平成27(行ウ)543 固定資産税等賦課処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年10月13日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文24,256 文字)

- 1 -平成28年10月13日判決言渡平成27年(行ウ)第543号固定資産税等賦課処分取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求処分行政庁が平成26年5月9日付けで原告に対してした別紙1物件目録記載の土地及び家屋に対する平成22年度の固定資産税及び都市計画税に係る増額賦課決定処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,別紙1物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という。)及び同2の家屋(以下「本件家屋」といい,本件土地と併せて「本件不動産」という。)を所有する原告が,処分行政庁から平成22年6月1日付けで本件不動産に係る平成22年度の固定資産税及び都市計画税(以下,併せて「固定資産税等」という。)の賦課決定処分(以下「本件当初処分」という。)を受けた後,それまで非課税とされていた本件家屋の地下1階の一部(別紙2の図面の囲い部分。以下「本件事業部分」という。)は地方税法348条2項11号の4及び同条4項のいずれにも該当しないなどとして,平成22年度の固定資産税等につき,平成26年5月9日付けで30万5300円を増額して賦課する旨の決定(以下「本件処分」という。)を受けたため,処分行政庁の所属する公共団体である被告に対し,本件処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令の定め本件に関係する法令の定めは,別紙3「関係法令の定め」記載のとおりである(同別紙において定義した略語等は,本文においても用いることとする(他の別紙についても同じ。)。)。 - 2 - 2 前提事実(1) 当事者等原告は,健康保険法8条及び11条の規定により設立された健康保険組合であり,食品の製造,加工及び販売,並びに飲食業(ホテル 。)。)。 - 2 - 2 前提事実(1) 当事者等原告は,健康保険法8条及び11条の規定により設立された健康保険組合であり,食品の製造,加工及び販売,並びに飲食業(ホテル及び旅館を含む。)を事業とする事業所とその子会社及びその事業所を適用事業所とする東京都食品健康保険を管掌している。 原告は,その運営する事業の用に供するため,本件事業部分(91.59㎡)を含む本件不動産を所有している(甲1,2)。 (2) 本件当初処分までの経緯ア処分行政庁は,平成21年6月1日,原告に対し,本件不動産に係る平成21年度の固定資産税等の納税通知をしたが,この時点では,本件家屋の全体について,地方税法の規定により固定資産税等が非課税とされていた(以下,地方税法において固定資産税等を課すことができない旨定める規定を総称して「非課税規定」という。)。 イ処分行政庁は,平成21年11月に本件不動産につき税務調査(現地調査)を実施したが,この税務調査の結果,本件家屋のうち清掃員控室及び東京都食品福利共済会に貸与していた部分(本件事業部分は含まれない。)について非課税規定の適用がないと判断し,原告に対し,平成22年3月10日付けで平成21年度の固定資産税等を増額する旨の納税通知をした。 なお,原告は,同年4月19日,同納税通知に係る処分に対し,審査請求をしたところ,東京都知事は,上記共済会への貸与部分の一部につき,非課税規定の適用があるか否かを判断する前提となる具体的事実に関し調査が尽くされていないなどとして,平成23年5月2日,同処分を取り消す旨の裁決をした(乙3)。 ウ処分行政庁は,本件不動産に係る課税部分と非課税部分を以下のとおりとした上で,平成22年6月1日,本件不動産に係る平成22年度の固定 - 3 - ,同処分を取り消す旨の裁決をした(乙3)。 ウ処分行政庁は,本件不動産に係る課税部分と非課税部分を以下のとおりとした上で,平成22年6月1日,本件不動産に係る平成22年度の固定 - 3 -資産税等を337万1400円とする賦課決定を行い(本件当初処分),原告に通知した(甲3,乙5の1及び2)。 (ア) 本件家屋本件家屋につき,廊下や階段等の共用部分を除いた部分(以下「専用部分」という。)の課税部分と非課税部分を認定した上で,共用部分を専用部分の課税部分と非課税部分との割合で按分して専用部分の課税部分と非課税部分とにそれぞれ加えて,本件家屋の課税床面積と非課税床面積を決定した。その結果,本件家屋の現況床面積5952.81㎡のうち,非課税床面積が5737.13㎡(うち地方税法348条2項11号の4該当部分が3691.90㎡(本件事業部分を含む。),うち同法348条4項該当部分が2045.23㎡),課税床面積が215.68㎡とされた。 (イ) 本件土地本件土地につき,本件家屋と一体となって利用されている土地であると認定した上で,本件土地の非課税地積については,本件家屋の延べ床面積に占める地方税法348条2項11号の4が適用される床面積の割合を本件土地全体の地積に乗じて,その面積を算出し,本件土地の課税地積については,上記非課税地積を本件土地全体の地積から差し引いて算出した。その結果,本件土地の地積1215.05㎡のうち,非課税地積が753.57㎡,課税地積が461.48㎡とされた。 (3) 本件訴訟に至る経緯ア(ア) 処分行政庁は,平成23年3月2日及び同年11月17日,本件家屋について税務調査(現地調査)を実施した(乙6の1及び2)。 (イ) 処分行政庁は,平成23年12月6日,原告に対し,本件事業部分 ) 処分行政庁は,平成23年3月2日及び同年11月17日,本件家屋について税務調査(現地調査)を実施した(乙6の1及び2)。 (イ) 処分行政庁は,平成23年12月6日,原告に対し,本件事業部分の使用頻度,通常の使用状況を確認できる書類,活動報告書,年間スケジュール等に係る資料の提出を依頼し,平成24年2月28日,原告か - 4 -ら本件事業部分で実施されているカルチャー教室の講座内容,実施日等が記載された資料,受講者の出席簿の写し等の資料を受領した(乙7)。 なお,原告が実施するカルチャー教室(以下「本件カルチャー教室」という。)は,健康づくりのサポート及びストレス解消を目的として平成21年4月から実施されており,平成21年度は,「将棋を楽しむ」,「カラオケレッスン」,「仏像を描く」,「ウォーキング」,「囲碁を楽しむ」,「抹茶と和菓子」(ただし,平成22年1月から同年3月までは「将棋を楽しむ」及び「囲碁を楽しむ」は開催されていない。),平成22年度及び平成23年度は,「カラオケ」,「ウォーキング」,「書道」,「仏像を描く」,「抹茶と和菓子」という講座を内容としていたが,本件カルチャー教室のうち,「ウォーキング」は本件事業部分ではなく,本件家屋の地下2階で実施されていた(甲14の1~5,甲17,19,乙6の3,乙7)。 (ウ) 処分行政庁は,平成25年3月8日,本件家屋について税務調査(現地調査)を実施した(乙6の3)。 (エ) 処分行政庁は,平成25年3月15日,原告に対し,本件カルチャー教室に係る講師への教授料の支払が把握できる資料等の提出を依頼し,同年4月5日及び同年5月1日,原告からそれらの資料を受領した。 (オ) なお,本件事業部分では,本件カルチャー教室のほか,特定保健指導(健康保険 料の支払が把握できる資料等の提出を依頼し,同年4月5日及び同年5月1日,原告からそれらの資料を受領した。 (オ) なお,本件事業部分では,本件カルチャー教室のほか,特定保健指導(健康保険法150条1項,高齢者の医療の確保に関する法律24条),並びに,事前のメディカルチェックにより医師が運動を許可した者に対して医師等による生活習慣の改善に向けた講義と運動指導を行うことを内容とする「健康日本21東食楽々俱楽部」,及び,講義中心のショートスクールにおいて生活習慣の改善に向けた指導を行う「東食楽々俱楽部ヘルシーライフ応援スクール」といった保健指導も実施されている(甲11~13,17,19)。 - 5 -イ処分行政庁は,平成26年2月21日,本件事業部分が地方税法348条2項11号の4及び同条4項に該当しないなどと判断し,同年4月30日,本件不動産の平成22年度の固定資産の価格等を修正して,当該価格等を固定資産課税台帳に登録するとともに,原告に対して,同日付けで「固定資産価格等修正通知書(土地)」(26台税固土第00025号),「固定資産価格等修正通知書(家屋)」(26台税固家第00115号)等を送付したほか,同年5月9日付けで「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)納税通知書」(平成22年度相当分)等を送付した(本件処分)(甲4,5)。 本件処分における本件不動産に係る課税部分及び非課税部分の内訳は,本件家屋につき,現況床面積5952.81㎡のうち,非課税床面積が5652.08㎡(うち地方税法348条2項11号の4該当部分が3629.86㎡,うち同法348条4項該当部分が2022.22㎡),本件事業部分を含む課税床面積が300.73㎡であり,本件土地につき,地積1215.05㎡のうち,非課税地積が740. 該当部分が3629.86㎡,うち同法348条4項該当部分が2022.22㎡),本件事業部分を含む課税床面積が300.73㎡であり,本件土地につき,地積1215.05㎡のうち,非課税地積が740.91㎡,課税地積が474.14㎡である(甲3)。 ウ原告は,平成26年7月8日,本件処分について審査請求をし,東京都知事は,平成27年4月14日,同審査請求を棄却する旨の裁決をした(甲6,9の2)。 エ原告は,平成27年9月8日,本件訴えを提起した。 3 争点(1) 本件事業部分に係る地方税法348条2項11号の4の適用の可否(本件事業部分が診療所又は政令で定める保健施設において直接その用に供する固定資産に当たるか)(2) 本件処分が信義則に反するか(3) 本件事業部分に係る地方税法348条4項の適用の可否(本件事業部分が - 6 -「事務所」に当たるか) 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件事業部分に係る地方税法348条2項11号の4の適用の可否(本件事業部分が診療所又は政令で定める保健施設において直接その用に供する固定資産に当たるか))について(原告の主張)ア診療所において直接その用に供する固定資産に当たるか(ア) 原告は,本件事業部分において,高齢者の医療の確保に関する法律により実施することとされた特定保健指導,「健康日本21東食楽々俱楽部」や「東食楽々俱楽部ヘルシーライフ応援スクール」といった保健指導を実施するほか(甲11~13,20),健康づくりのサポートやストレス解消を目的に被保険者及びその被扶養者を対象として,厚生労働省保険局長通知である「健康保険組合の事業運営指針」,「健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針」等に基づいて本件カルチャー教室を実施し を目的に被保険者及びその被扶養者を対象として,厚生労働省保険局長通知である「健康保険組合の事業運営指針」,「健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針」等に基づいて本件カルチャー教室を実施している(甲14の1~5,甲18の1,4及び5)。なお,本件カルチャー教室は,飽くまでも原告の保健事業の一環として実施されている事業であって,保健事業とは関連性のない単なるレクリエーションとは性質を異にするものである。 (イ) このように本件事業部分は,特定保健指導及び保健指導のほか,原告が行うべき保健事業の一つである本件カルチャー教室に使用されているものであり,病院及び診療所に該当する医療施設が積極的にこれと同様のカルチャー教室の運営を行っている例があることにも鑑みれば,本件事業部分が地方税法348条2項11号の4の定める「診療所において直接その用に供する固定資産」に該当することは明らかである。 イ政令で定める保健施設において直接その用に供する固定資産に当たるか(ア) 原告は,本件事業部分において,前記アのとおり,特定保健指導, - 7 -保健指導及び本件カルチャー教室を実施しているのであるから,本件事業部分が施行令50条の3の定める「健康相談所」として地方税法348条2項11号の4の定める「政令で定める保健施設において直接その用に供する固定資産」に該当することは明らかである。 (イ) また,本件事業部分は,構造的に見ると,主として本件家屋の地下2階にある体育館の利用者の利便に供するため,軽食等の提供等も可能な休憩所として利用されることを企図して設けられたスペースであること,厚生労働省が実施する健康増進施設認定制度(甲27,28)により「運動型健康増進施設」との認定を受けた施設においては,「からだの健康づくり」に加えて「こころ を企図して設けられたスペースであること,厚生労働省が実施する健康増進施設認定制度(甲27,28)により「運動型健康増進施設」との認定を受けた施設においては,「からだの健康づくり」に加えて「こころの健康づくり」を目的として,体育館に附属する施設において本件カルチャー教室と同様の講座を実施していることが多いこと(甲29,30)からすれば,本件事業部分は「体育館に附属する施設」(施行令50条の3)として地方税法348条2項11号の4の定める「政令で定める保健施設において直接その用に供する固定資産」に該当することは明らかである。 ウなお,仮に,本件カルチャー教室のための使用が「診療所」や「政令で定める保健施設」の用に供されているとはいえないとしても,本件事業部分が特定保健指導及び保健指導のために使用されている以上,「診療所」や「政令で定める保健施設」の用による使用が「常態」であるというべきであり,いずれにしても,本件事業部分は,「診療所」あるいは「政令で定める保健施設」において「直接その用に供する固定資産」に該当するものである。 (被告の主張)ア診療所において直接その用に供する固定資産に当たるか(ア) 地方税法348条2項11号の4は,健康保険組合等が行う被保険者のための療養給付において,病院及び診療所は基幹的役割を果たすこ - 8 -とを考慮して非課税措置を講じたものと解されるが,保健事業の一環として原告が実施しているという本件カルチャー教室は,診療所において直接その用に供する固定資産について非課税措置を講じた上記制度趣旨に沿わない。 (イ) また,「診療所」とは,「医師又は歯科医師が,公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所」(医療法1条の5第2項)とされ,医療の給付に必要不可欠のもので 上記制度趣旨に沿わない。 (イ) また,「診療所」とは,「医師又は歯科医師が,公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所」(医療法1条の5第2項)とされ,医療の給付に必要不可欠のものである限りは,これと一体をなすものとして非課税の範囲に含めるべきものと解される。 しかし,本件カルチャー教室は,健康づくりのサポート等を目的とはしているものの,その内容は,「将棋を楽しむ」,「カラオケレッスン」,「仏像を描く」,「ウォーキング」,「囲碁を楽しむ」,「抹茶と和菓子」というものであり,通常のカルチャーセンター等において行われているものと変わらない。加えて,原告が実施するカルチャー教室は,医師や歯科医師等の医療従事者を講師とするものではなく,参加募集の対象者も広く被保険者とその被扶養者であって,診療所受診者に限るなどの制限は一切設けられておらず,受講希望者は,参加に当たり,その費用を各自前払することとされている。 このような本件カルチャー教室の性格及び内容に照らせば,本件事業部分が,医師又は歯科医師が公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行うための施設及びこれと一体をなす医療の給付に必要不可欠のものとして,診療所において直接その用に供する固定資産に該当しないことは明らかである。 (ウ) なお,本件事業部分が,特定保健指導や保健指導の利用に供されているとしても,本件事業部分においては本件カルチャー教室が継続的に開催されており,開催日数でいえば特定保健指導等の利用は本件事業部分の使用日数全体の2割にも満たない。そして,地方税法348条2項 - 9 -11号の4の診療所において「直接その用に供する固定資産」というためには,その使用が継続的であると否とまでは問わないが,診療所のためのみの使用であることを して,地方税法348条2項 - 9 -11号の4の診療所において「直接その用に供する固定資産」というためには,その使用が継続的であると否とまでは問わないが,診療所のためのみの使用であることを要し,単にこれらの用に供されることがあるというだけでは足りないのであって,上記特定保健指導等の利用状況に照らせば,本件事業部分が,診療所において「直接その用に供する固定資産」に該当しないことは明らかである。 イ政令で定める保健施設において直接その用に供する固定資産に当たるか(ア) 地方税法348条2項11号の4が「政令で定める保健施設において直接その用に供する固定資産」を非課税としたのは,保健施設が病院及び診療所の補助的施設として療養給付の一環としての機能を担う性格を有するものであること等を考慮したことによるものであるところ,保健事業の一環として原告が実施しているという本件カルチャー教室は,かかる趣旨に合致しない。 (イ) また,施行令50条の3が定める「体育館に附属する施設」あるいは「健康相談所」に該当するか否かは,本件事業部分の実際の使用状況に照らし,社会通念に基づいて客観的に判断されるべきものと解されるところ,本件カルチャー教室の内容からすれば,ウォーキングを除いて,およそ体育館で行う運動実技に関する性格のものではないし,通常,健康相談所で行われるような生活習慣病等に係る個別の健康相談や健康状況に関する医師,保健師あるいは栄養士らによる専門的助言を行うような内容のものでもない。 したがって,本件カルチャー教室が,健康保険法上の保健事業に位置付けられるものであるとしても,本件事業部分は,上記「体育館に附属する施設」あるいは「健康相談所」には当たらない。 (ウ) なお,本件事業部分が,特定保健指導ある が,健康保険法上の保健事業に位置付けられるものであるとしても,本件事業部分は,上記「体育館に附属する施設」あるいは「健康相談所」には当たらない。 (ウ) なお,本件事業部分が,特定保健指導あるいは保健指導の利用に供されているとしても,それをもって政令で定める保健施設において「直 - 10 -接その用に供する固定資産」に該当するものではないことは前記ア(ウ)と同様である。 (2) 争点(2)(本件処分が信義則に反するか)について(原告の主張)ア本件事業部分においては,平成21年4月以降,本件カルチャー教室が実施されているところ,同年11月の現地調査の際,処分行政庁の担当職員は,本件事業部分を含む本件家屋の6階から地下2階までをくまなく視認して,それぞれの用途を確認しており,その時点では既に本件事業部分が本件カルチャー教室として使用されていることを把握していた。そして,処分行政庁は,上記現地調査の実施後も,本件事業部分を除く部分につき非課税規定の適用はないと判断しているのであって,これは本件事業部分に非課税規定の適用があるとの見解を処分行政庁として黙示的に表明していたものにほかならない。 それにもかかわらず,処分行政庁は,平成21年度の固定資産税等の賦課処分に係る審査請求による裁決を契機として,突如として本件事業部分には非課税規定の適用がないとして,その判断を改め,平成22年に遡って本件事業部分に係る固定資産税等の増額分を原告に賦課する旨の本件処分をするに至ったものである。 イ他方,原告は,健康保険の運営に当たる公法人であり,各年度の財政運営については当局による厳格な監督の下,健康保険法の定める予算・決算の措置を講じて財政運営を行っているが,平成22年度においては本件事業部分に係る固定資産税等の支 当たる公法人であり,各年度の財政運営については当局による厳格な監督の下,健康保険法の定める予算・決算の措置を講じて財政運営を行っているが,平成22年度においては本件事業部分に係る固定資産税等の支払に関して何らの予算措置も講じておらず,原告としては4年も前の時期に起因する固定資産税等を予算措置もなく支出することはできない。 ウ以上からすれば,本件処分は,納税者たる原告の信頼を著しく害するものであって,信義則に反することは明らかである。 - 11 -(被告の主張)ア租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては,信義則の法理の適用については慎重でなければならず,租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れせしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に,初めて信義則の法理の適用の是非を考えるべきものである。 そして,このような特別な事情が存するかどうかの判断に当たっては,少なくとも,税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより,納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ,後に当該表示に反する課税処分が行われ,そのため納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか,また,納税者が税務官庁の当該表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮は不可欠のものであるといわなければならない。 イ本件では,処分行政庁(その指揮監督を受けて事務を行う東京都台東都税事務所職員を含む。)が,原告に対して,本件事業部分につき固定資産税等を課税しない旨の公的見解を表示したことはない。 ウなお,東京都 処分行政庁(その指揮監督を受けて事務を行う東京都台東都税事務所職員を含む。)