平成21(少コ)1016 (通常手続移行)貸金請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年2月8日 東京簡易裁判所 棄却
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判決文本文5,740 文字)

平成22年2月8日判決言渡東京簡易裁判所平成21年(少コ)第1016号貸金請求事件(通常手続移行)口頭弁論終結日平成22年1月18日判決 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求被告は,原告に対し,32万円及びこれに対する平成21年4月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 請求原因の要旨(1)原告は,被告に対し,平成20年2月8日,50万円(以下「本件金員」という。)を弁済期を同年6月25日と定めて貸し渡した(以下「本件契約」という。)。 (2)被告は,原告に対して,平成20年3月21日,同年4月21日,同年5月23日,同年6月23日,同年7月23日,同年8月22日,同年9月24日,同年10月23日,同年11月21日に各々2万円,合計18万円を返還した。 (3)よって,原告は被告に対し,残金32万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年4月15日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める。 被告の答弁及び主張の要旨(1)原告・被告間の本件契約の不成立被告は,原告から本件金員を借りていない。原告とは一度も会っていないし,電話で話をしたこともない。そもそも被告は,融資を受けるため,登録貸金業者であるAの店舗を訪れた際,同社の代表取締役であるBから本件金員の交付を受け金銭借用証書(甲1,以下「本件借用証書」という。)を書かされたもので,原告が貸主であるという認識はなかった。また,被告は,その後も一貫してAに対して返済しており,原告には返済しておらず,原告か け金銭借用証書(甲1,以下「本件借用証書」という。)を書かされたもので,原告が貸主であるという認識はなかった。また,被告は,その後も一貫してAに対して返済しており,原告には返済しておらず,原告から返済の請求を受けたことは一度もなかった。 (2)公序良俗違反(予備的主張1)原告は,以下の事情から,貸金業法等の法令の趣旨を故意に逃れるための工作を行っており,原告が主張する本件契約は民法90条の公序良俗に反する違法無効なものである。 ア原告は,被告から弁済のあった合計18万円をすべて元金に充当している。 しかし,本件金銭借用証書には,「利息は毎月25日限り」と記載されており,原告が被告に対し利息を請求する意思であったことは明らかである。また,被告は,各弁済について,すべてAのBの事務所に持参又は送金し,Bがすべて利息として収受したもので,「出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律」(以下「出資法」という。)に規定される上限金利をも超える違法な高利である。 イ原告は,貸金業登録をしているものと思われるところから,金利の約定なく元金のみ貸し出すということはあり得ない。本件では,原告が個人として貸し付けるということはあり得ず,業として行ったことは明白で,原告は,貸金業法に規定する要件を満たした書面の作成・交付もしていない。 (3)自然債務(予備的主張2)原告は,前記(2)の事情から考えると,原告が被告に対し訴訟により支払の請求をすることは,裁判所に対し助力を求める者は自ら清廉でなければならないというクリーンハンズの原則の趣旨に反するものとして,少なくとも,いわゆる「自然債務」となるものと考えるべきである。 主たる争点(1)本件契約が原告・被告間で成立したものと認められるか否か。 (2)本件契約 ンズの原則の趣旨に反するものとして,少なくとも,いわゆる「自然債務」となるものと考えるべきである。 主たる争点(1)本件契約が原告・被告間で成立したものと認められるか否か。 (2)本件契約は公序良俗に違反し無効(民法90条)となるか。 第3当裁判所の判断 争点(1)(本件契約の成否)について(1)原告は,本件借用証書(甲1)の存在を明確な証拠として,被告に対し本件金員の残金請求をしている。これに対し被告は,本件借用証書は,被告が融資を受けるため,Aの店舗を訪れた際,同社のBから署名・押印するよう求められ作成したもので,貸主として名前のある原告とは一度も会ったこともないとして,原告からの本件金員の借入れを否認している。