- 1 -令和4年(行コ)第164号固定資産税及び都市計画税賦課決定処分取消請求控訴事件令和5年6月29日大阪高等裁判所第6民事部判決 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 大阪市長が令和2年4月1日付けで控訴人に対してした下記各土地に係る令和2年度の固定資産税及び都市計画税の賦課決定のうち、年税額合計3億13 62万9600円を超える部分を取り消す。 記⑴ 大阪市中央区久太郎町3丁目18番宅地 223.04㎡⑵ 同所 19番1 宅地 17.38㎡⑶ 大阪市中央区久太郎町4丁目68番2 宅地 561.45㎡ ⑷ 同所 68番3 宅地7380.45㎡⑸ 同所68番5 寺院境内地 2589㎡ 3 控訴人のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は、第一審及び第二審を通じてこれを4分し、その1を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中後記2の取消請求を棄却した部分を取り消す。 2 主文第2項の賦課決定のうち年税額合計3億1254万9200円を超える部分を取り消す。 第2 事案の概要 1 控訴に至る経緯本件は、固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)の年 - 2 -税額を3億1847万4000円とする主文第2項の賦課決定(以下「本件賦課決定」という。)の適否が争われた取消訴訟であり、控訴人は、課税がされた土地の一部が地方税法348条2項3号所定の非課税資産に該当すると主張し、本件賦課決定のうち年税額1723万7600円の固定資産税等を賦課す 。)の適否が争われた取消訴訟であり、控訴人は、課税がされた土地の一部が地方税法348条2項3号所定の非課税資産に該当すると主張し、本件賦課決定のうち年税額1723万7600円の固定資産税等を賦課する部分(本件賦課決定のうち年税額3億0123万6400円を超える部分) の取消しを求めた。 原審が本件請求を全部棄却する旨の判決を言い渡したところ、控訴人は、原判決の一部を不服として本件控訴を提起し、本件賦課決定のうち年税額592万4800円の固定資産税等を賦課する部分(本件賦課決定のうち年税額3億1254万9200円を超える部分)の取消しを求めた。 2 関係法令の定め 地方税法348条2項柱書きは、「固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合においては、当該固定資産の所有者に課することができる。」と定め、同項3号は、「宗教法人が専らそ の本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地」を非課税固定資産としている(以下、同号所定の非課税資産を「宗教施設」という。)。 地方税法702条の2第2項は、同法348条2項により「固定資産税を課することができない土地又は家屋に対しては、都市計画税を課することが できない。」と定めている。 宗教法人法3条は、「この法律において…「境内地」とは、第2号から第7号までに掲げるような宗教法人の同条に規定する目的のために必要な当該宗教法人に固有の土地をいう。」と定め、同条3号は「参道として用いられる土地」を境内地に含めている。 3 前提事実 - 3 -以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲の書証(枝番全て の土地をいう。」と定め、同条3号は「参道として用いられる土地」を境内地に含めている。 3 前提事実 - 3 -以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲の書証(枝番全てを示す場合には元番だけを掲記する。