が,原告に対して,本件事業部分につき固定資産税等を課税しない旨の公的見解を表示したことはない。 ウなお,東京都台東都税事務所の担当職員が,本件事業部分が本件カルチャー教室の会場として使用されていることを把握したのは平成23年3月2日の現地調査においてのことであるし,そもそも,課税庁たる処分行政庁は,地方税法17条の5に基づき,法定納期限の翌日から5年間という期間内において賦課決定の誤り等が発見された際には,これを是正しなければならないところ,本件当初処分は,本件事業部分が課税対象とならない旨を明示していない通常の賦課処分にすぎないのであって,本件当初処分をもって,処分行政庁が,以後,遡って修正等を行わないことを約する - 12 -旨の公的見解を表示したことにならないことは明らかである。 エしたがって,本件処分が信義則に反するということはない。 (3) 争点(3)(本件事業部分に係る地方税法348条4項の適用の可否(本件事業部分が「事務所」に当たるか))について(原告の主張)ア地方税法348条4項は,健康保険組合等が所有し,かつ,使用する事務所に対しては,固定資産税を課することができないとのみ定めている。 ここでいう「事務所」について,被告が主張するように庶務,会計等いわゆる現業に属さない総合的な事務を行う家屋に限定して解釈すべき理由はなく,健康保険組合等の目的たる業務の用に供されている固定資産のうち,同法348条2項11号の4の要件に該当する固定資産は,土地及び家屋が非課税固定資産となり,これには該当しないものの,その目的たる業務の用に供されている固定資産については,同法348条4項により家屋のみが非課税固定資産 の4の要件に該当する固定資産は,土地及び家屋が非課税固定資産となり,これには該当しないものの,その目的たる業務の用に供されている固定資産については,同法348条4項により家屋のみが非課税固定資産になると解すべきである。 イそして,本件事業部分は,原告が特定保健指導及び保健指導のための面談の場として,あるいは保健事業の一環である本件カルチャー教室において被保険者やその被扶養者が講習等を受ける場として利用されており,地方税法348条4項所定の「事務所」に当たることは明らかである。 (被告の主張)地方税法348条4項が定める「事務所」は,「当該組合又は連合会の行う事業に関連して庶務,会計等いわゆる現業に属さない綜合的な事務を行う建物をいい,通常これに附属する物置,炊事場,小使室,会議室,金庫室等は事務所に含めて取り扱うべきであること」とされており(昭和27年8月29日自丙税発第79号,各都道府県知事宛て自治庁税務部長通達。乙11),本件事業部分がこれに当たらないことは明らかである。 第3 当裁判所の判断 - 13 - 1 争点(1)(本件事業部分に係る地方税法348条2項11号の4の適用の可否(本件事業部分が診療所又は政令で定める保健施設において直接その用に供する固定資産に当たるか))について(1) 診療所において直接その用に供する固定資産に当たるかア地方税法348条2項11号の4は,健康保健組合等が所有し,かつ,経営する病院及び診療所において直接その用に供する固定資産で政令で定めるものに対しては固定資産税を課することができない旨規定しているが,これは,健康保険組合等が行う被保険者のための療養給付において,病院及び診療所が基幹的役割を果たすことに鑑み,病院及び診療所の用に供される固定資産について 税を課することができない旨規定しているが,これは,健康保険組合等が行う被保険者のための療養給付において,病院及び診療所が基幹的役割を果たすことに鑑み,病院及び診療所の用に供される固定資産について,政策的な観点から例外的に非課税にしたものと解される。このような趣旨に加え,納税義務の公平な分担等の観点も考慮すると,診療所において「直接その用に供する固定資産」とは,「直接その用に供する」という文言に即して,診療所として利用されることを常態とする固定資産をいうものと解するのが相当である。また,ここにいう「診療所」は,その文言等からすれば,医師あるいは歯科医師が公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所をいうものと解される(医療法1条の5第2項参照)。 イ(ア) そして,前記前提事実,証拠(甲10~14,17~20,乙6の1及び3,乙7)及び弁論の全趣旨によれば,本件事業部分では,特定保健指導,並びに,事前のメディカルチェックにより医師が運動を許可した者に対して,医師等が生活習慣の改善に向けた講義と運動指導を行うことを内容とする「健康日本21東食楽々俱楽部」,及び,講義中心のショートスクールにおいて生活習慣の改善に向けた指導を行う「東食楽々俱楽部ヘルシーライフ応援スクール」といった保健指導のほか,平成21年4月からは,健康づくりのサポート及びストレス解消を目的として,平成21年度には,「将棋を楽しむ」,「カラオケレッスン」, - 14 -「仏像を描く」,「ウォーキング」,「囲碁を楽しむ」,「抹茶と和菓子」(ただし,平成22年1月から同年3月までは「将棋を楽しむ」及び「囲碁を楽しむ」は開催されていない。)が,平成22年度及び平成23年度には,「カラオケ」,「ウォーキング」,「書道」,「仏像を描く」,「抹茶と和菓子」といった講座 年3月までは「将棋を楽しむ」及び「囲碁を楽しむ」は開催されていない。)が,平成22年度及び平成23年度には,「カラオケ」,「ウォーキング」,「書道」,「仏像を描く」,「抹茶と和菓子」といった講座を内容とする本件カルチャー教室が実施されており(本件カルチャー教室のうち,ウォーキングは本件事業部分ではなく本件家屋の地下2階で実施されている。以下,ウォーキングを除いた本件カルチャー教室を「本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)」という。),平成22年4月から同年12月までにおけるそれぞれの実施日数は,特定保健指導が27日,保健指導が9日,本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)が69日であることが認められる。 (イ) かかる本件事業部分の利用状況に照らせば,本件事業部分は,本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)のために利用される頻度が高かったというのが相当であるところ,その内容は,その開催時期によって若干異なるものの,上記のとおり「将棋を楽しむ」,「カラオケレッスン」,「仏像を描く」,「囲碁を楽しむ」,「抹茶と和菓子」,「書道」といったものであることからすれば,本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)が保健事業の一環として実施され,それによりその目的である健康づくりのサポートあるいはストレス解消につながる側面があるとしても,その実質はレクリエーションの場を提供しているにすぎないものというべきであり,本件事業部分を本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)として利用することが,医師あるいは歯科医師が公衆又は特定多数人のための医業又は歯科医業を行うものということはできない。 そうすると,本件事業部分は,診療所として利用されることを常態としていたということはできず,「診療所において直接その用に供する固定 - 15 -資産」であるいう を行うものということはできない。 