平成15(行ケ)346

裁判年月日・裁判所
平成17年3月23日 東京高等裁判所
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判決文本文24,912 文字)

平成15年(行ケ)第346号特許取消決定取消請求事件口頭弁論終結日平成17年3月14日判決原告独立行政法人産業技術総合研究所訴訟代理人弁護士清永利亮訴訟代理人弁理士櫻井義宏被告特許庁長官小川洋指定代理人綿谷晶廣一色由美子中村朝幸宮下正之 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が異議2002―72775号事件について平成15年6月13日にした決定を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が有する後記本件特許について,Aから特許異議の申立てがあったところ,平成15年6月13日付けで特許庁から,本件特許の請求項1に係る特許を取り消すとの決定がされたため,原告が,同決定の取消しを求めた事案である。 第3 当事者の主張 1 請求の原因(1) 特許庁における手続の経緯原告は,発明の名称を「難燃性マグネシウム合金の精製方法」とする特許第3284232号(平成9年4月2日出願,平成14年3月8日設定登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。 本件特許について,平成14年11月20日にAから特許異議の申立てがされた(異議2002―72775号)ところ,特許庁は,平成15年6月13日,「特許第3284232号の請求項1に係る特許を取 本件特許について,平成14年11月20日にAから特許異議の申立てがされた(異議2002―72775号)ところ,特許庁は,平成15年6月13日,「特許第3284232号の請求項1に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)を行い,その謄本は,同年7月2日,原告に送達された。 (2) 本件発明の内容本件特許に係る特許請求の範囲(請求項1)の記載は,下記のとおりである(以下,この発明を「本件発明」という。甲6)。 記「カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金を溶融状態において,0. 1~50Torrで少なくとも30秒間真空脱気してきょう雑物を溶湯表面に浮上させることを特徴とする難燃性マグネシウム合金の精製方法。」(3) 本件決定の内容本件決定の内容は,別紙「異議の決定」のとおりであるが,その要旨は,本件発明は,①その出願前の平成6年6月7日に日本国内において頒布された刊行物である特開平6-158192号公報(甲1。以下「刊行物1」という。),②同じく平成5年10月12日に頒布された刊行物である特開平5-263123号公報(甲2。以下「刊行物2」という。),③同じく平成3年1月25日に頒布された刊行物である特開平3-17223号公報(甲3。以下「刊行物3」という。),及び④同じく昭和52年9月16日に頒布された刊行物である特公昭52-36488号公報(甲4。以下「刊行物4」という。)に記載された各発明(以下「刊行物1発明」等という。)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定に違反して特許されたものである等とするものである。 (4) 本件決 (以下「刊行物1発明」等という。)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定に違反して特許されたものである等とするものである。 (4) 本件決定の取消事由しかしながら,本件決定は,以下のとおり,本件発明についての進歩性の判断を誤ったものであり,その誤りが決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,取り消されるべきである。 ア取消事由1(相違点1の認定の誤り)本件決定は,相違点1として,「精製される金属が,本件発明においては,カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金であるのに対し,刊行物2発明においては,マグネシウム等の低圧化に耐えうる金属である点」を認定したが,マグネシウムは低圧化に耐えうる金属ではないから,上記認定は誤りである。 すなわち,(ア) 甲7「改訂5版金属便覧」には,マグネシウムの融点における蒸気圧は367Paで大変高い旨や,マグネシウムは高温で酸化しやすく,燃焼するので,溶解の際には,フラックスで溶融合金表面を完全に覆うか,溶融合金表面をSO2ガスで覆い,酸化を防止する旨記載されている。 また,甲8「金属の融点における平衡蒸気圧」には,鉄,銅及びアルミニウムの融点における蒸気圧は,それぞれ「0.017053335000mmHg(2.27Pa)」「0.000315940000mmHg(0.043Pa)」「0.000000006274mmHg(0.00000084Pa)」であり,マグネシウムの蒸気圧はこれらと比較して格段に高い旨記載されている。 また,甲9「Ca添加による難燃性Mg合金」には,マグネシウム合金は,非常に活性な金属で高温 Pa)」であり,マグネシウムの蒸気圧はこれらと比較して格段に高い旨記載されている。 また,甲9「Ca添加による難燃性Mg合金」には,マグネシウム合金は,非常に活性な金属で高温で空気中の酸素と接触酸化反応して激しく燃え,取扱いの困難な金属であり,そのため,溶解・鋳造時の空気と接触を遮断する六ふっ化硫黄ガス(SF6),フラックス,硫黄粉末等が使用される旨記載されている。 また,甲10(平成15年8月21日付け新聞記事)には,これまでは,マグネシウム溶湯を不活性ガスや塩素系の溶剤などで覆って燃えないように大気から遮断する必要があったが,カルシウム添加でそうした工程が不要になった旨記載されている。 これらの記載によれば,マグネシウム溶融金属は大気圧において激しく蒸発,燃焼してしまい,溶解・鋳造どころではないため,溶解・鋳造時にはマグネシウム溶融金属を大気から遮断する必要があること,また,低圧状態においては,蒸発が加速され周囲の酸素との酸化反応により一層激しく燃焼することを,当業者であれば容易に理解することができる。したがって,マグネシウム溶融金属が脱ガス処理において低圧化に耐えうるものでないことは,当業者にとって自明のことである。 (イ) 次に,甲16,17は,難燃化されていない通常のマグネシウム合金(AZ91)を大気圧下に置いた坩堝内で溶解し,次いで溶解したマグネシウム合金にCaを添加して難燃化し,さらにこれを減圧する様子を撮影したものである。これによれば,①マグネシウム合金を蓋をした密閉状態で溶解し,溶解後に蓋を開けると,マグネシウム合金の高い蒸気圧のために,蓋を開ける前の坩堝内で発生したマグネシウム金属蒸気が蓋を開けると同時に激しく噴出し,大気中で酸化して酸 合金を蓋をした密閉状態で溶解し,溶解後に蓋を開けると,マグネシウム合金の高い蒸気圧のために,蓋を開ける前の坩堝内で発生したマグネシウム金属蒸気が蓋を開けると同時に激しく噴出し,大気中で酸化して酸化物微細粒からなる白煙として激しく立ち上がることや,②マグネシウム合金溶湯にCaを添加して攪拌し,合金化を行うと,マグネシウム合金が難燃化され,マグネシウムの蒸発がなくなり,難燃化したマグネシウム合金溶湯は,減圧下においても蒸発が認められないことが明らかである。 