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 控訴人は、真宗本廟を本山とし、宗祖親鸞聖人の立教開宗の本旨に基づいて、教義を宣布し、儀式行事を行い、僧侶及び門徒を教化育成し、社会の教化を図ることを目的とする宗教法人であり(甲1)、令和2年1月1日時点 において、主文第2項掲記の5筆の土地(以下「本件5筆」といい、そのうち同掲記⑸の土地を「68番5土地」という。)を所有していた。 控訴人は、68番5土地の西側の大阪市中央区久太郎町4丁目68番1及び同所67番の各土地(以下「西側隣地」という。)も所有しているところ、68番5土地と西側隣地の位置関係は、概ね、別紙1上段の略図のとおりで ある(甲2、3、23)。 西側隣地は、本堂(古くからの呼び名に従い、以下「南御堂」という。)や鐘楼堂等の宗教法人法3条1号所定の「境内建物」に該当する建物の敷地となっており、同法3条2号(境内建物の敷地)に該当する宗教施設として固定資産税等が課税されていない。 68番5土地の東側は、大阪都心の主要街路である御堂筋(幅広い歩道を有する。)である(甲10、20)。 控訴人は、平成28年7月4日、積和不動産関西株式会社(現商号は「積水ハウス不動産関西株式会社」である。以下「訴外会社」という。)との間で、訴外会社を賃借人とし、堅固な建物の所有を目的とし、期間を平成29 年10月1日から60年間とする68番5土地の定期借地契約(以下「本件借地契約」という。)を締結した(甲8)。本件借地 間で、訴外会社を賃借人とし、堅固な建物の所有を目的とし、期間を平成29 年10月1日から60年間とする68番5土地の定期借地契約(以下「本件借地契約」という。)を締結した(甲8)。本件借地契約で合意された賃料は、平成29年10月1日からの24か月(地上建物の建築に要する期間)は月額1292万6100円、令和元年10月1日以降は月額1723万4800円である。 訴外会社は、平成31年2月21日、68番5土地に建築予定の下記建物 - 4 -(以下「本件建物」という。)の建築確認を受け、令和元年9月30日、本件建物を新築した(乙4。以下において「容積率面積」とは、建築基準法の容積率の計算の基礎となる床面積をいう。)。 記敷地面積 2503.42㎡(容積率1000%) 構造鉄骨造・一部鉄筋コンクリート造階数地下1階・地上17階延べ面積 2万2314.93㎡(容積率面積2万0620.45㎡)容積率 823.70%最高の高さ 72.97m(塔屋を除く) 本件建物の形状(東側立面)は、概ね、別紙1中段の略図のとおりであり、1階から3階までの中央部は、西側隣地に通り抜けができるように、幅員21.76m、高さ約13mの空洞となっている(以下、68番5土地のうち、上記の通り抜けができる部分を「本件対象地」という。)。本件対象地の位置及び形状は、概ね、別紙1の下段の略図に太実線で示したとおりである。 ⑹ 本件建物は賃貸用の商業施設であり、1階から3階までと4階の一部は店舗や事務所として建築され、本件建物の4階の一部と5階から17階まではホテルとして建築されている(甲20) ある。 ⑹ 本件建物は賃貸用の商業施設であり、1階から3階までと4階の一部は店舗や事務所として建築され、本件建物の4階の一部と5階から17階まではホテルとして建築されている(甲20)。 控訴人も、本件建物の1階から4階までの一部(本件対象地の北側に位置する区画)を訴外会社から賃借している(甲9)。 ⑺ 上記⑸の空洞は御堂筋から南御堂全体を見渡すことができる大きさに造られている。そして、本件対象地の地表面と、これに続く本件対象地と同幅員の南御堂に至る土地部分(西側隣地の中央部)には、境目なしに、同じ色調(淡い色)と形状(長方形)の敷石が敷き詰められ、本件対象地から南御堂に続く広々とした参道になっている(甲10の写真①。以下、本件対象地の 地表面と上記⑸の空洞の南北壁面及び天井によって形成された空間を「本件 - 5 -参道空間」という。)。 本件参道空間の南北壁面には本件建物への出入口がないため、本件参道空間は、南御堂に参拝するための参道としてしか利用することができない。また、本件参道空間は、南御堂に参拝するための唯一の参道となっている。 ⑻ 本件対象地には、その上に本件建物の4階から17階までが存在する部分 と本件建物が存在しない部分がある(以下、それぞれ「建物存在区画」「建物不存在区画」という。)