- 1 -令和2年6月5日判決言渡平成30年(行ウ)第415号障害年金不支給決定取消請求事件主文 1 処分行政庁が平成28年12月6日付けで原告に対してした障害基礎年金及び障害厚生年金を支給しない旨の決定を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文第1項と同旨第2 事案の概要 本件は,原告が,平成28年4月19日,処分行政庁に対し,線維筋痛症により障害の状態にあるとして,障害基礎年金及び障害厚生年金(以下,総称して「障害給付」という。)の支給を求める裁定請求をした(以下「本件裁定請求」といい,同日を「本件裁定請求日」という。)ところ,処分行政庁から,同年12月6日付けで障害給付を支給しない旨の決定(以下「本件処分」とい う。)を受けたことから,線維筋痛症による原告の障害の状態は,厚生年金保険法(以下「厚年法」という。)47条1項にいう障害認定日及び本件裁定請求日において,同条2項に規定する障害等級3級に該当するものであったなどと主張して,本件処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め 本件に関係する法令等の定めは,別紙「関係法令等の定め」(以下「別紙関係法令等」という。)記載のとおりである(別紙関係法令等において定義した略語等は,以下においても用いることとする。)。 2 前提事実(いずれも当事者の間に争いがないか,当事者が争うことを明らか - 2 -にしないか又は当裁判所に顕著な事実である。)(1) 原告原告は,昭和54年▲月▲日生まれの女性であり,以下の期間において厚生年金保険の被保険者であった。 ア平成13年4月1日から平成15年5月29日まで(同月30日に被保 険者資格喪失)イ平成23年7月1日 ▲月▲日生まれの女性であり,以下の期間において厚生年金保険の被保険者であった。 ア平成13年4月1日から平成15年5月29日まで(同月30日に被保 険者資格喪失)イ平成23年7月1日から平成26年1月31日まで(同年2月1日に被保険者資格喪失)(2) 本件処分に至る経緯原告は,平成28年4月19日,処分行政庁に対し,線維筋痛症により障 害の状態にあるとして,本件傷病の初診日を平成25年8月29日とし,障害認定日による請求(予備的に事後重症による請求)として,障害給付の裁定請求(本件裁定請求)をした。 処分行政庁は,平成28年12月6日付けで,原告に対し,原告がり患した線維筋痛症(以下「本件傷病」ということがある。)の初診日が平成26 年9月3日であり,原告が当該初診日において厚生年金保険の被保険者であった者に該当しないとして,障害給付を支給しない旨の決定(本件処分)をした。 (3) 不服申立手続(以下の不服申立手続を総称して「本件不服申立手続」という。) 原告は,平成29年2月22日,本件処分を不服として,関東信越厚生局社会保険審査官に対し,審査請求をしたが,同社会保険審査官は,同年6月23日,同審査請求を棄却する旨の決定をした。 原告は,平成29年7月27日,上記の決定を不服として,社会保険審査会に対し,再審査請求をしたが,社会保険審査会は,平成30年3月30日, 同再審査請求を棄却する旨の裁決をした。 - 3 -(4) 本件訴えの提起原告は,平成30年9月28日,本件訴えを提起した。 3 争点本件の争点は,本件処分の違法性であるが,具体的には,以下の2点が争われている(なお,前提事実(2)のとおり,本件処分は,本件傷病の初診日が平成 26年9月3日であり,原告 した。 3 争点本件の争点は,本件処分の違法性であるが,具体的には,以下の2点が争われている(なお,前提事実(2)のとおり,本件処分は,本件傷病の初診日が平成 26年9月3日であり,原告が当該初診日において厚生年金保険の被保険者であった者に該当しないとして,障害給付を支給しない旨決定しているが,本件訴訟においては,本件傷病の初診日が,原告が厚生年金保険の被保険者であった平成25年8月24日であることは,当事者の間に争いがない。)。 (1) 被告が,本件処分及び本件不服申立手続において判断が示されていない 原告の障害の状態に関する事由をもって,本件処分が適法である旨主張することができるか否か(争点①)(2) 平成27年2月24日(本件傷病の初診日とされる平成25年8月24日から起算して1年6月を経過した日。以下「本件障害認定日」という。)又は本件裁定請求日における原告の障害の状態が,障害等級3級に該当する 程度のものであったか否か(争点②) 4 争点に関する当事者の主張の要旨(1) 争点①(被告が,本件処分及び本件不服申立手続において判断が示されていない原告の障害の状態に関する事由をもって,本件処分が適法である旨主張することができるか否か)について (原告の主張)本件処分は,原告が本件傷病の初診日において厚生年金保険の被保険者であった者に該当しないことのみを理由とし,本件不服申立手続でも,専らこの点のみが判断されており,これらにおいて,本件障害認定日又は本件裁定請求日における原告の障害の状態が障害等級3級に該当する程度のものであ ったか否かに関する判断が示されたことはない。 - 4 -このように全く審査対象とされてこなかった要件について司法機関に対して第一次的判断を求めることは,裁 級に該当する程度のものであ ったか否かに関する判断が示されたことはない。 - 4 -このように全く審査対象とされてこなかった要件について司法機関に対して第一次的判断を求めることは,裁定請求及び不服申立手続を前置し,第一次的判断権を厚生労働大臣等に委ね,司法機関は処分の適否について事後審査を行うものとした国年法及び厚年法の建前に反する上,被保険者の裁定請求及び不服申立てに関する手続的利益を奪うものであるから,許されない。 したがって,被告が,原告の障害の状態に関する事由をもって,本件処分が適法である旨主張することは許されないから,争点②(後記(2))の点について判断されるまでもなく,本件処分は取り消されるべきである。 (被告の主張)争う。 (2) 争点②(本件障害認定日又は本件裁定請求日における原告の障害の状態が,障害等級3級に該当する程度のものであったか否か)について(原告の主張)ア本件障害認定日における原告の障害の状態について障害認定基準のうち,本件傷病に適用すべき第3第1章第18節(別紙 関係法令等第3・3。その他の疾患による障害)における認定基準において,障害等級3級は,労働に関する制約の程度に着目し,「労働が制限を受けるか,又は労働に制限を加えることを必要とする程度」のものとされているところ,以下のとおり,本件障害認定日における原告の障害の状態は,障害等級3級に該当する程度のものであった。 (ア) 本件障害認定日当時,原告は,線維筋痛症の臨床的重症度分類(厚生労働省線維筋痛症研究班により,公的社会保障制度運用のための行政的重症度基準として作成された試案によるもの。以下「重症度分類」という。)においてステージⅡ(「広範囲な筋緊張が続き腱付着部炎を併発する一方,不眠,不 研究班により,公的社会保障制度運用のための行政的重症度基準として作成された試案によるもの。以下「重症度分類」という。)においてステージⅡ(「広範囲な筋緊張が続き腱付着部炎を併発する一方,不眠,不安感,うつ状態が続く。通常の日常生活がやや困 難」とされるもの)と診断されている。「日常生活が困難」である状態 - 5 -は,当然に,労働に制限をもたらす状態である。 (イ) 平成28年3月28日付けA医師作成の診断書(原告の平成27年3月11日現症の障害の状態に係るもの。乙1・6~7頁。以下「平成27年3月現症診断書」といい,同日を「平成27年3月現症時」という。)の「日常生活における動作の障害の程度」欄を見ると,原告は, 10mほどの距離を「多少転倒しそうになったりよろめいたりするがどうにか歩き通す」状態とされ,階段の上り下りは,手すりがあっても「非常に不自由」,座席からの立ち上がりも,支持してもらっても「非常に不自由」な状態とされている。 