また,甲18は,マグネシウム合金片をバーナー加熱した様子を撮影したものであり,難燃化されていない通常のマグネシウム合金(AZ91)が溶解前に蒸発して後に激しく燃焼している様子や,難燃性マグネシウム合金(AZ91+2%Ca)をバーナーで加熱すると,大気中で溶解して液滴状になっている様子が確認できる。 このように,通常のマグネシウム合金がその精製処理において低圧化に耐えうるものでないことは,明らかである。 (ウ) 次に,刊行物2発明の真空槽内は,大気圧より低い圧力の空気で満たされていると考えられるところ,溶湯8がマグネシウム金属と仮定した場合,吸込管6の周辺では溶湯表面を空気から遮断しないと燃焼してしまうため,フラックスでシールする必要があるが,同刊行物の図1のような構造のものでは,溶湯8が吸込管6から真空槽3に上昇する過程において,フラックスは溶湯内に混入された状態で上昇するため,真空槽3内において溶湯8表面にフラックスシールが良好に形成されることは期待できない。このため,マグネシウム溶湯自体が真空槽3内で激しく蒸発すると共に,空気中の酸素と反応して激しく燃焼することになり,マグネシウム溶湯の精製どころではない。 されることは期待できない。このため,マグネシウム溶湯自体が真空槽3内で激しく蒸発すると共に,空気中の酸素と反応して激しく燃焼することになり,マグネシウム溶湯の精製どころではない。 また,フラックスを使用すると,フラックスの成分である塩素及びフッ素ガスにより,金属部材の腐食及び環境汚染等が発生する。 (エ) なお,甲19の4における,Ca含有量が0%のものについての真空脱気処理は,フラックスを用いて行われたものにすぎない。 (オ) また,乙1記載の発明において,液状金属8がマグネシウム溶湯と仮定した場合,真空脱ガス炉に移動されたマグネシウム溶湯は,真空脱ガス炉3内に残存する空気が十分あるうちは燃焼する。同時に,真空脱ガス炉3内は真空ポンプによって真空引きされることから,真空度が上がるとマグネシウム溶湯は蒸発して外部に真空引きされ,蒸発しなかったマグネシウム溶湯とスラグのような不純物とが濃縮された状態で真空脱ガス炉3内に残されることになるから,マグネシウム溶湯の精製が適切には行われない。一方,蒸発し,真空ポンプに吸引されたマグネシウムは,残存する空気中の酸素と反応して酸化マグネシウムとなり,真空ポンプに用いられる潤滑油等の油を汚染し,金属回転部材の異常摩耗を生起し,さらに,外部に排出される際,酸化マグネシウムによる排気管の詰まりを生じたり,あるいは,凝集した金属マグネシウムによる爆発の危険性を生じる。 (カ) さらに,乙2記載の発明は,溶解・鋳造時にMg溶湯が空気と接触することを遮断するため,六ふっ化硫黄(SF6),フラックス,硫黄粉末等を使用する,マグネシウムの従来の精製方法を示したものにすぎない。 (キ) 加えて,乙3記載の発明は,本件発明の発明者の一人であ するため,六ふっ化硫黄(SF6),フラックス,硫黄粉末等を使用する,マグネシウムの従来の精製方法を示したものにすぎない。 (キ) 加えて,乙3記載の発明は,本件発明の発明者の一人であり,原告の職員でもあるBらによる発明であり,本件発明において精製対象とするところの「カルシウムを含有する難燃化マグネシウム合金」の発明であって,刊行物2記載の難燃化されていない通常のマグネシウム合金を対象とするものではない。現に,乙3には,「マグネシウム材の溶湯は空気と接触すると燃焼しやすいため,アルミニウム材の溶湯と比べ,取扱いに大きな制約がある。例えば…(1)SF6などのシールガスや硫黄を主成分とする防燃フラックスが必要である。」との記載がある。 イ取消事由2(相違点2の認定の誤り)本件決定は,相違点2として,「本件発明においては,溶湯を0.1~50Torrで少なくとも30秒間真空脱気するのに対し,刊行物2発明においては,溶湯を真空雰囲気に所定の時間曝すことが規定されているが,真空脱気の真空度や時間の具体的数値が規定されていない点」を認定する。 しかしながら,本件発明において,真空脱気するのは,単なる溶湯ではなく,カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金の溶融状態のものであるから,上記認定は誤りである。このような誤りは,そもそも,本来1つの相違点を,相違点1,2に意図的に分けたことに起因する。 ウ取消事由3(相違点1についての判断の誤り)本件決定は,相違点1について,刊行物2発明において,精製される金属としての「マグネシウム等の低圧化に耐えうる金属」を,カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金とすることは,当業者が容易に想到し得たものといえる,と判断した ,刊行物2発明において,精製される金属としての「マグネシウム等の低圧化に耐えうる金属」を,カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金とすることは,当業者が容易に想到し得たものといえる,と判断した。 しかしながら,前記アで述べたように,マグネシウムは低圧化に耐えうる金属ではないのであるから,上記判断は,その前提を欠き,誤りである。 なお,被告の指摘する乙10(公開特許公報。公開日平成6年10月4日)には,難燃化マグネシウムが低圧化に耐えうる旨の記載はないし,乙11(公開特許公報。公開日平成6年2月1日)には,マグネシウムの難燃化の知見について示唆もない。また,乙10,11とも,刊行物2が公開された後に公開されたものであるから,刊行物2の記載を解釈する上で乙10,11記載の事項を周知事項として用いることはできない。さらに,本件決定においては,難燃化マグネシウムが低圧化に耐えられるか否かについての検討は全くされていないから,最高裁昭和51年3月10日大法廷判決(民集30巻2号79頁)の趣旨からして,この点について乙10,11を引用することは,新たな公知事実を主張するものとして許されない。 エ取消事由4(相違点2についての判断の誤り)本件決定は,相違点2について,「真空脱気の真空度や時間に関し,刊行物3には,減圧によって溶融金属中に微細ガス気泡を発生させ,溶融金属中の介在物を気泡にトラップさせて浮上させ除去する溶融金属の清浄化方法において,1Torrまで減圧して20分間放置することが記載され」ていることを前提として,「刊行物2発明において,真空脱気を0.1~50Torrで少なくとも30秒間という条件を満足する範囲内の真空度及び時間とすることは,当業者が容易に想到し得たものとい 載され」ていることを前提として,「刊行物2発明において,真空脱気を0.1~50Torrで少なくとも30秒間という条件を満足する範囲内の真空度及び時間とすることは,当業者が容易に想到し得たものといえる。」と判断している。 しかしながら,刊行物3発明は,溶融金属に,これに可溶なガスをバブリングによって溶解せしめると共に,減圧によって該溶融金属中に微細ガス気泡を発生させることにより,介在物除去能力を高めるというものである。つまり,刊行物3発明は,まず初めに,溶融金属へ可溶なガスをバブリングして溶解せしめることに特色があり,可溶ガスを溶融金属へ溶解することなしに減圧するということだけでは効用がなく,技術的に意味がないものである。したがって,上記下線部の認定は誤りである。 