主文 被告人A1及び被告人A2をそれぞれ懲役1年6月に,被告人A3を懲役1年2月に処する。 被告人3名に対し,この裁判確定の日から4年間それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人3名は,平成15年3月30日午後10時30分ころ,神戸市a区b通c丁目d番e号Bビルf階所在の居酒屋「C」D駅前支店において,Eらとともに飲酒していたものであるが,被告人A2が,同店の男子トイレでたまたま出会ったF(当時25歳)に対し,目と目が合ったことに因縁をつけた際,同人から「どこの組の者か知っとんか。」と言われたと思い込んで腹を立て,その顔面を手拳で数回殴打するなどの暴行を加えていたところ,トイレに入ってきた被告人A1が,その様子を見て被告人A2に加勢しようと考え,ここに被告人A2と被告人A1は暗黙のうちに意思を相通じた上,被告人A1において上記Fの顔面を手拳で殴打し,その腹部を足蹴にするなどの暴行を加え,被告人A2において上記Fの顔面を手拳で数回殴打し,転倒した同人の顔面や胸部等を数回踏みつけるなどの暴行を加え,次いで,被告人A3が,同店の男子トイレから出てきた被告人A2,被告人A1及び上記Fを見て,被告人A2及び被告人A1において上記Fに暴行を加えたことを知ったのに加え,被告人A1から,上記Fを指して「こいつが『どこの組のもんや。』などと言ってきた。」と聞かされたことから,被告人A2及び被告人A1に加勢しようと考え,ここに被告人3名は暗黙のうちに意思を相通じた上,さらに被告人A1において上記Fの腹部を踏みつけるなどの暴行を加え,被告人A3において上記Fの顔面を平手で数回殴打し,その 人A1に加勢しようと考え,ここに被告人3名は暗黙のうちに意思を相通じた上,さらに被告人A1において上記Fの腹部を踏みつけるなどの暴行を加え,被告人A3において上記Fの顔面を平手で数回殴打し,その腹部を数回踏みつけるなどの暴行を加え,さらには被告人A1及び被告人A3の上記暴行を見たEにおいてもこれに加勢しようと考え,被告人A1及び被告人A3と暗黙のうちに意思を相通じた上,上記Fの腹部等を数回足蹴にするなどの暴行を加え,これら一連の暴行により,同人に加療約1か月間を要する右肋骨骨折,頚椎捻挫,歯牙2本破折等の傷害を負わせたものであるが,その傷害はいずれの機会の暴行によって生じたものかを知ることができない。 (証拠の標目)‐かっこ内は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠甲乙の番号省略(補足説明) 1 本件公訴事実の要旨は,「被告人3名が,Eと共謀の上,判示の日時場所において,被害者に対し,こもごもその顔面を手拳で多数回殴打し,顔面及び胸部等を多数回足蹴にする暴行を加え,よって,被害者に判示の傷害を負わせた。」というものであるが,本件全証拠によっても,被告人3名とEが,あらかじめ共謀ないしは意思を相通じた上,被害者に暴行を加えたと認めるべき証拠はなく,検察官の冒頭陳述によっても,被告人A2がまず被害者に暴行を加え,被告人A1がこれに加担して被害者に暴行を加え,次いで被告人A3がこれに加担して被害者に暴行を加え,さらにはEがこれに加担して被害者に暴行を加えたというものであって,そのことは前掲各証拠によっても明らかである。 2 被告人A1及び被告人A2の弁護人は,被告人A2と被告人A3間及び被告人A2とE間の共謀を争い,被告人A3の弁護人は,被告人A2と被告人A3間及び被告人A3とE間の共謀を争って,共同正犯は成立しないと主張する。 A2の弁護人は,被告人A2と被告人A3間及び被告人A2とE間の共謀を争い,被告人A3の弁護人は,被告人A2と被告人A3間及び被告人A3とE間の共謀を争って,共同正犯は成立しないと主張する。 しかしながら,被告人3名とEはともに飲酒をしていた仲間であったところ,被告人A3の検察官調書(乙22)は,被告人A3が被告人A1と一緒になって被害者の腹部を踏みつける暴行を加えていたとき,被告人A2も被害者に襲いかかってこようとしていて,誰かに止められていたというのであって,被告人A2と被告人A3及び被告人A1がお互いの行為を認識しながら,ともに被害者に暴行を加えあるいは加えようとしていたことが明らかであるから,被告人A2と被告人A3及び被告人A1が被害者に暴行を加えることについて暗黙のうちに意思を相通じていたことについては,間違いがないと認めるのが相当である。