上記のような状態の者が,一般の職場に出勤して労務を支障なく提供 できるとはいえない。平成27年3月現症診断書では,原告は,「座位では正常人と変わりなく作業できる(1日6時間週4日程度)」とされているものの,座位のみの労務は一般的ではなく,立位,歩行等を要しない労務を見出すことは容易ではないし,1日6時間週4日程度の労働しかできない者が,正規労働者として勤務できる分野は皆無といえる。 また,上記のような状態は,障害認定基準第3第1章第18節2⑺の一般状態区分表のイ(「軽度の症状があり,肉体労働は制限を受けるが,歩行,軽労働や座業はできるもの例えば,軽い家事,事務など」)に該当し,かつ,歩行が困難である点でこれよりもやや重い状態とみることができ,「障害等級3級におおむね あり,肉体労働は制限を受けるが,歩行,軽労働や座業はできるもの例えば,軽い家事,事務など」)に該当し,かつ,歩行が困難である点でこれよりもやや重い状態とみることができ,「障害等級3級におおむね相当する」とされている。 (ウ) 原告は,平成25年12月上旬頃から休職を開始した後,退職を余儀なくされ,本件障害認定日においても就職できていなかった。これらの期間については,原告の平成25年12月分ないし平成27年3月分の各傷病手当金支給申請書(以下,総称して「本件各傷病手当金支給申請書」という。)中の診療担当医師の意見書欄(甲20の1~16)に おいて,いずれもB病院の医師であるC医師又はD医師が,原告を就労 - 6 -不能と認めた所見等を記載している。 イ本件裁定請求日における原告の障害の状態について本件裁定請求日における原告の障害の状態について,本件障害認定日から変化したのは,①支持を受けての立ち上がりと手すりを使った階段の上りについて,「非常に不自由」であった状態が「やや不自由」な状態にな ったこと,及び②両膝痛があった状態が,下肢痛が軽減した状態になったこと(ただし,筋力低下があった。)にとどまり,重症度分類がステージⅡであったとする医学的評価は変更されていない(平成28年3月28日付けA医師作成の診断書(原告の同日現症の障害の状態に係るもの。甲4,乙1・8~9頁。以下「平成28年3月現症診断書」といい,同日を「平 成28年3月現症時」という。)参照)。 したがって,本件障害認定日と同様,本件裁定請求日においても,原告の障害の状態は,障害等級3級に該当する程度のものであった。 (被告の主張)ア線維筋痛症に係る障害等級の認定の方法について 線維筋痛症に係る障害等級の認定については, においても,原告の障害の状態は,障害等級3級に該当する程度のものであった。 (被告の主張)ア線維筋痛症に係る障害等級の認定の方法について 線維筋痛症に係る障害等級の認定については,主要症状である疼痛によって身体にどの程度の不自由があるのかを障害認定基準第3第1章第7節第4(別紙関係法令等第3・2(2)。肢体の機能の障害)の2(認定要領)を用いて確認し,その上で,疼痛による身体機能の不自由さの程度及び重症度分類のステージ評価を参考に,障害による日常生活の支障を総合的に 判断し,認定することになる(障害認定基準第3第1章第18節2(5))。 イ本件障害認定日における原告の障害の状態について(ア)a 原告の本件傷病による疼痛の症状は,その存在が確認された平成25年9月4日以降,A医師により線維筋痛症の診断がされた平成26年9月頃までの間,同様の症状を示していたと考えられ,圧迫時や 動作時に痛みを感じることがある程度の,軽度なものであり,体の動 - 7 -きに支障を生ずる程度のものではなかったと考えられる。そして,線維筋痛症の多くが発症日から同様の症状を示すことに照らせば,本件障害認定日においても,発症の頃と同様に,疼痛の程度は軽度であったとみることができる。 b 原告は,B病院神経精神科を受診していた平成25年12月から平 成27年4月までの間,「疲労感」や「足が動かない」等の症状は常時訴えていたものの,「痛み」について自ら訴えることはほとんどなかったから,原告は,本件障害認定日において,疼痛による身体の不自由さを強く実感することはなかったといえる。 c ①重症筋無力症等の神経筋疾患が否定されていること,②平成25 年9月に行われたE病院やF病院での徒手筋力検査では,下肢の筋力評価が「3 不自由さを強く実感することはなかったといえる。 c ①重症筋無力症等の神経筋疾患が否定されていること,②平成25 年9月に行われたE病院やF病院での徒手筋力検査では,下肢の筋力評価が「3~5」(自力で動かせる程度の筋力が保たれている程度)とされ,「状況により筋力も変化がある」等と評価されていること,③原告は,「つま先立ち」や「しゃがみ立ち」が可能であったとされていること,④線維筋痛症が,症状の消長を繰り返しつつ,その多く が発症時から同様の症状を示しながら長期に経過すること等を踏まえれば,原告につき,本件障害認定日時点で筋力低下が認められたとしても,その程度は,平成25年9月頃と変わらず比較的軽いものと考えられ,痛みの程度も強くはない状態であったと推認される。このような状態であれば,両下肢に脱力感や疲れを感じることがあったとし ても,自力で下肢を動かすことができないほどの筋力低下があったとは認められず,歩行や昇降運動も十分に可能であったと考えられる。 (イ) 前記(ア)を踏まえ,平成27年3月現症診断書を見ると,平成27年3月現症時の原告の日常生活動作の程度については,歩行につき「一人でできてもやや不自由」と,立ち上がりや階段の上り下りにつき「支 持(又は手すり)があればできるが非常に不自由」と評価されているが, - 8 -上肢の動作はおおむね行うことができており,日常生活活動能力や労働能力に関しては,歩行に不安定さはあるが,座位であれば特段の支障なくできると評価されている。また,本件傷病による病勢は改善傾向であるとされている。 そして,原告の疼痛の程度は,激しい触痛や自発痛が持続して,自力 で体を動かすことができないような状態にはなく,せいぜい歩行時に両膝痛を訴える程度にとどまっていたこと, であるとされている。 そして,原告の疼痛の程度は,激しい触痛や自発痛が持続して,自力 で体を動かすことができないような状態にはなく,せいぜい歩行時に両膝痛を訴える程度にとどまっていたこと,原告の両下肢には,自力で歩行ができないほどの筋力低下や神経症状があるとは認められないこと,本件傷病の重症度分類がステージⅡ(「痛みはあるが普通の生活ができる」とされる状態である。)と評価されていることなどを勘案し,本件 障害認定日における原告の本件傷病による日常生活の支障を総合的に判断すると,「労働が制限を受けるか,又は労働に制限を加えることを必要とする」程度のものには及ばず,本件障害認定日における原告の障害の状態は,障害等級3級に該当する程度のものではない。 ウ本件裁定請求日における原告の障害の状態について 平成28年3月現症診断書を見ると,平成28年3月現症時の原告の日常生活動作の程度については,歩行につき「一人でできてもやや不自由」と,立ち上がりや階段の上りにつき「支持(又は手すり)があればできるがやや不自由」と,階段の下りが「手すりがあればできるが非常に不自由」と評価されている。しかし,上肢の動作については,ほぼ不自由なく行う ことができており,日常生活活動能力や労働能力に関しては,歩行に不安定さはあるが,座位であれば特段の支障なくできると評価されている。歩行に関しては,長時間の歩行の際には杖を補助具として使用しているとされているものの,平成27年3月現症診断書の内容と比較して,「立ち上がる」や「階段を上る」などの運動機能が改善されている。疼痛に関して も,下肢痛が軽減しているとされている。これらによれば,本件裁定請求 - 9 -日における原告の日常生活活動能力等は,全体的には,本件障害認定日の時 動機能が改善されている。疼痛に関して も,下肢痛が軽減しているとされている。これらによれば,本件裁定請求 - 9 -日における原告の日常生活活動能力等は,全体的には,本件障害認定日の時点よりも軽快傾向にあると考えられ,他に疼痛による身体又は精神の障害が生じているとの所見も見受けられない。 