平成26年2月6日判決言渡平成24年(行ウ)第119号放置違反金納付命令取消請求事件 主文 1 愛知県公安委員会が原告に対して平成24年1月19日付けでした放置違反金納付命令を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,愛知県公安委員会から平成24年1月19日付けで放置駐車違反による放置違反金納付命令(以下「本件納付命令」という。)を受けた原告が,自らは,放置車両の使用者(道路交通法51条の4第4項)に当たらないから,本件納付命令は違法であると主張し,その取消しを求めた事案である。 2 関係法令の定め別紙「関係法令の定め」に記載したとおりである。 3 前提事実(掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下,書証番号は特記しない限り枝番を含む。)(1) 原告等ア原告(昭和55年 ▲ 月 ▲ 日生)は,平成15年8月19日,A株式会社(以下「A」という。)との間で,登録番号「京都○」の自家用普通乗用自動車(車種名グランドハイエース。以下「本件車両」という。)の所有権留保特約付き割賦販売契約を締結し,併せて,B株式会社(以下「B」という。)との間で,上記契約に基づく割賦金支払債務について支払保証委託契約を締結した。(甲3,7,弁論の全趣旨)イ本件車両は,平成15年8月19日頃,「所有者」をA,「使用者」を原告 として自動車登録ファイルに登録された。原告は,その後,Aから,本件車両の引渡しを受け,後記(2)のとおり,Cに本件車両を引き渡した平成17年2月6日までの間,本件車両を自ら使用していた。(甲4,原告本人,弁論の全趣旨)(2) 本件車両の引渡 後,Aから,本件車両の引渡しを受け,後記(2)のとおり,Cに本件車両を引き渡した平成17年2月6日までの間,本件車両を自ら使用していた。(甲4,原告本人,弁論の全趣旨)(2) 本件車両の引渡し等ア原告は,平成17年2月6日午後6時頃,奈良県 ○ 郡α内において,Cに対し,本件車両を引き渡した。(甲17,原告本人)イ原告は,本件車両の引渡し以降,Cと連絡を取り合ったことはなく,本件車両の占有を回復したこともない。(原告本人,弁論の全趣旨)ウ本件車両は,平成18年9月22日と平成21年4月1日の2回にわたり,中部運輸局愛知運輸支局において継続検査(いわゆる車検)を受検した。(甲13ないし16,弁論の全趣旨)(3) 駐車監視員による放置駐車違反の現認等ア愛知県天白警察署長から業務委託を受けた駐車監視員2名(以下「本件監視員ら」という。)は,平成23年8月24日午前10時12分頃,名古屋市β区γ×番地付近道路(以下「本件道路」という。)において,本件車両が本件道路の左側端から3.5mの位置に駐車している事実を現認した。(甲2,乙1)イ本件監視員らが本件車両を見分したところ,本件車両の内部及びその付近一帯には運転者等の人の姿がなく,平成23年8月24日午前10時12分から同日午前10時19分までの7分間にわたって,運転者が本件車両に戻ることもなかった。そこで,本件監視員らは,本件車両が道路交通法47条2項に違反し,その運転者がこれを離れて直ちに運転することができない状態にあるものと認め,本件車両に放置車両確認標章を貼付した。(乙1)ウ愛知県警察天白警察署長は,平成23年8月24日,愛知県公安委員会に対し,本件車両の駐車の状況を報告した。同報告に基づき,愛知県公安委員会は,本件車両が道路交通法5 標章を貼付した。(乙1)ウ愛知県警察天白警察署長は,平成23年8月24日,愛知県公安委員会に対し,本件車両の駐車の状況を報告した。同報告に基づき,愛知県公安委員会は,本件車両が道路交通法51条の4第4項本文所定の放置車両に当たる旨認定し(以下,当該認定に基づく放置駐車違反を「本件違反」という。),本件車両の自動車登録 ファイルに使用者として登録されていた原告に対し,同年10月28日付けで,本件違反に関する弁明通知書を発出した。