そもそも,刊行物2発明は,真空槽の内部に溶湯の流れを非直線状にする壁部材を有するようにしたため,処理する溶湯が多量の場合においても,脱ガスを連続して効果的に行うことを目的としたものであって,刊行物3発明とは目的が相違するから,両発明を結び付ける動機はない。仮に,刊行物2発明に刊行物3発明を適用しても,上記下線部の認定が誤りである以上,「刊行物2発明において,真空脱気を0.1~50Torrで少なくとも30秒間という条件を満足する範囲内の真空度及び時間とすることは,当業者が容易に想到し得たものといえる。」との判断は誤りである。 本件発明は,刊行物3記載のバブリングガスとして普通に使われるN2ガスがマグネシウム溶湯の場合には化学反応が起こるため使用することができないことから,難燃性マグネシウム合金に溶解するようなガスを用いることなく,単に微細なきょう雑物に物理的に吸着したガスを0.1~50Torrで少なくとも30秒間真空脱気する るため使用することができないことから,難燃性マグネシウム合金に溶解するようなガスを用いることなく,単に微細なきょう雑物に物理的に吸着したガスを0.1~50Torrで少なくとも30秒間真空脱気することによって効率的に浮上させ,これに伴ってきょう雑物を浮上させることを意図したものであり,刊行物3発明とは根本的に異なる技術である。 オ取消事由5(顕著な効果の看過)本件発明は,溶融状態にある難燃性マグネシウム合金の有する固体酸化物被膜形成作用と減圧状態とが相乗的に作用することにより,溶融状態にある難燃性マグネシウム合金の内部に存在するきょう雑物を容易に取り除くことができるという,刊行物1~4記載の発明からは予測できない格別顕著な相乗効果を奏するものであるのに,本件決定は,これを看過したものである。 換言すれば,本件決定は,相違点1及び2について個別に判断するのみであって,両者を結び付けた場合について総合的な判断を行っていない。 すなわち,(ア) 本件発明の顕著な効果本件発明の構成を採用することにより,本件発明は,溶融状態にある難燃性マグネシウム合金の内部に存在するきょう雑物を容易に取り除くことができるという,刊行物1~4記載の発明からは予測できない格別顕著な効果を有する。 たとえば,甲15の実験では,カルシウム添加したものを昇温し,その後50Torrで2分間の減圧処理を行い,鋳造したもの(C)では,きょう雑物がほとんど除去されているし,カルシウム添加したものを昇温し,その後1Torrで2分間の減圧処理を行い,鋳造したもの(D)では,きょう雑物は完全に除去されている。これに対して,カルシウム添加後,そのまま昇温鋳造したも ているし,カルシウム添加したものを昇温し,その後1Torrで2分間の減圧処理を行い,鋳造したもの(D)では,きょう雑物は完全に除去されている。これに対して,カルシウム添加後,そのまま昇温鋳造したもの(A)では,きょう雑物は除去されておらず,また,カルシウム添加後,Arガスによりバブリング処理し,昇温鋳造したもの(B)では,きょう雑物が若干除去されているものの依然として残っている。 また,本件発明においては,カルシウム添加により水素含有量が増加し,含有水素が介在物の表面及び層間に凝集して気泡となり,真空脱気により気泡が膨張して浮力を増し,気泡及び介在物が難燃性マグネシウム合金の溶湯表面に浮上することにより,介在物と溶解水素が同時に除去される(甲19の4)。このような効果は,刊行物1~4からは予測できないものである。 (イ) 本件発明に至る経緯従来から,カルシウムを添加すると,①マグネシウムの耐食性を害する,②硬質の金属間化合物であるAl2Ca相が多量に結晶粒界に晶出して強度及び延びを低下させる,③介在物が顕著に増加する,という問題が発生すると考えられており,これらの理由により,難燃性マグネシウム合金は,従来用いられることがなかった。また,通常のマグネシウム合金の溶湯を真空中に保持すると,マグネシウムの蒸気圧が高いために激しい蒸発が起こり,現実的にはとても精製操作どころではなかったことから,難燃性マグネシウム合金においても同様に激しい蒸発が起こると考えられていた。これらの事情から,本件特許出願前には,難燃性マグネシウム合金において真空脱ガス法が試みられなかった。 しかるところ,本件発明者らの研究により,①高純度の難燃性マグネシウム合金の耐食性は,カルシウムを含 出願前には,難燃性マグネシウム合金において真空脱ガス法が試みられなかった。 しかるところ,本件発明者らの研究により,①高純度の難燃性マグネシウム合金の耐食性は,カルシウムを含まないマグネシウム合金に劣らないこと,②金属間化合物の晶出よりも,除去されずに残留する介在物の存在の方がより大きな強度阻害効果を持つこと,③難燃性マグネシウム合金では,溶湯表面に主として酸化カルシウムからなる緻密な保護被膜が容易に形成され,保護被膜に覆われた溶湯の見かけ上の蒸気圧が大きく低下することが明らかとなり,その結果,難燃性マグネシウム合金において真空脱ガス法を想到するに至った。 (ウ) 本件発明に係る難燃性マグネシウム合金の精製方法の原理(甲14)内部が常圧である坩堝等の容器内に収容された難燃性マグネシウム合金溶湯の表面は酸化カルシウムからなる6~20nmのオーダーの厚さの固体酸化被膜が形成されている。この被膜は緻密なものであり,大気からのマグネシウム溶湯への酸素の供給やマグネシウムの蒸気圧による溶湯表面からのマグネシウムの蒸発を防ぐ効果的な障壁となっていて,見かけ上の蒸気圧が大きく低下する。この状態では,溶湯内部に溶解しているガスが固体酸化被膜を内部から押すことで生じる圧力が,大気中の空気の分子が押す圧力と釣り合っている。 容器内を減圧すると,減圧によって溶湯の内部の圧力が相対的に高くなり,溶湯中に溶解していたガスがきょう雑物表面を核生成の場にして気泡として形成され,吸着ガスとなる。 減圧状態を一定時間維持すると,吸着ガスは徐々に時間と共に成長し,きょう雑物を浮上させる駆動力になり,きょう雑物とともに浮上する。浮上した吸着ガスは,溶湯表面の固体酸化被膜を 減圧状態を一定時間維持すると,吸着ガスは徐々に時間と共に成長し,きょう雑物を浮上させる駆動力になり,きょう雑物とともに浮上する。浮上した吸着ガスは,溶湯表面の固体酸化被膜を破って外界へ散逸し,また,きょう雑物も固体酸化被膜に付着したり,固体酸化被膜を破って表面に付着したりする。 難燃性マグネシウム合金は活性で酸化し易いため,破られた箇所で大気中の酸素と接触することにより,新たな固体酸化物被膜を生成し破れた箇所を瞬間的に再生する。このような現象を繰り返すことで,介在物の除去が行われる。 2 請求原因に対する認否請求原因(1)(2)(3)は認めるが,(4)は争う。 3 被告の反論本件決定の判断に誤りはなく,原告の主張する本件決定の取消事由は理由がない。 (1) 取消事由1についてア刊行物2の段落【0020】の記載によれば,刊行物2発明において,精製される金属が,マグネシウム等の低圧化に耐えうる金属であることは明らかであるから,本件決定の相違点1の認定に誤りはない。 イ乙1(特許公報昭56-41346号。特許出願公告),乙2(特表平6-501990号。公表特許公報),乙3(特許協力条約に基づいて公開された国際出願WO第93/15238号パンフレット)等には,マグネシウム合金を真空中で攪拌しながら強化材を添加することや,マグネシウムないしマグネシウム合金の脱気(脱ガス)に真空処理を用いることが記載されている。 