平成22(ワ)2171 地位確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年2月23日 広島地方裁判所
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判決文本文13,403 文字)

- 1 - 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨 被告は,原告に対し,174万9810円及びうち18万0500円については平成22年11月3日から支払済みまで年6分の割合による金員を,うち156万9310円については同日から支払済みまで年5分の割合による金員を各支払え。 イ(予備的)被告は,原告に対し,154万3500円及びうち12万3500円については平成22年11月3日から支払済みまで年6分の割合による金員を,うち142万円については同日から支払済みまで年5分の割合による金員を各支払え。 被告は,原告に対し,平成22年10月1日から本判決確定の日まで,月額9500円の割合による金員及びこれらの各金員に対する各月26日から支払済みまで年6分の割合による各金員を各支払え。 訴訟費用は被告の負担とする。 2 請求の趣旨に対する答弁主文同旨第2 事案の概要 1 争いのない事実 原告は,平成6年3月,Aを卒業後,被告に就職し,被告が組織するB- 2 - 病院(以下「本件病院」という。)の理学療法科(現在のリハビリテーション科,以下,単に「リハビリテーション科」という。)に配属され,理学療法士(そのころ資格を取得した。)として勤務を開始した者である。 原告は,平成15年2月に結婚し,平成16年12月17日に第1子を,平成20年10月12日に第2子をそれぞれもうけた。 イ被告は,組合員の出資によって経営される医療介護事業を営む協同組合であ 告は,平成15年2月に結婚し,平成16年12月17日に第1子を,平成20年10月12日に第2子をそれぞれもうけた。 イ被告は,組合員の出資によって経営される医療介護事業を営む協同組合であり,平成22年6月30日現在の組織は,およそ別紙C事業組織図記載のとおりである。 原告は,平成6年3月21日(ただし,本採用は同年6月21日),被告との間で,期間の定めなく,B病院の理学療法科において理学療法士として業務に当たることを内容とする労働契約(以下「本件労働契約」という。)を締結した。その際の給与は,基本給月額16万7700円とされ,毎月15日締めの当月25日払いとされた。 原告は,平成10年11月16日にD診療所に,平成15年1月16日に訪問看護ステーションEに,それぞれ異動したが(いずれの職場も理学療法士は原告のみであった。),同年12月1日,本件病院のリハビリテーション科(当時は,訪問リハビリチームと病院リハビリチームに分かれていたが,原告は前者に所属)に異動となり,訪問リハビリ業務に従事するようになった。 原告は,平成16年4月16日,被告から,リハビリテーション科の副主任に命ぜられた。 被告は,平成19年7月1日,リハビリテーション科の業務のうち,訪問リハビリ業務を,訪問看護ステーションF(以下「F」という。)に移管した。原告は,これにより,リハビリテーション科の副主任から,Fの副主任となった。 原告は,平成20年2月,第2子を妊娠し,労働基準法(以下「労基法」- 3 - という。)65条3項による「軽易業務への転換」を希望した。 被告は,平成20年3月1日,原告に対し,リハビリテーション科(同科を命ずるとともに,副主任の地位を免じた(この副主任の地位を免じた措 う。)65条3項による「軽易業務への転換」を希望した。 被告は,平成20年3月1日,原告に対し,リハビリテーション科(同科を命ずるとともに,副主任の地位を免じた(この副主任の地位を免じた措置を「本件措置1」という)。 原告は,平成20年9月1日から同年12月7日まで産前産後休暇を取得し,翌同月8日から平成21年10月11日まで育児休暇を取得した。 被告は,平成21年10月12日,原告に対し,Fへの異動を命じた。 における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下「均等法」といい,これに係る施行規則を「均等法規則」という。)9条3項に反する違務への転換希望以前に命じていた副主任の地位を免じたが,この措置(以下「本件措置2」といい,本件措置1と併せて「本件各措置」という。)