平成15(ワ)3869 妨害予防等請求事件,同反訴請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年3月29日 福岡地方裁判所
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判決文本文7,276 文字)

平成17年3月29日判決言渡同日判決原本受領裁判所書記官平成15年(ワ)第3869号妨害予防等請求事件平成16年(ワ)第1244号妨害予防等反訴請求事件判決 主文 1 本訴被告は,本訴原告に対し,30万円及びこれに対する平成15年10月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 反訴被告は,反訴原告に対し,10万円及びこれに対する平成15年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 反訴被告は,別紙1物件目録記載1及び2の各土地内及び同記載3の建物に設置している監視カメラを,別紙2物件目録記載1の土地上にある同記載2の建物に向けないようにせよ。 4 本訴原告及び反訴原告のその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,本訴反訴ともに,これを15分し,その8を本訴被告(反訴原告)の負担とし,その余を本訴原告(反訴被告)の負担とする。 6 この判決第1,2項は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 本訴(1)被告は,別紙1物件目録記載1及び2の各土地(以下「本訴原告敷地」という。)及び同記載3の建物(以下「本訴原告宅」という。)内に,物を投棄してはならない。 (2)被告は,原告に対し,357万3885円及び内300万円に対する本訴状送達の日の翌日,内57万3885円に対する平成16年8月16日付け準備書面送達の日の翌日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 反訴(1)被告は,本訴原告敷地の土地内及び土地上にある本訴原告宅に設置している監視カメラを,すべて撤去または別紙2物件目録記載1の土地(以下「本訴 済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 反訴(1)被告は,本訴原告敷地の土地内及び土地上にある本訴原告宅に設置している監視カメラを,すべて撤去または別紙2物件目録記載1の土地(以下「本訴被告敷地」という。)上にある同記載2の建物(以下「本訴被告宅」という。)方向に向けないようにせよ。 (2)被告は,原告に対し,300万円及びこれに対する平成15年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,本訴原告が,道路を挟んで向かい合った所に住んでいる本訴被告から本訴原告宅にゴミを投げ込まれたので人格権を侵害されたとして,ゴミの投げ込み禁止と,ゴミによって壊れた本訴原告宅の補修費用,慰謝料を請求したのに対し,本訴被告は,ゴミの投げ込みの一部を否認し,本訴原告からカメラで本訴被告宅を監視され,人格権の侵害を受けたとして,カメラの撤去などと共に,慰謝料を請求した事案である。 1 争いのない事実本訴原告は,本訴原告敷地を昭和48年10月に購入し,本訴原告敷地上に本訴原告宅を昭和51年11月に建築した。本訴被告は,本訴被告敷地上にある本訴被告宅の建物に,昭和47年から,居住している。本訴原告宅と,本訴被告宅は,公道を挟んで向かい合っている。本訴原告は,本訴原告宅を,主に土日に別荘として使用していた。 2 本訴原告の主張(1)平成9年7月ころから,本訴原告敷地内への泥,一般家庭ゴミなどの投げ込みが始まり,平成12年6月になっても,それらの投棄が止まないため,防犯監視カメラ(以下「カメラ」という。)を設置し,公道を監視した。しかし,それでも投棄者を確認できなかったところ,投げつけられた泥の状況などから,投棄者は本訴被告である可能性が高いとの指摘を受けたため,カメラの向きを調整し,平成14年1 を設置し,公道を監視した。しかし,それでも投棄者を確認できなかったところ,投げつけられた泥の状況などから,投棄者は本訴被告である可能性が高いとの指摘を受けたため,カメラの向きを調整し,平成14年12月に2台,平成15年2月に1台カメラの追加設置を行った。