令和2(行ウ)79 処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年12月23日 大阪地方裁判所
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判決文本文19,847 文字)

令和3年12月23日判決言渡令和2年(行ウ)第79号処分取消請求事件 主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告が原告に対し平成31年2月12日付けでしたAに関する介護保険の適用除外に該当するとする措置の取消処分を取り消す。 第2 事案の概要等健康保険法3条3項1号イの適用事業所の事業主である原告は,平成30年7月,原告の従業員であるAが外国に赴任したため,原告及びAが加入する健康保険組合である被告に対し,Aが介護保険法9条2号の被保険者の資格を喪失し,介護保険の適用除外に該当する旨の届出をした。被告は,同月,上記届出を一旦 受理したが(以下,この受理を「本件措置」という。),平成31年2月,上記届出に際し原告が被告に提出した書類を返戻するとともに,当該従業員の介護保険料を徴収する旨の通知をした(以下,被告の原告に対する書類の返戻及び介護保険料を徴収する旨の通知に係る行為を併せて「本件取消処分」という。ただし,本件取消処分が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか否かについては,後記 4⑴のとおり当事者間に争いがある。)。 本件は,原告が,本件取消処分が行政事件訴訟法3条2項に規定する「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(以下「処分」という。)に当たることを前提に,本件取消処分が違法であるなどと主張して,被告を相手に,その取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め⑴ 介護保険法ア介護保険被保険者介護保険法9条は,次のいずれかに該当する者を,市町村又は特別区(以下,単に「市町村」という。)が行う介護保険の被保険者(以下「介護保 険被保険者」という。) 護保険法ア介護保険被保険者介護保険法9条は,次のいずれかに該当する者を,市町村又は特別区(以下,単に「市町村」という。)が行う介護保険の被保険者(以下「介護保 険被保険者」という。)とする旨定める。 介護保険第1号被保険者市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者(介護保険法9条1号。 以下「介護保険第1号被保険者」という。)介護保険第2号被保険者 市町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者(介護保険法7条8項)(同法9条2号。以下「介護保険第2号被保険者」という。)イ介護保険被保険者の資格喪失の時期介護保険法11条1項本文は,介護保険被保険者は,当該市町村の区域 内に住所を有しなくなった日の翌日から,その資格を喪失する旨定める。 ウ納付金の徴収及び納付義務介護保険法129条1項は,市町村は,介護保険事業に要する費用に充てるため,保険料を徴収しなければならない旨定め,同条4項は,市町村は,同条1項の規定にかかわらず,介護保険第2号被保険者からは 保険料を徴収しない旨定める。 介護保険法150条1項は,社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)は,支払基金の業務に要する費用に充てるため,年度(毎年4月1日から翌年3月31日までをいう。)ごとに,医療保険者(同法7条7項)から,介護給付費・地域支援事業支援納付金(以下「納 付金」という。)を徴収する旨定める。 介護保険法150条2項は,医療保険者は,納付金の納付に充てるため医療保険各法(同法7条6項)又は地方税法の規定により保険料若しくは掛金又は国民健康保険税を徴収する義務を負う旨定める。 介護保険法150条3項は,医療保険者は,納付金を納付する義務を負う旨定める 療保険各法(同法7条6項)又は地方税法の規定により保険料若しくは掛金又は国民健康保険税を徴収する義務を負う旨定める。 介護保険法150条3項は,医療保険者は,納付金を納付する義務を負う旨定める。 エ審査請求介護保険法183条1項は,保険給付に関する処分(被保険者証の交付の請求に関する処分及び要介護認定又は要支援認定に関する処分を含む。)又は保険料その他同法の規定による徴収金(財政安定化基金拠出金,納付金及び同法157条1項に規定する延滞金を除く。)に関す る処分に不服がある者は,介護保険審査会に審査請求をすることができる旨定める。 介護保険法196条は,同法183条1項に規定する処分の取消しの訴えは,当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ,提起することができない。 ⑵ 健康保険法ア健康保険被保険者健康保険法3条1項柱書き本文(平成30年法律第71号による改正前のもの)は,健康保険法において「被保険者」(以下「健康保険被保険者」という。)とは,適用事業所に使用される者等をいう旨定める。 イ保険料の徴収健康保険法155条1項は,保険者等(被保険者が全国健康保険協会が管掌する健康保険被保険者である場合にあっては厚生労働大臣,被保険者が健康保険組合が管掌する健康保険被保険者である場合にあっては当該健康保険組合をいう〔同法39条1項〕。)は,健康保険事業に要する費用 に充てるため,保険料を徴収する旨定める。 ウ被保険者の保険料額健康保険法156条1項は,被保険者に関する保険料額は,各月につき,次に掲げる被保険者の区分に応じ,当該各号に定める額とする旨定める。 a 介護保険第2号被保険者である被保険者一般保険料額(各被保険 者の標準報 は,被保険者に関する保険料額は,各月につき,次に掲げる被保険者の区分に応じ,当該各号に定める額とする旨定める。 