も,均等法9条3項及び「育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下「育児・介護休業法」という。)10条に反する違法無効なものであるなどとして,被告が本件措置1を講じた平成20年3月1日以降平成22年10月15日までの就労期間における副主任手当相当(月額9500円)の金員合計18万0500円及び遅延損害金並びに翌同月16日から本判決確定日までの同手当相当(月額9500円)の割合による金員及び遅延損害金の各支払を求めるとともに,②本件各措置は,不合理な理由による性差別あるいは家族的責任を負う労働者に対する差別であり,副主任として誠意をもって尽くしてきた原告の懸命の努力を無にし,原告の尊厳を傷つけるもので,均等法2条,育児・介護休業法1条に定める被告の義務に反する違法なものでがされなかった場合に給付された額と実際の給付額との差額8万7514円,- 4 - れた額と実際の付金のうち,本件措置1 均等法2条,育児・介護休業法1条に定める被告の義務に反する違法なものでがされなかった場合に給付された額と実際の給付額との差額8万7514円,- 4 - れた額と実際の付金のうち,本件措置1がされなかった場合に給付された額と実際の給付額と計156万9310円の損害を被ったとして,債務不履行ないし不法行為に基づき,損害賠償金156万9310円(上記①の18万0500円と合計する置1が適法有効であるとしても,①本件措置2は上記のとおり違法無効であるなどとして,被告が本件措置2を講じた平成21年10月12日以降の就労期間における副主任手当相当(月額9500円)の金員合計12万3500円及び遅延損害金並びに翌同月13日から本判決確定日までの同手当相当(月額9500円)の割合による金員及び遅延損害金の各支払を求めるとともに,②本件措置2が上記のとおり,均等法2条,育児・介護休業法1条に定める被告の義務に反する違法なものであり,これにより原告は慰謝料100万円及び弁護士費用42万円の損害を被ったとして,債務不履行ないし不法行為に基づき,損害賠償金142万円(上記①の12万3500円と合計すると154万3500円)及び遅延損害金の各支払を求めた事案である。 3 争点 本件措置1の効力 本件措置2の効力 本件各措置は債務不履行,不法行為に当たるか 4 争点に関する当事者の主張 本件措置1の効力【原告の主張】ア被告は,均等法施行規則2条の2第6号に定める,妊娠に伴う軽易な業- 5 - 務への転換請求を契機に本件措置1を講じており,均等法9条3項に定める「妊娠又は出産に関する事由」によって原告に「降格」(平成18年厚という「不利益な取扱い」をしたといえるから,本件措 - 務への転換請求を契機に本件措置1を講じており,均等法9条3項に定める「妊娠又は出産に関する事由」によって原告に「降格」(平成18年厚という「不利益な取扱い」をしたといえるから,本件措置1は,均等法9条3項に反する違法無効なものである。 イ原告が本件措置1に同意し,また,原告と被告が副主任の地位の免除を黙示に合意したとの,被告の後記主張事実は否認する。 また,被告は,後記のとおり,副主任の免除は降格に当たらないと主張するが,降格とは職位,職階,職能資格等を低下させることで,号棒の引下げが必須の要件となるわけではない。副主任の免除により,役職手当がなくなり,職務内容の変化もあるから,当然均等法告示にいう「降格」に当たる。仮に,降格に当たらないとしても,原告の処遇は明らかに以前と比して低下しており,均等法9条3項が禁ずる「不利益な取扱い」に当たる。 【被告の主張】ア被告が,本件措置1によって副主任の地位を命じなかったのは,軽易な業務への転換請求をしたゆえではなく,異動先のリハビリテーション科の規模からして副主任を置く必要はなかったものであり,被告の業務遂行上・管理運営上・人事配置上の必要性に基づくものであって,合理性があり,濫用はない。 イまた,原告は,リハビリテーション科に異動するに際し,本件措置1につき同意しているし,仮にこの同意の事実が認められないとしても,原告は,副主任の地位を免除されたまま,産前産後休暇を取得するまでの6か月間,リハビリテーション科での勤務を異議なく続けているから,原告と被告は,副主任の地位の免除を黙示に合意したといえる。 ウそもそも,理学療法士等の技術職の主任・副主任の地位は「職位」であ- 6 - っても「職階」ではなく,その免除は「 から,原告と被告は,副主任の地位の免除を黙示に合意したといえる。 