平成18(行ウ)21 裁決取消等請求

裁判年月日・裁判所
平成18年11月30日 名古屋地方裁判所 棄却
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判決文本文16,158 文字)

- 1 -平成18年11月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成18年(行ウ)第21号裁決取消等請求事件口頭弁論終結日平成18年10月11日判決主文 江南市公平委員会が,原告の平成18年2月15日付け苦情申出(同年3月14日付け訂正を含む。)に対して同年3月17日にした受理できない旨の裁決の取消しを求める訴え,及び同年4月1日施行の「江南市立小中学校教職員等の学校施設等における通勤用自動車の駐車に関する要綱」が無効であることの確認を求める訴えをいずれも却下する。 原告の被告に対する,「江南市立小中学校教職員等の学校施設等における通勤用自動車の駐車に関する要綱」にいう「行政財産目的外使用許可」の申請をしないまま,あるいは「駐車許可証」の交付を受けないまま,原告が自らの通勤用自動車を江南市立A小学校校地に駐車することを妨害してはならないとの請求を棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 平成18年3月17日に江南市公平委員会がなした,原告申立てに係る同年2月15日付け苦情申出(同年3月14日付け訂正を含む。)に対して「受理することはできません」とした裁決を取り消す。 2(1) 江南市教育委員会の制定に係る,平成18年4月1日施行の「江南市立小中学校教職員等の学校施設等における通勤用自動車の駐車に関する要綱」が無効であることを確認する。 (2) 被告は,原告が,「江南市立小中学校教職員等の学校施設等における通勤用自動車の駐車に関する要綱」にいう「行政財産目的外使用許可」の申請を- 2 -しないまま,あるいは「駐車許可証」の交付を受けないまま,自らの通勤用自動車を江南市立A小学校校地に駐車することを妨害してはならない。 第2事案の概要本件は,愛知県江南市の市立小学校 - 2 -しないまま,あるいは「駐車許可証」の交付を受けないまま,自らの通勤用自動車を江南市立A小学校校地に駐車することを妨害してはならない。 第2事案の概要本件は,愛知県江南市の市立小学校に勤務する原告が,被告江南市の江南市教育委員会が「江南市立小中学校教職員等の学校施設等における通勤用自動車の駐車に関する要綱」(本件要綱)を制定したことに対し,江南市公平委員会に対して,本件要綱によれば通勤用自動車を小学校校地内に駐車する場合は使用料を納入しなければならなくなるとして,地方公務員法8条2項3号の規定に基づき苦情を申し立てたところ,同委員会から受理できない旨の裁決を受けたとして,その取消しと本件要綱が無効であることの確認を,また,原告が本件要綱による手続を経ることなく通勤用自動車を同小学校校地に駐車することを妨害してはならない旨をそれぞれ請求した事案である。 前提事実(証拠を摘示した事実のほかは争いがない。)(1) 原告は,愛知県江南市立A小学校に勤務する事務職員である。 (2) 江南市教育委員会(市教育委員会)は,平成17年10月3日,本件要綱を制定した(甲1号証の4,乙1号証)。 (3) 原告は,同月23日,市教育委員会に対し「『江南市立小中学校教職員等の学校施設等における通勤用自動車の駐車に関する要綱』(本件要綱)についての質問書」と題する書面を送付し,本件要綱が職員に意見を求めることもなく制定されたことについて抗議するとともに,本件要綱の内容に関する幾つかの疑問点について質問し,これに対する回答を求めた(甲1号証の2)。 (4) 市教育委員会は,原告から事情を聴取した上,同年11月30日,上記質問に対し書面で回答した(甲1号証の3・4)。 (5) 原告は,平成17年12月19日,市教育委員会に対し「『江南市立学校施設等 ) 市教育委員会は,原告から事情を聴取した上,同年11月30日,上記質問に対し書面で回答した(甲1号証の3・4)。 (5) 原告は,平成17年12月19日,市教育委員会に対し「『江南市立学校施設等における通勤用自動車の駐車料金』問題にかかわる再質問と要求」と- 3 -題する文書を送付して,上記回答書によっても納得できない部分について,再度質問するとともに,江南市学校事務労働組合としての要求事項を提示して,これに対する回答を求めた(甲1号証の5)。 (6) 原告は,平成18年2月15日,江南市公平委員会(市公平委員会)に対し,本件要綱によれば,原告を含む江南市立小中学校教職員等が通勤に自家用車を利用し,これを学校施設内に駐車する場合は使用料(駐車料金)を納入しなければならなくなるとして,地方公務員法8条2項3号の規定により苦情を申し出た(甲1号証の1,7号証,「本件苦情申出」という。)