- 1 -主文 被告は,原告に対し,4070万0820円及びこれに対する平成17年12月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は被告の負担とする。 この判決の主文1項は仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求の趣旨主文と同旨。 第2事案の概要本件は,被告の貸付について借受人の借入金債務を保証し,その保証債務を履行(代位弁済)した原告が,同保証に係る契約が錯誤により無効であると主張して,不当利得返還請求権に基づき,代位弁済金4070万0820円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成17年12月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,これに対し,被告が,錯誤を争うとともに,原告の重過失及び相殺の抗弁を主張して争った事案である。 前提事実(争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)( )当事者 原告は,中小企業者等が銀行その他の金融機関から貸付等を受けるについてその貸付金等の債務を保証することを主たる業務とし,信用保証協会法に基づいて設立された信用保証協会たる法人である(同法1条,2条参照。 )被告は,銀行取引を業とする法人である。 ( )原告の業務内容(信用保証制度の概要) 信用保証協会法20条1項は,信用保証協会が行うことのできる業務の一つとして「中小企業者等が銀行その他の金融機関から資金の貸付,手形の割- 2 -引又は給付を受けること等により金融機関に対して負担する債務の保証」を定め,同条2項は「中小企業者等」についての定義を規定しており,同法,41条5号は,同法20条1項に規定する業務以外の業務を行ったときの罰則を規定している。 ( )原告と被告間の信用保証に関する約定 ア原告 中小企業者等」についての定義を規定しており,同法,41条5号は,同法20条1項に規定する業務以外の業務を行ったときの罰則を規定している。 ( )原告と被告間の信用保証に関する約定 ア原告と被告(当時の商号は株式会社三和銀行。以下同じ)が昭和38年10月15日付けで交わした信用保証協会法20条に基づく保証に関する約定書(甲1の1)には,次のとおり定められている。 1条保証契約は,原告が被告に対し信用保証書を交付することにより成立するものとする。 2条保証契約の効力は,被告が貸付を行ったときに生じる。 6条原告は,被保証債権について債務者が最終履行期限(期限の利益喪失の日を含む。以下同じ)後90日を経てなお,その債務の全部又は一部を履行しなかったときは,被告の請求により被告に対し保証債務の履行をなすものとする。 条この約定による保証契約上の手続は,別に定めるところによる ものとする。 イまた,原告と被告が同日付けで交わした上記約定書条に基づく手続 に関する事務手続要領(甲1の3)には,次のとおり定められている。 1条原告は,借入申込人からの信用保証委託申込書の申込により原告の保証による貸付(手形割引を含む。以下同じ)を被告に依頼しようとするときは,信用保証付貸付依頼書及び信用調査書を被告に送付するものとする。 被告は,前項の書類を受理したときは,遅滞なく審査し,諾否決定の上速やかに信用保証付貸付承諾書又は同拒絶書を原告に送付するものとする。 - 3 -原告は,前項の信用保証付貸付承諾書を受理したときは,速やかに信用保証書を被告に対し送付するものとする。 2条被告は,被告の貸付について原告の信用保証を受けようとすると,,きは借入申込人から原告に対する信用保証委託申込書を提出させ被告の信用保証依頼書に信用調 証書を被告に対し送付するものとする。 2条被告は,被告の貸付について原告の信用保証を受けようとすると,,きは借入申込人から原告に対する信用保証委託申込書を提出させ被告の信用保証依頼書に信用調査書を添付して原告に送付するものとする。 原告は,前項の書類を受理したときは,遅滞なく審査し,諾否決定の上速やかに信用保証書又は同拒絶書を被告に送付するものとする。 ( )原告と被告との間の保証契約の成立及び同保証の下での被告の貸付 原告と被告(当時は株式会社三和銀行で,草加支店扱い)は,被告が訴外株式会社ウエスト・バロン(以下「訴外会社」という)に対して次のの。 