主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求の趣旨令和元年7月21日施行の参議院議員通常選挙における岡山県選挙区選出議員選挙を無効とする。 第2 事案の概要 1 本件は,令和元年7月21日施行の参議院議員通常選挙(以下「本件選挙」という。)について,岡山県選挙区の選挙人である原告が,公職選挙法14条1項,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定(以下,数次の改正の前後を通じ,平成6年法律第2号による改正前の別表第2を含め,「定数配分規定」という。)は憲法に違反し無効であるから,これに基づき施行された本件選挙の上記選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟である。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実,裁判所に顕著な事実又は証拠(甲1~10,乙1~4,乙5の1~6,乙6~17)により明らかに認められる事実)⑴ 参議院議員選挙法(昭和22年法律第11号)は,参議院議員の選挙について,参議院議員250人を全国選出議員100人と地方選出議員150人とに区分し,全国選出議員については全都道府県の区域を通じて選出されるものとする一方,地方選出議員については,その選挙区及び各選挙区における議員定数を別表で定め,都道府県を単位とする選挙区において選出されるものとした。そして,選挙区ごとの議員定数については,憲法が参議院議員につき3年ごとにその半数を改選すると定めていることに応じて,各選挙区を通 じその選出議員の半数が改選されることとなるように配慮し,定数を偶数としてその最小2人を配分する方 区を通 じその選出議員の半数が改選されることとなるように配慮し,定数を偶数としてその最小2人を配分する方針の下に,各選挙区の人口に比例する形で,2人ないし8人の偶数の議員定数を配分した。昭和25年に制定された公職選挙法の定数配分規定は,上記の参議院議員選挙法の議員定数配分規定をそのまま引き継いだものであり,その後に沖縄県選挙区の議員定数2人が付加されたほかは,平成6年法律第47号による公職選挙法の改正(以下「平成6年改正」という。)まで,上記定数配分規定に変更はなかった。なお,昭和57年法律第81号による公職選挙法の改正(以下「昭和57年改正」という。)により,参議院議員252人は各政党等の得票に比例して選出される比例代表選出議員100人と都道府県を単位とする選挙区ごとに選出される選挙区選出議員152人とに区分されることになったが,この選挙区選出議員は,従来の地方選出議員の名称が変更されたものにすぎない。その後,平成12年法律第118号による公職選挙法の改正(以下「平成12年改正」という。)により,参議院議員の総定数が242人とされ,比例代表選出議員96人及び選挙区選出議員146人とされた。 ⑵ 参議院議員選挙法制定当時,選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差(以下,各立法当時の「選挙区間の最大較差」というときは,この人口の最大較差をいう。)は2.62倍(以下,較差に関する数値は,全て概数である。)であったが,人口変動により次第に拡大を続け,平成4年に施行された参議院議員通常選挙(以下,単に「通常選挙」といい,この通常選挙を「平成4年選挙」という。)当時,選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差(以下,各選挙当時の「 続け,平成4年に施行された参議院議員通常選挙(以下,単に「通常選挙」といい,この通常選挙を「平成4年選挙」という。)当時,選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差(以下,各選挙当時の「選挙区間の最大較差」というときは,この選挙人数の最大較差をいう。)が6.59倍に達した後,平成6年改正における 7選挙区の定数を8増8減する措置により,平成2年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は4.81倍に縮小した。その後,平成12年改正における3選挙区の定数を6減する措置及び平成18年法律第52号による公職選挙法の改正(以下「平成18年改正」という。)における4選挙区の定数を4増4減する措置の前後を通じて,平成7年から同19年までに施行された各通常選挙当時の選挙区間の最大較差は5倍前後で推移した。 昭和52年7月に施行された参議院議員通常選挙当時の最大較差は,1対5.26であったところ,最高裁昭和58年4月27日大法廷判決・民集37巻3号345頁(以下「昭和58年大法廷判決」という。)は,次の判断枠組みの下に,いまだ違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じていたとするには足りない旨判示した。 憲法は,選挙権の内容の平等,すなわち議員の選出における各選挙人の投票の有する価値の平等を要求していると解するのが相当であるが,どのような選挙制度が国民の利害や意見を公正かつ効果的に国会に反映させることになるかの決定を国会の裁量に委ねているから,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるものではなく,国会は,正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由をも斟酌して,その裁量により選挙 の裁量に委ねているから,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるものではなく,国会は,正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由をも斟酌して,その裁量により選挙制度の仕組みを決定することができる。このため,国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り,それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになってもやむを得ない。 公職選挙法が参議院議員の選挙について定めた選挙制度の仕組みは,国会の有する前記のような裁量的権限の合理的な行使の範囲を 逸脱するものであるとはいえない。しかしながら,社会的,経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口異動の結果,投票価値の平等の有すべき重要性に照らして到底看過することができないと認められる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じ,かつ,それが相当期間継続しているにもかかわらず,これを是正する措置を講じないことが,上記人口異動をいつどのような形で選挙区割り,議員定数の配分その他の選挙制度の仕組みに反映させるかなどの問題が複雑かつ高度に政策的な考慮と判断の上に立って行使されるべき国会の裁量的権限に係るものであることを考慮してもなお,その許される裁量権の限界を超えると判断される場合には,当該議員定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である。 