a 介護保険第2号被保険者である被保険者一般保険料額(各被保険 者の標準報酬月額及び標準賞与額にそれぞれ一般保険料率を乗じて得た額をいう。)と介護保険料額(各被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額にそれぞれ介護保険料率を乗じて得た額をいう。)との合算額b 介護保険第2号被保険者である被保険者以外の被保険者一般保 険料額健康保険法156条2項本文は,上記aの規定にかかわらず,介護保険第2号被保険者である被保険者が介護保険第2号被保険者に該当しなくなった場合においては,その月分の保険料額は,一般保険料額とする旨定める。 エ審査請求及び再審査請求健康保険法189条1項は,健康保険被保険者の資格,標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は,社会保険審査官に対して審査請求をし,その決定に不服がある者は,社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる旨定める。 健康保険法190条は,保険料等の賦課若しくは徴収の処分又は延滞金の徴収に不服がある者は,社会保険審査会に対して審査請求をすることができる旨定める。 健康保険法192条は,同法189条1項に規定する処分の取消しの訴えは,当該処分についての再審査請求に対する社会保険審査官の決定 を経た後でなければ,提起することができない旨定める。 ⑶ 健康保険法施行規則ア介護保険第2号被保険者に該当しなくなった場合の届出健康保険法施行規則40条1項柱書き本文は,被保険者(同施行規則1条の2第1項)は,被保険者又はその被扶養者が介護保険第2号被保険者に該当しなくなったときは,遅滞なく,①事業所整理記号及び 届出健康保険法施行規則40条1項柱書き本文は,被保険者(同施行規則1条の2第1項)は,被保険者又はその被扶養者が介護保険第2号被保険者に該当しなくなったときは,遅滞なく,①事業所整理記号及び被保 険者整理番号,②被保険者の氏名及び生年月日,③該当しなくなった年月日及びその理由を記載した届書を,事業主を経由して,厚生労働大臣又は健康保険組合に届け出なければならない旨定める。 健康保険法施行規則40条3項は,上記の場合において,事業主の命により被保険者が外国に勤務することとなったため,いずれの市町村 の区域内にも住所を有しなくなったときは,当該事業主は,被保険者に代わって同条1項の届書を厚生労働大臣又は健康保険組合に届け出ることができる旨定める。 イ保険料の徴収健康保険法施行規則136条は,保険者は,保険料その他健康保険法の 規定による徴収金を徴収しようとするときは,徴収すべき金額を決定し,納付義務者に対し,その徴収金の種類並びに納付すべき金額,期日及び場所を記載した書面(以下「納入告知書」という。)で納入の告知をしなければならない旨定める。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠又は弁論の全趣旨により容 易に認定することができる事実)⑴ 当事者等ア原告は,画像処理用LED照明装置等の製造等を目的とする株式会社であり,被告を保険者とする適用事業所(健康保険法3条3項1号イ)の事業主である。 イ A(昭和▲年生まれ)は,原告の被用者であり,健康保険被保険者かつ 介護保険第2号被保険者である。(甲1)ウ被告は,原告(適用事業所の事業主)及びA(その適用事業所に使用される被保険者)が加入する健康保険組合(健康保険法8条)である。 ⑵ Aに係る介護保険適用除外該 第2号被保険者である。(甲1)ウ被告は,原告(適用事業所の事業主)及びA(その適用事業所に使用される被保険者)が加入する健康保険組合(健康保険法8条)である。 ⑵ Aに係る介護保険適用除外該当届の提出Aは,平成30年7月8日から令和元年12月31日まで,原告の命によ り,中華人民共和国(以下「中国」という。)にある原告の子会社に赴任した。 原告は,Aが中国に赴任したことにより国外居住者に該当し,介護保険第2号被保険者に該当しなくなったものと考え,健康保険法施行規則40条1項柱書き本文に基づく届出として,平成30年7月18日,被告に対し,① 原告がAに対して発行した海外居住証明書及び②Aのパスポートの写し(Aが同月8日に日本から出国した旨のゴム印が押された査証欄を含む。)を添付し,介護保険適用除外該当届(以下「本件適用除外該当届」という。)を提出した。 被告は,平成30年7月19日,本件適用除外該当届を受理し,被告の理 事長が本件適用除外該当届を確認した旨記載されたゴム印を押した。(以上につき,甲1)⑶ Aに係る介護保険料の不徴収被告は,平成30年7月から平成31年1月までの間,Aに係る介護保険料を徴収しなかった。 ⑷ 本件取消処分被告は,平成31年2月12日,Aの住民票が消除されておらず,Aが「当該市町村の区域内に住所を有しなくなった」とき(介護保険法11条1項本文)に該当しないことが判明したとの理由で,原告に対し,本件適用除外該当届を返戻するとともに,Aに係る平成30年7月分から平成31年1月分 までの介護保険料を同年2月分の保険料と共に徴収する旨の通知をした(本 件取消処分)。(甲2)⑸ 納入告知書の送付被告は,平成31年3月中旬頃,原告に対し,Aに係る平成30 分 までの介護保険料を同年2月分の保険料と共に徴収する旨の通知をした(本 件取消処分)。(甲2)⑸ 納入告知書の送付被告は,平成31年3月中旬頃,原告に対し,Aに係る平成30年7月分から平成31年1月分までの介護保険料を含む同年2月分の納入告知書(同月分の保険料として徴収すべき金額等が記載された書面)を送付した。上記 納入告知書には,この告知額に不服がある場合は審査請求をすることができる旨が付記されていた。 原告は,平成31年4月1日,被告に対し,上記介護保険料を含む上記納入告知書記載の金員を口座振替の方法で納付した。