a第1貸付及びの第2貸付(以下「本件貸付」という)を行うにつき,訴b。 (「」外会社の被告に対する借入金債務を保証する旨の契約以下本件保証契約。),,,。 というを締結しその下で被告は訴外会社に対し本件貸付を行った本件貸付は,被告(草加支店)において,訴外会社から信用保証協会保証付融資の申込を受け,訴外会社から提出させた信用保証委託申込書等の書類一式(商業登記簿謄本や決算書類等)を被告のビジネスバンキングセンター(以下「被告BBC」という)に送付し,被告BBCの担当者が審査の上。 で原告への保証委託を行うことが適当であると判断し,信用保証依頼書等の書類一式を送付し,その後,原告から信用保証書を送付されたことにより,実行されたものである。 第1貸付a融資名目中小企業金融安定化特別保証制度要綱に基づく金融環境変化対応資金保証制度による運転資金の融資()保証委託契約日平成12年8月7日甲2の信用保証委託契約書- 4 -保証契約成立日同月25日(甲4の信用保証書)金銭消費貸借契約日同年9月8日(甲7の金銭消費貸借契約証書)貸付額 )保証委託契約日平成12年8月7日甲2の信用保証委託契約書- 4 -保証契約成立日同月25日(甲4の信用保証書)金銭消費貸借契約日同年9月8日(甲7の金銭消費貸借契約証書)貸付額2000万円弁済期限平成17年8月31日利息年2.75パーセントとし,借入日に同日から平成12年9月30日までの利息を支払い,その日以降は1か月ごとの各月末日にその日の翌日から次回利息支払日までの利息を支払う。 損害金年14パーセント弁済方法平成13年3月31日を第1回とし,以降毎月末日限り37万円(53回)の,最終回の平成17年8月31日に39万円の分割弁済期限の利益喪失債務の一部でも履行を遅滞したときは,請求により期限の利益を喪失する。 第2貸付b融資名目埼玉県事業資金制度要綱に基づく埼玉県事業資金制度による運転資金の融資保証委託契約日平成12年12月7日(甲3の信用保証委託契約書)保証契約成立日同月22日(甲5の信用保証書)金銭消費貸借契約日平成13年1月10日(甲8の金銭消費貸借契約証書)貸付額2000万円弁済期限平成19年12月31日利息年1.50パーセントとし,借入日に同日から平成13年1月31日までの利息を支払い,その日以- 5 -降は1か月ごとの各月末日にその日の翌日から次回利息支払日までの利息を支払う。 損害金年14パーセント弁済方法平成14年1月31日を第1回とし,以降毎月末日限り27万7000円(71回)の,最終回の平成19年12月31日に33万3000円の分割弁済期限の利益喪失債務の一部でも履行を遅滞したときは,請求により期限の利益を喪失する。 ( )訴外会社の期限の利益喪失及び原告の代位弁済 訴外会社が本件貸付に係る弁済(第2貸付については利息の支払)を怠っ 失債務の一部でも履行を遅滞したときは,請求により期限の利益を喪失する。 ( )訴外会社の期限の利益喪失及び原告の代位弁済 訴外会社が本件貸付に係る弁済(第2貸付については利息の支払)を怠ったため,被告は,平成13年9月29日到達の書面で,訴外会社に対し,請求により期限の利益を喪失させた(甲9の1・2。 )原告は,被告の請求により,平成14年9月5日,第1貸付につき2045万5067円,第2貸付につき2024万5753円の合計4070万0820円を代位弁済(保証債務を履行)した(甲10,11。 )( )信用保証協会による信用保証の対象となる中小企業者とは,その事業を 一定期間継続している実績のある中小企業者でなければならず(信用保証協会法1条,20条参照,中小企業者としての実体がなければ,信用保証の)対象とならないことは,融資を実行する金融機関にも当然のこととして熟知されていた。 訴外会社は,本件貸付がされた当時,企業としての実体がなかった。本件貸付は,訴外会社の登記簿上の代表者であるAが,運転資金の融資名下に金員を詐取することを企て,他者と共謀の上,訴外会社に企業実体があるかのように装うことにより,融資名下に実行されたものである。 すなわち,訴外会社は,信用保証協会法20条にいう中小企業者等でない- 6 -から,本件貸付に係る原告の保証は,同条に違反するものであった。 