(甲2,11,弁論の全趣旨)(4) 本件訴えの提起に至る経緯等ア愛知県公安委員会は,平成23年11月14日,原告から委任を受けた本件訴訟代理人である細川治弁護士(以下「原告訴訟代理人」という。)作成に係る同月11日付けの弁明書を受理した。(甲11)イ愛知県公安委員会は,平成24年1月19日付けで,原告に対し,本件違反を理由として放置違反金1万5000円(以下「本件放置違反金」という。)の納付を命じる本件納付命令をした。(甲1)ウ原告は,平成24年2月20日付けで,愛知県公安委員会に対し,本件納付命令について異議申立てをした。(乙3)エ愛知県公安委員会は,平成24年4月27日付けで,前記ウの異議申立てを棄却する旨の決定(以下「本件決定」という。)をした。本件決定に係る決定書は,同年5月2日,原告訴訟代理人に送達された。(甲2,弁論の全趣旨)オ原告は,平成24年11月1日,本件訴えを提起した。(顕著な事実) 4 争点及び当事者の主張本件の主な争点は,本件納付命令の適法性であり,具体的には,原告が道路交通法51条の4第4項に基づいて放置違反金の納付義務を負う「使用者」に当たるか否かである。 (原告の主張)(1) 道路交通法51条の4第4項に基づく放置違 性であり,具体的には,原告が道路交通法51条の4第4項に基づいて放置違反金の納付義務を負う「使用者」に当たるか否かである。 (原告の主張)(1) 道路交通法51条の4第4項に基づく放置違反金納付命令は,公安委員会が放置車両と認めた車両の使用者に対してされるものであるところ,この「使用者」とは,「車両を使用する権原を有し,その運行を支配し,管理する者」をいうものと解される。そして,後記(2)及び(3)に照らすと,原告は,本件違反がされた平成23年8月24日当時(以下「本件違反当時」という。),本件車両の使用権原を有しておらず,本件車両の運行を支配管理する者でもなかったから,本件放置違反 金の納付義務を負わない。 (2) 原告は,平成17年1月当時,父親であるD(以下「父D」という。)が代表者を務める有限会社E(以下「E」という。)の常務取締役としてEの債務を保証していた。Eが,同月,2度目の手形の不渡りを出して倒産したため,原告は,同年2月6日,Eの取引先の事務所で事務の引継ぎを行っていたところ,Eの債権者であるCから脅迫を受け,借金の肩代わりと称して,その意思に反して本件車両を持ち去られた。その結果,原告は,本件車両の所在を把握することができなくなり,本件車両の運行の支配管理権限を喪失した。 (3) 原告は,平成17年3月11日付けで,破産手続開始の申立てをし,それに先立って,本件車両の割賦金支払債務の弁済を停止した。その結果,原告は,本件車両の使用権原を失った。 (被告の主張)(1) 後記(2)及び(3)によれば,原告は,本件車両の「使用者」(道路交通法51条の4第4項)に該当するというべきである。 (2) 原告は,Cに対し,債務の担保として本件車両を任意に交付したのであって,債務を弁済することによ ば,原告は,本件車両の「使用者」(道路交通法51条の4第4項)に該当するというべきである。 (2) 原告は,Cに対し,債務の担保として本件車両を任意に交付したのであって,債務を弁済することによって本件車両を取り戻すことができる地位にあったのであるから,本件違反当時,本件車両の運行を支配し,管理する者であったというべきである。 (3) 放置車両の使用者に対する放置違反金の納付義務の制度は,放置車両の使用者には放置駐車違反をした者に運行を委ねた選任上の責任があることから,直接の行為者である運転者に対する制裁とは別個に,使用者に対して放置違反金の納付義務を課すことによって,違法駐車の抑止を図ることを目的とするものである。したがって,仮に,本件違反当時,原告がCと連絡を取ることのできない状態にあったとしても,このような状況が作出されるに至った原因は,原告が自らの意思に基づきCに対して本件車両を債務の担保として預け,その後,放置していたことにあるから,原告には,本件車両の運行を委ねたことについての選任上の責任がある。