(以上につき,乙7,17,20,弁論の全趣旨) ⑹ 原告の照会と被告の回答原告は,令和元年5月16日,被告に対し,本件取消処分について被告が正式に決定した旨の通知書の作成と送付を依頼した。これに対して,被告は,同月21日頃,原告に対し,同日付けの「介護保険適用除外不該当について」と題する書面(以下「本件回答書面」という。)を送付した。本件回答書面 には,「不該当要件」として「国内に住所を有しないもの(住民基本台帳上の住所を有しないもの)が介護保険適用除外の要件であるため。」との記載が,「取消不該当理由」として「住民票を除票していないことが判明したため。」との記載が,それぞれされていた。(甲3,4)⑺ 本件審査請求① 原告は,令和元年6月27日,近畿厚生局社会保険審査官に対し,健康保険法189条1項に基づき,本件取消処分に関して,Aについて介護保険法に基づく被保険者の適用除外を求める旨の審査請求をした(以下,この審査請求を「本件審査請求①」という。)。 近畿厚生局社会保険審査官は,令和元年7月29日,本件審査請求①を却 下した。その理由は,健康保険法189 除外を求める旨の審査請求をした(以下,この審査請求を「本件審査請求①」という。)。 近畿厚生局社会保険審査官は,令和元年7月29日,本件審査請求①を却 下した。その理由は,健康保険法189条において,社会保険審査官が取り 扱う審査請求の対象は同法に基づく被保険者の資格,標準報酬又は保険給付に関する処分とされており,介護保険法に基づく被保険者の資格はこれに含まれないところ,本件審査請求①は,国内に住所を有した者であるAが介護保険第2号被保険者に該当するか否かという社会保険審査官の権限外の事項について判断を求めるものであって,不適法である,というものであった。 (以上につき,甲5,6)⑻ 本件再審査請求原告は,令和元年8月23日,社会保険審査会に対し,健康保険法189条1項に基づき,本件審査請求①に対する却下決定に不服があるとして再審査請求をした(以下,この再審査請求を「本件再審査請求」という。)。 社会保険審査会は,令和元年12月27日,本件再審査請求を却下した。 その理由は,健康保険法189条1項は健康保険被保険者の資格に関する処分に不服がある者は社会保険審査会に対し再審査請求をすることができる旨定めているところ,本件取消処分は介護保険法上の被保険者資格に関する判断であって健康保険法上の被保険者資格に関する処分ではないから,本件 再審査請求は,不適法である,というものであった。(以上につき,甲7,8)⑼ 本件審査請求②原告は,令和元年9月10日,京都府介護保険審査会に対し,介護保険法183条1項に基づき,本件取消処分について,Aが海外赴任により介護保 険の適用除外に該当していることの確認を求める旨の審査請求をした(以下,この審査請求を「本件審査請求②」という。)。 京都市B区長は に基づき,本件取消処分について,Aが海外赴任により介護保 険の適用除外に該当していることの確認を求める旨の審査請求をした(以下,この審査請求を「本件審査請求②」という。)。 京都市B区長は,令和元年10月18日,京都府介護保険審査会に対し,本件審査請求②の審理における弁明書を提出した。上記弁明書の内容は,本件取消処分は介護保険法183条に規定する介護保険審査会に審査請求す ることができる処分に該当せず,本件審査請求②は不適法であること,健康 保険被保険者が介護保険第2号被保険者に該当しなくなったときは,健康保険法施行規則40条の規定により,健康保険組合に届け出ることとされており,京都市が介護保険法に基づいて処分,確認等を行うことはないことを理由として,本件審査請求②を却下する旨の裁決を求めるというものであった。 なお,原告は,平成31年2月分の納入告知書に係る処分に対する審査請 求をしていない。(以上につき,甲10,11,弁論の全趣旨)⑽ 本件訴えの提起原告は,令和2年6月24日,本件訴えを提起した。 3 争点⑴ 本案前の争点 本件取消処分が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか否か(争点1)⑵ 本案の争点本件取消処分が適法であるか否か(争点2) 4 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(本件取消処分が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか否か) について(原告の主張)ア判断枠組みについて行政事件訴訟法3条2項の定める抗告訴訟の対象となる処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接 国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解すべきである(最高裁昭和37年(オ)第296号同39年 共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接 国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解すべきである(最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。 イ本件取消処分の処分性について介護保険第2号被保険者の資格喪失の判断を行う者について 介護保険第2号被保険者のうち,要介護・要支援認定を受ける者につ いては,市町村独自の判断が必要であることから,被保険者の資格の管理は市町村が行うべき事務とされているのに対し,その他の介護保険第2号被保険者については,例外を除き,40歳以上65歳未満の者という明確な基準が存在し,資格の管理は事務として比較的簡易であることが想定される。また,介護保険第2号被保険者は勤労世代に属し,一般 に職域と地域に分けて保険料を徴収することが効率的であること等から,介護保険料は,医療保険者が医療保険料として徴収し,健康保険被保険者が介護保険第2号被保険者に該当しなくなったときは,健康保険組合に届け出ることとされており(健康保険法施行規則40条1項柱書き本文)。