なお,Aは,平成16年11月24日,さいたま地方裁判所越谷支部において,本件貸付に係る詐欺罪等により,懲役6年の実刑判決を受けた。 ,( )株式会社三和銀行の権利義務を承継した株式会社ユーエフジェイ銀行は 本件訴訟提起後の平成18年1月1日付けで株式会社三菱東京UFJ銀行に吸収合併され,同銀行(被告)がその権利義務を承継した。 争点 本件の争点は, 利義務を承継した株式会社ユーエフジェイ銀行は 本件訴訟提起後の平成18年1月1日付けで株式会社三菱東京UFJ銀行に吸収合併され,同銀行(被告)がその権利義務を承継した。 争点 本件の争点は,( )本件保証契約が錯誤無効であるか(特に被告主張の重過 失の成否,( )被告主張の不法行為に基づく損害賠償請求債権による相殺の) 抗弁の成否であり,この点に関する当事者の主張は,次のとおりである。 ( )錯誤無効について ア要素の錯誤について(原告の主張)信用保証協会による信用保証において,その対象者が中小企業者等であることは重要な要素であり,原告は,本件貸付及びこれに係る信用保証において,訴外会社が中小企業者としての実体を有していると信じて被告との間で本件保証契約を締結した。ところが,訴外会社は,中小企業者としての実体を有していなかったのであるから,本件保証契約は要素の錯誤で無効である。 (被告の主張)原告の主張は,争う。原告は,訴外会社が中小企業者としての実体を有していないことを知っていたから,錯誤の主張は失当である。 イ原告の重過失について(被告の主張)原告には,次のとおり,民法95条ただし書所定の重大な過失がある。 第1貸付についてa- 7 -被告BBCの担当者のBは,平成12年7月11日,被告の草加支店から訴外会社提出の信用保証委託申込書等の書類一式の送付を受け,書類の内容を商業登記簿謄本や決算書類等により確認審査し,取引歴や事故歴を調査し,保証協会保証付融資を行うことが妥当と判断し,同月14日及び,,同年8月7日原告に対し信用保証依頼書等の書類一式を送付したところ同月15日,原告の業務2課のCから「ウエスト・バロン(訴外会社),は他行でマル保貸出(信用保証協会保証付融資)があるが,延滞の常習先。 7日原告に対し信用保証依頼書等の書類一式を送付したところ同月15日,原告の業務2課のCから「ウエスト・バロン(訴外会社),は他行でマル保貸出(信用保証協会保証付融資)があるが,延滞の常習先。 。 ,である過去に事故報告の提出が他行よりある現在も1回延滞中であり本件を否決する」との連絡を受けた。Bは,同月16日,訴外会社のA。 に対し,融資をすることはできない旨を電話連絡したところ,Aが原告の担当者と直接交渉したいと申し出たことから,Cの了解を得た上,Cの連絡先をAに教えた。すると,同日,Cから被告BBCに対し,訴外会社に対する信用保証について継続審査する旨の連絡があり,同月25日,原告から信用保証書が送付されたため,被告は,同年9月8日,第1貸付を実行した。 このように,原告は,第1貸付につき,訴外会社に企業実体がないことを知らなかったとしても,原告は,いったん否決した決定を覆して信用保証する旨の決定をする以上,その決定過程において,より精密な審査及び調査をすべき義務が要求されていたのに,これを怠ってAらとの交渉により安易に保証決定をしたものであるから,信用保証書の送付により成立した本件保証契約において,原告は,訴外会社に企業実体がないことを知らなかったことに重大な過失があるというべきである。 第2貸付についてb被告BBCの担当者のDは,川口商工会議所を経由して申込を受けた被告の草加支店から訴外会社提出の信用保証委託申込書等の書類一式の送付を受け,審査を行った。Dは,第1貸付に係る融資返済の据置期間中であ- 8 -ったことから,厳しい審査になると予想したが,川口商工会議所の斡旋案件であり,上記書類の丁寧な記載内容から,きちんとした体質の会社であると考え,原告の保証が得られれば融資をしてもよいと判断し,平成12,,年1 しい審査になると予想したが,川口商工会議所の斡旋案件であり,上記書類の丁寧な記載内容から,きちんとした体質の会社であると考え,原告の保証が得られれば融資をしてもよいと判断し,平成12,,年12月7日原告に対し信用保証依頼書等の書類一式を送付したところ原告の本店保証課長のEがAらと交渉した後の同月22日,原告から信用保証書が送付されたため,被告は,平成13年1月10日,第2貸付を実行した。 