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平成10(ワ)730 損害賠償等請求

裁判所

平成16年5月26日 広島地方裁判所

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32,875 文字

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。2 訴訟費用は原告らの負担とする。事実及び理由 第1 請求被告らは,原告らに対し,連帯して,それぞれ金5541万7327円及びこれらに対する平成9年2月28日から各支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。第2 事案の概要本件は,Aが被告法人によって開設されている被告病院において,被告法人の理事長で産婦人科医である被告Bによる不妊治療を受けていたところ,被告BがAの卵巣の異常に気付かず,卵巣癌を疑うべき腫瘤が発見された後も直ちに適切な検査を実施しなかったため,卵巣癌の早期発見及び早期治療の機会が奪われ転院先の病院で卵巣癌により死亡したと主張して,Aの相続人である原告らが,被告Bに対しては不法行為及び医療契約上の債務不履行に基づいて,被告法人に対しては使用者責任に基づいて損害賠償(含遅延損害金)を請求している事案である。1 争いのない事実及び証拠上容易に認定できる事実(後者は各項末尾掲記の各証拠によって認定)(1) 当事者ア原告CはAの夫であり,原告Dは原告CとAの間の長男である。イ被告法人は,産婦人科を専門とする被告病院を開設している医療法人である。被告Bは,被告法人の理事長であって,被告病院で診療行為に従事している医師である。なお,被告法人の設立は平成7年10月26日であり,それ以前は,被告Bが被告病院の開設者であった。(弁論の全趣旨)(2) 平成8年2月24日より前の経緯Aは,土谷総合病院産婦人科で不妊治療を受け,平成3年5月4日,第1子である原告Dが誕生した。その後,Aは,平成4年7月18日に不正出血に関する診断と子 月24日より前の経緯Aは,土谷総合病院産婦人科で不妊治療を受け,平成3年5月4日,第1子である原告Dが誕生した。その後,Aは,平成4年7月18日に不正出血に関する診断と子宮癌検診を受けるために被告病院を初めて受診し,平成5年7月に被告病院で子宮癌検診を受けた際,被告Bに対してもう1人子どもが欲しい旨相談し,同年11月ころから不妊治療を開始した。 ,Aは,平成4年7月18日に不正出血に関する診断と子 月24日より前の経緯Aは,土谷総合病院産婦人科で不妊治療を受け,平成3年5月4日,第1子である原告Dが誕生した。その後,Aは,平成4年7月18日に不正出血に関する診断と子宮癌検診を受けるために被告病院を初めて受診し,平成5年7月に被告病院で子宮癌検診を受けた際,被告Bに対してもう1人子どもが欲しい旨相談し,同年11月ころから不妊治療を開始した。当初はほぼ月に1,2回の割合で,後には月に4,5回の割合で通院し,不妊治療として通気法,通水法,胎盤性性腺刺激ホルモン(HCG)・下垂体性性腺刺激ホルモン(HMG)の注射による投与,人工授精が施され,十数回にわたって超音波検査が行われた。この間,Aは,被告Bから卵巣に関して異常を指摘されたことはなかった。(3) 平成8年2月24日以降の経緯ア Aは,平成8年2月24日と26日に被告病院を受診した際,被告Bに対し,同月18日ころから下腹部が痛く,頻尿であって残尿感があること,便秘気味であり,おりものに臭いがすること等の身体の変調を訴え,同年3月1日に被告病院を受診した際には,広島県立広島病院(以下「県病院」という。)へ転院する旨述べた。そこで,被告Bは,県病院への紹介状を作成した。その紹介状には,診断として「続発性不妊症,子宮筋腫」,診断の根拠として「子宮体部鶏卵大であったのが,ここ数ヶ月急速に増大(超手拳大)子宮筋腫と思います。」,診断に基づく施術として「挙児希望と相まって,核手術を希望しておられます。」と記載されていた。Aは,同月3日も被告病院を受診した。(甲9,17)イ Aは平成8年3月4日に県病院を受診したところ,産婦人科部長のE医師は卵巣腫瘤の疑いを持ち,腫瘍マーカーの検査を行うと同時に,MRI検査の必要があったのでAを土 (甲9,17)イ Aは平成8年3月4日に県病院を受診したところ,産婦人科部長のE医師は卵巣腫瘤の疑いを持ち,腫瘍マーカーの検査を行うと同時に,MRI検査の必要があったのでAを土谷総合病院に転送し,検査を受けさせた。Aは,同月13日,県病院で手術を受け卵巣癌と診断され,人工肛門が造設された。また,Aの卵巣癌の組織型は漿液性腺癌で,そのステージはⅢC期と診断された。(甲10,16,17,31)ウ Aは,平成9年2月28日,県病院において卵巣癌により死亡した。 ころ,産婦人科部長のE医師は卵巣腫瘤の疑いを持ち,腫瘍マーカーの検査を行うと同時に,MRI検査の必要があったのでAを土谷総合病院に転送し,検査を受けさせた。Aは,同月13日,県病院で手術を受け卵巣癌と診断され,人工肛門が造設された。また,Aの卵巣癌の組織型は漿液性腺癌で,そのステージはⅢC期と診断された。(甲10,16,17,31)ウ Aは,平成9年2月28日,県病院において卵巣癌により死亡した。(甲1) 2 争点(1) 平成8年2月24日より前における過失の有無(2) 同日以降における過失の有無(3) 因果関係(4) 損害 3 争点に関する当事者の主張(1) 平成8年2月24日より前における過失の有無(原告らの主張)ア不妊治療に当たる医師としての過失について被告Bは,平成5年7月から平成8年2月末までAの不妊治療に当たっていたところ,不妊治療を行う医師として,不妊の原因を見極めてその原因に適した治療を施すべき義務と治療継続中に治療方法の変更や患者の症状の変化に対応して可能な限りの方法を用いてその原因を究明すべき義務を負っており,これら義務を果たしていればAの卵巣が腫大していることに気付き,卵巣癌を早期に発見することができた。しかるに,被告Bは,不妊治療の間,Aからの主訴があったにもかかわらず問診のほとんどを看護師に任せて自ら行わず,行ったとしてもAの訴えを聞き流し,内診も毎回行わず,行ったとしても適切な内診ではなく,排卵障害や卵管閉塞の原因を究明するために診察・検査すべきところこれを怠り,排卵誘発剤の投与開始時及び継続中に行うべき血算検査や超音波検査,卵巣・ 内診も毎回行わず,行ったとしても適切な内診ではなく,排卵障害や卵管閉塞の原因を究明するために診察・検査すべきところこれを怠り,排卵誘発剤の投与開始時及び継続中に行うべき血算検査や超音波検査,卵巣・卵胞の観察等を怠り,超音波検査装置が旧式で性能が悪いものであったか,超音波検査装置の整備・調整が不良であったか,手技が未熟であったかして,経膣式超音波検査の際に卵巣表面の成熟卵胞を観察するだけで卵巣内部の観察を怠り,不妊治療に当たる医師として果たすべき上記義務に違反した結果,Aの卵巣の異常に気付かなかった。例えば,平成6年6月25日に今周期無排卵であるとして排卵誘発剤クロミッドを安易に投与しているが,本来であれば無排卵の原因を追求すべきであり,かかる処置をとっていればその時点で卵巣の異常を発見でき,卵巣癌の早期発見ができたはずである。 膣式超音波検査の際に卵巣表面の成熟卵胞を観察するだけで卵巣内部の観察を怠り,不妊治療に当たる医師として果たすべき上記義務に違反した結果,Aの卵巣の異常に気付かなかった。例えば,平成6年6月25日に今周期無排卵であるとして排卵誘発剤クロミッドを安易に投与しているが,本来であれば無排卵の原因を追求すべきであり,かかる処置をとっていればその時点で卵巣の異常を発見でき,卵巣癌の早期発見ができたはずである。短期間であるにせよ癌にはステージⅠ期が必ずあり,漿液性腺癌が早期に発見された症例もあるから,卵巣癌,特に漿液性腺癌の早期発見は困難であるという考え方は一般論として必ずしも正しいものではない。Aの卵巣癌は原発性の癌であり,平成8年3月13日に手術で摘出され総重量は420gであったが,同年2月24日には卵巣癌は超手拳大でありそのときの総重量は105gから345gの間であったと考えられるから,Aの卵巣癌は18日間で75gから315gの間で成長したといえる。そして,経膣式超音波検査では0.5㎝から1㎝程度の卵巣癌であれば発見が可能とされており,これらを基に計算すると遅くとも平成7年8月21日の診断の際には経膣式超音波検査によってAの卵巣癌を発見することができた。また,後記イのとおり,経膣式超音波検査所見によれば同年12月26日には卵巣腫瘤が描写されているところ,癌が1週間や10日で急激に成長することは考え難いから によってAの卵巣癌を発見することができた。また,後記イのとおり,経膣式超音波検査所見によれば同年12月26日には卵巣腫瘤が描写されているところ,癌が1週間や10日で急激に成長することは考え難いから,同年12月26日より少なくとも1か月程度遡った同年11月25日の診療日においても,Aの卵巣に異常が生じていたといえるところ,被告Bは同日に適切な診断を行わなかったために,卵巣の異常を見落とした。イ卵巣癌を早期に発見できなかった過失について被告BがAに対し行った不妊治療それ自体においても,平成7年12月26日の経膣式超音波検査によるエコープリントには,少なくとも腫大した卵巣腫瘤が描写されていたから,被告Bは可及的早期に卵巣癌の検査を実施して卵巣癌が発症しているか否かを診断すべき義務を有していた。しかるに,被告Bは,Aに対し,卵巣癌の疑いを究明するための有効な検査を何ら行わなかった。 