。建物不存在区画の位置及び形状は、概ね、別紙1下段の略図に斜線で示したとおりである。それら土地部分の面積は次のとおりである。 ア本件対象地 587.10㎡ イ建物存在区画 467.87㎡ウ建物不存在区画 119.23㎡ 本件賦課決定処分行政庁は、令和2年4月1日、控訴人に対し、本件5筆の令和2年度の固定資産税等の イ建物存在区画 467.87㎡ウ建物不存在区画 119.23㎡ 本件賦課決定処分行政庁は、令和2年4月1日、控訴人に対し、本件5筆の令和2年度の固定資産税等の年税額を合計3億1847万4000円とする旨の本件賦 課決定をした。そのうち、68番5土地に係る令和2年度の固定資産税の計算額は6260万0008円、同年度の都市計画税の計算額は1341万4287円(合計7601万4295円)である(甲12)。 ⑽ 控訴人は、令和2年7月1日、大阪市長に対し、本件対象地は参道であって宗教施設に該当するため非課税とすべきである旨主張し、本件賦課決定に ついて審査請求をした。 大阪市長が同年12月7日に上記審査請求を棄却する旨の裁決をし(甲13)、控訴人は、令和3年6月4日、本件賦課決定を不服として本件訴訟を提起した。 4 争点 本件の争点は、本件対象地の一部(本件参道空間)が宗教施設に該当するか - 6 -どうかである(控訴人は、原審とは異なり、当審では、本件対象地の所有権が及ぶ範囲全体が宗教施設に該当することに基づく請求をしていない。)。 5 争点に関する被控訴人の主張 本件借地契約では、本件対象地を含む68番5土地全体について借地権が設定されており、本件対象地の上部には商業施設である本件建物が存在して いる。そして、本件建物の建築確認申請では、本件対象地を含む68番5土地の全体が敷地として申請されていたのであり、容積率規制との関係で、本件対象地を含まなければ本件建物の建築確認がされることはなかった。 したがって、本件対象地が参道として使用されているとしても、本件対象地は、本件建物の建築及び存続ために不可欠な土地であって、商業施設の敷 まなければ本件建物の建築確認がされることはなかった。 したがって、本件対象地が参道として使用されているとしても、本件対象地は、本件建物の建築及び存続ために不可欠な土地であって、商業施設の敷 地でもあるから、地方税法348条2項にいう「宗教法人が専らその本来の用に供する…境内地」には該当せず、宗教施設として非課税とすることはできない。 また、地方税法348条2項ただし書きは、ある土地が宗教法人に賃貸され、当該宗教法人がこれを宗教施設として使用している場合には、当該土地 に担税力が備わることから、賃料を受領する土地所有者(本件では控訴人)に固定資産税を賦課するものとしている。したがって、たとえ本件対象地を参道として使用しているとしても、控訴人は、本件対象地に係る固定資産税を免れることはできない。 控訴人は、本件参道空間が本件借地契約の対象となっていないと主張する が、本件借地契約の各条項をみても、本件参道空間を本件借地契約から除外する旨の明示的な定めはないし、本件対象地を含む68番5土地の容積率全部を訴外会社に提供しなければ本件建物の建築ができない以上、68番5土地全体が本件借地契約の対象となったというほかない。 6 争点に関する控訴人の主張 前提事実のとおり、本件対象地の地表面と空洞の南北壁面及び天井によ - 7 -り、南御堂の宗教的機能・外観を損なわない外観の本件参道空間が形成されており、これが南御堂への唯一の参道となるため、本件参道空間は、控訴人の宗教目的のために不可欠な土地となっている。そして、本件参道空間は、南御堂に参拝するための参道としてしか使用することができない。 したがって、本件参道空間のさらに上空に本件建物が存在するとしても、 その 可欠な土地となっている。そして、本件参道空間は、南御堂に参拝するための参道としてしか使用することができない。 したがって、本件参道空間のさらに上空に本件建物が存在するとしても、 そのことにより本件参道空間が地方税法348条2項3号にいう「宗教法人が専らその本来の用に供する…境内地」としての実質は何ら損なわれておらず、本件参道空間は、西側隣地と連続した宗教施設に該当する。 