このように,原告の担当者Eは,信用保証の決定前にAと交渉したものであるところ,Eは,その交渉過程において,訴外会社の決算書類や確定申告書に誤りがあることを発見しており,また,第2貸付は第1貸付の返済据置期間中であったから,原告としては,通常よりも厳しい精緻な調査をすべき義務を負っていた。しかるに,Eは,Aに対して上記の確定申告書等の誤りを指摘しただけで,Aから適正な確定申告書を徴求することなく,精緻な調査をしないまま保証決定をしたものであるから,原告は,第2貸付に係る本件保証契約においても,訴外会社に企業実体がないことを知らなかったとしても,そのことに重大な過失があるというべきである。 (原告の主張)原告に重大な過失がある旨の被告の主張は,争う。 第1貸付についてa原告のCが保証を否決したことも,その後の平成12年8月15日に被告BBCのBに対して被告主張の連絡をしたこともない。訴外会社が株式会社武蔵野銀行(三郷支店扱い。以下「武蔵野銀行」という)からの融。 資の期限の利益を喪失したのは平成13年5月21日であり,原告は,同月7日に武蔵野銀行から訴外会社に係る事故報告書の提出を受け(甲17,同月10日に同銀行から同月7日付け期限の利益喪失に関する協議)書を受領し(甲18,その協議書の「平成13年1月までの返済につい)- 9 -ては度 外会社に係る事故報告書の提出を受け(甲17,同月10日に同銀行から同月7日付け期限の利益喪失に関する協議)書を受領し(甲18,その協議書の「平成13年1月までの返済につい)- 9 -ては度々遅滞しながらも回収を図ってきた」との記載を見て,訴外会社の同銀行に対する返済の状況を知ったものであるから,被告主張の平成12年8月の段階で原告の担当者がBに対し「事故報告の提出がある「延滞」の常習先である」などという連絡をすることができるはずがない。 また,原告の担当者が平成12年8月16日以降にAと電話で連絡したことはあるが,それは,訴外会社が平成11年9月に行うべき税務申告を平成12年7月になって遅れて申告したことにつき,その理由を記載した書面の提出を求めたに過ぎない。 第2貸付についてb原告が被告BBC経由で信用保証依頼書等の書類一式の送付を受けた後に所定の審査をした際,訴外会社の税務申告の間違いがあることが判明したため,原告の担当者のEとFがAと面談し,修正申告を行うようにとの話をしたことはある。その後,原告は,訴外会社から修正申告を行う旨の説明書の提出を受け,信用保証することを決定したに過ぎず,被告主張のような事実はない。 ウ民法96条3項の適用又は類推適用による原告の無効主張の制限(被告の主張)原告の錯誤は第三者である訴外会社の代表者Aの詐欺によるものであり,被告は訴外会社に企業実体がないことを知らなかったから,原告は,民法96条3項の適用又は類推適用により,本件保証契約の無効を主張することができない。 (原告の主張)被告の主張は,争う。 ( )不法行為に基づく損害賠償請求債権による相殺の抗弁について (被告の主張)被告は,原告が上記( )イのとおり,過失により調査義務を怠って信用保 - 10 -証する旨を決 張は,争う。 ( )不法行為に基づく損害賠償請求債権による相殺の抗弁について (被告の主張)被告は,原告が上記( )イのとおり,過失により調査義務を怠って信用保 - 10 -証する旨を決定し,被告との間で本件保証契約を締結した結果,企業実体のない訴外会社に対して第1貸付及び第2貸付を実行したのであるから,原告に対し,不法行為に基づき,原告の代位弁済額と同額の4070万0820円の損害賠償請求権を有する。原告は,平成18年7月11日の第3回弁論準備手続期日において,被告に対し,原告の被告に対する本件不当利得返還請求債権と被告の原告に対する上記損害賠償請求債権とを対当額で相殺する旨の意思表示をした。 (原告の主張)原告に不法行為が成立する旨の被告の主張は,争う。原告に被告主張の過失はなかった。 第3当裁判所の判断 認定事実,(,,。 前記前提事実 証拠 甲19ないし38乙1ないし1517ないし22枝番号を含む。証人B,同C,同D,同E)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ,この認定事実に反する証拠は採用しない。 ( )第1貸付に係る中小企業金融安定化特別保証制度要綱に基づく金融環境 変化対応資金保証制度は,中小企業者に対する貸し渋り対策の一環として,国により創設された制度で,平成10年10月1日から平成13年3月31日までの間に施行された。 第2貸付に係る埼玉県事業資金制度要綱に基づく埼玉県事業資金制度は,,,埼玉県内の中小企業者の支援を目的として埼玉県により創設された制度で昭和29年から施行されている。 ( )原告は,中小企業者等が銀行その他の金融機関から貸付等を受けるにつ いてその貸付金等の債務を保証することを主たる業務とし,信用保証協会法に基づいて設立された信用保証協会たる法人であり, 。 ( )原告は,中小企業者等が銀行その他の金融機関から貸付等を受けるにつ いてその貸付金等の債務を保証することを主たる業務とし,信用保証協会法に基づいて設立された信用保証協会たる法人であり,信用保証協会法20条1項は,信用保証協会が行うことのできる業務の一つとして「中小企業者等- 11 -が銀行その他の金融機関から資金の貸付,手形の割引又は給付を受けること等により金融機関に対して負担する債務の保証」を定め,同条2項は「中,小企業者等」についての定義を規定しており,同法41条5号は,同法20条1項に規定する業務以外の業務を行ったときの罰則を規定している。 信用保証協会による信用保証の対象となる中小企業者とは,その事業を一定期間継続している実績のある中小企業者でなければならず,中小企業者としての実体がなければ,信用保証の対象とならないことは,融資を実行する金融機関にも当然のこととして熟知されていた。 原告は,上記( )の国の融資制度の実施が開始された後の平成11年1月 26日付け及び同年9月16日付け書面(甲30,31)で,被告を含む金,,融機関に対し営業実態のない中小企業者に融資を実施することのないよう同制度を適正に運用されたい旨通知した。 ( )訴外会社は,本件貸付がされた当時,企業としての実体がなかったが, 訴外会社の登記簿上の代表者であるAは,金融業者への返済資金や遊興費を入手するため,訴外会社が企業実体を有するかのように装い,上記両制度による訴外会社の運転資金の融資名下に金員を騙取しようと企てた。 本件貸付は,Aが,他者と共謀の上,訴外会社に企業実体があるかのよう,。 ,に装うことにより運転資金の融資名下に実行されたものであるすなわち訴外会社は,信用保証協会法20条にいう中小企業者等でないから,本件貸付に係 と共謀の上,訴外会社に企業実体があるかのよう,。 ,に装うことにより運転資金の融資名下に実行されたものであるすなわち訴外会社は,信用保証協会法20条にいう中小企業者等でないから,本件貸付に係る原告の保証は,同条に違反するものであった。 ,,,( )第1貸付について被告BBCの担当者のBは平成12年7月11日 被告の草加支店から訴外会社提出の信用保証委託申込書等の書類一式の送付を受け,書類の内容を商業登記簿謄本や決算書類等により確認審査し,帝国データバンクの企業情報等により取引歴や事故歴を調査したが,融資に必要な書類が整っており,申込内容を確認した結果その内容に不合理・不自然な点がなかったことなどから,訴外会社が実体を有する中小企業者であり,保- 12 -証協会保証付融資を行うことが適当であると判断し,同月14日及び同年8月7日,原告に対し信用保証依頼書(甲32)等の書類一式を送付した。 Bは,同月15日,原告の本店営業部保証2課の課長補佐のCから「ウ,()()エスト・バロン訴外会社は他行でマル保貸出信用保証協会保証付融資があるが,延滞の常習先である。過去に事故報告の提出が他行よりある。現在も1回延滞中であり,本件を否決する」との連絡を受けた。Bは,同月。 16日,訴外会社のAに対し,融資をすることはできない旨を電話連絡したところ,Aが原告の担当者と直接交渉したいと申し出たことから,Cの了解を得た上,Cの連絡先をAに教えた後の同日,Cから被告BBCに対し,訴外会社に対する信用保証について継続審査する旨の連絡があった。なお,Bは,Cからの上記連絡内容の真偽を調査することはなかった。 訴外会社は,平成11年10月1日,武蔵野銀行(三郷支店)から,平成12年1月から平成16年9月まで毎月25日限り元金及び利息を た。なお,Bは,Cからの上記連絡内容の真偽を調査することはなかった。 