また,被告人A3の検察官調書(乙22)は,被告人A3が被告人A1と一緒になって被害者の身体を踏んだり蹴ったりする暴行を加えていたとき,連れのうち1人の男が一緒になって被害者を痛めつけようとしてやってきたが,その男が被害者を踏んだり蹴ったりしたところをはっきりとは見ていないし,それが誰なのか思い出せないというのであるけれども,Eの検察官調書謄本(甲23―被告人A3関係では不同意部分を除く)は,被告人A3が被告人A1と一緒になって被害者の身体を踏んだり蹴ったりする暴行を加えているところに行き,被告人A3や被告人A1と一緒になって被害者の腹部等を足蹴にするなどの暴行を加えたというのであって,被告人A3及び被告人A1とEがお互いの行為を認識しながら,ともに被害者に暴行を加えていたことが明らかであるから,被告人A3及び被告人A1とEが被害者に暴行を加えることについて暗黙のうちに意思を相通じてい 3及び被告人A1とEがお互いの行為を認識しながら,ともに被害者に暴行を加えていたことが明らかであるから,被告人A3及び被告人A1とEが被害者に暴行を加えることについて暗黙のうちに意思を相通じていたことについても,間違いがないと認めるのが相当である。もっとも,Eは被告人A2が被害者に暴行を加えあるいは加えようとしていたことは認識していたものの,被告人A2はEが被害者に暴行を加えた時点ではその場を離れていてそれと認識していなかったことが窺われるから,被告人A2とE間で直接意思を相通じていたとは認められないけれども,上記のとおり,被告人A2と被告人A1及び被告人A3との間,また,被告人A1及び被告人A3とEとの間にはそれぞれ意思の連絡があるから,被告人A2とEの間にも被告人A1及び被告人A3を介して間接的に意思の連絡があることになって,やはり共同正犯が成立すると認めるのが相当である。 3 ところで,上記のとおり,被告人A2がまず被害者に暴行を加え,被告人A1がこれに加担して被害者に暴行を加え,次いで被告人A3がこれに加担して被害者に暴行を加え,さらにはEがこれに加担して被害者に暴行を加えたものであるところ,被告人A1,被告人A3及びEが,それぞれ先行者の行為及びそれによって生じた結果を認識した上,これを自己の犯罪行為の手段として積極的に利用する意思の下に,実体法上一罪を構成する先行者の犯罪に途中から加担し,上記行為等を現にそのような手段として利用した場合には,承継的共同正犯として,その全体につき責任を負うべきものと考えられるが,関係各証拠によっても,被告人A1,被告人A3及びEが,それぞれ先行者の行為を「自己の犯罪行為の手段として積極的に利用する意思」を有していたとも,先行者の「行為等を現にそのような手段として利用した」とも認められない ,被告人A1,被告人A3及びEが,それぞれ先行者の行為を「自己の犯罪行為の手段として積極的に利用する意思」を有していたとも,先行者の「行為等を現にそのような手段として利用した」とも認められないから,被告人A1,被告人A3及びEについては,それぞれその犯行加担後の行為についてのみ共同正犯としての責任を負うべきことになって,被害者の判示の傷害がそのいずれの段階の暴行によって生じたかを知ることができないことからすると,被告人A1及び被告人A3に傷害の結果について罪責を問うことができないと考える余地がある。 4 しかしながら,一般に傷害の結果が全く意思の連絡のない2名以上の者の同一機会における各暴行によって生じたことは明らかであるが,いずれの暴行によって生じたものであるかを知ることができない場合には,同時犯の特例として,刑法207条により傷害罪の共同正犯として処断されるが,このような事例と対比して考えると,本件のように,共謀成立の前後にわたる一連の暴行により傷害の結果が生じたことは明らかであるが,共謀成立の前後いずれの暴行により生じたものであるかを知ることができない場合にも,やはり「その傷害を生じさせた者を知ることができない」ときに当たるとみなければ権衡を失することが明らかであるから,これら一連の暴行が同一機会において加えられたものである限り,刑法207条が適用され,全体が傷害罪の共同正犯として処断されると解するのが相当である。 