土地の所有権はその地上と地下の双方に及ぶところ、本件借地契約では、68番5土地のうち本件参道空間が本件借地契約の対象から除外されており、 宗教法人である控訴人が本件参道空間を参道として排他的に使用している。 そのため、本件借地契約では、土地所有者である控訴人が本件参道空間を維持管理する責任を負うものとされており(本件借地契約11条4項)、本件借地契約の賃料も、本件参道空間が賃貸されていないことを前提として、68番5土地全体で月額1723万4800円として合意された(当審甲3 0)。 68番5土地に占める本件参道空間を面積で表現すれば、建物存在区画467.87㎡のうち17分の3(本件参道空間は3階建に相当)の82.57㎡に、建物不存在区画119.23㎡を加えた201.80㎡となる。 68番5土地全体に賦課された固定資産税等7601万4295円のうち 本件参道空間に相当する額は、次の計算により592万4800円となり、本件賦課決定のうち年税額3億1254万9200円を超える部分は、地方税法348条2項の適用を誤ってされた違法な課税処分である。 (計算式)7601万4295円×201.80(本件参道空間の面積)/2589㎡(土地全体の面積) 第1 当裁判所の判断 - 8 - 1 認定事実について な課税処分である。 (計算式)7601万4295円×201.80(本件参道空間の面積)/2589㎡(土地全体の面積) 第1 当裁判所の判断 - 8 - 1 認定事実について前提事実に加え、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 控訴人は、昭和36年に建立された南御堂とその敷地ともなっている広い境内地を所有していたところ、境内地のうち御堂筋に面した部分(本件建物 の存在する辺り)に建付面積を1919.01㎡、延面積を6447.97㎡とする会館(以下「旧御堂会館」という。)を建築し、これを所有していた(甲5、当審甲33)。旧御堂会館の1階半分程度が空洞になっており、御堂筋から南御堂が見えていた(甲5)。 旧御堂会館は、一部が非課税用途(宗教施設)に供されていたため、旧御 堂会館に対する固定資産税等は一部非課税とされており、その敷地も一部非課税用途に供されているとして、敷地の固定資産税等も、建物の非課税用途割合に応じて一部非課税とされていた。 平成22年に旧御堂会館の利用状況が変わって建物全体が事業の用に供され、非課税用途(宗教施設)に供される部分がなくなったため、旧御堂会館 全体に対し固定資産税等が課税されるようになった。しかし、旧御堂会館の1階の空洞部分の敷地960.45㎡は、課税用途(旧御堂会館利用者による通行路)と非課税用途(参道)の両方に供されていた。そこで、処分行政庁は、平成22年度から平成27年度まで、旧御堂会館の敷地のうち上記空洞部分の敷地の2分の1が非課税用途に供されていると認め、同敷地の一部 を非課税とする取扱いがされた。 旧御堂会館は、建物の老朽化に伴って平成27年12月31日をもって閉館となり、その敷地が 敷地の2分の1が非課税用途に供されていると認め、同敷地の一部 を非課税とする取扱いがされた。 旧御堂会館は、建物の老朽化に伴って平成27年12月31日をもって閉館となり、その敷地がもっぱら非課税用途(参道)に供されることになったため、その敷地の固定資産税等は非課税とされた。 控訴人は、旧御堂会館の敷地を新たな高層商業施設の敷地として賃貸する ことにし、高層商業施設を建築する事業者を選定することにした。 - 9 -控訴人は、事業者候補である複数の企業に対し、①御堂筋から本堂を望むことができる山門・参道を創出すること、②新しく建設する建物を、南御堂と調和する外観とすること、③南御堂の利用を妨げない建物の配置と運営上の配慮をすることなどを前提条件とする旨を説明していた(甲6)。訴外会社が控訴人に提出した事業計画案には、新たな高層商業施設を難波別院の山 門と位置づけて建設し、御堂筋を歩く人から南御堂が眺められるような形状とする旨が記載され、別紙1中段の略図に良く似た空洞のある建築物のイメージ図が示されていた(甲7)。 