平成12年(ネ)第5350号損害賠償等請求控訴事件平成13年2月15日口頭弁論終結。原審・東京地方裁判所平成10年(ワ)第7433号、平成12年(ワ)第5854号判決控訴人 A訴訟代理人弁護士諸永芳春、中嶋郁夫被控訴人ラクール薬品販売株式会社代表者代表取締役 B被控訴人東光薬品工業株式会社代表者代表取締役 B上記被控訴人ら2名訴訟代理人弁護士小川大作、井上文男被控訴人帝國製薬株式会社代表者代表取締役 C被控訴人興和株式会社代表者代表取締役 D被控訴人エスエス製薬株式会社代表者代表取締役 E被控訴人住友製薬株式会社代表者代表取締役 F被控訴人テイカ製薬株式会社代表者代表取締役 G上記被控訴人ら5名訴訟代理人弁護士井窪保彦、佐長功、大貫端久、深澤信夫 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴人の求めた裁判「1 原判決中甲事件に関する部分を次のとおり変更する。 2 被控訴人ラクール薬品販売株式会社及び同東光薬品工業株式会社は、控訴人に対し、連帯して100万円及びこれに対する平成10年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人帝國製薬株式会社及び同住友製薬株式会社は、控訴人に対し、連帯して100万円及びこれに対する平成10年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被控訴人興和株式会社及び同テイカ製薬株式会社は、控訴人に対し、連帯して100万円及びこれに対する平成10年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被控訴人エスエス製薬株式会社は、控訴人に対し、100万円及びこれに対する平成10年 、連帯して100万円及びこれに対する平成10年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被控訴人エスエス製薬株式会社は、控訴人に対し、100万円及びこれに対する平成10年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被控訴人ラクール薬品販売株式会社、同東光薬品工業株式会社、同帝國製薬株式会社、同住友製薬株式会社、同興和株式会社、同テイカ製薬株式会社及び同エスエス製薬株式会社は、控訴人に対し、連帯して500万円及びこれに対する平成10年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 被控訴人ラクール薬品販売株式会社、同東光薬品工業株式会社、同帝國製薬株式会社、同住友製薬株式会社、同興和株式会社、同テイカ製薬株式会社及び同エスエス製薬株式会社は、その費用をもって、株式会社朝日新聞社発行の朝日新聞東京本社版朝刊社会面広告欄に2段抜きをもって表題、控訴人及び上記被控訴人らの氏名を2倍活字、本文を1.5倍活字、住所を1倍活字の大きさで、原判決別紙一記載の謝罪広告を、各1回掲載せよ。」との判決。 第2 事案の概要 1 控訴人は、①被控訴人ラクール薬品販売株式会社に対しては、インドメタシンを配合したパップ剤の発明者である控訴人から特許を受ける権利を譲り受けることなく、また控訴人の承諾やこれに対する通知もないままに特許出願(冒認出願)をしたことが不法行為を構成するとして、②その余の被控訴人らに対しては、冒認出願の事実を知りながら、あるいはこれを容易に知り得たにもかかわらず、権利者ではない者から権利の譲渡を受けたことが不法行為を構成するとして、これにより、控訴人の特許を受ける権利が侵害され、損害を被ったと主張して、合計12億3778万8425円の損害賠償の支払及び新聞紙上への謝罪広告の掲載を の譲渡を受けたことが不法行為を構成するとして、これにより、控訴人の特許を受ける権利が侵害され、損害を被ったと主張して、合計12億3778万8425円の損害賠償の支払及び新聞紙上への謝罪広告の掲載を求めた(原審甲事件)。 原判決はこの請求を棄却し、控訴人は、当審において、原審で主張した損害額の一部を請求している。上記第1の2~5の請求が特許を受ける権利の侵害の損害賠償請求(原判決事実及び理由中の第二の二の4)に係り、上記第1の6の請求が名誉権侵害の損害賠償(原判決事実及び理由中の第二の二の5)に係るものである。 2 前提となる事実及び争点は、原判決事実及び理由中の第二の一及び二(乙事件に関する部分を除く。)に示されているとおりである。ただし、次のとおり改める。 (1) 第二の一の2(一)(2)(分割出願発明の説明の項)の「出願日昭和五三年一一月二日」(原判決13頁10行目)を「出願日昭和53年11月2日(分割出願日昭和62年8月29日)」に改める。 (2) 第二の一の2(二)(4)末尾(原判決18頁6行目)の「し、現在上告中である(甲一〇九)。」を、「して上告受理の申立て及び上告をしたが、上告受理の申立てに対しては、平成12年6月29日に東京高等裁判所において却下の決定が、上告に対しては、同年10月10日に最高裁判所において上告棄却の判決がそれぞれあり、審決取消しの判決は確定した(乙12、丙3、4)。」に改める。 (3) 原判決26頁4行目の項目番号「(一)」を「(二)」に改める。 3 控訴人は、控訴理由において、控訴人が本件特許出願(原出願発明の特許出願)に係る明細書(本件明細書)を作成したとした原判決の認定は誤りであり、したがって、控訴人が本件特許出願の手続をし、遅くとも本件特許出願の時点までに本件発明についての特許を受 (原出願発明の特許出願)に係る明細書(本件明細書)を作成したとした原判決の認定は誤りであり、したがって、控訴人が本件特許出願の手続をし、遅くとも本件特許出願の時点までに本件発明についての特許を受ける権利を被控訴人ラクール薬品販売株式会社に譲渡する旨黙示の意思表示をしたとした原判決の認定も誤りであると主張する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、控訴人は、遅くとも本件特許出願(原出願発明の特許出願)の時点(平成53年11月2日)までに、本件発明(原出願発明及び分割出願発明)についての特許を受ける権利を被控訴人ラクール薬品販売株式会社に譲渡する旨黙示の意思表示をしたものであり、本件特許出願は控訴人主張に係る冒認出願に当たるものではなく、したがって、控訴人の本訴請求は理由がないと判断するものであるが、その内容及び前提となる事実認定は、原判決事実及び理由中の第三の甲事件についての判断(42頁10行目~57頁8行目)において示されているとおりである。 控訴人は、控訴人が行ったパップ含有剤の実験内容と原出願発明の明細書の記載との間に相違する部分があることをもって、控訴人自ら本件明細書を作成したとした原判決の認定の誤りの根拠とする。すなわち、控訴人は、昭和53年10月20日発行の「薬理と治療」Vol6 No.10に掲載の「パップ剤の有効性と安全性についての研究(1)、(2)」の論文(甲19、33)に記載されている内容をもって、控訴人が行ったパップ含有剤の実験内容であると主張するのであるが、たとえ、控訴人のした実験内容と原出願発明の明細書との間に相違する部分があったとしても、公刊物に記載の実験後に更に実験が行われたこともあり得ることなどにかんがみれば、一般に特許出願において、それまでに公表した実験内容と同じ技術的事項がそのまま記載されるものと る部分があったとしても、公刊物に記載の実験後に更に実験が行われたこともあり得ることなどにかんがみれば、一般に特許出願において、それまでに公表した実験内容と同じ技術的事項がそのまま記載されるものと認めるべき必然性はない。また、特許出願人は、事前に公刊された刊行物との関係で、新規性喪失事由について留意する必要があり、本件においてもその関係について検討した可能性もある。反面からみると、控訴人は、上記記載の相違があることから、被控訴人ラクール薬品販売株式会社の代表取締役であるBが本件明細書を記載したと主張するのであるが、同人が本件明細書記載の技術的事項を実験結果のないままにどのように取得して、本件明細書の記載に至ったのかを認めるべき証拠もないのである。 したがって、控訴人主張の点をもってしても、本件明細書は控訴人によって作成されたとした原判決の認定を左右することはできず、他に、この認定を左右すべき事実関係を認めるべき証拠はない。原判決は、前記引用した甲事件についての判断において、控訴人と被控訴人ラクール薬品販売株式会社及び同東光薬品工業株式会社との関係並びに本件発明及び本件特許出願の経緯などの事実経緯を詳細に認定し、控訴人の主張についても検討を加えた上、控訴人は、遅くとも原出願発明の特許出願の時点までに、原出願発明についての特許を受ける権利を被控訴人ラクール薬品販売株式会社に譲渡する旨黙示の意思表示をした、との判断に至っているところ、これを左右すべき事実関係を認めるべき証拠はない。 第4 結論よって、本件控訴は理由がない。 東京高等裁判所第18民事部裁判長裁判官永井紀昭裁判官塩月秀平裁判官橋本英史 民事部 裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 橋本英史
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