とした。イ卵巣癌を早期に発見できなかった過失について被告BがAに対し行った不妊治療それ自体においても,平成7年12月26日の経膣式超音波検査によるエコープリントには,少なくとも腫大した卵巣腫瘤が描写されていたから,被告Bは可及的早期に卵巣癌の検査を実施して卵巣癌が発症しているか否かを診断すべき義務を有していた。しかるに,被告Bは,Aに対し,卵巣癌の疑いを究明するための有効な検査を何ら行わなかった。(被告らの主張)卵巣癌の早期発見は困難であり,その中でも漿液性腺癌の場合,特に初期の段階で発見するのは困難である。京都大学医学部の自験例によると,漿液性腺癌の8例中7例が既にステージⅢ期症例で,しかも,いずれの患者も不妊症で通院し,経過中は超音波診断を含めかなり詳細に卵巣の所見がとらえられていたにもかかわらず,癌が発見されたときにはステージⅢ期という進行癌であった。外にも漿液性腺癌と診断されたときにはステージⅢ期,Ⅳ期と進行例が多いとの報告があり,漿液性腺癌の早期発見がいかに困難であるかを示しているが,このことは癌の診断が困難というだけでなく,腫瘤の発見も困難であることを含むと考えられる。したがって,不妊治療中であったとしても早期に卵巣癌の発見が可能であったということにはならない。また,そもそも不妊治療の目的は,妊娠・出産を目指 でなく,腫瘤の発見も困難であることを含むと考えられる。したがって,不妊治療中であったとしても早期に卵巣癌の発見が可能であったということにはならない。また,そもそも不妊治療の目的は,妊娠・出産を目指すものであり不妊原因に沿って生殖器官の検査・治療が行われるものであって,その経過において偶然に異常が発見されることはあっても,癌検診などのスクリーニングとしての検診とは異なるから,子宮,付属器の癌若しくは腫瘤の発見を主眼とした診察・検査が行われるわけではない。本件において,Aの主訴は卵巣癌の前兆とはいえないし,いずれも数か月にわたる持続もなく適切な検査と処置によって回復しているから,これらの訴えによって卵巣癌を早期に発見することはできないし,被告Bは基礎体温表を見ながら問診も適切に行っていた。また,不妊治療において内診は毎回行われるものではなく,臨床症状によって臨機応変になされるものであるから,すべての患者に毎回「癌ではないか。」と内診するというのは非現実的であるし,平成8年2月24日より前の超音波検査の各写真にはその段階で卵巣腫瘍の所見は出ておらず,卵巣の異常を認めることはできなかった。 よって卵巣癌を早期に発見することはできないし,被告Bは基礎体温表を見ながら問診も適切に行っていた。また,不妊治療において内診は毎回行われるものではなく,臨床症状によって臨機応変になされるものであるから,すべての患者に毎回「癌ではないか。」と内診するというのは非現実的であるし,平成8年2月24日より前の超音波検査の各写真にはその段階で卵巣腫瘍の所見は出ておらず,卵巣の異常を認めることはできなかった。したがって,同日より前に卵巣癌を発見できなかったことについて被告Bに過失はない。なお,本件当時,漿液性腺癌は発見されたときにはステージⅢ期,Ⅳ期が多いという文献的な記述はなく,不妊治療中に発見される卵巣癌についての総括的な論文は,本件以降に発表された小西論文(乙5)が初めてであった。(2) 平成8年2月24日以降における過失の有無(原告らの主張)ア卵巣の異常に気付かなかった過失Aは平成8年2月24日と26日に被告Bに対して下腹部が痛い,頻尿で残尿感がある,便秘気味である,おりものに臭いがする等の身体の変 告らの主張)ア卵巣の異常に気付かなかった過失Aは平成8年2月24日と26日に被告Bに対して下腹部が痛い,頻尿で残尿感がある,便秘気味である,おりものに臭いがする等の身体の変調を訴えているから,被告Bは,卵巣癌等を疑って,CT,MRIなどの画像診断や,内診,腫瘍マーカー等の検査を行って早期に卵巣癌を発見し早期治療をすべきであるし,そのような検査ができない場合には設備のある病院へ転院させるべきである。しかるに,カルテの平成8年2月24日及び26日の疾病名欄には「卵巣腫瘍疑」の記載がないこと,同月24日にAには「子宮筋腫だろう。」と述べたに止まっていること,経腹式超音波検査では大きな塊しか分からなかったにもかかわらず経膣式超音波検査を実施していないこと,その一方で不妊治療継続可能性に関心を示し,卵巣腫瘍に対して禁忌とされている排卵誘発剤を投与していること,同月24日及び26日に腫瘍マーカー検査の必要性を感じておらず,MRI検査の手配もしていないこと,県病院への紹介状には「卵巣腫瘍疑」の記載がなく,子宮筋腫を前提とした核手術希望との記載があること,被告BはAに対し岸田産婦人科での手術を勧めているが,同院は常勤の医師と非常勤の医師それぞれ1名により運営されており卵巣癌の手術などできないこと等からすれば,被告Bは同月24日,同月26日,同年3月1日,同月3日と診察しているにもかかわらずAの卵巣の異常に気付かずに子宮筋腫と判断しており誤診が認められ,上記義務に違反した。 「卵巣腫瘍疑」の記載がなく,子宮筋腫を前提とした核手術希望との記載があること,被告BはAに対し岸田産婦人科での手術を勧めているが,同院は常勤の医師と非常勤の医師それぞれ1名により運営されており卵巣癌の手術などできないこと等からすれば,被告Bは同月24日,同月26日,同年3月1日,同月3日と診察しているにもかかわらずAの卵巣の異常に気付かずに子宮筋腫と判断しており誤診が認められ,上記義務に違反した。同月24日のカルテの記事欄には「卵巣腫瘍の可能性もあり」と記載されているものの,その記載場所,カルテの他の記載,紹介状の文言,不妊治療の継続等からして,子宮筋腫が誤診であると判明した後に記入されたものであって,カルテが改ざんされている。」と記載されているものの,その記載場所,カルテの他の記載,紹介状の文言,不妊治療の継続等からして,子宮筋腫が誤診であると判明した後に記入されたものであって,カルテが改ざんされている。また,Aから同年3月1日にも症状が改善されていない旨訴えられたにもかかわらず,Aからの申入れで県病院への紹介状を作成したのみであって,上記義務に違反した。イ卵巣の異常に気付いていたとしても適切な処置を講じなかった過失(ア) 平成8年2月24日の過失仮に被告Bにおいて,同日にAにつき卵巣腫瘤の可能性を考え,卵巣の異常に気付いていたとするならば,被告Bは,卵巣腫瘤の可能性があるのか否かを即時に見極める検査を行い,卵巣腫瘤の可能性がある場合には適切な処置をすべき義務を負っている。特に,同年1月27日の診察の際には異常を認めなかったのに同年2月24日に超手拳大の腫瘤になっているのであるから,当然に極めて進行性の速い漿液性卵巣癌を疑わなければならず,漫然と様子をみるべきではない。しかるに,被告Bは,同日には内診の外に経腹式超音波検査をしているのみであって,経膣式超音波検査,腫瘍マーカー,CT,MRI,他病院での検査の手配等を行わなかった。(イ) 平成8年2月26日の過失被告BがAにつき平成8年2月24日に既に卵巣腫瘤の可能性を考えていたとするならば,同月26日にはなお一層卵巣腫瘤の可能性の有無を見極め,適切な処置をとるべき義務を負っている。しかるに,被告Bは,同日には,経膣式超音波検査を行って,4日後の超音波検査を予定したのみであって,再度の経腹式超音波検査,腫瘍マーカー,CT,MRI,他病院での検査の手配等を行わなかった。 った。(イ) 平成8年2月26日の過失被告BがAにつき平成8年2月24日に既に卵巣腫瘤の可能性を考えていたとするならば,同月26日にはなお一層卵巣腫瘤の可能性の有無を見極め,適切な処置をとるべき義務を負っている。しかるに,被告Bは,同日には,経膣式超音波検査を行って,4日後の超音波検査を予定したのみであって,再度の経腹式超音波検査,腫瘍マーカー,CT,MRI,他病院での検査の手配等を行わなかった。(ウ) 平成8年3月1日の過失Aにつき詳細な血 超音波検査を予定したのみであって,再度の経腹式超音波検査,腫瘍マーカー,CT,MRI,他病院での検査の手配等を行わなかった。(ウ) 平成8年3月1日の過失Aにつき詳細な血液検査や腫瘍マーカー等を実施して卵巣腫瘤の有無を含む卵巣の病変と内容を確定すべきであったにもかかわらず,白血球数・赤血球数を調べたのみであってそれ以上の詳しい検査を行わなかった。(エ) 平成8年3月3日の過失被告Bは,Aが同月1日に自ら転院を希望し既に被告Bから紹介状を書いてもらっていたにもかかわらず,その転院受診を待てずに日曜日である同月3日にわざわざ被告病院に来たのであるから,内診,血液検査などをして同月1日以降に増悪した症状の内容を確定すべき義務を負っている。しかるに,被告BはAの腹部を触診したのみで適切な処置を講じなかった。また,被告Bは同月3日の診断では骨盤腹膜炎の疑いを持ったが,既に同年2月24日には卵巣腫瘤の可能性を疑っていたのであれば,その骨盤腹膜炎の要因を精査し,卵巣の病変と内容を確定すべき義務を負っていた。しかるに,被告Bはこれを怠った。さらに,被告Bは,Aにつき骨盤腹膜炎を疑ったにもかかわらず,転院先の県病院に対する紹介状を追加で作成するなどの方法により,県病院に患者の正確な情報を提供することを怠った。(被告らの主張)ア被告BがAの卵巣癌に気付かなかったという原告らの主張は否認する。被告Bは,平成8年2月24日,Aにつき卵巣腫瘤の可能性を考えていた。ただ,精密検査を経た上でないと診断も告知もできないと考え,Aには子宮筋腫だろうと述べたに過ぎない。イ被告BがAの卵巣異常に気付いていたとしても適切な処置を講じなかったという原告らの主張は争う。