そして,その結果,同年3月に,本訴被告が本訴原告宅方面に物を投棄している場面をカメラにとらえた。そして,その後も本訴被告は,投棄を繰り返し,同年4月4日から同年5月9日にかけて,少なくとも25回にわたって一般家庭ゴミなどを投棄したことが明らかになった。本訴被告は,同月12日付けで,警察署に対して始末書を提出したが,その後もゴミの投棄を続けたため,同年7月に軽犯罪法違反で福岡区検察庁に送致された。 (2)本訴被告による平成9年7月ころから,平成15年5月までの泥や一般家庭ゴミの投棄は,平穏に日常生活を営むという,本訴原告の人格権を侵害するものであり,その継続期間や態様,悪質性を考えると,本訴原告の被害を回復するためには,本訴被告の行う投棄を禁止するほかなく,また,精神的苦痛を慰謝するには,300万円を下らない。 (3)本訴被告による空き瓶などの投棄により,本訴原告宅が破壊され,そのために,玄関補修工事として43万7600円,外塀塗装工事13万6285円の各費用を要したので,これも損害として請求する。 (4)カメラの設置を継続するのは,さらなるゴミの投棄を防ぐためのものであり,違法性はない。 3 本訴被告の主張(1)本訴被告は,平成15年3月に,本訴原告宅に向けて空き缶か空き瓶を1回投げ,同年4月から5月にかけて,数回同じことをしたことはあるが,それ以外の本訴原告の主張は否認する。空き缶などを投げ入れたのは,本訴原告が,平成15年1月ころから,カメラを設置し,本訴被告宅に向けてい 同年4月から5月にかけて,数回同じことをしたことはあるが,それ以外の本訴原告の主張は否認する。空き缶などを投げ入れたのは,本訴原告が,平成15年1月ころから,カメラを設置し,本訴被告宅に向けていたため,それを止めて欲しいと言ったにもかかわらず,無視されたという事情があった。 (2)本訴原告は,平成15年1月から2月にかけて,本訴原告敷地内にカメラを4台設置し,それらを本訴被告宅へ向け,現在に至るまで,本訴被告の再々の申し入れを無視し,本訴被告敷地及び本訴被告宅を監視し続けてきた。このような行為は,本訴被告の人格権を著しく侵害する不法行為であり,このような被害を防止するには,カメラを撤去するか,カメラを本訴被告宅へ向けることを禁止するほかない。また,カメラを本訴被告宅に向けられたことにより,本訴被告は著しい精神的苦痛を被り,それを慰謝するには,300万円を下らない。 第3 当裁判所の判断 1 前記争いのない事実に証拠(甲6,7の1ないし5,9の1及び2,10,11,12の1ないし3,16の1ないし7,17,18,乙1,2の1ないし4,3の1ないし4,4の1ないし3,5,6,証人A,同B,本訴原告及び本訴被告各本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 本訴被告敷地の北側及び東側は,それぞれ民家が隣接しており,その南側は,東西に走る幅員7.4メートルの市道(以下「本件市道」という。)と,西側は南北に走る市道と隣接している。本訴被告敷地の庭(以下「本訴被告の庭」という。)は,本件市道に面した部分にあり,本件市道との間には,高さ3メートル余りの石垣など(以下「本訴被告塀」という。)がある。本訴原告敷地の南側は民家が隣接しており,その北側は,本件市道に隣接し,その東西は,いずれも市道と隣接している。 本訴原告宅の東側には さ3メートル余りの石垣など(以下「本訴被告塀」という。)がある。本訴原告敷地の南側は民家が隣接しており,その北側は,本件市道に隣接し,その東西は,いずれも市道と隣接している。 本訴原告宅の東側には庭園(以下「庭園」という。)があり,庭園と本件市道との間には,高さ3.5メートル余りの石垣など(以下「本訴原告塀」という。)がある。そして,本訴被告宅と本訴原告宅とは,本件市道を挟んで,ほぼ相対しているが,庭園の分だけ,本訴原告敷地の方が,本訴被告敷地より東側に広くなっている。 平成8年ころ,本訴原告塀にいたずら書きがなされ,本訴原告宅の玄関(以下「玄関」という。)先にゴミを投げ込まれたりするということが発生するようになった。そこで,本訴原告は,本訴原告敷地の北西角付近に水銀灯を設置した。すると,いたずら書きはなくなったが,ゴミの投げ込みは,止まなかった。そこで,平成9年ころ,水銀灯の所にカメラを設置して,玄関先付近を撮影したが,ゴミの投げ込みは止まず,カメラにも何も写らなかった。