市町村が介護保険法に基づいて介護保険第2号被保険者の資 格を管理することは想定されていない。 これらの事情に照らせば,介護保険第2号被保険者の資格の管理は医療保険者に委ねられており,医療保険者が,資格管理に係る事務の一環として,介護保険第2号被保険者の資格の有無について判断を行うものと考えるのが相当である。 本件取消処分について上記を前提に本件取消処分について検討すると,本件取消処分は,単に介護保険第2号被保険者に該当しない旨の届出に係る書類を返戻し,介護保険料の徴収に関する事実状態を伝達したという事実行 分について上記を前提に本件取消処分について検討すると,本件取消処分は,単に介護保険第2号被保険者に該当しない旨の届出に係る書類を返戻し,介護保険料の徴収に関する事実状態を伝達したという事実行為とは異なり,介護保険第2号被保険者の資格喪失の要件である「当該市町村 の区域内に住所を有しなくなった」とき(介護保険法11条1項本文)の解釈について,住民票が消除されている場合という典型例以外には資格喪失を認めないという,被告の「判断」が介在しているものといえる。 そして,その結果,本件取消処分は,介護保険料の徴収義務の存否という原告の権利義務に直接的な影響を及ぼす結果となっているものであ るから,行政事件訴訟法3条2項の定める抗告訴訟の対象となる処分に 当たる。 被告の主張についてこれに対し,被告は,介護保険適用除外該当届が提出された際の被告における事務について,適用事業所から送付された介護保険適用除外該当届及び添付資料の送付を確認し,住民票が消除されていればこれを受 け付け,基幹システムに該当の入力をするのであって,住民票の消除の有無により介護保険の適用除外に該当するか否かを一律に判断しているにすぎないことから,本件取消処分は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない旨主張する。 しかし,介護保険適用除外該当届には住民票を消除したか否かを記載 する欄はないことから,住民票の除票の写しが提出されない場合には,被告において届出者に個別に確認しない限り住民票が消除されているか否かを判断することはできない。その上で,被告は,住民票の除票の写しが提出されない場合には,個別に届出者にその理由を確認し,一定の場合には海外居住証明書及びパスポートの写しを添付資料として提 出させるという代替措置を認め,適用 で,被告は,住民票の除票の写しが提出されない場合には,個別に届出者にその理由を確認し,一定の場合には海外居住証明書及びパスポートの写しを添付資料として提 出させるという代替措置を認め,適用除外に該当するか否かを判断している。すなわち,被告は,「当該市町村の区域内に住所を有しなくなった」とき(介護保険法11条1項本文)の意味について,住民票を消除した場合に限定するという法の解釈を行っており,海外移住に際して住民票を消除しないことを選択した者に代替措置を許さないとの運用を 通して,介護保険第2号被保険者の資格についての判断をしているといえる。 したがって,被告の上記主張は,理由がない。 (被告の主張)ア判断枠組みについて 判断枠組みに関する原告の主張は,争わない。 イ本件取消処分の処分性について介護保険第2号被保険者の資格喪失の「判断」を行う者についてa 健康保険組合と市町村との関係介護保険の保険者は市町村であり(介護保険法3条1項),被保険者の資格に関する処分を行うことができるのは保険者のみである。こ のことは,一部の被保険者の保険料の徴収事務を第三者に行わせる制度設計となったとしても変わらない。 保険料は,保険者が被保険者や事業所から直接徴収するのが原則であるが(健康保険法155条1項参照),介護保険においては,医療保険者が被保険者及び加入事業所から一般保険料と併せて介護保険料 を徴収し,これを納付金として支払基金に支払うこととされている。 介護保険料は,被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額に介護保険料率を乗じた金額であり(健康保険法156条1項1号),自動的に算出されるものである。健康保険組合が徴収した介護保険料は,その全額が納付金に充てられ,健康保険組合が一 酬月額及び標準賞与額に介護保険料率を乗じた金額であり(健康保険法156条1項1号),自動的に算出されるものである。健康保険組合が徴収した介護保険料は,その全額が納付金に充てられ,健康保険組合が一部を留保するなどして自ら の事業(医療保険事業等)のために使用することはできない。したがって,健康保険組合は,介護保険の保険者である市町村に代わり,介護保険第2号被保険者及び加入事業所から,介護保険料を一般保険料と併せて徴収しており,いわば介護保険料の徴収を代行しているにすぎない。 b 不服申立てに関する規定介護保険法183条1項は, 介護保険の保険給付又は保険料その他同法に定める徴収金(財政安定化基金拠出金,納付金及び同法157条1項に規定する延滞金を除く。)に関する処分に不服がある者は,介護保険審査会に審査請求をすることができる旨定めている。また, 健康保険組合が介護保険第2号被保険者から徴収する介護納付金に ついては,健康保険法190条に「保険料等の賦課若しくは徴収の処分又は180条の規定による処分に不服がある者は,社会保険審査会に対して審査請求をすることができる。」と定められているため,介護保険審査会に対する審査請求の対象からは除外されている(介護保険法183条1項括弧書き)。 これに対し,介護保険第2号被保険者の資格に関する処分については,介護保険法に不服申立てに関する規定がない。健康保険法には,医療保険の被保険者の資格に関する処分に不服がある場合に社会保険審査官に対する審査請求をすることができる旨規定されているが(健康保険法189条1項),介護保険被保険者の資格に関する処分に不 服がある場合の手続についての規定はない。そのため,介護保険の資格に関する処分に不服がある者は,審 できる旨規定されているが(健康保険法189条1項),介護保険被保険者の資格に関する処分に不 服がある場合の手続についての規定はない。