また,原告の職員であり,かつ,本件発明の発明者でもあるB,C,Dの研究論文(甲19の4)には,Ca含有量が0%のもの(すなわち,難燃化していないマグネシウム合金)を,Caを添加した難燃化マグネシウム合金と同様に真空脱 り,かつ,本件発明の発明者でもあるB,C,Dの研究論文(甲19の4)には,Ca含有量が0%のもの(すなわち,難燃化していないマグネシウム合金)を,Caを添加した難燃化マグネシウム合金と同様に真空脱気処理すること,及びそのような真空脱気処理により,水素含有量が低減し引張強度が増大すること(すなわち,真空脱気処理ないし精製処理が良好になされること)が記載されている。 これらの記載からも,マグネシウムが低圧化に耐えうる金属であることは明らかである。 ウなお,刊行物2発明について,その真空槽内が,大気圧より低い圧力の空気で満たされていると解すべき根拠はない。また,その吸込管の周辺における溶湯の燃焼防止手段は,フラックスの使用に限られないし,仮にフラックスを使用し,そこに腐食性物体が含まれていても,それに対応する技術手段(真空ポンプまでの流路に各種の分離回収手段を設ける等)は周知であるから,そのことは,真空精製処理の妨げにはならない。 また,原告が指摘する甲7~10には,マグネシウムの融点における蒸気圧は367Paであること,マグネシウムは高温で酸化しやすく燃焼すること等が記載されているだけで,「マグネシウム溶融金属は低圧化に耐えられない」旨の記載は全く存在しない。 さらに,甲16~18の映像や写真は,マグネシウム合金を真空(低圧)下で処理する際に付随する可能性がある多少の困難性を指摘するだけのものであって,難燃化していないマグネシウム合金が低圧化に耐えられないことを裏付けるものではない。 (2) 取消事由2について原告の主張するように,本件発明において,真空脱気の対象が,単なる溶湯ではなく,カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金の溶融状態のものであっ 。 (2) 取消事由2について原告の主張するように,本件発明において,真空脱気の対象が,単なる溶湯ではなく,カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金の溶融状態のものであっても,金属を溶融状態で真空脱気することは,本件発明と刊行物2発明との一致点として認定されており,また,精製される金属が「カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金」であることは,相違点1として認定されているから,本件決定における相違点2の認定に誤りはない。 (3) 取消事由3について前記(1)のとおり,マグネシウムが低圧化に耐えうる金属であるとの本件決定の認定に誤りはないから,同認定が誤りであることを前提とした原告の主張は,その前提を欠き,理由がない。 刊行物1記載のカルシウムが添加されたマグネシウム合金は,難燃化されていることからみて,通常のマグネシウム合金と比べて処理が容易であることが容易に予測できるし,乙3の記載からみると,カルシウムを含有したマグネシウム合金は,低圧化に耐えうることが示唆されているといえるから,「マグネシウム等の低圧化に耐えうる金属」をカルシウムを含有する難燃性のマグネシウム合金とすることは,当業者が容易に想到し得たことであるとした,本件決定の相違点1についての判断に誤りはない。 さらに付言すれば,乙10,11のように,Caを含むマグネシウム合金(すなわち,難燃化マグネシウム合金)を真空下で溶解処理(真空精製処理)することは,本件特許の出願前において周知であった。換言すれば,少なくとも,難燃化マグネシウム合金は低圧化に耐えられることが周知であったといえる。したがって,刊行物2発明における「精製される金属としての(マグネシウム等の)低圧化に耐えうる金属」を難燃化マグネシウム とも,難燃化マグネシウム合金は低圧化に耐えられることが周知であったといえる。したがって,刊行物2発明における「精製される金属としての(マグネシウム等の)低圧化に耐えうる金属」を難燃化マグネシウム合金とすることには,何らの困難性もない。 (4) 取消事由4について刊行物3発明及び刊行物4発明は,本件発明において規定された真空脱気条件が従来公知の技術で採用されている範囲内のものであることを明らかにするために引用されたものであり,また,これらの発明は,「溶融金属を真空で処理して脱気やきょう雑物の除去を行う」点で,本件発明や刊行物2発明と軌を一にするものであるから,本件決定の相違点2についての判断に誤りはない。 (5) 取消事由5について本件発明の効果は,格別に顕著なものとはいえない。すなわち,刊行物2発明は,真空脱ガスにより,溶湯中に含まれるガス及び有害不純物を除去する効果を奏するものであり,しかも,その効果は,マグネシウム等の低圧化に耐えうる溶融金属(溶湯)を対象として達成されるのであるから,本件発明の「溶融状態にある難燃性マグネシウム合金の内部に存在するきょう雑物を容易に取り除くことができる」という効果と格別に相違するものではない。 また,本件決定は,相違点1,2を結びつけた場合について総合的な判断を行っている。すなわち,相違点2の判断においては,相違点1において容易想到性が判断された「難燃性マグネシウム合金を溶融状態において,真空脱気してきょう雑物を溶湯表面に浮上させる金属の精製方法。」における真空脱気条件としての「0.1~50Torrで少なくとも30秒間」という規定の技術的意義やその規定により達成しようとする技術的課題について検討されており,このような検討は,相違点1,2の 」における真空脱気条件としての「0.1~50Torrで少なくとも30秒間」という規定の技術的意義やその規定により達成しようとする技術的課題について検討されており,このような検討は,相違点1,2の結びつきによる技術的意義や,それらの結びつきによって達成しようとする技術的課題の検討に他ならない。 第4 当裁判所の判断 1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(本件発明の内容),(3)(本件決定の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。 2 本件決定は,前記のように,平成9年4月2日に出願された本件発明と平成5年10月12日に頒布された刊行物である刊行物2(甲2)記載の発明とを対比し,一致点及び相違点1,2を,下記のとおり掲げている。 記(一致点)金属を溶融状態において,真空脱気してきょう雑物を溶湯表面に浮上させる金属の精製方法。 (相違点1)精製される金属が,本件発明においては,「カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金」であるのに対し,刊行物2発明においては,「マグネシウム等の低圧化に耐えうる金属」である点。 (相違点2)本件発明においては,溶湯を0.1~50Torrで少なくとも30秒間真空脱気するのに対し,刊行物2発明においては,溶湯を真空雰囲気に所定の時間曝すことが規定されているが,真空脱気の真空度や時間の具体的数値が規定されていない点。 原告及び被告は,前記相違点記載を前提として主張を展開しているので,以下それらをもとにして順次判断する。 3 原告主張の取消事由1(相違点1の認定の誤り)について原告は,マグネシウムは低圧化に耐えうる金属ではないから,本件決定が,相違点1とし ので,以下それらをもとにして順次判断する。 