最高裁判所大法廷は,上記判断枠組みの下,平成4年選挙について,違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じていたとしたが,上記程度に達したかどうかの判定は複雑かつ高度に政策的な考慮と判断の上に立って行使されるべき国会の裁量的権限の限界に関わる困難なものであり ずる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じていたとしたが,上記程度に達したかどうかの判定は複雑かつ高度に政策的な考慮と判断の上に立って行使されるべき国会の裁量的権限の限界に関わる困難なものであり,かつ,上記程度に達したと解される場合においても,どのような形で改正するかについてなお種々の政策的または技術的な考慮要素を背景とした議論を経る必要があること,また,同選挙当時まで最高裁判所が参議院議員定数配分規定につき違憲状態にあるとの判断を示したことはなかったことなどを考慮し,結論において,同選挙までの間に国会が参議院議員定数配分規定を是正する措置を講じなかったことをもって立法裁量権の限界を超えるものと断定することは困難であるとして,同規定が憲法に違反するに至っていたとはいえない旨判示した(最高裁平成8年9月11日大法廷判決・民集50巻8号2283頁)。 そして,最高裁判所大法廷は,平成6年改正後の定数配分規定の下 で施行された2回の通常選挙については,上記の状態に至っていたとはいえない旨判示した(最高裁平成10年9月2日大法廷判決・民集52巻6号1373頁,最高裁平成12年9月6日大法廷判決・民集54巻7号1997頁)。その後,平成12年改正後の定数配分規定の下で施行された2回の通常選挙及び平成18年改正後の定数配分規定の下で平成19年に施行された通常選挙のいずれについても,最高裁判所大法廷は,上記の状態に至っていたか否かにつき明示的に判示することなく,結論において当該各定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえない旨の判断を示した(最高裁平成16年1月14日大法廷判決・民集58巻1号56頁,最高裁平成18年10月4日大法廷判決・民集6 ,結論において当該各定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえない旨の判断を示した(最高裁平成16年1月14日大法廷判決・民集58巻1号56頁,最高裁平成18年10月4日大法廷判決・民集60巻8号2696頁,最高裁平成21年9月30日大法廷判決・民集63巻7号1520頁)。もっとも,上記最高裁平成18年10月4日大法廷判決においては,投票価値の平等の重要性を考慮すると投票価値の不平等の是正について国会における不断の努力が望まれる旨の,上記最高裁平成21年9月30日大法廷判決においては,当時の較差が投票価値の平等という観点からはなお大きな不平等が存する状態であって,選挙区間における投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にあり,最大較差の大幅な縮小を図るためには現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となる旨の指摘がそれぞれされるなど,選挙区間の最大較差が5倍前後で常態化する中で,較差の状況について投票価値の平等の観点から実質的にはより厳格な評価がされるようになっていた。 ⑶ 平成22年7月11日,選挙区間の最大較差が5.00倍の状況において施行された通常選挙(以下「平成22年選挙」という。)につき,最高裁平成24年10月17日大法廷判決・民集66巻10号3 357頁(以下「平成24年大法廷判決」という。)は,長年にわたる制度及び社会状況の変化を踏まえ,参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難く,都道府県が政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくな 理由は見いだし難く,都道府県が政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっており,都道府県間の人口較差の拡大が続き,総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で,都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくことはもはや著しく困難な状況に至っているなどとし,それにもかかわらず平成18年改正後は投票価値の大きな不平等がある状態の解消に向けた法改正が行われることのないまま平成22年選挙に至ったことなどの事情を総合考慮すると,同選挙当時の最大較差が示す選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとする一方,平成21年大法廷判決においてこうした参議院議員の選挙制度の構造的問題及びその仕組み自体の見直しの必要性が指摘されたのは平成22年選挙の約9か月前で,見直しには参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が求められるなど事柄の性質上課題も多く,検討に相応の時間を要すること,参議院においては,同判決の趣旨を踏まえ,参議院改革協議会の下に設置された専門委員会における協議がされるなど,選挙制度の仕組み自体の見直しを含む制度改革に向けての検討が行われていたことなどを考慮し,平成22年選挙までに上記議員定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえないとして,上記議員定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないと判示するとともに,都道府県を単位として各 選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど,現行の選挙 とともに,都道府県を単位として各 選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ,できるだけ速やかに違憲の問題が生ずる上記の不平等状態を解消する必要がある旨を指摘した。 ⑷ 平成24年大法廷判決の言渡し後,平成24年11月16日に公職選挙法の一部を改正する法律案が成立し(平成24年法律第94号。以下「平成24年改正法」という。),同月26日に施行された。 平成24年改正法の内容は,平成25年7月に施行される通常選挙に向けた改正として選挙区選出議員について4選挙区で定数を4増4減するものであり,その附則には,同28年に施行される通常選挙に向けて,選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い,結論を得るものとする旨の規定が置かれていた。 