平成17(受)1519 預金返還請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年6月7日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 大阪高等裁判所 平成17(ネ)85
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判決文本文2,851 文字)

- 1 -主文 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。 被上告人は,上告人に対し,142万3000円を支払え。 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。 理由 上告代理人柴田信夫の上告受理申立て理由について 本件は,上告人が,被上告人に対し,自動継続特約付き定期預金(以下「自動継続定期預金」という。)の元本100万円及びこれに対する10年間の約定利息の合計42万3000円の支払を求める事案である。 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。 (1)上告人は,昭和61年11月19日,A信用組合に対し,100万円を次の約定で預け入れた(以下,この預入れによる預金契約を「本件預金契約」という。)。 ア利息年4.23%イ期間1年ウ満期日昭和62年11月19日(2)本件預金契約においては,特約として,本件預金契約が満期日に前回と同一の期間の預金契約として自動的に継続されること,預金者が本件預金契約の継続を停止するときは満期日までにその旨を申し出るべきこと(以下,この申出を「継続停止の申出」という。)などが定められている(この特約は一般の金融機関において通常用いられている自動継続定期預金の特約と同旨のものであり,以下,この- 2 -ような特約を「自動継続特約」という。)。なお,上記特約によれば,継続の回数は10回を限度とすることとされている。 (3)被上告人は,A信用組合の破たんにより,平成12年12月11日,A信用組合から事業を譲り受け,本件預金契約に係る債務を承継した。 (4)上告人は,被上告人に対し,平成15年6月25日,本件預金契約に基づく預金(以下「本件預金」という。)の払戻しを請求したが,被上告人はこれに応じなかった。 (5)上告人は,平成15年8月26日,本件訴えを提起したが, 対し,平成15年6月25日,本件預金契約に基づく預金(以下「本件預金」という。)の払戻しを請求したが,被上告人はこれに応じなかった。 (5)上告人は,平成15年8月26日,本件訴えを提起したが,被上告人は,同年10月10日の第1審第1回口頭弁論期日において,本件預金の払戻請求権につき10年の消滅時効が完成しているとして,これを援用した。 原審は,前記事実関係の下において,次のとおり判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。 自動継続定期預金においては,預金者は,預金契約締結後最初に到来する満期日(以下「初回満期日」という。)までに継続停止の申出をすることにより,初回満期日以降,預金払戻請求権を行使することができる。そのように預金者の一方的意思表示によって排除できる自動継続に係る弁済期の定めは,消滅時効の進行を妨げる法律上の障害とはならないものというべきである。したがって,上告人の本件預金の払戻請求権の消滅時効は,初回満期日である昭和62年11月19日から進行するものと解するのが相当である。 そうすると,その10年後である平成9年11月19日の経過により,本件預金の払戻請求権の消滅時効が完成したものと解される。 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次- 3 -のとおりである。 (1)自動継続定期預金契約における自動継続特約は,預金者から満期日における払戻請求がされない限り,当事者の何らの行為を要せずに,満期日において払い戻すべき元金又は元利金について,前回と同一の預入期間の定期預金契約として継続させることを内容とするものである(最高裁平成11年(受)第320号同13年3月16日第二小法廷判決・裁判集民事201号441頁参照)。消滅時効は,権利を行使することができる時から進行する(民法166条1 ことを内容とするものである(最高裁平成11年(受)第320号同13年3月16日第二小法廷判決・裁判集民事201号441頁参照)。消滅時効は,権利を行使することができる時から進行する(民法166条1項)が,自動継続定期預金契約は,自動継続特約の効力が維持されている間は,満期日が経過すると新たな満期日が弁済期となるということを繰り返すため,預金者は,満期日から満期日までの間は任意に預金払戻請求権を行使することができない。したがって,初回満期日が到来しても,預金払戻請求権の行使については法律上の障害があるというべきである。 もっとも,自動継続特約によれば,自動継続定期預金契約を締結した預金者は,満期日(継続をしたときはその満期日)より前に継続停止の申出をすることによって,当該満期日より後の満期日に係る弁済期の定めを一方的に排除し,預金の払戻しを請求することができる。しかし,自動継続定期預金契約は,預金契約の当事者双方が,満期日が自動的に更新されることに意義を認めて締結するものであることは,その内容に照らして明らかであり,預金者が継続停止の申出をするか否かは,預金契約上,預金者の自由にゆだねられた行為というべきである。したがって,預金者が初回満期日前にこのような行為をして初回満期日に預金の払戻しを請求することを前提に,消滅時効に関し,初回満期日から預金払戻請求権を行使することができると解することは,預金者に対し契約上その自由にゆだねられた行為を事実上- 4 -行うよう要求するに等しいものであり,自動継続定期預金契約の趣旨に反するというべきである。そうすると,初回満期日前の継続停止の申出が可能であるからといって,預金払戻請求権の消滅時効が初回満期日から進行すると解することはできない。 以上によれば,自動継続定期預金契約における預金払戻請求権の うすると,初回満期日前の継続停止の申出が可能であるからといって,預金払戻請求権の消滅時効が初回満期日から進行すると解することはできない。 以上によれば,自動継続定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効は,自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来した時から進行するものと解するのが相当である。 (2)これを本件についてみるに,前記事実関係等によれば,本件預金契約は,継続の回数が10回に達した後の満期日になって初めて自動継続がされることがなくなったものであるから,本件預金の払戻請求権の消滅時効は,同満期日である平成9年11月19日から進行し,上告人による平成15年における前記預金払戻請求の時にはまだ完成していなかったというべきである。 以上と異なる原審の判断には,判決の結論に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,前記事実関係等によれば,上告人の請求は理由があるから,これを棄却した第1審判決を取り消して,同請求を認容することとする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官涌井紀夫裁判官横尾和子裁判官甲斐中辰夫裁判官泉徳治裁判官才口千晴)

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