3 原告主張の取消事由1(相違点1の認定の誤り)について原告は,マグネシウムは低圧化に耐えうる金属ではないから,本件決定が,相違点1として,精製される金属が,本件発明においては,「カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金」であるのに対し,刊行物2発明においては,「マグネシウム等の低圧化に耐えうる金属」である点を認定したのは,誤りである旨主張するので,検討する。 (1) 刊行物2(甲2)には,次の記載がある。 「真空槽に設けられる吸入管および吐出管を有し,溶湯を前記吸入管より前記真空槽に流入させてガスを真空中に放出させ,前記吐出管より流出させることにより連続して脱ガスする連続真空脱ガス装置において,前記真空槽は,内部に前記溶湯の流れを非直線状にする壁部材を有することを特徴とする連続真空脱ガス装置。」(【請求項1】)「従来の連続真空脱ガス装置によると,脱ガスされる溶湯が真空槽内をほぼ層流状態で流れるので,真空雰囲気に曝される面積が小さいことや,真空槽内をショートパスして流出することがあり,真空状態に充分に曝されないため,処理する溶湯が多量の場合は充分な脱ガスがなされないという問題がある。従って,本発明の目的は,処理する溶湯が多量の場合においても,脱ガスを連続して効果的に行うことができる連続真空脱ガス装置を提供することにある。」(段落【0005】)「図1は,本発明の連続真空脱ガス装置の一実施例を示し,隔壁1によって流路2が内部に形成された真空槽3と,真空槽3の上部に形成された真空ポンプ排気口4およびリーク弁5と,真空槽3の底部より連続して垂直に形成された吸込管6および吐出管7と,溶湯8を受容する容器9と,吐出管7より吐出される溶湯8を 3と,真空槽3の上部に形成された真空ポンプ排気口4およびリーク弁5と,真空槽3の底部より連続して垂直に形成された吸込管6および吐出管7と,溶湯8を受容する容器9と,吐出管7より吐出される溶湯8を受容する容器10を有する。」(段落【0008】)「上記した連続真空脱ガス装置により溶湯の脱ガスを行うには,まず,脱ガスされる溶湯8に吸込管6を浸漬し,さらに,吐出管7の吐出口を密封する。この後に真空ポンプ排気口4に真空ポンプ(図示せず)を接続して真空排気し,真空槽3を真空化する。この真空化によって,真空槽3と外気との間に圧力差が生じることにより,吸込管6より溶湯8が真空槽3に吸入される。真空槽3に吸入された溶湯8は,真空槽3の内部を流路2に従って移動しながら,ガスを真空中に放出することによって脱ガスされる。」(段落【0010】~【0011】)「本発明に適用される溶融金属は,例えば,鉄,アルミニウム,銅,チタン,マグネシウム等の低圧化に耐えうるものであれば特に限定されず,その他の液体であっても良い。」(段落【0020】)上記記載に図1の記載を併せ考慮すれば,上記記載が誤りであると認められるような特段の事情がない限り,刊行物2には,「マグネシウム等の低圧化に耐えうる金属を溶融状態において,真空脱気してきょう雑物を溶湯表面に浮上させる金属の精製方法」が記載されていると認められる。 そして,特公昭56-41346号公報(乙1)には,「本発明は鋳造等の目的のため溶解金属を処理及び移動するための設備に関するものである。」(1頁右欄2~3行),「ポンプ10によって移動する液状金属は真空ポンプ(図示せず)に連結された炉3中で脱気される。炉3は脱ガス速度を促進する液状金属浴8を有効に撹拌するため液状金属に浸 である。」(1頁右欄2~3行),「ポンプ10によって移動する液状金属は真空ポンプ(図示せず)に連結された炉3中で脱気される。炉3は脱ガス速度を促進する液状金属浴8を有効に撹拌するため液状金属に浸漬した電磁ポンプ12を含んでいる。」(2頁右欄11~15行),「特に,本発明の装置はアルミニウム,亜鉛及びマグネシウムのような金属について使用するのが有利である。」(2頁右欄39~41行)との記載がある。 また,特表平6-501990号公報(乙2)には,「本発明において,Zr及びSi試薬により溶融したMgを処理する前に,溶融した金属を脱気し,溶解している水素ガスを少なくとも一部除去する。この脱気は,例えば,気体を散布すること,真空にすること,…又はこれらの脱気方法の組合せにより行われる。」(3頁左上欄22~末行)との記載がある。 このように,乙1,2には,マグネシウムないしマグネシウム合金の脱気(脱ガス)に真空処理を用いることが記載されているから,このような記載からみても,刊行物2の前記記載が誤りであるとは認められない。 したがって,本件決定の相違点1の認定に誤りはない。 (2) これに対し,原告は,甲7~10の記載によれば,マグネシウム溶融金属が,大気圧において激しく蒸発,燃焼するため,溶解・鋳造時には大気から遮断する必要があり,まして低圧状態においては,蒸発が加速され一層激しく燃焼することから,脱ガス処理において低圧化に耐えうるものでない旨主張する。 しかしながら,まず,マグネシウムの燃焼については,刊行物1(甲1)には,「一般にマグネシウム材の融体は空気に触れると燃焼しやすいため,アルミニウム材溶湯に比べ,取り扱いに大きな制約がある。(1)ダイキャストやスクイズキャストではSF6 ついては,刊行物1(甲1)には,「一般にマグネシウム材の融体は空気に触れると燃焼しやすいため,アルミニウム材溶湯に比べ,取り扱いに大きな制約がある。(1)ダイキャストやスクイズキャストではSF6又はSF6とCO2の混合ガスなどでシールし,またグラビティ鋳造では硫黄を主成分とする防燃フラックスでシールする必要がある。」(段落【0003】)との記載があり,また,甲7(「改訂5版金属便覧」平成2年3月31日発行)には,「マグネシウムは高温で酸化しやすく,燃焼するので,溶解の際にはるつぼ中に地金とともにMgCl2を主成分とするフラックスを散布して溶解し,溶融フラックスが溶融合金表面を完全に覆うか,溶融合金表面に硫黄粉末を散布してSO2ガスで表面を覆い,酸化を防止する。鋳込み中も硫黄粉末をかけるなどして,SO2ガス雰囲気で保護する。」(634頁右欄17~23行)との記載があるから,これらの記載によれば,マグネシウム溶湯の処理に際して,不活性ガス,フラックス等のシールを行うことにより燃焼を防止することは,本件特許の出願時に周知であったと認められる。 また,不活性ガス,フラックス等を用いなくても,真空処理を行う以上,特に外部から空気を取り入れる構成を採用しない限り,当初はマグネシウムが燃焼しても,まもなく酸素がなくなることにより燃焼が止まることは技術常識であるから,マグネシウムの燃焼は一時的な現象にすぎない。 次に,マグネシウムの蒸発については,マグネシウムの蒸気圧は,融点において約2.7Torrである(甲8)ところ,マグネシウムの真空処理に際して,マグネシウムの蒸発を抑制するためには,マグネシウムの蒸気圧よりも周囲の圧力(真空処理圧力)を高く設定すればよいことは技術常識である。たとえば,本件発明における真空処理圧力は ムの真空処理に際して,マグネシウムの蒸発を抑制するためには,マグネシウムの蒸気圧よりも周囲の圧力(真空処理圧力)を高く設定すればよいことは技術常識である。たとえば,本件発明における真空処理圧力は0.1~50Torrとされているから,上記のように真空処理圧力を適宜設定することは,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)であれば当然に配慮すべき事項にすぎない。 