平成1(オ)676 損害賠償

裁判年月日・裁判所
平成4年10月2日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄差戻 高松高等裁判所 昭和61(ネ)131
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      本件を高松高等裁判所に差し戻す。          理    由  上告代理人徳弘壽男の上告理由について  一 原審の適法に確定した事実関係は、次

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主    文      原判決を破棄する。      本件を高松高等裁判所に差し戻す。          理    由  上告代理人徳弘壽男の上告理由について  一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。 1 上告会社は、従業員約一一五名を雇用し、常時四二台のタクシーを稼働させて 旅客運送事業を経営している会社であり、高知市ab丁目にc車庫と称する車庫( 以下「c車庫」という。)を、同市d町にAd町車庫と称する車庫(以下「d町車 庫」という。)を所有している。被上告人らは、高知県下のタクシー労働者の個人 加盟による単一組織の労働組合であるE労働組合連合会e地方本部(以下「F地本」 という。)の組合員であり、昭和五七年当時、被上告人B1はF地本の執行委員長、 被上告人B2は同書記長、被上告人B3及び同B4は同執行副委員長、被上告人B 5はF地本の組合員である上告会社の従業員をもって結成されたF地本D分会(当 時の組合員数は二四名である。以下「D分会」という。)の分会長、被上告人B6 は同副分会長の地位にあった。  2 上告会社は、昭和五一年以降に採用するタクシー乗務員につき歩合給のみを 支給する制度を採用し、これらの従業員を臨時雇あるいは臨時従業員と称して正社 員にしていない。F地本は、毎年、上告会社の従業員の労働条件の改善、殊に賃上 げ及び歩合給のみの従業員(D分会所属の者は四名である。)に基本給を加えるこ とを要求し、上告会社と交渉してきたが、上告会社は、その経営状態が芳しくない こと、歩合給のみを支給する制度であっても同業他社の実情に照らし不合理ではな く、上告会社の経営を確立するためにやむを得ない方策であること等を理由に、右 要求を拒否し続けた。F地本は、昭和五七年の春闘において上告会社に対し、基本 - 1 - 給の一律二万円引上げ、年間臨時給九〇万円の支 会社の経営を確立するためにやむを得ない方策であること等を理由に、右 要求を拒否し続けた。F地本は、昭和五七年の春闘において上告会社に対し、基本 - 1 - 給の一律二万円引上げ、年間臨時給九〇万円の支給、臨時従業員を正社員に採用し その賃金を基本給と歩合給の二本立てにすること等を要求し、これについて同年四 月七日から七月六日まで四回にわたり団体交渉を行ったが、上告会社は乗務員の賃 金収入の実績や上告会社の経営状態を理由に拒否の回答を重ね、交渉は物別れに終 わった。  3 被上告人らを含むF地本及びD分会の幹部はストライキを行うこととし、同 年七月九日始業時から同月一一日始業時まで四八時間のストライキを行うことにつ いてD分会の多数決による賛成を得た。F地本は、同月六日の団体交渉の席上で、 上告会社に対し右のとおりストライキを実施する旨を通告した。これを受けた上告 会社は、専務取締役G(以下「G専務」という。)を通じて、被上告人B2ら組合 側の出席者に対し、「会社側にも操業を継続する権利と企業を防衛する義務がある から、ストライキがあっても、タクシーは管理職によって稼働させる。」と述べ、 稼働を妨害しないよう要請した。  4 ストライキは予定どおり実施されたが、被上告人らは、F地本の決定に従い、 A勤務、B勤務(上告会社においては、一台のタクシーにつき二名の従業員が隔日 に乗務するものとされており、各勤務をA勤務、B勤務と称していた。)共にD分 会の組合員が一組になって乗務することとなっていたタクシー六台(以下「本件タ クシー」という。)を上告会社側において稼働させるのを阻止するため、F地本の 支部又は分会に所属する組合員に支援を求め、同年七月九日午前五時ころ、D分会 の組合員が稼働を終えて本件タクシーをc車庫に一台及びd町車庫に五台それぞれ 格納すると同時に、被上告人B4及 ため、F地本の 支部又は分会に所属する組合員に支援を求め、同年七月九日午前五時ころ、D分会 の組合員が稼働を終えて本件タクシーをc車庫に一台及びd町車庫に五台それぞれ 格納すると同時に、被上告人B4及び同B5がc車庫に、同B2、同B3及び同B 5がd町車庫に赴き、それぞれD分会の組合員及びF地本の支援組合員一〇名ない し一五名と共に、ござなどを敷き右タクシーの傍らに座り込んだり寝転んだりして 両車庫を占拠した。また、同月一〇日にも、被上告人B3及び同B4がc車庫に、 - 2 - 同B2、同B6及び同B5がd町車庫に、それぞれ右組合員らと共に座り込むなど して、両車庫の占拠を継続した。なお、その間、被上告人B1は右占拠の状況を視 察し、同B2もd町車庫からc車庫を訪れて視察した。  