。 (7) 市公平委員会は,平成18年3月17日,原告に対し「苦情の申し出について(回答)」と題する書面を送付して,地方公務員法8条2項3号の規定により公平委員会が処理する苦情は,勤務条件その他の人事管理に関するものであると解されており,このことは,江南市職員からの苦情相談に関する規則1条においてもその旨規定されているところ,原告からの苦情の申出は,駐車場の料金に関するものであって人事管理に関するものには当たらないから,これを受理できない旨回答した(甲3号証,「本件回答」という。)。 関係法令等の抜粋(1) 江南市立小中学校教職員等の学校施設等における通勤用自動車の駐車に関する要綱(本件要綱)(乙1号証)1条江南市立小中学校等に勤務する校長,教頭,教諭,養護教諭,講師,事務職員,栄養職員,校務員,給食配膳員等(以下「教職員等」という。)が自動車で通 車の駐車に関する要綱(本件要綱)(乙1号証)1条江南市立小中学校等に勤務する校長,教頭,教諭,養護教諭,講師,事務職員,栄養職員,校務員,給食配膳員等(以下「教職員等」という。)が自動車で通勤する場合で,通勤するための自動車(以下「通勤用自動車」という。)を江南市の行政財産(以下「行政財産」という。)に駐車するときの行政財産の使用許可の手続に関しては,江南市行政財産の目的外(「目的外使用」の誤記と認める。)に係る使用料条例(平成5年条例第38号)及び江南市公有財産管理規則(昭和40年- 4 -規則第6号)に定めるもののほか,この要綱に定めるところによる。 3条行政財産に通勤用自動車を駐車しようとする教職員等の在籍する学校の校長は,行政財産目的外使用許可申請書(様式第1)に申請者名簿(様式第2)を添付して教育委員会に申請しなければならない。 4条教育委員会は,前条の規定による申請があったときは,その内容を審査し,使用させることが適当と認めるときは,行政財産目的外使用許可書(様式第3)に許可者名簿(様式第4)を添付して校長に通知するものとする。 前項の許可は,年度を単位として行うものとする。 5条教育委員会は,前条の規定により行政財産の使用を許可したときは,申請者名簿に記載された教職員等に対し,駐車許可証(様式第5)を交付するものとする。 駐車許可証の交付を受けた者(以下「使用者」という。)は,通勤用自動車を行政財産に駐車するときは,駐車許可証を当該自動車の外から確認できる場所に備えなければならない。 使用者は,9条の規定により使用の許可を取り消したとき,又は11条の規定により使用の許可を取り消されたときは,駐車許可証を返納しなければならない。 (2) 地方公務員法8条2項公平委員会は,次に掲げる事務を処理する。 より使用の許可を取り消したとき,又は11条の規定により使用の許可を取り消されたときは,駐車許可証を返納しなければならない。 (2) 地方公務員法8条2項公平委員会は,次に掲げる事務を処理する。 1号職員の給与,勤務時間その他の勤務条件に関する措置の要求を審査し,判定し,及び必要な措置を執ること。 2号職員に対する不利益な処分についての不服申立てに対する裁決又は- 5 -決定をすること。 3号前2号に掲げるものを除くほか,職員の苦情を処理すること。 4号前3号に掲げるものを除くほか,法律に基づきその権限に属せしめられた事務(3) 江南市職員からの苦情相談に関する規則(公平委員会規則第1号,乙2号証)1条この規則は,地方公務員法(中略)8条2項3号の規定に基づき,職員(離職した職員を含む。以下同じ。)からの勤務条件その他の人事管理に関する苦情の申出及び相談(当該職員に係るものに限る。以下「苦情相談」という。)に関し,必要な事項を定めるものとする。 2条職員は,公平委員会に対し,文書又は口頭により苦情相談を行うことができる。ただし,離職した職員にあっては,次の掲げる苦情相談に限る。 (1) 離職に関する苦情相談(2) 地方公務員法28条の4又は28条の5の規定に基づく採用に関する苦情相談3条公平委員会は,前条に規定する苦情相談の迅速かつ適切な処理を行うため,公平委員会の委員又は事務局職員のうちから苦情相談を受けて処理する者(以下「相談員」という。)を指名する。 4条相談員は,苦情相談を行った職員(以下「申出人」という。)に対し,助言等を行うほか,関係当事者に対し,指導,あっせんその他の必要な措置を行うものとする。 相談員は,申出人が事案の処理の継続を求める場合において,当該事案に係る問題の解決の見込みがないと認め ,助言等を行うほか,関係当事者に対し,指導,あっせんその他の必要な措置を行うものとする。 相談員は,申出人が事案の処理の継続を求める場合において,当該事案に係る問題の解決の見込みがないと認めるときその他事案の処理を継続することが適当でないと認めるときは,当該事案の処理を打ち切るものとする。 - 6 - 事案に係る問題について,地方公務員法46条の規定による措置の要求がなされ,当該措置の要求の受理がされたとき,又は不利益処分についての不服申立てに関する規則6条1項の規定による受理がされたときは,当該事案の処理は打ち切られたものとみなす。 5条相談員は,申出人,当該申出人の任命権者その他の関係者に対し,必要に応じて,事情聴取,照会その他の調査を行うことができる。 (4) 江南市公有財産管理規則(乙7号証の1,2。「財産管理規則」という。)1条この規則は,地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)173条の2の規定に基づき,公有財産の取得,管理及び処分について必要な事項を定めるものとする。 20条市長は,次の各号のいずれかに該当する場合に限り,その用途又は目的を妨げない限度において,地方自治法238条の4第4項の規定による行政財産の使用(以下「目的外使用」という。)を許可することができる。 (1) 職員及び当該施設を利用する者のために食堂,売店その他の厚生施設を設置するとき。 (2) 市の施策の普及宣伝その他の公共目的のため,講演会,研究会等の用に短期間供するとき。 (3) 運送,水道,電気,ガスその他の公益事業の用に供するため,やむを得ないと認めるとき。 (4) 災害その他の緊急やむを得ない事態の発生により応急施設として極めて短時間その用に供するとき。 (5) 国又は公共団体において,公共用,公用又は公益事業の用に短期間供 を得ないと認めるとき。 (4) 災害その他の緊急やむを得ない事態の発生により応急施設として極めて短時間その用に供するとき。 (5) 国又は公共団体において,公共用,公用又は公益事業の用に短期間供するとき。 (6) 通路,材料置場,物干場その他これらに類する施設の敷地の用に供- 7 -するとき。 (7) 一時的に設置する駐車場,休憩所,その他これらに類する施設の敷地の用に供するとき。 (8) 集会,展示会,博覧会その他これらに類する催しのため,その用に供するとき。 (9) 前各号に掲げるもののほか,市の事務,事業又は市の企業の遂行上やむを得ないと認めるとき。 (なお,平成18年9月15日に公布・施行された「江南市公有財産管理規則の一部を改正する規則」(江南市規則第53号)により,上記9号を10号とし,8号の次に「(9) 職員(県費負担教職員を含む。)並びに市の施設に就業している受託業者及び指定管理者の従業員が自動車で通勤する場合であって,当該自動車を駐車するため,その用に供するとき。」との条項が付け加えられた。乙9号証の1ないし3) 争点及び当事者の主張(1) 請求第1について(本件回答の取消し)ア本案前の主張(被告の主張)(ア) 地方公務員法8条2項3号による公平委員会の苦情処理の方法は,助言,指導,あっせん等様々な方法が考えられるが,いずれも,関係当事者に対し公権力を行使するものではなく,任意的方法により問題の解決を図ろうとするものであるから,そのような苦情処理は,行政処分とはいえない。 したがって,原告の本件苦情申出に対して市公平委員会がなした「受理できない」旨の本件回答は,原告の法的権利に何ら影響を与えるものではないから行政処分には当たらない。 (イ) 地方公務員法8条2項3号による公平委員会の苦情の処理につき不服 公平委員会がなした「受理できない」旨の本件回答は,原告の法的権利に何ら影響を与えるものではないから行政処分には当たらない。 (イ) 地方公務員法8条2項3号による公平委員会の苦情の処理につき不服- 8 -のある者は,苦情の内容について同項1号による措置要求の申立てをなすか,同項2号による不服申立てをすべきであり,公平委員会の苦情処理に対して取消請求訴訟を提起することはできない。 (原告の主張)(ア) 市公平委員会は,原告の本件苦情申出に対し,「受理できません」とする本件回答をしたものであるが,仮に本件苦情申出が適法要件を備えていなかったのであれば,原告にその補正を命じるなり,申出内容等が不明確であれば釈明を求め,補正命令に応じないもの等の不適法な申出は裁決で却下すべきであり,そうでない適法な苦情申出については,地方公務員法8条2項3号の規定により処理しなければならないと解すべきである。 被告は,市公平委員会の本件回答が原告の法的権利に何ら影響を与えるものではないと主張するが,市公平委員会は,補正命令や釈明要求をすることなく,助言,指導,あっせん等の苦情処理を一切行わないことを決定して本件回答を出し,本件苦情申出に対して何らの処理も行わなかったのであるから,本件回答が原告にとって重大な法的不利益であることはいうまでもない。 (イ) 被告は,公平委員会の苦情の処理につき不服のある者は,苦情の内容について同項1号による措置要求の申立てをなすか,同項2号による不服申立てをすべきである旨主張するが,苦情の内容あるいは苦情申出に対する裁決に不服がある場合は,措置要求又は不服申立てをすることはできない。 イ本案に関する主張(原告の主張)(ア) 公平委員会は,職員の苦情を処理する職責を負う(地方公務員法8条2項3号)が,この苦情とは「職員 る場合は,措置要求又は不服申立てをすることはできない。 イ本案に関する主張(原告の主張)(ア) 公平委員会は,職員の苦情を処理する職責を負う(地方公務員法8条2項3号)が,この苦情とは「職員の給与,勤務時間その他の勤務条- 9 -件」(同法8条2項1号)又は「職員に対する不利益な処分」(同項2号)に関するものに限らず,一般的な苦情も含まれると解することができる。 もちろん,一般的な苦情として,個人的な不平不満までをも取り上げる必要はないが,相手方の何らかの取扱いが職員の苦情の原因となっており,相手方の適切な措置によって苦情が解消できるのであれば,そのような内容の苦情は公平委員会が処理すべき苦情として取り上げてしかるべきである。 (イ) 仮に,人事院規則13-5(職員からの苦情相談)の1条が規定するように,苦情の内容を「勤務条件その他の人事管理に関する苦情」と解し,その申出及び相談に係る具体的範囲を「人事院規則13-5(職員からの苦情相談)の運用について(通知)」(平成12年6月1日公平-518人事院事務総長)の1条が規定するように,「職員の任用,給与,勤務時間その他の勤務条件,服務等人事管理の全般に関する苦情の申出及び相談をいい,職場の人間関係及び職場におけるセクシュアル・ハラスメントに関する苦情の申出及び相談が含まれる。」と解したとしても,公務遂行の前提行為である通勤に関し服務監督権者が新たに職員に課金するということは重大な勤務条件の変更であるから,原告による本件苦情申出の内容は,公平委員会が処理すべきものであることは明らかである。 (被告の主張)(ア) 公平委員会による苦情処理を定めた地方公務員法8条2項3号は,平成16年法律第85号による改正により新設されたものであるが,その趣旨は,勤務条件に関する措置の要求(同 ある。 (被告の主張)(ア) 公平委員会による苦情処理を定めた地方公務員法8条2項3号は,平成16年法律第85号による改正により新設されたものであるが,その趣旨は,勤務条件に関する措置の要求(同法46条)及び不服申立て(同法49条の2)に至らないような職員の苦情に適切に対応するため,公平委員会の事務として,職員の苦情の処置に関する事務を設けたもの- 10 -である。 したがって,公平委員会が処理すべき苦情は,職員の勤務条件,人事管理に関するものであって,措置要求等に至らないものであると解すべきであり,勤務条件,人事管理に関係のない一般的な苦情は含まれないと考えられる。同法8条2項3号が「前2号に掲げるものを除くほか(後略)」と規定しているのは,そのことを意味する。 (イ) 原告による本件苦情申出は,本件要綱により使用料を納入しなければ学校敷地内に通勤用自動車を駐車できないこととなったことに対するものであり,原告の勤務条件,人事管理に関するものとはいえないから,市公平委員会が,本件苦情申出を勤務条件その他の人事管理に関するものではないとして受理しなかったことに何ら違法はない。 (2) 請求第2(1)(本件要綱の無効確認)ア本案前の主張(被告の主張)(ア) 本件要綱の無効確認を求める訴訟(抗告訴訟)が適法であるというためには,本件要綱が原告の具体的な権利を制限するものであることが必要である。本件では,原告の主張によっても,原告は通勤に使用する自動車を学校施設に事実上駐車していたものにすぎず,その許可を受けていたわけではないから,本件要綱によって原告の具体的な権利に変動が生じているとはいえず,原告は,本件要綱の無効確認を求めることはできない。 (イ) また,同訴えを将来の予防的訴訟と理解したとしても,予防的訴訟が適法とされるには によって原告の具体的な権利に変動が生じているとはいえず,原告は,本件要綱の無効確認を求めることはできない。 (イ) また,同訴えを将来の予防的訴訟と理解したとしても,予防的訴訟が適法とされるには,事前救済を認めなければ救済が困難になること,現行法上ほかに適切な救済方法がないことなどの要件が必要であると解すべきところ,通勤用自動車を学校施設内に駐車しようとする教職員のうち,原告以外の者は本件要綱に従って校長を通じて使用許可を得ている- 11 -ことを考えれば,原告は,本件要綱の効力まで争う必要はなく,単に原告が本件要綱に基づく許可を受けることなく学校施設内に通勤用自動車を駐車することの可否を争えば足りる。 したがって,本件訴えは,予防的訴訟が適法とされる要件を欠いており,訴えの利益がないから却下されるべきである。 (原告の主張)被告の主張は争う。 