ワ の販売等に該当する本件販売1及び本件販売3は,実質的に被告ニチモウの行為と考えるべきである。 よって,本件販売1及び3は,被告ニチモウによる本件特許権の侵害行為にも該当し,被告ニチモウには被告ワンマンとの共同不法行為が成立する。 (ウ) 被告Aの会社法429条1項に基づく責任被告Aは,被告ワンマンの代表取締役としてその職務を行うにつき,先行訴訟において原告と和解交渉中であったにもかかわらず,渡邊機開と共同し,自ら率先して悪意をもって本件販売1の実行を決定した。 また,被告Aは,本件訴訟において侵害論の心証開示がされたにもかかわらず,被告ワンマンの取締役としてその職務を行うにつき,悪意をもって本件販売3を行うことを決定した。 よって,被告Aは,本件販売1及び3について,会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う。 (エ) 被告ワンマン及び被告ニチモウの共同不法行為に基づく損害賠償債務と被告Aの損害賠償債務は,不真正連帯債務の関係にある。 (被告らの主張)(ア) 被告ニチモウの共同不法行為責任争う。被告ワンマンと被告ニチモウは,それぞれ別個独立の法人格を有する株式会社であるから,被告ワンマンが被告ニチモウの完全子会社であることをもって直ちに被告ワンマンの行為を実質的に被告ニチモウの行為であると評価することはできない。 よって,被告ワンマンによる本件販売1及び3につき,被告ニチモウの共同不法行為は成立しない。 (イ) 被告Aの会社法429条1項に基づく責任a 本件販売1について 争う。本件販売1の対象は,旧製品ではなく本件装置であるから,旧製品に係る先行訴訟の和解交渉経緯は,被告Aの悪意の存在を基礎づける事情にならない。 a 本件販売1について 争う。本件販売1の対象は,旧製品ではなく本件装置であるから,旧製品に係る先行訴訟の和解交渉経緯は,被告Aの悪意の存在を基礎づける事情にならない。 b 本件販売3について争う。本件販売3の時点で本件訴訟の侵害論に係る心証開示はされていたが,被告ワンマンに対する本件装置の販売差止めを内容とする仮処分命令は発令されておらず,渡邊機開に対する本件装置の販売差止め請求訴訟に係る判断も示されていなかったから,本件販売3につき,被告Aに悪意又は重過失はない。また,本件販売3に係る意思決定は,被告ワンマンという会社の意思決定であり,個々の取締役にすぎない被告Aの意思決定とはいえず,原告は,取締役会の構成員にすぎない被告Aについて悪意があることを基礎づける事情につき何ら主張していない。 イ争点3-2(本件販売2及び本件転売に係る共同不法行為等の成否)について(原告の主張)上記ア(原告の主張)(イ)及び(ウ)によれば,本件販売2につき,被告ニチモウと被告ワンマンは共同不法行為に基づく損害賠償責任を負い,被告Aは,会社法429条1項に基づく責任を負い,これらは不真正連帯債務の関係にある。 また,本件転売につき,被告西部機販は,不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 そして,被告ニチモウ,被告ワンマン及び被告Aは,被告西部機販が本件6台を転売する予定であることを知りながら本件6台を渡邊機開から仕入れ,他方,被告西部機販は,被告ニチモウ,被告ワンマン及び被告Aに対し,本件転売の予定がある旨を説明し,同被告らがその旨理解 していることを認識していた。 そうすると,被告らは,一体として本件6台を鬼崎漁業協同組合に譲渡することにより,共同して本件特許権を侵害した の予定がある旨を説明し,同被告らがその旨理解 していることを認識していた。 そうすると,被告らは,一体として本件6台を鬼崎漁業協同組合に譲渡することにより,共同して本件特許権を侵害したといえるから,被告らの共同不法行為が成立する(主位的主張)。 仮に,被告西部機販について共同不法行為が成立しないとしても,被告ニチモウ及び被告ワンマンに共同不法行為が成立し,被告Aが会社法429条に基づく損害賠償責任を負うことは,上記ア(原告の主張)と同様である(予備的主張)。 (被告らの主張)(ア) 被告ニチモウ及び被告Aの責任被告ワンマンによる本件販売2について,被告ニチモウの共同不法行為に基づく損害賠償責任及び被告Aの会社法429条1項に基づく責任が成立しないことは,上記ア(被告らの主張)(ア),(イ)bのとおりである。 (イ) 被告ワンマンと被告西部機販の共同不法行為上記(原告の主張)において原告が指摘する事情をもっても,被告ワンマンと被告西部機販の共同不法行為が成立するとはいえない。被告ワンマンは,被告西部機販に対して本件6台を販売し,当該販売から利益を得ているにすぎず,被告西部機販による本件転売によって利益を得ていない。また,被告ワンマン及び被告西部機販による本件6台の販売は,それぞれが自ら締結した売買契約に基づき,それぞれが独自の利益を得ているから,本件販売2及び本件転売を一体のものとしてとらえて共同不法行為と解することはできない。 ⑷ 争点4(損害額)について(原告の主張)ア本件販売1に係る損害 被告ワンマン及び同ニチモウが,本件販売1によって得た利益(税込)は,1台当たり売上高(540万円)から仕入額(415万8000円)を控除した124万2000円であり,これに販売台 被告ワンマン及び同ニチモウが,本件販売1によって得た利益(税込)は,1台当たり売上高(540万円)から仕入額(415万8000円)を控除した124万2000円であり,これに販売台数(3台)を乗じた372万6000円である。 よって,本件販売1に係る損害は,法102条2項により推定される372万6000円,及び,上記被告らの共同不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額37万4000円(上記372万6000円の約10%相当額)を合計した410万円であり,被告Aも同額の損害賠償支払義務を負う。 イ本件販売3に係る損害被告ワンマン及び同ニチモウが,本件販売3によって得た利益(税込)は,売上高(540万円)から仕入額(415万8000円)を控除した124万2000円である。 よって,本件販売3に係る損害は,法102条2項により推定される124万2000円,及び,上記被告らの共同不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額(上記124万2000円の約10%に相当する12万5000円)の内金11万8000円を合計した136万円であり,被告Aも同額の損害賠償支払義務を負う。 ウ本件販売2及び本件転売に係る損害(ア) 主位的主張a 被告ワンマン及び同ニチモウが,本件販売2によって得た利益(税込)は,1台当たりの売上額(540万円)と仕入額(415万8000円)の差額である124万2000円に販売台数(6台)を乗じた合計745万2000円である。 b 被告西部機販が,本件転売によって得た利益(税込)は,1台当たりの売上額(626万4000円)と仕入額(540万円)の差 額である86万4000円に販売台数(6台)を乗じた合計518万4000円である。 売によって得た利益(税込)は,1台当たりの売上額(626万4000円)と仕入額(540万円)の差 額である86万4000円に販売台数(6台)を乗じた合計518万4000円である。 c よって,本件販売2及び本件転売に係る損害は,法102条2項により推定される1263万6000円,及び,上記共同不法行為と相当因果関係のある弁護士費用126万4000円を合計した1390万円であり,被告Aも同額の損害賠償支払義務を負う。 (イ) 予備的主張仮に,本件販売2と本件転売につき,被告らの共同不法行為等の成立が認められないならば,本件販売2に係る損害及び本件転売に係る損害は,次のとおりである。 a 本件販売2に係る損害は,上記(ア)aによれば,法102条2項により推定される745万2000円,及び,被告ワンマン及び同ニチモウの共同不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額74万8000円を合計した820万円であり,被告Aも同額の損害賠償支払義務を負う。 b 被告西部機販による本件転売に係る損害は,上記(ア)bによれば,法102条2項により推定される518万4000円,及び,被告西部機販の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額51万6000円を合計した570万円である。 エなお,被告らは,①原告が本件装置のアフターサービスを行う販売店でないことを根拠に法102条2項の推定が及ばないこと,②仮に,同条項の推定が及ぶとしても,販売利益から控除すべき経費及び寄与率を控除すべきである旨主張する。 しかしながら,①については,被告の主張の論理に飛躍がある。また,②については,法102条2項において販売利益から控除すべき経費とは,いわゆる純利益を算定するための経費ではなく,本件装置を販売す ら,①については,被告の主張の論理に飛躍がある。