令和6(わ)195 道路交通法違反、危険運転致死傷被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年11月11日 静岡地方裁判所 浜松支部
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判決文本文9,045 文字)

令和6年(わ)第195号判決 主文 被告人を懲役5年に処する。 理由 (犯罪事実)被告人は第1 静岡県公安委員会から運転免許証の交付を受けていたものであるが、令和5年7月6日、浜松市所在の静岡県警察本部交通部運転免許課西部運転免許センターにおいて、同運転免許証の有効期間の更新を受けるに当たり、真実は、過去5年以 内にてんかんの発作により意識を失ったことがあり、てんかんを理由として医師から車の運転を控えるよう助言を受けていたにもかかわらず、これを秘し、同センター職員を介して静岡県公安委員会から交付を受けた質問票の項目1「過去5年以内において、病気(病気の治療に伴う症状を含みます。)を原因として、又は原因は明らかでないが、意識を失ったことがある。」、項目2「過去5年以内において、 病気を原因として、身体の全部又は一部が、一時的に思い通りに動かせなくなったことがある。」及び項目5「病気を理由として、医師から、運転免許の取得又は運転を控えるよう助言を受けている。」との各質問について、いずれも「いいえ」の欄に該当する旨印をつけて偽りの事実を記載した上、同質問票を同センター職員を介して同公安委員会に提出し、もって運転免許証の更新の質問票に虚偽の記載をし て提出し第2 同月10日午前10時47分頃、同市所在の駐車場から普通乗用自動車の運転を開始するに当たり、てんかんの影響により、その走行中に発作の影響によって意識障害に陥るおそれがある状態で、同車の運転を開始し、もって自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中 に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、同日 午前10 もって自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中 に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、同日 午前10時59分頃、同市所在の道路を時速約57キロメートルの速度で進行中、てんかんの発作により意識喪失の状態に陥り、その頃、同市所在の道路上に向けて自車を時速約90キロメートルに加速させ、進路前方で赤色信号に従い停止していたA(当時54歳)運転の普通乗用自動車後部に自車前部を衝突させ、その衝撃により、前記A運転車両を前方に押し出し、前方で赤色信号に従い停止していたB (当時42歳)運転の中型貨物自動車後部に前記A運転車両の前部を衝突させ、よって、Aに頭蓋底骨折の傷害を、Bに全治まで約3日間を要する外傷性頸部症候群、前胸部打撲の傷害をそれぞれ負わせ、同日午後1時58分頃、同市所在の甲病院において、前記Aを前記頭蓋底骨折に基づく出血性ショックにより死亡させたものである。 (事実認定の補足説明)第1 本件の争点及び当裁判所の判断の概要弁護人は、犯罪事実第2(危険運転致死傷被告事件)記載の事実に関し、被告人は、運転開始時点で既にてんかん発作が生じており、危険運転の認識がないため故意を欠き、あるいは行動制御能力がないため責任能力を欠き、被告人は無罪である と主張する。すなわち、被告人は、本件当日、職場でてんかんの前兆が生じ、職場の駐車場に駐車中の自動車内で休息をとろうとし、自動車に向かう途中からの記憶がなく、次に記憶があるのは衝突事故後搬送された病院内であったので、記憶がない期間はてんかんの発作を起こしており、てんかん発作下の自動症として運転を開始し、運転行為をした旨主張する。 他方、検察官は、運転開始時や事故直前の異常 された病院内であったので、記憶がない期間はてんかんの発作を起こしており、てんかん発作下の自動症として運転を開始し、運転行為をした旨主張する。 他方、検察官は、運転開始時や事故直前の異常な運転が始まる前までの段階では、被告人にはてんかん発作は生じていないから、運転を開始したのは自らの意思によるものであって、危険運転の認識はあり、故意及び完全責任能力があった旨主張する。 