控訴人は、新たな高層商業施設を建築する事業者として訴外会社を選定し、平成28年7月4日には訴外会社との間で本件借地契約を締結したが、本件 借地契約では、次のとおりの合意がされている(甲8)。 ア 68番5土地のうち、別紙2の図面の斜線で明示した範囲(以下、単に「別紙2明示範囲」という。)は、控訴人が維持管理を行う(11条4項)。 イ訴外会社は、本件建物の利用については、控訴人の宗教的雰囲気と尊厳 とを損なうことがないように配慮しなければならない(20条1号)。 ウ控訴人の関係者及び南御堂への参拝者等(車両を含む)は、別紙2明示範囲を参道、通路及び年 は、控訴人の宗教的雰囲気と尊厳 とを損なうことがないように配慮しなければならない(20条1号)。 ウ控訴人の関係者及び南御堂への参拝者等(車両を含む)は、別紙2明示範囲を参道、通路及び年間行事の開催場所として無償利用できる(20条5号)。 エ控訴人は、自らの責任と負担において、別紙2明示範囲の中央部に門扉 を設置するものとし、設置された門扉の開閉、管理等を行う(20条6号)。 本件借地契約が締結された後の平成28年9月28日付け分筆により、高層商業施設の建築用地として68番5土地が形成され、平成29年中に旧御堂会館が取り壊され、平成30年1月1日時点で68番5土地全体が商業施 設の新築工事現場として整地された(甲3、4、当審甲32、乙5)。その - 10 -ため、68番5土地は、その全部が、平成30年度及び令和元年度の固定資産税等の課税対象になっていた。この課税処分に対し控訴人は異議を述べていない。 令和元年9月30日に新築された本件建物には、御堂筋から南御堂全体を眺めることができる大きな本件参道空間が造られており、その間口及びその 左右(南北)には山門を連想させる形状と色合いの壁面外装(別紙1中段の略図の濃い着色部分)が施されている(甲28の①、②、③及び⑥の写真)。 本件参道空間の地表面は、前提事実のとおり、西側隣地との境目がなくなるように、同じ色調(淡い色)と形状(長方形)の敷石が敷き詰められ、南御堂への広々とした参道の一部を形成している。 本件参道空間の左右(南北)壁面は、本件建物への出入口がないタイル貼りとガラス貼りになっており、上部壁面(天井)は、寺院の天井を連想させる格子状の外装となっている(甲10の①の写真)。 上記のような地 の左右(南北)壁面は、本件建物への出入口がないタイル貼りとガラス貼りになっており、上部壁面(天井)は、寺院の天井を連想させる格子状の外装となっている(甲10の①の写真)。 上記のような地表面の敷石、間口の外装、左右及び上部各壁面の外装により、本件参道空間は、商業施設とは少し異質の重厚な空間となっている。 2 土地の用途の認定について 土地について地方税法348条2項の適用の可否を検討するには土地の用途が何であるかを認定する必要があるが、土地の所有権は地盤と地上空間を支配する権能であって、土地の用途は、その地上空間(又は地下地盤)がどのような用途に供されているかによって決まることになる。 地上空間に建物が存在する場合には、当該土地の用途は建物の用途によって決まることになる。 ⑵ 68番5土地の場合、土地所有権が及ぶ地上空間に、本件建物が存在する空間と存在しない空間があり、前者は課税用途(商業施設)に供され、後者は非課税用途(宗教施設)に供されているといえるから、68番5土地は、 複数の用途に供されている土地ということができる。 - 11 -⑶ 争点に関する被控訴人の主張は、本件対象地を含む68番5土地の全体を敷地として本件建物の建築確認申請がされていることから、68番5土地全部が商業施設の敷地となっているとし、68番5土地が複数の用途に供されていることを否定しているものと解される。 しかし、その主張は、土地所有権を平面的にしか把握しない考えに立脚し ているように見え、土地所有権が地上空間(及び地下地盤)の支配権であることと必ずしも整合しないと考えられる。 