また,②については,法102条2項において販売利益から控除すべき経費とは,いわゆる純利益を算定するための経費ではなく,本件装置を販売す るためにのみ要する変動費であるところ,被告ワンマン及び被告西部機販は,本件装置の販売において変動費を要していない。また,現段階の技術水準では,生海苔生産者の要求性能に応じた生海苔異物除去装置においては,本件発明を実施せざるを得ないから,本件装置の販売における本件発明の寄与率は100%である。 (被告らの主張)ア本件販売1に係る損害本件販売1に係る仕入額(税込)及び売上高(税込)は認めるが,その余は争う。なお,仕入額(税抜)は1155万,販売価格(税抜)は1500万円である。 (ア) 法102条2項による推定が及ばないこと被告ワンマン及び被告西部機販のような生海苔異物除去装置の販売店は,単に上記装置を販売するだけではなく,販売後,購入者である生産者に対するアフターサービスを負担しているから,当該アフターサービスを負担する対価を含めて販売価格を決定している。 そうすると,上記被告らのような販売店が得る利益と原告のような生産者に対して直接販売することのない製造業者の得る利益は,根本的に異なる。また,原告は,上記被告らの販売によって,販売店に対する販売の機会を喪失するにすぎない。 よって,法102条2項により,上記被告らの得た利益を原告の損害であると推定することはできない。 (イ) 必要経費の控除仮に,法102条2項によって原告の損害を推定できるとしても,被告らの得た利益には控除すべき経費が存在するから,十分に顧慮されなければならない。 (ウ) 寄与率 仮に,法102条2項によって 項によって原告の損害を推定できるとしても,被告らの得た利益には控除すべき経費が存在するから,十分に顧慮されなければならない。 (ウ) 寄与率 仮に,法102条2項によって原告の損害を推定できるとしても,クリアランスを利用する生海苔異物除去装置自体は,本件発明以前から用いられているものであり,本件発明により付加された機能は,従来のクリアランスを用いた生海苔異物除去装置における不具合(目詰まり,共回り)を防止することであり,生海苔異物除去装置の本来的な目的である異物の分離除去を効率的に行うことができるという限度においてのみ従来装置と異なるにすぎない。加えて,上記不具合(共回り)が生じるのは,海苔の収穫期の一時期であり,本件発明が効用を発揮するのは長くとも1か月程度である。そうすると,本件装置の販売における本件特許の寄与率は,せいぜい10%である。 イ本件販売3に係る損害本件販売3に係る仕入額は406万円(税抜。税込価格は,438万4800円),売上高は435万円(税抜。税込価格は,469万8000円)である。 その余の主張は,上記ア(ア)ないし(ウ)のとおりである。 ウ本件販売2及び本件転売に係る損害本件販売2に係る仕入額は2145万円(税抜。税込価格は2316万6000円),売上高は2244万円(税抜。税込価格は2423万5200円)である。 本件転売に係る仕入額は2244万円(税抜。税込価格は2423万5200円),売上高は2749万2000円(税抜。税込価格は2969万1360円)である。 その余の主張は,上記ア(ア)ないし(ウ)のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 本件発明の概要各争点に対する判断をする前提として,まず,本件発明の概要に 0円)である。 その余の主張は,上記ア(ア)ないし(ウ)のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 本件発明の概要各争点に対する判断をする前提として,まず,本件発明の概要について検 討する。 ⑴ 本件訂正明細書の記載本件訂正明細書には,以下の記載がある。 ア 【発明の属する技術分野】「本発明は,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除去する生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置に関する。」(段落【0001】)イ 【従来の技術】「この異物分離機構を備えた生海苔異物分離除去装置としては,特開平8-140637号の生海苔の異物分離除去装置がある。その構成は,筒状混合液タンクの環状枠板部の内周縁内に回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに,前記筒状混合液タンクに異物排出口を設けたことにある。この発明は,比重差と遠心力を利用して効率よく異物を分離除去できること,回転板が常時回転するので目詰まりが少ないこと,又は仮りに目詰まりしても,当該目詰まりの解消を簡易に行えること,等の特徴があると開示されている。」(段落【0002】)ウ 【発明が解決しようとする課題】「前記生海苔の異物分離除去装置,又は回転板とクリアランスを利用する生海苔異物分離除去装置においては,この回転板を高速回転することから,生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアランスに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象であり,究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する状況等である。この状況を共回りとする。 クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象であり,究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する状況等である。この状況を共回りとする。この共回りが発生する と,回転板の停止,又は作業の停止となって,結果的に異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の如く,最悪の状況となることも考えられる。」(段落【0003】)「前記共回りの発生のメカニズムは,本発明者の経験則では,1.生海苔(原藻)に根,スケール等の原藻異物が存在し,生海苔の厚みが不均等のとき,2.生海苔が束状,捩じれ,絡み付き等の異常な状態で,生海苔が展開した状態でない,所謂,生海苔の動きが正常でないとき,3.生海苔が異物を取り込んでいる状態,生海苔に異物が付着する等の状態であって,生海苔の厚みが不均等であるとき,等の生海苔の状態と考えられる。」(段落【0004】)エ 【課題を解決するための手段】「請求項1の発明は,共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目詰まりを無くすこと,又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)を図ることにある。またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置することを意図する。」(段落【0005】)「請求項1は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り 混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。」(段落【0006】)「請求項3の発明は,請求項1の目的を達成することと,またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置することを意図する。」(段落【0009】) 「請求項3は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。」(段落【0010】)オ 【発明の実施の形態】「本発明の生海苔混合液槽には,生海苔タンクから順次生海苔混合液が導入される。この導入された生海苔混合液の生海苔は,回転板とともに回転しつつ,順次吸込用ポンプにより回転板と選別ケーシングで形成される異物分離機構のクリアランスに導かれる。この生海苔は,このクリアランスを通過して分離処理される。この分離処理された生海苔及び海水は,選別ケーシングのケーシング内底面より連結口を経由して良質タンクに導かれる。」(段落【0019】)「このクリアランスに導かれる際に,生海苔の共回りが発生しても,本発明では,防止手段に達した段階で解消される(防止効果)。尚,前記防止手段は,単なる解消に留まらず,生海苔の動きを矯正し,効率的にクリアランスに導く働きも備えている(矯正効果)。」(段落【0020】)「以 止手段に達した段階で解消される(防止効果)。尚,前記防止手段は,単なる解消に留まらず,生海苔の動きを矯正し,効率的にクリアランスに導く働きも備えている(矯正効果)。」(段落【0020】)「以上のような操作により,生海苔の分離が,極めて効率的にかつトラブルもなく行われることと,当該回転板,又は当該装置の停止等は未然に防止できる特徴がある。」(段落【0021】)カ 【実施例】「1は異物分離除去装置で,この異物分離除去装置1は,生海苔混合液をプールする生海苔混合液槽2と,この生海苔混合液槽2の内底面2 1に設けた異物分離機構3と,異物排出口4と,前記異物分離機構3の回転板34を回転する駆動装置5と,防止手段6を主構成要素とする。」