平成14(ワ)27719 損害賠償

裁判年月日・裁判所
平成18年4月27日 東京地方裁判所
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判決文本文29,274 文字)

平成18年4月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成14年(ワ)第27719号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成18年2月16日判決原告A原告B原告C原告ら訴訟代理人弁護士井上晋一被告学校法人順天堂同代表者理事長D同訴訟代理人弁護士加藤済仁桑原博道蒔田覚上記加藤済仁訴訟復代理人弁護士大平雅之主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,原告Aに対し金6548万8329円,原告B及び原告Cに対し各 金3083万2080円及びこれらの金員に対する平成14年1月17日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,被告の開設する病院において造影剤を使用した頸部CT検査を受けた患者(当時68歳の女性)がアナフィラキシーショックを起こして死亡したことに関し,その夫及び子である原告らが,当該死亡は,①当該検査の実施を決定した耳鼻科の担当医師において,造影剤の副作用等についての説明を怠るなどしたこと,②当該検査を実施した放射線科の担当医師において,早期に気管内挿管を行うなどの救命救急処置を怠るなどしたこと,③被告において,アナフィラキシーショックに対する短期集中的な処置が可能となるような救命救急態勢ないしシステムの構築を怠ったことによるものであると主張して,被告に対し,不法行為(使用者責任)又は債務不履行に基づいて,逸失利益等の損害金及びこれに対する死亡日からの民法所定の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 前提事実(証拠原因を掲記しない事実は当事者間に争いがない)。 (1)当事者ア原告AはE(昭和8年8月21日生,平成14年1 の民法所定の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 前提事実(証拠原因を掲記しない事実は当事者間に争いがない)。 (1)当事者ア原告AはE(昭和8年8月21日生,平成14年1月17日死亡)の。 夫であり,原告B及び原告Cは原告AとEとの間の子である。 イ被告は,東京都文京区内に「順天堂大学医学部附属順天堂医院」という(「」。)。 名称の病院以下被告病院というを開設している学校法人である,(「」。)平成14年1月当時いずれも医師であるF以下F医師というは被告病院の耳鼻科に,G(以下「G医師」という)は被告病院の放射。 線科にそれぞれ勤務していた。 (2)Eの診療経過等アEは,被告との間で診療契約を締結した上,平成14年1月17日午前9時前後ころ(正確な時刻については争いがある,被告病院において,。) (「」。)造影剤であるイオパミロン300シリンジ以下本件造影剤というの静注を受けた上で頸部CT検査(以下「本件造影CT検査」という)。 を受けたところ,検査中に急変して,撮像終了直後には既に意識がなく,その後,被告病院の医師らによる救命救急処置を受けたが,午後0時47分に死亡が確認された(CT写真に自動的に刻字された時刻は,スキャノグラム(位置決め写真)撮影が午前8時56分02秒,撮像開始が午前8時59分50秒である。撮像時間は12.5秒である。 。)Eの死体検案書(甲A第1号証)には,直接死因として「アナフィラキ」,「()」シー様ショックその原因として造影剤イオパミロン300注射との記載があるほか,解剖の主要所見として「高度肺水腫。喉頭気管支粘膜小円型細胞浸潤浮腫。気管内多量・胸腔内約280mlの浸出液。血中トリプターゼ高値。諸臓器出血 造影剤イオパミロン300注射との記載があるほか,解剖の主要所見として「高度肺水腫。喉頭気管支粘膜小円型細胞浸潤浮腫。気管内多量・胸腔内約280mlの浸出液。血中トリプターゼ高値。諸臓器出血状。手指チアノーゼ。上部消化管出血。心内膜下出血。腎尿細管壊死」との記載がある。 。 イなお,本件造影CT検査の前日までのEの診療経過の概要は,別紙診療経過一覧表の「年月日「診療科「主訴・所見・症状」欄記載のとお」,」,りである(ただし,下線を付した部分を除く「H」は,医療法人社団三。 奉会が開設する東京都足立区内の病院である。 。)(3)本件で前提となる医学的知見は,別紙医学的知見のとおりである。 本件造影CT検査実施当日の経過についての当事者の主張(1)被告の主張は,別紙事故経過一覧表の「年月日(日時「経過「検)」,」,査・処置」欄記載のとおりであり,これに対する原告らの反論は,同一覧表の「原告の反論」欄記載のとおりである。 (2)異変を確認した時刻についての主張ア原告らCT写真に自動的に刻字された時刻は正しく,呼びかけに反応がないなどの異変が確認された撮像終了直後の時刻は午前9時ころである。カルテ (乙A2の5頁,10頁)にも,上記異変が確認されたのは午前9時であることが記載されている。 イ被告CT内蔵の時計は8分遅れていたのであり,上記異変が確認された撮像終了直後の時刻は午前9時8分ころである。その時刻についてG医師らがカルテに午前9時と記載したのは,その時点では,上記時計が遅れていることに気づかず,CT写真に刻字された時刻が正しいものとして,これに基づいて記載したからである。 原告らの主張(1)F医師の義務違反及びこれと結果との間の因果関係ア検査適応の不存在(ア)そもそもEには癌の 写真に刻字された時刻が正しいものとして,これに基づいて記載したからである。 原告らの主張(1)F医師の義務違反及びこれと結果との間の因果関係ア検査適応の不存在(ア)そもそもEには癌の疑いを示す検査結果が無かったのであるから,敢えて危険を侵してまでイオパミロンによる造影CT検査を行う必要は無かった。 また,Eは,慢性アレルギー疾患があり,かつ,膠原病の一種とされる慢性関節リウマチがある老人(高齢者)であったから「造影検査は,避けるべき」患者であった。 したがって,F医師は,Eに本件造影CT検査を受けさせるべきではなかった。 (イ)イオパミロンによる本件造影CT検査を行っていなければ,Eがアナフィラキシーショックを起こして死亡することはなかった。 イ問診,説明義務違反(ア)イオパミロンは,患者にアナフィラキシーショック等の強いショック症状を引き起こして重大な被害を与え得る薬物である。 F医師は,自らEの治療に当たっており,Eがアレルギー体質であることを知っていたのであるから,ショック症状を引き起こすことを考慮 して,Eに対し,適切な問診をして,検査の必要性とイオパミロンの副作用について十分に理解できるまで説明をすべきであった。しかるに,F医師は,かかる問診や説明を怠った。 ,,(イ)Eは造影CT検査の必要性と副作用について説明を受けていれば本件造影CT検査を受けることはなく,アナフィラキシーショックを起こして死亡することもなかった。 ウ慎重投与指示義務違反(ア)仮にEに造影CT検査を実施することが許されるとしても,Eは,慢性アレルギー疾患及び膠原病の一種とされる慢性関節リウマチがある老人(高齢者)であり,イオパミロンの使用によって重篤な副作用が発,「」。 現する確率が高い患者であって慎重に投与すべき Eは,慢性アレルギー疾患及び膠原病の一種とされる慢性関節リウマチがある老人(高齢者)であり,イオパミロンの使用によって重篤な副作用が発,「」。 現する確率が高い患者であって慎重に投与すべき患者に該当したよって,F医師は,少なくとも,イオパミロン投与による造影CT検査を決定して指示するのであれば,検査部局(放射線科)に対し「慎,重投与」の指示をするべきであった。 具体的には,イオパミロンの副作用に心をいたして,そのような危険への対処の適格性を有する医師の立会いを求めるべきであり,かつ,ショック症状の初兆の捕捉に万全を期する態勢をとり,その初兆が見られたら直ちに適切な救命救急処置をとれる十分な態勢を準備するよう指示するべきであった。 しかるに,F医師は,そのような指示を怠った。 (イ)F医師が,上記(ア)の指示をしていれば,Eを救命することができた。 これに対し,本件では,若く経験の浅いG医師1人に検査が任されたため,ショック症状の初兆の捕捉が遅れ,その後にショック症状が捕捉されたにもかかわらず,直ちに救命救急処置がとられず,致命的な遅れを招き,Eを死に至らせた。 