例えば、都会では、しばしば、鉄道会社が所有する高架軌道下の土地に商業施設が建築されているが、この場合、当該土地は、 が地上空間(及び地下地盤)の支配権であることと必ずしも整合しないと考えられる。 例えば、都会では、しばしば、鉄道会社が所有する高架軌道下の土地に商業施設が建築されているが、この場合、当該土地は、商業施設が定着しているからには100%商業施設の敷地であると認めるしかないということでは なく、高架軌道の敷地(固定資産税等の制限的課税対象地)としても、商業施設の敷地(固定資産税等の全面的全部課税対象地)としても使用されている土地、すなわち、複数の用途に供されている土地と認めることができるのであって、実際にも、複数の用途に供されている土地として固定資産税等の課税実務が行われていることは公知の事実である。 ⑷ したがって、68番5土地が複数の用途に使用に供されていることを否定しようとする被控訴人の主張は、採用することができない。 3 本件参道空間と本件借地契約の関係について⑴ 土地所有権の及ぶ範囲のうち、一定範囲の地下や一定範囲の地上に限定した範囲を目的として物権を設定したり、賃借権を設定することは法律上も許 されており、実際にも、鉄道会社が所有する高架軌道下の土地について、地盤面とその上部の高架軌道までの空間を目的として賃借権が設定される例は稀ではない。この場合、当該敷地は、立体的にみれば、土地所有権の及ぶ範囲のうち下部空間が建物存続のため、上部空間が高架軌道存続のため使用されていることになり、借地人が支払う賃料は当該下部空間の使用収益の対価 として授受されていることになる。 - 12 -⑵ 本件借地契約についてみると、本件対象地の上部に本件建物が存在すること、本件対象地を除いた68番5土地(2001.9㎡)の面積だけでは、容積率1000%の土地上に容積率面積が2万0620.45㎡の本件建物 契約についてみると、本件対象地の上部に本件建物が存在すること、本件対象地を除いた68番5土地(2001.9㎡)の面積だけでは、容積率1000%の土地上に容積率面積が2万0620.45㎡の本件建物を適法に建築することができないことに照らせば、本件対象地を含む68番5土地全体が、本件建物の敷地として本件借地契約により訴外会社に賃貸さ れていることは明らかである。ただし、これは、平面的にみた場合であって、立体的にみた場合には異なる。賃貸されているのは、68番土地の所有権が及ぶ範囲のうち、本件参道空間を除く部分だけであり、本件参道空間は賃貸されていないということができる。その理由は次の⑶以下に述べるとおりである。 ⑶ 前記1⑸に認定のとおり、本件借地契約では、控訴人が別紙2明示範囲の維持管理の責任を負うことが合意されているだけでなく、別紙2明示範囲を参道や宗教行事の開催場所として控訴人が無償利用することや、控訴人が別紙2明示範囲に門扉を設置すること、訴外会社は、控訴人の宗教的雰囲気と尊厳を損なうような本件建物の利用をしないよう配慮すべきことまでが合意 されている。そうすると、別紙2明示範囲とは、図面上は平面的に表示されているものの(甲8の19枚目)、本件対象地の地表面だけを意味するのではなく、本件参道空間を意味するものと解され、訴外会社は、例えば、別紙2明示範囲の上部天井や南北外壁(それらは訴外会社の所有に属する構造物である。)に広告物や看板を取り付けたり、別紙2明示範囲の地表面に物品 を置くなどして、何らかの形で別紙2明示範囲を使用すること自体が一切禁止されているものと解される。 ⑷ 借地人である訴外会社が本件参道空間の維持管理責任を負わず、かつ、一切の使用収益行為が禁止されていることからすれば、本件参 2明示範囲を使用すること自体が一切禁止されているものと解される。 ⑷ 借地人である訴外会社が本件参道空間の維持管理責任を負わず、かつ、一切の使用収益行為が禁止されていることからすれば、本件参道空間が本件借地契約の対象となっていると認めることは困難であり、本件参道空間は本件 賃貸借契約の対象物件から除外されていると認めるのが相当である。 - 13 -⑸ また、本件参道空間は、本件建物の中央部であり、御堂筋の幅広い歩道に面した路面部分を含んでおり、68番5土地の所有権が及ぶ範囲のうち、最も商業施設の空間としての利用価値が高い空間ということができる。