平成25年7月21日,上記定数配分規定の下での初めての通常選挙が施行された(以下「平成25年選挙」という。)。同選挙当時の選挙区間の最大較差は4.77倍であった。 ⑸ 平成25年9月,参議院において平成28年に施行される通常選挙に向けた参議院選挙制度改革について協議を行うため,選挙制度の改革に関する検討会の下に選挙制度協議会が設置された。同協議会においては,平成26年4月に選挙制度の仕組みの見直しを内容とする具体的な改正案として座長案が示され,その後に同案の見直し案も示された。これらの案は,基本的には,議員1人当たりの人口の少ない一定数の選挙区を隣接区と合区してその定数を削減し,人口の多い一定数の選挙区の定数を増やして選挙区間の最大較差を大幅に縮小するというものであるところ,同協議会において,同年5月以降,上記の案や参議院 定数の選挙区を隣接区と合区してその定数を削減し,人口の多い一定数の選挙区の定数を増やして選挙区間の最大較差を大幅に縮小するというものであるところ,同協議会において,同年5月以降,上記の案や参議院の各会派の提案等をめぐり検討と協議が行われた(上記各会派の提案の中には,上記の案を基礎として合 区の範囲等に修正を加える提案のほか,都道府県に代えてより広域の選挙区の単位を新たに創設する提案等が含まれていた。)。そして,同協議会において,更に同年11月以降,意見集約に向けて協議が行われたが,各会派の意見が一致しなかったことから,同年12月26日,各会派から示された提案等を併記した報告書が参議院議長に提出された。 ⑹ このような協議が行われている状況の中で,平成25年選挙につき,最高裁平成26年11月26日大法廷判決・民集68巻9号1363頁(以下「平成26年大法廷判決」という。)は,平成24年大法廷判決の判断に沿って,平成24年改正法による前記4増4減の措置は,都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持して一部の選挙区の定数を増減するにとどまり,現に選挙区間の最大較差については上記改正の前後を通じてなお5倍前後の水準が続いていたのであるから,投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態を解消するには足りないものであったといわざるを得ず,したがって,平成24年改正法による上記の措置を経た後も,選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに,平成24年大法廷判決の言渡しから平成25年選挙までの約9か月の間に,前記のとおりの附則を定めた平成24年改正法が 値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに,平成24年大法廷判決の言渡しから平成25年選挙までの約9か月の間に,前記のとおりの附則を定めた平成24年改正法が成立し,参議院の検討機関において選挙制度の仕組みの見直しの検討が行われてきていること等の事情に照らすと,国会における是正の実現に向けた取組が平成24年大法廷判決の趣旨を踏まえた国会の裁量権の行使の在り方として相当なものでなかったということはできないなどとして,平成25年選挙までの間に更に上記の見直しを内容とする法改正がされなかったことをもって国会の裁量権の限 界を超えるものということはできないと判示し,都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなどの具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ,できるだけ速やかに,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって上記の不平等状態が解消される必要がある旨を指摘した。 ⑺ 選挙制度の改革に関する検討会は,前記⑸の報告書の提出を受けて協議を行ったが,各会派が一致する結論を得られなかったことから,平成27年5月29日,各会派において法案化作業を行うこととされた。そして,各会派における検討が進められた結果,各会派の見解は,人口の少ない選挙区について合区を導入することを内容とする①「4県2合区を含む10増10減」の改正案と②「20県10合区による12増12減」の改正案とにおおむね集約され,同年7月23日,上記各案を内容とする公職選挙法の一部を改正する法律案がそれぞれ国会に提出された。上記①の改正案に係る法律案は,選挙区選出議員の選挙区及び定数について,鳥取県 とにおおむね集約され,同年7月23日,上記各案を内容とする公職選挙法の一部を改正する法律案がそれぞれ国会に提出された。上記①の改正案に係る法律案は,選挙区選出議員の選挙区及び定数について,鳥取県及び島根県,徳島県及び高知県をそれぞれ合区して定数2人の選挙区とするとともに,3選挙区の定数を2人ずつ減員し,5選挙区の定数を2人ずつ増員することなどを内容とするものであり,その附則7条には,平成31年に行われる通常選挙に向けて,参議院の在り方を踏まえて,選挙区間における議員1人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い,必ず結論を得るものとするとの規定が置かれていた。 平成27年7月28日,前記①の改正案に係る公職選挙法の一部を改正する法律案が成立し(平成27年法律第60号。以下「平成27年改正法」という。),同年11月5日に施行された(以下,同法に よる改正後の定数配分規定を「本件旧定数配分規定」という。)。同法による公職選挙法の改正(以下「平成27年改正」という。)の結果,平成22年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は2.97倍となった。 平成28年7月10日,本件旧定数配分規定の下での初めての通常選挙が施行された(以下「平成28年選挙」という。)。同選挙当時の選挙区間の最大較差は3.08倍であった。 ⑻ 平成29年2月,参議院の組織及び運営に関する諸問題を調査検討するため,各会派代表による参議院改革協議会が設置され,同年4月,同協議会の下に,参議院選挙制度改革について集中的に調査検討を進めるために,各会派代表による選挙制度に関する専門委員会が設置された(乙8) め,各会派代表による参議院改革協議会が設置され,同年4月,同協議会の下に,参議院選挙制度改革について集中的に調査検討を進めるために,各会派代表による選挙制度に関する専門委員会が設置された(乙8)。 上記専門委員会では,同年5月から平成30年4月にかけて17回にわたり参議院の選挙制度に関する協議が行われ,上記専門員会は,同年5月7日,後記⑼の平成29年大法廷判決も踏まえ,参議院の在り方,一票の較差,選挙制度の枠組みなどの論点ごとの意見を取りまとめ,参議院選挙制度改革に関する具体的な方向性についての各会派の意見を併記する形で作成した「参議院改革協議会選挙制度に関する専門委員会報告書」を上記参議院改革協議会に提出した(乙10,乙11の1,2)。 ⑼ このような協議が行われている中で,平成28年選挙につき,最高裁平成29年9月27日大法廷判決・民集71巻7号1139頁(以下「平成29年大法廷判決」という。)