また,真空ポンプによる吸引装置において,ポンプの吸引路に有害塵芥類捕捉用のフィルタの類を設置することは,家庭用吸引式電気掃除機などにもみられるように当然の技術であるから,真空ポンプの吸引路に酸化マグネシウムを捕捉するフィルターを設置するなどの手段を用いて,蒸発したマグネシウムにより発生しうる問題を阻止することは,当業者であれば,当然配慮すべき事項にすぎない。 したがって,マグネシウムが燃焼・蒸発により低圧化に耐えうるものでないということはできない。 (3) なお,念のため付言すると,本件発明に係る特許請求の範囲の記載は,「カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金を溶融状態において,…真空脱気してきょう雑物を溶湯表面に浮上させることを特徴とする難燃性マグネシウム合金の精製方法。」というものであるから,そこでは,不活性ガスやフラックスを用いた真空処理は何ら排除されていない。また,刊行物2(甲2)においても,不活性ガスやフラックスの使用の有無については何ら記載されておらず,特に限定されていないから,刊行物2発明も同様に,不活性ガスやフラックスを用いた真空処理が排除されるものではない。さらに,本件決定の認定した,本件発明と刊行物2発明との一致点は,「金属を溶融状態において,真空脱気してきょう雑物を溶湯表面に浮上させる金属の精製方法 クスを用いた真空処理が排除されるものではない。さらに,本件決定の認定した,本件発明と刊行物2発明との一致点は,「金属を溶融状態において,真空脱気してきょう雑物を溶湯表面に浮上させる金属の精製方法」というものにすぎないから,そこでも同様に,不活性ガスやフラックスを用いた真空処理は排除されていない。 (4) 原告は,甲16~18から,難燃化していない通常のマグネシウム合金が,その精製処理において低圧化に耐えうるものでないことが明らかである旨主張する。 しかしながら,甲16~18は,マグネシウムの燃焼・蒸発を抑制するために当業者が当然に行うべき手段(上記(2)のとおり)を何ら講じることなく,あえて精製処理が困難な条件を設定した上,そこでのマグネシウム合金の状況を示しているものにすぎないから,これによって,通常のマグネシウム合金が精製処理において低圧化に耐えうるものでないということはできない。 (5) また,原告は,「刊行物2発明の真空槽内は,大気圧より低い圧力の空気で満たされていると考えられるから,溶湯8の表面をフラックスでシールする必要があるが,①図1のような構造のものでは,良好なシールはできないため,真空槽内ではマグネシウムの激しい蒸発,燃焼が起こり,精製は不可能であるし,②また,フラックスの使用により,金属部材の腐食や環境汚染等が発生する。」旨主張する。 しかしながら,刊行物2発明の真空槽内は,大気圧より低い圧力の空気で満たされていると解すべき記載は,刊行物2にはない。原告の指摘するとおり,刊行物2発明においては,真空槽3にリーク弁が設けられているものの,証拠(乙4~7)によれば,刊行物2の頒布時(平成5年10月12日)以前においては,真空処理装置におけるリーク弁を,真空ポンプの停止時等に,真 明においては,真空槽3にリーク弁が設けられているものの,証拠(乙4~7)によれば,刊行物2の頒布時(平成5年10月12日)以前においては,真空処理装置におけるリーク弁を,真空ポンプの停止時等に,真空処理装置内を大気圧に戻すために用いることが周知技術であったと認められるから,刊行物2発明におけるリーク弁も,むしろこのようなものであると解するのが自然であって,原告が主張するような,真空処理中に外部の空気を真空槽内に取り入れるものであるとは認められない。したがって,原告の上記主張は,その前提を欠き,理由がない。 (6) 次に,原告は,乙1記載の発明では,真空脱ガス炉3内に残存空気がある間はマグネシウム溶湯が燃焼し,同時に,真空度が上がるとマグネシウム溶湯は蒸発し,蒸発しなかったマグネシウム溶湯と不純物とが濃縮された状態で真空脱ガス炉3内に残るため,マグネシウム溶湯の精製が適切に行われず,また,蒸発したマグネシウムは,酸化マグネシウムとなり,汚染や排気管のつまり等の問題を生ずる旨主張する。 しかしながら,真空脱ガス炉3内は,真空処理が行われ,「金属は常に空気から遮断されており,酸化が抑制される」(4欄30~31行)状態にあるから,マグネシウムの燃焼は抑制されており,加えて,真空処理圧を適宜設定すれば(前記(2)参照),精製が適切に行われないほどマグネシウム溶湯の蒸発が発生することは考えにくい。また,溶湯内の不純物を捕集するフィルターや,真空ポンプの吸引路における酸化マグネシウムを捕捉するフィルター等(前記(2)参照)の手段を用いて,これらにより発生しうる問題点を阻止することは,当業者であれば,当然配慮すべき事項にすぎない。したがって,原告の上記主張は理由がない。 (7) 次に,原告は,乙2は,溶解・鋳造時にMg溶湯が ,これらにより発生しうる問題点を阻止することは,当業者であれば,当然配慮すべき事項にすぎない。したがって,原告の上記主張は理由がない。 (7) 次に,原告は,乙2は,溶解・鋳造時にMg溶湯が空気と接触することを遮断するため,六ふっ化硫黄(SF6),フラックス,硫黄粉末等を使用する,マグネシウムの従来の精製方法を示したものにすぎない旨主張する。 原告の指摘するように,乙2には,「…MgをZr及びSi材料と接触させ金属間沈殿物を形成する前に,保護フラックスもしくは保護大気下で溶融したMgを脱気し,少なくとも感知できる量の水素を除去し…」(請求項1)等の記載があるから,乙2記載の発明は,保護フラックスもしくは保護大気(不活性ガス)を用いたマグネシウムの真空処理方法の発明であると認められる。 ところで,前記(3)のとおり,刊行物2発明は,不活性ガスやフラックスを用いた真空処理を排除するものではない。したがって,乙2が不活性ガスやフラックスを用いたマグネシウムの真空処理方法であっても,乙2は,刊行物2における「マグネシウムが低圧化に耐えうる」旨の記載が誤りでないことを裏付けるものというべきであるから,原告の上記主張も理由がない。 (8) 以上のとおり,原告の取消事由1の主張は理由がない。 なお,付言すると,仮に,原告の主張するとおり,相違点1,すなわち,精製される金属が,本件発明においては,「カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金」であるのに対し,刊行物2発明においては,「マグネシウム等の低圧化に耐えうる金属」である点との認定のうち,下線部が誤りであったとしても,後記5(2)のとおり,難燃化マグネシウム合金の真空処理自体が周知であることを考慮すれば,原告の主張する誤りは,相違点1についての判 えうる金属」である点との認定のうち,下線部が誤りであったとしても,後記5(2)のとおり,難燃化マグネシウム合金の真空処理自体が周知であることを考慮すれば,原告の主張する誤りは,相違点1についての判断に影響を与えるものではない。 4 取消事由2(相違点2の認定の誤り)について原告は,本件発明において,真空脱気の対象は,単なる溶湯ではなく,カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金の溶融状態のものであるから,本件決定が相違点2として,「本件発明においては,溶湯を0.1~50Torrで少なくとも30秒間真空脱気するのに対し,刊行物2発明においては,溶湯を真空雰囲気に所定の時間曝すことが規定されているが,真空脱気の真空度や時間の具体的数値が規定されていない点。」