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 (1) 本件車両の購入等ア原告は,平成15年8月19日,Aとの間で,所有権留保特約付き割賦販売契約を締結して本件車両を購入し,併せて,Bとの間で,上記契約に基づく割賦金支払債務に関する支払保証委託契約を締結した。(甲3,7)イ本件車両は,「所有者」をA,「使用者」を原告として自動車登録ファイルに登録された。原告は,平成15年8月19日頃,Aから,本件車両の引渡しを受け,その後,本件車両を自ら使用した。(甲4,弁論の全趣旨)(2) 原告からCに対する本件車両の引渡しの経緯等 イルに登録された。原告は,平成15年8月19日頃,Aから,本件車両の引渡しを受け,その後,本件車両を自ら使用した。(甲4,弁論の全趣旨)(2) 原告からCに対する本件車両の引渡しの経緯等ア原告の父Dが経営するEは,平成17年1月,2回目の手形の不渡りを出して倒産した。Eの常務取締役の職にあり,同社の債務を保証していた原告は,Eと共に破産手続開始の申立てをすることになり,同年2月1日付けで,原告の債権者に対し,同申立ての手続を受任したF弁護士作成に係る受任通知書が送付された。 (甲3,7,11,原告本人)イ原告は,平成17年2月6日,Eの倒産に伴い,Eの債権者であるGに業務の一部を引き継ぐことになったため,E所有のトラックに乗って,奈良県内にあるGの事務所(以下「G事務所」という。)に赴いた。G事務所には,Gの社長(以下「G社長」という。)のほかにCがいたが,原告は,それまで,Cと挨拶を1回程度交わしたことがあったのみで,Cの素性を知らなかった。(甲17,原告本人)ウ Cは,業務の引き継ぎをしていた原告に対し,Eから委託を受けて行った運送業務の代金が未払となっていると述べ,その支払の代わりに,原告が使用していた本件車両を引き渡すよう求めた。原告は,本件車両のローンの支払が未了であることを理由にこれを拒否したが,Cは,「それでも良い」などと言い,原告に対し, 本件車両の引渡しを執拗に迫った。居合わせたG社長は,Cを制止するようなことはなく,Eの営業部長であるHに電話をかけ,原告にHと話をさせた。その際,Hは,原告に対し,「CとG社長が何度も自宅に押し掛け,自動車の引渡しを要求するため,困っている。」と述べ,自分も困っているので本件車両を渡して欲しい旨懇願した。(甲17,原告本人)エ前記ウのようなやり取り ,「CとG社長が何度も自宅に押し掛け,自動車の引渡しを要求するため,困っている。」と述べ,自分も困っているので本件車両を渡して欲しい旨懇願した。(甲17,原告本人)エ前記ウのようなやり取りの結果,原告は,本件車両をCに渡すことを決め,Cの求めに応じて念書の趣旨で2005年2月6日付けメモ(以下「本件メモ」という。)を作成した。原告は,Cから指示されるまま,本件メモに「私,IはC様に300万(以下不明)借金の代わりに,私,Iは,グランドハイ(以下不明)を預けます。もし,300万円の返済できな(以下不明)グランドハイエースをどのように処理されても構いません。」旨を記載した上,署名・指印をしたが,Eが実際にどの程度の債務をCに負っているかなど,詳しい事情は知らなかった。 一方,原告は,今後も同様の要求が繰り返されては困ると考え,Cに対し,本件車両の交付と引き換えに,今後一切,原告やその家族,Hに危害を与えないことを保証する旨の念書を作成するよう求めた。これを受けて,Cは,「私,Cは,I,その家族,Hに対し,今後一切,危害を加えないことをここに保証いたします。」旨記載したメモ(以下「Cメモ」という。)を作成した上,署名・指印した。その際,Cは,誤って2005年2月7日という日付けを記入したが,Cも原告もこれに気付かなかったため,上記誤記が訂正されることはなかった。(甲8の5,8の6,甲17,原告本人)オその後,原告は,G事務所から京都市内の自宅マンションまで本件車両を取りに戻り,平成17年2月6日午後6時頃,Cから指示された奈良県 ○ 郡αの引継作業現場近くにおいて,本件車両をCに引き渡した。