エ不適切な水分摂取制限(ア)イオパミロンを投与する予定の患者に対して水分摂取の制限をすると,投与時の副作用の発生率を高める。 よって,F医師は,Eに対し,検査前の水分摂取の制限を指示すべきではなかった。 (イ)Eは,検査前の絶食の指示に従って水分摂取を制限したために,本件検査時にアナフィラキシーショックを起こして死亡した。すなわち,かかる水分摂取の制限がなければアナフィラキシーショックが発生することはなく,死亡することもなかった。 (2)G医師の義務違反及びこれと結果との間の因果関係ア問診義務違反(ア)被告病院では,テストアンプルによる副作用の事 アナフィラキシーショックが発生することはなく,死亡することもなかった。 (2)G医師の義務違反及びこれと結果との間の因果関係ア問診義務違反(ア)被告病院では,テストアンプルによる副作用の事前テストを廃止していたのであるから,G医師は,そのテストに代わるべき事前の安全確認のため,Eに対し,十分な問診を行なうべきであった。しかるに,G医師はこれを怠った。 (イ)G医師は,十分な問診を怠ったため,Eが慢性アレルギー疾患や膠原病を病んでいた患者で「慎重投与を要する患者である」ことを全く認識せず,その結果,アナフィラキシーショック等の副作用を予見することなくイオパミロンの投与を行った。そのため,Eはアナフィラキシーショックを起こして死亡した。 イ造影剤の投与方法の誤り(ア)G医師は「慎重投与」を要する患者であるEに対し,イオパミロ,ン300を50ml以上投与するのであるから,点滴静注の方法によるべきであったしかるにG医師はインジェクターによる急速注入を行っ。 ,,た。 (イ)インジェクターによる急速注入を行ったため,十分な観察による副 作用の早期発見の可能性を失わせてしまった。インジェクターによる急速注入ではなく,点滴静注等によっていれば,より早期に副作用を発見して,Eを救命することができた。 ウ検査中止義務違反及び救命救急処置義務違反(ア)aアナフィラキシーショックを起こした患者は,意識を無くす前に皮膚が赤くなって,その後に皮膚が紫色になる。 よって,G医師は,本件造影CT検査の開始時から,Eの状態を観察して過敏症状の発現に注意すべきであった。 そして,造影剤の静注直後にEが「気分が悪い」と訴えた時点で撮像の実施を取り止めて直ちに,仮にそうでないとしても,撮像を終えた段階で直ちに,アナフィラキシーショックに対する 現に注意すべきであった。 そして,造影剤の静注直後にEが「気分が悪い」と訴えた時点で撮像の実施を取り止めて直ちに,仮にそうでないとしても,撮像を終えた段階で直ちに,アナフィラキシーショックに対する治療を開始すべきであった。 すなわち,直ちに気管内挿管を実施して,気道を確保し,高濃度酸素吸入等の呼吸管理を行い,ステロイド剤,気管支拡張剤,強心剤,。 ,解毒剤及び昇圧剤等を投与するなどの処置を施すべきであったまた気管内挿管等では低酸素に対応できない場合には,経皮的補助循環を実施すべきであった。 b上記aの処置を施していれば,ショック症状を抑え,肺水腫の発症自体を防ぐことができた。したがってまた,低酸素血症に陥ることもなく,多臓器不全による死亡を回避することができた(Eを救命することができた。 )(イ)a仮に肺水腫の発症を防ぐことができなかったとしても,午前9時から午前9時18分までの間に,肺の機能検査,更には肺のレントゲン検査を実施して,肺水腫の発症を認識すべきであった。そして,それに対し直ちに気管内挿管を実施して,高濃度酸素吸入を開始し,血管拡張剤,利尿剤,ステロイド剤及び昇圧剤の投与をして,ショック 症状だけでなく,肺水腫の治療をすべきであった。また,気管内挿管等では低酸素に対応できない場合には,経皮的補助循環を実施すべきであった。 b上記aの処置を施していれば,ショック症状を抑え,肺水腫の進行を抑え,低酸素血症に陥ることも防止できた。したがってまた,多臓器不全による死亡を回避することができた(Eを救命することができた。 )エ薬剤選択の誤り(ア)ボスミンには重大な副作用として肺水腫があるから,アナフィラキシーショック・肺水腫を起こした患者に対しては,これを投与すべきではなく,エフェドリンを投与すべきであった。 エ薬剤選択の誤り(ア)ボスミンには重大な副作用として肺水腫があるから,アナフィラキシーショック・肺水腫を起こした患者に対しては,これを投与すべきではなく,エフェドリンを投与すべきであった。 (イ)ボスミンではなくエフェドリンを投与していれば,肺水腫の進行を防ぐことができた。したがってまた,低酸素血症に陥ることもなく,多臓器不全による死亡を回避することができた(Eを救命することができた。 )(3)救命救急態勢の構造的な欠陥アナフィラキシーショックに対する救命救急治療は,短期集中的に実施する必要があり,救命処置のスピードと医師の集中力が重要となる。 よって,被告は,上記(2)ウのような救命救急処置を行う前提として,直ちに気管内挿管を実施することのできる医師を配置するなど,そのような短期集中的な処置が可能となるような救命救急態勢ないしシステムを構築すべきであった。 しかるに,被告病院の救命救急態勢ないしシステムには,短期集中的な処置を実施することができない構造的な欠陥があった。 (4)損害アEに生じた損害 (ア)逸失利益7412万8320円①賃金収入5405万1900円基礎となる賃金収入を年1000万円,労働能力喪失期間を68歳から78歳までの10年(ライプニッツ係数7.7217,生活費)控除率30%として計算した金員。 ②年金収入2007万6420円基礎となる年金収入を年200万円(老齢厚生年金,68歳から)78歳までの受給喪失期間10年(ライプニッツ係数7.7217)の生活費控除率を30%,78歳から88歳までの受給喪失期間10年(ライプニッツ係数7.7217)の生活控除率を40%として計算した金員。 (イ)慰謝料2600万円原告らは,Eの被告に対する上記(ア),(イ)の損害賠償請求権を法定 までの受給喪失期間10年(ライプニッツ係数7.7217)の生活控除率を40%として計算した金員。 (イ)慰謝料2600万円原告らは,Eの被告に対する上記(ア),(イ)の損害賠償請求権を法定相続分に従って原告Aが2分の1,原告B及び原告Cが4分の1ずつ相続した。 イ原告Aに生じた損害(ア)固有の慰謝料500万円(イ)葬儀費用387万6549円(ウ)証拠保全費用59万7620円(エ)弁護士費用595万円ウ原告B及び原告Cに生じた各損害(ア)固有の慰謝料各300万円(イ)弁護士費用各280万円 被告の主張(1)上記3(1)(F医師の義務違反及びこれと結果との間の因果関係)について ア上記3(1)ア(検査適応の不存在)についてEは,平成13年12月下旬から左喉の痛みを訴えていたところ,喉頭内視鏡検査では異状がなかったことから,癌との鑑別のためにも造影CT検査が必要であった(Eも検査を希望した。 。)他方,アレルギー性鼻炎や慢性関節リウマチ,高齢の患者について,造影剤による重大な副作用の出現率が有意に高くなるという医学的知見はない(Eは「造影検査は避けるべき」患者ではない。 。)よって,Eに本件検査を受けさせるべきでなかったとはいえない。 イ上記3(1)イ(問診,説明義務違反)についてアレルギー性鼻炎や慢性関節リウマチ,高齢の患者について,造影剤による重大な副作用の出現率が有意に高くなるという医学的知見はないまた,そもそも,造影剤による重篤な副作用は極めて稀であり,一般臨床の場において重篤な副作用についての説明は行われていない。 よって,F医師にはイオパミロンの重篤な副作用について説明すべき義務はない。 ウ上記3(1)ウ(慎重投与指示義務違反)についてアレルギー性鼻炎や慢性関節 篤な副作用についての説明は行われていない。 よって,F医師にはイオパミロンの重篤な副作用について説明すべき義務はない。 ウ上記3(1)ウ(慎重投与指示義務違反)についてアレルギー性鼻炎や慢性関節リウマチ,高齢の患者について造影剤によ。 ,る重大な副作用の出現率が有意に高くなるという医学的知見はないまたそもそも,慢性関節リウマチの患者は,造影剤について「慎重に投与すべき患者」には当たらない。 したがって,F医師は,造影剤の投与によって重篤な副作用を起こすことを具体的に予見することはできなかったのであるから,重篤な副作用が起きることを前提に万全な救命救急態勢の準備を指示すべき義務はない。 なお,放射線科は,造影CT検査について,いつも「慎重投与」で行っており,その指示は必要ない。 