以上を踏まえ,平成28年3月現症時の本件傷病の重症度分類が平成27年3月現症時と変わらずステージⅡと評価されていることも勘案し,本 件裁定請求日における原告の本件傷病による日常生活の支障を総合的に判断すると,「労働が制限を受けるか,又は労働に制限を加えることを必要とする」程度のものには及ばず,本件裁定請求日における原告の障害の状態は,障害等級3級に該当する程度のものではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点①(被告が,本件処分及び本件不服申立手続において判断が示されていない原告の障害の状態に関する事由をもって,本件処分が適法である旨主張することができるか否か)について(1) 前提事実(1),証拠(甲3ないし7,9,13,18ないし21(枝番を含む),乙1,5ないし7,10ないし16)及び弁論の全趣旨によれば, 原告は,平成25年8月24日までに本件傷病にり患し,厚生年金保険の被保険者であった同日,本件傷病について初めて医師の診療を受けたと認められる(この点については,当事者の間に争いがない。)。 (2) 被告は,前記(1)の初診日から起算して1年6月を経過した日である本件障害認定日及び本件裁定請求日において,原告の障害の状態は,厚年法47 条2項に規定する障害等級に該当しないものである旨主張して,本件処分が適法である旨主張している(争点②参照)ところ,原告は,本件障害認定日又は本件裁定請求日における原告の障 態は,厚年法47 条2項に規定する障害等級に該当しないものである旨主張して,本件処分が適法である旨主張している(争点②参照)ところ,原告は,本件障害認定日又は本件裁定請求日における原告の障害の状態は,本件処分及び本件不服申立手続において判断が示されていない以上,被告が本件訴訟において当該主張をすることは許されない旨主張する。 (3)ア取消訴訟の訴訟物は,処分の違法一般であると解されるところ,一般に, - 10 -取消訴訟においては,別異に解すべき特別の理由のない限り,被告は当該処分の効力を維持するための一切の法律上及び事実上の根拠を主張することが許されるものと解すべきである(最高裁昭和51年(行ツ)第113号同53年9月19日第三小法廷判決・裁判集民事125号69頁)。 また,本件処分においては理由が示されているが,申請拒否処分におい て理由を示すべきものとされている(行政手続法8条)のは,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解され,その趣旨は,処分の理由を具体的に示して処分の名宛人に通知すること自体をもって,ひとまず実現され,この趣旨を超えて,一たび通知書におい て理由を示した以上,行政庁が当該理由以外の理由を取消訴訟において主張することを許さないものとする趣旨を含むとは解されない(最高裁平成8年(行ツ)第236号同11年11月19日第二小法廷判決・民集53巻8号1862頁参照)。 よって,被告が,本件障害認定日及び本件裁定請求日における原告の障 害の状態が障害等級3級に該当しない旨主張して,本件処分が適法である旨主張することは許されるというべきである。 イこれに対し,原告は,処分や不服申立 定日及び本件裁定請求日における原告の障 害の状態が障害等級3級に該当しない旨主張して,本件処分が適法である旨主張することは許されるというべきである。 イこれに対し,原告は,処分や不服申立手続において審査対象とされてこなかった要件について司法機関に対して第一次的判断を求めることは,裁定請求及び不服申立手続を前置し,第一次的判断権を厚生労働大臣等に委 ね,司法機関は処分の適否について事後審査を行うものとした国年法及び厚年法の建前に反する上,被保険者の裁定請求及び不服申立てに関する手続的利益を奪うものであるから,許されない旨主張する。 しかし,行政手続法,国年法及び厚年法をみても,前記アに説示した行政手続法の理由提示制度の趣旨を超えて,通知書において提示された理由 以外の理由を取消訴訟において主張することを許さないとする趣旨を含む - 11 -ものとは解されないから,原告の上記主張を採用することはできない。 なお,原告は,上記主張の中で,最高裁平成2年(行ツ)第45号同5年2月16日第三小法廷判決・民集47巻2号473頁の判示を挙げているが,同判決の事案は,労働者が,労働者災害補償保険法に基づく業務災害に関する保険給付を請求したところ,行政庁から,同請求に係る疾病が, 同法施行前に従事した業務に起因したものであり,業務起因性の有無について判断する前提を欠くとして,保険給付不支給処分を受けたため,同処分の取消しを求めたというものであり,同判決は,同処分の実体的要件の存否に関する行政庁の第一次的判断権の行使がおよそされていないことを前提として,原判決が業務起因性の有無に関する行政庁の主張についての 認定及び判断を留保した上で同処分を取り消したことに違法はないとしたものである。そうすると,本件のように,実体 いないことを前提として,原判決が業務起因性の有無に関する行政庁の主張についての 認定及び判断を留保した上で同処分を取り消したことに違法はないとしたものである。そうすると,本件のように,実体的要件(初診日に係る要件)の存否の判断を経ていて行政庁の第一次的判断権が行使されたものとは事案が異なるし,本件訴えにおける訴訟物は,飽くまで本件処分の違法一般であって,実体要件の一つである被保険者の障害の状態(障害等級該当性) に係る要件に関する主張を追加することが訴訟物の範囲を超えることにもならないから,同判決の判示は,前記アの判断を左右するものではない。 2 争点②(本件障害認定日又は本件裁定請求日における原告の障害の状態が,障害等級3級に該当する程度のものであったか否か)について(1) 認定事実 掲記の証拠等によれば,本件障害認定日及び本件裁定請求日における原告の障害の状態の評価に関連して,以下の事実を認めることができる。 ア線維筋痛症について(ア) 線維筋痛症は,身体の広範な部位の筋骨格系における慢性の疼痛及びこわばりを主症状とし,解剖学的に明確な部位に圧痛を認める以外に, 他覚的及び一般的臨床検査所見に異常がなく(明らかな検査異常を認め - 12 -る場合は,線維筋痛症の診断は否定的である。),治療抵抗性であり,随伴症状として疲労感,睡眠障害,抑鬱気分等の多彩な身体症状又は精神・神経症状を伴い,中年以降の女性に好発する原因不明のリウマチ性疾患である。(乙5・本文10~13,83~84,103~104頁)線維筋痛症に対する特異的原因療法又は根治療法はなく,線維筋痛症 にり患すると,長期に経過し,ADL(日常生活動作能力。以下同じ。)及びQOL(生活の質。以下同じ。)の低下が著しく,機能的予後が 線維筋痛症に対する特異的原因療法又は根治療法はなく,線維筋痛症 にり患すると,長期に経過し,ADL(日常生活動作能力。以下同じ。)及びQOL(生活の質。以下同じ。)の低下が著しく,機能的予後が問題となるとされている。本邦における線維筋痛症の患者につき,発症から1年経過時点で,①治癒した者が1.5%,何らかの症状の改善がみられた者が51.9%,病状に変化なく経過した者が37.2%,症状 が悪化した者が2.6%であった旨,②自立ができている程度のADLであった者が約半数であったが,その余の者に何らかのADLの低下が認められ,うち27.2%の者が著しくADLが低下し,34.0%の者が休職又は休学の状況にあった(その期間は平均3.2(標準偏差4. 8)年)旨の報告がある。この点,発症から1,2年経過以後の経過が 不良であるとの指摘もある。(甲9・本文21頁。乙5・本文15~16,89~90頁)また,本邦における線維筋痛症の患者のADLを,強い疲労を主症状とする慢性疲労症候群の診断に用いられるPerformancestatus(疲労・倦怠の程度を示す指標であり,「倦怠感がなく平常の生活ができ,制限 を受けることなく行動できる。」