(甲17,原告本人,弁論の全趣旨)カ原告は,本件車両をCに引き渡した後,本件車両の占有を回復したことはなく,本件車両の使用者や 郡αの引継作業現場近くにおいて,本件車両をCに引き渡した。(甲17,原告本人,弁論の全趣旨)カ原告は,本件車両をCに引き渡した後,本件車両の占有を回復したことはなく,本件車両の使用者や所在すら把握していなかった。また,本件車両は,平成1 8年9月22日及び平成21年4月1日の2回にわたり,中部運輸局愛知運輸支局において継続検査を受検しているところ,原告は,現在まで京都市内に居住していて,本件訴訟に至るまで上記各受検の事実さえ知らなかった。(甲13ないし17,証人J,原告本人,弁論の全趣旨)(3) 原告に対する免責許可の決定に至る経緯等ア原告は,平成17年3月11日,F弁護士を申立代理人として,破産手続開始の申立てを京都地方裁判所にした。その際,原告は,同裁判所に対し,同日付けの「上申書」と題する書面を提出しているところ,同書面には,①本件車両は,Eの債権者であるCに脅かされて強制的に引き上げられ現在手元にないこと,②自動車保険の証書も本件車両と共に持ち去られたことなどが記載されていた。(甲5,8の3)イ京都地方裁判所は,平成17年3月30日付けで,原告につき破産手続を開始し,同手続を廃止する旨の決定をし,併せて,免責についての意見申述期間を同年5月31日までと定めた。(甲5,6)ウ Bは,平成17年5月10日,京都地方裁判所に対し,原告の免責を許可しない旨の裁判を求める免責異議申立てをした。同申立てに係る免責異議申立書には,①Bが原告に対して本件車両の返還を求めたこと,②これに対し,原告が,本件車両は親の会社の運賃未払の為に持ち去られた旨回答したことなどが記載されていた。(甲7)エ原告がBの異議申立てを受けて京都地方裁判所に提出した反論書には,①原告は,Cに脅かされ,Cの住所付近である 親の会社の運賃未払の為に持ち去られた旨回答したことなどが記載されていた。(甲7)エ原告がBの異議申立てを受けて京都地方裁判所に提出した反論書には,①原告は,Cに脅かされ,Cの住所付近である奈良県 〇 郡αにおいて,本件車両を引き渡したこと,②原告は,本件車両がCに持ち去られたことを平成17年2月28日に送付した書面でBに報告済みであることなどが記載されていた。また,反論書には,原告その他の関係者とF弁護士との間で,同月7日から平成17年5月11日までの間にされたやり取り等が記載された一覧表(「Iさん乗用車についての電話連絡」)が添付されていたところ,同一覧表には,(ⅰ)同年2月7日に,原告の 叔父であるKからF弁護士に電話連絡があり,前日に,Eの債権者が来て,原告の車両を強引に持っていってしまった旨の相談があったことや,(ⅱ)同年5月11日に,CからF弁護士に電話連絡があり,①本件車両は持ち去ったが,原告から一筆書いてもらっていること,②本件車両は,借金の肩代わりにLが持っていったので,F弁護士の方でLと話をしてほしいと述べたことなどが記載されていた。(甲8の1,2及び4,原告本人)オ Bは,平成17年6月16日,免責異議申立てを取り下げた。(甲9)カ京都地方裁判所は,平成17年6月20日,原告には破産法252条1項各号に掲げる免責不許可事由に該当する事実は認められないとして,原告について免責を許可する旨の決定をした。(甲10)(4) 本件納付命令に至る経緯等ア愛知県天白警察署長から業務委託を受けた本件監視員らは,平成23年8月24日午前10時12分頃,本件道路において,本件車両が本件道路の左側端から3.5mの位置に駐車している事実を現認した。本件監視員らが本件車両を見分したところ,本件車両の内部 員らは,平成23年8月24日午前10時12分頃,本件道路において,本件車両が本件道路の左側端から3.5mの位置に駐車している事実を現認した。