そのため,介護保険の資格に関する処分に不服がある者は,審査請求ではなく,市町村の長を被告として処分の取消しの訴えを提起することとなると考えられる(行政事件訴訟法3条2項,8条1項)。 このように,介護保険第2号被保険者の資格の得喪に関しては,被 保険者及び事業所は,保険者である市町村の長を被告として不服申立て(処分の取消しの訴え)を行うことができる。このことに照らせば,保険者である市町村の長が,医療保険者を通じて介護保険第2号被保険者の資格の得喪に関する処分をしていると解すべきである。 c したがって,介護保険第2号被保険者の資格の得喪に関する処分を 行ったのは,保険者である市町村の長である。被告は,法令及び監督官庁の通知に基づき,介護保険料の請求や徴収又は徴収の停止を事務的に行ったにすぎず,介護保険第2号被保険者の資格の得喪について判断や決定を行ったものではない。 本件取消処分について 本件取消処分は,本件適用除外届を原告に返戻し,未徴収の介護保険 料を徴収する旨を通知したものにすぎない。 すなわち,本件取消処分は,Aの住民票が消除されていないことから,Aが介護保険の適用除外に該当しないと機械的に処理したものである。 被告は,本件取消処分において,「当該市町村の区域内に住所を有しなくなった」とき(介護保険法11条1項本文)の意味を解釈したもので はないし,介護保険料の徴収をするか否かについての判断や決定をしたものでもない。 したがって,本件取消処分は,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定するものではないから,行政事件訴訟法3条2項の「処分そ 険料の徴収をするか否かについての判断や決定をしたものでもない。 したがって,本件取消処分は,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定するものではないから,行政事件訴訟法3条2項の「処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しない。 原告の主張についてこれに対し,原告は,本件取消処分には被告の判断が介在しているから,本件取消処分は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる旨主張する。 しかし,介護保険法の立法経過や同法に定める徴収方法の制度趣旨等に照らせば,介護保険の資格の得喪については,機械的かつ画一的に決 せられることが求められており,医療保険者が介護保険の資格の得喪について個別的に判断することは予定されていないというべきである。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。 ⑵ 争点2(本件取消処分が適法であるか否か)について(被告の主張) ア本件取消処分が適法であること健康保険被保険者が介護保険第2号被保険者に該当しなくなったときは,当該被保険者は,遅滞なく,事業主を経由して健康保険組合に届け出なければならないとされ(健康保険法施行規則40条1項柱書き本文),この場合において,「事業主の命により被保険者が外国に勤務することと なったため,いずれの市町村…の区域内にも住所を有しなくなったとき」 は,当該事業主は,被保険者に代わって届書を健康保険組合に届け出ることができることとされている(同条3項)。そして,厚生労働省の通知(平成12年3月21日庁保険発第12号)によれば,「いずれの市町村…の区域内にも住所を有しなくなったとき」とは,市町村の区域内に住所を有しない者,すなわち,住民基本台帳上の住所を有しない者をいうとされて 3月21日庁保険発第12号)によれば,「いずれの市町村…の区域内にも住所を有しなくなったとき」とは,市町村の区域内に住所を有しない者,すなわち,住民基本台帳上の住所を有しない者をいうとされて いる(乙1)。このことに照らせば,同項に基づき介護保険の適用除外を受けるためには,被保険者は,住民票の除票の写しを添付し,事業主を経由して健康保険組合に届け出なければならないものと解される。ただし,住民票の除票の保存期間が経過している場合等,住民票は消除しているものの住民票の除票の写しを提出することができない場合には,①海外居住 証明書の写し,②パスポートの写し及び③査証の写しを提出することにより,介護保険の適用除外の届出をすることができるものと解される。 したがって,本件取消処分は,適法である。 イ原告の主張についてこれに対し,原告は,①住民票を消除していなくても,㋐海外居住証明 書の写し,㋑パスポートの写し,㋒査証の写しを提出することによって介護保険の適用が除外されるべきであり,本件取消処分は違法である,②日本国内の住民票の消除を求めた場合には,㋐印鑑登録・証明を利用することができなくなる,㋑住民票写しを取得することができなくなる,㋒市町村での選挙権が認められなくなるなどの制限や不利益を伴うことから,住 民票の消除を求めることは不合理であり,本件取消処分は違法である,③住民票を消除しないまま海外に赴任した場合には,介護保険のサービスを受けることができないにもかかわらず介護保険料を納付しなければならないこととなり,本件取消処分は不合理である旨主張する。 しかし,原告の上記①の主張は,健康保険法施行規則40条3項の解釈 及び運用に対する誤解に基づくものであり,理由がない。 また,原告 件取消処分は不合理である旨主張する。 しかし,原告の上記①の主張は,健康保険法施行規則40条3項の解釈 及び運用に対する誤解に基づくものであり,理由がない。 また,原告の上記②の主張については,㋐印鑑登録・証明を利用することができなくても,日本の在外公館が発給する署名証明書によって代替することができるし,㋑住民票写しを取得することができなくなるのは住民票を消除したことによる反射的効果にすぎず,㋒選挙については,在外選挙人名簿に登録することによって投票することが可能であるから,特段の 制限や不利益はない。