を認定したのは,誤りであり,このような誤りは,本来1つの相違点を,相違点1,2に意図的に分けたことに起因する旨主張する。 しかしながら,本件決定は,本件発明と刊行物2発明との一致点を「金属を溶融状態において,真空脱気してきょう雑物を溶湯表面に浮上させる金属の精製方法。」と認定した上で,相違点1を,精製される金属が,本件発明においては,「カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金」であるのに対し,刊行物2発明においては,「マグネシウム等の低圧化に耐えうる金属」である点と認定している。そうすると,原告の主張する「真空脱気の対象が,カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金の溶融状態のものである」点は,相違点1として認定されていることが明らかである。 また,相違点1は,マグネシウム合金の組成に関するものであり,相違点2は,真空脱気操作に係る真空度及び継続時間に係るものであって,互いに別異の範疇に含まれる事項であるから,これらを個別の相違点として認定したことに何 ,マグネシウム合金の組成に関するものであり,相違点2は,真空脱気操作に係る真空度及び継続時間に係るものであって,互いに別異の範疇に含まれる事項であるから,これらを個別の相違点として認定したことに何ら問題はない。なお,本件発明が顕著な相乗効果を有するものではないことは,後記7のとおりである。 以上のとおり,原告の取消事由2の主張も理由がない。 5 取消事由3(相違点1についての判断の誤り)について原告は,マグネシウムは低圧化に耐えうる金属ではなく,相違点1の認定は誤りであるから,本件決定の相違点1についての判断は,その前提を欠き,誤りである旨主張する。 (1) しかしながら,前記3のとおり,マグネシウムは低圧化に耐えうる金属であるということができ,本件決定の相違点1の認定に誤りはないから,原告の上記主張は理由がない。 そして,刊行物1(甲1)には,カルシウム等のアルカリ土類金属を添加して難燃化したマグネシウム材を融体の状態で精製し,不純物を除去することが記載されているから,カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金を精製する必要がある旨が記載されていると解することができる。そうであれば,刊行物2発明における精製対象である「マグネシウム等の低圧化に耐えうる金属」を,刊行物1発明における「カルシウムを含有する難燃性マグネシウム合金」とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことというべきであり,これと同旨の本件決定の判断に誤りはない。 (2) また,乙3(特許協力条約に基づいて公開された国際出願WO第93/15238号パンフレット)には,「マグネシウム又はマグネシウム合金の溶湯に例えば必要量のCa,又はCaとZnなどの防錆向上性金属を添加した後,…撹拌棒で撹拌し,均一に溶解させる。…均一 O第93/15238号パンフレット)には,「マグネシウム又はマグネシウム合金の溶湯に例えば必要量のCa,又はCaとZnなどの防錆向上性金属を添加した後,…撹拌棒で撹拌し,均一に溶解させる。…均一に溶解するまではSF6,CO2,N2,Arガスなどでシールすることが望ましい。均一に溶解した撹拌後期にはこのようなガスでシールしなくても,すなわち大気に開放して撹拌しても溶湯は難燃化しているので,アルカリ土類金属添加していない溶湯にみられるような発火や燃焼はない。 また,リターン材等の精錬では前記の不活性ガスの放出…や脱水素化のために真空処理などの工程が追加される。この場合,本発明でいう防錆力向上元素のうちZn,Cd,Sn,Pbなどを既に含有した合金では,一部が揮散するので,その分を見込んで添加することが不可欠である。」(8頁3~16行)との記載がある。 さらに,乙10(特開平6-279905号公報)には,「リチウム6重量%超10.5重量%未満及びカルシウム0.3~3重量%を含有し,残部がマグネシウムと不可避の不純物からなることを特徴とする超塑性マグネシウム合金。」(請求項1),「Mg-Li合金は酸素含有雰囲気中で溶解させるとMgが燃焼するが,このMg-Li合金にカルシウムを添加すると酸素含有雰囲気中での溶解時のMgの燃焼が抑制される。従って,本発明の超塑性マグネシウム合金の溶解は完全な不活性雰囲気中でなくても,あるいは空気中でも実施できる。」(段落【0010】),「※実施例1~14及び比較例1~5 アルゴン雰囲気の真空溶解炉に,表1に示す組成の合金となるように原材料を装入し,溶解させた。」(段落【0012】)との記載がある。 これらの記載によれば,本件特許の出願時において,難燃性マグネシウム合金の真空 に,表1に示す組成の合金となるように原材料を装入し,溶解させた。」(段落【0012】)との記載がある。 これらの記載によれば,本件特許の出願時において,難燃性マグネシウム合金の真空処理自体が周知であると認められるから,この周知技術も考慮すれば,当業者であれば,上記(1)の事項は,より一層容易に想到し得たことというべきである。 なお,乙10,11が刊行物2の公開後に公開されたものでも,本件特許の出願時以前に公開されたものである以上,本件特許の出願時点における当業者が,上記周知技術をも参照することができたことは明らかである。また,上記(1)の説示は,刊行物2発明に刊行物1発明を適用する際に,上記周知技術を参照したものにすぎないから,新たな公知技術を引用したものではない。 (3) 以上のとおり,原告の取消事由3の主張も理由がない。 6 取消事由4(相違点2についての判断の誤り)について原告は,①刊行物2発明と刊行物3発明とは目的が相違するから,両発明を結び付ける動機はないし,また,②刊行物3発明は,まず初めに,溶融金属へ可溶なガスをバブリングして溶解せしめることに特色があり,可溶ガスを溶融金属へ溶解することなしに減圧するということだけでは技術的に意味がないから,本件決定が,「真空脱気の真空度や時間に関し,刊行物3には,減圧によって溶融金属中に微細ガス気泡を発生させ,溶融金属中の介在物を気泡にトラップさせて浮上させ除去する溶融金属の清浄化方法において,1Torrまで減圧して20分間放置することが記載され」ていると認定し,これを前提として相違点2について判断したのは誤りである旨主張する。 しかし,本件決定が相違点2について引用した刊行物2発明ないし刊行物4発明は,いずれも,溶融金属に真空 」ていると認定し,これを前提として相違点2について判断したのは誤りである旨主張する。 しかし,本件決定が相違点2について引用した刊行物2発明ないし刊行物4発明は,いずれも,溶融金属に真空処理(すなわち減圧操作)を施して,含有されている不純物を除去しようとする操作である点で同一の技術分野に属するものであるから,当業者がこれらの発明を組み合わせる動機付けがあるというべきである。 また,本件発明で限定されている真空脱気の真空度及び継続時間の範囲は,本件明細書(甲6)の記載によれば,「真空度については,合金中のガスに随伴させてきょう雑物を溶湯表面に効果的に浮上させるには50Torr以下の圧力が用いられる。しかし,あまり真空度を高くしても,その割には効果の向上はみられず,むしろ装置面で経済的に不利となるので,圧力の下限は0.1Torrとする。