そこで,先ず,本件契約の成否について検討する。 (2)証拠(甲1,乙8)及び被告本人尋問の結果,並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア被告は妻と子供一人の3人で居住している一般市民で,そのほかに被告が認知した子が2人いて生活費を負担していたため,本件金員の借入前から多重債務に陥り,平成16年には大手消費者金融業者と任意整理による和解をしたためいわゆるブラックリストに載った状態で,違法高金利業者から借入れせざるを得ないような窮状にあった。被告は,平成19年9月ころ,Bが代表者である登録貸金業者であるAから初めて50万を借り受けた。このときの約定は,利息を毎月2万円支払い,同年12月のボーナス支給時に元金を一括して返済するというものであった。被告は,前記元金の返済をした後直ぐに再びAから50万円を借り受けた。この際も一回目の借入れと同じように毎月2万円を利息として返済し,翌年6月のボーナス支給時に元金を返済する約定であった。 イ本件金員の借入れは,平成20年1月,被告がAに対し前記借入れ分の 受けた。この際も一回目の借入れと同じように毎月2万円を利息として返済し,翌年6月のボーナス支給時に元金を返済する約定であった。 イ本件金員の借入れは,平成20年1月,被告がAに対し前記借入れ分の利息を支払う際に,同年2月に子供の学費の支払に充てるため必要であるとして,さらに50万円の借入れを依頼したものである。被告は,Bから,被告が既に貸付けの限度いっぱいということもあるので友達から借りて用立てすると言われたため連絡を待っていた。そして同年2月8日,被告はBから連絡を受けAを訪ねた。Bは被告に対し,Aの直ぐ近くの「C」から借りてきたと言って,50万円を被告に交付した。そのときBから署名押印するよう言われ作成されたものが本件借用証書である。これには,宛名が原告である「D殿」となっており,年率や支払額等は記載しておらず,Bから2万円をお礼として支払うように言われた。被告は,宛名がDになっていることは承知していたが,貸主が誰であってもお金を借りられればいいという気持ちもあって,Bに言われるとおり本件借用証書に署名押印した。したがって,被告はそれまで原告の顔を見たこともなく,Aが本件金員の貸主であると認識していた。 (3)以上の事実を総合すると,後に指摘するように,原告が本件金員を貸し付けたとみるには不自然なところが認められるが,被告自身本件借用証書の宛名が原告であることを明確に認識しその成立を認めており,被告の意思に反しBに言われるままに署名押印したと認める証拠はないところから,本件契約は,原告と被告との間で成立したものと認めることができる。 争点(2)(公序良俗違反-被告の予備的主張1)について被告は,原告が貸金業登録をしている業者とみられるところ,全く面識のない被告に金利の約定もなく元金のみ貸し出すということはあり得ず,し 争点(2)(公序良俗違反-被告の予備的主張1)について被告は,原告が貸金業登録をしている業者とみられるところ,全く面識のない被告に金利の約定もなく元金のみ貸し出すということはあり得ず,しかも,被告からBに対し出資法に違反する高利の弁済がされているところから,本件は原告が個人として貸し付けたものではなく,業として行ったことは明白であるなどとして,本件契約は公序良俗に反する違法で無効なものであると主張するので検討する。 (1)証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告は,Aの店舗の直ぐ近くで「有限会社C」という名称で貸金業を営んでいる登録業者で(乙2,証人B,原告),Bは同郷の友人である。本件金員は,被告が金員を借り入れる目的でAを訪れた際,Bから,原告から借り受けたものだと説明を受け同店舗で本件金員を交付され,同時に本件借用証書が作成されたもので,被告は原告に一度も会っていないし,話をしたこともない(乙8,被告)。しかしながら,原告は,少なくともBから被告に対する貸付けを依頼された際,前記1(2)アで認定したとおり,被告が多重債務に陥り経済的に窮迫した状況であったことは認識していたとみられる。 イBが被告に本件金員を交付する際,被告に対し,お礼の趣旨として月2万円の金員を支払うよう話したが,原告がBに預けてきたと述べる本件借用証書(甲1)には,「利息は毎月25日限り,元金は,平成20年6月25日限り,・・・支払います。」と記載されており,同年6月25日のボーナス支給時に元金完済の約定であるところから,明らかに利息の支払とみなされ,この利息については,年率48パーセント(2万円×12ヶ月÷50万円)となる。 