5 F地本が組合員が乗務するタクシーのみの運行を阻止する戦術を採った背景 には、四国地区でのタクシー会社等の労働争議において、組合は組合員の乗務する 自動車のみの稼働を阻止し、非組合員の乗務する自動車の稼働は妨げないという争 議協定の実例があるのを知っていたことや、F地本の前身の組合が昭和四七年二月 五日に上告会社との間で締結した協定書(本件ストライキの実施当時は失効してい た。)にも、争議行為に関して、組合は自動車のエンジンキーや自動車検査証は所 定どおり処理し、納金は遅滞しない、会社は争議期間中第三者を利用して業務を行 わず、また新たに人を雇い入れないとの条項が存したこと、F地本においては、ス トライキの際に組合員と非組合員との間に紛争を起こすことは避けたいとする気持 ちが支配していたという事情があった。  6(1) 同年七月九日午前八時ころ、G専務と上告会社の整備課長H(以下両者 を併せて「G専務ら」という。)はd町車庫に来て、上告会社名義でF地本、D分 会、その他の関係者を名あて人とし、直 あった。  6(1) 同年七月九日午前八時ころ、G専務と上告会社の整備課長H(以下両者 を併せて「G専務ら」という。)はd町車庫に来て、上告会社名義でF地本、D分 会、その他の関係者を名あて人とし、直ちにこの場所から退去することを命ずる、 この命令に背く者は業務命令違反として後日必ず厳しく処分する、また損害賠償も 請求する旨を記載した同日付けの通告書と題する書面を同所にいたF地本の役員に 手渡し、口頭で二、三回タクシーを搬出させてもらえないかと申し入れたが、同所 にいた組合員らはこれに応じなかった。また、そのころ、G専務らはc車庫に来て、 同所にいた組合員らに右同様の通告書を手渡し、口頭でタクシーを搬出するので退 去するよう要求したが、同組合員らは、話し合いで退去できる状況を作るべきであ ると反論したり、中には「勝手にせいや」、「ひいて行けや」などと放言したりし て、これに応じなかった。 - 3 -   (2) 同日正午過ぎ、G専務らはc車庫に来て、前記同様の通告書を持参し、 口頭で同所にいた組合員らに退去するよう要求したが、同組合員らはこれに応じな かった。   (3) 同日午後四時ころ、G専務らはd町車庫に来て、前記同様の通告書を持 参し、口頭でタクシーを搬出させてほしいと申し入れたが、同所にいた組合員らは、 マットを敷いて寝そべり、あるいは将棋を指し、新聞を広げており、G専務が近づ いても無視して取り合わなかった。     また、そのころ、G専務らはc車庫に来て、同所にいた組合員らに退去を 求めたが、同組合員らはござを敷いてその上に座ったり寝転んだりしていて、これ に応じなかった。  7(1) 同年七月一〇日正午ころ、G専務らはd町車庫に来て、日付を同月九日 から同月一〇日に訂正した前記同様の通告書を同所にいた組合員らに手渡し、口頭 で退去を要求したが、同組合員らはご なかった。  7(1) 同年七月一〇日正午ころ、G専務らはd町車庫に来て、日付を同月九日 から同月一〇日に訂正した前記同様の通告書を同所にいた組合員らに手渡し、口頭 で退去を要求したが、同組合員らはござを敷き、その上に座って雑談したり、新聞 を読んだり、携帯用のテレビを見たりしていて、これに応じなかった。     また、そのころ、G専務らはc車庫に来て、同所にいた組合員らに右同様 の通告書を手渡し、口頭で退去するように要求したが、同組合員らはござを敷いて その上に座っているか、車庫前に車庫の方を向けて並べたバイクにそれぞれまたが るなどして、いずれも右要求には応じなかった。   (2) 同日午後一〇時ころ、大雨のため、両車庫にいた組合員らは引き上げ、 前記両車庫の占拠は解除された。上告会社は間もなく本件タクシーを他に搬出した。 二 上告会社は、被上告人らは、共謀して、昭和五七年七月九日午前四時から翌一 〇日終業時までの二日にわたり、c車庫及びd町車庫を他の十数名の者と共に占拠 し、上告会社の退去命令に従わず、両車庫に格納されていた本件タクシーを上告会 社が搬出し稼働させることを不可能にして、違法に上告会社の営業を妨害したもの - 4 - であると主張し、被上告人らに対し、不法行為による損害賠償として、逸失利益一 八万二一一二円及び弁護士費用相当額三〇万円の合計四八万二一一二円と右逸失利 益額に対する遅延損害金を支払うよう求めて本訴を提起したものである。   これに対し、原審は、前記の事実関係の下において、被上告人らの前記自動車 運行阻止の行為は、本件争議に至る経緯、争議の目的、態様、被侵害利益などを総 合してこれを全体として評価すれば、正当な争議行為に該当するというべきである から、仮に被上告人らの行為によって上告会社の営業が妨げられたとしても、それ によって生じた損害につ 態様、被侵害利益などを総 合してこれを全体として評価すれば、正当な争議行為に該当するというべきである から、仮に被上告人らの行為によって上告会社の営業が妨げられたとしても、それ によって生じた損害につき被上告人らに損害賠償を請求することはできないとして、 上告会社の請求を棄却すべきものとした。 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のと おりである。  