エ上記3(1)エ(不適切な水分摂取制限)について F医師は,Eに対し,水分摂取の制限を指示していない。なお,検査前の絶食については副作用との関係で必要である。 (2)上記3(2)(G医師の義務違反及びこれと結果との間の因果関係)についてア上記3(2)ア(問診義務違反)について(ア)造影CT検査については,すべて「慎重投与を要する患者」という前提で行っている。 十分な問診とは,患者が禁忌患者に該当するか否かの確認であって,造影剤アレルギーの有無(絶対禁忌に該当するか否か,気管支喘息の)有無(原則禁忌に該当するか否か)を確認することである。G医師はこれらの確認をしているから,その問診内容は必要にして十分なものであった。 (イ)事前の問診によってEがアレルギー性鼻炎(花粉アレルギー)であ,,ることが判明していたとしても禁忌患者に該当するわけではないから造影CT検査は実施されていた。 よって,本件アナフィラキシーショックの発症を回避することはでき ギー性鼻炎(花粉アレルギー)であ,,ることが判明していたとしても禁忌患者に該当するわけではないから造影CT検査は実施されていた。 よって,本件アナフィラキシーショックの発症を回避することはできず,したがってまた,Eの死亡を回避することはできなかったから,原告ら主張の問診と死亡との間には因果関係がない。 イ上記3(2)イ(造影剤の投与方法の誤り)について急速注入とは,2~5ml/秒程度の速度による注入をいう。 本件CT検査における造影剤の注入速度は1ml/秒で,適切な画像所見を得るために必要な注入速度であり,他方,注入速度としては低速といえるほどのものであるから,投与方法が不適切であったとはいえない。 ウ上記3(2)ウ(検査中止義務違反及び救命救急処置義務違反)について(ア)造影CT検査を実施する際,患者はCT検査室に入り,放射線科医師らは操作室から患者を観察することになる。G医師は,操作室からE の様子を十分に観察していたのであり,そうであるからこそEが気分が悪いと訴えた時にもすぐにCT検査室に入ってその状態を確認できたのである。そして,撮像後もすぐにCT検査室に入ってEの様子を観察した。 また,造影剤の投与によって気持ちが少し悪くなることはあるが,そのほとんどが問題となることはなく,しかも悪化することは極めて稀であるし,撮像は10秒少々と短時間である。よって,本件造影CT検査を中止すべきであったとはいえない。 そして,G医師らは,本件造影CT検査を終えてEの状態を確認したところで,下記のとおり処置を行っているのであって,不適切な点はない。 ①輸液・必要な薬剤の投与のために血管を確保する必要があるとこ,,。 ろ造影剤注入のために確保されていた血管がありそれを利用した②気道の確保が必要となるが,当然には気管内挿管が 点はない。 ①輸液・必要な薬剤の投与のために血管を確保する必要があるとこ,,。 ろ造影剤注入のために確保されていた血管がありそれを利用した②気道の確保が必要となるが,当然には気管内挿管が必要となるものではない。本件では,まずは口腔内の内容物を吸引し,自発呼吸があることから下顎挙上を行って酸素マスクによる酸素投与を開始した。 なお,酸素投与の間にも口腔内を適宜吸引している。 ③速やかに乳酸リンゲル液の一つであるソリタT1液500mlの点滴を全開で開始した。 ④直ちにボスミン1アンプル(1mg)をソリタT1(500ml)に入れて点滴静注した。さらに,直ちにステロイド剤であるソル・コーテフ500mgを静注している。 ⑤速やかに心電図モニターを装着し,血圧も自動血圧計などにより適(,宜測定している気管内挿管が行われた段階で心電図には変化がなくそのすぐ後に昇圧剤エフェドリンが投与された段階の収縮期血圧は88~118mmHgが確認されており,それまでの処置が不適切ではな かったことを示す。また,血圧維持の一手段として,速やかに下。)肢挙上が行われている。 なお,上記①ないし⑤は,Eの状態を見てできるだけ早く行われたものであるが,それでも10分程度はすぐに経過してしまうものである。 ,,。 この間に胸部レントゲン検査を行うことはできず行う必要性もないまた,経皮的動脈血酸素飽和度の測定も,Eの状態を把握していることや酸素投与をしていることから特に必要はない。さらに,Eには自発呼,。 吸が見られたのであるからその間に気管内挿管を行うべき義務もない(イ)原告ら主張の観察を行っていたとしても,他の症状を捉えることができたとはいえないし,その後の処置内容も変わらない。 また,本件では,放射線科医師らによって即座にできる限りの処 うべき義務もない(イ)原告ら主張の観察を行っていたとしても,他の症状を捉えることができたとはいえないし,その後の処置内容も変わらない。 また,本件では,放射線科医師らによって即座にできる限りの処置がされ,麻酔科医師も速やかに駆けつけて全力で治療にあたっていたにも,,かかわらず肺水腫が急激に進行・悪化してEが死亡したのであるから原告ら主張の治療を施したとしてもEを救命することができたとはいえず,死亡との間に因果関係はない。 エ上記3(2)エ(薬剤選択の誤り)について少なくとも,造影剤等の薬剤を原因とするアナフィラキシーショックに対し一般臨床の場で最初に選択して投与すべき薬剤はボスミンとされている。したがって,ボスミンの投与は不適切ではない。 (3)上記3(3)(救命救急態勢の構造的な欠陥)について被告病院では,CT検査室をはじめ造影剤を使用する検査室には救急用のカートが入っており,いつでも救急措置に必要な医薬品(ボスミン,ソル・コーテフ,エフェドリン,抗痙攣剤等)及び医療機器(気管内挿管に必要な器具一式,除細動器)が準備されていた。またCT検査室には酸素投与や吸引装置が設置されていた。 他方,被告病院では,経皮的補助循環を行うための機器をCT検査室に備 え付けていないが,現在においても標準的な治療方法であるということはできず,そのような機器を備え付ける義務はない。 造影CT検査は,どの施設においても,放射線科医師らが実施するものであって,日常的に気管内挿管を行っている麻酔科医師などは立ち会っていない。本件CT検査の際も,放射線科医師であるG医師のほか,診療放射線技師(以下,単に「技師」と省略する場合がある)であるI技師及びJ技師。 らがいる態勢で検査を行った。 そして,被告病院では,重篤な副作用の発現時に麻酔科医師に直ちに 師であるG医師のほか,診療放射線技師(以下,単に「技師」と省略する場合がある)であるI技師及びJ技師。 らがいる態勢で検査を行った。 そして,被告病院では,重篤な副作用の発現時に麻酔科医師に直ちに応援要請をする態勢が整っていた。 本件においても,Eにアナフィラキシーショックが出現した後,すぐに,CT検査室に入室して,Eの状態を確認した上で,ソル・コーテフ500ml静注とボスミン1Aの点滴静注,輸液,マスクによる酸素投与を行うとともに,処置を行いやすくするためにEをCT検査室から血管造影室に移動させたのであるし,その間,他の放射線科医師,診療放射線科技師及び看護師らが駆けつけまたI技師が手術室をコールして麻酔科医師の応援要請を行っ,,た。 なお,麻酔科医のK医師が救急の現場に駆けつけたのは午前9時18分であり,Eの急変から最も短時間で駆けつけた時間であるといえる。 したがって,被告病院の救命救急態勢ないしシステムに欠陥はない。 (4)上記3(4)(損害)について争う。 第3当裁判所の判断 前記前提事実に証拠(各項に掲記したもの)及び弁論の全趣旨を併せると,次の事実が認められる。 (1)本件造影CT検査を受けるに至った経緯(乙A1,2,5)Eは,平成13年7月27日及び同年12月3日,Hを受診した際,喉の 痛みを訴え,喉頭内視鏡検査を受けた。Hは,Eの症状に対し,同年7月の時点では急性咽頭炎及び急性口頭蓋炎,同年12月の時点では咽頭気管支炎との傷病名をそれぞれ付した。 ,,,。 Eは同年12月26日被告病院を受診して左喉の奥の痛みを訴えたさらに,平成14年1月16日,被告病院を受診して,左側だけ喉が痛く,それがずっと続いている旨訴えた。F医師は,同日,喉頭内視鏡検査では異状が見られなかったことから,食道入口部か の奥の痛みを訴えたさらに,平成14年1月16日,被告病院を受診して,左側だけ喉が痛く,それがずっと続いている旨訴えた。F医師は,同日,喉頭内視鏡検査では異状が見られなかったことから,食道入口部から甲状腺,食道の病変の有無を精査するため,放射線科に対し,頸部の造影CT検査を依頼した。 (2)本件造影CT検査実施当日の経過(乙A1,2,7,証人G,鑑定の結果)本件造影CT検査実施当日の経過は,別紙事故経過一覧表の「年月日(日時「経過「検査・処置」欄記載のとおりである(ただし,下線を付し)」,」,た部分は除く。