なお,そのころ,本訴被告が,水銀灯のお陰でまぶしくて眠れないなどと文句を言ってくることがあった(本訴原告は,その際,カメラが本訴被告宅を向いているのではないかなどと本訴被告から抗議があったなどと主張し,それに沿う証拠(甲11など)もあるが,上記のようなカメラの設置状況に照らすと,そのように本訴被告が誤解することは通常考えられず,カメラの点についての抗議があったとは認められない。)。 平成12年ころには,カメラを,玄関付近に増設し,本件市道を撮影するようにしたが,状況は変わらなかった。その後,平成14年12月ころ,さらに玄関付近にカメラを増設し,平成15年3月ころには,本訴原告塀の東よりにカメラを設置した。なお,そのころ,2度ほど本訴被告は,カメラを本訴被告宅 は変わらなかった。その後,平成14年12月ころ,さらに玄関付近にカメラを増設し,平成15年3月ころには,本訴原告塀の東よりにカメラを設置した。なお,そのころ,2度ほど本訴被告は,カメラを本訴被告宅の方に向けないように抗議をしたことがあった。 そして,本訴原告は,玄関付近のカメラ1台と上記本訴原告塀のカメラを,本訴被告の庭が見えるように設置し,撮影・記録していたところ,しばらく経って,本訴被告が,本訴被告の庭から本訴原告宅に向かってゴミを投げ入れる状況が撮影され,記録された。そして,本訴原告は,同月27日,その場面が記録されたビデオテープを持って,警察へ相談に行った。それを受けて,警察は,同年5月13日,本訴被告を呼んで事情を聞いたところ,本訴被告はゴミを投げ込んだことを認めた。そして,本訴被告は,同月26日,本訴原告宅に謝罪に出向いた。しかるに,同月30日,本訴被告は,本訴被告の庭から庭園に向けて,アルミ缶1個及びガラス瓶1本を投げ込んだ。その様子も,カメラで記録されたため,本訴原告は,そのビデオテープを持って,警察に告訴したため,本訴被告は,取り調べを受け,平成15年10月14日,軽犯罪法違反で科料の略式命令を受けた。 その後,現在においても,本訴原告宅に設置されたカメラのうちの1台が,本訴被告宅に向けられ,撮影が続けられている。 2 本訴請求について(1)本訴原告は,本訴被告が,平成9年ころから,ゴミの投棄を継続した旨主張し,その理由として,■本訴被告は水銀灯のことなどで抗議をしており,動機があること,■本訴原告宅へのゴミの投げ入れは,本訴被告が略式起訴された平成15年10月以降なされていないこと,■投棄されたゴミは,紙や泥であれば水でしめらせてあり,プラスチックや瓶の容器であれば,水が入った状態で投げ入れられてい 投げ入れは,本訴被告が略式起訴された平成15年10月以降なされていないこと,■投棄されたゴミは,紙や泥であれば水でしめらせてあり,プラスチックや瓶の容器であれば,水が入った状態で投げ入れられているというように,明らかに嫌がらせを目的とした手口であり,本訴被告がゴミを投棄したことを認めている手口と共通性があること,■ゴミはその落下位置からして,本件市道側から投げられていると思料されるところ,平成14年12月にカメラを増設して,本件市道の撮影の死角をなくし,24時間撮影したにもかかわらず,ゴミの投棄が続き,カメラに撮影されることなくゴミを投棄できるのは,本訴被告宅からしかないことなどを上げる。 この点,確かに,甲12の1及び2,本訴被告本人によれば,本訴被告は,平成15年3月から,本訴被告宅に複数回,液体の入った瓶や缶などのゴミを投棄し,また,時期ははっきりしないものの,複数回泥を投げ,それが本訴原告宅まで到達していたことが認められ,それまでに本訴原告宅へ投げ込まれた瓶や缶などのゴミについて,関与を疑われても仕方がないところではある。しかし,本訴原告が指摘する上記■のうち,泥などについてはともかく,容器に水が入っているということについては,空になった容器にわざわざ水を入れたというのであれば,それは投棄するために用意したと言え,本訴被告によるものであることが推認できるとも思われるが(本訴被告は,届かせるために水を入れて投棄したことを認めている。),甲7によれば,飲み残しなどのために液体が入ったままと思われる容器が投げ込まれており,それは,飲み残したものを投棄したと考えるのが通常であり,そのような物を投棄するのは,本訴被告以外にも考えられる(本訴被告によれば,そのような飲み残しの入った容器が,本訴被告の庭にあり,それを投げ入れたこと み残したものを投棄したと考えるのが通常であり,そのような物を投棄するのは,本訴被告以外にも考えられる(本訴被告によれば,そのような飲み残しの入った容器が,本訴被告の庭にあり,それを投げ入れたことを認めている)ので,上記のようなゴミの特徴をもって,本訴被告によるものであると推認するのは相当ではない。