は,平成28年選挙は,平成26年大法廷判決の言渡し後に成立した平成27年改正法による改正後の本件旧定数配分規定の下で施行されたものであるところ,同法は,従前の改正のように単に一部の選挙区の定数を増減するにと どまらず,人口の少ない選挙区について,参議院の創設以来初めての合区を行うことにより,都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを見直すことをも内容とするものであり,これによって平成25年選挙当時まで数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は2.97倍(平成28年選挙当時は3.08倍)にまで縮小するに至ったのであるから,平成27年改正法は,参議院議員選挙の特性を踏まえ,平成24年大法廷判決及び平成26年大法 きた選挙区間の最大較差は2.97倍(平成28年選挙当時は3.08倍)にまで縮小するに至ったのであるから,平成27年改正法は,参議院議員選挙の特性を踏まえ,平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決の趣旨に沿って較差の是正を図ったものとみることができ,平成27年改正法は,その附則において,次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨を定めており,これによって,今後における投票価値の較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が示されるとともに,再び上記のような大きな較差を生じさせることのないよう配慮されているものということができるから,平成27年改正は,都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを改めて,長年にわたり選挙区間における大きな投票価値の不均衡が継続してきた状態から脱せしめるとともに,更なる較差の是正を指向するものと評価することができるとした上で,以上のような事情を総合すれば,平成28年選挙当時,平成27年改正後の定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできないと判断した。 ⑽ 前記⑻の参議院改革協議会において,前記⑻の報告書を受けて協議を行ったが,各会派の意見には隔たりがある中,平成30年7月4日,各会派代表者懇談会において,各会派において法案化作業を行うこととされた(乙16)。そして,各会派における検討が進められた 結果,①参議院選挙区選出議員の定数を2人増加して148人とした上で,2人を埼玉県に配分してその改選定数を4人とし,選挙区間 結果,①参議院選挙区選出議員の定数を2人増加して148人とした上で,2人を埼玉県に配分してその改選定数を4人とし,選挙区間の最大較差を2.985倍とするとともに,参議院比例代表選出議員の定数を4人増加して100人とし,比例代表選挙において,名簿に予め順位を付する拘束式の特定枠を設けることができる制度を導入することなどを内容とする自由民主党・こころ及び無所属クラブ案(以下「自民・無ク案」という。),②現行の制度に変え,全国を11の区域に分けて大選挙区制を採用する公明党案,③参議院選挙区選出議員の定数を2人増加した上で,埼玉県選挙区の定数を8人とするとともに,参議院比例代表選出議員の定数を2人減少する国民民主党・新緑風会案,④参議院議員の定数を218人にするとともに,全国を11の区域に分けて大選挙区制を採用する維新の党案,⑤福井県と石川県を合区することによって定数を2人削減し,埼玉県選挙区を2人増加する立憲民主党・民友会及び希望の党案が,参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会に付託された(乙13の1,乙16)。同委員会では,平成29年大法廷判決を踏まえた質疑がされ,自民・無ク案の発議者から,地方公共団体から合区解消に関する決議が多数されているところ,合区解消の問題,憲法改正の問題には時間的な制約もあって難しい現状の中で,特定枠を設け,人口的に少数派ともいうべき条件不利地域の声を国政に届ける等,多様な民意の反映に資するものであり,地方の声,多様な声を国政に反映させるという参議院の在り方を踏まえて一票の較差を是正している同案は,次の通常選挙に向けての一つの抜本的な見直しに当たるなどの説明がされた(乙13の2・9頁,10頁,16頁,18頁,乙13の3・ 映させるという参議院の在り方を踏まえて一票の較差を是正している同案は,次の通常選挙に向けての一つの抜本的な見直しに当たるなどの説明がされた(乙13の2・9頁,10頁,16頁,18頁,乙13の3・3頁,乙13の6・2頁,3頁,8頁)。 同月11日,同委員会において,自民・無ク案が多数をもって可決 すべきものと決定され,「今後の参議院選挙制度改革については,憲法の趣旨にのっとり,参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行うこと」についてその実現に努めるべきであること等を内容とする附帯決議がされた(乙13の3)。 同月18日,上記①の改正案に係る公職選挙法の一部を改正する法律案が成立し(平成30年法律第75号。以下「平成30年改正法」という。),施行された(以下,同法による改正後の定数配分規定を「本件定数配分規定」という。)(乙13の7)。 同法による公職選挙法の改正(以下「平成30年改正」という。)の結果,平成27年国勢調査日本国民人口による参議院選挙区選出議員の選挙区間の最大較差は2.985倍となった(乙16の8頁)。 ⑾ 令和元年7月21日,本件定数配分規定の下での初めての通常選挙が施行された(以下「本件選挙」という。)。 本件選挙当時の選挙区間の最大較差は,最小の福井県選挙区を1とすると,宮城県選挙区が最大の3.002倍であり,福井県選挙区と比べて較差が3倍以上となった選挙区は宮城県選挙区のみであった。 原告は岡山県選挙区の選挙人であり,福井県選挙区と岡山県選挙区の較差は2.454倍であった(乙1の1)。 3 争点本件定数配分規定が議員定数を人口に比例して配分していない点において憲法に違反し無効 選挙区の選挙人であり,福井県選挙区と岡山県選挙区の較差は2.454倍であった(乙1の1)。 3 争点本件定数配分規定が議員定数を人口に比例して配分していない点において憲法に違反し無効であるか否か。 4 争点に関する当事者の主張⑴ 原告の主張ア憲法は,主権が国民に存することを明らかにしており(憲法1条),国民は国会における代表者を通じて,その主権を行使する(憲 法前文第1段落)ところ,両議院の議事は,原則として,出席議員の過半数でこれを決する(憲法56条2項)から,主権を行使する国民が両議院の議事を可決・否決する権力を有しなければならない。人口比例選挙の場合,主権を有する国民が人口比例選挙で選出された国会議員を通じて出席議員の過半数で両議院の議事を決定するという方法で主権を行使する。しかし,非人口比例選挙の場合,国民の半数未満から選出された国会議員の過半数の投票が主権を有する国民の過半数から選出された国会議員の半数未満に優越して各議院の議事の可決・否決をし得ることになる。 