ウそもそも,理学療法士等の技術職の主任・副主任の地位は「職位」であ- 6 - っても「職階」ではなく,その免除は「降格」ではない。したがって,本件における副主任の免除は「降格」に該当しない。 したがって,本件措置1は,均等法9条3項に違反するものではない。 本件措置2の効力【原告の主張】ア被告は,本件措置2によって副主任の地位を免ぜられたが,被告が免除した理由は,妊娠に伴う軽易な業務への転換請求があったからであり,結果的に,本件措置2は,軽易な業務への転換請求を理由としているというべきである。また,本件措置2は,原告が,産前産後休業,育児休業をしたことも理由としているとみられる。 本件措置2は,直前の職と比較すれば地位の変更はないが,妊娠により軽易業務への転換を行った結果その職位が降格した場合,妊娠の事実がなくなった以上,軽易業務の転換を継続する必要はなくなっているから,当然,軽易業務への転換前の職位に戻されるべきである,したがって,原告に対し,副主任の地位を免除したまま復帰を命じた本件措置2は,実質的な降格処分である。 したがって,原告は,本件措置2により,均等法9条3項に定める「妊娠又は出産に関する事由」によって,また,育児休業をしたことによって,降格,不利益な配置の変更という「不利益な取扱い」(均等法告示第4のら,本件措置2は,均等法9条3項,育児・介護休業法10条に反する違法無効なものである。 イ被告は,後記のとおり,原告を配置できる部署がFに限定され,Fには副主任がいたので,副主任を置く必要がなかった旨主張するが,異動先がFに限定されていたとの合理的根拠に乏しいし,当時F 。 イ被告は,後記のとおり,原告を配置できる部署がFに限定され,Fには副主任がいたので,副主任を置く必要がなかった旨主張するが,異動先がFに限定されていたとの合理的根拠に乏しいし,当時Fに副主任を置けな- 7 - い理由も存しなかった。 【被告の主張】被告は,平成21年10月に原告にFへの異動を命じた際,副主任の地位を免じたのではなく,副主任の地位につけなかったものである。被告は,原告による産前産後休暇,育児休暇後の適切な人事配置をするべく,原告について複数の異動先を検討したが,当該異動先の所長から受け入れを拒否されるなどして異動先の選択肢が限られ,結果としてFに配置となったところ,Fには既に副主任がいて,原告を副主任に任ずる必要性,必然性がなかったのである。被告は,このような事業遂行上,管理運営上の必要性に基づいて,原告を副主任の地位につけなかったもので,合理性があり,濫用はない。 したがって,本件措置2は,均等法9条3項,育児・介護休業法10条に反するものではない。 本件各措置は債務不履行,不法行為に当たるか【原告の主張】一般に,事業者(使用者)は,労働者に対し,労働関係法令にしたがい,労働者が性別により差別されることなく,また,女性労働者にあっては母性を尊重されつつ,また家庭的責任を負う労働者についてその責任を達成しつつ,充実した職業生活を営むことができるように努める義務がある(均等法2条,育児・介護休業法1条)。 しかるに,被告は,この義務に反し,本件各措置を行い,これにより原告は経済的,精神的損害を被った。 したがって,被告は,原告に対し,債務不履行ないし不法行為に基づき,原告が被った上記損害を賠償する責任を負う。 【被告の主 措置を行い,これにより原告は経済的,精神的損害を被った。 したがって,被告は,原告に対し,債務不履行ないし不法行為に基づき,原告が被った上記損害を賠償する責任を負う。 【被告の主張】原告の上記主張は,否認ないし争う。 - 8 - 【原告の主張】 おりの損害を被った。 ア健康保険組合の出産手当 8万7514円 原告は,平成20年3月1日に副主任を免ぜられたことにより,副主任手当が支給されなくなり,その結果,標準報酬月額が32万円(日額1万0670円)から28万円(日額9330円)に変更された。 健康保険組合の出産手当は,標準報酬日額の3分の2の額が給付日額であり,これに産前産後休暇の日数を乗じた額が給付される。 原告の産前産後休暇の日数は98日であるから,原告は,本件措置1により,同措置がされなかった場合に給付された額と実際の給付額との差額を得ることができたということになり,その額は,次の計算式のとおり,8万7514円となる。 【計算式】(10,670×2/3-9,330×2/3)×98=87,514イ G共済手当の産休見舞金 1万3132円 G共済手当の産休見舞金は,標準報酬日額の10%が給付日額であり,これに産前産後休暇の日数を乗じた額が給付される。 