(スコア0)から「身の回りのことはできず,常に介助がいり,終日就床を必要としている。」(スコア9)までの10段階で評価するもの。以下「PSスコア」という。慢性疲労症候群と診断されるためには,「全身倦怠の為,月に数日は社会生活や労働ができず,自宅にて休息が必要である。」とされるPSスコア3以 上とされることを要するものとされている。)を用いて評価した報告に - 13 -おいて,日常生活にほとんど影響がないとされるPSスコア0~2とされた者が13.1%,通常の日常生活が不可能とされるP とされることを要するものとされている。)を用いて評価した報告に - 13 -おいて,日常生活にほとんど影響がないとされるPSスコア0~2とされた者が13.1%,通常の日常生活が不可能とされるPSスコア≧7とされた者が54.5%であり,平均のPSスコアが6.0(標準偏差2.4)であった旨の報告がある。(甲9・本文17頁。甲23。乙5・本文89~90頁) (イ) 厚生労働省線維筋痛症研究班により,公的社会保障制度運用のための行政的重症度基準として,ステージⅠないしステージⅤに分類された線維筋痛症の臨床的重症度分類の試案(重症度分類)並びに各重症度とQOL,疼痛部位及び圧痛の程度との間の対応関係が発表されており,その内容は以下のとおりである。(甲9・10~11頁。乙5・本文1 13,115頁。乙7・本文13~14頁) 重症度分類QOL疼痛部位圧痛の程度ステージⅠACR(米国リウマチ学会)分類基準の18箇所の圧縮点のうち11箇所以上で痛みがあるが,日常生活に重大な影響を及ぼさない痛みはあるが普通の生活ができる体幹部圧痛(4kg/㎠)ステージⅡ広範囲な筋緊張が続き腱付着部炎を併発する一方,不眠,不安感,鬱状態が続く。通常の日常生活がやや困難ステージⅢ痛みが持続し,爪や髪への刺激,温度・湿度変化など軽微な刺激で激しい痛みが増強する。自力での生活は痛みのため普通の生活が困体幹部から末梢部痛軽度の圧痛 - 14 -困難難ステージⅣ痛みのため自力で体を動かせず,ほとんど寝たきり状態に陥る。自分の体重による痛みで,長時間同じ姿勢で寝たり座ったりできない寝たきりであるが眠れない全身痛触痛・自発痛ステージⅤ みのため自力で体を動かせず,ほとんど寝たきり状態に陥る。自分の体重による痛みで,長時間同じ姿勢で寝たり座ったりできない寝たきりであるが眠れない全身痛触痛・自発痛ステージⅤ激しい全身の痛みとともに,膀胱や直腸の障害,口の渇き,目の乾燥,膀胱症状など全身に症状が出る。通常の日常生活は不可能 イ原告の本件傷病り患後の経過等について(ア) 原告は,平成25年8月24日までに本件傷病にり患し,同日,右手第2指から肘にかけてのしびれを訴えて,G医院において,本件傷病について医師の診察を受けた。その後,原告は,H病院で診察を受けた ほか,本件傷病に起因する四肢のしびれ感,脱力,疲労感等を訴えて,E病院,F病院及びB病院に順次通院又は入院し,検査を受けるなどしたが,本件傷病につき線維筋痛症との確定診断を受けることはなかった。 (前記1(1)に認定した事実,甲3,5,乙1,11ないし14)(イ) 原告は,前記(ア)の間の平成25年12月6日頃から,本件傷病に 起因する疲労感等を訴えて,当時の職場を休職し,平成26年1月31日付けで退職した。(甲16,20の1,弁論の全趣旨)(ウ) 原告は,平成26年9月3日,J医院において初めてA医師の診察を受け,同月29日,本件傷病(線維筋痛症)の診断を受けた。(甲4。 乙1・本文6~9頁。乙15・2~3頁) (エ) C医師又はD医師は,本件各傷病手当金支給申請書中の診療担当医師の意見書欄(甲20の1~16)において,平成25年12月6日か - 15 -ら平成27年3月13日までの期間を通して,原告を就労不能と認めた旨の意見を記載した。平成25年12月6日から同月31日までについてはC医師が記載しており,原告を就労不能と認めた所見につき,四肢筋力低下 27年3月13日までの期間を通して,原告を就労不能と認めた旨の意見を記載した。平成25年12月6日から同月31日までについてはC医師が記載しており,原告を就労不能と認めた所見につき,四肢筋力低下及び息苦しさを挙げている(甲20の1)。その余の期間についてはD医師が記載しており,原告を就労不能と認めた所見につき,め まい感,胸部苦悶感等を挙げている(甲20の2~16)。 ウ平成27年3月現症診断書について平成27年3月現症診断書には,要旨,以下の記載がある。 (ア) 「障害の原因となった傷病名」欄線維筋痛症 (イ) 「診断書作成医療機関における初診時所見(初診年月日平成26年9月3日)」欄両上下肢の脱力感及び両手関節,両膝関節,両足関節に自発痛を認めた。また,線維筋痛症の圧痛点に一致して圧痛があった。(ステージⅡ)(ウ) 「現在までの治療の内容,期間,経過,その他参考となる事項」欄 26年9月29日よりジェイゾロフト1T/1×朝の内服を開始した。 その後,疼痛は改善傾向にあり,27年3月の時点では歩行時に両膝痛を訴える程度であった。(ステージⅡ)(エ) 「障害の状態(平成27年3月11日現症)」a 「日常生活における動作の障害の程度」欄 (a) 「日常生活における動作」欄 つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)右左共に,一人でできてもやや不自由握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)右左共に,一人でできてもやや不自由 - 16 -タオルを絞る(水をきれる程度)両手で,一人でできてもやや不自由ひもを結ぶ両手で,一人でうまくできるさじで食事をする右左共に,一人でうまくできる顔を洗う(顔に手のひらをつける)右左共に,一人でうまくできる用便の処置をする きてもやや不自由ひもを結ぶ両手で,一人でうまくできるさじで食事をする右左共に,一人でうまくできる顔を洗う(顔に手のひらをつける)右左共に,一人でうまくできる用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)右左共に,一人でうまくできる用便の処置をする(尻のところに手をやる)右左共に,一人でうまくできる上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)両手で,一人でうまくできる上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)両手で,一人でうまくできるズボンの着脱(どのような姿勢でもよい)両手で,一人でうまくできる靴下を履く(どのような姿勢でもよい)両手で,一人でうまくできる片足で立つ右左共に,一人でできるが非常に不自由座る〔正座,横すわり,あぐら,脚なげだし〕(このような姿勢を持続する)一人でうまくできる深くおじぎ(最敬礼)をする一人でできてもやや不自由歩く(屋内)一人でできてもやや不自由歩く(屋外)一人でできてもやや不自由立ち上がる支持があればできるが非常に不自由階段を上る手すりがあればできるが非常に不自由階段を下りる手すりがあればできるが非常に不自由 (b) 「平衡機能」欄 - 17 -閉眼での起立・立位保持の状態:不安定である。 開眼での直線の10m歩行の状態:多少転倒しそうになったりよろめいたりするがどうにか歩き通す。 b 「補助用具使用状況」欄杖を常時ではないが使用 c 「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」欄歩行に不安定性があるが,座位では正常人と変わりなく作業できる。 (1日6時間週4日程度)d 「予後」欄治療により改善が期待できる。 エ平成28年3月現症診断書について平成28年3月現症 安定性があるが,座位では正常人と変わりなく作業できる。 (1日6時間週4日程度)d 「予後」欄治療により改善が期待できる。 エ平成28年3月現症診断書について平成28年3月現症診断書には,以下に挙げる部分を除き,平成27年3月現症診断書の前記ウに認定した記載と同じ記載がある。 (ア) 「現在までの治療の内容,期間,経過,その他参考となる事項」欄26年9月29日よりジェイゾロフト1T/1×朝の内服を開始した。 平成28年3月時点では長時間の歩行の際には杖を補助具として使用しているが,下肢痛は軽減している。筋力低下は認められる。18ケ所ある圧痛点のうち16ケ所で圧痛がある。(stageⅡ)(イ) 「障害の状態(平成28年3月28日現症)」「日常生活における動作の障害の程度」「日常生活における動作」欄(一部) 深くおじぎ(最敬礼)をする一人でうまくできる立ち上がる支持があればできるがやや不自由階段を上る手すりがあればできるがやや不自由 - 18 -(2) 検討ア本件傷病(線維筋痛症)に係る障害の程度の認定方法について(ア) 線維筋痛症は,身体の広範な部位の筋骨格系における慢性の疼痛及びこわばりを主症状とするほか,疲労感,睡眠障害,抑鬱気分等の多彩な身体症状又は精神・神経症状を伴う,特異的原因療法又は根治療法が ないとされる原因不明の疾患である(認定事実ア(ア))から,いわゆる難病に該当すると認められる。障害認定基準は,このような難病による障害について,「客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定するもの」とし,「厚生労働省研究班や関係学会で定めた診断基準,治療基準があり,それに該当するものは,病状の経過, 治療効果等を参考とし 基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定するもの」とし,「厚生労働省研究班や関係学会で定めた診断基準,治療基準があり,それに該当するものは,病状の経過, 治療効果等を参考とし,認定時の具体的な日常生活状況等を把握して,総合的に認定する」旨の定めを置いている(第3第1章第18節(その他の疾患による障害)2(5))。 障害認定基準が,医学的知見を総合して定められた上で最新の知見を踏まえた改訂がされたものであり(公知の事実),一般に,その内容は 合理的なものといえる(なお,障害認定基準第2・1(3)の規定(障害等級3級に関するもの)の内容も,厚年令別表第1の規定に照らし,合理性を有するものと認められる。)ことにも照らせば,上記にみた障害認定基準第3第1章第18節2(5)の定めは,認定される障害の程度が,障害認定基準第2・1(別紙関係法令等第3・1)に規定されている「障 害の程度」に適合し,ひいて国年令別表及び厚年令別表第1に規定されている障害の状態と合致する限りにおいて,審査基準として合理性を有するものと解される(障害認定基準第3第1章第18節2(5)の定めは,必ずしも具体的なものではないものの,臨床症状が複雑多岐にわたり,原因が必ずしも明らかではない難病に起因する障害の程度を判定するに 当たっては,その基準がある程度抽象的な定めとなることはやむを得な - 19 -いといえる。)。 そして,線維筋痛症は,身体の広範な部位にわたる慢性の疼痛等の症状により,患者のADL及びQOLを著しく低下させるものである一方,一般的臨床検査所見に異常は見られない(むしろ,明らかな検査異常を認める場合,線維筋痛症の診断は否定的とされる。)というものである (認定事実ア(ア))から,このような傷病の特性を踏ま る一方,一般的臨床検査所見に異常は見られない(むしろ,明らかな検査異常を認める場合,線維筋痛症の診断は否定的とされる。)というものである (認定事実ア(ア))から,このような傷病の特性を踏まえれば,その患者について,「客観的所見」に基づいて日常生活能力等の程度を考慮するため,疼痛等に起因した日常生活動作の支障の有無,程度等を,診断書等の資料に基づいて把握し,肢体の障害の程度を吟味することが,障害認定基準の定める趣旨に沿い(なお,障害認定基準第3第1章第18 節2(8)は,同じ趣旨に基づく規定であると解される。),かつ,合理的であるといえる。 (イ) 以上のほか,処分行政庁による障害の程度の認定が障害認定基準に従って行われており(公知の事実),障害給付の公平を確保するためには,障害の程度の認定が,医学的知見を踏まえた一定の合理的基準に従 って運用される必要があることも踏まえると,本件傷病による本件障害認定日又は本件裁定請求日における原告の障害の状態は,障害認定基準の定めるところに沿い,本件傷病(線維筋痛症)の性質,進行状況等を踏まえ,肢体の障害の認定の手法を用いて把握することのできる原告の日常生活能力等の程度を十分考慮した上で,厚生労働省線維筋痛症研究 班により作成された重症度分類による評価も参考としつつ,原告の具体的な日常生活状況等を把握及び考慮し,総合的に認定すべきものといえる。 イ本件障害認定日における原告の障害の状態について(ア) 肢体の障害の観点からの検討 平成27年3月現症診断書によれば,平成27年3月現症時の原告の - 20 -本件傷病に起因する疼痛は,主に歩行時に両膝に生じるものにとどまっており,障害認定基準第3第1章第7節第4・2(4)イにて上肢の機能におおむね関連する 平成27年3月現症時の原告の - 20 -本件傷病に起因する疼痛は,主に歩行時に両膝に生じるものにとどまっており,障害認定基準第3第1章第7節第4・2(4)イにて上肢の機能におおむね関連するとされている「さじで食事をする」ないし「上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)」の動作について,原告は,いずれも「一人でうまくできる」とされている一方,同ウにて下肢の機能 におおむね関連するとされる「片足で立つ」ないし「階段を下りる」の動作については,原告は,「一人でできてもやや不自由」(屋内及び屋外共に「歩く」動作),「一人でできるが非常に不自由」(「片足で立つ」動作)又は「支持又は手すりがあればできるが非常に不自由」(「立ち上がる」,「階段を上る」及び「階段を下りる」動作)とされている。 これらのとおり,平成27年3月現症時の本件傷病による原告の日常生活能力等に対する影響は,下肢に対するものが主であったと認められるから,原告の日常生活能力等の程度を考慮するに当たっては,下肢の障害の認定の手法によることが相当である(障害認定基準第3第1章第7節第4・2(3)の注意書き参照)。 そこで,改めて下肢の機能についてみると,上記のとおり,原告は,平成27年3月現症時において,下肢の機能におおむね関連するとされる「片足で立つ」ないし「階段を下りる」の動作について,「一人でできてもやや不自由」,「一人でできるが非常に不自由」又は「支持又は手すりがあればできるが非常に不自由」とされていたものであるが,障 害認定基準において,日常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」には,当該動作に係る身体機能につき「機能障害を残すもの」とされるべき旨が示されていること(第3 常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」には,当該動作に係る身体機能につき「機能障害を残すもの」とされるべき旨が示されていること(第3第1章第7節第4・2(5)ウ)に照らせば,上記にみた原告の下肢の機能は,少なくとも,両下肢にわたって「機能障 害を残すもの」と評価されるべきものということができる。そして,障 - 21 -害認定基準において,両下肢に機能障害を残すものは,「身体の機能に,労働が著しい制限を受けるか,又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」に該当するものとされている(第3第1章第7節第2・2(1)キ。なお,一下肢に機能障害を残すものが,「身体の機能に,労働が制限を受けるか,又は労働に制限を加えることを必 要とする程度の障害を残すもの」に該当するものとされている(同ケ)。)。 (イ) 重症度分類による評価の観点からの検討平成27年3月現症診断書によれば,平成27年3月現症時の原告の本件傷病は,重症度分類におけるステージⅡに該当するものとされている(認定事実ウ(ウ))。 