イ本案に関する主張(原告の主張)(ア) 本件要綱は,教職員が通勤用自動車を校地内に駐車することを「目的外利用」であるとする。 行政財産は「その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる」(地方自治法238条の4第4項)とされているが,学校の目的たる公共的教育事業を実施する主体としての教職員が,通勤用自動車を学校校地に置くことは学校の目的に適合した学校校地の利用であって「目的外利用」ではない。 (イ) 江南市は,地方自治法238条の4第4項の規定による行政財産の目的外使用に係る許可の基準を,財産管理規則20条において規定しているが,同条は1号ないし9号に該当する場合に限り行政財産の使用を許可することができると定めているものの,学校施設に教職員の通勤用自動車を置くことは同規則20条1号ないし9号のいかなる規定にも該当しない。 したがって,本件要綱は,その成立の前提を 政財産の使用を許可することができると定めているものの,学校施設に教職員の通勤用自動車を置くことは同規則20条1号ないし9号のいかなる規定にも該当しない。 したがって,本件要綱は,その成立の前提を欠くものであり,また財産管理規則と矛盾するともいえる。 (ウ) 以上によれば,本件要綱は無効であることが明らかである。 (被告の主張)- 12 -(ア) 教職員が通勤用自動車を学校施設内に駐車することは,行政財産の目的外使用に当たる。 すなわち,公立学校の目的が公教育にあることはいうまでもなく,公教育そのもの及び公教育をする上で当然に必要なこと,あるいは当然に付随することに利用されることは学校施設の目的に沿った使用であるところ,教職員が通勤にマイカーを利用することは,学校教育に当然必要なことあるいは当然に付随することではないから,通勤用自動車の駐車は学校施設の目的外使用に当たることは明らかである。 (イ) そして,地方自治法238条の4第4項は,行政財産の目的外使用について「行政財産は,その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる」と規定し,さらに,財産管理規則(乙9の1ないし3)で具体的な許可基準を規定している。 本件要綱は,地方教育行政の組織運営に関する法律23条により,学校施設を管理する市教育委員会が,学校施設の目的外使用として,教職員の通勤用自動車の施設内駐車を許可するについての手続等を規定したものである。 (ウ) 江南市においては,本件要綱制定前には使用料を納付させることなく学校施設内での教職員の通勤用自動車の駐車を事実上認めてきた経緯があるが,そのことから利用者に将来的にも無料での使用権を与えてきたとはいえない。江南市が,財政的事情,あるいは学校教職員以外の職員とのバランス等の観点から,学校施設の目的外使 事実上認めてきた経緯があるが,そのことから利用者に将来的にも無料での使用権を与えてきたとはいえない。江南市が,財政的事情,あるいは学校教職員以外の職員とのバランス等の観点から,学校施設の目的外使用について見直しをし,市教育委員会が本件要綱を制定したことは何ら違法ではない。 (エ) 原告は,学校施設に教職員の通勤用自動車を置くことは,財産管理規則20条の各号に該当しないとして,そのことが目的外使用ではないことの根拠として主張する。 しかし,本件要綱による駐車場としての利用は,同条6号(通路,材- 13 -料置場,物干場その他これらに類する施設の敷地の用に供するとき。)及び9号(前各号に掲げるもののほか,市の事務,事業又は市の企業の遂行上やむを得ないと認めるとき。)に当たる。 なお,財産管理規則は,平成18年9月15日に公布・施行された「江南市公有財産管理規則の一部を改正する規則」(江南市規則第53号)により,上記9号を10号とし,8号の次に「(9) 職員(県費負担教職員を含む。)並びに市の施設に就業している受託業者及び指定管理者の従業員が自動車で通勤する場合であって,当該自動車を駐車するため,その用に供するとき。」との条項が付け加えられたが,これは,江南市議会で議員から疑義があるとの質問を受けたことや,本件原告のように疑義を持つ者がいることから,通勤用自動車の駐車に関する上記のような条項を付け加えて明確にしたものである。 (オ) しかも,財産管理規則20条は,同条各号に該当する場合には,行政財産の目的外使用を許可することができるとするものであり,同条各号に該当しない場合には,目的外使用を許可できないことになるにすぎず,その使用が目的に沿った使用となるわけではない。 (3) 請求第2(2)(通勤用自動車を小学校校地に駐車することの妨害の り,同条各号に該当しない場合には,目的外使用を許可できないことになるにすぎず,その使用が目的に沿った使用となるわけではない。 (3) 請求第2(2)(通勤用自動車を小学校校地に駐車することの妨害の禁止)(原告の主張)ア原告は,勤務日の半分以上は自家用車を利用してA小学校に通勤している。通勤距離は,片道2㎞弱なので,徒歩あるいは自転車で通勤することもあるが,天候や体調によっては,あるいは荷物が多い場合などは自家用車に頼らざるを得ない。 本件要綱によれば,当該月の勤務日数が10日未満の場合は使用料(駐車料金)を免除されるようであるが,原告の場合は,通常月20日以上の勤務日があり,たとえ自家用車を利用して通勤する日が1か月当たり10日未満であったとしても使用料は免除されない。 - 14 -イ原告は,前記(2) (原告の主張)に記載のとおり本件要綱が無効であることを確信しているので,駐車場の使用許可を申請していないし,駐車料金も支払っていないから,原告が通勤用自動車をA小学校校地に置くことは,本件要綱に反することになる。この点については,原告が市教育委員会に質問したところ,市教育委員会は,各教職員の希望に基づいて校長が申請した申請者名簿に登載されていない者の通勤用自動車の駐車については,無断使用となり排除の対象となる旨回答した。 現時点において原告の通勤用自動車が排除されたことはないが,「排除の対象」とされている以上,いつ何時排除されないとも限らない。 ウよって,原告は,被告に対し,本件要綱にいう「行政財産目的外使用許可」の申請をしないまま,あるいは「駐車許可証」の交付を受けないまま,自らの通勤用自動車を江南市立A小学校校地に駐車することの妨害行為の禁止を求める。 (被告の主張)本件要綱は何らの違法性がなく有効なものである以上,原告 あるいは「駐車許可証」の交付を受けないまま,自らの通勤用自動車を江南市立A小学校校地に駐車することの妨害行為の禁止を求める。 (被告の主張)本件要綱は何らの違法性がなく有効なものである以上,原告が通勤用自動車をその通勤場所である江南市立A小学校の施設内に駐車しようとする場合は,所属学校長に申し出て,市教育委員会の使用許可を受ける必要がある。 原告が,使用許可を受けていない以上,通勤用自動車を学校施設内に駐車してはならないことは明らかであるから,原告の上記請求は理由がない。 第3争点に対する判断 争点(1) 請求第1(本件回答の取消し)について(1) 市公平委員会が本件苦情申出を受理できない旨を告げた本件回答が行政処分性を有するか否かについて検討する。 地方公務員法8条2項3号が規定する公平委員会の苦情処理は,平成16年の地方公務員法の改正(平成16年法律第85号)によって,従来から任命権者などによって事実上行われていた職員からの苦情の処理を,公平委員- 15 -会の事務として加えたものであるが,この苦情処理に関する公平委員会の法的地位は,申し出に係る苦情について,仲介者としてその調整を図り,当事者の納得を得るように説得,調整及び仲介作業を行うというものであって,それについて強制的な決定権限を有するものではなく,上記の作業を行っても申出人の任意の納得が得られなければ,苦情処理手続を打ち切ることで終了するものである。そして,同法に基づいて市公平委員会が定めた上記の「江南市職員からの苦情相談に関する規則(公平委員会規則第1号)」も,この苦情処理に関する上記の趣旨に則り,「この規則は,地方公務員法(中略)8条2項3号の規定に基づき,職員(中略)からの勤務条件その他の人事管理に関する苦情の申出及び相談(中略)に関し,必要な事項を定めるも 処理に関する上記の趣旨に則り,「この規則は,地方公務員法(中略)8条2項3号の規定に基づき,職員(中略)からの勤務条件その他の人事管理に関する苦情の申出及び相談(中略)に関し,必要な事項を定めるものとする。」(同規則1条)と規定した上,公平委員会の委員又は事務局職員の中から指名された相談員が(同3条),苦情相談を行った職員に対し,助言等を行うほか,関係当事者に対し,指導,あっせんその他の必要な措置を行うものとし(同4条1項),なお,相談員は,関係者に対し,必要に応じて,事情聴取,照会その他の調査を行うことができる(同5条)が,相談員は,当該事案に係る問題の解決の見込みがないと認めるときその他事案の処理を継続することが適当でないと認めるときは,当該事案の処理を打ち切るものとする旨(同4条2項)を定めている。 以上の苦情処理制度の趣旨並びに地方公務員法及び上記規則の規定内容に照らしてみれば,公平委員会が行う苦情処理は,強制力を伴う公権力の行使をするものではなく,それによって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものでもないから,苦情処理の申出が受理されなかったとしても,これによって申出職員の権利義務が形成され又はその範囲が確定されることになるものではない。 したがって,苦情処理の申出を受理しないとする公平委員会の行為は,抗告訴訟としての取消訴訟の対象となるべき行政処分に当たらないことが明ら- 16 -かである。 (2) そうすると,前記前提事実(6),(7)記載のとおり,原告が本件苦情申出をしたのに対し,市公平委員会がこれを受理することができないとして本件回答をしたことは,行政処分とは認められないから,本件回答の取消しを求める原告の訴えは不適法である。 原告は,市公平委員会が,補正命令や釈明要求をすることなく本件回答をし,本 とができないとして本件回答をしたことは,行政処分とは認められないから,本件回答の取消しを求める原告の訴えは不適法である。 原告は,市公平委員会が,補正命令や釈明要求をすることなく本件回答をし,本件苦情申出に対して何らの処理も行わなかったので,原告は本件回答によって重大な法的不利益を受けた旨をも主張するが,上述したとおり,地方公務員法8条2項3号の規定による苦情処理の申出を受理しない旨の公平委員会の行為は,申出人の法的な権利義務の形成や範囲の確定等の法的な効果を伴うものではなく,原告がそれによって法的な不利益を受けたと解することはできない。 争点(2) 請求第2(1)(本件要綱の無効確認)について原告は,本件要綱の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとの見解を前提に,行政事件訴訟法3条4項の無効確認の訴えとして,本件要綱が無効であることの確認を求めているものと解される。 しかし,抗告訴訟の対象となる行政処分とは,行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為であって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解すべきところ,本件要綱は,江南市の小中学校に勤務する教職員等に対して,小中学校の敷地等の行政財産に通勤用自動車を駐車する際の駐車料金の賦課について,一般的な規定を設けたものであって,特定の者に対してのみ適用されるものではない上,本件要綱が制定されたことによって,直ちに原告の権利義務に変動を生じるものではなく,行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することもできないから,本件要綱の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解することはできない。 - 17 -したがって,原告の本件要綱の無効確認を求める訴えは,行政処分性を有しないものを対象としており,不適法である。 の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解することはできない。 - 17 -したがって,原告の本件要綱の無効確認を求める訴えは,行政処分性を有しないものを対象としており,不適法である。 争点(3) 請求第2(2)(通勤用自動車を小学校校地に駐車することの妨害の禁止)について(1) 原告は,本件要綱が無効であるとして,本件要綱による手続を経ることなく通勤用自動車を前記小学校校地に駐車することの妨害の禁止を求めている。 普通地方公共団体が所有する不動産等の公有財産は,普通地方公共団体において公用又は公共用に供し,又は供することと決定した行政財産と,行政財産以外の一切の公有財産である普通財産によって構成され(地方自治法238条3項,4項),前者の行政財産は,庁舎,議事堂等,普通地方公共団体がその事務又は事業を執行するため直接使用することを本来の目的とする公用に供する財産(いわゆる公用財産)と,道路,病院,学校等,住民の一般的共同利用に供することを本来の目的とする公共の用に供する財産(いわゆる公共用財産)に分類されるところ,小学校校地は上記のとおり公共用財産に属する行政財産である。 原告の上記請求は,公共用財産である小学校校地に関する学校教職員の利用関係という公法上の法律関係に関するものといえるから,上記請求に係る訴えは,行政事件訴訟法4条の当事者訴訟(いわゆる実質的当事者訴訟)に当たるものとして,適法に係属したものと解することができる。 (2) 原告は,本件要綱が無効である理由として,教職員が通勤用自動車を学校校地に駐車することは,学校の目的に適合した学校校地の利用であって行政財産の目的外使用ではなく,前記改正前の財産管理規則20条1号ないし9号の目的外使用の各規定にも該当しないと主張するので,以下,検討する。 ア小学校校地 校の目的に適合した学校校地の利用であって行政財産の目的外使用ではなく,前記改正前の財産管理規則20条1号ないし9号の目的外使用の各規定にも該当しないと主張するので,以下,検討する。 