原告の産前産後休暇の日数は98日であるから,原告は,本件措置1により,同措置がされなかった場合に給付された額と実際の給付額との差額を得ることができたということになり,その額は,次の計算式のとおり,1万3132円となる。 【計算式】(10,670×1/10-9,330×1/ れた額と実際の給付額との差額を得ることができたということになり,その額は,次の計算式のとおり,1万3132円となる。 【計算式】(10,670×1/10-9,330×1/10)×98=13,1 - 9 - ウ雇用保険の育児休業基本給付金・育児休業職場復帰給付金 4万8664円雇用保険の育児休業基本給付金・育児休業職場復帰給付金は,育児休業開始時の実際の賃金日額の半額が育児休業期間中に給付されるところ,原告の賃金日額差額は316円,育児休業期間は308日であるから,その給付差額は,次の計算式のとおり,4万8664円となる。 【計算式】316×308×0.5=48,664エ慰謝料 100万円本件各措置は,不合理な理由による性差別あるいは家庭的責任を負う労働者に対する差別であり,これまで副主任として誠意をもって尽くしてきた原告は,本件各措置により,その尊厳を傷つけられ,精神的苦痛を受けた。これを慰謝するには100万円を下らない。 オ弁護士費用 42万円【被告の主張】原告の上記主張は,否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実上記争いのない事実(第2の1)に,証拠(甲1ないし17,乙1ないし11,証人H,同I,同J,原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。 原告は,平成6年3月,本件病院のリハビリテーション科(当時は理学療法科)に配属され,理学療法士として勤務を開始した(本採用は同年6月)。 このとき,同科には,技術者として,原告を含む4名の理学療法士(科長のK(理学療法士歴20数年目),H(理学療法士歴9年目, 療法科)に配属され,理学療法士として勤務を開始した(本採用は同年6月)。 このとき,同科には,技術者として,原告を含む4名の理学療法士(科長のK(理学療法士歴20数年目),H(理学療法士歴9年目,以下「H」という。),J(理学療法士歴3年目。原告と同時に被告に就職,以下「J」と- 10 - いう。),原告(理学療法士歴1年目))がおり,他に鍼灸師1名,助手3名前後がいた。 原告は,平成10年11月16日にD診療所に,平成15年1月16日に訪問看護ステーションEに,それぞれ異動した(いずれの職場も理学療法士は原告のみであった。)。 原告は,平成15年10月ころ,妊娠により体調を崩し,異動の希望を申し出て,同年12月1日,本件病院のリハビリテーション科(当時は,訪問リハビリチーム(患者の自宅を訪問してリハビリ業務を行うチーム)と病院リハビリチームに分かれていた。なお,訪問リハビリ業務の方が,病院リハビリ業務より,車を運転したり,重いものを持ったりしないといけない分,きつい仕事であると,一般に認識されていた。)に異動となり,訪問リハビリチームに所属し,同業務に従事するようになった(原告はその後流産した。)。この当時のリハビリテーション科の主な体制は,Hを科長として,訪問リハビリチームが,J(平成15年9月に産前産後休暇から復帰,理学療法士歴12年目),原告(理学療法士歴9年目),L(理学療法士歴5年目),M(病休中,理学療法士歴7年目),N(育児休暇中,理学療法士歴6年目,以下「N」という。),病院リハビリチームが,O(理学療法士歴7年目),P(理学療法士歴3年目,以下「P」という。),Q(理学療法士歴2年目),R(理学療法士歴2年目)であった。 平成16年4月,リハビリテーション科の科長であるHが O(理学療法士歴7年目),P(理学療法士歴3年目,以下「P」という。),Q(理学療法士歴2年目),R(理学療法士歴2年目)であった。 平成16年4月,リハビリテーション科の科長であるHが,そのころ被告が行うS病院建設の準備等で不在がちとなり,また同科には科長であるHのほかに主任,副主任がいなかったこと,原告がそのころ妊娠し同科の訪問リハビリチームから病院リハビリチームに配置換えになることが決まっていたことから,被告は,同月,訪問リハビリチームと病院リハビリチームのそれぞれにおいて取りまとめ役を置く体制を確立すべく,前者の取りまとめの役割を担ってもらうため,Jを同科の主任に,後者の取りまとめの役割を担っ- 11 - てもらうため,同月16日,原告(Jの次に経歴が長かった。)