(段落【0023】)「生海苔混合液槽2には,生海苔・海水を溜める生海苔タンク10と連通する生海苔供給管11が開口しており,この生海苔供給管11には供給用のポンプ12が設けられている。また分離処理された生海苔・海水をプールする良質タンク13を設ける。」(段落【0024】)「異物分離機構3は,分離した生海苔・海水を吸い込む連結口31,及び逆洗用の噴射口32を有する選別ケーシング33と,この選別ケーシング33に寸法差部Aを設けるようにして当該選別ケーシング33の噴射口32の上方に設けられた回転板34と,この回転板34の円周面34aと前記選別ケーシング33の円周面33aとで形成されるクリアランスSと,で構成されている。前記寸法差部Aは,選別ケーシング33の円周端面33bと回転板34の円周端面34bとの間で形成する。」(段落【0025】)「防止手段6は,一例として寸法差部Aに設ける。図3,図4の例では,選別ケーシング33の円周端面33bに突起・板体・ナイフ等の突起物を1ケ所又は数ヶ所設ける 間で形成する。」(段落【0025】)「防止手段6は,一例として寸法差部Aに設ける。図3,図4の例では,選別ケーシング33の円周端面33bに突起・板体・ナイフ等の突起物を1ケ所又は数ヶ所設ける。また図5の例は,生海苔混合液槽2の内底面21に1ケ所又は数ヶ所設ける。さらに他の図6の例は,回転板34の円周面34a及び/又は選別ケーシング33の円周面33a(一点鎖線で示す。)に切り溝,凹凸,ローレット等の突起物を1ケ所又は数ヶ所,或いは全周に設ける。また図7の例は,選別ケーシング33(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが内嵌めされた構成のクリアランスSでは,このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を設ける。また図8の例では,回転板34の回転方向に傾斜した突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手 段6を1ケ所又は数ヶ所設ける。」(段落【0026】)「尚,前記回転板34は,駆動装置5のモーター51に設けた回転軸52に昇降自在に設けられている。従って,逆洗槽14内の海水を,ホース15及び逆洗用ポンプ16を介して噴射口32より噴射して,この回転板34を押上げ,この押上げによりクリアランスSの寸法を拡げる構成となっている。」(段落【0027】)「図中17は連結口31に設けた分離された生海苔・海水を良質タンク13に導くホース,18はホース17に設けた吸込用ポンプをそれぞれ示す。」(段落【0028】)キ 【発明の効果】「請求項1の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,突起・板体の突 の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,突起・板体の突起物とし,突起物を,選別ケーシングの円周端面に設ける生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。従って,この請求項1は,共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目詰まりを無くすこと,又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)が図れること,またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等の特徴がある。」(段落【0029】)「請求項3の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,突起・板体の突起物とし,突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの 円周面に設ける生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。従って,請求項1の目的を達成できることと,またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等の特徴を有する。」(段落【0031】)(2) 本件発明の概要本件発明の構成要件及び上記(1)で認定した本件訂正明細書の記載によれば,本件発明の概要は,以下のとおりと認められる。 ア本件発明は,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除去する生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置に関する。 従来,筒状混合液タンクの環状枠板部の内周縁内に回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この回 異物を分離除去する生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置に関する。 従来,筒状混合液タンクの環状枠板部の内周縁内に回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに,前記筒状混合液タンクに異物排出口を設けた生海苔異物分離除去装置(乙4発明)があった。 しかし,この生海苔異物分離除去装置(又は,回転板とクリアランスを利用する生海苔異物分離除去装置)においては,この回転板を高速回転することから,生海苔及び異物が回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象,又は,生海苔等がクリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象が生じ,究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する。 このような「共回り」が発生すると,回転板の停止又は作業の停止となって,結果的に異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等のような最悪の状況となることも考えられる。 イ本件発明は,従来の生海苔異物分離除去装置(乙4発明)の有する前 記アの問題に鑑み,共回りの発生をなくし,かつクリアランスの目詰まりをなくすこと,又は効率的・連続的な異物分離を図ること等を目的に,「生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置」において,本件発明では,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,これを回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成としたものである。 ウ本件発明によれば,共回りの発生をなくし,かつクリア において,本件発明では,前記防止手段を,突起・板体の突起物とし,これを回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成としたものである。 ウ本件発明によれば,共回りの発生をなくし,かつクリアランスの目詰まりをなくすこと,又は,効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)が図れること,この防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること,この防止手段を,クリアランスへの容易な設置が図れること等の効果を奏する。 2 争点1(構成要件B1の充足性)について(1) 「突起・板体の突起物」の意義一般的に,「突起」とは,「部分的につきでること。また,そのもの」などとされている(広辞苑第6版2020頁)。 そして,特許請求の範囲には,「前記防止手段(判決注:生海苔の共回りを防止する防止手段。構成要件A3)を,」(構成要件B)「突起・板体の突起物とし」(構成要件B1)と記載されるにとどまり,文言上,突起物の形成手段や形状は特定されていない。 また,本件訂正明細書には,突起物の実施例として,「防止手段6は,一例として寸法差部Aに設ける。図3,図4の例では,選別ケーシング33の円周端面33bに突起・板体・ナイフ等の突起物を1ケ所又は数ヶ所設ける。また図5の例は,生海苔混合液槽2の内底面21に1ケ所又は数 ヶ所設ける。さらに他の図6の例は,回転板34の円周面34a及び/又は選別ケーシング33の円周面33a(一点鎖線で示す。)に切り溝,凹凸,ローレット等の突起物を1ケ所又は数ヶ所,或いは全周に設ける。また図7の例は,選別ケーシング33(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが内嵌めされた構成のクリアランスSでは,このクリアランスSに突起・板体・ ヶ所,或いは全周に設ける。