したがって,本件取消処分は,適法である。 さらに,原告の上記③の主張については,海外赴任中に介護保険料を負担したくないのであれば住民票を消除すれば足りるのであり,介護保険料の負担は何ら不合理ではなく,本件取消処分は,適法である。 したがって,原告の上記各主張は,いずれも理由がない。 ウ小括以上によれば,本件取消処分(すなわち,被告が,健康保険法施行規則40条3項の「いずれの市町村…の区域内にも住所を有しなくなったとき」を,日本国内の住民票が消除された場合をいうものと解釈し,Aの住民票が消除されていないことを理由に,本件適用除外該当届を返戻し,介護保 険の適用が除外される場合に当たらないと判断したこと)は,適法である。 (原告の主張)ア本件取消処分が違法であること健康保険法施行規則40条3項は,「いずれの市町村…の区域内にも住所を有しなくなったとき」としか規定していない。したがって,具体的に どのような場合が「住所を有しなくなったとき」に当たるかは,同項の解釈問題である。 健康保険法施行規則40条3項の条文上は,①事業主の命により被保険者が外国に勤 。したがって,具体的に どのような場合が「住所を有しなくなったとき」に当たるかは,同項の解釈問題である。 健康保険法施行規則40条3項の条文上は,①事業主の命により被保険者が外国に勤務することとなったこと,②いずれの市町村の区域内にも住所を有しなくなったこと,の2つの要件さえ満たせば,介護保険適法除外 該当届を提出することができるはずであり,住民票の消除を必要とする法 的根拠は何ら存しない。また,住民票の消除を求めなくても,①海外居住証明書の写し,②パスポートの写し,③査証の写し等によって,当該被保険者が日本国内に住所を有しないことを確認することは容易である。実際にも,住民票の消除は必須ではないとする運用をしている健康保険組合も存在する(甲9)。 したがって,本件取消処分は,違法である。 イ被告の主張についてこれに対し,被告は,厚生労働省の通知(平成12年庁保険発第16号)によれば,「いずれの市町村…の区域内にも住所を有しなくなったとき」とは,市町村の区域内に住所を有しない者,すなわち,住民基本台帳上の 住所を有しない者をいうとされている旨主張する。 しかし,上記通知において住民票を消除する必要性が付言されていないことに照らせば,同通知における「住民基本台帳上の住所を有しない者」とは,飽くまで1つの解釈又は典型的な場合の例示であり,それ以外の場合を一切許容しない趣旨であるとは解されない。 したがって,被告の上記主張は,理由がない。 ウ小括以上によれば,介護保険適用除外該当届を提出するために住民票を消除することが必須の要件でないことは明らかであり,本件取消処分(すなわち,被告が,Aの住民票が消除されていないことを理由に,本件適用除外 該当届を返 険適用除外該当届を提出するために住民票を消除することが必須の要件でないことは明らかであり,本件取消処分(すなわち,被告が,Aの住民票が消除されていないことを理由に,本件適用除外 該当届を返戻し,介護保険の適用が除外される場合に当たらないと判断したこと)は,違法である。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件取消処分が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか否か)に ついて⑴ 認定事実前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア介護保険制度の仕組み 制度の概要介護保険制度は,高齢化の進展に伴い,介護を必要とする者が増加していく状況を踏まえ,これらの者が,その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるよう,必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る保険給付を行い,国民の保健医療の向上及び福祉の増進を 図ることを目的として創設され,平成12年4月1日に施行された社会保険制度である。(甲12,13,乙12~16)保険者及び被保険者a 保険者介護保険制度の保険者は,市町村である。保険者である市町村は, 要介護認定(介護保険法第4章第2節),保険給付(同法第4章),介護保険財政の管理運営(同法第8章)を行うほか,介護保険事業計画を定め,介護サービスの供給体制を計画的に整備することも義務付けられている(同法第7章)。(甲12,13,乙12)b 被保険者 介護保険制度の被保険者は,40歳以上の者である。65歳以上の者は介護保険第1号被保険者,40歳以上65歳未満の者は介護保険第2号被保険者と区分されている(介護保険法第2章)。(甲12,13,乙12)保険料の設定及び徴収 a 介護保険第1号被保険者 保険第1号被保険者,40歳以上65歳未満の者は介護保険第2号被保険者と区分されている(介護保険法第2章)。(甲12,13,乙12)保険料の設定及び徴収 a 介護保険第1号被保険者 介護保険第1号被保険者が負担する保険料については,市町村ごとに所得段階に応じた定額保険料が設定される。その徴収は,一定額以上の老齢・退職年金受給者については,年金からの特別徴収(いわゆる天引きによる徴収)がされるほか,それ以外の者については,市町村が個別に徴収を行うこととされている。(甲13) b 介護保険第2号被保険者これに対し,介護保険第2号被保険者が負担する保険料については,自ら受ける介護サービスに対応するだけでなく老親の介護を社会的に支援するという世代間連帯という性格も有していることから,住所を有する市町村ごとの単価ではなく,全国一律の単価に基づき算定する ことが適切と考えられ,また,介護保険第2号被保険者が勤労世代に属し,職域と地域に分けて保険料を徴収するのが効率的であること等から,健康保険組合等の医療保険者が医療保険料として徴収することとしている。そして,介護保険第2号被保険者が負担する保険料については,各被保険者が加入する医療保険制度に基づき保険料が設定さ れる。