重症度分類におけるステージⅡは,QOLにつきステージⅠと共通して「痛みはあるが普通の生活ができる」とされる一方で,「広範囲な筋緊張が続き腱付着部炎を併発する一方,不眠,不安感,鬱状態が続く。 通常の日常生活がやや困難」とされており,通常の日常生活にやや困難を生じさせる状態との評価は,労働能力にも相応の影響があることを前 提とした評価であるといえる。 (ウ) 総合的な検討以上のとおり,本件障害認定日に比較的近接した平成27年3月現症時における本件傷病による原告の下肢の機能の障害は,日常生活能力の点からみて,少なくとも,両下肢にわたって「機 (ウ) 総合的な検討以上のとおり,本件障害認定日に比較的近接した平成27年3月現症時における本件傷病による原告の下肢の機能の障害は,日常生活能力の点からみて,少なくとも,両下肢にわたって「機能障害を残すもの」と 評価されるべきものであって,「身体の機能に,労働が著しい制限を受けるか,又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」に該当するものといえる上,本件傷病に対する重症度分類による評価(ステージⅡ)も,原告の労働能力に相応の影響があることを前提とした評価であったといえる。 そして,①本件傷病(線維筋痛症)が,一般的に,(a)発症から1年経 - 22 -過時点で,病状に変化がないか又は悪化した患者が約4割に上るほか,34.0%の患者が休職又は休学するに至り,かつ,その期間が平均3. 2年に及ぶ旨や,(b)患者のうち,慢性疲労症候群の診断基準に満たず,日常生活にほとんど影響がないとされるPSスコア0~2とされた者が13.1%にとどまり,患者のPSスコアの平均が診断基準である3を 大幅に超える6.0であった旨の報告があるほどに,長期にわたり,患者のADLを低下させる旨指摘されている病気である(認定事実ア(ア))ところ,②原告は,本件傷病に起因する症状を訴えて本件傷病の初診日から3か月余り経過した後に当時の職場を休職し,その約2か月後には退職するに至っており(認定事実イ(イ)),③上記②の休職の頃から本 件障害認定日の後に至るまでの期間について,原告を就労不能と認めた医師の意見も存在すること(認定事実イ(エ))によれば,本件障害日における原告のADLは,著しく低下していたと推認される。 以上を総合すると,本件障害認定日における原告の障害の状態は,身体の機能に,労働が制限を受けるか又 (認定事実イ(エ))によれば,本件障害日における原告のADLは,著しく低下していたと推認される。 以上を総合すると,本件障害認定日における原告の障害の状態は,身体の機能に,労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要 とする程度のものであったと認められ,障害等級3級に該当する程度のものであったというべきである(障害認定基準第3第1章第18節1参照)。 (エ) 被告の主張等について被告は,本件障害認定日における原告の本件傷病による日常生活の支 障が「労働が制限を受けるか,又は労働に制限を加えることを必要とする」程度のものには及ばない(障害等級3級に該当する程度のものといえない)旨主張する根拠として,以下に挙げる点を指摘するが,以下に説示するとおり,いずれもこれまでの認定及び説示を覆すものではない。 a 被告は,①本件障害認定日における原告の本件傷病による疼痛の程 度は軽度であり,原告は疼痛による身体の不自由さを強く実感するこ - 23 -とはなかった旨や,②本件障害認定日時点で原告に下肢の筋力低下が認められたとしても,自力で下肢を動かすことができないほどのものとは認められず,原告は歩行や昇降運動が十分に可能であると考えられる旨を指摘する。 しかし,これまでに認定及び説示したとおり,本件傷病による原告 の障害の状態は,主要症状である身体の広範な部位の筋骨格系における慢性の疼痛及びこわばりのみならず,随伴症状に位置付けられる疲労感等の多彩な症状によっても患者のADL等を著しく毀損するものであるという本件傷病(線維筋痛症)の性質をも踏まえ,原告の日常生活能力等の程度や具体的な日常生活状況等を考慮して認定すべきも のである点を踏まえれば,仮に,被告が上記①及び②に指摘する事実又は評価を前提と 傷病(線維筋痛症)の性質をも踏まえ,原告の日常生活能力等の程度や具体的な日常生活状況等を考慮して認定すべきも のである点を踏まえれば,仮に,被告が上記①及び②に指摘する事実又は評価を前提としたとしても,これらが前記(ア)ないし(ウ)の判断を直ちに覆すものとはいい難い(なお,被告の上記①及び②の指摘が,例えば,A医師が平成27年3月現症診断書においてした原告の日常生活における動作の状況に係る認定の合理性を争う趣旨を含むものか 否かは判然としないが,念のためこの点を検討するとしても,証拠(甲19,乙1・6~7頁)によれば,A医師は,平成27年3月現症診断書において,平成27年3月現症時における原告の日常生活における動作の状況を,原告が,両膝の疼痛のみならず,易疲労感,胸部の圧迫感等も訴えていたことをも勘案して認定したものと認められ,上 記認定に合理性を欠く点は見当たらない。)。 b 被告は,平成27年3月現症診断書において,原告の疼痛が改善傾向にあるとされている点を指摘する。 確かに,平成27年3月現症診断書に上記の記載がある(認定事実ウ(ウ))ほか,本件障害認定日の約1年後である平成28年3月現症 時に関する平成28年3月現症診断書を見ると,平成27年3月現症 - 24 -診断書の内容と比較して,下肢の機能におおむね関連するとされる動作の一部(「立ち上がる」及び「階段を上る」)に若干の改善がみられる(認定事実エ(イ))。しかし,平成28年現症診断書における「日常生活における動作の障害の程度」欄のその他の項目の評価は,平成27年3月現症診断書のものと同じであった上,上記の改善がみられ た動作についても,なお「支持又は手すりがあればできるがやや不自由」にとどまっていたのである(認定事実エ)。 したが 価は,平成27年3月現症診断書のものと同じであった上,上記の改善がみられ た動作についても,なお「支持又は手すりがあればできるがやや不自由」にとどまっていたのである(認定事実エ)。 したがって,本件障害認定日における原告の下肢の機能の障害は,本件障害認定日の約1年後にあっても,両下肢にわたって「機能障害を残すもの」と評価されるべき状況に変化はなかったのであるから, 本件障害認定日において原告の疼痛が改善傾向にあったと評価されることを,殊更重視することはできない。 c 被告は,平成27年3月現症診断書において,原告が,座位では,1日6時間週4日程度,正常人と変わりなく作業できるとされている点を指摘する。 しかし,障害認定基準第3第1章第18節2(7)に示されているとおり,事務等の座業ができることをもって,障害等級3級への該当性が直ちに否定されるものとはいえない(同一般状態区分表のイ参照)。 d 被告は,原告が,平成28年4月19日付けで作成した「病歴・就労状況等申立書」(甲5,乙1・10~11頁。以下「本件病歴等申 立書」という。)において,平成27年2月28日頃の原告の状況として,「仕事をしていなかった(休職していた)理由」につき,「ア体力に自信がなかったから」の選択肢に丸を付したにとどまっていた点を指摘する。 しかし,本件病歴等申立書には,平成27年2月28日頃の原告の 状況として,被告が上記指摘する記載の他に,「掃除」,「散歩」及 - 25 -び「買物」について「自発的にできたが援助が必要だった」とする記載や,「杖を使うか,壁づたいで歩かないと不安定になってしまう。 階段の使用にかなり不安がある。通常の人とくらべるとかなり体力がなくなっている。重い物を持ったり移動させたりすると痛みが出 た」とする記載や,「杖を使うか,壁づたいで歩かないと不安定になってしまう。 階段の使用にかなり不安がある。