また図7の例は,選別ケーシング33(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが内嵌めされた構成のクリアランスSでは,このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を設ける。また図8の例では,回転板34の回転方向に傾斜した突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を1ケ所又は数ヶ所設ける。」(段落【0026】)と記載されているが,その他,「突起」の上記意義を限定すべきことを示す記載は見当たらない。 以上によれば,構成要件B1の「突起・板体の突起物」の「突起」とは,部分的に突き出ている部分又は部分的に突き出たものであり,「突起物」とは,部分的に突き出たものであると解するのが相当である。 ⑵ 「突起・板体の突起物」の充足性ア本件回転円板の構成前記第2の2(前提事実)⑶イ,証拠(甲21の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,本件回転円板の形状につき,次のとおりと認められる。 (ア) 本件回転円板には,1か所以上,凸部Dが形成されている。 (イ) 凸部Dは,回転円板3の側面部(端面)3a1(回転円板3の側面部(端面)3aの一部の面と共通である。),平面部3b1(回転円板3の表面3bの一部の面と共通である。)及び2カ所の径方向側面部(側面壁)3cなどから構成され,その平面形状は略扇形(中心を回転円板3の中心と共通にする。)である。 (ウ) 径方向側面部(側面壁)3cと側面部(端面)3a1の各面の交差によって,エッジxが形成される。 (エ) 平面部3b1は,径方向側面部(側面壁)3c及びエッジxによって回転円板の表面の一部である回転円板側凹部の底面部3b2との間で段差を形成し,凸部Dを突出させる。 (オ) 凸部Dの平面部3b1と回転円板側凹部Eの ,径方向側面部(側面壁)3c及びエッジxによって回転円板の表面の一部である回転円板側凹部の底面部3b2との間で段差を形成し,凸部Dを突出させる。 (オ) 凸部Dの平面部3b1と回転円板側凹部Eの底面部3b2の段差(高低差)は,エッジxの長さと略同一であり,略1mm弱ないし5mm程度である。 (カ) 平面部3b1と径方向側面部(側面壁)3cの各面が交差する部分には,上部境界線yが,底面部3b2と径方向側面部(側面壁)3cの各面が交差する部分には下部境界線z がそれぞれ現れる。 (キ) 凸部Dの間に凹部Eが形成され,又は,凹部Eの間に凸部Dが形成され,回転円板3の円周に沿う方向で見ると,凸部Dと凹部Eが交互に現れ,両者の個数は必ず同数となる。 (ク) 回転円板側凹部の底面部3b2との間で直線状の境界線を呈することによって,回転円板の外周側に薄板状部材を取り付けたような外観を呈するものである。すなわち,凸部Dは,凹部Eを配置することによって,回転円板の凹部の底面部3b2との間で側面壁(径方向側面部)3cによる段差を形成するイ充足性について上記アによれば,本件回転円板の凸部Dは,側面部(端面)3a1(回転円板3の側面部(端面)3aの一部の面と共通である。),平面部3b1(回転円板3の表面3bの一部の面と共通である。)及び2カ所の径方向側面部(側面壁)3cなどから構成され,平面部3b1,径方向側面部(側面壁)3c及びエッジxによって回転円板の表面の一部である回転円板側凹部の底面部3b2との間で段差を形成されることによって突出させられており,凸部Dの平面部3b1と回転円板側凹部Eの底面部3b2の段差(高低差)は,エッジxの長さと略同一の1mm 弱ないし5mm程度である。また,回転円板3の円周に沿う方向で見ると, られており,凸部Dの平面部3b1と回転円板側凹部Eの底面部3b2の段差(高低差)は,エッジxの長さと略同一の1mm 弱ないし5mm程度である。また,回転円板3の円周に沿う方向で見ると,凸部Dは,凹部Eと交互に配置されている。 このように,凸部Dは,底面部3b2から平面部3b1に向かって部分的に突き出ているといえ,「突起(物)」の意義が上記⑴のとおりであることからすれば,構成要件B1の「突起・板体の突起物」に該当するというべきである。 よって,本件装置は,構成要件B1を充足する。 ⑶ 被告らの主張に対する判断これに対し,被告らは,①「突起・板体の突起物」とは,凹凸部の長手方向が環状隙間における生海苔の移動方向に貫通していることであるが,本件回転円板に設けられている凹部Eには,底面部3b2が存在し,凹部の長手方向(深さ方向)が環状隙間における生海苔の移動方向に貫通していない,②出願経過における原告の陳述内容に照らせば,本件回転円板に設けられている凹部は,本件発明に含まれない凹部の構成を有するところ,包袋禁反言の原則が適用されるべきである,③凸部Dの形成と回転円板側凹部Eの形成は同義ではなく,回転円板側凹部Eの間に形成される非凹部に凸部Dは該当せず,凸部Dと回転円板側凹部Eの構成及び作用効果は異なる,などとして,本件装置が構成要件B1を充足しない旨主張する。 しかしながら,上記①については,被告らの主張する「長手方向」がいずれの方向を示すものであるか不明である。また,本件訂正明細書の特許請求の範囲において,被告らの主張するような解釈は明記されていない。 仮に,本件訂正明細書の【図6】及び【図7】の断面図に記載された「防止手段6」の形状が長方形であり,その長辺が被告らの主張する「長手方向」であるとすると 告らの主張するような解釈は明記されていない。 仮に,本件訂正明細書の【図6】及び【図7】の断面図に記載された「防止手段6」の形状が長方形であり,その長辺が被告らの主張する「長手方向」であるとすると,当該「長手方向」は生海苔の移動方向に貫通していると解し得る。しかし,本件訂正明細書の【図4】及び【図5】では,上記「長手方向」が生海苔の移動方向に貫通していないことが示されており, 【図4】ないし【図7】はいずれも本件装置の異物分離機構と防止手段を説明する図面であることからすれば,上記【図6】及び【図7】の記載のみをもって,「凹凸部の長手方向が環状隙間における生海苔の移動方向に貫通している」と解することはできない。 また,上記②については,被告らの指摘する原告の意見書(乙7)の内容を見ても,本件発明と乙1考案が異なることが指摘されているにすぎず,被告らの主張する本件発明に含まれない凹部の構成が記載されていると認めることはできず,被告らの主張は前提に誤りがあるといわざるを得ない。 さらに,上記③については,上記⑵アのとおり,本件回転円板の構成は,凸部Dの間に凹部Eが形成され,凹部Eの間に凸部Dが形成され,回転円板の円周に沿う方向に凸部Dと凹部Eが交互に現れる構成である。また,被告らは,凹部Eにつき,両端縁(なお,被告らは,渡邊新出願に係る明細書記載の符号「71a,71b」をもって特定しているが,別紙「本件回転円板(図面)」記載の【図4-3】の符号の「a-f,d-e」を示しているものと解される。)が,生海苔を切断するエッジ機能を果たす旨主張するようであるが,上記「a-f,d-e」は凸部Dの縁でもあるから,上記主張の事実をもって,凹部Eと凸部Dの構成や作用が異なるとはいえない。 よって,被告らの上記主張は, 能を果たす旨主張するようであるが,上記「a-f,d-e」は凸部Dの縁でもあるから,上記主張の事実をもって,凹部Eと凸部Dの構成や作用が異なるとはいえない。 よって,被告らの上記主張は,いずれも採用することはできない。 3 争点2(本件特許に係る無効理由の有無)について⑴ 争点2-1(発明未完成,記載要件違反)について被告らは,原告の主張が,「凹凸…の突起物」が「突起・板体の突起物」に該当する旨であることを前提に,本件訂正明細書には,どのような構成の凹凸が本件発明の作用効果を発揮するかについて全く開示されていないから,本件発明が未完成であり,また,本件特許には,記載要件(実施可能要件,サポート要件及び明確性要件)違反の無効理由がある旨主張する。 しかしながら,原告の主張は,凸部Dが「突起・板体の突起物」であるとするものであるから,被告らの上記主張は,原告の主張を正解しないものといわざるを得ず,前提に誤りがあり,失当である。 この点を措くとしても,本件発明の概要は,上記1⑵のとおりであり,本件発明は,共回りの発生を防止しかつクリアランスの目詰まりをなくすこと,又は効率的・連続的な異物分離を図ること等を目的に,①共回りの発生をなくし,かつクリアランスの目詰まりをなくすこと,又は,②効率的・連続的な異物除去が図れること,③上記防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等の効果を奏するものである。このように,本件発明では,その課題ないし目的及び作用効果の関係において,上記防止手段の具体的な大きさや形状ではなく,その設置場所(ひいてはクリアランスとの位置関係)が重要であると解されるところ,特許請求の範囲において,上記防止手段を「突起・板体の突起物」とし,当該防止手段の構成につき,本件発明では,回転 なく,その設置場所(ひいてはクリアランスとの位置関係)が重要であると解されるところ,特許請求の範囲において,上記防止手段を「突起・板体の突起物」とし,当該防止手段の構成につき,本件発明では,回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とすることが記載されており,本件訂正明細書にも,上記防止手段を設ける位置や形状の例示に関する記載がある(段落【0023】,【0026】,【図3】ないし【図8】)。 