真空脱気時間は30秒間以上が必要であり,30秒間未満ではきょう雑物は十分に除去されない。」(段落【0009】)との理由,すなわち,主として経済性と効果との兼ね合いから決定されたものであることが認められる。 そうであれば,刊行物2発明において,刊行物3,4に開示された真空脱気の真空度及び継続時間を参照しながら,そこに開示された範囲を含む真空度及び継続時間を,経済性と効果との兼ね合いも考慮しながら適宜設定することは,当業者であれば容易に想到し得る事項というべきであり,このことは,刊行物3発明が,まず溶融金属に可溶なガスをバブリングして溶解せしめるものであっても,何ら変わるところはない。したがって,これと同旨の本件決定の判断は相当であり,原告の上記主張は理由がない。 以上のとおり,原告の取消事由4の主張も理由がない。 7 取消事由5(顕著な効果の看過)について原告 て,これと同旨の本件決定の判断は相当であり,原告の上記主張は理由がない。 以上のとおり,原告の取消事由4の主張も理由がない。 7 取消事由5(顕著な効果の看過)について原告は,本件発明においては,溶融状態にある難燃性マグネシウム合金の有する固体酸化物被膜形成作用と減圧状態とが相乗的に作用することにより,溶融状態にある難燃性マグネシウム合金の内部に存在するきょう雑物を容易に取り除くことができるという,刊行物1~4記載の発明からは予測できない格別顕著な効果を奏するものであるのに,本件決定がこれを看過した(換言すれば,本件決定は,相違点1及び2について個別に判断するのみであって,両者を結び付けた場合について総合的な判断を行っていない)旨主張するので,検討する。 (1) 刊行物2(甲2)には,「【従来の技術】溶融金属(以下,溶湯という)を真空雰囲気に曝すと,溶湯中に含まれる,例えば,水素,酸素等のガスの除去,有害不純物成分の除去等の効果があり,高品質,高信頼性を要求される金属材料の製造においては溶湯の真空処理による脱ガスが行われる。」(段落【0002】),「【発明の効果】…本発明の連続真空脱ガス装置によると,真空槽の内部に溶湯の流れを非直線状にする壁部材を有するようにしたため,処理する溶湯が多量の場合においても,脱ガスを連続して効果的に行うことができる。」(段落【0022】)との記載があるから,刊行物2発明は,真空処理による脱ガスにより,溶湯中に含まれるガスの除去や有害不純物成分の除去等の効果を奏し,高品質な金属材料の製造を実現することができるものと認められる。そして,前記3のとおり,上記効果は,マグネシウム等の低圧化に耐えうる溶融金属(溶湯)を対象として達成されるものである。そうであれば,溶融状態にある難燃性マ 造を実現することができるものと認められる。そして,前記3のとおり,上記効果は,マグネシウム等の低圧化に耐えうる溶融金属(溶湯)を対象として達成されるものである。そうであれば,溶融状態にある難燃性マグネシウム合金の内部に存在するきょう雑物を容易に取り除くことができるという本件発明の効果は,刊行物2発明から予測できるものにすぎないというべきであり,刊行物2発明の効果に比較して格別に顕著なものということはできない。 そもそも,本件発明においては,カルシウムの含有量は一切規定されていないところ,カルシウムが含まれていないマグネシウム溶湯の真空処理と,ごく微量のカルシウムが含まれているマグネシウム溶湯の真空処理とで,マグネシウム合金の内部に存在するきょう雑物の除去の程度に格別顕著な差が生じるとは考え難いから,カルシウムの含有量の多少にかかわらず常に本件発明が顕著な作用効果を奏するということはできない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (2) これに対し原告は,本件発明の顕著な効果の根拠として甲15(平成15年3月19日付けD作成の「溶解および溶湯処理条件」なる書面)を挙げる。 しかしながら,甲15においては,カルシウムを添加した難燃性マグネシウムについて,何ら精製処理をしなかった場合(A),いわゆるバブリング処理をした場合(B)に比べて,本件発明の真空処理をした場合(C,D)に,不純物がより除去されていることを示すにすぎないところ,刊行物2発明においては真空処理が行われているのであるから,甲15に基づいて本件発明の効果が刊行物2発明の効果に比較して格別に顕著なものということはできない。 (3) また,原告は,本件発明においては,カルシウム添加により水素含有量が増加し,含有水素の気泡及 づいて本件発明の効果が刊行物2発明の効果に比較して格別に顕著なものということはできない。 (3) また,原告は,本件発明においては,カルシウム添加により水素含有量が増加し,含有水素の気泡及び介在物が溶湯表面に浮上することにより,介在物と溶解水素が同時に除去されるところ(甲19の4),このような効果は,刊行物2からは予測できない旨主張する。 しかしながら,仮に,カルシウム添加により水素含有量が増加するとしても,本件発明においては,カルシウムの含有量は一切規定されていないところ,カルシウムが含まれていない場合と,ごく微量のカルシウムが含まれている場合とで,水素の含有量が大きく異なるとは考え難い。現に,甲19の4の523頁のFig6の記載でも,カルシウムが含まれていない場合と,ごく微量のカルシウムが含まれている場合とで,水素の含有量はほとんど異ならない。したがって,仮に,原告の主張するように,本件発明には,含有水素の気泡及び介在物が溶湯表面に浮上することにより,介在物と溶解水素が同時に除去される効果があるとしても,同効果が,カルシウムの含有量の多少にかかわらず常に刊行物2から予測できないような顕著なものであるということはできない。 (4) なお,原告は,難燃性マグネシウム合金が従来用いられることがなく,また,難燃性マグネシウム合金においても通常のマグネシウム合金と同様に激しい蒸発が起こると考えられていたため,本件出願前に,難燃性マグネシウム合金において真空脱ガス法が試みられなかった旨主張する。 しかしながら,前記5(2)のとおり,難燃性マグネシウム合金の真空処理は本件特許出願前に周知であったから,原告の上記主張は誤りである。 (5) また,原告は,本件発明の発明者が本件発明を想到するに至った理由 前記5(2)のとおり,難燃性マグネシウム合金の真空処理は本件特許出願前に周知であったから,原告の上記主張は誤りである。 (5) また,原告は,本件発明の発明者が本件発明を想到するに至った理由をるる述べるが,発明者が発明を想到するに至った主観的な理由は,発明の進歩性の判断に何ら影響を与えるものではない。 (6) さらに,原告は,本件発明の精製方法の原理についてるる述べるが,この点については本件明細書に何ら記載がないから,明細書の記載に基づかない主張であるし,仮に原告の主張する原理が事実であるとしても,本件発明の効果については上記(1)ないし(3)のとおりである以上,この点は発明の進歩性の判断に何ら影響を与えるものではない。 (7) 以上のとおり,原告の取消事由5の主張も理由がない。 8 結論以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 よって,原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所知的財産第1部裁判長裁判官中野哲弘裁判官青柳馨裁判官沖中康人

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