卵巣癌の診断には, 知もできないと考え,Aには子宮筋腫だろうと述べたに過ぎない。イ被告BがAの卵巣異常に気付いていたとしても適切な処置を講じなかったという原告らの主張は争う。 つき卵巣腫瘤の可能性を考えていた。ただ,精密検査を経た上でないと診断も告知もできないと考え,Aには子宮筋腫だろうと述べたに過ぎない。イ被告BがAの卵巣異常に気付いていたとしても適切な処置を講じなかったという原告らの主張は争う。卵巣癌の診断には, 知もできないと考え,Aには子宮筋腫だろうと述べたに過ぎない。イ被告BがAの卵巣異常に気付いていたとしても適切な処置を講じなかったという原告らの主張は争う。卵巣癌の診断には,内診,超音波検査,腫瘍マーカー,CT,MRIなどが重ねて行われるが,自らの手で行い得ない検査は,検査機関に対して検査依頼をすることになる。しかし,検査依頼と検査実施日の設定,あるいは検査依頼と検査結果報告までには,検査の種類によっては数日ないし2週間を要するのが通常であって,これら諸検査すべてを即日若しくはわずかの日数で行い,その検査結果を得て,卵巣癌と診断することは極めて困難若しくは不可能である。しかも,腫瘤が発見された場合,1週間から2週間,その変化の状況を観察するのは通常のことであるから,この時期に卵巣癌の診断をしなかったこと自体が過失ということはできない。(ア) 平成8年2月24日について被告Bは,問診及び経腹式超音波検査所見により,卵巣腫瘤の可能性もあると考えたが,精密な検査としてMRIなどを経た上でないと,うかつに診断も告知もできないと考え,Aには子宮筋腫だろうと述べたに過ぎない。被告Bは,同時に経過を見ながら再度超音波検査,MRI検査を予定した。また,被告Bは,腫瘤を子宮筋腫と考えてその旨の診断名を記載しているが,同時に卵巣腫瘍の可能性も考えており,超音波検査,MRI検査を重ねながらその時々の情報を加えて腫瘤に関する確定診断に向けていくのが医療の実際であるから,結果的に子宮筋腫ではなく卵巣癌であった事実をもって被告Bの誤診とするのは,医療における診断についての正しい理解ではない。(イ) 平成8年2月26日について被告Bは,経膣式超音波検査を行いAの卵巣を診ようとしたが,腫瘤 をもって被告Bの誤診とするのは,医療における診断についての正しい理解ではない。(イ) 平成8年2月26日について被告Bは,経膣式超音波検査を行いAの卵巣を診ようとしたが,腫瘤に阻まれて確認できなかった。そこで,診断のためには,2,3日経過を見て再度,経腹式超音波検査を行った上で,土谷総合病院にMRI検査を依頼することにした。 日について被告Bは,経膣式超音波検査を行いAの卵巣を診ようとしたが,腫瘤 をもって被告Bの誤診とするのは,医療における診断についての正しい理解ではない。(イ) 平成8年2月26日について被告Bは,経膣式超音波検査を行いAの卵巣を診ようとしたが,腫瘤に阻まれて確認できなかった。そこで,診断のためには,2,3日経過を見て再度,経腹式超音波検査を行った上で,土谷総合病院にMRI検査を依頼することにした。ただ,同月29日は被告病院の休診日であり,同年3月2日は土谷総合病院の休診日であったことから,同月1日に再度,経腹式超音波検査を行う旨Aに伝えたものである。(ウ) 平成8年3月1日についてAは,被告病院来院時,既に県病院への転院を決めており,その旨申し出た。被告BはAに対して体癌検診やMRI検査を勧めたが,Aはこれに応ぜず転院の意思は固かった。そこで,被告Bは,白血球数だけは知りたいと考え末梢血液検査を行ったがそれ以上に詳しい各種検査ができる状況ではなかった。(エ) 平成8年3月3日について被告Bは,Aを診察し,骨盤腹膜炎を疑ったが,翌日の同月4日には県病院を受診予定と聞かされた。(3) 因果関係(原告らの主張)被告Bの前記・及び・の義務違反によって,Aは卵巣癌を早期に発見し適切な治療を受ける機会を奪われ,その結果,平成9年2月28日に死亡するに至った。また,仮に被告Bが平成8年2月24日に卵巣の異常を読みとっていたとすれば,進行の速い癌であるから,Aの卵巣に明らかな異常が読みとれた同日から同年3月4日の転院までの10日間や,同年3月13日の手術までの19日間の違いは生存率を大きく左右する。よって,少なくとも被告Bが同年2月24日に転院措置等を緊急にとっていれば,Aは平成9年2月28日に死亡することはなかった。 なお,患 3日の手術までの19日間の違いは生存率を大きく左右する。よって,少なくとも被告Bが同年2月24日に転院措置等を緊急にとっていれば,Aは平成9年2月28日に死亡することはなかった。 なお,患者側である原告らに厳格に立証責任を負わせるのは酷であるから,因果関係の立証は,医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されれば医師は患者が上記可能性を侵害されたことによって被った損害を賠償すべきであり,この程度まで立証責任は緩和されるべきである。 を緊急にとっていれば,Aは平成9年2月28日に死亡することはなかった。 なお,患者側である原告らに厳格に立証責任を負わせるのは酷であるから,因果関係の立証は,医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されれば医師は患者が上記可能性を侵害されたことによって被った損害を賠償すべきであり,この程度まで立証責任は緩和されるべきである。(被告らの主張)因果関係に関する原告らの主張は争う。被告Bが平成8年2月24日から同年3月3日までの4回の受診において,仮に卵巣癌と診断し直ちに上位の診療機関に転院措置が取られたとしても,県病院での初診である同年3月4日までには最大9日間,あるいは紹介状交付の同月1日までは最大6日間の差があるに過ぎず,この期間の違いが卵巣癌に基づく死亡の結果に影響を与えたとは医学的にはいえない。(4) 損害(原告らの主張)ア逸失利益 7883万4654円イ慰謝料 2200万円ウ弁護士費用 1000万円原告らは,これら合計1億1083万4654円をそれぞれ2分の1ずつ相続した。よって,原告らは,被告らに対し,連帯して不法行為ないし債務不履行に基づいて各金5541万7327円及びこれらに対する不法行為の結果発生の日である平成9年2月28日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による各遅延損害金の支払を求める。(被告らの主張)原告らの損害に関する主張は争う。なお,Aの精神的苦痛は人工肛門造設にあったから,Aに癌告知がなされ,Aが の年5分の割合による各遅延損害金の支払を求める。(被告らの主張)原告らの損害に関する主張は争う。なお,Aの精神的苦痛は人工肛門造設にあったから,Aに癌告知がなされ,Aが医師と共に癌に勝つために前向きな気持ちになれば,人工肛門造設による苦痛は違っていたかもしれない。第3 当裁判所の判断 1 前記争いのない事実等,証拠(甲1ないし4,5の1・2,6,9ないし11,12の1・2,14ないし18,26,29ないし31,39の1ないし3,58ないし62,64,66,74,乙1,3,4,7ないし11,29,証人E,原告C本人,被告B本人,各鑑定)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。(1) 不妊治療(平成8年2月24日より前)の経緯ア治療に至った経緯小学校の教員であったAと原告Cは昭和62年11月に結婚したが,なかなか子どもに恵まれなかったため,Aは土谷総合病院で不妊治療を受けた。 26,29ないし31,39の1ないし3,58ないし62,64,66,74,乙1,3,4,7ないし11,29,証人E,原告C本人,被告B本人,各鑑定)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。(1) 不妊治療(平成8年2月24日より前)の経緯ア治療に至った経緯小学校の教員であったAと原告Cは昭和62年11月に結婚したが,なかなか子どもに恵まれなかったため,Aは土谷総合病院で不妊治療を受けた。当時,被告Bも同院に勤務しており,Aの治療に当たったことがあった。不妊治療の結果,Aは妊娠し,平成3年5月4日に第1子である原告Dを出産した。Aは,出産の後,教員として仕事に復帰したが,自己の体調管理に気を配っていたことから,平成4年に不正出血についての診察と子宮癌検診を受けることにした。当時,被告Bは土谷総合病院を退職し被告病院を設立・運営していたが,Aは土谷総合病院で被告Bから診察を受けたこともあって同人に親近感を抱いており,また,有職者であったAにとって被告病院が土曜日も診察を行っており好都合であったことから,同年7月18日に同院で診察と子宮癌検診を受けた。癌検診の結果は「異型細胞を認めるが悪性の疑いはない」というクラスⅡで異常なしとされ,1年後に再検診を受けるようにというものであった であったことから,同年7月18日に同院で診察と子宮癌検診を受けた。癌検診の結果は「異型細胞を認めるが悪性の疑いはない」というクラスⅡで異常なしとされ,1年後に再検診を受けるようにというものであった。それから1年した平成5年7月30日,Aは被告病院を訪れ子宮癌検診を受けた。その際,Aは被告Bに対し子どもがもう1人欲しい旨述べ,被告病院で不妊治療を受けることになった。なお,癌検診の結果はクラスⅡで異常なしとされた。イ治療の内容(ア) 平成5年11月27日からAに対する不妊治療が始まった。