平成27(ワ)14871 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年4月20日 東京地方裁判所
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判決文本文21,073 文字)

平成28年4月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(ワ)第14871号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成28年2月10日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,2億円及びこれに対する平成27年6月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,発明の名称を「画像補正データ生成システム,画像データ生成方法及び画像補正回路」とする特許第4681033号(出願日:平成20年9月4日〔優先日:同年7月31日〕,登録日:平成23年2月10日)の特許権(以下「本件特許権1」といい,同特許権に係る特許を「本件特許1」といい,その願書に添付した明細書を「本件明細書1」という。)並びに発明の名称を「画質調整装置及び画像補正データ生成プログラム」とする特許第5362753号(出願日:平成23年2月2日〔原出願日:平成20年9月4日,優先日:同年7月31日〕,登録日:平成25年9月13日)の特許権(以下「本件特許権2」といい,同特許権に係る特許を「本件特許2」といい,その願書に添付した明細書を「本件明細書2」という。また,本件特許権1と本件特許権2を併せて「本件各特許権」といい,本件特許1と本件特許2を併せて「本件各特許」といい,本件明細書1と本件明細書2を併せて「本件各明細書」という。)を有する原告が,被告は平成23年6月頃から別紙被告物件目録記載の物件(以下「本件対象物件」とい う。)の製造,販売,輸出及び販売の申出をしており,本件対象物件は①本件特許 書」という。)を有する原告が,被告は平成23年6月頃から別紙被告物件目録記載の物件(以下「本件対象物件」とい う。)の製造,販売,輸出及び販売の申出をしており,本件対象物件は①本件特許1の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明1-1」という。)及び②同請求項2に係る発明(以下「本件発明1-2」という。)並びに③本件特許2の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明2-1」という。),④同請求項2に係る発明(以下「本件発明2-2」という。),⑤同請求項3に係る発明(以下「本件発明2-3」という。)及び⑥同請求項5に係る発明(以下「本件発明2-5」という。また,これら6つの発明を併せて「本件各発明」という。)の技術的範囲に属する旨主張して,被告に対し,第一次的に,平成23年6月1日から平成27年5月31日までの間に本件特許権1を侵害した不法行為に基づく損害賠償金2億1000万円の一部である2億円及びこれに対する不法行為の後である同年6月12日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払,第二次的に,平成25年9月13日から平成27年5月31日までの間に本件特許権2を侵害した不法行為に基づく損害賠償金9004万1096円の一部である9000万円及びこれに対する不法行為の後である同年6月12日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実,当裁判所に顕著な事実並びに各項末尾の括弧内に掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,書証番号は,特記しない限り枝番の記載を省略する。)(1) 当事者ア原告は,コンピュータ及びその周辺機器・関連機器(半導体,製造機器等 証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,書証番号は,特記しない限り枝番の記載を省略する。)(1) 当事者ア原告は,コンピュータ及びその周辺機器・関連機器(半導体,製造機器等)並びに電気電子機器,その関連機器及びそのソフトウェアの設計,製造,販売及び輸出入業務等を目的とする株式会社である。 イ被告は,映像表示装置及びその周辺機器の設計,製造,販売等を目的とする特例有限会社(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律3条2項)である。 (2) 本件各特許権及び本件各発明原告は,本件特許権1を,平成23年2月10日の設定登録以来保有し,本件特許権2を,平成25年9月13日の設定登録以来保有している(甲1,3)。 本件特許1の特許請求の範囲は,別紙特許第4681033号公報(甲2)の【特許請求の範囲】記載のとおりであり,本件特許2の特許請求の範囲は,別紙特許第5362753号公報(甲4)の【特許請求の範囲】記載のとおりである。本件各発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである。 ア本件発明1-1(本件特許1の特許請求の範囲の請求項1に係る発明)を構成要件に分説すると,次のとおりである。 A1 画像を出力するための信号を表示パネルに供給する信号発生手段と,前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段と,前記信号発生手段及び前記撮像手段に接続される制御手段と,を備えた画像補正データ生成システムであって,B 前記制御手段が,前記信号発生手段に対して,表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段と,C 前記撮像手段から,出力画像データを取得する画像取得手段と,D1 前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことに 給指示を出力する指示手段と,C 前記撮像手段から,出力画像データを取得する画像取得手段と,D1 前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって,同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出するバンドパスフィルタ手段と,E 前記バンドパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段とF1 を備えたことを特徴とする画像補正データ生成システム。 