このような記載内容に照らせば,本件訂正明細書が,当業者において,本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえず,また,その内容が明確ではないともいえない。さらに,本件訂正明細書の【発明の詳細な説明】の記載により,当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではないともいえない。 そうすると,本件特許に,実施可能要件,サポート要件及び明確性要件の各違反があるとはいえず,本件発明が,発明未完成であるともいえない。 よって,本件特許に発明未完成及び記載要件違反の無効理由があるとは認められない。 ⑵ 争点2-3(進歩性欠如)について事案に鑑み,争点2-3(進歩性欠如)から検討する。 ア乙4発明の概要乙4文献の特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載,発明の詳細な説明(段落【0001】ないし【0003】,【0005】,【0009】,【0028】,【0029】)の各記載及び【図4】によれば,乙4文献に開示された乙4発明は,次のとおりであると認められる。 第一分離除去具は,第一回転板,第一回転板との間にクリアランスSを形成する環状固定板と環状枠板で構成される環状枠板部,環状枠板を連設するための周筒部,クリアランスSを通過した海苔混合液を連設タンクに排出するガイド筒,及び,異物を排 回転板との間にクリアランスSを形成する環状固定板と環状枠板で構成される環状枠板部,環状枠板を連設するための周筒部,クリアランスSを通過した海苔混合液を連設タンクに排出するガイド筒,及び,異物を排出するための管状の排出路及びそれに続く排出管とで構成されており,筒状混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し,この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスSを介して内嵌めし,この第一回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底隅部に異物排出口を設けたことを特徴とする生海苔の異物分離除去装置。 イ本件発明と乙4発明との一致点及び相違点本件発明と乙4発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。 (ア) 一致点生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置である点。 (イ) 相違点本件発明が,「防止手段を,突起・板体の突起物とし,この突起物を,回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした, 回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を具備するのに対して,乙4発明は当該防止手段を具備していない点。 ウ乙2文献及び乙3文献に記載された公知技術(ア) 乙2文献に記載された公知技術乙2文献には,以下の公知技術が記載されている(なお,本項目の括弧内の段落は,乙2文献に記載された段落をいう。)。 当該技術は,生海苔の異物(ゴミ,エビ,アミ糸等)分離装置に関し,生海苔調合液(生海苔と塩水又は真水とを適宜濃度に調合したもの)から異物を分離する際に使用されるものに関する。(段落【0001】)従来におけるこの種の異物 ゴミ,エビ,アミ糸等)分離装置に関し,生海苔調合液(生海苔と塩水又は真水とを適宜濃度に調合したもの)から異物を分離する際に使用されるものに関する。(段落【0001】)従来におけるこの種の異物分離装置は,所要数のローラーをスリットを介して並列に配置し,これらのスリットに,生海苔調合液を通過させることによって,生海苔調合液中の異物を分離除去していたが,かかる従来の異物分離装置にあっては,スリットの上流側に分離除去された異物が詰まりやすく,その結果,異物の分離除去の作業能率を向上させにくいという不都合があった。そこで,乙2文献に記載された技術は,このような不都合を解消するために,所要数の回転ローラーをスリットを介して並列に配置し,これらのスリットに生海苔調合液を通過させることによって,生海苔調合液中の異物を分離する生海苔の異物分離装置において,回転ローラーの外周面にらせん溝を形成したものである。(段落【0002】ないし【0005】)乙2文献に記載された技術によれば,分離除去されてスリットの上流側にとどまった異物は,らせん溝の回転に従ってローラーの軸方向に沿って移動してスリットから除去され,当該スリットは常時空間を確保することができるという作用効果を奏する。(段落【0007】)(イ) 乙3文献に記載された公知技術 乙3文献には,以下の公知技術が記載されている(なお,本項目の括弧内の段落は,乙3文献に記載された段落をいう。)。 当該技術は,生海苔のゴミ取り装置に関する。(段落【0001】)従来,乾燥海苔の製造に当たり,乾燥海苔には,生海苔に混入しているゴミが付着している可能性があるため,ゴミ検出装置によりゴミの検出を行い,ゴミが検出されたものはゴミ取り作業工程に回すようにしていたが,同工程で,乾燥海苔に付 り,乾燥海苔には,生海苔に混入しているゴミが付着している可能性があるため,ゴミ検出装置によりゴミの検出を行い,ゴミが検出されたものはゴミ取り作業工程に回すようにしていたが,同工程で,乾燥海苔に付着したゴミを手作業により取り除いていたために,手間と労力を要して,作業能率が悪いという問題があった。そこで,乙3文献に記載された技術は,所要の大きさに切断した生海苔と塩水とを一定の重量割合で調合する調合部と,同調合部により調合された生海苔と塩水との調合液を吸い込む吸込流路部と,同吸込流路部に設けて調合液中のゴミをろ過するろ過部を具備し,ろ過部には一定の細幅のろ過用スリットを形成した生海苔のゴミ取り装置を提供するものである。(段落【0002】ないし【0005】)乙3文献に記載された技術によれば,所要の大きさに切断した生海苔と塩水とを,生海苔がろ過用スリット中を通過しやすい程度の重量割合で調合して,同調合液を吸込流路部に吸い込むことにより,その途中でろ過部のろ過用スリットにより調合液中のゴミを確実にろ過することができ,付着ゴミの検出や,手作業によるごみ取り作業の手間を省くことができるという作用効果を奏する。(段落【0099】【0100】)エ相違点の容易想到性について(ア) 乙4文献の「発明の詳細な説明」(段落【0002】,【0003】,【0005】,【0009】,【0028】,【0029】)の記載によれば,乙4発明は,従来の異物分離除去装置(特開平6-121660号)が,分離ドラムの周壁に所要数の分離孔を設け,生海苔混合液を 回転する分離ドラム内に供給し,分離孔を通過させることによって,生海苔混合液中の異物を分離ドラムの分離孔の周縁に引っ掛けて排出口に流れるのを防止するという方式(以下「従来方式」という。)であったため 転する分離ドラム内に供給し,分離孔を通過させることによって,生海苔混合液中の異物を分離ドラムの分離孔の周縁に引っ掛けて排出口に流れるのを防止するという方式(以下「従来方式」という。)であったため,分離孔の周縁に異物が蓄積し,目詰まりが発生するという課題を有するものであったことから,当該課題を解決することを目的とし,従来の異物分離除去装置における異物分離除去の方式を変更して,固定部材(環状枠板部)とこの内周縁内に内嵌めされた回転部材(第一回転板)との間のクリアランスに生海苔を導入しつつ,異物を,回転部材(第一回転板)の回転による遠心力によって,円周方向(クリアランスよりも環状枠板部側)に追いやり,生海苔のみを水とともにクリアランスを通過させるようにしたもの(以下「回転板方式」という。)であり,当該方式を採用したことにより,異物がクリアランスに詰まりにくくなり,従来の異物分離除去装置のように目詰まり洗浄装置等を別途設けることを不要としたものと認められる。 これに対し,本件発明は,前記1⑵のとおり,乙4発明を従来技術とし,その有する課題の解決を目的として発明されたものであって,回転板方式による異物分離除去装置である乙4発明には,「共回り」の課題があることを見いだし,これを克服するために,回転板方式による異物分離除去装置において,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段を設けたものである。 