医療保険者は,介護保険第2号被保険者から,介護保険料を一般の医療保険料と一括して徴収して,支払基金に対し,納付金として納付することとされている(介護保険法150条)。そして,支払基金は,各市町村に対し,それぞれの給付額に対して定率で交付金を交付することとされている(同法125条)。(甲13,乙11~16) 保険給付保険給付は,要介護状態にある被保険者(要介護者)又は要支援状態にある被保険者(要支援者)に対して行われる 交付することとされている(同法125条)。(甲13,乙11~16) 保険給付保険給付は,要介護状態にある被保険者(要介護者)又は要支援状態にある被保険者(要支援者)に対して行われる。その前提として,保険者である市町村は,被保険者が要介護状態又は要支援状態にあるか否かや,被保険者の介護の必要の程度を確認するために,要介護認定又は要 支援認定を行う。(甲13) 被保険者の資格管理市町村は,保険者として,被保険者の資格の取得・喪失について管理業務を行うこととされている。保険者である市町村が行う管理業務としては,資格取得管理,資格喪失管理,適用除外者管理等がある。 a 介護保険第1項被保険者 このうち介護保険第1号被保険者については,全員が市町村による資格管理の対象となる。 b 介護保険第2号被保険者これに対し,介護保険第2号被保険者については,基本的に市町村が介護保険の適用除外に関する情報を把握・管理する必要性がないた め,医療保険者において被保険者の資格の把握・管理が行われ,市町村は介護保険第2号被保険者のうち,①要介護・要支援認定を受けた者及び②被保険者証の交付申請があった者についてのみ資格管理を行うことが想定されている。(甲14)イ被告における介護保険に係る事務処理 被告における介護保険第2号被保険者の把握医療保険加入者は,40歳に達したときに介護保険被保険者の資格を取得する(介護保険法10条1号)。そこで,被告は,被告の医療保険加入者の生年月日により介護保険第2号被保険者に該当するか否かを判断し,加入事業所に介護保険の加入予定者一覧表を送付している。(乙1, 9)介護保険適用除外該当届に係る事務処理被告は,加入事業所から介護保険適用除外 2号被保険者に該当するか否かを判断し,加入事業所に介護保険の加入予定者一覧表を送付している。(乙1, 9)介護保険適用除外該当届に係る事務処理被告は,加入事業所から介護保険適用除外該当届及び添付書類が送付されると,担当職員において記載内容に不備や誤りがないかを確認し,特に問題がなければ,基幹システムに介護保険の適用除外に該当する旨 を入力している。当該担当職員は,入力作業が完了すると,入力内容が 記載された一覧表を印刷し,当該担当職員及び別の職員の2名において入力データ一覧表と届出書面・添付資料とを照合し,入力に誤りがないかどうかを二重に確認している。この確認が完了すると,当該担当職員は,届出書面及び添付書類を上司に提出し,上司においてこれらの書面に不備や誤りがないかを確認し,問題がなければ適用除外該当届に係る 事務処理は終了することになる。(乙2~4)介護保険料及び一般の医療保険料の徴収被告は,被保険者に対し,被保険者が40歳に達した日の属する月から,一般の医療保険料に介護保険料を加えた保険料を請求しており,翌月に40歳に達する被保険者がいる場合には,そのリスト(介護保険加 入予定者一覧表)を納入告知書及び保険料算定原簿と併せて送付している。被保険者が日本国内に住所を有しなくなったことにより適用除外に該当した場合には,被告は,その旨を保険料算定原簿の人数に反映させている。 被告は,被保険者の一般の医療保険料及び介護保険料について,当月 分の保険料を翌月中旬頃までに計算し,加入事業所に対し,納付すべき保険料の具体的な金額を記載した納入告知書等(「納入告知書領収証書」,「領収済銀行控」,「領収済通知書」,「口座振替納付金額通知書」から成るもの)及び介護保険料算定原簿(当該加入 に対し,納付すべき保険料の具体的な金額を記載した納入告知書等(「納入告知書領収証書」,「領収済銀行控」,「領収済通知書」,「口座振替納付金額通知書」から成るもの)及び介護保険料算定原簿(当該加入事業所における介護保険第2号被保険者の人数や介護保険料等を記載した書面)を送付してい る。そして,被告は,被保険者から保険料を徴収した加入事業所の事業主から,保険料の納付を受けている。被告は,上記「納入告知書領収証書」の表面下部に,「この告知額に不服がある場合は,審査請求することができます。詳しくは裏面をご覧ください。」などと記載し,その裏面に,この処分に不服があるときは社会保険審査会に対する審査請求又 は健康保険組合を被告とする処分の取消しの訴えの提起をすることが できる旨を記載している。(以上につき,乙7~9,17)⑵ 判断枠組み行政事件訴訟法3条2項に規定する処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体の行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解され る(最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。 ⑶ 本件取消処分の処分性についてア介護保険第2号被保険者に関する制度の仕組み介護保険制度において,介護保険第2号被保険者が負担する保険料は, 保険者である市町村が直接徴収するのではなく,医療保険者が一般の医療保険料と一括して徴収する仕組み(すなわち,市町村は,医療保険者・支払基金を通じて保険料相当額の交付を受ける仕組み)が採られている。 その理由は,介護保険第2号被保険者が負担する保険料が世代間連帯という性格も有しており,住所を有する市町村ごとの単価ではなく 険者・支払基金を通じて保険料相当額の交付を受ける仕組み)が採られている。 