イ本件発明1-2(本件特許1の特許請求の範囲の請求項2に係る発明)を構成要件に分説すると,次のとおりである。なお,構成要件F2は,更に前記アの構成要件A1ないしF1(引用に係る請求項1に係る発明の構成要件)のとおり分説 される。 G1 前記指示手段は,階調毎に表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力し,H1 前記画像取得手段は,階調毎に出力画像データを取得し,I1 前記補正データ生成手段は,階調毎に画像補正テーブルを出力するF2 ことを特徴とする請求項1に記載の画像補正データ生成システム。 ウ本件発明2-1(本件特許2の特許請求の範囲の請求項1に係る発明)を構成要件に分説すると,次のとおりである。 A2 表示パネルに画像を出力するための信号を表示パネルに供給する信号発生手段と,前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段とに接続される制御手段を備えた画質調整装置であって,B 前記制御手段が,前記信号発生手段に対して,表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段と,C 前記撮像手段から,出力画像データを取得する画像取得手段と,D2 前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうこ の供給指示を出力する指示手段と,C 前記撮像手段から,出力画像データを取得する画像取得手段と,D2 前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって,同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出する手段と,E 前記バンドパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段とを備え,J1 前記バンドパスデータに対応した画像補正テーブルは,輝度むらの補正を行うためのテーブルであるF3 ことを特徴とする画質調整装置。 エ本件発明2-2(本件特許2の特許請求の範囲の請求項2に係る発明)を構成要件に分説すると,次のとおりである。 A2 表示パネルに画像を出力するための信号を表示パネルに供給する信号発生手段と,前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する 撮像手段とに接続される制御手段を備えた画質調整装置であって,B 前記制御手段が,前記信号発生手段に対して,表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段と,C 前記撮像手段から,出力画像データを取得する画像取得手段と,D2 前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって,同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出する手段と,E 前記バンドパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段とを備え,J2 前記バンドパスデータに対応した画像補正テーブルは,色むらの補正を行うためのテーブルであるF3 ことを特徴とする画質調整装置。 オ本件発明2-3(本件特許2の特許請求の範囲の請求項3に係る発明)を構成要件に分説すると,次のとおりである。 A むらの補正を行うためのテーブルであるF3 ことを特徴とする画質調整装置。 オ本件発明2-3(本件特許2の特許請求の範囲の請求項3に係る発明)を構成要件に分説すると,次のとおりである。 A2 表示パネルに画像を出力するための信号を表示パネルに供給する信号発生手段と,前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段とに接続される制御手段を備えた画質調整装置であって,B 前記制御手段が,前記信号発生手段に対して,表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段と,C 前記撮像手段から,出力画像データを取得する画像取得手段と,D2 前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって,同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出する手段と,E 前記バンドパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段とを備え,J3 前記バンドパスデータに対応した画像補正テーブルは,輝度むら及 び色むらの補正を行うためのテーブルであるF3 ことを特徴とする画質調整装置。 カ本件発明2-5(本件特許2の特許請求の範囲の請求項5に係る発明)を構成要件に分説すると,次のとおりである。なお,構成要件F4は,更に前記ウの構成要件A2ないしF3(J1を含む。引用に係る請求項1に係る発明の構成要件),前記エの構成要件A2ないしF3(J2を含む。引用に係る請求項2に係る発明の構成要件),前記オの構成要件A2ないしF3(J3を含む。引用に係る請求項3に係る発明の構成要件)又は前記ウないしオのいずれかに記載の構成要件A2ないしF3(うちJ1,J2,J3についてはいずれか。)及び「前記画像補正テーブルには,調整を行った基準階調を 用に係る請求項3に係る発明の構成要件)又は前記ウないしオのいずれかに記載の構成要件A2ないしF3(うちJ1,J2,J3についてはいずれか。)及び「前記画像補正テーブルには,調整を行った基準階調を特定するための識別子が関連付けられていること」との構成要件(引用に係る請求項4に係る発明の構成要件)のとおり分説される。 G2 前記指示手段は,基準階調毎に表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力し,H2 前記画像取得手段は,基準階調毎に出力画像データを取得し,I2 前記補正データ生成手段は,基準階調毎に画像補正テーブルを出力するF4 ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画質調整装置。 (3) 被告のむら補正システム等ア被告は,むら補正システムないしむら消し装置を含む画像処理装置の製造,販売,輸出又は販売の申出をしている(弁論の全趣旨)。 イ被告は,ウェブサイト等において,「CV-CH2000」との型番で特定されるむら補正システム(以下「本件型番システム」という。)について,顧客から注文があれば製造可能である旨表明している。本件型番システムは,FPD(フラットパネルディスプレイ)の色むら/輝度むら調整を用途とするもので,顧客の FPD製品の生産ライン用のシステムとして設計されるものである(甲5,弁論の全趣旨)。 ウ被告が作成した顧客(潜在的顧客)用プレゼンテーション資料(甲6。以下「本件資料」という。)には,液晶パネル上に生じるむらの補正方法や補正例が記載されている(以下,本件資料に記載されているむら補正方法や補正例が前提とするむら補正システムを「本件システム」という。)(甲6,弁論の全趣旨)。 (4) 本件訴訟の経緯等ア原告は,平成27年6月1日,被告を相手取って本件訴訟 れているむら補正方法や補正例が前提とするむら補正システムを「本件システム」という。)(甲6,弁論の全趣旨)。 (4) 本件訴訟の経緯等ア原告は,平成27年6月1日,被告を相手取って本件訴訟を当庁に提起したが,この段階では,訴訟における審理の対象となる物件を本件型番システムと特定し,「被告が,平成23年6月頃から,本件各発明の技術的範囲に属する本件型番システムの製造,販売及び輸出をしていること」が本件各特許権を侵害するとして,これによる損害賠償を請求していた(顕著な事実)。 イところが,原告は,平成28年2月に至って,本件訴訟における審理の対象となる物件につき,型番による特定(本件型番システム)から構成による特定(本件対象物件)に特定方法を変更し,さらに被告の行為として「販売の申出」を追加する旨の訴えの変更を申し立て,同月10日の第4回弁論準備手続期日において,これを記載した準備書面(4)を陳述した。本件対象物件の構成は,本件発明1-1の構成要件(A1,B,C,D1,E及びF1。ただし,文言上は,構成要件D1よりも構成要件D2の方が更に同一に近い。)をほぼ引き写したものである(顕著な事実)。 3 主要な争点原告は,本件対象物件を,上記のとおり本件発明1-1の構成要件をそのまま充足する構成を有するものとして特定し,その余の発明も含めて本件各発明の技術的範囲に属するものとして主張しているところ,本訴請求に係る被告の損害賠償責任の有無に関しては,「被告が平成23年6月1日から平成27年5月31日までの間に本件対象物件を販売又は輸出したか。」が主要な争点となる。 そして,原告は,本件対象物件に当たるものとして本件型番システム及び本件システムを取り上げて主張している(本件型番システムと本件システムはいずれも本件対象 したか。」が主要な争点となる。 そして,原告は,本件対象物件に当たるものとして本件型番システム及び本件システムを取り上げて主張している(本件型番システムと本件システムはいずれも本件対象物件の構成を満たす共通の構成を有するものとして主張している)ところ,当事者間では,上記争点をめぐって,具体的には,被告が本件型番システムないし本件システムを製造,販売又は輸出したことがあるか,本件型番システムないし本件システムが構成要件D1及びD2を充足するか,が最も争われている。 4 当事者の主張【原告の主張】(1) 侵害論について被告は,平成23年6月1日から平成27年5月31日までの間,本件対象物件を販売又は輸出し,これにより本件特許権1を侵害した。また,被告は,少なくとも平成25年9月13日から平成27年5月31日までの間に本件対象物件を販売又は輸出し,これにより本件特許権2を侵害した。 ア被告は,平成23年6月1日以降,少なくとも次の(ア)及び(イ)のとおり,本件型番システムないし本件システムの製造,販売,輸出及び販売の申出をした。 (ア) ●(省略)●から原告に提供された情報や,当時の原告の顧問の一人から原告に提供された情報などに照らすと,被告は,平成25年頃,台湾の大手パネルメーカーである友達光電股份有限公司(以下「AUO」という。)に対し,AUO製のパネル向けに本件型番システムないし本件システムを少なくとも十数台販売し,これを製造して台湾に輸出していたことが推認される。 (イ) 香港・台湾の大手EMSメーカー(電子機器の受託生産メーカー)である嘉捷科技企業股份有限公司(以下「TPV」という。)の暗室において●(省略)●が撮影した写真などに照らすと,被告は,平成26年頃,TPVに対し,TPV製のパネル向けに本件 の受託生産メーカー)である嘉捷科技企業股份有限公司(以下「TPV」という。)の暗室において●(省略)●が撮影した写真などに照らすと,被告は,平成26年頃,TPVに対し,TPV製のパネル向けに本件型番システムないし本件システムを製造して台湾に輸出し,貸し渡していたことが推認される。 イ本件型番システムないし本件システムは,次の(ア)ないし(キ)のとおり本件各 発明の構成要件を充足し,本件各発明の技術的範囲に属する。 (ア) 構成要件A1,A2,F1,F2,F3及びF4の充足性本件型番システムは,表示パネル(FPD)に画像を表示させ,この表示画像を高感度CCDカメラで撮影し,その情報を分析して色むら/輝度むらを改善させる補正データを作成するためのものであるから,「画像を出力するための信号を表示パネルに供給する信号発生手段と,表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段と,信号発生手段及び撮像手段に接続される制御手段とを備えた画像補正データ生成システム」であるといえる。そして,本件型番システムの一部である画質調整装置は,上記信号発生手段及び撮像手段に接続される「制御手段」を備えたものといえる。したがって,本件型番システムないし本件システムは構成要件A1,F1及びF2を充足し,その一部である画質調整装置は構成要件A2,F3及びF4を充足する。 (イ) 構成要件B及びCの充足性本件システムは,最大輝度の70%の階調となるように表示パネルの全面に共通する信号値を供給し,これをカメラで撮影して画像を取り込むから,「前記制御手段が,前記信号発生手段に対して,表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段と,前記撮像手段から出力画像データを取得する画像取得手段とを備えている」といえる。