平成16(ハ)7117 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年12月15日 東京簡易裁判所
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平成16年12月15日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成16年(ハ)第7117号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成16年11月10日判決 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金73万5000円及びこれに対する平成16年5月27日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告の仲介により訴外A株式会社から中古建物を買った原告が,同建物に設置された飲用水供給のための加圧ポンプ2台の内の1台が,売買契約当時,故障により作動していなかったのに,売買の仲介人である被告がこれを調査して原告に報告することを怠ったため,加圧ポンプ修理費相当額の損害を被ったと主張して,仲介契約上の債務不履行を原因として,損害賠償を請求する事件である。 1 基礎事実(証拠を掲げるもの以外は,争いがない。)(1) 原告は,飲食店経営,不動産業等を目的とする株式会社であり,被告は,不動産業を目的とする株式会社である。 (2)原告と被告は,平成15年10月31日,別紙物件目録記載の建物(平成2年5月30日新築,以下「本件建物」という。)を購入するため,原告を依頼者とし,被告を仲介業者とする専任媒介契約を締結した。 (3) 原告は,同日,被告の媒介により,訴外A株式会社(以下「訴外会社」という。)から,瑕疵担保責任を負わない旨の特約付きで,本件建物を代金1億9800万円で買い受ける売買契約を締結した。 (4) 本件建物の飲用水の給水方式は加圧ポンプ方式であり,本件建物の1階の遊技場内の北東角に設けられたポンプ室に,交互に運転するものとして2台の加圧ポンプ(以下「本件加圧ポンプ」という。)が設置されている。 ポ 物の飲用水の給水方式は加圧ポンプ方式であり,本件建物の1階の遊技場内の北東角に設けられたポンプ室に,交互に運転するものとして2台の加圧ポンプ(以下「本件加圧ポンプ」という。)が設置されている。 ポンプ室は,普段施錠されている。 (5) 本件売買契約当時,本件加圧ポンプの内の1台は,故障により作動していなかった(甲3,甲6の1,2,甲7,証人B)。 (6) 原告は,本件売買契約締結当日,被告から不動産取引の仲介に伴う重要事項の説明として本件建物に関する状況・概要の説明を受けたが,その際,本件加圧ポンプの故障については何らの説明も受けなかった。 2 主たる争点(1) 被告の債務不履行責任の有無(本件加圧ポンプの故障についての調査報告義務違反の有無)(2) 原告の損害額 3 争点に関する当事者の主張(1) 原告の主張ア仲介契約上の債務不履行宅地建物取引業法35条1項4号は,「飲用水の供給のための施設の整備の状況」を重要事項説明義務の対象であると規定しているが,「飲用水の供給のための施設」とは,単に「水道が公営か私営か」,「水道自体が整備されているか否か」などに限定されるものではなく,生活を営む上で必要不可欠な飲用水供給施設をいい,「整備状況」とは,適切な調査を行えば容易に知りうる瑕疵のあることが含まれると解すべきである。本件加圧ポンプは,生活を営む上で必要不可欠な施設であること,本件売買契約当時,本件加圧ポンプの内の1台が故障で作動しなかったことは,本件加圧ポンプに1台が故障中である旨の貼紙が貼ってあったことや故障発見のための専門知識を要しないことどから,現地調査など適切な調査を行えば容易に知り得たこと,現地調査をすることは十分可能であったことなどから,本件加圧ポンプの瑕疵は,同号に定める重要事項説明義務の対象であるとい 知識を要しないことどから,現地調査など適切な調査を行えば容易に知り得たこと,現地調査をすることは十分可能であったことなどから,本件加圧ポンプの瑕疵は,同号に定める重要事項説明義務の対象であるといえる。したがって,被告には,この瑕疵について調査し,その結果を原告に報告する義務がある。