そうすると,本件事業部分は,診療所として利用されることを常態としていたということはできず,「診療所において直接その用に供する固定 - 15 -資産」であるいうことはできない。 ウ(ア) これに対して,原告は,健康保険組合が実施する事業のうち,療養給付に限定して非課税規定の適用があるとする根拠はなく,健康保険組合が行う療養給付以外の事業も,被保険者及びその被扶養者の生活の安定と福祉の向上という点で等しく重要性(公益性)を有するものである上,他の病院あるいは診療所に該当する医療施設が,原告と同様にカルチャー教室を実施している例も見られるのであり(甲26),このことはカルチャー教室を実施し,心の健康づくりを実現することが疾病への対処に有効かつ適切であることを示すものにほかならず,本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)の実施内容は,「病院及び診療所」たる性格とそごしないのであるから,それをもって本件事業部分の「診療所」の該当性を否定する理由にはならないと主張する。 しかしながら,健康保険組合による保健事業が実施される場所あるいは心の健康づくりにつながる事柄を実施する場所が全て「診療所」に該当するものではないことはその文言からしても明らかであるし,他の医療施設において原告と同様にカルチャー教室を実施しているとしても,当該カルチャー教室を実施している場所が「診療所」に該当するか否かは,当該場所の利用状況等を総合的に考慮して個別に判断されるべきものであるから,このことをもって本件事業部分が「診療所」に当たるということはできず,上記原告の主張は採用することができない。 (イ) また,原告は,本件事業部分では反復かつ継続的に特定保健指導や保健指導も実施されているのであるから,診療 所」に当たるということはできず,上記原告の主張は採用することができない。 (イ) また,原告は,本件事業部分では反復かつ継続的に特定保健指導や保健指導も実施されているのであるから,診療所の用としての利用が常態になっていると主張するが,前記イ(ア)のとおり,特定保健指導や保健指導が実施された日数は,平成22年4月から同年12月までの9か月でわずか36日であり,本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)が実施された日数の約半分にすぎず,特定保健指導等の利用が常態とな - 16 -っていたということはできないのであるから,いずれにしても原告の上記主張は採用することができない。 エ以上のとおりであり,本件事業部分は,地方税法348条2項11号の4が定める「診療所において直接その用に供する固定資産」に該当するということはできない。 (2) 政令で定める保健施設において直接その用に供する固定資産に当たるかア地方税法348条2項11号の4は,健康保健組合等が所有し,かつ,経営する政令で定める保健施設において直接その用に供する固定資産に対しては固定資産税を課することができない旨規定し,この規定を受けた施行令50条の3第2項は,上記政令で定める保健施設を運動場,体育館,プール及びこれらに附属する施設(同項1号),健康相談所(同項2号)などとすることを定めている。これらの規定は,当該保健施設が,病院又は診療所の補助的施設として療養給付の一環としての機能を担う性格を有するものであることに鑑み,政策的な観点から例外的に非課税にしたものと解される。このような趣旨に加え,納税義務の公平な分担等の観点も考慮すると,保健施設において「直接その用に供する固定資産」とは,「直接その用に供する」という文言に即して,保健施設として利用され のと解される。このような趣旨に加え,納税義務の公平な分担等の観点も考慮すると,保健施設において「直接その用に供する固定資産」とは,「直接その用に供する」という文言に即して,保健施設として利用されることを常態とする固定資産をいうと解するのが相当である。 イこれを前提に検討すると,まず,原告は,本件事業部分が,健康相談所において直接その用に供されていると主張する。 (ア) しかし,前記(1)イ(ア)のとおり,本件事業部分においては,特定保健指導及び保健指導のほか,その開催時期によって内容は若干異なるものの,「将棋を楽しむ」,「カラオケレッスン」,「仏像を描く」,「囲碁を楽しむ」,「抹茶と和菓子」,「書道」といった講座を内容と - 17 -する本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)が実施されているところ,本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)の実質はレクリエーションの場を提供しているものにすぎないというべきであって,本件カルチャー教室を実施することが健康相談としての役割を担っているものとは評価できない。そして,前記(1)ウ(イ)のとおり,本件事業部分は,本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)のために利用される頻度が高かったことからすれば,本件事業部分は,健康相談所として利用されることを常態としていたとはいえず,健康相談所において直接その用に供する固定資産であるとは認めることができない。 (イ) これに対し,原告は,健康保険組合が実施する事業のうち,療養給付に限定して非課税規定の適用があるとする根拠はなく,健康保険組合が行う療養給付以外の事業も,被保険者及びその被扶養者の生活の安定と福祉の向上という点で等しく重要性(公益性)を有するものである上,保健事業は,疾病又は負傷を予防するために実施される事業であって, が行う療養給付以外の事業も,被保険者及びその被扶養者の生活の安定と福祉の向上という点で等しく重要性(公益性)を有するものである上,保健事業は,疾病又は負傷を予防するために実施される事業であって,疾病や負傷の発生後に事後的に実施される療養給付を補完する性格を有するというべきであるところ,本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)は保健事業の一環として実施されているのであるから,本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)を実施する本件事業部分は「健康相談所」に該当すると主張する。 しかし,仮に,本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)が原告の保健事業の一つとして実施されているものであるとしても,そのことのみをもって本件事業部分が当然に「健康相談所」に該当することになるわけではなく(保健事業の一環ということで足りるのであれば,「健康相談所」などと限定して規定する必要はない。),上記本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)の内容に照らせば,本件事業部分が「健康相談所」に当たると解することは困難というほかないのであって,原告 - 18 -の上記主張は採用することができない。 ウ次に,原告は,本件事業部分が,本件家屋の地下2階にある体育館に附属する施設において直接その用に供されていると主張する。 (ア) しかし,体育館は一般的には運動施設としての性質を有するものであるところ,前記(1)イ(ア)のとおり,本件事業部分は,その開催時期によって内容は若干異なるものの,「将棋を楽しむ」,「カラオケレッスン」,「仏像を描く」,「囲碁を楽しむ」,「抹茶と和菓子」,「書道」といった講座を内容とする本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)の会場として利用されており,これらはその内容からして運動施設である体育館で行う性質のものとはおよそ無関 ,「抹茶と和菓子」,「書道」といった講座を内容とする本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)の会場として利用されており,これらはその内容からして運動施設である体育館で行う性質のものとはおよそ無関係であるというほかない。その上,本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)は本件事業部分のみで実施され,かつそれでその実施内容が完結しているといえ,本件事業部分における本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)の内容が本件家屋の地下2階にある体育館での実施内容と関係性があることを示す的確な証拠もない。そして,前記(1)イ(イ)のとおり,本件事業部分は,本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)の会場として利用される頻度が高かったことからすれば,本件事業部分が,体育館に附属する施設として利用されることを常態としていたとはいえず,体育館に附属する施設において直接その用に供する固定資産であるとは認めることができない。 (イ) これに対し,原告は,厚生労働省が実施する健康増進施設認定制度におけるいわゆる運動型健康増進施設でも運動実技とは直接関連しない内容のカルチャー教室が実施されているのであって(甲27~30),保健事業の重要性にも鑑みれば,本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)を実施する本件事業部分が「体育館に附属する施設」であることを否定する理由はないと主張する。 - 19 -しかしながら,保健事業であることをもって本件事業部分が「体育館に附属する施設」に該当することになるわけではないし,証拠(甲28)によれば,上記健康増進施設認定制度は「国民の健康づくりを推進する上で一定の基準を満たしたスポーツクラブやフィットネスクラブを認定しその普及を図る」ことを目的とし,「生活指導を行うための設備を備えていること」などがいわゆる運動型健康 「国民の健康づくりを推進する上で一定の基準を満たしたスポーツクラブやフィットネスクラブを認定しその普及を図る」ことを目的とし,「生活指導を行うための設備を備えていること」などがいわゆる運動型健康増進施設の主な認定基準とされていることなどが認められるところ,このような健康増進施設認定制度と納税義務の公平な分担等をも目的とする地方税法348条2項11号の4とはその目的を異にし,その適用あるいは認定のための要件等も異にするのであるから,いわゆる運動型健康増進施設において本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)と同様のことが実施されているとしても,それをもって本件事業部分が「体育館に附属する施設」に当たると解されるわけではなく,原告の主張をもってしても,上記判断を左右するものではない。 (ウ) また,原告は,本件家屋の建築に当たって,本件事業部分は,主として体育館の利用者の利便に供するため,軽食等の提供も可能な休憩所として利用されることを企図して設けられたものであるとも主張するが,いずれにしても平成22年当時においては,本件事業部分が本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)の会場として利用される頻度が高かったのであるから,上記事情をもってしても本件事業部分が「体育館に附属する施設」に該当することにはならない。 エそのほか,原告は,本件事業部分では反復かつ継続的に特定保健指導や保健指導も実施されているのであるから,「政令で定める保健施設」の用としての利用が常態であると主張するが,特定保健指導等を実施する場所が「健康相談所」等に該当するか否かは別にして,前記のとおり,特定保健指導等が常態となっていたということはできず,いずれにしても原告の - 20 -主張は採用することができない。 オ以上のとおりであり,本件 当するか否かは別にして,前記のとおり,特定保健指導等が常態となっていたということはできず,いずれにしても原告の - 20 -主張は採用することができない。 オ以上のとおりであり,本件事業部分は,地方税法348条2項11号の4が定める「政令で定める保健施設において直接その用に供する固定資産」に該当するということはできない。 (3) したがって,本件事業部分には,地方税法348条2項11号の4は適用されないというべきである。 2 争点(2)(本件処分の信義則に反するか)について(1) 租税法規に適合する課税処分について,法の一般原理である信義則の法理の適用により,当該課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても,法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては,当該法理の適用については慎重でなければならず,租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に,初めて当該法理の適用の是非を考えるべきである。そして,上記の特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては,少なくとも,税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより,納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ,後に当該表示に反する課税処分が行われ,そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか,また,納税者が税務官庁の当該表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮は不可欠のものであるといわなければならない(最高裁昭和60年(行ツ)第125号同62年10月30 信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮は不可欠のものであるといわなければならない(最高裁昭和60年(行ツ)第125号同62年10月30日第三小法廷判決・裁判集民事152号93頁参照)。 (2) 原告は,処分行政庁が,平成21年11月の現地調査の時点で本件事業部分において本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)が実施されているこ - 21 -とを把握したにもかかわらず,本件事業部分に非課税規定の適用があるとして本件不動産に係る固定資産税等の課税を行ってきたのであるから,本件事業部分について非課税規定の適用がある旨の処分行政庁としての公的見解が黙示的に表明されていたなどとして,本件処分は,納税者たる原告の信頼を著しく害するものであって,信義則に反すると主張する。 