ストライキは必然的に企業の業務の正常な運営を阻害するものではあるが、その 本質は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行にあり、その手段方法は 労働者が団結してその持つ労働力を使用者に利用させないことにあるのであって、 不法に使用者側の自由意思を抑圧しあるいはその財産に対する支配を阻止するよう な行為をすることは許されず、これをもって正当な争議行為と解することはできな いこと、また、使用者は、ストライキの期間中であっても、業務の遂行を停止しな ければならないものではなく、操業を継続するために必要とする対抗措置を採るこ とができることは、当裁判所の判例(昭和二四年(オ)第一〇五号同二七年一〇月 二二日大法廷判決・民集六巻九号八五七頁、同二七年(あ)第四七九八号同三三年 五月二八日大法廷判決・刑集一二巻八号一六九四頁、同五二年(あ)第五八三号同 五三年一一月一五日第二小法廷決定・刑集三二巻八号一八五五頁)の趣旨とすると ころである。そして、右の理は、非組合員等により操業を継続してストライキの実 効性を失わせるのが容易であると考えられるタクシー等の運行を業とする企業の場 - 5 - 合にあっても基本的には異なるものではなく、労働者側が、ストライキの期間中、 非組合員等による営業用自動車の運行を阻止するために、説得活動の範囲を超えて、 当該自動車等を労働者側の排他的占有下に置いてしまうなどの行為 本的には異なるものではなく、労働者側が、ストライキの期間中、 非組合員等による営業用自動車の運行を阻止するために、説得活動の範囲を超えて、 当該自動車等を労働者側の排他的占有下に置いてしまうなどの行為をすることは許 されず、右のような自動車運行阻止の行為を正当な争議行為とすることはできない といわなければならない。右タクシー等の運行を業とする企業において、労働者は、 ストライキの期間中、代替要員等による操業の継続を一定の限度で実力により阻止 する権利を有するようにいう原判示は、到底是認することのできないものである。  これを本件についてみるに、前記のとおり、原審の確定したところによれば、F 地本が実施した本件ストライキにおいて、被上告人らは、F地本の決定に従い、上 告会社が本件タクシーを稼働させるのを阻止することとし、昭和五七年七月九日及 び同月一〇日の両日にわたり、D分会の組合員及びF地本の支援組合員らと共に、 c車庫及びd町車庫に格納された本件タクシーの傍らに座り込み、あるいは寝転ぶ などして、上告会社の退去要求に応ぜず、結局、上告会社は、両日にわたり、本件 タクシーを両車庫から搬出することができなかったというのである。右事実によれ ば、被上告人らは、互いに意思を通じて、上告会社の管理に係る本件タクシーをF 地本の排他的占有下に置き、上告会社がこれを搬出して稼働させるのを実力で阻止 したものといわなければならない。もっとも、原審の認定した事実によれば、F地 本は、労働条件の改善の要求を貫徹するために本件ストライキを行ったものであり、 その目的において問題とすべき点はなく、また、その手段、態様においても、前記 一の5記載のような経緯があって、上告会社の管理に係るタクシー四二台のうちD 分会の組合員が乗務する予定になっていた本件タクシーのみを運行阻止の対象とし たものであり た、その手段、態様においても、前記 一の5記載のような経緯があって、上告会社の管理に係るタクシー四二台のうちD 分会の組合員が乗務する予定になっていた本件タクシーのみを運行阻止の対象とし たものであり、エンジンキーや自動車検査証の占有を奪取するなどの手段は採られ ず、暴力や破壊行為に及んだものでもなく、G専務やその他の従業員が両車庫に出 入りすることは容認していたなど、F地本において無用の混乱を回避するよう配慮 - 6 - した面がうかがわれ、また、上告会社においても本件タクシーを搬出させてほしい 旨を申し入れるにとどめており、そのため、被上告人らがその搬出を暴力等の実力 行使をもって妨害するといった事態には至らなかったことは、原判示のとおりであ る。しかしながら、これらの事情を考慮に入れても、被上告人らの右自動車運行阻 止の行為は、前記説示に照らし、争議行為として正当な範囲にとどまるものという ことはできず、違法の評価を免れないというべきである。  四 以上によれば、被上告人らの前記自動車運行阻止の行為が正当な争議行為に 該当するとした原審の判断は、労働組合法八条の解釈適用を誤ったものというべき であり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、この点をいう論旨 は理由があり、原判決は破棄を免れない。本件については、叙上の見解に立って損 害の点につき審理をさせる必要があるから、これを原審に差し戻すのが相当である。  よって、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判 決する。      最高裁判所第二小法廷         裁判長裁判官    中    島   敏 次 郎             裁判官    藤   島       昭             裁判官    木   崎   良   平             裁判官    大     島   敏 次 郎             裁判官    藤   島       昭             裁判官    木   崎   良   平             裁判官    大   西   勝   也 - 7 -

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