そうすると,乙4発明は,回転板方式を前提とする発明である点で本件発明と共通するが,乙4文献には,本件発明の課題である「共回り」,すなわち,「回転板を高速回転することから,生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアランスに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアラン ち,「回転板を高速回転することから,生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアランスに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象であり,究極的には,クリア ランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する状況等」(本件訂正明細書の段落【0003】)に関する記載はない。 したがって,乙4文献に接した当業者において,回転板方式による異物分離除去装置である乙4発明に前記「共回り」の課題があることを想起し得たと認めることはできない。 (イ) また,乙4発明は本件発明と同じく,固定部材と回転部材との間のクリアランスに生海苔を導入しつつ,異物を回転部材による遠心力により円周方向に追いやり,生海苔のみがクリアランスを通過するようにした回転板方式を前提とするものであるのに対し,乙2文献及び乙3文献の異物分離除去装置は,これとは異なり,スリットに生海苔調合液を通過させることによって生海苔調合液中の異物を分離するという方式によるものであって,乙4発明と乙2文献及び乙3文献に開示された技術とでは,その前提とする異物分離除去に係る技術的思想(方式)が異なるから,仮に,乙4文献に接した当業者において,乙4発明について,クリアランスに異物や生海苔の詰まりが生じるという問題があるという課題を想起し得たとしても,乙4発明に,それとは前提とする異物分離除去に係る技術的思想の異なる乙2文献及び乙3文献に記載された公知技術を適用する動機付けがあるとは認められない。 さらに,仮に,当業者において,乙4発明に乙2文献及び乙3文献に記載された公知技術を適用することを試みたとしても,乙4発明において,乙4発明とは異物分離除去の仕組みが異なる乙2文献及び乙3文献に記載された 仮に,当業者において,乙4発明に乙2文献及び乙3文献に記載された公知技術を適用することを試みたとしても,乙4発明において,乙4発明とは異物分離除去の仕組みが異なる乙2文献及び乙3文献に記載された発明をどのように適用するのか想定することはできない上,乙2文献及び乙3文献には突起物の構成は何ら開示されていないから,乙4発明に乙2文献及び乙3文献で開示された技術を組み合わせたとしても,本件発明の構成に至ることはできないというべ きである。 オ以上によれば,本件特許に進歩性欠如の無効理由があると認めることはできない。 カ被告らの主張に対する判断被告らは,①親和製作所による宣伝広告(乙8ないし13)及び親和製作所以外の当業者である三社による特許出願(甲27の6の1,27の10,27の18の1)の状況によれば,乙4発明に係る生海苔異物除去装置には,目詰まりの問題点があり,当業者において当該問題点を解決すべき手法を開発すべき動機付けが存在しており,②当業者において,乙2文献及び乙3文献に開示されている目詰まり防止に関する周知技術を適用することは容易に想到することは可能である,などと主張する。 しかしながら,上記①については,被告らが指摘する宣伝広告や特許出願の内容を見ても,回転板方式を採用した異物分離除去装置において,前記「共回り」の現象が生じることが自明であったと認めることはできない。 また,上記②については,乙2文献及び乙3文献に開示された公知技術の内容は上記ウのとおりである上,同技術が周知技術であったと認めるに足りる証拠はない。 よって,被告らの主張はいずれも採用することはできない。 ⑶ 争点2-2(拡大先願違反)についてア乙1考案の概要乙1文献の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載,【考案の りる証拠はない。 よって,被告らの主張はいずれも採用することはできない。 ⑶ 争点2-2(拡大先願違反)についてア乙1考案の概要乙1文献の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載,【考案の詳細な説明】(段落(【0001】ないし【0005】,【0012】,【0023】,【0024】の各記載)及び【図2】ないし【図4】によれば,乙1文献には,「混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設 し,この環状枠板部の内側に回転板を設置するとともにこの回転板と前記環状枠板部との間にクリアランスを形成し,前記回転板を軸心を中心として適宜回転駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底部に異物排出口を設けた生海苔の異物分離除去装置において,前記環状枠板部の内周縁に所要数の凹部を形成するとともにこの凹部における前記クリアランスを他の部分よりも広幅とすることによって,クリアランスに詰まる異物の大部分を占める茎部の付いている生海苔が前記回転板によって引きずられ上記凹部の位置に達した際に同凹部におけるクリアランスを通過することができることを特徴とする生海苔の異物分離除去装置」が開示されていると認められる。 イ本件発明と乙1考案の対比(実質的同一性の有無)(ア) 上記アのとおり,乙1考案は,環状枠固定部の内周縁に凹部を設けることによってクリアランスを部分的に幅広として,当該幅広としたクリアランスから生海苔異物の大部分を占める茎部の付いた生海苔を通過させ,これによってクリアランスの目詰まりという課題を解消するというものであり,乙1考案には,本件発明の技術的思想,すなわち,突起・板体の突起物を「回転板及び/又は選別ケーシングの円周面」に設け,同突起物が,生海苔混合液がクリアランスに導かれる際に発生した生海苔の共回りを解消す 考案には,本件発明の技術的思想,すなわち,突起・板体の突起物を「回転板及び/又は選別ケーシングの円周面」に設け,同突起物が,生海苔混合液がクリアランスに導かれる際に発生した生海苔の共回りを解消するとともに(防止効果),生海苔の動きを矯正し,効率的にクリアランスに導く(矯正効果)ことによって,共回りの発生をなくし,クリアランスの目詰まりをなくすという技術的思想は記載されていない。 そうすると,乙1考案に設けられる「凹部」は,本件発明の「突起・板体の突起物」(構成要件B1)とは異なるから,乙1考案は,構成要件A3の「防止手段」の構成を備えていない。 よって,この点において,乙1考案と本件発明は相違する。 (イ) これに対し,被告らは,①乙1考案には,【課題を解決するための手段】及び【考案の効果】に共回りの発生を防止できるとの作用効果が明記されているから,乙1考案の目的には,共回りの防止も含まれるといえ,乙1考案の出願人が乙1考案に係る出願日前に「目づまり防止付」の海苔異物除去機の宣伝広告を行っていたことにも照らせば,乙1考案と本件発明の目的は実質的に同一といえる,②乙1文献における【図4】と本件訂正明細書の【図6】によれば,乙1考案と本件発明とも,多数の凹凸を全周に形成するとほぼ同一の構成となり,両者における本件発明の防止手段の一態様となる凹部は,全く同一に形成され,全く同一の作用効果を発揮することになる,③乙1考案には,凹部を回転板に設けることは記載されていないが,乙2文献及び乙3文献によれば,凹部を回転板に設けることは本件発明の出願時において周知技術であったことは明らかであり,回転板に凹部を設けることは乙1考案に記載されているに等しいなどと主張する。 しかしながら,上記①については,乙1考案には共回りの発生原因 発明の出願時において周知技術であったことは明らかであり,回転板に凹部を設けることは乙1考案に記載されているに等しいなどと主張する。 しかしながら,上記①については,乙1考案には共回りの発生原因や解決手段はもちろん共回りの課題についての記載は一切ない。また,上記⑵ウ及びカのとおり,被告らの指摘する宣伝広告(乙8ないし11)によっても乙1考案の出願時において共回りの課題が当業者に周知となっていたとはいえない。 また,上記②については,本件発明が防止手段として規定する「突起・板体の突起物」の構成は,前記2⑴のとおり,部分的に突き出ているものであるのに対し,乙1考案における凹部の構成は,部分的にクリアランスの幅を広げるものであるから,本件発明における突起物の数や乙1考案における凹部の数にかかわらず,両者の構成がほぼ同一であるとすることはできない。 さらに,上記③については,被告らも自認するとおり,乙1文献に は,凹部を回転板に設ける旨の記載は見当たらず,乙2文献及び乙3文献に開示された技術は,上記⑵ウのとおり,回転板方式ではない従来方式の生海苔異物分離装置に係るものであり,これらをもって凹部を回転板方式における回転板に設けることが周知技術であったとはいえない。 したがって,被告らの主張はいずれも採用することができない。 ウ以上によれば,本件特許に法29条の2違反の無効理由があると認めることはできない。 