基礎体温は二相性を示していたが,同月30日に行われた子宮卵管造影によると右卵管閉塞が認められ,同年12月1日に左卵管采周囲癒着が認められたため,Aの不妊の原因の1つである卵管因子についての治療として,通気法,すなわち子宮腔内に炭酸ガスを一定の圧で注入して卵管の疎通性を検査すると共に不妊の治療として用いられる低侵襲的な方法が毎周期ごとに行われることになった。しかし,半年間にわたって通気法が行われたが妊娠に至らなかったため,被告Bは平成6年5月28日に夫婦間人工授精を勧めたが原告Cがこれを望まなかった。 1日に左卵管采周囲癒着が認められたため,Aの不妊の原因の1つである卵管因子についての治療として,通気法,すなわち子宮腔内に炭酸ガスを一定の圧で注入して卵管の疎通性を検査すると共に不妊の治療として用いられる低侵襲的な方法が毎周期ごとに行われることになった。しかし,半年間にわたって通気法が行われたが妊娠に至らなかったため,被告Bは平成6年5月28日に夫婦間人工授精を勧めたが原告Cがこれを望まなかった。そこで,同年6月1日から経膣式超音波検査により卵胞の状態を確認して排卵日を推定し性交の日を指示するという治療法がとられることになった。この経膣式超音波検査は,同日から平成8年1月27日まで,ほぼ1月ごとに,合計15回にわたって行われた。被告Bは,経膣式超音波検査を行う際にはプローベを子宮に沿って挿入する必要があることから,子宮とその大きさや方向を確認し,卵巣を探しそのおおまかな位置を確認するため毎回内診を行っていたが,平成8年1月27日までの内診において異常を認めたことはなかった。(イ) 被告Bは,治療の都度,基礎体温のチェックを行 確認し,卵巣を探しそのおおまかな位置を確認するため毎回内診を行っていたが,平成8年1月27日までの内診において異常を認めたことはなかった。(イ) 被告Bは,治療の都度,基礎体温のチェックを行っていたが,基礎体温表上平成6年6月25日に無排卵になったことから,通気法を継続しながらも同日から排卵誘発剤であるクロミッドの処方を開始した。しかし,クロミッドによる排卵誘発も効かなくなってきたために,より強力な排卵誘発剤であるHMG-HCGを注射するとの治療が平成6年9月6日から開始された。また,同年12月10日からは夫婦間人工授精が開始され,平成8年1月27日まで行われた。(ウ) 平成7年6月12日,通気法を施術したが,左卵管の通りも悪くなったことから,同年7月15日から通水法,すなわち子宮腔内に生理食塩水を注入して卵管の疎通性を検査すると共に卵管の疎通性改善を目的とする治療的診断法が開始され,平成8年1月20日まで6回にわたって行われた。(エ) これら不妊治療のために,Aは,当初は月に1,2回の割合で,後には月に4,5回の割合で被告病院に通院した。ウ Aの主訴(ア) 不妊治療の継続中,Aは被告病院において次のような症状を訴えた。a 平成6年4月2日目がかゆい5月28日かゆみ(+)12月26日月経痛(++) 左下腹痛b 平成7年5月17日 2,3日前からせきが出る。 療的診断法が開始され,平成8年1月20日まで6回にわたって行われた。(エ) これら不妊治療のために,Aは,当初は月に1,2回の割合で,後には月に4,5回の割合で被告病院に通院した。ウ Aの主訴(ア) 不妊治療の継続中,Aは被告病院において次のような症状を訴えた。a 平成6年4月2日目がかゆい5月28日かゆみ(+)12月26日月経痛(++) 左下腹痛b 平成7年5月17日 2,3日前からせきが出る。7月21日便秘気味で薬希望9月27日胃が重い。10月28日風邪をひいた。薬希望11月18日風邪。だるい。11月25日咽頭痛 37.2度せき背部痛(+) 9月27日胃が重い。10月28日風邪をひいた。薬希望11月18日風邪。だるい。11月25日咽頭痛 37.2度せき背部痛(+)(イ) また,被告Bは治療の都度,Aの基礎体温表を確認していたが,Aは,基礎体温表の備考欄に次のとおり体調の変化等を記載していた。a 平成7年3月24日腹不快3月25日腹痛(夕から夜)3月28日夕から腹痛4月9日のど痛4月16日声がれ(仕事上)5月4日微熱気持ち悪い5月5日微熱風邪薬5月6日微熱風邪薬5月7日風邪薬5月8日せき風邪薬5月9日せき風邪薬5月10日せき風邪薬5月16日せき5月30日夜下腹不快少6月20日少し赤っぽいおりもの多6月22日~23日トイレ2回6月30日~7月1日白いのり状,寝不足7月15日~16日寝不足7月17日赤っぽいねばりのおりもの(2回)7月22日少しねばり状のおりもの8月10日夜左下腹痛8月21日夜おりもの8月22日おりもの9月1日朝方少しのど痛10月10日夜赤っぽいおりもの少11月9日白茶っぽいおりものときどき下腹部不快11月14日体少不調風邪?11月24日夕方 10月10日夜赤っぽいおりもの少11月9日白茶っぽいおりものときどき下腹部不快11月14日体少不調風邪?11月24日夕方より発熱背肩痛夜10時 37.7度11月25日朝37.5度11月27日~28日寝不足気味12月6日せきせき止め12月8日声がれせき12月9日声がれせき12月9日~10日微熱12月11日~12日夜特にせき12月12日おりもの茶っぽい12月13日朝下腹不快12月31日夜少左下重苦しいb 平成8年1月1日ときどき左腹チクチク1月5日~6日途中目が覚め寝付けず1月7日~8日寝付けない1月13日下腹部不快感1月20日通水の後出血1月21日少し出血1月22日少々出血1月29日左下腹痛1月30日左下腹痛2月7日午後腹不快体不調2月8日午後腹不快体不調2月9日体不調2月10日体不調2月11日体不調2月14日ときどき出血少々2月15日便秘2月16日便秘2月17日便秘2月18日便秘左下腹痛2月19日左下右下2月20日おりもの左下右下2月2 6日途中目が覚め寝付けず1月7日~8日寝付けない1月13日下腹部不快感1月20日通水の後出血1月21日少し出血1月22日少々出血1月29日左下腹痛1月30日左下腹痛2月7日午後腹不快体不調2月8日午後腹不快体不調2月9日体不調2月10日体不調2月11日体不調2月14日ときどき出血少々2月15日便秘2月16日便秘2月17日便秘2月18日便秘左下腹痛2月19日左下右下2月20日おりもの左下右下2月2 16日便秘2月17日便秘2月18日便秘左下腹痛2月19日左下右下2月20日おりもの左下右下2月21日おりもの左下右下2月22日おりもの左下右下便秘2月23日おりもの左下右下便秘2月24日おりもの左下右下(ウ) さらに,Aは,原告Cに対し,平成6年12月ころ体重は増えていないのにスカートのサイズが1つ大きくなったこと,髪が抜けるようになったことを訴えた。また,平成7年秋ころには疲れや便秘を訴えることが増えた。(2) 平成8年2月24日以降の経緯ア同日(土曜日)についてAは通水法を受けるために被告病院を訪れ,看護師に対して平成8年2月18日ころから下腹部の痛み,頻尿,残尿感があり,便秘気味で3日間排便がなく,おりものが増え,においがある旨訴えた。被告Bは看護師からこれらAの主訴について報告を受けて診察に当たった。被告病院では患者に通水法のみを行う場合,通常内診は行っていなかったが,当日はAから上記のような訴えがあり,また,A本人から直接,左下腹部に膨満感がある旨訴えられたため,被告BはAに対し内診を行ったところ,下腹部が張っており,子宮は前傾前屈,子宮体部はでこぼこして固くなっていて,超手拳大の筋腫様の腫瘤を下腹部に認めた。なお,内診によって両側付属器には異常は認められなかった。被告Bは,前回,超音波検査を行った平成8年1月27日の内診では筋腫様のものはなかったのに,およそ1か月の間にこのように大きな腫瘤を認めたことから,驚いて「ええっ。」と声をあげてしまった。それから,Aに対し「子宮筋腫ができているから。」と言って,経腹式超音波検査を行った のはなかったのに,およそ1か月の間にこのように大きな腫瘤を認めたことから,驚いて「ええっ。」と声をあげてしまった。それから,Aに対し「子宮筋腫ができているから。」と言って,経腹式超音波検査を行ったところ,正常な子宮は認められず,でこぼこした塊が認められた。 瘤を認めたことから,驚いて「ええっ。」と声をあげてしまった。それから,Aに対し「子宮筋腫ができているから。」と言って,経腹式超音波検査を行った のはなかったのに,およそ1か月の間にこのように大きな腫瘤を認めたことから,驚いて「ええっ。」と声をあげてしまった。それから,Aに対し「子宮筋腫ができているから。」と言って,経腹式超音波検査を行ったところ,正常な子宮は認められず,でこぼこした塊が認められた。被告Bは,内診所見と超音波検査の結果,Aに子宮筋腫ができたと考えたが,同時に短期間の間にこれだけ急激に大きな塊ができていたことから卵巣腫瘍の可能性もあると考えた。ただし,さらにMRI等の検査を行った上で明らかにならなければ卵巣腫瘍の可能性がある旨をAに述べることはできないと判断したため,Aには「子宮筋腫ができている。」と述べた。そして,Aの卵管が潰れてしまっていないか否かを検査するために通水法を行ったが,従前と変化はなく通水は可能であった。被告Bは,Aの状態を観察する必要があると判断すると共に,不妊治療も継続して行うことにし,クロミッドを処方して2日後に排卵誘発剤の注射をするために来院するよう指示し,カルテには,「卵巣腫瘍の可能性もあり」と記載した。イ平成8年2月26日(月曜日)について被告Bは,Aの卵巣を確認するために再度超音波検査を行うことにし,看護師に対しAが来院したら注射をして帰らせるのではなく被告Bに声を掛けるように予め伝えていた。その日の仕事が終わりAが被告病院に来院したので,被告BはAに対して経膣式超音波検査を行ったところ,腫瘤に阻まれて卵巣は全く見ることができない状態であった。そのため,被告Bはさらに経過を見て経腹式超音波検査を行い,その上でMRI検査を土谷総合病院に依頼することにし,同年3月1日に来院するよう指示した。