訴外会社は,平成11年10月1日,武蔵野銀行(三郷支店)から,平成12年1月から平成16年9月まで毎月25日限り元金及び利息を分割して,,支払うとの約定で1000万円の信用保証協会保証付融資を受けていたが平成12年3月25日支払期日の支払が同月27日に,同年6月25日支払期日の支払が同年7月19日にされ,2回分が遅滞して支払われていた。そして,同年8月15日にCが否決の連絡をした時点で,上記2回の延滞は解消していたが,同年7月25日支払期日の支払が遅滞していた。しかし,同年7月25日支払期日の支払が上記連絡直後の同日である同年8月15日にされ,同月25日支払期日の支払も遅滞なくされて,延滞が解消された。 そこで,原告は,同月25日,訴外会社が企業実体を有すると信じ,被告に対して信用保証書を送付したところ,被告は,それ以上の独自調査をすることなく,同月31日,第1貸付を実行した。 ( )第2貸付について,被告BBCの担当者のDは,川口商工会議所を経由 して申込を受けた被告の草加支店から訴外会社提出の信用保証委託申込書等の書類一式の送付を受け,審査を行った。Dは,第1貸付に係る融資返済の- 13 -据置期間中であったことから,厳しい審査になると予想したが,川口商工会議所の斡旋案件で,訴外会社から強い要請があり,また,上記書類の丁寧な記載内容からきちんとした体質の会社であると考え,帝国データバンクの企業情報等をも参照しながら申込内容を確認した結果その内容に不合理・不自,,然な点がなかったことなどから訴外会社が実体を有する中小企業者であり保証協会保証付融資を行うことが適当であると判断し,平成12年12月7日,原告に対し信用保証依頼書(甲37の1)等の書類一式を ,然な点がなかったことなどから訴外会社が実体を有する中小企業者であり保証協会保証付融資を行うことが適当であると判断し,平成12年12月7日,原告に対し信用保証依頼書(甲37の1)等の書類一式を送付した。 原告の本店営業部保証2課の課長であるEは,書類審査に併せてAと面談するなどし,訴外会社の決算報告書に100万円程度の誤りがあるのを発見したが,そのことについては後日更正申告(税金還付の手続)する旨の確約書を提出させることで決着させることとした。原告は,同月22日,訴外会社が企業実体を有すると信じ,被告に対して信用保証書を送付したところ,被告は,それ以上の独自調査をすることなく,平成13年1月10日,第2貸付を実行した。 錯誤無効について( )要素の錯誤について 上記認定事実によれば,信用保証協会である原告は,信用保証協会法により,その業務として中小企業者が銀行である被告から借り受けた運転資金の返還債務の保証をすることができるが,その中小企業者は企業としての実体を有することを当然の前提としており,中小企業者としての実体がなければ信用保証の対象とならないことは,融資を実行する金融機関である被告にも当然のこととして熟知されていたということができるから,中小企業者が企業者としての実体を有することは,原告が保証をするための重要な要素であ。 ,()るということができるそして被告から本件貸付第1貸付及び第2貸付を受けた訴外会社は,本件貸付及び本件保証契約がされた当時,企業としての実体がなかったもので,しかも,原告は,訴外会社が企業実体を有すると- 14 -信じていたということができる(原告が悪意であった旨の被告の主張は採用することができない)から,本件保証契約は,その重要な部分に要素の錯。 誤があったということができる。 を有すると- 14 -信じていたということができる(原告が悪意であった旨の被告の主張は採用することができない)から,本件保証契約は,その重要な部分に要素の錯。 誤があったということができる。 ( )原告の重過失について 信用保証協会保証付融資である本件貸付及び本件保証契約においては,貸付主体である被告及び保証主体である原告は,ともに自らの立場で審査を遂げ,最終的には,自らの判断と責任において融資をし,あるいは信用保証を行うべきものと解される。 