したがって,憲法は,人口比例選挙を要求しているというべきである。 そうすると,本件定数配分規定は,憲法56条2項,1条,前文第1項第1文冒頭の定める人口比例選挙の要求に違反しているから,憲法98条1項により無効である。 イ平成30年改正は,改正前の2つの合区をそのまま維持するにとどまるものであり,投票価値の最大較差も平成28年選挙の3. 08倍を2.985倍に減少させたという微細な変化に止まっており,選挙区割りの抜本的見直しとなっていない。そもそも選挙制度の抜本的な見直しとして極めて不十分であり,平成27年改正の附則7条(平成 08倍を2.985倍に減少させたという微細な変化に止まっており,選挙区割りの抜本的見直しとなっていない。そもそも選挙制度の抜本的な見直しとして極めて不十分であり,平成27年改正の附則7条(平成31年に行われる通常選挙に向けて,参議院の在り方を踏まえて,選挙区間における議員1人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い,必ず結論を得るものとするとの規定)を遵守していない。 加えて,平成30年改正は,平成27年改正の上記附則に相当する文言を欠いており,平成29年大法廷判決が指摘した「更なる是 正の方向性と立法府の決意」を欠いている。 ウ昭和22年から平成17年の間に,15個の法律案について,衆議院の多数の意見と参議院の多数意見が異なったことがあり,いずれについても,参議院の多数意見が,各法律の成立又は不成立(廃案)を決定した。このことは,参議院が衆議院と全く同じレベルで,国権の最高機関として民意を国政に反映する責務を負っていることを示しており,このことからすれば,参議院議員選挙における投票価値の平等の要請は,衆議院議員選挙に劣後してはならないことが憲法上の要求である。 本件選挙における選挙区間の投票価値の較差は3.002倍であり,平成29年衆議院議員選挙(小選挙区選挙)における選挙区間の投票価値の較差である1.979倍と比べて,投票価値の平等の点で劣後しているから,本件選挙は憲法に違反しており,無効である。 ⑵ 被告らの主張ア憲法前文第1段落第1文,1条及び56条2項が人口比例選挙を要求するという原告の主張は,独自の見解にすぎない。 イ憲法は,投 違反しており,無効である。 ⑵ 被告らの主張ア憲法前文第1段落第1文,1条及び56条2項が人口比例選挙を要求するという原告の主張は,独自の見解にすぎない。 イ憲法は,投票価値の平等を要求しているが,選挙制度の仕組みの決定については国会に広範な裁量が認められているから,投票価値の平等は,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。 憲法が二院制を採用した趣旨及び定数の偶数配分という参議院議員の選挙制度における技術的制約等に照らすと,国会の定めた定数配分規定が憲法14条1項等の規定に違反して違憲と評価されるのは,参議院の独自性その他の政策的目的ないし理由を考慮して も,投票価値の平等の見地からみて違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じており,かつ,当該選挙までの期間内にその是正が図られなかったことが国会の裁量権の限界を超える場合に限られるものと解すべきである。 ウ国会が,選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていた旨判断した平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決の趣旨に沿い,一部の選挙区について2つの県を併せた選挙区(以下「合区」という。)を創設することなどを内容とする平成27年改正を行ったことにより,最大較差は2.97倍となり,上記不平等状態は解消された。 同改正後の定数配分規定に基づいて施行された平成28年選挙に係る平成29年大法廷判決においても,最大較差が3.08倍であった平成28年選挙当時,投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,平成27 た平成28年選挙に係る平成29年大法廷判決においても,最大較差が3.08倍であった平成28年選挙当時,投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,平成27年改正後の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない旨判示された。 さらに,平成30年改正は,参議院選挙区選出議員選挙に関しては,平成27年改正による選挙区割りを維持しつつ,埼玉県選挙区の定数を2人増員するものであり,その結果,平成28年選挙時の最大較差である3.08倍から,平成27年国勢調査日本国民人口による最大較差として2.985倍にまで縮小した。 平成27年改正法に続いて平成30年改正法においても,参議院の選挙区選出議員について都道府県を構成する住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を原則として維持したことは,両議院の選挙制度が同質的なものとなっている中で,参議院の選挙区選出議員の選出基盤について衆議院議員のそれとは異なる 要素を付加し,地方の民意を含む多角的な民意の反映を可能とするものであるから,憲法が二院制を採用した趣旨に沿うものといえる。 さらに,そもそも,選挙権は,民主主義国家において,治者でもあり被治者でもある国民が自らの意見等を国政に反映させることを可能にする極めて重要な権利であるところ,人口の多い都市部に居住する多数者のみならず,山間部などのいわゆる過疎地域を含む地域に住む少数者の意見も十分に国政に届くような定数配分規定を定めることもまた,国会において正当に考慮することができる政策目的ないし理由となるものというべきである。 平成29年大法廷判決においても,選挙制度の仕組みを決定するに当た 届くような定数配分規定を定めることもまた,国会において正当に考慮することができる政策目的ないし理由となるものというべきである。 平成29年大法廷判決においても,選挙制度の仕組みを決定するに当たり,政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮することについては,投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて,直ちに国会の合理的な裁量を超えるとは解されない旨判示されている。 さらに,立法府においては,参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会の附帯決議として,平成30年改正後も参議院選挙制度改革に向けた検討を継続していく決意を表明しており,このことは,再び過去にあったような大きな較差を生じさせないという配慮がなされているものとして評価すべきである。 以上の諸点に,参議院議員については,憲法上3年ごとに議員の半数を改選するものとされ(憲法46条),定数の偶数配分が求められるなどの技術的制約があること等を併せ考慮すると,本件選挙時,本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は,投票価値の平等の重要性に照らして看過し得ない程度に達しているとはいえず,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたとはいえない。 