したがって,本 制御手段が,前記信号発生手段に対して,表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段と,前記撮像手段から出力画像データを取得する画像取得手段とを備えている」といえる。したがって,本件型番システムないし本件システム及びその一部である画質調整装置は,構成要件B及びCを充足する。 (ウ) 構成要件D1及びD2の充足性a 本件資料のスライドにおいて,「Gray 70%」,「Gray 30%」及び「Gray10%」のそれぞれについて「Original」(補正前)の写真と「Aftercorrection」(補正後)の写真とを比べると,補正後の画像の中心部のむらは補正前よりも低減しているが,画像の周辺部には補正後も暗さが残っており,周辺部のむら(表示パネルのバックライトの周辺部の減光により生じているむら)は十分補正されていないものとみられる。このことに照らすと,前記制御手段は,出力画像データの低周波成 分について補正を行っていない,すなわち補正データの生成前に出力画像データから低周波成分を除く処理を行う構成を有していると考えられる。 b 本件資料の記載によれば,本件システムにおいては,補正データの容量を圧縮するためにピクセルが所定数ごとにブロック化(撮像素子のピクセルごとに輝度情報を得るのではなく,複数のピクセルごとに輝度情報をサンプリングする方法をいう。)されて補正されている。このことに照らすと,前記制御手段は,出力画像データの高周波成分について補正を行っていない,すなわち補正データの生成前に出力画像データから高周波成分を除く処理を行う構成を有していると考えられる。 (a) この点敷衍すると,例えば,8ピクセルが1mmに相当する場合,(α)1ピクセル(0.125mm)ごとに輝度情報を得るには,最短の周期が2ピ 成分を除く処理を行う構成を有していると考えられる。 (a) この点敷衍すると,例えば,8ピクセルが1mmに相当する場合,(α)1ピクセル(0.125mm)ごとに輝度情報を得るには,最短の周期が2ピクセル(0.25mm),最大の周波数が1/0.25=4となるのに対し,(β)8×8ピクセルごとにブロック化すると,横軸・縦軸いずれの方向についても,8ピクセル(1mm)ごとに輝度情報をサンプリングすることになって,最短の周期が16ピクセル(2mm),最大の周波数が1/2=0.5となり,上記(α)の場合の最大周波数の8分の1となる。このように,8×8ピクセルごとのブロック化をすることによって,高周波成分を除去することができるから,ブロック化は,構成要件D1及びD2に規定する「出力画像データから高周波成分…を除」くことと技術的に同義になるというべきである。 (b) なお,本件明細書1の段落【0031】【0032】及び本件明細書2の段落【0030】【0031】の記載は,バンドパスフィルタリングにおける高周波成分の除去方法として,ブロック化を除く趣旨ではない。プロセス管理手段211がブロック化をして高周波成分の除去を行った上で,バンドパスフィルタ手段212が更なる高周波成分の除去を行っているものとみられる。 c 以上によると,本件システムにおいて,前記制御手段は,「出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって,同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパス データを算出する手段」を備えていると考えられる。したがって,本件型番システムないし本件システムは構成要件D1を充足し,その一部である画質調整装置は構成要件D2を充足する。 (エ) 構成要件Eの充足性本件資料 」を備えていると考えられる。したがって,本件型番システムないし本件システムは構成要件D1を充足し,その一部である画質調整装置は構成要件D2を充足する。 (エ) 構成要件Eの充足性本件資料の記載に照らすと,本件システムにおいて,前記制御手段は,「バンドパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段」を備えているといえる。したがって,本件型番システムないし本件システム及びその一部である画質調整装置は,構成要件Eを充足する。 (オ) 構成要件G1,G2,H1及びH2の充足性本件システムは,①最大輝度の70%の階調となるように表示パネルの全面に共通する信号値を供給し,これをカメラで撮影して画像を取り込むほか,②最大輝度の30%が階調となるように表示パネルの全面に共通する信号値を供給し,これをカメラで撮影して画像を取り込むとともに,③最大輝度の10%が階調となるように表示パネルの全面に共通する信号値を供給し,これをカメラで撮影して画像を取り込むから,「前記指示手段は,最大輝度の70%,30%,10%の階調毎に表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力し,前記画像取得手段は,最大輝度の70%,30%,10%の階調毎に出力画像データを取得する」といえる。 したがって,本件型番システムないし本件システムは構成要件G1及びH1を充足し,その一部である画質調整装置は構成要件G2及びH2を充足する。 (カ) 構成要件I1及びI2の充足性本件資料の記載に照らすと,本件システムにおいて,前記補正データ生成手段は,「最大輝度の70%,30%,10%の階調毎に前記画像補正テーブルを出力する」といえる。したがって,本件型番システムないし本件システムは構成要件I1を充足し,その一部である画質調整装置は構成要件I2を充足する。 70%,30%,10%の階調毎に前記画像補正テーブルを出力する」といえる。したがって,本件型番システムないし本件システムは構成要件I1を充足し,その一部である画質調整装置は構成要件I2を充足する。 (キ) 構成要件J1,J2及びJ3の充足性色むら/輝度むら補正システムである本件型番システムにおいて,「前記画像補 正テーブルが色むら及び輝度むらの補正を行うためのテーブルである」ことはいうまでもない。したがって,本件型番システムないし本件システムは,構成要件J1,J2及びJ3を充足する。 ウ前記イ(ア)ないし(エ)に照らすと,本件型番システムないし本件システムは,本件対象物件に当たる。 