当裁判所は、後記の理由で、被告人に運転開始時点でてんかん発作は生じておら ず、運転行為の危険性を認識しながら自らの意思で運転を開始したのであるから、 故意及び責任能力に欠けるところはないと判断した。 第2 事実関係等証拠によって認めた事実は、おおむね次のとおりである(主な証拠はかっこ内に記載した。) 1 被告人は、平成5年9月頃、てんかんと診断され、度々意識喪失を伴う発作 を起こしていた。犯罪事実第2記載の事故(以下「本件事故」という。)の過去5年以内では、令和5年4月頃に意識を失ってけいれんする発作を起こすなどしていた(甲28、48、被告人供述)。 2 被告人は、医師から運転免許を取ってほしくないと助言を受けていたものの、平成10年5月11日、自動車の運転免許(以下、単に「運転免許」という。)を 取得した。その後も被告人は、複数回医師から自動車の運転をしないよう助言を受けていたものの、通勤や買い物のため、日常的に自動車を運転していた。(甲23、24、28、46、乙1、被告人供述) 3 被告人の処方薬とその服用状況等被告人は、平成30年1月以降、デパケンR錠を1回2錠、アレビアチン錠を1 回1錠(いずれの薬もてんかんの発作を抑える薬である。)、朝夕食後の1日2回処方されていたが、遅くとも同年7月20日以降、 人は、平成30年1月以降、デパケンR錠を1回2錠、アレビアチン錠を1 回1錠(いずれの薬もてんかんの発作を抑える薬である。)、朝夕食後の1日2回処方されていたが、遅くとも同年7月20日以降、被告人は1日1回しか服薬していなかった(甲23、24、28、48、被告人供述)。 4 令和5年7月10日(本件事故当日)の状況⑴ 被告人は、令和5年7月10日(以下、本項では年月日を省略する。)午前 6時30分頃、普通乗用自動車(以下「被告人車両」という。)を自ら運転して自宅を出発して職場に行き、職場の駐車場に被告人車両を駐車した。その後、被告人は職場で業務に従事したが、業務開始後しばらくすると被告人のてんかん発作の前兆である「目の前がぐるぐるする感じ」を覚えた。 被告人は、前記前兆を感じたため、上司に対し、体調が悪いので早退する旨申し 立てた。 (以上について、甲17、51、被告人供述)⑵ 被告人は、職場建物から出て、駐車場に駐車してあった被告人車両に乗車し、午前10時47分頃、運転を開始した。この時、被告人の歩行状況は正常であって、ふらついたり、転んだりする様子はなく、職場建物から出た後迷うことなく被告人車両に向かい、運転席ドアを開け、運転席に座り、すぐに被告人車両を発進させた。 被告人車両は、発進後、駐車場内に駐車された他の車両や建物に衝突することなく、敷地内の歩行者を避け、公道に出た。(甲17、19)⑶ 被告人車両は、午前10時58分頃までの間、緩やかに曲がった道路においても路外や対向車線に進出することなく道路の形状に沿って進行する、信号表示に従って停止及び発進する、前方車両に続いて停止する、一時停止する、交差点右折 時に交差点内で対向車を待つなどし、異常なく走行した。 被告人車 ることなく道路の形状に沿って進行する、信号表示に従って停止及び発進する、前方車両に続いて停止する、一時停止する、交差点右折 時に交差点内で対向車を待つなどし、異常なく走行した。 被告人車両は、午前10時59分4秒頃、第2通行帯を走行しながら左に寄り、午前10時59分14秒頃、急ハンドルを切ったかのように突然走行方向を右に変え、右側面が中央分離帯に衝突した(以下、この頃から始まった異常な運転を、「本件異常な運転」という。)。さらに、被告人車両は、ふらつきながらそのまま進 行すると、午前10時59分24秒頃、先ほどと同様に再度中央分離帯に衝突し、加速を開始した。遅くともこの頃、被告人は、運転席で右手を上にあげてけいれんしていた。被告人車両は、時速90キロメートルまで加速し、午前10時59分34秒頃、Aが運転し、信号待ちのため停車していた前方の普通乗用自動車(以下「A車両」という。)に追突した。A車両は前記追突の衝撃で前方に押し出され、 更に前方に停車していたBの運転する中型貨物自動車(以下「B車両」という。)に追突し、被告人車両とB車両に挟まれ、原形をとどめないほどに押しつぶされた(本件事故)。