4 争点3(被告らによる共同不法行為等の成否)について⑴ 争点3-1(本件販売1及び3に係る共同不法行為等の成否)についてア被告ワンマンの不法行為について被告ワンマンによる本件販売1及び3は,いずれも本件特許権の侵害行為に当たるから,被告ワンマンには,不法行為が成立する。 イ被告ニチモウと被告ワ ア被告ワンマンの不法行為について被告ワンマンによる本件販売1及び3は,いずれも本件特許権の侵害行為に当たるから,被告ワンマンには,不法行為が成立する。 イ被告ニチモウと被告ワンマンの共同不法行為について原告は,被告ニチモウが被告ワンマンの完全親会社であって,被告ワンマンを実質的に支配し,自らの一事業部門として事業を遂行しているといえるとして,被告ワンマンの上記不法行為は,被告ニチモウと被告ワンマンの共同不法行為に該当すると主張する。 しかしながら,被告ワンマンが被告ニチモウの完全子会社であるなどの原告の主張する上記事情を踏まえても,被告ワンマンとは別の法人である被告ニチモウについて,被告ワンマンとの共同不法行為が成立するとは認めるに足りず,原告の上記主張を採用することはできない。 ウ被告Aの会社法429条1項に基づく責任について原告は,被告Aにつき,①先行訴訟において和解交渉中であったにもかかわらず,渡邊機開と共同し,被告ワンマンの代表取締役として,悪意をもって本件販売1を決定した,②本件訴訟において侵害論に係る心 証開示がされたにもかかわらず,被告ワンマンの取締役として,悪意をもって本件販売3を決定したことから,本件販売1及び3につき,被告Aは,会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う旨主張する。 しかしながら,上記①については,旧製品に係る先行訴訟において和解交渉中であったことをもって,本件装置に係る被告Aの悪意又は重過失を裏付ける事情ということはできないし,上記②についても,取締役会の一構成員であった被告Aの悪意又は重過失を裏付けるに足りず,他に,本件販売1及び3に係る被告Aの職務の執行について,同被告に悪意又は重過失があったことを認めるに足りる証拠は ②についても,取締役会の一構成員であった被告Aの悪意又は重過失を裏付けるに足りず,他に,本件販売1及び3に係る被告Aの職務の執行について,同被告に悪意又は重過失があったことを認めるに足りる証拠はない。 よって,本件販売1及び本件販売3について,被告Aが会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負うと認めることはできない。 ⑵ 争点3-2(本件販売2及び本件転売に係る共同不法行為等の成否)についてア主位的請求(本件販売2及び本件転売を一体とする被告らの共同不法行為の成否等)について原告は,主位的に,被告西部機販において被告ワンマン,被告ニチモウ及び被告A(以下「被告3名」という。)に対し本件転売の予定を説明し,被告3名において,被告西部機販が本件転売を行う予定であることを知りながら本件販売2を行ったとして,このことをもって,本件販売2及び本件転売を一体として,被告らに共同不法行為等が成立する旨主張するようである。 この点,被告ワンマンによる本件販売2及び被告西部機販による本件転売は,いずれも本件特許権の侵害行為に当たるから,被告ワンマンには本件販売2につき,被告西部機販には本件転売につき,個別に不法行為が成立する。 しかしながら,被告3名において被告西部機販が本件転売を行うこと を知って本件販売2を行ったなどの原告主張に係る上記各事実を認めるに足りる証拠はない上,本件販売2及び本件転売は,それぞれ別個の当事者間の独立した取引行為(売買契約)であるから,仮に,原告が主張するような事実が認められるとしても,そのことから直ちに,本件販売2及び本件転売を一体として,被告らの共同不法行為が成立すると認めることはできず,原告の主位的主張は理由がない。 イ予備的主張(本件販売2に係る被告ニチモ としても,そのことから直ちに,本件販売2及び本件転売を一体として,被告らの共同不法行為が成立すると認めることはできず,原告の主位的主張は理由がない。 イ予備的主張(本件販売2に係る被告ニチモウの共同不法行為の成否等)について原告は,予備的に,①本件販売2につき,被告ニチモウと被告ワンマンが共同不法行為に基づく損害賠償責任を,被告Aが会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負い,②本件転売につき,被告西部機販が不法行為に基づく損害賠償責任を負う旨主張する。 しかしながら,上記①については,上記⑴イと同様の理由から,被告ニチモウが共同不法行為に基づく損害賠償責任を負うと認めることはできないし,また,上記⑴ウと同様の理由から,当時,被告ワンマンの取締役であった被告Aが本件販売2について会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負うと認めることはできない。 以上によれば,本件販売2及び本件転売については,上記アのとおり,本件販売2について被告ワンマンが,本件転売について被告西部機販が,それぞれ不法行為に基づく損害賠償責任を負うに止まるものと認められる。 5 争点4(損害額)について(1) 以上のとおり,①被告ワンマンは本件販売1ないし3につき,②被告西部機販は本件転売につき,それぞれ不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 ⑵ そして,弁論の全趣旨によれば,本件販売1ないし3及び本件転売に係 る被告ワンマンないし被告西部機販が得た利益額は,次のとおりであると認められる(被告らが自認する額を超える部分を認めるに足りる証拠はない。)。 ア本件販売1ないし3に係る被告ワンマンの得た利益額(ア) 本件販売1被告ワンマンは,本件装置3台を合計1247万4000円(税込)で仕入れ,合計1620万円(税込)で販売した い。)。 ア本件販売1ないし3に係る被告ワンマンの得た利益額(ア) 本件販売1被告ワンマンは,本件装置3台を合計1247万4000円(税込)で仕入れ,合計1620万円(税込)で販売した。 よって,本件販売1によって同被告が得た利益は,上記売上高から上記仕入額を控除した372万6000円である。 (イ) 本件販売2被告ワンマンは,本件6台を合計2316万6000円(税込)で仕入れ,これらを合計2423万5200円(税込)で販売した。 よって,本件販売2によって同被告が得た利益は,上記売上高から上記仕入額を控除した106万9200円である。 (ウ) 本件販売3被告ワンマンは,本件装置1台を438万4800円(税込)で仕入れ,これを469万8000円(税込)で販売した。 よって,本件販売3によって同被告が得た利益は,上記売上高から上記仕入額を控除した31万3200円である。 イ被告西部機販による本件転売に係る利益額被告西部機販は,本件6台を合計2423万5200円(税込)で仕入れ,これらを合計2969万1360円(税込)で販売した。 よって,本件転売によって同被告が得た利益は,上記売上高から上記仕入額を控除した545万6160円である(ただし,原告の主張額は518万4000円)。 ⑶ 原告の損害額 上記⑵によれば,本件販売1ないし3によって被告ワンマンが得た利益は,順に,372万6000円,106万9200円,31万3200円の合計510万8400円であり,また,本件転売によって被告西部機販が得た利益は原告の主張する518万4000円と認められるから,上記各利益の額を原告が受けた損害の額と推定するのが相当である(法102条2項)。 そして,被告ワンマンによる本件 よって被告西部機販が得た利益は原告の主張する518万4000円と認められるから,上記各利益の額を原告が受けた損害の額と推定するのが相当である(法102条2項)。 そして,被告ワンマンによる本件販売1ないし3と因果関係のある弁護士費用は,それぞれ,37万3000円,10万7000円,3万1000円の合計51万1000円であり,また,被告西部機販による本件転売と因果関係のある弁護士費用は,原告の主張する51万6000円であると認めるのが相当である。 以上によれば,被告ワンマンによる本件販売1ないし3に係る原告の損害額は,合計561万9400円(うち本件販売1及び3に係る損害は444万3200円,本件販売2に係る損害は117万6200円)であり,被告西部機販による本件転売に係る原告の損害額は,原告の主張する合計570万円となる。 ⑷ これに対し,被告らは,要旨,①原告は販売店ではないから,被告ワンマン及び被告西部機販が本件販売1ないし3及び本件転売によって得た利益を原告の損害と推定することはできない,②本件装置の販売において,仕入額の他に控除すべき必要経費が存在する,③本件装置の販売に係る本件特許の寄与率はせいぜい10%であるなどと主張する。 しかしながら,上記①について,原告が上記各被告のような販売店ではなく製造業者であるとしても,そのことから直ちに,本件発明の実施品が有する顧客吸引力にもかかわらず,原告がその取引先への販売の機会を持ち得なかったとはいえず,他に,原告が取引の機会を奪われたとはいえない特段の事情も認められないから,本件において法102条2項による推 定が及ばないとすることはできず,また,被告らの主張する事情は,同条項による推定を覆滅するに足りる事情ともいえない。 