したがって,被告は,平成23年6月1日以降,本件各発明の技術的範囲に属する本件対象物件の製造,販売,輸出及び販売の申出をしたものである。 (2) 損害論についてア原告は,被告が平成23年6月1日から平成27年5月31日までの間に本件対象物件を販売又は輸出して本件特許権1を侵害したことにより,損害を被った。 被告には,平成23年から現在まで毎年約1億5000万円の売上げがあり,この売上げは,専ら本件対象物件の販売又は輸出によるものと考えられる。本件対象物件の利益率は35%を下らず,被告の利益は毎年5250万円を下らないから,被告は,上記特許権侵害行為により,平成23年に3078万0822円,平成24年ないし平成26年に各5250万円,平成27年に2171万9178円,合計2億1000万円の利益を受けた。したがって,原告が被った上記損害の額は,特許法102条2項により,2億1000万円と推定される。 イまた,仮に特許権1の侵害が認められない場合であっても,原告は,被告が平成25年9月13日から平成27年5月31日までの間に本 額は,特許法102条2項により,2億1000万円と推定される。 イまた,仮に特許権1の侵害が認められない場合であっても,原告は,被告が平成25年9月13日から平成27年5月31日までの間に本件対象物件を販売又は輸出して本件特許権2を侵害したことにより,損害を被った。 被告は,上記特許権侵害行為により,平成25年に1582万1918円,平成26年に5250万円,平成27年に2171万9178円,合計9004万1096円の利益を受けた。したがって,原告が被った上記損害の額は,特許法102条2項により,9004万1096円と推定される。 ウよって,原告は,被告に対し,第一次的に,平成23年6月1日から平成2 7年5月31日までの間の不法行為に基づく損害賠償金2億1000万円(上記ア)の一部である2億円及びこれに対する不法行為の後である同年6月12日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払,第二次的に,平成25年9月13日から平成27年5月31日までの間の不法行為に基づく損害賠償金9004万1096円(上記イ)の一部である9000万円及びこれに対する不法行為の後である同年6月12日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 【被告の主張】(1) 侵害論について被告は,平成23年6月1日から平成27年5月31日までの間,本件対象物件を販売又は輸出しておらず,本件各特許権を侵害したことはない。 ア被告は,平成23年6月1日以降,本件型番システムないし本件システムの製造,販売又は輸出をしたことはない。 本件型番システムないし本件システムは,事前に顧客からの詳細な相談を経て具体的な仕様が決定されてから初めて製造されるものであるところ,本件型番システムないし本件シ 販売又は輸出をしたことはない。 本件型番システムないし本件システムは,事前に顧客からの詳細な相談を経て具体的な仕様が決定されてから初めて製造されるものであるところ,本件型番システムないし本件システムについて,被告が顧客から注文を受けたことはこれまでに一度もない(本件資料は,むら補正に関する被告の技術等を潜在的顧客へ個別に紹介したプレゼンテーション資料にすぎず,そのようなプレゼンテーションの後に,被告が,当該潜在的顧客又はその他の顧客等から本件型番システムないし本件システムについて注文を受けたこともない。)。 被告が,AUO又はTPVに対し本件型番システムないし本件システムを納入したこともない。 イ本件型番システムないし本件システムは,本件各発明の技術的範囲に属しない。 (ア) 構成要件D1及びD2の非充足性a 本件各明細書の記載に照らすと,本件各発明における「バンドパスフィルタ リング」とは,撮像手段から取得した出力画像データにおける空間周波数から,なだらかな変化成分(低周波成分)と細かい変化成分(高周波成分)とを分離することを意味するものと解され,本件各発明は,低周波成分及び高周波成分について上記出力画像データから敢えて除去し(「バンドパスフィルタリング」を行い),これにより中間的な周波数のみを抽出したバンドパスフィルタリングを生成し,当該バンドパスデータを反転させて,画像補正テーブルを生成するものである。 これに対し,本件型番システムにおいて用いられているむら補正の手法は,目標となる輝度及び色の数値をあらかじめ定めておき,CCDカメラにより撮影して得られた出力画像データそのものと当該目標値との差分を計測し,当該差分を補うような補正データを生成することにより,輝度むら及び色むらを補正する,というものであ 定めておき,CCDカメラにより撮影して得られた出力画像データそのものと当該目標値との差分を計測し,当該差分を補うような補正データを生成することにより,輝度むら及び色むらを補正する,というものである。すなわち,本件型番システムにおけるむら補正の手法では,「出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうこと」や,「同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出する」といった処理は一切行われていない。 b 本件資料のスライドにおける「Gray 10%」の輝度変化を見ると,少なくとも画像両端部分の輝度が大きく補正されていることがはっきりと示されている。仮に,原告の主張する「バンドパスフィルタリング」により低周波成分が除去されているのであれば,このような補正がされることはないはずである。 c 本件明細書1の段落【0031】及び本件明細書2の段落【0030】の記載に照らすと,本件各明細書においては,一定数のピクセルによるブロック化の過程と,バンドパスフィルタ手段における高周波成分除去の過程とは,明確に区別されて記載されている。したがって,ブロック化により出力画像データの高周波成分を除去することが,構成要件D1及びD2に規定する「出力画像データから高周波成分…を除」くことと同義であるとの原告の主張は,明細書の記載から離れた裏付けのない解釈に基づくものにすぎず,失当である。 d 以上によると,本件型番システムないし本件システムは構成要件D1を充足 せず,本件型番システムないし本件システムに係る画質調整装置が構成要件D2を充足するということもない。 (イ) その他の構成要件について前記(ア)のとおり,本件型番システムないし本件システムが構成要件D1及びD2を満たさない ステムに係る画質調整装置が構成要件D2を充足するということもない。 (イ) その他の構成要件について前記(ア)のとおり,本件型番システムないし本件システムが構成要件D1及びD2を満たさない結果,これを前提とする構成要件E,J1,J2及びJ3並びにF2及びF4をも充足しない。 ウ前記イに照らすと,本件型番システムないし本件システムは,本件対象物件に当たらない。 (2) 損害論について原告の損害の発生及びその額に関する主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件型番システムないし本件システムの構成要件D1及びD2充足性について(1) 本件発明1-1及び本件発明1-2については,画像補正データ生成システムが備えた制御手段が,「前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって,同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出するバンドパスフィルタ手段」(構成要件D1)を備えていることが構成要件となっている。 また,本件発明2-1,本件発明2-2,本件発明2-3及び本件発明2-4については,画質調整装置が備えた制御手段が,「前記出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって,同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出する手段」(構成要件D2)を備えていることが構成要件となっている。 これらの構成要件については,本件各特許に係る特許請求の範囲の記載及び本件各明細書の記載に照らすと,次の各点を指摘することができる。 ア構成要件D1及びD2においては,「中間的な周波数成分のみを分離するバ ンドパスフィルタリングを行なうことによって,同出力画像データから高周 照らすと,次の各点を指摘することができる。 ア構成要件D1及びD2においては,「中間的な周波数成分のみを分離するバ ンドパスフィルタリングを行なうことによって,同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出する」手段ないしバンドパスフィルタ手段と規定されており(下線は引用の際に付した。),この特許請求の範囲の文言,とりわけ上記下線部の文言に照らすと,前記制御手段が備えているべき上記手段は,「中間的な周波数成分」(空間周波数すなわち画像における濃度値ないし輝度の変化の空間に対する振動回数〔甲21〕が,高くも低くもない,それらの中間の数値である部分)を分離してそれにより「高周波成分」(空間周波数が高い部分すなわち細かい間隔で輝度が変化している部分)と「低周波成分」(空間周波数が低い部分すなわち輝度の変化が緩やかな部分)が共に除去される手段でなければならないものと解される。 イまた,本件各明細書(甲2,4)の発明の詳細な説明の記載によると,①液晶パネル等のディスプレイについて,画面全体のなだらかな光量変化は人間の眼には検知され難いから,輝度の変化が緩やかな部分(低周波成分とされる部分)のむらを補正しなくても,見かけ上は画質にほとんど影響がない一方,仮に低周波成分の除去(ローカット)を行わないで補正した場合,液晶パネルにおける周辺減光の影響を受けて,中心部付近の輝度を低下させてしまうことになること(本件明細書1の段落【0040】及び【0041】並びに本件明細書2の段落【0039】及び【0040】),②非常に細かいむら(非常に細かい間隔の輝度の変化によるむら,すなわち空間周波数の高い成分)も人間の眼に検知され難い上,そのような表示むらを補正するには,正確に測定画像と液晶のピクセル位置の相関を取る必要が 細かいむら(非常に細かい間隔の輝度の変化によるむら,すなわち空間周波数の高い成分)も人間の眼に検知され難い上,そのような表示むらを補正するには,正確に測定画像と液晶のピクセル位置の相関を取る必要があり,僅かでもずれるとかえって表示むらを作りこむことになるから,高周波成分の除去(ハイカット)すなわち上記のような部分のむらを補正対象から除く処理を行うことにより,簡易かつ効率的に画像補正テーブルを生成することができること(本件明細書1の段落【0042】及び本件明細書2の段落【0041】),③このように,表示むらを画一的に除去したのでは不都合が生じることがあり,また,個々のディスプレイ毎に補正を行なう場合にはできるだけ効率的に補正できること が望ましいという課題があったところ,本件各発明は,これらの課題を解決するための手段として,構成要件D1及びD2の規定する前記構成を採ることにより,「変化の緩やかな表示むら」(低周波成分とされる部分)及び「細かい表示むら」(高周波成分とされる部分)が補正されず,したがって,周辺減光の影響を排除し,簡易かつ効率的に表示むらの低減を図ることができるという作用効果を生じるものであること(本件明細書1の段落【0005】ないし【0007】及び【0012】並びに本件明細書2の段落【0006】ないし【0008】及び【0012】)が認められる。 上記②及び③に照らすと,本件各発明は,表示パネルの画像中,空間周波数が一定の周波数以上である部分といった何らかの定義による「高周波成分」があるという前提の下に,その部分(画像領域)をむら補正の対象から除外するものであって,構成要件D1及びD2を満たすといえるためには,「バンドパスフィルタリング」がされなければ補正の対象となった高周波成分が,「バンドパスフィルタリング」 域)をむら補正の対象から除外するものであって,構成要件D1及びD2を満たすといえるためには,「バンドパスフィルタリング」がされなければ補正の対象となった高周波成分が,「バンドパスフィルタリング」がされることにより補正の対象とならなくなることが必要であると解される。 ウなお,本件明細書1(甲2)の段落【0031】【0032】及び本件明細書2(甲4)の段落【0030】【0031】には,本件各発明の実施例の補正データ生成処理を順にステップを追って説明する中で,「画質調整装置20の制御部21は,出力画像の取得処理を実行する(ステップS2)。具体的には,制御部21のプロセス管理手段211は,液晶パネル10を撮影した出力画像データを撮影カメラ30から取り込む。