エ憲法秩序の下における司法権と立法権との関係に照らすと,当該定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っている場合において,当該選挙までの期間内にその是正をしなかったことが国会の裁量権の限界を超えるといえるか否かを判断するに当たっては,単に期間の長短のみならず,是正のために採るべき措置の内容,そのために検 において,当該選挙までの期間内にその是正をしなかったことが国会の裁量権の限界を超えるといえるか否かを判断するに当たっては,単に期間の長短のみならず,是正のために採るべき措置の内容,そのために検討を要する事項,実際に必要となる手続や作業等の諸般の事情を総合考慮して,国会における是正の実現に向けた取組みが司法の判断の趣旨を踏まえた裁量権の行使の在り方として相当なものであったといえるか否かという観点に立って評価すべきである。 そうすると,当該選挙までの期間内にその是正をしなかったことが国会の裁量権の限界を超えるか否かは,裁判所において当該定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っているとの判断が示されるなど,国会が,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態となったことを認識し得た時期を基準(始期)として,上記の諸般の事情を総合考慮して判断されるべきである。 これを本件についてみると,平成29年大法廷判決において,都道府県単位の選挙区を一部改めて合区を創設した平成27年改正後の定数配分規定に基づき施行された平成28年選挙当時,選挙区間における投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に当たらない旨判断が示された。本件選挙は,同大法廷判決後,最大較差の更なる縮小を目指した平成30年改正による定数配分規定に基づく初めての参議院議員通常選挙である上,本件選挙当時における最大較差は3.00倍であり,平成28年選 挙当時の最大較差3.08倍から更に縮小したことなどを踏まえると,国会において,本件選挙までの間に上記状態に至っていたことを認識し得たとは到底いえない。 そう 挙当時の最大較差3.08倍から更に縮小したことなどを踏まえると,国会において,本件選挙までの間に上記状態に至っていたことを認識し得たとは到底いえない。 そうすると,仮に,本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡について違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたと評価されたとしても,国会における是正の実現に向けた取組みが司法の判断の趣旨を踏まえた裁量権の行使の在り方として相当でなかったとは認められないから,本件選挙までの期間内に本件定数配分規定の改正がされなかったことをもって国会の裁量権の限界を超えるものとはいえない。 第3 当裁判所の判断1⑴ 憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら,憲法は,国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるために選挙制度をどのような制度にするかの決定を国会の裁量に委ねているのであるから,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるものではなく,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ,国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り,それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても,直ちに憲法に違反するとはいえない。 原告は,憲法56条2項,1条,前文第1文前段等を根拠として,本件選挙は憲法の保障する1人1票の原則による人口比例選挙に反して無効であるなどと主張するが,この主張に理由のないことは以 根拠として,本件選挙は憲法の保障する1人1票の原則による人口比例選挙に反して無効であるなどと主張するが,この主張に理由のないことは以 上に述べたところから明らかである。 ⑵ 憲法が二院制を採用し衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けている趣旨は,それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって,国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところにあると解される。前記参議院議員の選挙制度の仕組みは,このような観点から,参議院議員について,全国選出議員(昭和57年改正後は比例代表選出議員)と地方選出議員(同改正後は選挙区選出議員)に分け,前者については全国(全都道府県)の区域を通じて選挙するものとし,後者については都道府県を各選挙区の単位としたものである。昭和22年の参議院議員選挙法及び同25年の公職選挙法の制定当時において,このような選挙制度の仕組みを定めたことが,国会の有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えるものであったということはできない。しかしながら,社会的,経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口変動の結果,上記の仕組みの下で投票価値の著しい不平等状態が生じ,かつ,それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが,国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には,当該定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である。 ⑶ 憲法は,二院制の下で,一定の事項について衆議院の優越を認める反面,参議院議員につき任期を6年の長期とし,解散もなく,選挙は3年ごとにその半数について行うことを定めている(46条等)。 その趣旨は,立法を始めとする多くの事柄について参 いて衆議院の優越を認める反面,参議院議員につき任期を6年の長期とし,解散もなく,選挙は3年ごとにその半数について行うことを定めている(46条等)。 その趣旨は,立法を始めとする多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えつつ,参議院議員の任期をより長期とすること等によって,多角的かつ長期的な視点からの民意を反映させ,衆議院との権限の抑制,均衡を図り,国政の運営の安定性,継続性 を確保しようとしたものと解される。