本件監視員らが本件車両を見分したところ,本件車両の内部及びその付近一帯には運転者等の人の姿がなく,平成23年8月24日午前10時12分から同日午前10時19分までの7分間,運転者が本件車両に戻ることもなかった。そこで,本件監視員らは,本件車両が道路交通法47条2項所定の駐車違反車両に該当するものと認め,本件車両に放置車両確認標章を貼付した。(甲2,乙1)イ愛知県公安委員会は,愛知県警察天白警察署長の報告に基づき,本件車両が道路交通法51条の4第4項本文所定の放置車両に当たる旨認定し,本件車両の自動車登録ファイルに使用者として登録されていた原告に対し,平成23年10月28日付けで,本件違反に関する弁明通知書を発出した。(甲2,4,11,弁論の全趣旨)ウ原告は,平成23年11月11日付けで,愛知県公安委員会に対し,本件違反についての弁明書を提出した。同弁明書には,Cが平成17年2月6日に借金の 肩代わりと称して本件車両を強引に持ち去り,本件車両の行方は,その時点から全く不明であることなどが記載されていた。(甲11)エ放置違反金納付命令の事務を所掌する愛知県警察本部交通部駐車対策課放置駐車対策センターのJ警部補は,平成23年12月6日,原告に電話を架け,事情を聴取した。その際,原告は,J警部補に対し,本件車両を使用している者は分からず,本件車両を引き渡したCの所在も分からない旨を述べた。これに対し,J警部補は,原告に対し,譲渡の相手方と譲渡証明書を取り交わすか,現在の使用者から,本件車両を支配管理している旨書面をもらい受けるなどし,これら書類を提出しなければ,原告に対する放 た。これに対し,J警部補は,原告に対し,譲渡の相手方と譲渡証明書を取り交わすか,現在の使用者から,本件車両を支配管理している旨書面をもらい受けるなどし,これら書類を提出しなければ,原告に対する放置違反金納付命令の手続は継続することになる旨説明し,同月末までに提出するよう求めた。原告は,本件車両を引き渡した後,Cに連絡を取ったことはなく,Cの連絡先も知らず,本件車両の使用者についても皆目見当が付かなかったことから,指示された書類を提出することはなかった。(乙2,証人J,弁論の全趣旨)オ愛知県公安委員会は,平成24年1月19日付けで,原告に対し,本件納付命令をした。これに対し,原告は,同年2月20日付けで,愛知県公安委員会に対し,本件納付命令について異議申立てをした。同申立てに係る「異議申立書」には,①Cが,平成17年2月6日,借金の肩代わりと称して,本件車両を強引に持ち去ってしまったこと,②それ以降,原告は,本件車両の所在を把握できず,Cと連絡さえ取れない状況に陥ったことなどが記載されていた。(乙3)カ愛知県公安委員会は,平成24年4月27日付けで,原告がした前記オの異議申立てを棄却する旨の本件決定をした。(甲2,弁論の全趣旨) 2 検討(1) 道路交通法51条の4第4項が規定する放置車両の使用者に対する放置違反金納付命令の制度は,取締り現場で運転者を特定することができないという放置駐車違反の性質上,放置駐車違反に係る違反行為者である運転者の責任追及を十分に行うことができない状況にあることにかんがみ,車両の使用による社会的便益を享 受し,車両の包括的な運行支配を有する立場にある使用者に対して放置違反金を課すことによってその責任追及を強化し,もって違法駐車を抑止することを目的として導入されたものである。こ 的便益を享 受し,車両の包括的な運行支配を有する立場にある使用者に対して放置違反金を課すことによってその責任追及を強化し,もって違法駐車を抑止することを目的として導入されたものである。このような放置車両の使用者に対する放置違反金納付命令制度の趣旨,目的等に照らすと,同項所定の「使用者」とは,放置車両の権原を有し,車両の運行を支配し,管理する者であり,同車両の運行についての最終的な決定権を有する者をいうものと解される。 そこで,以下においては,このような観点から,本件違反当時,原告が本件車両の運行についての最終的な決定権を有していたかどうかを検討する。 (2) 前記1で認定した各事実によると,①原告は,平成17年2月に本件車両を引き渡した当時,Cとは挨拶を1回程度交わしたことがある程度の関係にすぎず,Cの素性や連絡先さえ知らなかったこと,②Cは,本件車両の引渡しを受ける見返りとして,原告に対し,原告やその家族,Eの営業部長であるHに今後一切の危害を加えないことを保証する旨を記載したCメモを差し入れていること,③原告は,本件車両を引き渡した後,Cと連絡を取ったことはなく,本件車両の使用者やその所在すら把握していなかったこと,④本件違反は,本件車両の引渡しから約6年6か月も経過した平成23年8月24日に発生したものである上,本件違反があった場所は,原告の居住地である京都市内から遠く離れた名古屋市内であったこと,⑤本件車両は,平成18年と平成21年の2回にわたって継続検査を受けているところ,その受検地は,原告の住む京都市を管轄する近畿運輸局京都運輸支局ではなく,中部運輸局愛知運輸支局であったこと等を指摘することができる。 これら諸点,殊に,本件違反は,原告がCに本件車両を引き渡した時から約6年6か月も経過した後の平成23年8 輸局京都運輸支局ではなく,中部運輸局愛知運輸支局であったこと等を指摘することができる。 これら諸点,殊に,本件違反は,原告がCに本件車両を引き渡した時から約6年6か月も経過した後の平成23年8月24日に行われたものであり,その間,原告は,本件車両を引き渡したCと連絡を取ったことがなく,本件車両の使用者やその所在さえ知らなかったことに照らすと,原告は,本件違反当時,本件車両の運行についての最終的な決定権を有していなかったとみるのが相当であるる。 (3) これに対し,被告は,(ⅰ)原告は,債務の担保として本件車両を任意に交付 したのであって,本件違反当時,債務を弁済して本件車両を取り戻すことができる地位にあった,(ⅱ)仮に,本件違反当時,原告がCと連絡を取ることができない状態にあったとしても,その原因は,原告が債務の担保として本件車両を任意に交付した後,債務の履行をしないまま放置していたことにあるから,原告には,本件車両の運行を委ねたことに対する選任上の責任があるなどして,本件違反当時,原告は,道路交通法51条の4第4項が規定する放置車両の使用者に当たる旨主張する。 確かに,原告がCに差し入れた本件メモには,300万円の借金の代わりに本件車両を預ける旨の記載があることや,Cが原告の求めに応じてCメモを原告に差し入れていること,原告はいったん京都市内の自宅まで本件車両を取りに戻った後,Cから指示された奈良県内で本件車両を引き渡していること等,本件に顕れた諸般の事情に照らすと,原告が,Cに脅迫されて,完全に意思の自由を失った状態で本件車両を喝取されたものであるとまでいうことはできない。 しかしながら,仮に,被告が主張するように,債務の担保として本件車両が交付されたのであるならば,担保提供者である原告と債権者であるCとの間で, 車両を喝取されたものであるとまでいうことはできない。 しかしながら,仮に,被告が主張するように,債務の担保として本件車両が交付されたのであるならば,担保提供者である原告と債権者であるCとの間で,債務の弁済方法や弁済期限,弁済がされない場合の本件車両の清算方法などについて,何らかの合意や話合いがあって然るべきところ,本件全証拠を精査してみても,原告とCとの間に,これらの点について何らかの合意や話合いがあったことをうかがわせる資料は見当たらない。むしろ,前記1で認定した事実によると,①原告が本件車両を引き渡した当時,Eは,2度の不渡手形を出して倒産状態に陥っており,その保証人であった原告ともども,破産手続開始の申立ての準備中である旨を債権者に通知したばかりであったこと,②Cは,ローンの支払中であることを理由に本件車両の引渡しを渋る原告に対し,本件車両の引渡しを執拗に求め,本件車両の引渡しと引換えに,原告らに今後一切の危害を与えないことを保証する旨記載したCメモを差し入れたこと,③他方,本件車両を引き渡す際,原告がCに差し入れた本件メモには,原告が返済できない場合には,本件車両をどのように処理されても構わない旨の記載があること,④原告は,本件車両の引渡後間もなく,上記保証債務は