撮像終了直後から午前9時20分ころまでの経過につい。)て敷衍すると,以下のとおりである。 撮像終了直後,G医師及びL技師がCT検査室に入ったところ,Eの口腔内には液体が貯留しており,呼名に反応がにぶく,呼吸困難も認められた。 G医師らは,直ちに,口腔内の内容物の吸引とマスクによる酸素投与を開始するとともに,既に刺入しているサーフロー針を使用してソリタT1(500ml)の点滴静注を全開で行い,その静脈路の3方活栓からソル・コーテフ(500mg)を静注し,ボスミン(1アンプル)を上記ソリタT1のプラ。 ,,ボトルに混入して点滴静注を開始したそしてこのような処置をしながらEをストレッチャーに移して処置の行いやすいCT検査室の隣の血管造影室に移動させた。しかし,意識レベルは回復しなかった。 麻酔科のK医師が午前9時18分ころ駆けつけてEを診察したところ,チ,,アノーゼは全身ではなく四肢末梢に限局し瞳孔は中等散大で左右不同なく自発呼吸は残存していたが,舌根沈下が認められたため,アンビュウバッグ による呼吸介助を開始したところ,胸郭の動きは良好で,換気も良好と思われたが,口腔内から多量の液体が吸引されたこともあって,午前 呼吸は残存していたが,舌根沈下が認められたため,アンビュウバッグ による呼吸介助を開始したところ,胸郭の動きは良好で,換気も良好と思われたが,口腔内から多量の液体が吸引されたこともあって,午前9時20分ころ,K医師が気管内挿管を施行した。 Eは,口腔内の液体吸引や酸素投与を受けていた際,自発呼吸があり,気道が狭窄して換気が完全に障害されるような呼吸状態ではなかったが,午前9時20分ころに気管内挿管がされるまでは有効な換気が十分に得られていなかった。 G医師は,気管内挿管を実施した経験があったが,麻酔科のK医師が気管内挿管を実施するまでの間,自らこれを試みることはなかった。 (3)Eの死亡原因(甲A1,乙A1,2,7,証人G,鑑定の結果)Eは,造影剤の投与によってアナフィラキシー様反応を起こし,全身の肥満細胞が反応して血管を広げる物質が体中の組織から放出された結果,アナフィラキシーショックに陥り,全身の血圧の低下,循環虚脱によって組織に酸素が供給されなくなった。また,肺の毛細血管の透過性亢進のために徐々に肺水腫が進行し,肺におけるガス交換に障害が生じた。そのため,低酸素血症となり,心筋障害及び急性心不全を起こし,それが心原性肺水腫を引き起こすなどしてさらにガス交換が悪化した。このような血圧低下,肺水腫に,,,よる低酸素状態のため脳への血流と酸素供給が不足して意識障害が生じ脳幹の呼吸中枢の障害が換気障害をさらに悪化させるという悪循環に陥った。Eは,このような急性の全身状態の悪化のために心停止をきたして死亡した。 (4)CT検査の態勢等(甲A6,7,証人G)本件造影CT検査が実施されたCT検査室は地下1階にあり,通常,CT検査は,医師1人,研修医2人,看護師1人,診療放射線技師3人の態勢で行っている。また,CT検査室の隣には 等(甲A6,7,証人G)本件造影CT検査が実施されたCT検査室は地下1階にあり,通常,CT検査は,医師1人,研修医2人,看護師1人,診療放射線技師3人の態勢で行っている。また,CT検査室の隣には読影室があり,緊急の際には,そこにいる医師が直ちにCT検査室に駆けつけられる状態にあった。さらに,重 篤な副作用の発現時には,麻酔科医師に直ちに応援要請をすることとなっていた。 CT検査室には,酸素投与と吸引ができる設備があるほか,救急用のカートが置かれ,救急措置に必要な医薬品(ボスミン,ソル・コーテフ,エフェドリン等)及び医療機器(気管内挿管用の機器,除細動器等)が準備されていた。 (5)医学的知見(乙A7,証人G,鑑定の結果)造影CT検査において,造影剤投与後に少し気分が悪いと訴える患者は少なくないが,そのような場合でもしばらくすると落ち着くことが多い。 アナフィラキシーショックの患者は,初期症状として,顔や体から手足に向かって赤くなるが,血圧が低下して換気障害や低酸素が進むと,それが薄紫色に変わることが多い。 アナフィラキシーショック時の気管内挿管は,手術の時のように筋弛緩状態になく,かえって喉頭浮腫等による上気道閉塞や狭窄などが生じていることが多いため,一般の放射線科医師にとっては手技的に容易でない。 救命救急処置の機器として,血流の維持及び酸素の投与を目的とする経皮的補助循環の機器がある。経皮的補助循環の機器は,経皮的にガイドワイヤーを静脈及び動脈の中に通す脱血挿血管と遠心ポンプなどからなる機器であり,補助の心臓と肺としての機能を持つ。 「F医師の義務違反及びこれと結果との間の因果関係」について(1)「検査適応の不存在」について(),,前記前提事実(2)イ別紙診療経過一覧表及び上記1(1)のとおりEは平成1 「F医師の義務違反及びこれと結果との間の因果関係」について(1)「検査適応の不存在」について(),,前記前提事実(2)イ別紙診療経過一覧表及び上記1(1)のとおりEは平成13年7月に喉の痛みを訴えていたことがあり,さらに,同年12月ころから左側の喉の痛みが継続していたところ,喉頭内視鏡検査では異状が見られなかったのであるから,食道入口部から甲状腺,食道の病変(悪性腫瘍等)の有無を精査するためには頸部の造影CT検査を受ける必要性があった といえる。 他方,前記前提事実(2)イ(別紙診療経過一覧表)のとおり,Eは,アレルギー性鼻炎及び慢性関節リウマチを患っていたが,別紙医学的知見2(1)イ(本件添付文書)のとおり,アレルギー性鼻炎及び慢性関節リウマチの患者は造影剤の投与を回避すべき禁忌患者には該当しない。 よって,Eに本件造影CT検査を受けさせるべきではなかったとはいえない。 (2)「問診,説明義務違反」について別紙医学的知見2(3)イのとおり,本件造影剤副作用大規模調査の結果によれば,非イオン性造影剤(イオパミロンを含む)の副作用は,16万8。 363例中,総副作用発現症例が5276例(3.13%,重篤例が70)(. ),(. ),(. 例 04%極めて重篤例が6件 004%死亡例が1例 00%)である。また,アレルギー歴のある患者のうち花粉症の患者1532例について見ると,副作用発現症例が115例(7.51%,重篤例が)1例(0.07%)である。 このように非イオン性造影剤の副作用によって重篤な状態になった例や死亡した例が極めて少数であること及び上記(1)のような検査の必要性に照らすと,Eは,仮に原告ら主張の問診や検査の必要性及び造影剤の副作用について説明を受けていたとしても, て重篤な状態になった例や死亡した例が極めて少数であること及び上記(1)のような検査の必要性に照らすと,Eは,仮に原告ら主張の問診や検査の必要性及び造影剤の副作用について説明を受けていたとしても,本件造影CT検査を受けなかったとはいえない。 したがって,仮にF医師が問診や造影剤についての説明をしていなかったとしても,それとEの死亡との間には因果関係がない。 (3)「慎重投与指示義務違反」についてEは,前記前提事実(1)ア,(2)イ(別紙診療経過一覧表)のとおり,本件造影CT検査を受けた当時68歳で,アレルギー性鼻炎があったのであるから,本件添付文書によればイオパミロンについて「慎重投与」の対象となる 患者であったといえる。他方,慢性関節リウマチの患者が「慎重投与」の対象となるとは,本件全証拠によっても認められない。 この点,別紙医学的知見2(1)イ(本件添付文書)のとおり,本件添付文書には重要な基本的注意として「投与量と投与方法の如何にかかわらず過敏反応を示すことがある。本剤によるショック等の重篤な副作用は,ヨード過敏反応によるものとは限らず,それを確実に予知できる方法はないので,投与に際しては必ず救急処置の準備を行うこと「投与にあたっては,開始。」時より患者の状態を観察しながら,過敏反応の発現に注意し,慎重に投与すること。また,異常が認められた場合には,直ちに投与を中止し,適切な処置を行うこと」との記載がある。そして,別紙医学的知見2(3)のとおり,。 造影剤によるアナフィラキシーショックのメカニズムは不明であり,発現の確実な予知・予防方法は確立されていない。そうであるとすれば,放射線科医師は,造影CT検査を実施する際には「慎重投与」の対象となる患者に,該当するか否かを問わず,また,原疾患の主治医の指示の有無を問わず,本 ・予防方法は確立されていない。