なお,本件公訴事実は前記のとおりのものであって,当裁判所の認定は,共謀の点においても暴行の点においても縮小認定である上,弁護人らは共謀の一部を争っていて,その意味するところは同時犯が成立するというものと理解されるから,訴因変更等の措置をとることなく,上記認定をしても,訴因逸脱認定や不意打ち認定の問題は生じない 上,弁護人らは共謀の一部を争っていて,その意味するところは同時犯が成立するというものと理解されるから,訴因変更等の措置をとることなく,上記認定をしても,訴因逸脱認定や不意打ち認定の問題は生じないと考えられる。 5 以上のとおりであって,被告人3名には,Eとともに,本件傷害の全結果について,同時傷害罪が成立することになるから,本件は,結局,傷害罪の共同正犯として処断すべきものである。 (法令の適用)被告人3名の判示所為はいずれも刑法207条,60条,204条に該当するので,所定刑中それぞれ懲役刑を選択し,その各所定刑期の範囲内で,被告人A1及び被告人A2をそれぞれ懲役1年6月に,被告人A3を懲役1年2月に処し,情状により同法25条1項を適用して,被告人3名に対し,この裁判確定の日から4年間それぞれその刑の執行を猶予することとする。 (量刑の事情)本件は,被告人らが共犯者とともに相次いで被害者に暴行を加え傷害を負わせたという事案であるが,被告人A2が被害者と目が合ったというささいなことで因縁をつけた上,被害者の言動に短絡的に激高して暴行を加えるや,被告人A1,被告人A3らも仲間意識等から相次いで暴行に加わったものであって,このような暴行に及ぶ理由はなく,犯行の動機に酌むべき点はないこと,被告人らは,無抵抗な被害者に対し,合計4人もで激しく執拗な暴行をかわるがわる一方的に加えたものものであり,特に,被害者の顔面を手拳で多数回殴打したり,失神した被害者の腹部を多数回踏みつけたりするなどした行為の危険性は高く,犯行の態様は悪質かつ執拗なものであること,その結果,被害者に加療約1か月を要する右肋骨骨折,歯牙2本破折等の重傷を負わせたものであり,傷害の程度は相当に重く,被害者の受けた肉体的苦痛は大きいと思われるのに加え,被害者は,本件当日 ること,その結果,被害者に加療約1か月を要する右肋骨骨折,歯牙2本破折等の重傷を負わせたものであり,傷害の程度は相当に重く,被害者の受けた肉体的苦痛は大きいと思われるのに加え,被害者は,本件当日に結婚式を挙げ,その2次会から3次会に行く途中に本件被害に遭って,門出の日を台なしにされ,新婚旅行もキャンセルせざるを得なくなったものであって,その精神的苦痛は更に大きいと思われること,被告人A2は,被害者に因縁をつけた上,短絡的に激高して,被害者にいきなり暴行を加えたものであって,本件犯行の発端を作っていること,被告人A1は,被告人A2が被害者に暴行を加えているのを知るや,これに加担して更に被害者に激しく執拗な暴行を加えたものであって,被告人A2が作った本件犯行の火を大きく燃え上がらせたほか,平成14年4月にも傷害罪で罰金刑に処せられた前科があって,粗暴な性格傾向が窺われること,被告人A3もまた被告人A1らに加担して失神状態にある被害者に繰り返し暴行を加えたものであって,その程度も軽いものではなかったことなどを考え併せると,犯情は悪く,被告人A2及び被告人A1の刑事責任は重いし,被告人A3の刑事責任も軽くはないといわざる得ない。 しかしながら,被告人らは一応事実を認め,現在ではそれなりに反省していること,本件の犯行態様や被害者の負った傷害の程度等からすると,十分な額とは到底いえないものの,被告人らから被害者に対し金40万円を支払いまた被害者に面会等一切接触しないことを誓約して示談を成立させていること,被告人A2及び被告人A3にはいずれもこれまで前科がないこと,被告人A1にはこれまで禁錮以上の刑に処せられた前科がないこと,被告人3名がそれぞれ約1か月ないし1か月余りの間本件で身柄拘束を受けていることなどの,被告人らのために酌むべき事情も認 科がないこと,被告人A1にはこれまで禁錮以上の刑に処せられた前科がないこと,被告人3名がそれぞれ約1か月ないし1か月余りの間本件で身柄拘束を受けていることなどの,被告人らのために酌むべき事情も認められるので,今回は,被告人らに対し,主文の刑に処した上,それぞれその刑の執行を猶予し,社会内更生の機会を与えることとする。 (検察官の科刑意見被告人3名についてそれぞれ懲役1年6月)よって,主文のとおり判決する。 平成15年7月17日神戸地方裁判所第12刑事係甲 裁判官森岡安廣
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