被告人車両は、前部バンパーが脱落する等して前部が大破し、B車両は後部バンパーが凹損する等して後部が破損した。 (以上について、甲6ないし8、10、13、15ないし18、20、53) ⑷ 本件事故直後、被告人は、運転席でシートベルトを着用した状態で、ヘッド レストに頭を預け、大量に発汗し、眼球が上方に向き、両手をだらりと下げてけいれんを起こしており、声掛けなどには全く応じなかった(甲6、20、21、43)。 ⑸ Aは、午後1時58分頃、頭蓋底骨折による出血性ショックにより死亡し、Bは、全治3日間の外傷性頸部 下げてけいれんを起こしており、声掛けなどには全く応じなかった(甲6、20、21、43)。 ⑸ Aは、午後1時58分頃、頭蓋底骨折による出血性ショックにより死亡し、Bは、全治3日間の外傷性頸部症候群等の傷害を負った(甲6、9、44、54)。 第3 被告人は自らの意思で被告人車両の運転を開始したことについて 1 被告人の本件異常な運転以前の行動からすれば、本件異常な運転が始まるまではてんかん発作による意識喪失が生じていたとは考え難いこと被告人は、職場から早退するため、職場建物から出て被告人車両に向かい、その後、特段ふらついたり、無意味な行動をとったりすることもなく、被告人車両に乗 り、すぐに運転を開始するなど、合目的的かつ速やかに行動していた(前記認定事実4⑵)。また、被告人は、発進から本件事故まで約12分間もの間、被告人車両を運転していたところ、歩行者や周囲の車両の状況を把握し、それに応じた運転操作をして交通法規を遵守した適切な運転を行っており、特段不審な点は見られなかった(前記認定事実4⑶)。 前記の被告人の行動からすれば、運転開始時において、てんかん発作による意識喪失が生じていたとは考え難い。 2 医学的にも被告人について運転開始時点でてんかん発作による意識喪失は生じていなかったとの意見が述べられていること⑴ C医師及びD医師の証言要旨 てんかんとは、脳の神経細胞が過剰ないし異常な興奮を呈して、様々な症状を引き起こす病気である。てんかんの発作により意識を喪失することがあり(意識減損発作)、この時、口をぺちゃぺちゃするような動きをしたり、手がもぞもぞとしたりするなど、目的なく身体が勝手に動く症状がでることがあり、これを自動症という。 被告人が被告人車両に乗車し、本件事故が この時、口をぺちゃぺちゃするような動きをしたり、手がもぞもぞとしたりするなど、目的なく身体が勝手に動く症状がでることがあり、これを自動症という。 被告人が被告人車両に乗車し、本件事故が発生する前までの映像を確認したが、 被告人は、被告人車両に乗るまで適切な行動をとっており、さらに、本件異常な運転が始まる前までは周囲の状況を把握し、交通法規を遵守した適切な運転をしており、このように合目的的であって複雑な行動は意識減損発作下では不可能であるから、この時点で被告人に意識減損発作が生じていたとは考えられない。てんかん発作が生じた時期としては、本件異常な運転の態様からすれば、被告人車両が第2通 行帯を走行しながら左に寄った頃と考えられる。被告人が本件異常な運転より前の出来事を忘れているのは、事故のショックによる心理的要因や頭を強くぶつけて脳震盪を起こしいわゆる逆行性健忘が生じたなど、てんかんによる発作以外の要因によるものではないかと考えられる。 他方、被告人は、意識がないまま長距離を歩いたり仕事上の指示を出したりした というエピソードを語るが、目的なく歩くことや適切でないことを喋るといった程度の行動であれば、てんかんの発作ないし発作後のもうろう状態によるものと説明することもできる。しかし、交通法規や信号表示に従って自動車を運転するという複雑な行為を意識減損発作下や発作後のもうろう状態で行うことはできないし、自動症により説明することも不可能である。 ⑵ C医師及びD医師の各証言に関する検討等C医師及びD医師は、いずれもてんかんについて専門的知見を有する医師であること、両医師は被告人が被告人車両の運転を開始し、本件事故が発生するまでの映像を見た上で医学的な知見を述べていること、両医師が同趣旨の供述をし は、いずれもてんかんについて専門的知見を有する医師であること、両医師は被告人が被告人車両の運転を開始し、本件事故が発生するまでの映像を見た上で医学的な知見を述べていること、両医師が同趣旨の供述をしていることからすれば、前記⑴の各証言は信用できる。 