もとよりその他の債権者に負っている債務の弁済ができないとして破産手続開始の申立てをし,破産手続開始決定を受けたこと,⑤上記破産手続や本件違反に係る弁明等の中において,原告は,一貫して本件車両は債務の担保として交付したのではなく,持ち去られたものである旨説明してきたこと,⑥現に,原告自身,Cに本件車両を引き渡した後,本件違反が問題になるまで,Cと接触して本件車両の占有の回復を図ろうとしたことはなかったこと等を指摘することができるのであって,これら諸点に照ら こと,⑥現に,原告自身,Cに本件車両を引き渡した後,本件違反が問題になるまで,Cと接触して本件車両の占有の回復を図ろうとしたことはなかったこと等を指摘することができるのであって,これら諸点に照らすと,Cは,Eからの債権回収が困難であると考え,原告から本件車両の引渡しを受けて,債権の回収を図ろうとしたものであり,他方,原告の側においても,EがCに対して負っている一切の債務の支払いに代えて,本件車両を引き渡したものと認めるのが相当である。 そうすると,原告とCとの間には,本件車両の引渡しに先立ち,EがCに対して負っている一切の債務の代物弁済として,本件車両を引き渡す旨の合意が成立していたと認められるから,原告がCに対して本件車両を引き渡した時点で,本件車両の運行についての最終的な決定権は,原告からCに確定的に移転したというべきである。したがって,本件車両が債務の担保として交付されたことを前提とする被告の上記主張は,採用することができない。 (4) 以上のとおり,原告は,本件違反当時,本件車両の「使用者」であったとはいえないから,本件納付命令は,違法なものとして取消しを免れない。 第4 結論以上の次第で,原告の本件請求には理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部 裁判長裁判官福井章代 裁判官富澤賢一郎 裁判官平野佑子 (別紙)関係法令の定め 1 道路交通法(1) 47条2項車両は,駐車するときは,道路の左側端に沿い,かつ,他の交通の妨害とならないようにしなければならない。 (2) 51条 紙)関係法令の定め 1 道路交通法(1) 47条2項車両は,駐車するときは,道路の左側端に沿い,かつ,他の交通の妨害とならないようにしなければならない。 (2) 51条の4第4項前項の規定による報告を受けた公安委員会は,当該報告に係る車両を放置車両と認めるときは,当該車両の使用者に対し,放置違反金の納付を命ずることができる。ただし,第1項の規定により当該車両に標章が取り付けられた日の翌日から起算して30日以内に,当該車両に係る違法駐車行為をした者が当該違法駐車行為について第128条第1項の規定による反則金の納付をした場合又は当該違法駐車行為に係る事件について公訴を提起され,若しくは家庭裁判所の審判に付された場合は,この限りでない。 2 道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)(1) 17条の3道路交通法51条の4第8項の政令で定める放置違反金の額は,別表第一に定めるとおりとする。 (2) 別表第一(17条の3関係)4号道路交通法45条1項若しくは2項,47条2項若しくは3項,48条,49条の3第3項又は49条の4の規定に違反して駐車しているもの(同法45条1項の規定に違反して駐車しているものについては三の項に規定するものを除き,法49条の3第3項の規定に違反して駐車しているものについては二の項に規定するものを除き,法49条の4の規定に違反して 駐車しているものについては一の項から三の項までに規定するものを除く。)放置車両の種類普通車放置違反金の額 1万5000円以上 放置違反金の額 1万5000円以上
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