さらに,本訴原告が指摘する上記■については,そもそも,玄関や庭園のゴミは,本訴原告敷地に接する東西の市道からも投棄が可能であると思料されること(本訴原告は,物の状態を見て,その方向からはないと供述するが,泥はともかく,缶などの状態を見て,どこから投げられたかを推認することはできないと思われる),本件市道側の撮影の死角が無くなったと認めるに足りる的確な証拠はないこと,24時間撮影していたとしても,夜間は撮影できないこと(本訴原告本人)などからすれば,その主張は採用できない。また,本訴原告が指摘する上記■については,本訴被告が,本訴被告宅に向けられたカメラに腹を立て,ゴミを投棄し始めたと供述するところ,その動機にはそれなりの合理性があり,それに比較すると,水銀灯のことでゴミを投棄するというのはいささか動機として薄弱と言わざるを得ない。そして,本訴原告が指摘する上記■については,本訴原告及び証人Aの供述によっても,ゴミの投棄がなくなった時期についてはっきりせず,それを認めるに足りる証拠はない。 その他,本件全証拠を検討しても,本訴被告が,平成15年3月以前から,本訴原告宅にゴミを投棄していたとは認められない。 なお,本件全証拠を検討すると,本訴被告が,平成15年3月から同年5月まで投棄した回数は,はっきりしないものの,十数回であると推認される。 (2)上記によると,平成15年3月から同年5月30日ころまでの間に,本訴被告は,本訴原 本訴被告が,平成15年3月から同年5月まで投棄した回数は,はっきりしないものの,十数回であると推認される。 (2)上記によると,平成15年3月から同年5月30日ころまでの間に,本訴被告は,本訴原告宅に,ゴミを十数回投げ込み,その態様は,執拗かつ悪質であると言わざるを得ず,そのことによって,本訴原告が,精神的苦痛を受けたと認められる。 そして,以上認定事実その他諸般の事情を総合考慮すれば,本訴原告の精神的苦痛を慰謝するには,30万円が相当である。 (3)人の家にゴミを投棄することは,もとより許されることではないが,人格権に基づいて,その禁止を求められるかは疑問の余地がないばかりでなく,本訴被告は,略式命令や本件訴訟を経て,現在においては,ゴミの投げ入れをする可能性は極めて低いと思料されることなどから,その禁止を求める本訴原告の請求は認められない。 (4)甲17によれば,本訴原告宅の瓦が割れるなどしていることが認められるが,その原因が,本訴被告によるゴミ投棄であると認めるに足りる証拠はないので,補修費用などの請求は認められない。 3 反訴請求について(1)ゴミを投棄している者を特定し,また,ゴミの投棄を防止するためとは言え,本訴被告宅に向けてカメラの位置を調整し,本訴被告の庭付近を撮影し,それを続けている本訴原告の行為は,本訴被告のプライバシーを侵害するものであり,違法性があると言わざるを得ず,それによって,本訴被告が精神的苦痛を受けたと認められる。 他方,本訴被告宅に向けてのカメラの設置が,現在まで続いたのは,本訴被告の複数回にわたる(しかもその内の一部は警察に注意された後も継続した)ゴミの投棄が一因であることは明らかである。 そして,以上認定の事実その他諸般の事情を総合考慮すれば,本訴被告の精神的苦痛を慰謝するに たる(しかもその内の一部は警察に注意された後も継続した)ゴミの投棄が一因であることは明らかである。 そして,以上認定の事実その他諸般の事情を総合考慮すれば,本訴被告の精神的苦痛を慰謝するには,10万円が相当である。 (2)上記のとおり,本訴被告宅に向けてのカメラの設置は違法である上,上記のとおり,現在において,本訴被告が再びゴミを投棄する可能性は極めて低いことなどを考慮すると,本訴原告は,本訴原告宅に設置したカメラを,本訴被告宅に向けることは禁止されるべきであると思料される。 4 本訴状送達の日が,平成15年10月28日であることは,明らかである。 5 本訴原告及び本訴被告の,仮執行免脱宣言の申立ては,いずれも相当でない。 6 よって,主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結の日平成17年2月28日)福岡地方裁判所第一民事部裁判官秋信治也

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