を同科の副主任に任じた。訪問リハビリチームにおける原告の後任者は,病院リハビリテーションチームに所属していたPとなったが,原告,P間の引継ぎは約2日間のみで行われ,それ以降は,原告が体調不良で病休となったため,実質的な引継ぎは行われなかった。 原告は,平成16年10月28日から平成17年2月11日までの間,産前産後休暇を取り(その間の平成16年12月17日,第1子出産),平成17年2月12日から平成18年2月11日までの間,育児休暇を取った。 平成17年6月,Hは,S病院に異動となり,その後,被告のリハビリ部門全体のとりまとめを行うようになった。 原告は,平成18年2月12日,リハビリテーション科(訪問リハビリチームに配属)に復帰した。なお,当時,病院リハビリチームの取りまとめはJ(主任)が行っていた。 同年3月,リハビリテーション科の職責者会議が行われた(H,J(主任),原告(副主任)が参加)。原告は,その際,訪 た。なお,当時,病院リハビリチームの取りまとめはJ(主任)が行っていた。 同年3月,リハビリテーション科の職責者会議が行われた(H,J(主任),原告(副主任)が参加)。原告は,その際,訪問リハビリについて月80件の目標は大変だから月60件くらいに減らすべきである旨意見を述べ,それほど無理ではないとのJの意見に対し,二重管理しないでほしい旨述べるなどして,途中退席した。その後の同年4月以降,職責者会議の円滑な進行を図るため,当時のT事務次長兼人事・医局事務課長(以下「T」という。)がオブザーバーとして参加するようになった。 Jは,平成19年6月から平成20年1月までの間,産前産後休暇,育児休暇を取った。 被告は,平成19年7月1日,リハビリテーション科の業務のうち,訪問リハビリ業務を,Fに移管した。原告は,これにより,リハビリテーション科の副主任から,Fの副主任となった。 原告は,平成20年2月,第2子を妊娠し,軽易業務への転換(具体的に- 12 - は,訪問リハビリ業務から病院リハビリ業務への転換)を希望した。 Hは,同月13日,Jから,原告の上記希望を聞き,また,翌14日には,Jから,原告のあとにNがFで勤務することで同人の承諾を得たことを聞き,訪問リハビリ業務の責任者(副主任)の後任についてはPが適任であることをJと確認し(Pは,その後,Fの副主任を命じられた。),それらのことをTにメールで報告した。 そして,Hは,訪問リハビリ業務(F)についてはPが副主任となるし,リハビリテーション科(病院(院内)リハビリ業務を行う。)においてはJが主任として取りまとめをしており,その規模からしても,さらに副主任を置く必要性はないと考え,同月下旬ころ,原告に対し,電話で,リハビリテ ーション科(病院(院内)リハビリ業務を行う。)においてはJが主任として取りまとめをしており,その規模からしても,さらに副主任を置く必要性はないと考え,同月下旬ころ,原告に対し,電話で,リハビリテーション科への異動を内示するとともに,同科の体制からみて副主任を置く必要性がない旨述べて,副主任を免除する旨伝え,渋々ながらも原告の了解を得た。しかし,原告の上記了解は,Tには伝わらなかった。そのため,原告の副主任免除については,正しい稟議決裁を経ないまま,平成20年3月1日の被告の朝礼文書(甲7)には,同日付けで原告がリハビリテーション科副主任として異動する旨が記載されていた。Tは,同月中旬ころ,原告に対し,誤った稟議書により朝礼文書の記載が間違ってしまったことを説明,謝罪した。その後,Hは,原告と電話で話をし,その時点でも,副主任を免除することについて,渋々ながらも原告の了解を得た。原告としては,自ら軽易業務への転換を希望した経緯があり,現在妊娠中で,精神的なストレスが続くかもしれず,役職は負担となるかもしれないとの思いもあり,不満ではあったが,副主任免除を受け入れようと思った。原告は,そのころ,U介護事務部長に対し,4月1日付けで副主任を免除されるのでは,原告のミスで降格になったように受け取られるので,異動日である3月1日に遡って同日付けでの副主任の免除にしてほしい旨希望した。 被告は,被告内部の稟議を経て,平成20年4月2日,原告に対し,同年- 13 - 3月1日付けでのリハビリテーション科(副主任免除)への異動の辞令を発した。 原告は,平成20年9月1日から同年12月7日までの間,産前産後休暇を取り,平成20年12月8日から平成21年10月11日までの間,育児休暇を取った。原告は,上記辞令が出て,産前(産後 。 