ところが,被告は,この義務を尽くさず,売買契約当時,本件加圧ポンプの内の1台が故障により作動しないことを発見して,原告に報告しなかったから,仲介契約上の債務不履行の責任がある。 イ損害原告は,被告が債務を履行し,本件加圧ポンプの瑕疵について原告に説明しておれば,1億9800万円での購入を取りやめ,または,本件加圧ポンプの修理費相当額,場合によってはそれ以上の減額を要求し得たものであるから,被告の債務不履行により,少なくともポンプ修理費相当額73万5000円の損害を被った。 ウよって,原告は,被告に対し,仲介契約上の債務不履行(調査報告義務違反)に基づき,上記損害金及びこれに対する平成16年5月27日から支払済みまで商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金の請求権を有する。 (2) 被告の主張ア本件加圧ポンプの状況は重要事項説明義務の対象でないこと宅地建物取引業法上の重要事項の説明義務は,宅建業者が,業務上の注意義務から生じる調査義務,告知義務のうち一定の重要な事項に限ってこれを定型化し,説明すべきことを特に定めたものであるとされており([詳解]宅地建物取引業法明石三郎他大成出版社),定型化された重要事項の対象は,重要事項説明書に積極的に記載が予定されている事項であると考えるべきであり,通常,その設備の有無,設備がある場合の種類(公営水道か,都市ガスかプロパンガスか等),設備がない場合は整備予定及びそれについての特別な負担等の に記載が予定されている事項であると考えるべきであり,通常,その設備の有無,設備がある場合の種類(公営水道か,都市ガスかプロパンガスか等),設備がない場合は整備予定及びそれについての特別な負担等の事項がこれに当たる。本件の重要事項説明書の飲用水供給施設整備状況の欄には,本件加圧ポンプについて言及した記載は一切ない。また,本件売買契約当時,原告を含む本件契約の当事者は,主観的にも本件加圧ポンプが重要事項であるとは考えていなかった。これらのことから,水道が問題なく使用できる状態にある以上,本件加圧ポンプの状況等は重要事項に当たらないと考えるべきである。したがって,被告には,仲介業者による重要事項説明義務違反は存在しない。 イ被告に帰責事由がないこと被告の従業員であり仲介担当者であるCが,売買契約締結当時,本件加圧ポンプの瑕疵を発見して,これを原告に報告できなかったのは,本件建物の売主である訴外会社の代表者が,本件建物の1階で営業しているパチンコ店の従業員に売却の事実を知られるのを恐れて,本件加圧ポンプが設置されている1階部分の現況調査を拒んで現況調査ができなかったためである。 そのため,Cは,原告から依頼された本件建物の調査については,売主に対してヒアリング調査等を行い,その結果を原告に報告した。また,仮に原告から現況調査を依頼されて,現況調査を実施したとしても,本件加圧ポンプの瑕疵は,通常の現況調査では容易に発見することが困難な隠れた瑕疵であった。したがって,被告には,本件加圧ポンプの瑕疵を発見して報告しなかった点について責めに帰すべき事由はなく,仲介契約の付随義務としての調査報告義務違反はない。 ウ予備的主張原告は,本件加圧ポンプの作動状況等が重要事項説明義務の対象であると考えるなら,重要事項説明時に,被告に対し,重要事項説 はなく,仲介契約の付随義務としての調査報告義務違反はない。 ウ予備的主張原告は,本件加圧ポンプの作動状況等が重要事項説明義務の対象であると考えるなら,重要事項説明時に,被告に対し,重要事項説明書にその記載が欠如していることを指摘すべきであり,また,本件加圧ポンプに瑕疵が存在する場合には被告に責任を負わせるつもりである旨を告げるべきであったのに,これを怠っており,このような事情は過失相殺の対象になる。 第3 争点に対する判断 1 被告は,原告との間で本件建物の専任媒介契約を締結した仲介業者であるから,売主の提供する情報だけでなく,通常の注意を尽くせば認識できる範囲で,当該物件の瑕疵の有無を調査して買主に報告すべき仲介契約上の義務を負うと解すべきである。ところで,飲用水供給のための加圧ポンプの作動状況は,それが重要事項説明義務の対象であるか否かにかかわらず,本件建物で生活する者にとって極めて重要な事柄であることは明らかである。