ア証拠(甲21の1)及び弁論の全趣旨によれば,平成21年11月11日午前10時から午前11時30分にかけて,東京都台東都税事務所の担当職員により,それまで全体が非課税とされていた本件家屋につき,その使用状況を確認するための現地調査が行われたこと,同現地調査においては本件家屋全体を対象として確認作業がされたことが認められる。 しかしながら,上記現地調査は,本件事業部分に特化した調査ではなく,飽くまで本件家屋全体に係る調査であり,上記1時間30分という調査時間の中で本件家屋の固定資産税等に関わるあらゆる事実を漏れなく把握できるとは限らないのであって,本件家屋全体の確認がされたということをもって,上記職員において本件事業部分が本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)として使用されていることを認識したとまで認めることはできず,その他これを認めるに足りる的確な証拠はない。 イまた,仮に,上記アの現地調査の時点で上記 分が本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)として使用されていることを認識したとまで認めることはできず,その他これを認めるに足りる的確な証拠はない。 イまた,仮に,上記アの現地調査の時点で上記職員において本件事業部分が本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)として利用されていること等を認識したことが認められるとしても,上記現地調査により把握した事実を基礎とした本件家屋の固定資産税等に係る問題点が全て意識され,検討されるとも限らないことからすれば,同現地調査を踏まえてされた本件当初処分等は,飽くまで本件家屋の一部について固定資産税等を課することを示すものにすぎず,それ以外の部分については,以後課税対象とはしないことまで示すものではないというべきであり,その他処分行政庁が本件事業部分につき固定資産税等を課さないことを示したものであると認め - 22 -るに足りる的確な証拠はない。 ウしたがって,処分行政庁が,本件処分まで本件事業部分に非課税規定の適用があるとして本件不動産に係る固定資産税等の課税を行ってきたとしても,それにより,原告に対して,本件事業部分に非課税規定の適用がある旨の信頼の対象となる公的見解を表示したことにはならないというべきである。 (3) 以上からすれば,本件処分は信義則に違反するものではない。 3 争点(3)(本件事業部分に係る地方税法348条4項の適用の可否(本件事業部分が「事務所」に当たるか))について(1) 地方税法348条4項は,健康保険組合等が所有し,かつ,使用する事務所及び倉庫に対しては,固定資産税を課することができない旨規定するところ,これは,健康保険組合等が,法令により設立された公共性の高い団体であるとともに,相互扶助の精神に基づき,その構成員の福祉を増進し,社会的経済 ては,固定資産税を課することができない旨規定するところ,これは,健康保険組合等が,法令により設立された公共性の高い団体であるとともに,相互扶助の精神に基づき,その構成員の福祉を増進し,社会的経済的地位の向上を図ることを目的としているという性格に鑑みて,その所有し,かつ使用する事務所及び倉庫について,政策的な観点から例外的に非課税にしたものと解される。他方,これとは別に,同条2項11号の4は,前記のとおり,健康保険組合等が所有する固定資産のうち,病院及び診療所又は政令で定める保健施設において直接その用に供されている固定資産に対しては固定資産税を課することができない旨規定し,家屋のみならず,その土地も含めて非課税にするとされている。このように,土地についても非課税にするか否かという違いはあるにしても,いずれの規定も家屋部分を非課税の対象としていることに鑑みれば,同条2項11号の4の「病院及び診療所」あるいは「保健施設」と同条4項の「事務所」とはその対象を全く異にするものと考えるのが相当であり,同条2項11号の4の病院及び診療所あるいは政令で定める保健施設は,その現場において被保険者に対して療養 - 23 -給付等を行う性質の施設であること等も併せ鑑みると,同条4項所定の「事務所」とは,当該組合等の行う事業に関連して庶務,会計等のいわゆる現業に属さない総合的な事務を行う家屋をいうものと解するのが相当である。 (2) 本件では,前記(1)イ(ア)のとおり,本件事業部分においては,特定保健指導,保健指導及び本件カルチャー教室(本件事業部分実施分)が実施されていることが認められるところ,これらは現業に属さない事務とはいえない。 したがって,本件事業部分は,地方税法348条4項が定める「事務所」には該当しない。 (3) 実施分)が実施されていることが認められるところ,これらは現業に属さない事務とはいえない。 したがって,本件事業部分は,地方税法348条4項が定める「事務所」には該当しない。 (3) これに対し,原告は,地方税法348条4項が定める「事務所」について現業に属さない事務を行う場合に限定する理由はなく,健康保険組合等の目的たる業務の用に供されている固定資産のうち,同条2項11号の4の要件に該当する固定資産は,土地及び家屋が非課税固定資産となり,これには該当しないものの,その目的たる業務の用に供されている家屋については,同法348条4項により家屋が非課税固定資産になると解すべきであると主張する。 しかし,上記原告の主張のとおりであるとすれば,健康保険組合が所有し,その目的たる業務の用に供されている家屋について,同項において全て非課税としつつ,病院等の用に供されている場合に重ねて同条2項で非課税とする旨を規定する必要はなく,同項では土地のみを対象として非課税とする旨を規定すれば足りるはずであって,このような規定内容からすれば原告の主張のとおり解釈することには疑問がある。また,例えば,同項11号の6は,独立行政法人自動車事故対策機構が独立行政法人自動車事故対策機構法13条3号に規定する業務(自動車事故による被害者で後遺障害が存するため治療及び常時の介護を必要とするものを収容して治療及び養護を行う施設を設置し,及び運営するという業務)の用に供する固定資産で政令で定めるもの - 24 -に対しては固定資産税を課すことができないと規定し,これを受けた施行令50条の4は,政令で定める固定資産を「事務所」あるいは「宿舎」の用に供する固定資産以外のものとする旨を規定しているところ,原告の上記主張のように「事務所」をその目的たる 規定し,これを受けた施行令50条の4は,政令で定める固定資産を「事務所」あるいは「宿舎」の用に供する固定資産以外のものとする旨を規定しているところ,原告の上記主張のように「事務所」をその目的たる業務の用に供されている家屋と広く捉えた場合,自動車事故による後遺障害を実際に治療する施設も「事務所」に該当し,非課税規定の適用はないと解することになるが,このような結論がその趣旨に合致しないことは明らかである一方,同じ「事務所」という文言でも地方税法348条4項と同条2項11号の6を受けた施行令50条の4とはその対象を全く異にするというのも考え難く,原告の上記主張によると地方税法348条2項における他の非課税規定との整合性を欠くこととなり,むしろ,このような他の規定との整合性も考慮すれば,同条4項の「事務所」は,前記(1)のとおりに解するのを相当というべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 4 本件処分の適法性前記1ないし3のとおり,本件事業部分につき,地方税法348条2項11号の4及び同条4項並びに同法702条の2第2項の適用はなく,それ以外の点について,被告が主張する固定資産税等の税額の計算の基礎となる金額及び計算方法に争いはない。