令和7(わ)321 業務上失火被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年11月18日 静岡地方裁判所
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判決文本文2,352 文字)

- 1 -令和7年11月18日宣告令和7年(わ)第321号判決 主文 被告人を禁錮1年に処する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 【罪となるべき事実】被告人は、静岡市(住所省略)所在の株式会社Aが所有するB(鉄筋コンクリート造一部鉄骨造地下1階地上4階建て)3階にある飲食店「C」(以下、「本件飲食店」とい う。)の店長として、同店の営業及び防火管理の業務に従事し、同店従業員らを指導監督する立場にあったものであるが、令和4年8月13日、同店の倉庫兼休憩室を喫煙場所として自ら利用するとともに同店従業員らに利用させるに当たり、同室には紙くず等が捨て入れられたごみ箱やペーパータオル入りの段ボール等が置かれており、たばこの吸い殻の残り火が他の可燃物に着火して火災が発生することが予見できたのであるから、 喫煙が行われる時間帯には灰皿に水を入れておき、喫煙後にはその水でたばこの吸い殻を完全に消火するなどの防火措置を確実に講じ、同店従業員らにも同措置を講じるよう徹底させ、あるいは、たばこの吸い殻を他の可燃物と分離して廃棄するなど、その残り火が他の可燃物に着火する危険を防止するための措置を確実に講じ、同店従業員らにも同措置を講じるよう徹底させて火災の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務がある のにこれを怠り、前記各措置をいずれも講じず、同店従業員らにも講じるよう徹底させず、漫然、消火が不十分なまま、たばこの吸い殻を他の可燃物が捨て入れられた前記ごみ箱に捨て入れ、又は同店従業員に捨て入れさせた過失により、同日午後9時40分頃、たばこの吸い殻の残り火を同ごみ箱内の紙くず等に着火させて、その火を同室の壁等 吸い殻を他の可燃物が捨て入れられた前記ごみ箱に捨て入れ、又は同店従業員に捨て入れさせた過失により、同日午後9時40分頃、たばこの吸い殻の残り火を同ごみ箱内の紙くず等に着火させて、その火を同室の壁等に燃え移らせ、よって、同店従業員ら及び同店利用客らが現にいる前記B(以下、「本件ビ ル」という。)の3階部分を焼損(焼損床面積約297.94平方メートル)した。 - 2 -【証拠の標目】省略【法令の適用】罰条令和4年法律第68号441条1項により同年法律第67号2条による改正前の刑法(以下「旧刑法」という。)117条 の2前段、刑法116条1項、旧刑法108条刑種の選択禁錮刑を選択刑の執行猶予刑法25条1項訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書【量刑の理由】 本件は、飲食店従業員らによる店内での喫煙の管理が不徹底であったために、たばこの吸い殻が消火不十分のままごみ箱に捨てられ、その中に入っていた紙くず等の可燃物に着火し、その結果、静岡市中心部の繁華街にある本件ビル3階で営業していた本件飲食店で火災が発生した事案である。午後9時40分頃に発生した本件火災は、本件飲食店のフロアのうち約297.94平方メートルと広範囲の焼損を招いた大きな火事であ り、これにより当時店内にいた従業員ら及び30人ほどの利用客らの生命及び身体が現実的な危険にさらされ、その周辺にいた人らも巻き込む公共の危険が生じた。 被告人は、本件飲食店の店長であり、かつ、同店関係者の中で唯一防火管理者の資格を有する者として、同店を経営する会社の社長から同店の防火管理を含めた業務を任されていたため、店内での喫煙を原因とする火災が生じないよう業務上注意すべき立場に あっ の中で唯一防火管理者の資格を有する者として、同店を経営する会社の社長から同店の防火管理を含めた業務を任されていたため、店内での喫煙を原因とする火災が生じないよう業務上注意すべき立場に あった。被告人は、そのような立場にありながら、店内の倉庫兼休憩室を自身あるいは従業員らが喫煙場所として利用することを許容する一方、同室には紙くず等が捨て入れられたごみ箱やペーパータオル入りの段ボール等が置かれており、たばこの吸い殻を適切に処理しなければ火災の原因になることを容易に予見し得たにもかかわらず、灰皿に水を入れておくといった消火措置や他の可燃物と分離して廃棄するといった着火防止措 置を講じ、このような措置を従業員らにも徹底させるという基本的な注意義務を怠った。 - 3 -被告人が繁華街にある飲食店においてそのような社会生活上当然に期待される注意すら尽くさなかったことによって、前述のような公共の危険が惹起されたことに加え、本件ビルの所有者にも多大な財産的被害が及んだのであるから、その不注意に対しては、強い非難が向けられなければならない。 以上によれば、被告人に対しては相応の刑事責任を科する必要があるが、他方で、被 告人は、本件火災に気づいた後には、従業員らに指示して火災の通報や利用客らの避難誘導を行った。また、本件火災によって臨場した消防隊員の一人が殉職するという痛ましい結果が生じており、この点は訴因に含まれていないものの、被告人は公判廷において遺族に対する謝罪の意を表明している。これらの事情のほか、被告人が罪を認めて反省の言葉を述べていること、被告人には前科前歴がないことなども考慮し、被告人に対 しては、主文の刑に処した上、今回は、その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 (求刑禁錮1年)令和7年11月1 主文 被告人には前科前歴がないことなども考慮し、被告人に対しては、主文の刑に処した上、今回は、その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 理由 (求刑禁錮1年)令和7年11月18日静岡地方裁判所刑事第1部 裁判官一社紀行

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