しかも、本件参道空間は、その容積率面積が1403.61㎡(建物存在区画467.87㎡の3階分)もあり、大きな店舗あるいは多数の店舗の収容が可能な空 間である。そのような空間の使用収益ができないにもかかわらず、その使用収益の対価の支払が合意されていると考えることは困難である。本件参道空間についての賃料の支払は合意されていないとの趣旨を述べる控訴人と訴外会社間の令和5年1月19日付け覚書(当審甲31)は、裁判を有利に進めるため控訴審になって作成された内容虚偽の覚書ではなく、当然の前提とし て契約当事者が了解していた事項を明示的に確認する趣旨で作成されたものと考えられる。 したがって、本件借地契約の対価である月額1723万4800円は本件参道空間の使用収益の対価を含んでいないと認めるのが相当である。 ⑹ 被控訴人は、68番5土地全体が本件借地契約の対象となっていることを 理由として、仮に68番5土地の一部が非課税用途(宗教施設)に供されていても、控訴人が当該一部からも賃料を受領しているから、地方税法348条2項ただし書きが適用され、当該一部にも固定資産 を 理由として、仮に68番5土地の一部が非課税用途(宗教施設)に供されていても、控訴人が当該一部からも賃料を受領しているから、地方税法348条2項ただし書きが適用され、当該一部にも固定資産税等が賦課されることになる旨主張する。 しかし、この主張は、土地所有権を平面的にしか把握しない考えに立脚し ているように見えるだけでなく、本件借地契約書の合意内容とも矛盾するものであって、採用することができない。 4 68番5土地に賦課されるべき固定資産税等の額について⑴ 以上に説示のとおりであって、68番5土地の上には、課税用途に供されている空間(本件建物が存在する空間)と非課税用途に供されている空間 (宗教施設として使用されている本件参道空間)が混在しており、かつ、後 - 14 -者の空間について賃料は授受されていないということになる。 ⑵ したがって、68番5土地の全部に対し固定資産税等を賦課する本件賦課決定は、課税用途と非課税用途の複数の用途に供されている68番5土地のうち、非課税用途(宗教施設の維持)に供されている部分に対してまで固定資産税等を賦課することになるから、当該部分に賦課する限度で地方税法3 48条2項に反することになる。 ⑶ 68番5土地の状態は、土地上に課税用途と非課税用途に明確に区分された建物が存在する場合と非常に良く似た状態であるから、68番5土地のうち非課税用途(宗教施設)に供されている部分に賦課された固定資産税等の計算は、土地上に課税用途と非課税用途に明確に区分された建物が存在する 場合と同様に行うのが相当である。 具体的には、課税用途に供されている本件建物の容積率面積は2万0620.45㎡であり、非課税用途に供されている本件参道空間の容積率面積は1403.61 場合と同様に行うのが相当である。 具体的には、課税用途に供されている本件建物の容積率面積は2万0620.45㎡であり、非課税用途に供されている本件参道空間の容積率面積は1403.61㎡であるから、68番5土地の所有権の及ぶ範囲全体に賦課された固定資産税等7601万4295円のうち、484万4400円(≒ ¥76,014,295÷ [20,620.45㎡+1,403.61㎡] ×1,403.61㎡)が、非課税用途(宗教施設)に供されている部分に賦課された固定資産税等の額となる。 5 結論以上の次第で、控訴人の請求は、本件賦課決定のうち年税額合計3億1362万9600円を超える部分の取消しを求める限度で理由があるものとして認 容し、その余は失当として棄却すべきところ、これと異なる原判決は相当ではなく、本件控訴は一部理由がある。 よって、原判決を上記のとおりに変更することとし、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第6民事部 裁判長裁判官大島眞一 - 15 - 裁判官橋詰均 裁判官和田健
▼ クリックして全文を表示