ア小学校校地は,住民の公教育に供するための行政財産であって,公教育それ自体及び公教育を行う上で当然に必要とされることがらのために用いることを本来の目的とする公共用財産であると解されるところ,教職員が- 18 -小学校校地に通勤用自動車を駐車することは,公教育を担当する教職員の通勤の利便に関わるもので,公教育を行うことに関連するものではあるが,公教育を行う上で当然に必要とされるものとまでは認められず,したがって,小学校校地を教職員の通勤用自動車の駐車場として使用することは,行政財産としての小学校校地本来の目的に含まれるものとはいえない。 原告は,平成18年2月15日付け苦情申出書(甲1号証の1)等において,教職員が通勤用自動車を学校校地内に駐車することは,教職員の教育等の業務が効率的に行われるために必要不可欠であり,教職員の業務とも密接な関係があること,従来教職員が学校校地内に自家用車を駐車することは当然のこととされていたこと,江南市の学校校地には比較的余裕があること,学校校地は児童生徒以外の来校者が少ないこと等を指摘しているが,こうした諸事情は,学校校地の本来の目的に関する上記の認定判断を左右すべきものとは解されない。 イ地方自治法は,行政財産は,その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができ(同法238条の4第4項),普通地方公共団体は,この場合の行政財産の使用又は公の施設の利用につき使用料を徴収することができる旨を定めている(同法225条)ところ,被告江南市は,地方自治法の上記の規定に基づいて,「江南市行政財産の目的外使用に ,この場合の行政財産の使用又は公の施設の利用につき使用料を徴収することができる旨を定めている(同法225条)ところ,被告江南市は,地方自治法の上記の規定に基づいて,「江南市行政財産の目的外使用に係る使用料条例」(乙3号証)及び公有財産の取得,管理及び処分について定めた財産管理規則(乙7号証の1・2,9号証の1ないし3)を制定し,許可を受けてする行政財産の使用に係る使用料及びその徴収方法等を定めている。 そして,被告江南市では,市職員が通勤用自動車を市施設に駐車することが行政財産の目的外使用に当たるとして,平成17年4月から,学校以外の施設における上記の駐車については,目的外使用の許可をした上で使用料を徴収することとしている(甲1号証の4)。 - 19 -ウこのような行政財産の目的外使用の取扱いは,小学校の教職員等が通勤用自動車を学校校地に駐車する場合についても,それが行政財産としての学校校地の目的外使用に当たることが上述のとおりである以上,同様に適法に行うことができるものと解されるところ,江南市立小中学校の校地の管理・執行権限を有する市教育委員会(地方教育行政の組織及び運営に関する法律23条)は,その権限に基づいて,江南市立小中学校教職員等の学校施設等における通勤用自動車の駐車に関して本件要綱を定めたものと認められる。 なお,小中学校校地を教職員の通勤用自動車の駐車のために使用することは,行政財産の目的外使用に関する前記財産管理規則20条6号の「通路,材料置場,物干場その他これらに類する施設の敷地の用に供するとき。」又は,少なくとも改正前の上記規則20条9号の「前各号に掲げるもののほか,市の事務,事業又は市の企業の遂行上やむを得ないと認めるとき。」に該当するものと解することができるが,前記のとおり,本件紛争を契機として財産管理 前の上記規則20条9号の「前各号に掲げるもののほか,市の事務,事業又は市の企業の遂行上やむを得ないと認めるとき。」に該当するものと解することができるが,前記のとおり,本件紛争を契機として財産管理規則が改正されたため,平成18年9月15日以降は,同改正後の上記規則20条9号の「職員(県費負担教職員を含む。)並びに市の施設に就業している受託業者及び指定管理者の従業員が自動車で通勤する場合であって,当該自動車を駐車するため,その用に供するとき。」に該当することが明確にされた。 (3) したがって,本件要綱は,市教育委員会が,教職員等の学校施設等における通勤用自動車の駐車が行政財産の目的外使用に当たることから,財産管理規則の規定に基づいて,その目的外使用許可の手続等を定めたものであって,適法かつ有効なものであり,原告主張に係る無効事由はないというべきである。 よって,本件要綱が無効であるとして,本件要綱による手続を経ることなく通勤用自動車を前記小学校校地に駐車することの妨害の禁止を求める原告- 20 -の上記請求は,理由がない。 以上のとおりであって,原告の請求1及び2(1)に係る訴えはいずれも不適法であるからこれらを却下し,原告の請求2(2)に係る請求は理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官中村直文裁判官前田郁勝裁判官尾河吉久

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