そして,プロセス管理手段211は,この出力画像データを,8×8ピクセルから構成されたブロック毎の輝度分布に変換し,バンドパスフィルタ手段212に供給する。」,「次に,画質調整装置20の制御部21は,バンドパスフィルタリング処理を実行する(ステップS3)。具体的には,制御部21のバンドパスフィルタ手段212は,取得した出力画像データに対してバンドパスフィルタリングを行なうことにより,バンドパスデータを算出する。このバンドパスデータは,液晶パネル10の面内の輝度分布に応じて,高周波成分及び 低周波成分を除いた分布から構成される。そして,バンドパスフィルタ手段212は,生成したバンドパスデータをプロセス管理手段211に供給する。」と記載されており(下線は引用の際に付した。),「8×8ピクセルから構成されたブロック毎の輝度分布に変換」することと,「バンドパスフィルタリング」を行なうことにより「高周波成分及び低周波成分を除いた分布から構成される」「バンドパスデータ」を算出することとは,別 ら構成されたブロック毎の輝度分布に変換」することと,「バンドパスフィルタリング」を行なうことにより「高周波成分及び低周波成分を除いた分布から構成される」「バンドパスデータ」を算出することとは,別のステップとして区別して記載されている。 そして,本件各明細書には,上記の「変換」が,「バンドパスフィルタリングを行なうことにより」高周波成分を除いた分布から構成されるバンドパスデータを算出することに当たる旨を示唆するような記載は全くない。 (2) 以上を前提に,本件型番システムないし本件システムが上記構成要件D1を充足し,本件型番システムないし本件システムに係る画質調整装置が上記構成要件D2を充足するか否かについて検討する。 原告は,上記構成要件のうち高周波成分の除去(ハイカット)に係る点について,「ピクセルを所定数ごとにブロック化して補正すること」を根拠として,本件型番システムないし本件システムが備えた制御手段が,補正データの生成前に出力画像データから高周波成分を除く処理を行う構成を有しており,したがって「出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって,同出力画像データから高周波成分…を除いたバンドパスデータを算出する」手段を有している旨主張し,上記構成要件が充足される旨の主張をする(前記4【原告の主張】(1)イ(ウ)b,c)。 しかしながら,以下の理由により,原告の上記主張は採用することができない。 アまず,原告の上記主張が根拠とするところは,本件資料に記載されている「ブロック化」によって,最大周波数が低くなる(8×8ピクセルごとのブロック化であれば,最大周波数が8分の1となる。)ということである(前記4【原告の主張】(1)イ(ウ)b(a))。しかし,仮にこれを「バンドパスフィルタリ 最大周波数が低くなる(8×8ピクセルごとのブロック化であれば,最大周波数が8分の1となる。)ということである(前記4【原告の主張】(1)イ(ウ)b(a))。しかし,仮にこれを「バンドパスフィルタリング」による高周波成分の除去と捉えたとしても,これは,周波数を低くシフトさせる操作でし かないから,これにより低周波成分を除去することができないことは明らかである。そうすると,前記(1)アのとおり,構成要件D1及びD2において制御手段が備えていることが要求される手段は,「中間的な周波数成分」を分離してそれにより「高周波成分」と「低周波成分」が共に除去される手段でなければならないものと解されるところ,上記「ブロック化」は,「中間的な周波数成分」を分離するものではなく,単に「高周波成分」を高周波成分でなくするのみであって,これと共に「低周波成分」を除去するものではないから,上記構成要件中,「高周波成分…を除いた」という部分を仮に満たしたとしても,「中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって」という部分並びに「…及び低周波成分を除いた」という部分を満たさないというほかはない。 イまた,ピクセルが所定数ごとにブロック化された場合,高周波成分がなくなったように見えても,前記操作をした結果,高周波成分が中間的周波数成分等に変わった上でその画像領域も含めて補正処理されるだけであって,もともと高周波成分であった部分(細かい間隔で輝度が変化していると見られた画像領域)が補正処理の対象から除かれるわけではない。しかし,前記(1)アのとおり,構成要件D1及びD2は,高周波成分を除く方法として「中間的な周波数成分のみを分離する」方法によらなければならないとしているところ,前記の周波数を低くシフトさせる操作は,これとは高 1)アのとおり,構成要件D1及びD2は,高周波成分を除く方法として「中間的な周波数成分のみを分離する」方法によらなければならないとしているところ,前記の周波数を低くシフトさせる操作は,これとは高周波成分の除去方法において異なることになるし,また,この点を措くとしても,前記(1)イのとおり,上記構成要件を満たすといえるためには,高周波成分であった部分(「バンドパスフィルタリング」がされなければ補正の対象となった部分)が,「バンドパスフィルタリング」がされることにより補正の対象とならなくなることが必要であると解されるところ,「ブロック化」によっては,高周波成分であった当該部分が補正の対象から除かれないのであるから,上記要件を満たさないというべきである。 ウさらに,仮に,「ブロック化」(本件明細書1の段落【0031】及び本件明細書2の段落【0030】に記載されている「8×8ピクセルから構成されたブ ロック毎の輝度分布に変換」)が「高周波成分の除去」に当たるとしてしまうと,前記(1)ウに摘示した本件各明細書の記載と整合しなくなる。 この点に関し,原告は,本件各明細書の上記記載は,バンドパスフィルタリングにおける高周波成分の除去方法として,ブロック化を除く趣旨ではなく,プロセス管理手段がブロック化をして高周波成分の除去を行った上で,バンドパスフィルタ手段が「更なる高周波成分の除去」を行っているものとみられる旨主張するが(前記4【原告の主張】(1)イ(ウ)b(b)),「高周波成分の除去」の後にまた「高周波成分の除去」を行うという説明はいかにも不自然であり,本件各明細書を精査しても,それを示唆するような記載は全くないから,原告の説明は,構成要件D1及びD2の「バンドパスフィルタリング」における高周波成分の除去について本件各明細書で想 も不自然であり,本件各明細書を精査しても,それを示唆するような記載は全くないから,原告の説明は,構成要件D1及びD2の「バンドパスフィルタリング」における高周波成分の除去について本件各明細書で想定されているところと齟齬を来しているといわざるを得ない。 (3) 以上によれば,原告の主張する「ブロック化」に関する点をもって,本件型番システムないし本件システムないしこれに係る画質調整装置が構成要件D1及びD2を充足するということは到底できない。そして,上記「ブロック化」に関する点の他に,本件型番システムないし本件システムないしこれに係る画質調整装置が構成要件D1及びD2を充足するとする根拠は何ら見当たらない。 そうすると,本件型番システムないし本件システムは,構成要件D1及びD2を充足しないというほかはない(なお,以上は,構成要件D1及びD2のうち,高周波成分の除去に係る点に主に着目したものであるが,低周波成分の除去についても,原告の主張するとおり補正後に画像の周辺部に暗さが残っているとしても,果たしてそれが「中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって…低周波成分を除いた」ことによってそうなったのか,別の処理によってそうなったのかは,明らかでない。もっとも,この点について判断するまでもなく,上記構成要件の非充足が明らかとなっているのである。)。 したがって,本件型番システムないし本件システムは,本件各発明の技術的範囲に属しない。 2 被告による本件対象物件の販売等(本件各特許権侵害)の有無について(1) 上記1のとおり,本件型番システムないし本件システムは,本件各発明の技術的範囲に属しないところ,他に,被告が製造,販売,輸出又は販売の申出をしたむら補正システムが構成要件D1及びD2を充足 (1) 上記1のとおり,本件型番システムないし本件システムは,本件各発明の技術的範囲に属しないところ,他に,被告が製造,販売,輸出又は販売の申出をしたむら補正システムが構成要件D1及びD2を充足する構成を採っていると認める根拠はない。 (2) 本件対象物件は,別紙被告物件目録記載のとおり,「…制御手段と,を備えた画像補正データ生成システムであって,制御手段が,…出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって,同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出する手段と…を備える画像補正データ生成システム」と定義され,本件各発明の構成要件D1及びD2を充足する構成を有するものとして主張されているところ,上記(1)に照らすと,被告が本件対象物件を販売又は輸出したとは認められない。 (3) なお,原告は,平成28年2月1日付けで,被告が本件対象物件を販売等したことを証明するため,文書の表示を「台湾のAUOが被告に呈示した要求仕様書又はこれに類する文書」,文書の趣旨を「被告システムに対してAUOが求める仕様等」,文書の所持者を「●(省略)●」として,文書提出命令の申立てをした。 しかしながら,●(省略)●が所持しているという文書が,被告がAUOに対して販売等したむら補正システムの仕様等を記載したものなのかどうかも不明であり,関連性が十分に明らかにされているとはいえない。その上,いずれにせよ,既に説示したところに照らせば,被告がAUOに対して販売等したと原告が主張している本件型番システムないし本件システムは,原告の主張に係る具体的態様(なお,被告は,これを否認するに当たり,別異の具体的態様を主張している。)を前提としても,構成要件D1及びD2を到底充足しないといえるの 型番システムないし本件システムは,原告の主張に係る具体的態様(なお,被告は,これを否認するに当たり,別異の具体的態様を主張している。)を前提としても,構成要件D1及びD2を到底充足しないといえるのであるから,本件においては,そもそも,被告が本件対象物件を販売又は輸出したという合理的な疑いすら認められないといわざるを得ない。したがって,原告の上記申立ては,証拠調べの 必要性を欠くため,当裁判所は口頭弁論終結の際にこれを却下した。 (4) 以上の次第で,被告が本件対象物件の販売又は輸出により本件各特許権を侵害したとは認められず,被告が原告に対して本訴請求に係る損害賠償責任を負うということはできない(なお,本件対象物件の製造又は販売の申出のみによって,原告の主張に係る損害が発生するとはいえないが,上記説示したところによれば,被告が本件対象物件の製造又は販売の申出をしたと認めることもできない。)。 第4 結論よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 鈴木千帆 裁判官 笹本哲 帆 裁判官 笹本哲朗 (別紙)当事者目録 原告株式会社イクス同訴訟代理人弁護士松田純一同岩月泰頼同西村公芳同訴訟代理人弁理士飯村重樹 被告有限会社クレモビジョン同訴訟代理人弁護士塩月秀平同岡田 誠同津城尚子同訴訟復代理人弁護士稲葉大輔同補佐人弁理士塩谷英明 (別紙)被告物件目録 下記の構成で特定されるむら補正システム 記画像を出力するための信号を表示パネルに供給する信号発生手段と,表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段と,信号発生手段及び撮像手段に接続される制御手段と,を備えた画像補正データ生成システムであって,制御手段が,信号発生手段に対して,表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段と,撮像手段から,出力画像データを取得する画像取得手段と,出力画像データに対し中間的な周波数成分のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって,同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出する手段と,バンドパスデータに対応した画像補正テーブルを のみを分離するバンドパスフィルタリングを行なうことによって,同出力画像データから高周波成分及び低周波成分を除いたバンドパスデータを算出する手段と,バンドパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段とを備える画像補正データ生成システム。

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