原告は,平成20年9月1日から同年12月7日までの間,産前産後休暇を取り,平成20年12月8日から平成21年10月11日までの間,育児休暇を取った。原告は,上記辞令が出て,産前(産後)休暇を取得するまでの約5か月間,副主任を免除されたことについて被告に異議を述べるなどしたことはなかった。 被告は,原告の育児休暇が終わる前である平成21年7月下旬ころから,H,J,Pらが参加するリハビリ職責者会議等で,原告の復帰先を複数検討した。その中で,原告が配置されるなら自分は辞めるという理学療法士が2名いる職場があるなどして,復帰先はしぼられていった。他方,Hは,同年8月初めころ,原告に対し,異動についての原告の希望を聞くと,原告は,復帰先はどこでもよいが,勤務先と保育所が近い部署がよいなどと要望した。 Hは,同年9月中旬ころ,原告に対し,FからD診療所に他の理学療法士を転出させるのを前提にした,Fへの異動を打診したところ,原告は,原告がFに戻ることで,D診療所に理学療法士が一人異動となり,その結果一人職場を作ることになるのは良くない,D診療所に理学療法士一人が行ったからといってどうなるものでもない,私ならそんな人事はしない,意味のない人事配置でナンセンスである,などと言ってこれに反対した。原告は,また,その際,Hに対し,Fに復帰の場合の職責者はどうなるかを尋ね,Hが現行のまま(Pが副主任で,原告は副主任にはならない。)でいく旨述べると,元部下であるPの下では業務したくない,Hなら元部下の下でも仕事ができるかと声を荒げた。これに対し,Hは,組織の人間だから,自分の本意ではなくとも,元部下の下で私は仕事をする旨答えた。 被告は,平成21年10月12日,原告に対し,Fへの異動(副主任の職はつけていない。)を命じた。 ,Hは,組織の人間だから,自分の本意ではなくとも,元部下の下で私は仕事をする旨答えた。 被告は,平成21年10月12日,原告に対し,Fへの異動(副主任の職はつけていない。)を命じた。 - 14 - 以上の事実が認められ,甲12(原告の陳述書)の記載中及び原告本人尋問の結果中,同認定に反する部分は直ちに採用できず,他に上記認定を覆すに足りる証拠はない。 原告は,本件措置1は,原告の妊娠に伴う軽易な業務への転換請求を契機に,均等法9条3項に定める「妊娠又は出産に関する事由」によって行われたもので,同措置により被告は原告に対し均等法告示にいう不利益な取扱いをしたから,本件措置1は,均等法9条3項に反する違法無効なものである旨主張する。 しかしながら,上記1の認定事実によれば,本件措置1は,平成20年2月に,原告が第2子を妊娠し,軽易業務への転換を希望したことを契機に,その希望に沿うべく,原告は当時勤務していた訪問リハビリ業務を行うFから本件病院のリハビリテーション科に異動することになったが,当時,同科には,原告より理学療法士歴が約3年ほど長いJが主任として,とりまとめを行っており,同科の規模,体制からしても,さらに副主任を置く必要性を見い出せなかったため,被告のリハビリ部門全体のとりまとめを行っていたHが,原告にその旨を告げ,原告の了解を得て,被告において原告に対し講じられたものであり,事務手続の手違いで同年3月1日付けの朝礼文書には副主任として異動する旨の誤った記載がされたが,その後,降格と受け取られないように同日付けに遡って副主任免除にしてほしい旨原告が被告に求めたり,同年4月2日にリハビリテーション科(副主任免除)の辞令が発せられた後,産前(産後)休暇を取得する同年9月まで,原告が被告 れないように同日付けに遡って副主任免除にしてほしい旨原告が被告に求めたり,同年4月2日にリハビリテーション科(副主任免除)の辞令が発せられた後,産前(産後)休暇を取得する同年9月まで,原告が被告に対し副主任免除について異議を述べたことがなかったこと等からしても,原告が副主任免除について,上記辞令が発せられるまでに,これに(渋々であるとしても)同意していたことは明らかである。 以上によると,本件措置1は,被告において,原告の妊娠に伴う軽易な業務への転換請求を契機に,これに配慮しつつ,原告の同意を得た上で,事業主で- 15 - ある被告の業務遂行・管理運営上,人事配置上の必要性に基づいてその裁量権の範囲内で行ったものと認められ,原告の妊娠に伴う軽易な業務への転換請求のみをもって,その裁量権を逸脱して,均等法や均等法告示にいう不利益な取扱いをしたものとまでは認め難い。 