そうであるとすれば,放射線科医師は,造影CT検査を実施する際には「慎重投与」の対象となる患者に,該当するか否かを問わず,また,原疾患の主治医の指示の有無を問わず,本件添付文書の重要な基本的注意事項に従うとともに,副作用発現時の救命救急態勢を整えておくべきであるといえる。 したがって,原疾患の主治医であるF医師において,放射線科の医師に対し,原告らが主張する「慎重投与」の指示をすべき義務があったとはいえない。 (4)「不適切な水分摂取制限」について確かに,別紙医学的知見2の(1)イ(本件添付文書,(3)アのとおり,脱)水症状のある患者は慎重投与の対象とされ,脱水は急性腎不全,不整脈及び血圧低下等の重篤な副作用の誘因となるので,脱水を起こしやすい患者については,極端な飲水制限は避けるべきとされている。 しかし,F医師がEに対して水分摂取の制限を指示した事実は,本件全証拠によってもこれを認めるに足りない。 なお,仮に水分摂取の制限があったとしても,それがなければアナフィラキシーショックが起きなかったと認めるに足りる証拠もないから,死亡との間の因果関係を認めることはできない。 「G医師の義務違反及びこれと結果との間の因果関係」について(1)「問診義務違反」について上記2(3)のとおり,Eは,イオパミロンについて「慎重投与」の対象となる患者であったが,その投与を避けるべき「禁忌」には該当しない。 よって,仮にG医師が原告ら主張の問診を十分に実施していたとしても,本件造影剤は投与されたはずであるから,アナフィラキシーショックの発生とそれによる死亡を回避することはできなかったというべきであり,死亡との間に因果関係は認められない。 (2)「造影剤の投与方法の誤り」について前記前提事実(2)アのとおり, ラキシーショックの発生とそれによる死亡を回避することはできなかったというべきであり,死亡との間に因果関係は認められない。 (2)「造影剤の投与方法の誤り」について前記前提事実(2)アのとおり,本件造影CT検査ではイオパミロン300シリンジが使用されている。 しかし,かかるシリンジ製剤(注射器型製剤)について点滴静注によらなければならないという医学的知見や秒間1mlによる静注が重篤な副作用を誘発させるなど不適切であるというような医学的知見は,本件全証拠によっても認めるに足りない。 かえって,別紙医学的知見2(1)イ(本件添付文書)のとおり,本件添付文書には「投与量と投与方法の如何にかかわらず過敏反応を示すことがある」との記載がある。また,別紙医学的知見2(1)ア(別紙Iopamiron)の。 とおり「通常点滴静注とする」との記載があるのはバイアル製剤(ガラス,瓶型製剤)だけであって,シリンジ製剤(注射器型製剤)についてはそのような記載はなく,イオパミロンのような造影剤のシリンジ製剤(注射器型製剤)は,もともとインジェクター(自動注入器)を利用することが予定されていると窺われる。なお,別紙医学的知見2(1)イ(本件添付文書)のとお ,「,。」り本件添付文書には50ml以上投与するときは通常点滴静注とするとの記載があるが,本件添付文書はバイアル製剤(ガラス瓶型製剤)に関するものであって,シリンジ製剤(注射器型製剤)に関するものではなく,投与方法については異なるものと思われる。 したがって,造影剤の投与方法が不適切であったとはいえない。 (3)「検査中止義務違反及び救命救急処置義務違反」についてア別紙医学的知見1(3)のとおり,アナフィラキシーの症状は,原因物質に曝露した後,数秒から数分後に症状が発現するのが通常であ えない。 (3)「検査中止義務違反及び救命救急処置義務違反」についてア別紙医学的知見1(3)のとおり,アナフィラキシーの症状は,原因物質に曝露した後,数秒から数分後に症状が発現するのが通常であり,アナフィラキシーショックという重篤な状態に陥る危険性がある。 よって,放射線科医師は,造影剤を投与するに当たっては,開始時より患者の状態を観察しながら,過敏反応の発現に注意し,異常が認められた場合には,直ちに検査を中止すべきである。 この点,上記1(2)のとおり,G医師は,本件造影剤を注入した直後,Eから「ちょっと気分が悪い」と訴えられた。 。 しかし,上記1(5)のとおり,造影CT検査において,造影剤投与後に少し気分が悪いと訴える患者は少なくないが,そのような場合でもしばらくすると落ち着くことが多いこと,別紙医学的知見2(3)イのとおり,本件造影剤副作用大規模調査の結果によれば,非イオン性造影剤(イオパミロンを含む)の副作用として,重篤でないもの(悪心,熱感,嘔吐,か。 ゆみ,蕁麻疹等)については約3%の患者に発生すること,上記1(2)のとおり,G医師は,直ちにCT検査室に入室して,Eの様子を観察するとともに,Eに対し「吐きそうですか「検査はすぐに終わりますが受,。」,けられそうですか」と質問したところ,それぞれ「大丈夫です「で。 。」,きると思います」との返事を受けたこと,前記前提事実(2)アのとおり。 撮像自体は12.5秒で終了することに照らすと,上記のようなEの悪心の訴えをもって直ちに検査を中止すべき異常であるとは認められない。 なお,上記1(5)のとおり,アナフィラキシーショックの患者は,初期症状として,顔や体から手足に向かって赤くなることが多いとされるが,必ずそうなるというわけでもなく,本件において,そのような初 なお,上記1(5)のとおり,アナフィラキシーショックの患者は,初期症状として,顔や体から手足に向かって赤くなることが多いとされるが,必ずそうなるというわけでもなく,本件において,そのような初期症状が撮像前にあったという事実は,本件全証拠によっても認めるに足りない。 イ上記1(1)のとおり,Eは,撮像後,口腔内に液体が貯留しており,呼名への反応や意識がなく,呼吸困難,血圧の低下が見られた。 よって,G医師は,Eが本件造影剤によってアナフィラキシーショックを起こしたことを疑って,直ちに救命救急処置をとるべきであったといえる。 具体的には,別紙医学的知見1(4)のとおり,救命救急処置のために可能な限りの人的・物的資材を集めて,①気道確保・酸素投与(気道を確保してマスクによる酸素投与を行う。喉頭浮腫等による上気道閉塞の所見があるなど呼吸困難が高度であれば気管内挿管をする。気管内挿管が困難な場合には,緊急気管切開を考慮する。アナフィラキシーショックの場合,喉頭浮腫等によって短時間で気道閉塞状態に陥る可能性があり,そうなるとバッグマスク換気や気管内挿管が困難となるため,気管内挿管や気管切開を常に念頭に置いて対処する必要がある,②静脈路確保・急速細胞。)外液輸液(静脈路を確保した上で,通常1000ml以上の細胞外液(生理食塩水,乳酸加リンゲル液等)を短時間で投与する,③薬剤投与(第。)1選択として速やかにエピネフリン(製品名ボスミン)を投与し,必要に応じてこれを繰り返し投与する。エピネフリンは,交感神経刺激作用,末梢血管収縮作用,気管支拡張作用を持つ。なお,βブロッカー服用中の患者には,エピネフリンの効果がないため,グルカゴンを投与する。気管支,。 痙攣が問題となっている場合には吸入βアドレナリン作動薬を投与する副腎皮質ステロイ 作用を持つ。なお,βブロッカー服用中の患者には,エピネフリンの効果がないため,グルカゴンを投与する。気管支,。 痙攣が問題となっている場合には吸入βアドレナリン作動薬を投与する副腎皮質ステロイドは,即効性を期待することができないが,遷延性,遅発性の反応を抑制する効果があるものとされている。抗ヒスタミン薬につ いても,即効性は乏しいが,症状の遷延化防止を目的として投与されることがある,④心肺停止に対する処置(心肺停止があれば,絶え間ない。)心臓マッサージと換気を徹底する)を実施する必要がある。なお,肺水。 腫(特に,ARDS)に対する処置は,別紙医学的知見3(4)のとおりであって,上記アナフィラキシーショックに対する救命救急処置とほぼ重なっているといえる。 この点,本件では,上記1(2)のとおり,撮像終了直後に異常が見られた後,直ちに,M医師,J技師,I技師,看護師らがCT検査室に駆けつけ,すぐに,口腔内の内容物の吸引とマスクによる酸素投与を開始すると,()ともに既に刺入しているサーフロー針を使用してソリタT1500mlの点滴静注を全開で行い,その静脈路の3方活栓からソル・コーテフ(500mg)を静注し,ボスミン(1アンプル)を上記ソリタT1のプラボトルに混入して点滴静注を開始した。また,J技師が放射線科のN医師に,I技師が麻酔科医師にそれぞれ応援を要請し,上記のような処置をしながら,Eをストレッチャーに移して処置の行いやすいCT検査室の隣の血管造影室に移動させた。