そして,いかなる具体的な選挙制度によって,上記の憲法の趣旨を実現し,投票価値の平等の要請と調和させていくかは,二院制の下における参議院の性格や機能及び衆議院との異同をどのように位置付け,これをそれぞれの選挙制度にいかに反映させていくかという点を含め,国会の合理的な裁量に委ねられていると解すべきである。 ⑷ 前記⑴のとおり,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるものではなく,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであり,また,前記⑵のとおり,憲法が,国会の構成について二院制を採用し,衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けている趣旨に鑑みれば,二院制の下での参議院の在り方や役割を踏まえ,参議院議員につき衆議院議員とは異なる選挙制度を採用し,国民各層の多様な意見を反映させて,参議院に衆議院と異なる独自の機能を発揮させようとすることも,選挙制度の仕組みを定めるに当たって国会に委ねられた裁量権の合理的行使として是認し得るものと考えられる。そして,具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり,一定の地域の住民の意思を集約的に反映さ 選挙制度の仕組みを定めるに当たって国会に委ねられた裁量権の合理的行使として是認し得るものと考えられる。そして,具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり,一定の地域の住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味する観点から,政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮すること自体が否定されるべきものであるとはいえず,投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて,このような要素を踏まえた選挙制度を構築することが直ちに国会の合理的な裁量を超えるものとは解されない。 ⑸ 平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決は,上記のような選挙制度の構築についての国会の裁量権行使の合理性を判断する に当たって,長年にわたる制度及び社会状況の変化を考慮すべき必要性を指摘し,その変化として,参議院議員と衆議院議員の各選挙制度が同質的なものとなってきており,国政の運営における参議院の役割が増大してきていることに加え,衆議院については投票価値の平等の要請に対する制度的な配慮として選挙区間の人口較差が2倍未満となることを基本とする旨の区割りの基準が定められていることなどを挙げて,これらの事情の下では,昭和58年大法廷判決が長期にわたる投票価値の大きな較差の継続を許容し得る根拠として挙げていた諸点につき,数十年間にもわたり5倍前後の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっている旨を指摘するとともに,都道府県を各選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はなく,むしろ,都道府県を各選挙区の単位として固定する結果,上記のように長期にわたり大きな較差が継続していた る旨を指摘するとともに,都道府県を各選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はなく,むしろ,都道府県を各選挙区の単位として固定する結果,上記のように長期にわたり大きな較差が継続していた状況の下では,上記の都道府県の意義や実体等をもって上記の選挙制度の仕組みの合理性を基礎付けるには足りなくなっていたとしたものである。しかし,この判断は,都道府県を各選挙区の単位として固定することが投票価値の大きな不平等状態を長期にわたって継続させてきた要因であるとみたことによるものにほかならず,各選挙区の区域を定めるに当たり,都道府県という単位を用いること自体を不合理なものとして許されないとしたものではない。 もとより,参議院議員の選挙について,直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難く,参議院についても更に適切に民意が反映されるよう投票価値の平等の要請について十分に配慮することが求められるものの,上記のような憲法の趣旨,参議院の役割等に照らすと,参議院議員の選挙における投票価値の 平等は,憲法上3年ごとに議員の半数を改選することとされていることなど,議員定数の配分に当たり考慮を要する固有の要素があることを踏まえつつ,二院制に係る上記の憲法の趣旨との調和の下に実現されるべきであることに変わりはないというべきである(以上につき平成29年大法廷判決)。 ⑹ 原告は,昭和22年から平成17年の間に,15個の法律案について,衆議院の多数の意見と参議院の多数意見とが異なったことがあり,いずれについても,参議院の多数意見に従って,各法律が成立し又は廃案となっており,このことは,参議院が衆議院と全く同じレベルで,国権の最高機関 の多数の意見と参議院の多数意見とが異なったことがあり,いずれについても,参議院の多数意見に従って,各法律が成立し又は廃案となっており,このことは,参議院が衆議院と全く同じレベルで,国権の最高機関として民意を国政に反映する責務を負っていることを示しているから,参議院議員選挙における投票価値の平等の要請は,衆議院議員選挙に劣後してはならないことが憲法上の要請であると主張する。 しかしながら,原告の主張する事情は,憲法が二院制を採用し,立法を始めとする多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えていることの反映ではあるものの,参議院の衆議院と異なる独自の機能が失われかねない。前記⑷のとおり,二院制の下での参議院の在り方や役割を踏まえ,参議院議員につき衆議院議員とは異なる選挙制度を採用し,国民各層の多様な意見を反映させて,参議院に衆議院と異なる独自の機能を発揮させようとすることも,選挙制度の仕組みを定めるに当たって国会に委ねられた裁量権の合理的行使として是認し得るものと考えられる。したがって,具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり,一定の地域の住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味する観点から,政治的・文化的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮すること自体が否定されるべき ものであるとはいえないから,これらの点を考慮した結果として,参議院議員選挙における投票価値の較差が衆議院議員選挙におけるそれと比べて大きいものとなったとしても,そのことをもって直ちに国会の合理的な裁量を超えるものということはできず,原告の上記主張も採用することはできない。 