それと同時に,被告BはいまだMRI検査等を行っていない段階では卵巣腫瘍の可能性がある旨をAに伝えることはできないと考え I検査を土谷総合病院に依頼することにし,同年3月1日に来院するよう指示した。それと同時に,被告BはいまだMRI検査等を行っていない段階では卵巣腫瘍の可能性がある旨をAに伝えることはできないと考えていたことから,Aに対しては,子宮筋腫が急に大きくなっているので岸田産婦人科で筋腫を摘出する手術を受けるよう勧めた。また,被告BはAに対し継続して不妊治療も行い,排卵誘発剤であるフェルテノームを注射した。 I検査を土谷総合病院に依頼することにし,同年3月1日に来院するよう指示した。それと同時に,被告BはいまだMRI検査等を行っていない段階では卵巣腫瘍の可能性がある旨をAに伝えることはできないと考えていたことから,Aに対しては,子宮筋腫が急に大きくなっているので岸田産婦人科で筋腫を摘出する手術を受けるよう勧めた。また,被告BはAに対し継続して不妊治療も行い,排卵誘発剤であるフェルテノームを注射した。Aは,帰宅後,子宮筋腫の手術を行うことになるかもしれないと原告Cに話し,さらにAの両親であるFとGにその旨相談した。すると,Fから,手術をするのであれば,Gもかつて手術したことがありAの実家にも近く,医師の評判もよい総合病院である県病院で行う方がよいと助言された。Aと原告Cは,他の医師に診断してもらうのもよいであろうと考え,県病院への転院を決めた。ウ平成8年3月1日(金曜日)について被告BはAの卵巣の状態について再度超音波検査を行い,その診断によっては土谷総合病院にMRI検査を依頼する予定にしていたが,Aは被告病院を訪れるとすぐに,県病院に転院するので紹介状を書いてほしいと言った。被告Bは,諸検査を行いデータをそろえた上で他院に紹介するよう予定していたことから,Aに対し,MRI検査等を行ってからにしてはどうかと言って,押し問答になった。結局,被告Bは,超音波検査を行うことなく県病院への紹介状を作成したが,Aの面前であり未だMRI検査等を行っていなかったことから,卵巣腫瘍については触れずに,診断名として「続発性不妊症,子宮筋腫」と記載し,「ここ数ヶ月急速に増大(超手拳大)子宮筋腫と思います。」「挙児希望と相まって,核手術を希望しておられます。」とした。そして,「HSG(ママ)再検,MRIなどは施行していませんが,今後 」と記載し,「ここ数ヶ月急速に増大(超手拳大)子宮筋腫と思います。」「挙児希望と相まって,核手術を希望しておられます。」とした。そして,「HSG(ママ)再検,MRIなどは施行していませんが,今後の治療を貴院にて希望しておられますので,ご紹介申し上げます。」と記載した。その上で,被告Bは,Aに対し,MRI検査と体癌検査を県病院で行うよう指導した。エ平成8年3月3日(日曜日)についてAは朝から腹痛を訴え,病院で診察を受けることにしたが,休日であったためどこの病院にかかればよいのか分からなかった。 を希望しておられます。」とした。そして,「HSG(ママ)再検,MRIなどは施行していませんが,今後の治療を貴院にて希望しておられますので,ご紹介申し上げます。」と記載した。その上で,被告Bは,Aに対し,MRI検査と体癌検査を県病院で行うよう指導した。エ平成8年3月3日(日曜日)についてAは朝から腹痛を訴え,病院で診察を受けることにしたが,休日であったためどこの病院にかかればよいのか分からなかった。そこで,Aは被告Bに相談するため連絡を取ったところ,被告Bから休診日で検査などはできないが応急措置をするので被告病院に来るよう言われ,被告Bの診察を受けた。被告Bは,休診日であり看護師もいなかったことから内診は行わず腹部を触診し,Aが骨盤腹膜炎を起こしていると診断した。そして,翌日には県病院を受診するとのことであったから,腹膜炎も含めて県病院で精査してもらうよう指導し,抗生物質と消炎鎮痛剤を処方した。(3) 県病院での経緯ア Aは,平成8年3月4日,仕事を休んで県病院を受診した。E医師は,事前になされた予診,経腹式超音波検査及び血液検査の結果を見た上でAを診察した。内診の結果,腹部中央右側に手拳大の,左側に下手拳大の腫瘤に触れたが,内診だけでは腫瘤が子宮と卵巣のいずれのものか判別するのは困難であったものの,腫瘤の境界が不鮮明で少し柔らかかったことから子宮筋腫のみならず卵巣腫瘍も疑った。その上で,内診所見として骨盤腹膜炎,膿瘍ないし卵巣腫瘍を疑い,経膣式超音波検査を行うよう指示した。これを受けて県病院のH医師が経膣式超音波検査を行ったところ,内部エコーからして子宮筋腫とは考えにくいと判断した。E医師は,超音波検査結果と ないし卵巣腫瘍を疑い,経膣式超音波検査を行うよう指示した。これを受けて県病院のH医師が経膣式超音波検査を行ったところ,内部エコーからして子宮筋腫とは考えにくいと判断した。E医師は,超音波検査結果と内診所見からして,卵巣腫瘍の可能性が高いと判断し,腫瘍マーカー検査をオーダーし採血すると共に,手術が必要になるものと考え術前検査を依頼した。さらに,E医師は早急にMRI検査を行う必要があると認めたが,県病院でMRI検査を受けるには予約をして1か月ほど順番を待たなければならないため,土谷総合病院にMRI検査を緊急依頼したところ,同日中に検査ができることになった。そこで,Aに対して,土谷総合病院で検査を受けること,発熱し腹痛がひどいようであれば夜でも構わないので入院することを指示した。 と共に,手術が必要になるものと考え術前検査を依頼した。さらに,E医師は早急にMRI検査を行う必要があると認めたが,県病院でMRI検査を受けるには予約をして1か月ほど順番を待たなければならないため,土谷総合病院にMRI検査を緊急依頼したところ,同日中に検査ができることになった。そこで,Aに対して,土谷総合病院で検査を受けること,発熱し腹痛がひどいようであれば夜でも構わないので入院することを指示した。Aは,土谷総合病院に行き,MRI検査を受け,帰宅した。なお,土谷総合病院からのMRI検査の報告書によると,子宮のサイズはほぼ正常で明らかな異常所見はないが,子宮を全周性に取り囲むようにして骨盤腔内下方を占める巨大な腫瘤が認められること,この腫瘤は2つの部分に分かれており,正常の卵巣が全く同定できないことから両側卵巣に由来する腫瘤と考えられること,腫瘤は内部に壊死や嚢胞性分を伴う充実性の腫瘤と考えられ,その性状からすると膿瘍ではなく両側卵巣の悪性腫瘍が疑われることとされ,E医師の内診所見とほぼ一致していた。イ平成8年3月5日,Aはひどい腹痛を訴えたため,同日夜に県病院に入院した。担当医は,Aと原告Cに対し,MRI検査や卵管造影検査により子宮付属器辺りに腫瘤があり,念のため消化器の検査等も行うが,いずれにしても手術が必要であることを伝え,Aと原告Cはこれを了解した。E医師は,平成8年3月6日にAを内診したが,2日前の同月4日 器辺りに腫瘤があり,念のため消化器の検査等も行うが,いずれにしても手術が必要であることを伝え,Aと原告Cはこれを了解した。E医師は,平成8年3月6日にAを内診したが,2日前の同月4日よりもさらに腫瘤が増大していた。ウ E医師は,平成8年3月11日,Aと原告Cに対し,インフォームドコンセントを行った。その際,MRI検査の結果を示し,子宮の前後に腫瘤があり,両側卵巣腫瘍の可能性があること,手術により子宮,両側付属器,腸を切除するが,場合によっては人工肛門を造設すること,可能性としては非腫瘍性の膿瘍と腫瘍性のものがあるが,卵巣腫瘍であっても良性群,中間群,悪性群があることを説明した。Aと原告Cは,子宮筋腫と言われていたがそうではないのかとの疑問を述べたところ,主治医のI医師は,内診上は子宮筋腫が考えられるがMRI検査の結果そうではないようである旨説明し,同月13日に手術を行うことになった。 より子宮,両側付属器,腸を切除するが,場合によっては人工肛門を造設すること,可能性としては非腫瘍性の膿瘍と腫瘍性のものがあるが,卵巣腫瘍であっても良性群,中間群,悪性群があることを説明した。Aと原告Cは,子宮筋腫と言われていたがそうではないのかとの疑問を述べたところ,主治医のI医師は,内診上は子宮筋腫が考えられるがMRI検査の結果そうではないようである旨説明し,同月13日に手術を行うことになった。E医師は,従前の内診所見やMRI検査の結果に加え,平成8年3月12日に出た腫瘍マーカー検査の結果から,99.9%卵巣癌に間違いがないと考えた。そこで,同日,原告Cに対し,卵巣癌の可能性が高いことを説明したが,その席でAには卵巣癌の可能性が高いことについては伝えないことになった。エ平成8年3月13日午後5時すぎから午後11時すぎまで,Aの手術が行われた。開腹したところ,左右卵巣は超手拳大に腫大しており,両側卵巣腫瘍,子宮,大腸,小腸が癒着して塊になっていた。組織の一部を切り取り,緊急に病理検査に出したところ卵巣癌であることが確定した。そこで,子宮膣上部,両側付属器,大網,虫垂,下行結腸から直腸を切除し,腹腔内にリザーバーを設置し,人工肛門が造設された。オ E医師は,平成8年3月14日,原告CとFに対し,手術 が確定した。そこで,子宮膣上部,両側付属器,大網,虫垂,下行結腸から直腸を切除し,腹腔内にリザーバーを設置し,人工肛門が造設された。オ E医師は,平成8年3月14日,原告CとFに対し,手術の結果卵巣癌であったこと,手術の内容,今後の診療方針等を説明した。そして,Aに対しては,卵巣癌であることは告知しないで,卵巣腫瘍が炎症を起こし,腸と癒着していたために人工肛門造設となったが,腫瘍の組織型は中間群であり,念のため今後化学療法を行うと説明することになった。