また,午前9時20分ころK医師によって気管内挿管が実施された後も,適宜,ボスミン,エフェドリン,メイロン,イノバン,硫酸アトロピン等の薬剤が投与されるとともに,心拍数の低下に対する心臓マッサージや心停止に対するDCが実施されている。 よって,G医師らは,下 後も,適宜,ボスミン,エフェドリン,メイロン,イノバン,硫酸アトロピン等の薬剤が投与されるとともに,心拍数の低下に対する心臓マッサージや心停止に対するDCが実施されている。 よって,G医師らは,下記の気管内挿管の点以外については,アナフィラキシーショックに対する標準的な救命救急処置を実施したといえる。 ウもっとも,別紙医学的知見1(4)のとおり,アナフィラキシーショックの場合,喉頭浮腫等によって短時間で気道閉塞状態に陥る可能性があり,そうなると気管内挿管が困難となるため,気管内挿管を常に念頭に置いて対処する必要があるところ,上記1(2)のとおり,Eは,撮像終了直後に既に意識がなく呼名にも反応しない状態にあったこと,口腔内の液体貯留 が続いており,呼吸困難もあって,肺水腫が生じていると疑うべき状態であったことに照らすと,自発呼吸があったにしても,有効な換気が得られているか否かについてサーチュレーションによる動脈血酸素飽和度等の確認がされていない(証人G)以上,午前9時20分よりも早期に気管内挿管をすることが望ましかったといえる。 しかしながら,上記1(5)のとおり,アナフィラキシーショック時の気管内挿管は,一般の放射線科医にとって,困難を伴い,麻酔科医等の専門家に任せざるを得ないのが実情であることに照らすと,放射線科医であるG医師が気管内挿管を行わなかったことをもって診療上の注意義務違反(過失)ないし義務違反(債務不履行)があるとまではいうことができない。 ただし,この点については,麻酔科医のK医師の到着が午前9時18分ころになった(気管内挿管の実施が午前9時20分ころになった)こと。 につき,原告ら主張の「救命救急態勢の構造的な欠陥」があるというべきか否かが問題となるので,後に更に検討する。 エ原告らは,救命救急処置の内容とし 内挿管の実施が午前9時20分ころになった)こと。 につき,原告ら主張の「救命救急態勢の構造的な欠陥」があるというべきか否かが問題となるので,後に更に検討する。 エ原告らは,救命救急処置の内容として,経皮的補助循環を実施すべきであったと主張するが,経皮的補助循環の実施がアナフィラキシーショックに対する救命救急処置の標準的な治療内容であるということは,本件全証拠によっても認めるに足りない。 オ原告らは,救命救急処置の合間に肺の機能検査や肺のレントゲン検査を実施すべきであったと主張するが,アナフィラキシーショックのように短時間のうちに重篤な状態になる患者に対しては,呼吸及び循環を維持するための様々な処置を緊急に行う必要があるから,救命救急処置の合間に肺の機能検査や肺のレントゲン検査を実施すべきであるとはいえない。 (4)「薬剤選択の誤り」についてアアナフィラキシーショック・肺水腫を起こした患者に対してボスミンを 投与すべきではなくエフェドリンを投与すべきという医学的知見は,本件全証拠によっても認めるに足りない。 この点,別紙医学的知見4(1)のとおり,ボスミンには重大な副作用として肺水腫,呼吸困難及び心停止があるが,かかる重大な副作用の発生原因・機序に関する証拠はなく,アナフィラキシーショック・肺水腫を起こした患者に対してボスミンを投与すべきではないとする根拠にはならない。 かえって,別紙医学的知見1(4)ウのとおり,造影剤によるアナフィラキシーショックが起きた場合には,第1選択として速やかにエピネフリン(製品名ボスミン)を投与し,必要に応じてこれを繰り返し投与する必要があるとされている。 ,。 したがってEに対するボスミンの投与が不適切であったとはいえないイ別紙医学的知見4(1)のとおり,ボスミンには重大な副作用として肺水 に応じてこれを繰り返し投与する必要があるとされている。 ,。 したがってEに対するボスミンの投与が不適切であったとはいえないイ別紙医学的知見4(1)のとおり,ボスミンには重大な副作用として肺水腫,呼吸困難及び心停止があるが,上記1(2)のとおり,ボスミンの投与前に既にアナフィラキシーショックに陥ってたことをも考慮すると,ボスミンの投与がEの肺水腫や呼吸困難を生じさせたと推認するに足りず,他にかかる事実を認めるに足りる証拠はない。 また,ボスミンの投与が既に発生していた肺水腫,呼吸困難及び心停止を増強・進行させた事実は,本件全証拠によっても認めるに足りない。 したがって,ボスミンの投与とEの死亡との間に因果関係を認めることはできない。 「救命救急態勢の構造的な欠陥」について(1)別紙医学的知見2(1)イ(本件添付文書)のとおり,本件添付文書には重要な基本的注意として「投与量と投与方法の如何にかかわらず過敏反応を示すことがある。本剤によるショック等の重篤な副作用は,ヨード過敏反応によるものとは限らず,それを確実に予知できる方法はないので,投与に際し ては必ず救急処置の準備を行うこと「投与にあたっては,開始時より患。」者の状態を観察しながら,過敏反応の発現に注意し,慎重に投与すること。 また,異常が認められた場合には,直ちに投与を中止し,適切な処置を行うこと」との記載があること,また,別紙医学的知見2(3)のとおり,造影。 剤によるアナフィラキシーショックのメカニズムは不明であり,発現の確実な予知・予防方法は確立されていないことに照らすと,放射線科において造影剤を使用する場合には,常に副作用発現時の救命救急態勢を整えておくべきであるといえる。 この点,上記1(4)のとおり,本件造影CT検査が実施されたCT検査室,,, らすと,放射線科において造影剤を使用する場合には,常に副作用発現時の救命救急態勢を整えておくべきであるといえる。 この点,上記1(4)のとおり,本件造影CT検査が実施されたCT検査室,,,,,,は地下1階にあり通常CT検査は医師1人研修医2人看護師1人診療放射線技師3人の態勢で行っていた。また,CT検査室の隣には読影室があり,緊急の際には,そこにいる医師が直ちにCT検査室に駆けつけられる状態にあった。そして,重篤な副作用の発現時には,麻酔科医師に直ちに応援要請をすることとなっていた。さらに,CT検査室には,酸素投与と吸引ができる設備があるほか,救急用のカートが置かれ,救急措置に必要な医薬品(ボスミン,ソル・コーテフ,エフェドリン等)及び医療機器(気管内挿管用の機器,除細動器等)が準備されていた。 ,,このような救命救急のための環境からすると被告病院の救命救急態勢は後記の麻酔科医の到着が午前9時18分ころになった(気管内挿管の実施が午前9時20分ころになった)点を除けば,当時の医療水準に満たない不。 適切なものであったとは認められない。 (2)麻酔科医(K医師)の到着が午前9時18分ころ(撮像終了直後に異変が確認された時から原告らの主張では約18分後,被告の主張では約10分後)になった点について検討する。 別紙医学的知見2(3)イのとおり,本件造影剤副作用大規模調査(16万8363例)の結果によれば,非イオン性造影剤(イオパミロンを含む)。 の副作用のうち,重篤例が70例(0.04%,極めて重篤例(重篤な副)作用が生じた例のうち麻酔科医の応援を依頼した例又は入院を必要とした例)が6件(0.004%,死亡例が1例(0.00%)であることに照)らすと,造影CT検査の際に麻酔科医の常駐までを要求するのは相 作用が生じた例のうち麻酔科医の応援を依頼した例又は入院を必要とした例)が6件(0.004%,死亡例が1例(0.00%)であることに照)らすと,造影CT検査の際に麻酔科医の常駐までを要求するのは相当でないが,これまでに判示したところによれば,造影剤によるアナフィラキシーショックに対する救命救急態勢としては,麻酔科医(本件のような場合に気管内挿管等を行うことのできる医師。以下同じ)の応援が必要となったとき。 に,麻酔科医が速やかに現場に駆けつけられるような病院内の連絡手段を整えておくべきであるといえる(造影剤によるアナフィラキシーショックが起きたときに麻酔科医が速やかに現場に駆けつけられないようでは,救命救急態勢として問題があるといえる。 。)