【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人重松忠雄の上告趣意について。 原審弁護人は、原審において、被告人を以つて心神耗弱者なりと主張し精神鑑定 を申請し
主文本件上告を棄却する。 理由弁護人重松忠雄の上告趣意について。 原審弁護人は、原審において、被告人を以つて心神耗弱者なりと主張し精神鑑定を申請したが、原審はその申請を却下し、右主張に対しては被告人の原審公廷における言動に徴し心神耗弱の状況にある者とは認められないと判断したことは所論の通りである。 しかし事実裁判所は法令に別段の規定のある場合の外自由に証拠調の限度を定め得るのである。もとより裁判所が右の限度を定めるについては良識に従い公正妥当な合理的判断を為すべきで、恣意によることはできないのであるが、裁判所が被告人の公廷における陳述並に陳述の態度、訴訟記録その他弁論の全趣旨から被告人に精神の異状がないと確信した以上、たとえ被告人に梅毒の症状があり、又被告人の血族の一人に狂人があつたからと云つて、被告人の精神鑑定をしなければならないと云うことはない。所論検査成績通知書と題する書面によるも、被告人の梅毒症状は或る時は陽性と現われ、或る時は弱陽性と現われる程度で特に著しく進行した症状であつたとは認められない。又原審証人Aの証言によれば、被告人祖母のBは六十七才頃の老年に達して後に発狂したことが認められるけれども、記録を精査しても他に被告人の血族に狂人のあつたことは認められないから、これにより直ちに被告人が精神病の遺伝をもつておるものであると断定することはできない。又被告人の本件犯罪当時の行動及びその動機並に被告人の心理の経過については警察、検事局、予審、第一審及び原審における被告人の供述を通じて終始一貫して筋道の通つた陳述をして居るから、被告人が犯罪当時又は判決当時精神に異状があつたことを疑うべき点はない。そして原審公判調書によれば原審は公廷で被告人に対し同人の- 1 -梅毒の症状につ 始一貫して筋道の通つた陳述をして居るから、被告人が犯罪当時又は判決当時精神に異状があつたことを疑うべき点はない。そして原審公判調書によれば原審は公廷で被告人に対し同人の- 1 -梅毒の症状について質問し、又原審証人A及びCに対し被告人の祖母Bの狂気の病状について質問し、更らに被告人に対し同人が精神病の自覚があるか否かを質問して、被告人の精神状態につき十分の注意を払つた形跡が認められるのである。而して原審は右の様な十分な注意を払つてもなお諸般の事情を綜合して被告人に犯罪当時も判決の時も精神に異状がある疑がなく、その精神鑑定の必要なしとの結論に達したものと認められるのであつて、従つてまた原審弁護人の心神耗弱の主張に対しても同一の理由によつてこれを否定する結論に達した趣旨であると認められるから、原審には何等所論の如き審理不尽の違法なく、又原審の判断を以つて公正を逸したものであると論断することはできない。論旨は理由なきものである。 弁護人檜山秀男の上告趣意について。 しかし死刑が憲法第三十六条に所謂残虐な刑罰に該当しないことは既に当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第一一九号昭和二三年三月十二日大法廷言渡)としておるところであるから、死刑をもつて残虐な刑罰であると解し、刑法死刑に関する規定は無効であると主張する本論旨は理由なきものである。 以上説明の理由により、本件上告は理由がないから刑訴施行法第二条、旧刑事訴訟法第四四六条により主文の通り判決する。 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。 検察官松岡佐一関与昭和二四年五月七日最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官塚崎直義裁判官霜山精一裁判官 最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官塚崎直義裁判官霜山精一裁判官栗山茂裁判官小谷勝重- 2 -裁判官藤田八郎- 3 -
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