Fは,Aが被告病院で不妊治療を受けていたことから,卵巣癌であったことは1か月に1回診察を受けてもわからないものなのかと尋ねた。これに対し,I医師は,Aの卵巣癌が極めて急激に成長したものと考えられ,そのため被告病院では卵巣癌と分からなかったのであろうと答えた。カその後,E医師は,Aの胃大腸には異常がなく,手術後の摘出卵巣の組織検査により漿液性腺癌であるとされたことから,原発性の卵巣癌であると確定診断した。また,CT検査等により肝実質への転移は否定されたことから,Aの卵巣癌のステージはⅢC期とした。 らないものなのかと尋ねた。これに対し,I医師は,Aの卵巣癌が極めて急激に成長したものと考えられ,そのため被告病院では卵巣癌と分からなかったのであろうと答えた。カその後,E医師は,Aの胃大腸には異常がなく,手術後の摘出卵巣の組織検査により漿液性腺癌であるとされたことから,原発性の卵巣癌であると確定診断した。また,CT検査等により肝実質への転移は否定されたことから,Aの卵巣癌のステージはⅢC期とした。なお,原発性卵巣癌の進行期の分類FIGOによると,腫瘍が一側又は両側の卵巣に存在し,骨盤外の腹膜播種あるいは後腹膜又は鼡径部のリンパ節転移を認めるもの,腫瘍は小骨盤に限局しているが小腸や大網に組織学的転移の認められるもの及び肝表面への転移の認められるものがⅢ期とされる。そして,ⅢC期とは,直径2㎝を超える腹腔内播種並びに後腹膜又は鼡径リンパ節に転移の認められるものとされている。キ Aは,平成9年2月28日,県病院で死亡した。死因は卵巣癌であったが,最期まで卵巣癌であることはAには告知されなかった。(4) A死亡後の経緯ア Fは,平成9 とされている。キ Aは,平成9年2月28日,県病院で死亡した。死因は卵巣癌であったが,最期まで卵巣癌であることはAには告知されなかった。(4) A死亡後の経緯ア Fは,平成9年9月17日,被告病院を訪れて被告Bから説明を受けた。被告Bは,Fに対し,初診からの診療経過を説明し,平成8年2月24日の診察の際には内診と超音波検査を行ったところ,子宮と卵巣にそれまでなかった塊が突然,現れたことを説明した。原告CとFは,平成9年10月3日に再度,被告病院を訪れ,被告Bに説明を求めた。被告Bは,診療経過について詳細に説明すると共に,平成8年2月24日の段階では子宮筋腫と診断した旨説明した。イ原告CとFは,平成9年10月23日,県病院を訪れてE医師と面談した。E医師は,原告Cらに対し県病院での診療の経過を説明すると共に,被告BがAの卵巣癌を見落としたか否かは,被告病院で診察を受けた際に撮影された超音波検査の写真を専門家に見せればわかるのではないかと話した。ウ被告Bは,今回の事態を防ぐことができたのではないかと思い悩んでいたため,平成10年12月末ころ,県病院を訪れE医師にAの被告病院におけるカルテを示し,そこに添付されている超音波検査の写真に卵巣癌が写っているのか見てほしい旨話した。 の診療の経過を説明すると共に,被告BがAの卵巣癌を見落としたか否かは,被告病院で診察を受けた際に撮影された超音波検査の写真を専門家に見せればわかるのではないかと話した。ウ被告Bは,今回の事態を防ぐことができたのではないかと思い悩んでいたため,平成10年12月末ころ,県病院を訪れE医師にAの被告病院におけるカルテを示し,そこに添付されている超音波検査の写真に卵巣癌が写っているのか見てほしい旨話した。E医師は県病院の超音波のエキスパートであるH医師にその写真を見せたところ,H医師は平成8年2月24日より前の写真からは卵巣癌を発見することはできない旨述べた。被告Bは,同様に他の2名の専門家医師にカルテ添付の写真を見せたが,両名ともに平成8年2月24日より前に卵巣癌を発見することはできない旨述べた。2 争点(1)(平成8年2月24日より前における過失の有無)について前項の認定事実を前提に,被告Bが平成8年 ,両名ともに平成8年2月24日より前に卵巣癌を発見することはできない旨述べた。2 争点(1)(平成8年2月24日より前における過失の有無)について前項の認定事実を前提に,被告Bが平成8年2月24日より前にAの卵巣の異常に気付き適切な処置をとるべき義務に違反したか否かについて検討する。(1) まず,被告BがAに不妊治療を行った際,不妊治療を行う医師としてなすべき義務を果たしていれば,Aに何らかの異常が生じたことに気付きMRI検査等の適切な検査によって早期に卵巣癌を発見することができたにもかかわらず,被告Bが不妊治療を行う医師としてなすべき義務を果たさなかったために,Aの卵巣癌を早期に発見することができなかったか否かという点について検討する。そもそも不妊治療を行う医師に原告らが主張するような多岐にわたる義務が認められるのかという点が問題ではあるが,仮に不妊治療を行う医師にかかる義務が課されているとしても,被告Bがこれら義務に違反して賠償義務があると認められるためには,不妊治療が実施された各時期においてAに何らかの異常があっただけでは足りず,その時点において既にAが卵巣癌に罹患しており,かつ,その卵巣癌を発見できたことが当然の前提となる。例えば,原告らは,被告BのAに対するクロミッド投与につき,平成6年6月25日に今周期無排卵であるとしてクロミッドを安易に投与しているが,本来であれば無排卵の原因を追求すべきであり,かかる処置をとっていればその時点で卵巣の異常を発見でき,卵巣癌の早期発見ができたはずであると主張する。 っただけでは足りず,その時点において既にAが卵巣癌に罹患しており,かつ,その卵巣癌を発見できたことが当然の前提となる。例えば,原告らは,被告BのAに対するクロミッド投与につき,平成6年6月25日に今周期無排卵であるとしてクロミッドを安易に投与しているが,本来であれば無排卵の原因を追求すべきであり,かかる処置をとっていればその時点で卵巣の異常を発見でき,卵巣癌の早期発見ができたはずであると主張する。しかしながら,上記の例でいえば,平成6年6月25日においてAがいまだ卵巣癌に罹患していなかった場合,被告Bが無排卵の原因を追及したか否かにかかわらず,Aの卵巣癌早期発見それ自体があり得ないので る。しかしながら,上記の例でいえば,平成6年6月25日においてAがいまだ卵巣癌に罹患していなかった場合,被告Bが無排卵の原因を追及したか否かにかかわらず,Aの卵巣癌早期発見それ自体があり得ないのであるから,不妊治療の内容のいかんを問わず,被告Bに本件における過失責任を認めることはできないのは当然である。したがって,原告らが主張する不法行為ないし債務不履行責任を認めるためには,各不妊治療の段階でAが卵巣癌に罹患していることについて,原告らが具体的に主張・立証しなければならない。かかる観点から検討すると,原告らの主張は,それぞれの不妊治療を実施した段階で何らかの異常が認められたはずであるという抽象的なものに止まっていて,被告Bに法的責任を負わせるために必要となる具体的な主張・立証に欠けているといわざるを得ない。もっとも,原告らは,平成8年2月24日にAの腫瘤が超手拳大であったことと,同年3月13日の県病院における手術の結果,Aの卵巣癌が合計420gであったことを根拠に計算を行い,平成7年8月21日にはAの卵巣癌を発見することができたはずである旨主張する。しかしながら,一般的にAの罹患した漿液性腺癌の発癌過程自体不明である(乙5,12,32,J鑑定)のに加え,原告らの計算の根拠である平成8年2月24日の「超手拳大」である卵巣癌の正確な重量を知ることは全く不可能である(J鑑定,K鑑定)上,同年3月13日の手術によって摘出された卵巣癌の重量それ自体も他の臓器と癒着していた(甲10,17,乙10)ことからすれば,組織検査報告書には摘出卵巣の重量として右卵巣が110g,左卵巣は310gである旨の記載はある(甲10,17)ものの,その正確な重量は不明といわざるを得ない(K鑑定)こと,上記のとおり癌の重量が推定値に過ぎない上,原告らの主張する 知ることは全く不可能である(J鑑定,K鑑定)上,同年3月13日の手術によって摘出された卵巣癌の重量それ自体も他の臓器と癒着していた(甲10,17,乙10)ことからすれば,組織検査報告書には摘出卵巣の重量として右卵巣が110g,左卵巣は310gである旨の記載はある(甲10,17)ものの,その正確な重量は不明といわざるを得ない(K鑑定)こと,上記のとおり癌の重量が推定値に過ぎない上,原告らの主張する として右卵巣が110g,左卵巣は310gである旨の記載はある(甲10,17)ものの,その正確な重量は不明といわざるを得ない(K鑑定)こと,上記のとおり癌の重量が推定値に過ぎない上,原告らの主張する計算式は癌が一定の速度で増殖することを前提としているが,そのような仮定自体に大きな問題がある(J鑑定)ことからすれば,平成7年8月21日には卵巣癌を発見することができたという原告らの上記主張は採用できない。また,原告らは,平成7年12月26日の経膣式超音波検査の写真に卵巣腫瘍が描写されていることを前提に,同日よりも1か月前である同年11月25日の診察日にも卵巣腫瘍を発見することができた旨主張するが,後記(2)のように,同年12月26日の時点において,経膣式超音波検査の写真には卵巣腫瘍を疑うべき所見は認められないというべきであるから,原告らのかかる主張はその前提を欠いており採用できない。よって,原告らの主張は失当というべきである。(2) 続いて,本件で被告Bが現に行った不妊治療において,同人がAの卵巣癌を発見することができたか否かという観点から被告Bの過失の有無を検討する。