この点,本件において,本件造影CT検査の撮像終了時刻が被告主張のとおり午前9時8分ころであった場合,G医師らが,Eの状態を観察して放射線科内部の他の医師,診療放射線技師及び看護師に応援を要請するのに要する時間,麻酔科医の応援を要請する必要があると判断して麻酔科医がいる部署に連絡をするのに要する時間,連絡のついた麻酔科医が現場に駆けつけるのに要する時間,現場に駆けつけた麻酔科医が患者の状況を把握して気管内挿管が必要か否かを判断し,必要と判断した場合にこれを実施するのに要する時間などを考慮すると,平成14年1月当時の被告病院(大学病院)と同程度の病院の医療水準として,麻酔科医が到着するのに10分程度かかるとしてもやむを得ないというべきであって,麻酔科医であるK医師が血管造影室に駆けつけた時刻が午前9時18分,気管内挿管を行った時刻が午前9時20分であったことが,救命救急態勢として不適切であったとまではいえない(不適切であったというだけの事情を認めるに足りる証拠はない。 。)他方,本件造影CT 8分,気管内挿管を行った時刻が午前9時20分であったことが,救命救急態勢として不適切であったとまではいえない(不適切であったというだけの事情を認めるに足りる証拠はない。 。)他方,本件造影CT検査の撮像終了時刻が原告ら主張のとおり午前9時ころであった場合,K医師が血管造影室に駆けつけた時刻が午前9時18分, 気管内挿管を行った時刻が午前9時20分であったことは,救命救急態勢としては不適切であったというべき余地がある(麻酔科医が救命救急の現場に駆けつけるのに18分程度かかったということになる。 。)しかしながら,仮に上記のように気管内挿管の実施時期が遅く救命救急態勢が不適切であったといえるとしても,それとEの死亡との間に因果関係は認められない。すなわち,前記のとおり,Eの病態は,アナフィラキシーショックに肺水腫(ARDS)を合併したもので,各種の治療の効果が続かない極めて難治性のものであったといえることのほか,Eの死亡原因が上記1(3)のとおりであることを考慮すると,仮に,本件造影CT検査の撮像終了直後に異変が確認された時刻が原告ら主張のとおり午前9時ころであって,麻酔科医の到着に時間を要する10分後ころの午前9時10分ころに直ちに気管内挿管が行われていたとしても,Eの死亡が避けられたとまでは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 以上によれば,原告らの請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないというべきであるから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第14部裁判長裁判官貝阿彌誠裁判官水野有子裁判官堀内元城 別紙医学的知見 アナフィラキシー(甲B23,27ないし29,調査嘱託 り判決する。 東京地方裁判所民事第14部裁判長裁判官貝阿彌誠裁判官水野有子裁判官堀内元城 別紙医学的知見 アナフィラキシー(甲B23,27ないし29,調査嘱託の結果)(1)病態アナフィラキシー反応とは,特定のアレルゲンに感作された者が,再度アレルゲンに曝露されることにより発現するIgEによる即時型過敏症反応をいう。 一般に,蜂毒アレルギーや薬物アレルギー,ゴム製品によるラテックスアレルギー,寒冷蕁麻疹等がこれに属する。 他方,アナフィラキシー様反応とは,IgEによる抗原抗体反応によらず,肥満細胞・好塩基球が直接に刺激される病態をいう。非ステロイド系薬剤,造影剤,血液製剤や輸血等による反応がこれに属する。 (2)原因物質あらゆる物質が原因となり得る。原因として多いのは,薬剤(抗菌薬,非ステロイド抗炎症剤,抗癌剤等,昆虫(蜂等,造影剤,血液製剤,食品(海))産物,牛乳,そば,ピーナッツ等)である。 (3)アナフィラキシーの症状ア原因物質に曝露した後,数秒から数分後に症状が発現するのが通常であるが,1時間以上経てから発現する遅発性のものもある。いったん初期の救命に成功しても,数時間後に遅発性に症状が再燃して命に関わる場合もある。 (),(,,,),前駆初期症状として①全身症状生あくび寒気不安感冷や汗②皮膚粘膜症状(眼瞼掻痒感,流涙,鼻汁,口内違和感,口唇の痺れ,皮膚掻痒,皮膚紅潮,発赤,③神経症状(めまい・立ちくらみ,耳鳴り,四肢)の痺れ,④循環器症状(動悸,心悸亢進,頻脈,胸部不快感,⑤呼吸器))症状(くしゃみ,咳嗽,喘,呼吸困難感,⑥消化器症状(吐き気,嘔吐,)嚥下困難,腹痛,尿意,便意)がある。 進行した症状として,①全身症状(意識障害,②皮膚粘膜症 頻脈,胸部不快感,⑤呼吸器))症状(くしゃみ,咳嗽,喘,呼吸困難感,⑥消化器症状(吐き気,嘔吐,)嚥下困難,腹痛,尿意,便意)がある。 進行した症状として,①全身症状(意識障害,②皮膚粘膜症状(結膜充) 血,鼻閉,手足の冷感・湿潤,皮膚蒼白,蕁麻疹,血管性浮腫,③神経症)(,),(,,,状意識喪失痙攣④循環器症状脈触知不良血圧低下チアノーゼ頻脈,不整脈,ST/T変化,⑤呼吸器症状(喉頭浮腫,気管支攣縮,喘),,,),(,,)。 鳴喘息発作肺水腫窒息⑥消化器症状尿便失禁下痢があるイアナフィラキシーショックアナフィラキシーショックとは,アナフィラキシーに起因する気道閉塞による呼吸不全や血管から組織への水分移行によるhypovolemicshock(血液量減少性ショック,乏血性ショック)を主にした循環不全の強い病態をいう(アナフィラキシー様反応に起因するショックについては,特に,アナフィラキシー様ショックということがあるが以下これらを区別せず単にア,,,「ナフィラキシーショック」という。 。)(4)治療造影剤によるアナフィラキシーショックに対する治療は,可能な限りの人的・物的資材を集めて,意識の有無を確認した上で呼吸及び循環を維持することが基本となる。その治療方法は以下のとおりである。 ア気道確保・酸素投与気道を確保してマスクによる酸素投与を行う。喉頭浮腫等による上気道閉塞の所見があるなど呼吸困難が高度であれば気管内挿管をする。気管内挿管が困難な場合には,緊急気管切開を考慮する。 アナフィラキシーショックの場合,喉頭浮腫等によって短時間で気道閉塞状態に陥る可能性があり,そうなるとバッグマスク換気や気管内挿管が困難,。 となるため気管内挿 場合には,緊急気管切開を考慮する。 アナフィラキシーショックの場合,喉頭浮腫等によって短時間で気道閉塞状態に陥る可能性があり,そうなるとバッグマスク換気や気管内挿管が困難,。 となるため気管内挿管や気管切開を常に念頭に置いて対処する必要があるイ静脈路確保・急速細胞外液輸液静脈路を確保した上で,通常1000ml以上の細胞外液(生理食塩水,乳酸加リンゲル液等)を短時間で投与する。 ウ薬剤投与 第1選択として速やかにエピネフリン(製品名ボスミン)を投与し,必要に応じてこれを繰り返し投与する。エピネフリンは,交感神経刺激作用,末梢血管収縮作用,気管支拡張作用を持つ。なお,βブロッカー服用中の患者には,エピネフリンの効果がないため,グルカゴンを投与する。 気管支攣縮が問題となっている場合には,吸入βアドレナリン作動薬を投与する。 副腎皮質ステロイドは,即効性を期待することができないが,遷延性,遅発性の反応を抑制する効果があるものとされている。抗ヒスタミン薬についても,即効性は乏しいが,症状の遷延化防止を目的として投与されることがある。 エ心肺停止に対する処置心肺停止があれば,絶え間ない心臓マッサージと換気を徹底する。 造影剤(甲B4ないし6,8ないし10,24ないし27,乙B3ないし7,調査嘱託の結果)(1)イオパミロンアイオパミロンは,非イオン性低浸透圧ヨード造影剤であり,バイアル製剤()「」,「」,ガラス瓶型製剤であるイオパミロン150イオパミロン300「イオパミロン370」とシリンジ製剤(注射器型製剤)である「イオパミロン300シリンジ「イオパミロン370シリンジ」がある(製品名に」,付された数字はヨード含有量(mg/mL)に対応している。 。)イオパミロンの効能・効果及び用法・用量は,別紙I 「イオパミロン300シリンジ「イオパミロン370シリンジ」がある(製品名に」,付された数字はヨード含有量(mg/mL)に対応している。 。)イオパミロンの効能・効果及び用法・用量は,別紙Iopamironのとおりである。 イ平成14年1月当時のイオパミロン(バイアル製剤)の添付文書は,別紙添付文書(甲B第4号証。以下「本件添付文書」という)のとおりである。 (なお,本件添付文書は同月に改定され,その改訂版が同年2月以降生産分の添付文書(甲B第6号証)として使用されている。 。) (2)非イオン性低浸透圧ヨード造影剤は,イオン性高浸透圧造影剤と比較して副作用の発現率が有意に低く,近年の日常診療におけるCTや血管撮影等の画像診断において不可欠な薬剤となっている。 (3)副作用ア造影剤の副作用は軽症から重篤なものまで多岐にわたるが,中でもアナフィラキシーショックは患者の生命に関わる。 造影剤によるアナフィラキシーショックのメカニズムは不明であり,発現の確実な予知・予防方法は確立されていない。 