そうすると、両医師の公判供述からすれば、てんかん発作による意識喪失下では、同発作下での自動症の可能性を勘案しても、被告人が本件異常な運転を開始するまで取っていたような周囲の状況を把握した合目的的な行動、特に周囲の状況に応じ交通法規を遵守しながら、ハンドル、アクセル、ブレーキ等を適切に操作するという複雑な行動は不可能であるから、医学的な観点からみても被告人に運転開始時点 でてんかん発作による意識喪失があったものとは考えられない。 ⑶ 弁護人の指摘について両医師は、自動車の運転は徒歩などと比べて複雑であるからてんかん発作下で適切な運転をすることは自動症によっても説明できない旨供述するところ、弁護人は、これらの説明は行為の複雑さの差異を説得的に述べるものではないから、両医師の供述は信用できない旨主張する。 しかしながら、自動車の運転は周囲の状況を把握し、交通法規を遵守しながらハンドルやアクセル・ブレーキなどの操作を流動的に行う必要がある一方で、徒歩自体は極めて原始的な活動であることを踏まえると、この両者にはおのずから明白な複雑性の差異があり、目的もなくさ迷い歩く程度の行動であればてんかんによる自動症によるものと説明がついても、自動車の運転については説明がつかないとする 両医師の説明は合理的である。したがって、両医師の供述は信用できないとの弁護人の主張は採用できない。 3 以上によれば、被告人は本件異常な運転が開始される前までは正常な意識状態であっ する 両医師の説明は合理的である。したがって、両医師の供述は信用できないとの弁護人の主張は採用できない。 3 以上によれば、被告人は本件異常な運転が開始される前までは正常な意識状態であって、本件異常な運転の開始頃にてんかん発作により意識喪失が生じたと考えることが自然であるというべきである。 したがって、被告人は自らの意思で被告人車両の運転を開始し、本件異常な運転が始まる前まで自らの意思で運転を継続していたというべきである。 4 被告人供述についての検討⑴ 被告人供述の要旨ア本件事故の当日は、3時間くらいしか眠れておらず寝不足だったが、午前6 時半過ぎ頃に自宅を出て、自動車を運転して職場に行った。出勤してしばらくして目の前がぐるぐるするようなてんかん発作の前兆が起きた。私はこれまで職場でてんかん発作の前兆が起きた場合、運転中にけいれんを起こさないよう、また、職場の人にけいれんを見られないよう、職場の駐車場に停めた車の中でてんかん発作をやり過ごしていた。そこで、今回もそうするため、上司に体調不良を申し出て早退 することとした。記憶があるのは着替えるためにロッカールームに向かう途中まで であり、次に記憶があるのは搬送先の病院だった。この間、ぼんやりと緑の看板のようなものが見えた記憶はあるが、それ以外の記憶はない。自らが自動車を運転し、死亡事故を起こしたと知ったのはその後のことである。 車の中でやり過ごそうと思っていたのに運転を始めるのは異常であるから、私は、てんかん発作下で意識がないまま自動車を運転し始め、本件事故を起こしてしまっ たのではないかと思っている。このような認識は、本件異常な運転が始まる前までの自分の行動や運転の映像を見ても変わらないし、てんかん発作下ではこのような行 を運転し始め、本件事故を起こしてしまっ たのではないかと思っている。このような認識は、本件異常な運転が始まる前までの自分の行動や運転の映像を見ても変わらないし、てんかん発作下ではこのような行動や運転が不可能な旨の両医師の意見を聞いても変わらない。 イ私は、中学2年生の頃、意識がないまま他学年教室の前の廊下を歩く、40歳くらいの頃、祭りの交通整理中に意識がないまま帰宅する、意識がないまま仕事 中に部下に誤った指示を出す、といったようにてんかん発作により意識がないまま行動することがあったが、車の運転はしたことがない。 ⑵ 被告人供述を踏まえても、被告人に運転開始時点でてんかん発作による意識喪失があったものとは考えられないこと仮に被告人供述のとおり、これまでは車の中でてんかん発作をやり過ごしていた のだとしても、被告人が本件で実際に行っていた本件異常な運転前の行動と運転行為をてんかん発作による意識喪失下においては行うことができないことは前記2のとおりであり、今回は、これまでと異なり発作の前兆を感じながら安易に運転を開始したに過ぎないといえるから、前記被告人供述は、前記認定を左右しない。