ア前記1(1)イ認定のとおり,被告BはAに対し平成8年1月27日まで15回の経膣式超音波検査を行ったことが認められるところ,経膣式超音波検査は子宮や卵巣などの臓器については内診と同じかそれ以上の情報を与えるものであり,特に卵巣癌の早期発見においては,内診よりも経膣式超音波検査の方がはるかに精度が高いとされている(J鑑定)こと,経膣式超音波検査の導入によって,より小さな腫瘍を的確に抽出できるようになった(甲37)ことからすれば,被告病院のカルテ(乙1)添付の経膣式超音波検査の各写真は,Aに卵巣癌の疑いの所見が認められるか否かを判断するにおいて によって,より小さな腫瘍を的確に抽出できるようになった(甲37)ことからすれば,被告病院のカルテ(乙1)添付の経膣式超音波検査の各写真は,Aに卵巣癌の疑いの所見が認められるか否かを判断するにおいて最も価値が高い証拠ということができる。 抽出できるようになった(甲37)ことからすれば,被告病院のカルテ(乙1)添付の経膣式超音波検査の各写真は,Aに卵巣癌の疑いの所見が認められるか否かを判断するにおいて によって,より小さな腫瘍を的確に抽出できるようになった(甲37)ことからすれば,被告病院のカルテ(乙1)添付の経膣式超音波検査の各写真は,Aに卵巣癌の疑いの所見が認められるか否かを判断するにおいて最も価値が高い証拠ということができる。そして,排卵誘発剤の使用により卵胞の発育及び卵巣全体の腫大傾向が見られる(甲24,58,64,乙31)ところ,平成7年12月26日以前の超音波検査の写真にはやや腫大傾向があるものの卵巣腫瘍を疑うべき所見は全くない(乙31,J鑑定)こと,平成8年1月27日の写真では卵巣の輪郭がややたどりにくいが異常所見とまでは断定できない上,臨床所見的にも同月20日から22日にかけて見られた出血も同月27日にはいったん治まっているので,同日において直ちにCTやMRIなどの検査を行うべき症状,所見にはなかったというべきである(乙31,J鑑定)こと,前記1(4)ウ認定のとおり,被告Bが県病院の超音波のエキスパートであるH医師を含め3人の専門家医師にカルテ添付の写真を見せたところ,いずれの医師からも平成8年2月24日より前の写真からは卵巣腫瘍を発見することはできないと回答されたこと,被告病院の超音波検査のための器械は本件当時において県病院の器械とほぼ同じ性能であったといえる(証人E)ことからすれば,経膣式超音波検査上,平成8年2月24日より前の段階でAが卵巣癌に罹患していたことを疑うべき所見を認めることはできない。イまた,前記1(1)イ認定のとおり,被告Bは経膣式超音波検査を行う際には毎回内診を行っていたところ,平成8年1月27日までの内診において異常所見を認めていないことが認められ,このことは,前記アの経膣式超音波検査所見と合致している。ウさらに,前記1(1)イ及びウ認定のとおり,Aは被告Bに対し不妊治療の際に 日までの内診において異常所見を認めていないことが認められ,このことは,前記アの経膣式超音波検査所見と合致している。ウさらに,前記1(1)イ及びウ認定のとおり,Aは被告Bに対し不妊治療の際に様々な症状を訴えると共に,基礎体温表の備考欄に体調の変化を記載しており,被告Bが診療の都度チェックしていたところ,Aは様々な症状を被告Bに対して訴えているけれども,卵巣癌は早期では無症状であることが多い(甲23,乙2,3,17,18)上,Aの主訴はいずれも継続的なものでもない。 は,前記アの経膣式超音波検査所見と合致している。ウさらに,前記1(1)イ及びウ認定のとおり,Aは被告Bに対し不妊治療の際に様々な症状を訴えると共に,基礎体温表の備考欄に体調の変化を記載しており,被告Bが診療の都度チェックしていたところ,Aは様々な症状を被告Bに対して訴えているけれども,卵巣癌は早期では無症状であることが多い(甲23,乙2,3,17,18)上,Aの主訴はいずれも継続的なものでもない。例えば,Aは平成7年12月13日に下腹の不快感を訴えているが継続性はないし,同月31日から平成8年1月1日までの腹痛も2日で改善し,次に下腹部不快感を訴えているのはその2週間近く経過した同月13日であることからも明らかなように,Aの主訴はその後に改善しているというべきである。したがって,同月27日以前の段階で被告BがAの主訴から卵巣癌を疑うべきであったとはいえない。エ前記アないしウの超音波検査所見,内診所見及び主訴の改善という点に加えて,前記1(3)カ認定のとおりAの卵巣癌の組織型は漿液性腺癌であるが,京都大学医学部産婦人科学産科学教室によれば,不妊治療中に判明した漿液性腺癌の8例中7例が既にⅢ期の進行癌であり,漿液性腺癌の発生の自然史そのものが極めて急速である可能性があり,初期の段階で発見することは平成8年当時困難であった(乙5)こと,大部分の進行した漿液性腺癌は突然発生していて早期発見は不可能であり,このことは不妊治療を行っていて継続的に患者の卵巣を観察していても同様であると言われている(乙12,32)こと,漿液性腺癌は急速に進行する癌であって発見が困難であることは産婦人科学会の常識である(乙31)こと,漿液性腺癌の場合,Ⅰ期癌で発見される癌とⅢないしⅣ期で発 であると言われている(乙12,32)こと,漿液性腺癌は急速に進行する癌であって発見が困難であることは産婦人科学会の常識である(乙31)こと,漿液性腺癌の場合,Ⅰ期癌で発見される癌とⅢないしⅣ期で発見される癌とでは同じ癌の異なる時期であるとはいえず,一般診療の中で進行癌に急速に進展する漿液性腺癌を早期に発見できる方法を知る者は誰もいないとも言われている(J鑑定)ことからすれば,平成8年2月24日より前の段階において,被告BはAの卵巣癌を発見することは極めて困難であったというべきであり,いずれにしても被告Bに過失を認めることはできない。 ,漿液性腺癌の場合,Ⅰ期癌で発見される癌とⅢないしⅣ期で発見される癌とでは同じ癌の異なる時期であるとはいえず,一般診療の中で進行癌に急速に進展する漿液性腺癌を早期に発見できる方法を知る者は誰もいないとも言われている(J鑑定)ことからすれば,平成8年2月24日より前の段階において,被告BはAの卵巣癌を発見することは極めて困難であったというべきであり,いずれにしても被告Bに過失を認めることはできない。(3) ところで,K鑑定によると,平成6年6月1日の時点で,既にAに超音波検査上の悪性所見,周囲との癒着,腫大の3点の異常所見が読み取れ,卵巣腫瘍を発見することができたとされる。しかしながら,婦人科腫瘍学を専門とする鑑定人Jや周産期医学・超音波診断学を専門とするLが指摘するように,排卵誘発剤の使用によって卵胞が発育し,卵巣が刺激され腫大するのは当然であって,K鑑定において悪性所見とされる断面像は,悪性の腫瘍ではなく,発育した卵胞というべきである(乙31,J鑑定)こと,K鑑定では日本超音波医学会診断基準委員会が作成した卵巣腫瘍のエコーパターン分類が用いられているが,同委員会で責任者としてその作成に当たったLによると,同分類は卵巣腫瘍と判断した後にそれを分類するための基準であって,単なる卵巣像を最初から腫瘍であるか否かという観点から分類するために使用すべきものではないところ,K鑑定において超音波検査の卵巣像を最初から腫瘍であるか否かということを含めて分類するために使用しているのは誤りである(乙31)こと,K鑑定によれば平成6年6月には既に卵巣癌が発生し,常識的な癌の発育速度からすれば平成8年3月にⅢC期の から腫瘍であるか否かということを含めて分類するために使用しているのは誤りである(乙31)こと,K鑑定によれば平成6年6月には既に卵巣癌が発生し,常識的な癌の発育速度からすれば平成8年3月にⅢC期の進行卵巣癌とされたことは全く矛盾がないとされるが,Aの癌は漿液性腺癌であって,前記(2)エ判示のとおり,急速に進行癌に進展するものであり,その自然史は未だ不明とされ,漿液性腺癌以外の常識的な癌の発育速度の概念が当てはまらないこと,K鑑定人の専門とする研究領域は不妊治療学・胎盤内分泌学等であって(乙34,35,原告代理人作成の平成14年2月5日付け鑑定人候補についてと題する書面,弁論の全趣旨),超音波検査の画像読み取りは必ずしもその専門分野とはいえないと考えられること,K鑑定において鑑定判断の前提としているM大学医学部産婦人科N助教授の経膣超音波断層法による卵巣腫瘍のスクリーニングに関する報告は,研究段階のものであり,画像診断的にも問題の多い研究であり,性格の大人しい卵巣癌だけを発見し得ているのであって,本件のような進行の速い卵巣癌の早期発見が可能であることを示すデーターではないことが窺われる(乙5,12,31,32)ことなどからすれば,K鑑定は採用することができない。 おいて鑑定判断の前提としているM大学医学部産婦人科N助教授の経膣超音波断層法による卵巣腫瘍のスクリーニングに関する報告は,研究段階のものであり,画像診断的にも問題の多い研究であり,性格の大人しい卵巣癌だけを発見し得ているのであって,本件のような進行の速い卵巣癌の早期発見が可能であることを示すデーターではないことが窺われる(乙5,12,31,32)ことなどからすれば,K鑑定は採用することができない。3 争点2(平成8年2月24日以降の過失の有無)について続いて,被告Bに同日以降過失が認められるか否かについて検討する。(1) 卵巣の異常に気付いていなかったか否かについてア原告らは,平成8年2月24日のカルテの「卵巣腫瘍の可能性」との記載は後日書き加えられたものであって,カルテが改ざんされている旨主張する。しかしながら,前記1(1)イ,(2)ア,イ,ウ認定のとおり,被告Bは従前の不妊治療の際には,超音波検査をおおむね1月に1回の割合で行ってきたのに対し,平成 って,カルテが改ざんされている旨主張する。