原告は,平成16年4月に原告が副主任に任じられた当時,リハビリテーション科の訪問リハビリチームにはJ主任がいて,原告はさらに副主任に任じられているもので,このときの病院リハビリチームの人員構成は,原告が副主任を免除された当時とほぼ同じであるから,被告が本件措置1により原告を副主任に免除する合理的理由はなかった旨主張する。 しかしながら,原告が平成16年4月に副主任に任じられた経緯は,上記1務及び病院リハビリ業務の両方について責任を負うH科長がS病院の立ち上げの責任者として多忙で不在がちとなり,また同科には科長であるHのほかに主任,副主任がいなかったこと,原告がそのころ妊娠し同科の訪問リハビリチームから病院リハビリチームに配置換えになることが決まっていたことから,訪問リハビリチームと病院リハビリチームのそれぞれにおいて取りまとめ役を置く体制を確立 原告がそのころ妊娠し同科の訪問リハビリチームから病院リハビリチームに配置換えになることが決まっていたことから,訪問リハビリチームと病院リハビリチームのそれぞれにおいて取りまとめ役を置く体制を確立すべく,被告は,前者の取りまとめの役割を担ってもらうため,Jを同科の主任に,後者の取りまとめの役割を担ってもらうため,同月16日,原告(Jの次に経歴が長かった。)を同科の副主任に任じたものであって,このとき,訪問リハビリチームもしくは訪問リハビリチームに主任,副主任を同時に置いたものではなかったし,またその必要性があったことをうかがわせる証拠も見い出せない。そうすると,原告が平成16年4月に副主任に任じられた事情から,原告が本件措置1において副主任を免除されたことの不合理性を導くことはできず,この点に関する原告の主張は理由がない。 以上のとおりであり,本件措置1に均等法9条3項に基づく無効事由は認められず,他に同措置が均等法9条3項により無効なものであることを基礎づけ- 16 - る事実を認めるに足りる証拠はない。 て原告は,本件措置2により,均等法9条3項に定める「妊娠又は出産に関する事由」によって,また,育児休業をしたことによって,降格,不利益な配置2は,均等法9条3項,育児・介護休業法10条に反する違法無効なものである旨主張する。 しかしながら,上記1の認定事実によれば,本件措置2は,原告が,第2子の産前産後休暇を経て,育児休暇が終わる前である平成21年7月下旬ころから,被告内部において,原告の復帰先が複数検討され,原告が配置されるなら自分は辞めるという理学療法士が2名いる職場があるなどして,復帰先がしぼられていく一方,原告本人にも復帰先についての希望が聞かれ,その中で,Fへの異動が内定したが,当 検討され,原告が配置されるなら自分は辞めるという理学療法士が2名いる職場があるなどして,復帰先がしぼられていく一方,原告本人にも復帰先についての希望が聞かれ,その中で,Fへの異動が内定したが,当時Fには副主任としてPがいたことから,被告において,Fへの異動に際し,原告を副主任に任じないことにして,原告に対し講じられたものである。 そうすると,本件措置2は,原告が第2子出産から職場復帰するに際し,原告の希望(勤務先と保育所との距離関係等)を聞くなどして,その復帰先について慎重に検討がされた上で,内定した復帰先(F)に既に副主任がいたこと等の事情が考慮され,被告において,業務遂行・管理運営上,人事配置上の必要性に基づいてその裁量権の範囲内で行われたものと認められ,妊娠又は出産に関する事由のみによって,また,育児休業をしたことのみによって,その裁量権を逸脱して,均等法や育児・介護休業法に反する不利益な取扱いをしたものとまでは認めることはできない。 したがって,本件措置2に均等法9条3項,育児・介護休業法10条に基づく無効事由は認められず,他に同措置が均等法9条3項,育児・介護休業法1- 17 - 0条に反する無効なものであることを基礎づける事実を認めるに足りる証拠はない。 上記2,3で説示したことからすれば,被告が本件各措置を講じたことによって,原告主張に係る原告に対する債務不履行,不法行為に該当する事情があったと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。この点に関する原告の主張は理由がない。 5 まとめ がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第2部 裁判官植屋伸一 まとめ がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第2部 裁判官植屋伸一

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