脱水は,急性腎不全,不整脈及び血圧低下等の重篤な副作用の誘因となるので,脱水を起こしやすい患者については,極端な飲水制限は避けるべきとされている。 アレルギー歴がなく,過去の造影剤使用時に副作用がなかったとしても,今回の造影検査時に副作用が起こらないということにはならない。 そこで,アナフィラキシーショック等の重篤な副作用の発現に備えて,緊急事態に迅速で組織的な対応ができる態勢の構築が必要となる。例えば,救急処置に必要な機器及び薬品の整備,迅速な一次救命処置の開始,救急医,循環器疾患専門医等の二次的救命処置治療チームへの連絡態勢の構築が挙げられる。通常,放射線科医師は,アナフィラキシーショックのような重篤な副作用が発現するような事 迅速な一次救命処置の開始,救急医,循環器疾患専門医等の二次的救命処置治療チームへの連絡態勢の構築が挙げられる。通常,放射線科医師は,アナフィラキシーショックのような重篤な副作用が発現するような事態に直面することが少なく,気道確保や心拍停止に対する処置,輸液管理等に熟練している者が少ないため,二次的救命処置治療チームによる速やかな対応が必要かつ重要となる。 イ統計・調査造影剤(イオパミロンを含む)の副作用について,昭和61年9月から。 昭和63年6月までの間に日本全国の大学病院の放射線科を中心とした198施設35万2817例について実施された大規模調査(以下「本件造影剤副作用大規模調査」という)の結果は,別紙大規模調査結果のとおりであ。 る。 造影剤の副作用について350例を対象にして調査したところ,アレルギーの有無によっては副作用の発現率に有意差を認めなかったとする報告(乙B第7号証)がある。 (4)造影CT頸部のCT検査において,リンパ節と血管を明瞭に区別するためには造影剤の投与が必要とされる。 造影CTの実施に当たって重要なことは,目的とする臓器,組織,病変の造影剤濃度が最も適切なタイミングで撮像をすることである。造影剤の総量,濃度,注入速度,注入タイミング等の造影剤の投与方法が造影能に影響する。 肺水腫(甲B8,21,22)(1)病態肺水腫とは,肺の血管外領域に多量の水分が貯留した病的状態をいう。 健常者において肺毛細血管から周囲の間質組織に漏出した漿液性液体は,間質リンパ流を介して最終的には体静脈系に入るため,正常では過剰な血管外水分は残留しない。しかし,この均衡が破れると肺の間質水分量が増加して間質性肺水腫をきたし,さらに進行すると肺胞腔内にも漏出するようになって肺胞性肺水腫となる。 気管支周囲の浮腫,更 は過剰な血管外水分は残留しない。しかし,この均衡が破れると肺の間質水分量が増加して間質性肺水腫をきたし,さらに進行すると肺胞腔内にも漏出するようになって肺胞性肺水腫となる。 気管支周囲の浮腫,更に進行すると気道が水腫液で閉鎖されるため,気道の通過障害が生じ,換気血流比の不均衡等とともに肺活量が減少し,肺間質の浮腫により肺コンプライアンスも低下する。さらに,肺胞表面活性物質の流出は肺胞の虚脱を促進し,無気肺の形成を助長するとともに,肺の機械的性質に大きな影響を及ぼす。 (2)成因ア肺水腫は成因により,血行動態性肺水腫と透過性亢進性肺水腫の2つに大別される。 血行動態性肺水腫の代表的なものとしては,僧帽弁疾患や各種の器質的あるいは機能的心疾患に基づく左室不全によるもので,心原性肺水腫とも呼ばれる。 他方,透過性亢進性肺水腫は,敗血症,ショック及び外傷等に伴って発症する急性呼吸促迫症候群(ARDS)に代表されるタイプの肺水腫(非心原性肺水腫)で,一般的に心不全は伴わず,気道内浮腫液は毛細血管壁透過性亢進を反映して高濃度の蛋白を含み血漿の70%以上となる。水腫液の肺胞腔内貯留から,肺胞表面へ硝子膜が形成され,肺線維症へと進展することもあり,発生頻度としてはそれほどでもないが,致死率は高く極めて難治の疾患といえる。 イヨード造影剤投与後に肺水腫が現れることがある。造影剤投与後の肺水腫は稀な副作用であり,水溶性ヨード造影剤(イオン性)による肺水腫の発現率は0.001~0.08%との報告がある。 発現機序については,主として造影剤の化学毒性による肺毛細血管内皮損傷,補体活性化を介した反応,アレルギー反応に伴う上気道閉塞等が引き金となり,肺毛細血管の透過性亢進が起こるためではないかと考えられている(非心原性肺水腫。 )(3)臨床所 よる肺毛細血管内皮損傷,補体活性化を介した反応,アレルギー反応に伴う上気道閉塞等が引き金となり,肺毛細血管の透過性亢進が起こるためではないかと考えられている(非心原性肺水腫。 )(3)臨床所見自覚症状としては,呼吸困難,喘鳴,咳嗽,胸部圧迫感等のほか,心原性肺水腫などでは血性の泡沫痰を喀出することもある。呼吸困難は,夜間に突発するいわゆる心臓性喘息の型をとることがある。また,他覚所見としては,努力性呼吸,頻呼吸,頻脈が見られ,起座位をとり,頸静脈は怒張し,皮膚は蒼白で冷たくチアノーゼを伴う。胸部聴診では,軽症であれば肺底部に捻髪音が聴かれるだけであるが,重症になると全肺野で湿性ラ音や喘鳴等も聴かれることが多い。 (4)ARDSの治療 アARDSの患者は,様々な治療によっても50%以上が死亡するとの報告がある。死亡の原因は,呼吸不全の進行自体より,むしろ多臓器不全,敗血症,集中的治療の合併症によるものが多いとされる。 ,,(,,ARDSの治療の目標は原因疾患を治療し支持療法人工呼吸輸液栄養等)を行い,肺炎,肺の圧損傷,凝固異常等の合併症を防止することである。 イ支持療法(ア)人工呼吸マスクで高濃度の酸素の投与を行っても,動脈血酸素分圧(Pao )が6 0~70Torrを維持できない場合,気管内挿管し,人工呼吸を開始し,通常,呼吸終末陽圧(PEEP)を加える。 (イ)輸液肺の毛細血管圧が少しでも増加すると,ARDSの患者では肺水腫が増強し,致命的になることがあるので,輸液は重要臓器への血流を維持するのに必要な量に留める。 利尿薬の投与によって酸素化が改善される場合も多い。 心拍出量の維持は,組織への酸素の運搬に必要である。ただし,薬物によって心拍出量を積極的に正常にする必要はない。 (ウ)栄養 に必要な量に留める。 利尿薬の投与によって酸素化が改善される場合も多い。 心拍出量の維持は,組織への酸素の運搬に必要である。ただし,薬物によって心拍出量を積極的に正常にする必要はない。 (ウ)栄養低栄養を避けるために,栄養補給を行う。経口摂取ができない場合,経管栄養,中心静脈栄養の2つの方法がある。 薬剤(甲B13)(1)エピネフリン(製品名:ボスミン)アドレナリンであるボスミンは,副腎髄質ホルモン,強心作用,血管の末梢血管抵抗を増加させることによる血圧上昇,気管支筋弛緩作用がある。 重大な副作用として,肺水腫,呼吸困難及び心停止がある。 (2)塩酸エフェドリン(製品名:ヱフェドリン「ナガヰ)」ヱフェドリン「ナガヰ(以下「エフェドリン」という)は,気管支拡張」。 作用,鼻粘膜血管収縮作用,血圧上昇作用がある。 (3)コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム(製品名:ソル・コーテフ)ソル・コーテフは,副腎皮質ステロイドであり,250mg,500mg,1000mgのものは急性循環不全に,100mg,300mgのものは急性副腎機能不全,エリテマトーデス,中毒疹,びまん性間質性肺炎等に効果がある。 (4)炭酸水素ナトリウム(製品名:メイロン)メイロンは,補正用製剤であり,アシドーシス,薬物中毒の際の排泄促進等に効果がある。 (5)塩酸ドパミン(製品名:イノバン)イノバンは,急性循環不全の改善,心収縮力増強作用,腎血流量増加作用,心拍出量の増加による血圧上昇作用がある。 (6)硫酸アトロピン(製品名:硫酸アトロピン),,,硫酸アトロピンはベラドンナルアルカロイドであり抗コリン作用を有し迷走神経性除脈,迷走神経性房室伝導障害,その他の除脈及び房室伝導障害等に効果がある。 (7)塩酸リドカイン(製品名:キシロカイン)塩酸 トロピンはベラドンナルアルカロイドであり抗コリン作用を有し迷走神経性除脈,迷走神経性房室伝導障害,その他の除脈及び房室伝導障害等に効果がある。 (7)塩酸リドカイン(製品名:キシロカイン)塩酸リドカインは,クラスⅠb群であり,期外収縮,発作性頻拍,急性心筋梗塞時及び手術に伴う心室性不整脈の予防に効果がある。 別紙医学的知見別紙Iopamiron別紙添付文書別紙大規模調査別紙診療経過一覧表・事故経過一覧表

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