また,上記②については,被告らは,控除 おいて法102条2項による推 定が及ばないとすることはできず,また,被告らの主張する事情は,同条項による推定を覆滅するに足りる事情ともいえない。 また,上記②については,被告らは,控除すべきであると主張する必要経費について,具体的な主張立証をしていない。 さらに,上記③について,本件発明は,生海苔異物除去装置の構造の中心的部分に関するものであるから,それが本件装置の販売に寄与する割合を減ずることは相当でない。 よって,被告らの主張は,いずれも採用することはできない。 6 結論以上によれば,被告ワンマン・同西部機販に対する本件装置・本件回転円板に係る差止・廃棄請求はいずれも理由がある。 また,損害賠償請求については,①被告ワンマンは,本件販売1及び3について,損害賠償金444万3200円,及びうち409万9000円(本件販売1に係る損害)に対する平成28年2月6日(訴状送達の日の翌日)から,うち34万4200円(本件販売3に係る損害)に対する同年11月3日(同年10月28日付け訴え変更申立書⑵の送達の日の翌日)から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負い,②被告ワンマンは,本件販売2について,損害賠償金117万6200円及びこれに対する同年11月3日(上記訴え変更申立書の送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負い,③被告西部機販は,本件転売につき,原告の予備的請求額である損害賠償金570万円及びこれに対する同年11月3日(上記訴え変更申立書の送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負うものである。 よって,原告の請求は,主文の限度で理由があるからこれらを認容し,その余の請求 変更申立書の送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負うものである。よって,原告の請求は,主文の限度で理由があるからこれらを認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官沖中康人 裁判官廣瀬達人 裁判官村井美喜子 (別紙)物件目録 1 下記⑴ないし⑸の型名の「生海苔異物除去機」ただし,⑴ないし⑷は,型名「WK-500」「WK-550」「WK-600」「WK-700」と同一構成の「生海苔異物除去機」を除く。記(1) 型名「LS-R」(2) 型名「LS-S」(3) 型名「LS-G」(4) 型名「LS-L」⑸ 型名「LS-8」以上 (別紙)物件目録 2 物件目録1記載の「生海苔異物除去機」に用いる「回転円板」以上 (別紙)本件装置の構成 【原告の主張】α1ⅰ 吸引ポンプ用連結口を有するケーシング部材7ⅱ 及び環状固定板4 2 回転円板3 3 回転円板3に形成された凸部D 4 異物排出口5 5 をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される異物選別槽A(その底部を構成する底板2を含む。)を有する生海苔異物除去機β 回転円板3に形成される凸部Dにつき, 1 その平面部3b1が径方向側面部(側面壁)3c,エッジxによって回転円板の表面の一部である回転円板側凹部の底面部3b2との間で段差を形成することで突出する。 2 側面部( れる凸部Dにつき, 1 その平面部3b1が径方向側面部(側面壁)3c,エッジxによって回転円板の表面の一部である回転円板側凹部の底面部3b2との間で段差を形成することで突出する。 2 側面部(端面)3a1,平面部3b1,2カ所の径方向側面部(側面壁)3cなどから構成され,その平面形状は略扇形(中心を回転円板3の中心と共通にする。)である。回転円板側凹部の底面部3b2との間で直線状の境界線を呈することによって,回転円板3の外周側に薄板状部材を取り付けたような外観を呈する。 γ 本件装置は,底板2に環状固定板4が取り付けられていて環状固定板4の内側に円形孔が形成されていると共に,底板2に異物排出口5を備えている異物選別槽Aと,モーターによって駆動される回転軸により回転する,凸部Dが形成された回転円板3が前記円形孔の内側に回転自在に遊嵌され,環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aと,回転円板3の側面部(端面)3aとで形成された環状隙間Cと,前記円形孔の下側に配置されていて,吸引ポンプ用連結 口を有するケーシング部材7などからなる装置形態(システム)を包含する生海苔異物除去機である。 【被告らの主張】 1 外枠1,底板2,回転円板3,環状固定板4は,全体として一つの異物選別槽Aを構成しており,原料供給ホース6を介して異物選別槽Aに供給された生海苔と海水の混合液(生海苔・海水混合液=原料)を蓄えることができる。 2 外枠1は,上方から見て八角形状を呈し,その内側には,多数の小孔が開けられたパンチング網で,更に枠が形成される。 異物選別槽Aの開口上部には,原料供給ホース6,洗浄水供給ホース,センサーなどが設置されている。 底板2の一部(パンチング網に囲まれた部分)には,通常は閉鎖され,コックによって開口可能なように構成 異物選別槽Aの開口上部には,原料供給ホース6,洗浄水供給ホース,センサーなどが設置されている。 底板2の一部(パンチング網に囲まれた部分)には,通常は閉鎖され,コックによって開口可能なように構成された異物排出口5が設けられている。 3 底板2には円形孔が複数個(4個若しくは6個又は8個,型名「LS-R」及び「LS-S」は4個,型名「LS-G」及び「LS-L」は6個,型名「LS-8」は8個)設けられ,その各内周に,環状固定板4を突出させるようにしてケーシング部材7(4個若しくは6個又は8個)が(底板2の)裏側から取り付けられている。 ケーシング部材7の側面下部には,吸引ポンプ用の連結口が設けられている。同連結口に連設したホースは,吸引ポンプに接続されている。 4 回転円板3の外径は,環状固定板4の内径よりも僅かに小さい。そのため,回転円板3は,ケーシング部材7に貫設された回転軸に載架されて環状固定板4の内周側で回転する。 回転円板3の側面部(端面)3aは,テーパー状に形成されており,円周状を呈した該側面部(端面)3aと環状固定板4の内周側面部(内周端面)4aとで,環状隙間Cを形成する。 5 回転円板3には,凹部Eと凸部Dとの組合せが1か所以上(図ではそれぞれ6,4,2か所のものを示すが,これに限定されない。)形成されている。 ⑴ 凹部Eは,回転円板3の表面3bの外周部分に,(周方向に所定長さ)×(側面部(端面)3aから径方向内側に所定長さ)×(表面3bから所定深さ)の領域に亘って凹入形成されており,底面部3b2,2カ所の径方向側面部3c,側面部(端面)3dを有し,略扇形の開口3e(a-b-c-d)をもって表面3bに開口しており,略円筒形の開口3f(a-d-e-f)をもって(環状)隙間Cに対面するように開口している 方向側面部3c,側面部(端面)3dを有し,略扇形の開口3e(a-b-c-d)をもって表面3bに開口しており,略円筒形の開口3f(a-d-e-f)をもって(環状)隙間Cに対面するように開口している。 ⑵ 凹部Eの径方向側面3cと側面部(端面)3aの各面の交差によってエッジxが形成される。 ⑶ 回転円板側凹部Eの底面部3b2までの深さはエッジxの長さと略同一で,1mm弱~5mm程度(但し,この数値範囲に限定するものではない。)である。 ⑷ 凹部Eの間に凸部Dが形成され,凹部Eと凸部Dが,交互に現れ,両者の個数は必ず同数となる。 6 回転円板3は,止めネジ,隙間調整ネジ,目盛板,スプリングなどから構成される隙間調整機構によって,上下方向移動可能なように構成されている。 (別紙)本件回転円板(図面) 下記図面は,全ての型の回転円板に共通している。 なお,【図2】,【図3】,【図4-1】の各枝番号は,それぞれ,凸部を6個,4個,2個ずつ有する回転円板の図面である。 1 図2-1~3 各回転円板を搭載した異物分離部Bの拡大斜視図 2 図3-1~3 各回転円板の平面図,及び断面図(a) 各回転円板の平面図左側図(凸部Dを左右に配置)右側図(凹部Eを左右に配置)(b) 各回転円板の断面図左側図((a)図におけるA断面)右側図((a)図におけるB断面) 3 図4 各回転円板の凸部Dを示す図⑴ 図4-1-1~3凸部D及び凹部Eの各回転円板における位置を示す平面図⑵ 図4-2凸部D又は凹部E(径方向側面部3c)の各回転円板における位置を示す断面図(図3-1~3の各(b)右側図((a)図におけるB断面)の拡大図)⑶ 図4- を示す平面図⑵ 図4-2凸部D又は凹部E(径方向側面部3c)の各回転円板における位置を示す断面図(図3-1~3の各(b)右側図((a)図におけるB断面)の拡大図)⑶ 図4-3 凸部Dの斜視図(概略図)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る