また,その作動状況は,高度な専門的知識がなくても,ポンプ室に入って適切な調査を行えば容易に覚知できる事柄であるといえる。したがって,被告は,本件加圧ポンプの作動状況について,通常の注意を尽くせば認識できる範囲で調査報告義務を負うというべきである。そこで,Cが,本件加圧ポンプの瑕疵を調査して報告しなかったことが,仲介契約上の仲介物件の調査,報告義務違反であるかどうかについて検討する。 2 証拠(甲7,乙3,証人C,証人B)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 本件建物の売買は,訴外会社が売買代金を負債の支払に当てるため,やむを得ず行われたものであり,訴外会社のD社長(以下「D社長」という。)は,売却に積極的ではなかった。 (2)Cは,平成15年7月12日,D社長と会い,本件建物の内覧を申 債の支払に当てるため,やむを得ず行われたものであり,訴外会社のD社長(以下「D社長」という。)は,売却に積極的ではなかった。 (2)Cは,平成15年7月12日,D社長と会い,本件建物の内覧を申し入れたところ,内覧の場所は空き室の310号室,共用部分及び屋上に限って許され,1階及び2階部分の内覧は,売却の話が従業員に知れると困るという理由で拒否された。 (3) 同年8月5日,原告のE社長,原告担当者のB,訴外会社のF専務(以下「F専務」という。)及びCが,前記許可された場所について約1時間にわたって内覧を実施した。そのとき,F専務からE社長らに対し,給水設備に異常はない等の説明がなされた。 (4)そのころ,Cは,Bとの間で何回か打合わせをしたが,その中でBから「給水設備状況はどうなっているか。」との質問を受けた。Cは,当時,D社長が1階部分の現況調査を拒否し,ポンプ室に入って給水設備の状況を確認することができなかったので,F専務に対し給水設備状況等についてヒヤリング調査を行うとともに,水道局から配管図面を取得し,それを使って,Bに対し,同専務から得た異常はないとの回答,ポンプの所在,配管状況,個別メーターの有無等について報告した。 (5) 同年9月に入り,別の購入希望者が現れて訴外会社と原告との売買の交渉は一時中断したが,同年10月に入って原告との交渉が再開され,交渉の結果,1億9800万円で原告が購入する話がまとまった。そこで,Cは,契約書案や重要事項説明書案を作成して,これらを原告の顧問弁護士とBに送付するとともに,訴外会社に対し,設備等の問題や賃借人からのクレームの有無などについて最終確認をし,問題やクレームはないとの回答を得て,Bにその旨を報告した。原告側からは,重要事項説明書案に本件加圧ポンプの記載がない等の話はな し,設備等の問題や賃借人からのクレームの有無などについて最終確認をし,問題やクレームはないとの回答を得て,Bにその旨を報告した。原告側からは,重要事項説明書案に本件加圧ポンプの記載がない等の話はなかった。 3 前記認定事実によれば,Cは,自らポンプ室内に足を運んで本件加圧ポンプの作動状況を確認したことはないが,これは,D社長が,従業員に売買の話が知れることを恐れて,ポンプ室内の現況調査を拒否したためであると認められる。そのため,Cは,給水設備の状況について売主側にヒヤリング調査等を行い,その結果を原告に報告したのであり,このような状況下で通常行える調査を行ったといえる。このことからすると,Cが本件加圧ポンプの故障を覚知せず,これを原告に報告できなかったことは,やむを得なかったことであり,被告に責めに帰すべき事由があったとまではいえない。したがって,被告には,仲介契約上の債務不履行(仲介物件の調査報告義務違反)があるとは認められない。 4 そうすると,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京簡易裁判所民事第2室裁判官石堂和清物件目録所在江戸川区ab丁目c番地d,c番地f,c番地g家屋番号 c番d種類共同住宅・遊技場構造鉄骨造陸屋4階建床面積 1 階 241.29平方メートル 2 階 244.87平方メートル 3 階 223.57平方メートル 4 階 162.85平方メートル 階 162.85平方メートル

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