通常の人とくらべるとかなり体力がなくなっている。重い物を持ったり移動させたりすると痛みが出る。 通常の人とくらべて動きが遅い。」との記載もあり,これらの記載を 総合すると,被告が上記指摘する記載が,これまでの認定及び説示に矛盾するものとはいえない。 e 前記aないしdの他に被告が指摘する点や,被告の主張に沿う記載があるK医師の意見書(乙16)は,いずれも,これまでの認定及び説示を覆すものではない。 3 まとめ以上のとおり,本件処分は,原告が本件傷病の初診日において厚生年金保険の被保険者であった者に該当しないとした点において誤りがあるとともに,被告が本件処分が適法である根拠として主張する本件障害認定日及び本件裁定請求日における原告の障害の状態の点をみても,本件障害認定日における原告の 障害の状態は,障害等級3級に該当する程度のものであったといえる。 4 結論よって,本件処分は違法であり,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官 鎌野真敬 裁判官 福渡裕貴 - 26 - 裁判官獅子野裕介は,差支えのため,署名押印をすることができない。 裁判長裁判官 鎌野真敬(別紙(指定代理人目録)省略) - 27 -(別紙)関係法令等の定め第1 障害給付の支給要件 1 障害認定日による障害給付疾病にかかり,又は負傷し,かつ,その疾病又は負傷及びこれらに起因する 疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科 の定め第1 障害給付の支給要件 1 障害認定日による障害給付疾病にかかり,又は負傷し,かつ,その疾病又は負傷及びこれらに起因する 疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において厚生年金保険の被保険者(国民年金の被保険者でもある(国民年金法(以下「国年法」という。)7条1項2号)。)であった者が,当該初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治った場合においては,その治った日(その症状が固定し治療の効 果が期待できない状態に至った日を含む。)とし,以下「障害認定日」という。)において,その傷病により障害等級(後記第2参照)に該当する程度の障害の状態にあるときは,その者は,障害給付の受給権を有する(国年法30条1項,厚年法47条1項)。 2 事後重症による障害給付 疾病にかかり,又は負傷し,かつ,その傷病に係る初診日において厚生年金保険の被保険者であった者であって,障害認定日において障害等級に該当する程度の障害の状態になかったものが,同日後65歳に達する日の前日までの間において,その傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至ったときは,その者は,障害給付の受給権を有する(国年法30条の2第1 項,厚年法47条の2第1項)。 第2 障害等級障害等級は,障害の程度に応じて重度のものから,障害基礎年金については1級及び2級,障害厚生年金については1級,2級及び3級とされ,各級の障害の状態は政令で定めることとされているところ(国年法30条2項,厚年法 47条2項),いずれも,1級及び2級については国民年金法施行令(以下「国 - 28 -年令」という。)別表に定める障害の状態,3級については厚生年金保険 ところ(国年法30条2項,厚年法 47条2項),いずれも,1級及び2級については国民年金法施行令(以下「国 - 28 -年令」という。)別表に定める障害の状態,3級については厚生年金保険法施行令(以下「厚年令」という。)別表第1に定める障害の状態とされている(国年令4条の6,厚年令3条の8)。 そして,厚年令別表第1は,3級の障害の状態として,12号において「前各号に掲げるもののほか,身体の機能に,労働が著しい制限を受けるか,又は 労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」を,14号において「傷病が治らないで,身体の機能又は精神若しくは神経系統に,労働が制限を受けるか,又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものであって,厚生労働大臣が定めるもの」をそれぞれ定めており,「厚生年金保険法施行令別表第1の規定による障害厚生年金を支給すべき程度の障 害の状態」(昭和61年厚生省告示第66号)は,厚年令別表第1の14号の規定による障害厚生年金を支給すべき程度の障害の状態について,結核性疾患及びけい肺以外の傷病で,傷病が治らないで,労働が制限を受けるか,又は労働に制限を加えることを必要とする状態にあるものを掲げている。 第3 障害等級の認定の基準 国年令別表及び厚年令別表第1に規定する障害の程度については,「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」(昭和61年3月31日付け庁保発第15号社会保険庁年金保険部長通知)が定められているところ,本件裁定請求日当時のもの(乙2。以下「障害認定基準」という(なお,本件裁定請求日当時のものに限らない文脈で用いることもある。)。)のうち,本件に関係する部分は, 以下のとおりである。 1 「第2 障害認定に当たっての基本的事項」「1 障 という(なお,本件裁定請求日当時のものに限らない文脈で用いることもある。)。)のうち,本件に関係する部分は, 以下のとおりである。 1 「第2 障害認定に当たっての基本的事項」「1 障害の程度障害の程度を認定する場合の基準となるものは,国年令別表,厚年令別表第1及び厚年令別表第2に規定されているところであるが,その障害の 状態の基本は,次のとおりである。 - 29 -(中略)(3) 3級労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。 また,「傷病が治らないもの」にあっては,労働が制限を受けるか又 は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。(「傷病が治らないもの」については,第3の第1章に定める障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当する。)(以下略)」 2 「第3 障害認定に当たっての基準」「第1章障害等級認定基準」「第7 節肢体の障害」(1) 「第2 下肢の障害」「1 認定基準下肢の障害については,次のとおりである。 令別表障害の程度障害の状態国年令別表1級(略)2級(略)厚年令別表第13級(略)身体の機能に,労働が著しい制限を受けるか,又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの別表第2障害手当金(略)身体の機能に,労働が制限を受けるか,又 - 30 -は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの 2 認定要領下肢の障害は,機能障害,欠損障害,変形障害及び短縮障害に区分する。 (1) 機能障害 (中略)キ 「身体の機能に,労働が著しい制限を受けるか, 度の障害を残すもの 2 認定要領下肢の障害は,機能障害,欠損障害,変形障害及び短縮障害に区分する。 (1) 機能障害 (中略)キ 「身体の機能に,労働が著しい制限を受けるか,又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは,一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば,一下肢の3大関節中1関節が不良肢位で強直しているもの)又は両下肢に機能障害 を残すもの(例えば,両下肢の3大関節中それぞれ1関節の筋力が半減しているもの)をいう。 なお,両下肢に障害がある場合の認定に当たっては,一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから,その動作を考慮して総合的に認定する。 (中略)ケ 「身体の機能に,労働が制限を受けるか,又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは,一下肢に機能障害を残すもの(例えば,一下肢の3大関節中1関節の筋力が半減しているもの)をいう。 コ日常生活における動作は,おおむね次のとおりである。 (ア) 片足で立つ(イ) 歩く(屋内)(ウ) 歩く(屋外) - 31 -(エ) 立ち上がる(オ) 階段を上る(カ) 階段を下りる(以下略)」(2) 「第4 肢体の機能の障害」 「1 認定基準肢体の機能の障害については,次のとおりである。 令別表障害の程度障害の状態国年令別表1級(略)2級(略)厚年令別表第13級身体の機能に,労働が著しい制限を受けるか,又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの 2 認定要領 (1) 肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる障害(脳血管障害,脊髄 が著しい制限を受けるか,又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの 2 認定要領 (1) 肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる障害(脳血管障害,脊髄損傷等の脊髄の器質障害,進行性筋ジストロフィー等)の場合には,本節「第1 上肢の障害」,「第2 下肢の障害」及び「第3 体幹・脊柱の機能の障害」に示したそれぞれの認定基準と認定要領によらず,「第4 肢体の機能の障害」として認定する。 (2) 肢体の機能の障害の程度は,関節可動域,筋力,巧緻性,速さ,耐久性を考慮し,日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。 なお,他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば,末梢神 - 32 -経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については,筋力,巧緻性,速さ,耐久性を考慮し,日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。 (3) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。 障害の程度障害の状態1級(略)2級(略)3級一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの (注) 肢体の機能の障害が両下肢,一上肢,両下肢,一下肢,体幹及び脊柱の範囲内に限られている場合には,それぞれの認定基準と認定要領によって認定すること。 なお,肢体の機能の障害が上肢及び下肢の広範囲にわたる場合であって,上肢と下肢の障害の状態が相違する場合には,障害の重い肢で障害の程度を判断し,認定すること。 (4) 日常生活における動作と身体機能との関連は,厳密に区別することができないが,おおむね次のとおりである。 (中略)イ上肢の機能(ア) さじで食事をする(イ) 顔を洗う(顔に 4) 日常生活における動作と身体機能との関連は,厳密に区別することができないが,おおむね次のとおりである。 (中略)イ上肢の機能(ア) さじで食事をする(イ) 顔を洗う(顔に手のひらをつける)(ウ) 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる) (エ) 用便の処置をする(尻のところに手をやる)(オ) 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ) - 33 -(カ) 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)ウ下肢の機能(ア) 片足で立つ(イ) 歩く(屋内)(ウ) 歩く(屋外) (エ) 立ち上がる(オ) 階段を上る(カ) 階段を下りる(中略)(5) 身体機能の障害の程度と日常生活における動作の障害との関係を 参考として示すと,次のとおりである。 (中略)イ 「機能に相当程度の障害を残すもの」とは,日常生活における動作の多くが「一人で全くできない場合」又は日常生活における動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」をいう。 ウ 「機能障害を残すもの」とは,日常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」をいう。」 3 「第3 障害認定に当たっての基準」「第1章障害等級認定基準」「第18節その他の疾患による障害」 「1 認定基準その他の疾患による障害については,次のとおりである。 令別表障害の程度障害の状態 - 34 -国年令別表1級(略)2級(略)厚年令別表第13級身体の機能に,労働が制限を受けるか,又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの その他の疾患による障害の程度は,全身状態,栄養状態,年 (略)厚年令別表第13級身体の機能に,労働が制限を受けるか,又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの その他の疾患による障害の程度は,全身状態,栄養状態,年齢,術後の経過,予後,原疾患の性質,進行状況等,具体的な日常生活状況等を考慮し,総合的に認定するものとし,身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状があり,(中略)労働が制限を受けるか又は労働に制限 を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。 2 認定要領(1) その他の疾患による障害は,本章「第1節眼の障害」から「第17節高血圧症による障害」において取り扱われていない疾患を指すものであるが,本節においては,(中略)いわゆる難病(中略)の取扱いを 定める。 (中略)(5) いわゆる難病については,その発病の時期が不定,不詳であり,かつ,発病は緩徐であり,ほとんどの疾患は,臨床症状が複雑多岐にわたっているため,その認定に当たっては,客観的所見に基づいた日常生活能力 等の程度を十分考慮して総合的に認定するものとする。 なお,厚生労働省研究班や関係学会で定めた診断基準,治療基準があり,それに該当するものは,病状の経過,治療効果等を参考とし,認定時の具体的な日常生活状況等を把握して,総合的に認定する。 (中略) (7) 障害の程度は,一般状態が次表の一般状態区分表の(中略)ウ又はイ - 35 -に該当するものは3級におおむね相当するので,認定に当たっては,参考とする。 一般状態区分表区分一般状態ア無症状で社会活動ができ,制限を受けることなく,発病前と同等にふるまえるものイ軽度の症状があり,肉体労働は制限を受けるが,歩行,軽労働や座業はできるも 状態区分表区分一般状態ア無症状で社会活動ができ,制限を受けることなく,発病前と同等にふるまえるものイ軽度の症状があり,肉体労働は制限を受けるが,歩行,軽労働や座業はできるもの例えば,軽い家事,事務などウ歩行や身のまわりのことはできるが,時に少し介助が必要なこともあり,軽労働はできないが,日中の50%以上は起居しているものエ(略)オ(略) (8) 本章「第1節眼の障害」から「第17節高血圧症による障害」及び本節に示されていない障害及び障害の程度については,その障害によって生じる障害の程度を医学的に判断し,最も近似している認定基準の障害の程度に準じて認定する。」以上
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