本件は,訴外会社が被告に対して融資を申し込み,これを受けた被告が一件資料を送付して原告に保証を依頼し,原告の信用保証を受けて貸付が実行されたもので,金融機関経由の保証形態に属するものであり,訴外会社から融資の申込みを受けた被告は,訴外会社から徴した資料等に基づいて必要な審査を遂げ,自らの判断と責任において,訴外会社が企業実体を有すると判,,,,断し原告に保証を依頼したのであるからこのような場合原告としては審査を遂げるに当たり,訴外会社の企業実体の有無に関して被告が知り得なかった事情を独自に知ったなどという特段の事情のない限り,訴外会社が企業実体を有しないという被告において看破することができなかった事項について,これを看破することができなかったからといって,その場合に過失責,。 ,任を問われるとするのはいかにも不合理というべきである本件において上記の特段の事情を認めることはできない。 被告は,第1貸付につき,原告はいったん否決した決定を覆して信用保証する旨の決定をする以上,その決定過程において,より精密な審査及び調査をすべき義務が要求されていたのに,これを怠ってAらとの交渉により安易に保証決定をしたものであるから,原告には訴外会社に企業実体がないことを知らなかったことに重 過程において,より精密な審査及び調査をすべき義務が要求されていたのに,これを怠ってAらとの交渉により安易に保証決定をしたものであるから,原告には訴外会社に企業実体がないことを知らなかったことに重大な過失がある旨主張する。しかしながら,原告がいったん否決したのは,訴外会社が武蔵野銀行からの先行融資の分割返済を- 15 -延滞した事実があったからであるところ,このことは,訴外会社の信用力に関する消極要素とは成り得ても,企業実体を有しないことには直ちに連動しないばかりか(なお,被告は,Cから上記連絡を受けた後も,何ら審査,顧慮することなく,第1貸付を行ったものである,信用保証書が被告に送。)付された時点では,その延滞も解消されていたのであるから,被告の上記主張は,採用することができない。 また,被告は,第2貸付につき,原告のEは信用保証の決定前にAとの交渉過程において訴外会社の決算書類や確定申告書に誤りがあることを発見しており,第2貸付は第1貸付の返済据置期間中であったから,原告としては通常よりも厳しい精緻な調査をすべき義務を負っていたのに,EはAに対して上記の確定申告書等の誤りを指摘しただけでAから適正な確定申告書を徴求することなく,精緻な調査をしないまま保証決定をしたものであるから,原告には訴外会社に企業実体がないことを知らなかったことに重大な過失がある旨主張する。しかしながら,決算報告書に100万円程度の誤りがあっ,,た事実は訴外会社が企業実体を有しないことに直ちに連動するものでなくまた,返済据置期間中であることは,貸付主体である被告が最も良く知り得る立場にあり,そのような被告が訴外会社に企業実体ありとして原告に信用保証を依頼したのであるから,訴外会社に企業実体がないことを看破しなかった原告に過失があるとする被告の上記主 被告が最も良く知り得る立場にあり,そのような被告が訴外会社に企業実体ありとして原告に信用保証を依頼したのであるから,訴外会社に企業実体がないことを看破しなかった原告に過失があるとする被告の上記主張は,採用することはできない。 ,,,本件において他に原告に過失があることを認めるに足りる証拠はなく,,,本件保証契約において原告に過失かあったということはできずましてや原告に重大な過失があったということはできない。 ( )民法96条3項の適用又は類推適用による原告の無効主張の制限につい て被告は,原告の錯誤は第三者である訴外会社の代表者Aの詐欺によるものであり,被告は訴外会社に企業実体がないことを知らなかったから,原告は- 16 -民法96条3項の適用又は類推適用により,本件保証契約の無効を主張することができない旨主張する。しかしながら,上記主張は,独自の見解によるものであり,採用することはできない。 不法行為に基づく損害賠償請求債権による相殺の抗弁について被告は,原告は本件保証において過失により調査義務を怠ったから,不法行為が成立する旨主張する。しかしながら,原告に被告主張の過失があったといえないことは,上記2( )のとおりであるから,被告の上記主張を認めること はできない。被告の相殺の抗弁は,採用することができない。 結論 よって,原告の請求は理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。 さいたま地方裁判所第1民事部裁判官佐藤公美
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