その理由は,介護保険第2号被保険者が負担する保険料が世代間連帯という性格も有しており,住所を有する市町村ごとの単価ではなく全国一 律の単価に基づき算定することが適切と考えられることや,介護保険第2号被保険者が勤労世代に属し,職域と地域に分けて保険料を徴収するのが効率的であることにある(上記⑴ア)。そのため,介護保険第2号被保険者の資格について,市町村は基本的に把握・管理せず,医療保険者が把握・管理することが想定されている(上記⑴ア)。 不服申立ての手続本件取消処分について,不服申立ての手続に関する規定はない。すなわち,健康保険法には,健康保険被保険者の資格に関する処分に不服がある場合に社会保険審査官に対する審査請求をすることができる旨の規定があるものの(健康保険法189条1項),介護保険法及び健康保険 法のいずれにも,介護保険第2号被保険者の資格に関する処分に不服が ある場合の不服申立ての手続に関する規定はない。 これに対し,本件取消処分に引き続き行われた介護保険料を含む保険料の納入の告知(前記前提事実⑸)については,法令上の根拠を有するものであり(健康保険法施行規則136条),介護保険料の納入の告知が「保険料等の賦課若しくは徴収の処分」に当たるため ,これに対する不 服申立ての手続も設けられている(健康保険法190条)。 本件取消処分の内容・性質上記,を前提に本件取消処分の内容や性質について検討すると,本件取消処分は,被告が原告に対し,本件適用除外該当届を返戻するとともに,未徴収の介護保険料について徴収する予定である旨を予告する 内容の通知をしたというものであり(前記前提事実⑷),その性質は,A 処分は,被告が原告に対し,本件適用除外該当届を返戻するとともに,未徴収の介護保険料について徴収する予定である旨を予告する 内容の通知をしたというものであり(前記前提事実⑷),その性質は,Aが介護保険第2号被保険者の資格を喪失したとは認められないという,Aの法的地位に関する被告の判断を含むものであるといえる。もっとも,本件取消処分における上記返戻・通知について,介護保険法等の関係法令等に明示的な規定はなく,本件取消処分がされたことによって直ちに 原告にAに係る介護保険料の徴収に応ずべき具体的な義務を生じさせるものではないことから,本件取消処分は直接原告の権利義務に変動を生じさせるものとはいえない。 これに対し,本件取消処分に引き続いて行われた介護保険料を含む保険料の納入の告知(前記前提事実⑸)は,法令上の根拠を有しており(健 康保険法施行規則136条),直接原告にAに係る介護保険料の徴収に応ずべき具体的な義務を生じさせるものということができる。そして,介護保険第2号被保険者の資格の得喪に関する健康保険組合の判断に争いがある場合については,介護保険料を含む保険料の納入の告知に対する審査請求又は取消訴訟を認めることで,利害関係人に対する権利救 済の機会が保障されているものと解される。 これらの事情に照らせば,本件取消処分は,被告の行為によって,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものということはできない。 イ原告の主張についてこれに対し,原告は,「当該市町村の区域内に住所を有しなくなった」と き(介護保険法11条1項本文)の解釈について,被告が,住民票を消除した場合に限定し,海外移住に際し住民票を消除しないことを選択した者に代替措置を許さないと の区域内に住所を有しなくなった」と き(介護保険法11条1項本文)の解釈について,被告が,住民票を消除した場合に限定し,海外移住に際し住民票を消除しないことを選択した者に代替措置を許さないとの運用を行っていることを理由に,被告が介護保険第2号被保険者の資格について法の解釈と判断を行っているとして,本件取消処分に処分性が認められる旨主張する。 しかし,上記認定事実ア,上記アで認定・説示したとおり,健康保険組合は,介護保険料を含む保険料の算定と納入の告知に当たり,介護保険第2号被保険者の資格の得喪について一定の判断を行っているものと考えられるものの,本件取消処分によって直ちに原告にAに係る介護保険料の徴収に応ずべき具体的な義務を生じさせるものとはいえないことに照ら せば,原告が指摘する点を踏まえても,本件取消処分に処分性が認められるとはいえない(なお,本件取消処分の前提である本件措置や,本件回答書面に係る回答にも,これまでに説示したところと同様の理由により,処分性が認められるとはいえない。)。そして,上記アで説示したとおり,介護保険第2号被保険者の資格の得喪に関する健康保険組合の判断につい て不服がある場合には,介護保険料を含む保険料の納入の告知という処分に対し審査請求又は取消訴訟の提起を行い,その審理の中で介護保険第2号被保険者の資格の得喪について争うことができるのであり,権利救済の機会は実質的に保障されているものと解される(もっとも,原告が平成31年2月分の納入告知書に係る処分に対する審査請求をしていないことは, 前記前提事実⑼のとおりである。)。このような理解は,介護保険制度の仕 組み(上記認定事実ア)や被告における介護保険に係る事務処理の流れ(上記認定事実イ)にも整合的であるとい は,前記前提事実⑼のとおりである。このような理解は,介護保険制度の仕組み(上記認定事実ア)や被告における介護保険に係る事務処理の流れ(上記認定事実イ)にも整合的であるといえる。したがって,原告の上記主張は,理由がない。 小括したがって,本件取消処分は,行政庁がその行為により直接に国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものとはいえず,抗告訴訟の対象となる処分には当たらないというべきである。 まとめ上記1のとおり,本件取消処分の取消しを求める本件訴えは,不適法であり,却下を免れない。 結論以上の次第で,本件訴えは不適法であるからこれを却下することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山地修 裁判官太田章子 裁判官関尭熙

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