他方、被告人が意識喪失下でさ迷い歩いたり、部下に誤った指示を出したりしたとする点 については、このようなエピソード自体裏付けがあるものでなく、具体的な内容も判然としない上、両医師はそのような事実がある場合でも自動車の運転とは異なり、てんかんの発作ないし発作後のもうろう状態によるものと説明することもできる旨述べている。また、被告人にロッカールームに向かう途中までしか記憶がないことが仮に虚偽でないとしても、本件事故の衝撃による脳震盪や心因的な原因で事後的 に記憶を失うことはあり得る(C医師及びD医師の公判供述)。そうすると、 カールームに向かう途中までしか記憶がないことが仮に虚偽でないとしても、本件事故の衝撃による脳震盪や心因的な原因で事後的 に記憶を失うことはあり得る(C医師及びD医師の公判供述)。そうすると、被告 人供述を前提にしても、被告人は自らの意思で被告人車両の運転を開始したとの前記結論は揺るがない。 5 争点に対する判断の結論以上のとおり、運転開始時点で被告人にてんかん発作による意識喪失が生じていたとは考えられないことからすれば、被告人は運転行為の危険性を認識しながら自 らの意思で運転を開始したと認められ、本件事故直前の本件異常な運転が始まる直前にてんかん発作が生じたにすぎないから、故意及び責任能力に欠けるところはない。 (量刑の理由)本件は、従前からたびたびてんかんにより意識喪失を伴う発作を起こしていた被 告人が、運転免許証の有効期間の更新を受けるにあたって虚偽の事実を記載した質問票を提出し(犯罪事実第1)、てんかん発作によって意識を喪失するおそれがあったにもかかわらず、自動車を運転し、てんかん発作により意識喪失状態となって前方に停車していた自動車に追突し、1名を死亡させ、1名に傷害を負わせた(犯罪事実第2)という道路交通法違反及び危険運転致死傷の事案である。 被告人は、複数回医師から自動車の運転をしないよう助言を受けていたにもかかわらず、運転免許を取得し、発作の前兆が起これば直ちに運転を中止して休憩すればよいと軽々に判断して、てんかんの持病を申告せずに運転免許を更新して日常的に運転を続けていた上、医師から処方された薬を適切に服用していなかった。その上、本件事故当日、被告人は寝不足でてんかん発作が起きやすい状態であり、さら にてんかんの前兆を感じていたのであるから、運転中にてんかん発作を 師から処方された薬を適切に服用していなかった。その上、本件事故当日、被告人は寝不足でてんかん発作が起きやすい状態であり、さら にてんかんの前兆を感じていたのであるから、運転中にてんかん発作を起こして重大事故を起こす危険性が高かった。それにもかかわらず、被告人は、自動車を運転し、犯罪事実第2記載の犯行に及んだものであって、他人の生命を軽視するその意思決定に対し厳しい非難は免れない。現に、被告人車両は時速約90キロメートルにまで加速し、A車両に追突し、同車両を押しつぶしてAを死亡させ、B車両に乗 っていたBにも傷害を負わせたのであるから、生じた結果も重大である。上記の事 情に加え、A車両があったことによって被告人車両が中型貨物自動車であるB車両に直接衝突せずに済み、被告人が死亡や重傷を免れた可能性も十分にあることからすれば、何らの落ち度もないのに死亡したAの遺族が被告人に対して厳しい処罰感情を寄せるのは当然のことであって、この点も量刑上考慮するべきである。 他方、被告人の本件事故による被害者らへの損害については、被告人が加入して いる保険会社により支払われる予定であり、一部については実際に支払われていること、被告人に前科前歴がないこと、遺族や被害者らに対する謝罪の弁を述べていることなどの事情が認められるから、これらも考慮し、被告人を主文の刑に処するのが相当と判断した。 (求刑懲役5年6月、弁護人の科刑意見犯罪事実第1について罰金刑) 令和7年11月11日静岡地方裁判所浜松支部刑事部裁判長裁判官來司直美 裁判官大村明菜 裁判官志村敬一 來司直美 裁判官 大村明菜 裁判官 志村敬一

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