しかしながら,前記1(1)イ,(2)ア,イ,ウ認定のとおり,被告Bは従前の不妊治療の際には,超音波検査をおおむね1月に1回の割合で行ってきたのに対し,平成8年2月24日の内診でAに異常を認めると,その2日後の26日にも超音波検査を行い,さらに,同年3月1日にも超音波検査を行う予定にしていたことが認められる。また,前記1(2)イ認定のとおり同年2月26日には被告Bはわざわざ看護師に対してAが来院したら注射を打って帰らせるだけではなく,被告Bに声を掛けるようにあらかじめ伝えていたことが認められ,被告BがAの症状に強い関心を有していたことが推認される。そして,被告Bは同年3月1日にAに対し卵巣腫瘍の診断には欠かせないMRI検査等を行うよう勧め,紹介状(甲9)には,卵巣腫瘍の可能性があるとの記載はないけれども,被告Bが紹介状を作成した時点でMRI検査等がまだ実施されておらず,県病院でそれらを実施するよう求める内容になっており,この紹介状を受け取ったE医師自らがその文面・体裁からして被告Bも卵巣腫瘍を疑っていたと見受けられる旨証言している。さらに,卵巣癌の手術を行った県病院がAに対し癌の告知をしなかったのは,家族や医師がAの性格・環境等に配慮したからであると考えられるところ,Aの面前で紹介状を作成した被告Bも同様の配慮から卵巣腫瘍の可能性があると記載しなかったものと推認される。 それらを実施するよう求める内容になっており,この紹介状を受け取ったE医師自らがその文面・体裁からして被告Bも卵巣腫瘍を疑っていたと見受けられる旨証言している。さらに,卵巣癌の手術を行った県病院がAに対し癌の告知をしなかったのは,家族や医師がAの性格・環境等に配慮したからであると考えられるところ,Aの面前で紹介状を作成した被告Bも同様の配慮から卵巣腫瘍の可能性があると記載しなかったものと推認される。これらの事情を総合して判断すると,被告Bは平成8年2月24日の段階で子宮筋腫のみならず卵巣腫瘍の疑いをも有していたために,カルテに「卵巣腫瘍の可能性」と記載したものと認められるのであって,原告らの主張は採用できない。したがって,被告Bにつき卵巣の異常に気付かなかったとの過失を認めることはできない。イまた,前記1(4)ア認定の の可能性」と記載したものと認められるのであって,原告らの主張は採用できない。したがって,被告Bにつき卵巣の異常に気付かなかったとの過失を認めることはできない。イまた,前記1(4)ア認定のとおり,平成9年10月3日の面談の際,被告Bは,原告CとFに対し,平成8年2月24日には子宮筋腫と診断した旨説明したことが認められる。しかしながら,かかる説明は,同日の診察の段階では,いまだMRI検査等を行っていなかったことから卵巣腫瘍の可能性を疑いながらもとりあえずは子宮筋腫と診断した趣旨と解されるので,被告Bと原告C・Fの間の面談内容をもって,被告Bが卵巣の異常に気付いていなかったということはできない。(2) 卵巣の異常に気付きながら適切な処置を講じなかったか否かについてア原告らは,平成8年1月27日の診療の際には腫瘍は認められなかったが,同年2月24日に突如として超手拳大の腫瘍が認められ,Aの腫瘍は急激な速度で増大したのであるから,同月24日,同月26日,さらには同年3月1日,同月3日において,被告Bが漫然と経過を見過ごしたとして同人には注意義務違反があると主張する。イこの点につき,一般に医師は患者に対して医療水準にかなった医療行為を行うべき義務を有しているから,患者に卵巣腫瘍の可能性がある場合には速やかに癌か否かについて検査等を行うべきであり,また,その医師の人的・物的能力との関係から自ら検査等を行うことができない場合にはこれが可能な医療機関へ患者を転送させる義務があると解するのが相当である。 漫然と経過を見過ごしたとして同人には注意義務違反があると主張する。イこの点につき,一般に医師は患者に対して医療水準にかなった医療行為を行うべき義務を有しているから,患者に卵巣腫瘍の可能性がある場合には速やかに癌か否かについて検査等を行うべきであり,また,その医師の人的・物的能力との関係から自ら検査等を行うことができない場合にはこれが可能な医療機関へ患者を転送させる義務があると解するのが相当である。そして,かかる場合において,経過観察とすることが許されるか否かは,疾病の症状の進行状況,緊急性,診療方法の確立の程度,医療機関の疾病に対する人的・物的能力の程度等を総合して判断すべきである。これを本件につきみると, 過観察とすることが許されるか否かは,疾病の症状の進行状況,緊急性,診療方法の確立の程度,医療機関の疾病に対する人的・物的能力の程度等を総合して判断すべきである。これを本件につきみると,内診によって子宮筋腫であるか卵巣腫瘍であるか区別するのが困難な場合もあり(証人E),本件においては,客観的には,内診と超音波検査により卵巣腫瘍と診断することは可能であるといえるが,子宮筋腫の可能性も否定できない状況であって,被告Bのような一般の開業医においては,卵巣腫瘍の疑いを抱きつつもとりあえず子宮筋腫と診断することは誤診とは到底いえない(乙31,J鑑定)こと,そして,現に,前記1(2)ア認定のとおり平成8年2月24日の段階で被告Bは内診及び超音波検査によって子宮筋腫と卵巣腫瘍の双方の可能性を疑っていたこと,前記1(2)ア,イ,ウ認定のとおり被告病院では諸検査を行いデータをそろえた上で他院に紹介するようにしていたこと,被告Bは,実際に平成8年2月24日,同月26日と2回にわたり超音波検査を行っているが,その間はわずか2日であり,被告BはAに対し同月26日の次は4日後の同年3月1日に来院するよう指示しているが,それはもう1度超音波検査を行った上で土谷総合病院に卵巣腫瘍の診断には欠かせないMRI検査を依頼する予定であったからであること,同年2月24日及び同月26日の診察はAの仕事が終わった後に行われており,MRI検査を申し込むには時間が遅すぎた(被告B本人)こと,Aの仕事の関係上,同月26日の次の診察は土曜日である同年3月2日が都合が良かったであろうけれども,土曜日は土谷総合病院が休診日であったため(乙7),どうしてもMRI検査を申し込むために金曜日の同月1日に来院するよう指示した(被告B本人)こと,通常,卵巣腫瘍が発見されて上位の病院で外来受診す 26日の診察はAの仕事が終わった後に行われており,MRI検査を申し込むには時間が遅すぎた(被告B本人)こと,Aの仕事の関係上,同月26日の次の診察は土曜日である同年3月2日が都合が良かったであろうけれども,土曜日は土谷総合病院が休診日であったため(乙7),どうしてもMRI検査を申し込むために金曜日の同月1日に来院するよう指示した(被告B本人)こと,通常,卵巣腫瘍が発見されて上位の病院で外来受診す も,土曜日は土谷総合病院が休診日であったため(乙7),どうしてもMRI検査を申し込むために金曜日の同月1日に来院するよう指示した(被告B本人)こと,通常,卵巣腫瘍が発見されて上位の病院で外来受診するまでの期間は1週間から2週間かかることが多い(J鑑定)ところ,本件ではそれ以上の期間を要しておらず決して遅きに失したとはいえないことなどからすれば,被告Bは,平成8年2月24日及び同月26日の診察において漫然と経過を見過ごしたということはできず,同被告がこの間経過観察を行ったことは不当とはいえず,同被告につき過失を認めることはできない。また,同年3月1日及び3日の診察についても,前記1(2)ウ,エ認定のとおり,同月1日にはAは既に県病院への転院を決めていて,同月3日には翌日にAが県病院を受診する予定になっていたことからすれば,被告病院で何らかの検査等を行う必要性は低いというべきであって,同月1日及び同月3日の診療においても被告Bに過失を認めることはできない。ウなお,仮に万が一,被告Bに,平成8年2月24日以降の時点において,Aにつき早期の転院措置を講じる義務違反等何らかの過失が認められる余地があったとしても,Aの罹患していた卵巣腫瘍は成長の速い化学療法が奏功しない充実性の漿液性腺癌であり,同月24日の時点では既に進行癌であったのであるから,もはやその時点においては手遅れであったと考えられ,(同年3月13日に手術をしても救命できなかったのであるから)被告Bが同年2月24日の時点においてある特定の措置を講じれば結果的にAを救命し得る高度の蓋然性ないし相当程度の可能性があったとの立証はなされていないので,被告Bの過失と死亡の結果との間の因果関係が認められないだけでなく,相当程度の救命の可能性の侵害も認められないことになり,結局,被告Bに賠償 いし相当程度の可能性があったとの立証はなされていないので,被告Bの過失と死亡の結果との間の因果関係が認められないだけでなく,相当程度の救命の可能性の侵害も認められないことになり,結局,被告Bに賠償責任はないといわざるを得ない。 ったとの立証はなされていないので,被告Bの過失と死亡の結果との間の因果関係が認められないだけでなく,相当程度の救命の可能性の侵害も認められないことになり,結局,被告Bに賠償 いし相当程度の可能性があったとの立証はなされていないので,被告Bの過失と死亡の結果との間の因果関係が認められないだけでなく,相当程度の救命の可能性の侵害も認められないことになり,結局,被告Bに賠償責任はないといわざるを得ない。4 結語以上によれば,その余の点につき判断するまでもなく,原告らの本訴請求はいずれも理由がない。広島地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官坂本倫城 裁判官次田和明 裁判官古川大吾

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