また,被告は,本件契約に基づき2万円を9回にわたり弁済しているが,すべてAの店舗に持参するかB名義の の支払とみなされ,この利息については,年率48パーセント(2万円×12ヶ月÷50万円)となる。 また,被告は,本件契約に基づき2万円を9回にわたり弁済しているが,すべてAの店舗に持参するかB名義の口座に振込み送金しており(乙5の1ないし3,証人B,原告,被告),原告自身からは一度も返済の請求がなされたことはない。 ウ被告は,本件金員を借り入れる前,二回にわたり,Aから借入れをしているほか,本件借入れの後さらに平成20年4月,Aに対し追加融資を申し込んだ。このときにも本件の場合と同様,Bから,これ以上は貸せないが,金利が月利2万円と高くてもいいなら友達から用立てて何とかすると言われ,結局,Aの店舗を訪ねAから20万円を借り受けた(これは年利換算で120パーセントとなる。)。 そして約束の同年6月のボーナス時に元金を一括返済できず,毎月2万円の利息のみを払い続けた。また,本件貸付けの場合と同様,年率等の約定内容を明記した貸金業法所定の書面の作成・交付はなされなかった(被告)。 なお,平成21年3月,被告は債務の支払に窮し,代理人に債務整理を依頼し,Aに対して債務整理開始通知を送付している(乙4)。 (2)以上の事実関係を踏まえると,原告による本件貸付けは,業者としての行為であるとみるのが相当である。すなわち,本件金員の貸付け前後の状況を含め弁論の全趣旨を総合して判断すると,原告は,Bから被告への融資を依頼された際それに協力し,業者からの貸付けであることを隠し,高金利で違法な貸付け(出資法5条2項は,年29.2パーセントを超える貸付けに刑事罰を科している。)を逃れる手段として,あたかも貸金業を業としない個人が貸し付けたことにして本件金員の貸付けを行ったものと推認することができる。この点,原告は,Bから被告への貸付けを依頼された際,Aの店舗に いる。)を逃れる手段として,あたかも貸金業を業としない個人が貸し付けたことにして本件金員の貸付けを行ったものと推認することができる。この点,原告は,Bから被告への貸付けを依頼された際,Aの店舗にいた被告と直接電話で借入条件を含めた話をして被告もそれを承知していたと主張し,証人B及び原告はそれに沿う供述をする。しかしながら,前記電話の内容も具体性に欠け不明確であるだけでなく,原告が個人として,一面識もない者に同情して50万円もの大金をわざわざAまで持参し貸し付けたというのは,いかにも不自然である。また,本件では,原告は,被告から弁済のあった合計18万円をすべて元金に充当しているが,本件借用証書の記載文言からみると,原告が被告に対し利息を請求する意思であったことは明らかである。それにもかかわらず,本件借用証書には,利率や毎月の支払額等の記載はなく,貸金業を営む原告作成の書面としては極めて不十分であるところから考えると,前記認定のとおり,本件貸付けは,原告が貸金業法等の法令の趣旨を故意に逃れ,業者からの貸付けであることを隠して行われたものであると考えざるを得ず,その反社会性も極めて顕著で,これに反する証人Bらの前記供述は採用できない。 結局,原告は,本件貸付け当時,被告が高金利と知りつつも借りざるを得ない窮状下にあり,他の金融業者からの返済請求に窮していたことはもちろん,被告とAとの融資を巡る前記認定の経緯を十分認識した上で,意図的に前記各法規の趣旨を逃れるため,Bと合意の上でこれに乗じて,本件貸付けを実行したものと推認するのが相当である。 (3)前記のような原告の反社会性や被告の状況を踏まえ,一般市民から高利な違法貸付を取り締まる目的で施行されている出資法の趣旨や咋今の経済不況及び社会問題化されている高金利で違法な貸付けによる被害に対 )前記のような原告の反社会性や被告の状況を踏まえ,一般市民から高利な違法貸付を取り締まる目的で施行されている出資法の趣旨や咋今の経済不況及び社会問題化されている高金利で違法な貸付けによる被害に対する取締り・規制強化に関する一連の流れに照らし合わせて考えると,本件のような高金利の根拠となる利息の合意を伴う貸付けは,極めて違法性が高いだけでなく,これまで認定の被告に対する貸付状況を総合すれば,原告の行為は特に悪質であると評価することができる。したがって,利息の契約と一体となって密接不可分の関係にある本件契約そのものについても,公序良俗に反し無効なものと評価するのが相当である。よって,被告の予備的主張1は理由がある。 以上の次第であるから,原告の請求は,予備的主張2について判断するまでもなく,理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京簡易裁判所民事第9室 裁判官中島寛

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