そして,平成22年度分の本件不動産に係る本件当初処分との差額は,別紙4-1「本件処分による納付すべき税額」のとおり30万5300円であり,本件処分により原告に課された金額はこれと一致するから本件処分は適法なものということができる。 第4 結論よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 - 25 -裁判長裁判官林俊之 裁判官齊藤 がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 - 25 -裁判長裁判官林俊之 裁判官齊藤充洋 裁判官池田好英 - 26 -(別紙3)関係法令の定め第1 地方税法 1 地方税法348条2項は,その本文において,固定資産税は,次に掲げる固定資産に対しては課することができないと規定している。 (1) 1号から11号の3まで (略)(2) 11号の4 健康保険組合及び健康保険組合連合会,国民健康保険組合及び国民健康保険団体連合会,国家公務員共済組合及び国家公務員共済組合連合会並びに地方公務員共済組合(以下この号において「健康保険組合等」という。)が所有し,かつ,経営する病院及び診療所において直接その用に供する固定資産で政令で定めるもの並びに健康保険組合等が所有し,かつ,経営する政令で定める保健施設において直接その用に供する固定資産(3) 11号の5から43号 (略) 2 地方税法348条4項は,市町村は,健康保険組合等が所有し,かつ,使用する事務所及び倉庫に対しては,固定資産税を課することができないと規定している。 3 地方税法702条の2第2項は,市町村は,同法348条2項から5項まで,7項若しくは9項又は351条の規定により固定資産税を課することができない土地又は家屋に対しては,都市計画税を課することができないと規定している。 第2 地方税法施行令(以下「施行令」という。) 1 施行令50条の3第1項は,地方税法348条2項11号の4に規定する政令で定める固定資産は,その利用について対価又は負担として支払うべき金 第2 地方税法施行令(以下「施行令」という。) 1 施行令50条の3第1項は,地方税法348条2項11号の4に規定する政令で定める固定資産は,その利用について対価又は負担として支払うべき金額 - 27 -の定めのある駐車施設その他の施設で総務省令で定めるものの用に供する固定資産以外の固定資産とすると規定している。 2 施行令50条の3第2項は,地方税法348条2項11号の4に規定する政令で定める保健施設は,次に掲げるものとすると規定している。 (1) 1号運動場,体育館,プール及びこれらに附属する施設(2) 2号健康相談所(3) 3号 (略) 第3 地方税法施行規則地方税法施行規則10条の7の6は,施行令50条の3第1項に規定する総務省令で定める施設は,飲食店,喫茶店及び物品販売施設(これらの施設のうち地方税法348条2項11号の4に規定する病院及び診療所の利用者の利便に供することを目的とするものを除く。)並びに駐車施設とすると規定している。 以上 - 28 -(別紙4-1)本件処分により納付すべき税額 1 本件家屋に係る評価額(課税標準額)について(1) 本件家屋について,別紙4-2「東京都食品健康保険組合建物使用状況一覧表平成22年度」のとおり,非課税規定が適用される非課税対象部分,通常の課税対象部分及び共用部分を分けて認定し,それぞれ面積を算出した。 (2) 上記(1)の認定結果に基づき,本件家屋の共用部分を別紙4-3「東京都食品健康保険組合建物部分共有のあん分について」及び別紙4-4「全体共用のあん分について」のとおり按分し,同「共用部分を含めた非課税床面積及び課税床面積」のとおり,本件家屋に係る共用部分を含めた非課税対象床面積(地 部分共有のあん分について」及び別紙4-4「全体共用のあん分について」のとおり按分し,同「共用部分を含めた非課税床面積及び課税床面積」のとおり,本件家屋に係る共用部分を含めた非課税対象床面積(地方税法348条2項11号の4及び同条4項該当部分の床面積が5652.08㎡)及び課税床面積(300.73㎡)を認定した。 (3) 次に,固定資産評価基準に基づく本件家屋に係る平成22年度の単位当たり評点(家屋床面積1㎡当たりの評点)は14万3810点であることから,この評点に本件家屋の課税床面積を乗じ,評点1点を1.10円へ換算して100円未満を切り捨てて,本件家屋に係る評価額(課税標準額)を算出したが,その計算式は以下のとおりである(乙13~15)。 (計算式)143,810(点)×300.73(㎡)×1.10(円)≒47,572,700(円) 2 本件土地に係る課税標準額について(1) 本件土地は本件家屋の敷地として利用されており,本件土地の課税地積については,本件家屋の延べ床面積に占める地方税法348条2項11号の4の非課税規定の適用対象床面積の割合を,本件土地全体の地積に乗じて本件土地の非課税となる面積を求めた上,本件土地全体の地積から本件土地の非 - 29 -課税となる面積を差し引いて算出したが,その計算式は以下のとおりである。 (計算式)1,215.05(㎡)×3,629.86(㎡)/5,952.81(㎡)=740.91(㎡)(小数点第3位以下切上げ)1,215.05(㎡)-740.91(㎡)=474.14(㎡)(2) 固定資産評価基準に基づく本件土地の平成22年度の平方メートル当たりの単価は,54万8758円であり,これに本件土地の課税地積を乗じて本件土地の評価額を算出したが,その計算式は (㎡)(2) 固定資産評価基準に基づく本件土地の平成22年度の平方メートル当たりの単価は,54万8758円であり,これに本件土地の課税地積を乗じて本件土地の評価額を算出したが,その計算式は以下のとおりである(乙16~18)。 (計算式)548,758(円)×474.14(㎡)≒260,188,110(円)(3) 上記(2)の本件土地の評価額に基づき,平成24年法律第17号による改正前の地方税法附則17条から同附則18条までの規定に従って,本件土地の課税標準額を算出すると,その金額は1億6871万1200円(100円未満切捨て)となる(乙18)。 3 本件不動産に係る固定資産税等の税額について本件家屋の評価額(課税標準額)と本件土地の課税標準額を合算して1000円未満を切り捨て,これに固定資産税等の税率を乗じ,100円未満を切り捨てて,本件不動産に係る税額を以下のとおり算出した。 (1) 固定資産税(47,572,700+168,711,200)×0.014≒3,027,900(円)(2) 都市計画税(47,572,700+168,711,200)×0.003≒648,800(円) - 30 - 4 本件処分に係る税額について上記3の税額と本件当初処分の税額(乙5の1及び2)との差額が本件処分に係る税額(30万5300円)となるが,その計算式は以下のとおりである(甲4,5)。 (計算式)(3,027,900+648,800)-(2,776,500+594,900)=305,300(円) -(2,776,500+594,900)=305,300(円)

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