2⑴ 平成29 衆議院議員選挙におけるそれと比べて大きいものとなったとしても,そのことをもって直ちに国会の合理的な裁量を超えるものということはできず,原告の上記主張も採用することはできない。 2⑴ 平成29年大法廷判決は,平成27年改正法は,従前の改正のように単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず,人口の少ない選挙区について,参議院の創設以来初めての合区を行うことにより,都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを見直すことをも内容とするものであり,これによって平成25年選挙当時まで数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は2.97倍(平成28年選挙当時は3.08倍)にまで縮小するに至ったのであるから,同改正は,上記の参議院議員選挙の特性を踏まえ,平成24年大法廷判決及び平成26年大法廷判決の趣旨に沿って較差の是正を図ったものとみることができる上,平成27年改正法は,その附則において,次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨を定めており,これによって,今後における投票価値の較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が示されるとともに,再び上記のような大きな較差を生じさせることのないよう配慮されているものということができるから,平成27年改正は,都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを改めて,長年にわたり選挙区間における大きな投票価値の不均衡が継続してきた状態から脱せしめるとともに,更なる較差の是正を指向するものと評価することができることからすれば,平成28年選挙当時,平成27年改正後の本件旧定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は, 違憲の問題が 挙当時,平成27年改正後の本件旧定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は, 違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできないと判断した。 ⑵ア本件選挙は,平成29年大法廷判決の言渡し後に成立した平成30年改正法による改正後の本件定数配分規定の下で施行されたものであるところ,平成30年改正は,参議院選挙区選出議員の定数を2人増加して148人とした上で,2人を埼玉県に配分してその改選定数を4人とし,選挙区間の最大較差を2.985倍とするとともに,参議院比例代表選出議員の定数を4人増加して100人とし,比例代表選挙において,名簿に予め順位を付する拘束式の特定枠を設けることができる制度を導入することなどを内容とするものである。 この平成30年改正は,参議院の会派の意見には,隔たりがあり,全国を11の区域に分けて大選挙区制を採用するなどの新たな選挙制度を設けるには時間的な制約もあり,本件選挙までに選挙制度の抜本的見直しを行うには困難な状況の中で,長年にわたり選挙区間における大きな投票価値の不均衡が継続してきた状態から脱せしめた平成27年改正に引き続き,平成30年大法廷判決を踏まえ,投票価値の較差を図るための現実的な選択肢として,漸進的な是正を図ったものと評価することができ,平成27年改正法の附則において定められた「選挙区間における議員1人当たりの人口の較差の是正」を考慮した改正であるということができる。 イ他方において,平成30年改正の内容は,平成27年改正法の附則において定められた選挙制度の抜本的見直しがなされたものとは,にわかに言い難い 差の是正」を考慮した改正であるということができる。 イ他方において,平成30年改正の内容は,平成27年改正法の附則において定められた選挙制度の抜本的見直しがなされたものとは,にわかに言い難い。 しかしながら,前記1⑶のとおり,いかなる具体的な選挙制度に よって,憲法の二院制の趣旨を実現し,投票価値の平等の要請と調和させていくかは,国会の合理的な裁量に委ねられていると解すべきであるから,選挙制度の抜本的見直しがいまだなされていないからといって,直ちに,本件選挙について,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものということはできない。 (ア) そして,証拠によれば,次の事実が認められる。 平成27年改正の際に,合区の対象を鳥取県,島根県,高知県及び徳島県とした理由は,人口の少ない都道府県は,少ない方から順に鳥取県,島根県,高知県,徳島県であり,これらは互いに隣接する人口の少ない県同士での組合せが可能である一方で,徳島県の次に人口の少ない都道府県は福井県であり,福井県に隣接する府県の人口はいずれもそれほど少ないわけではなく,これらの府県と福井県とを合区することとした場合には,これらの府県と人口のより少ない県との間で不公平さを生じさせることになるためであったこと(乙5の2・8頁),「20県10合区」などを内容とする法律案については,国会において,合区の対象は20県と全体の4割に及んでおり,単独の県と合区対象の県の不公平感は一層顕著になることや,歴史的,地理的,社会的なつながり,条件がほとんどない合区による様々な矛盾を生じることになるといった意見が出されていたこと(乙5の2・16頁)が認められる。 また,平成27年当時, になることや,歴史的,地理的,社会的なつながり,条件がほとんどない合区による様々な矛盾を生じることになるといった意見が出されていたこと(乙5の2・16頁)が認められる。 また,平成27年当時,合区の検討対象とされていた地方公共団体から,地方自治法99条に基づき,選挙制度は,人口だけでなく,面積や行政区画のほか,地方が有する自然環境保護や食糧供給基地等の多面的機能等を総合的に考慮する必要があること,東京一極集中を是正し,地方の活性化を図るためには当事者であ る地方の意見が最大限に活かされることが極めて重要であり,人口により単純に区割りを決定する合区は,地方創生に逆行することなどの合区創設に反対し,都道府県単位の選挙区の維持を求める意見書が多数提出されたことが認められる(乙28の1,8,10~12,22,23,29,31~34,61,62,64~71,100,101,126~144,150,152,169,171~200)。さらに,全国町村会及び全国知事会からも,都道府県単位の代表が国政に参加する仕組みや合区の解消,地域の実情や声が国会に反映できる選挙制度の検討等を求める意見が出されていたこと(乙21の1~7,乙25の1)なども認められる。 そして,平成27年改正後の定数配分規定の下で施行された平成28年選挙において合区された鳥取県,島根県,徳島県及び高知県の投票率は,島根県を除く各県で低下するとともに,当時における過去最低の投票率を記録したこと(乙5の4,乙18の8),その無効投票率(当時)は,島根県を除いて全国平均を相当程度上回り,特に,地元出身の候補者のいなかった高知県は全国で最高となったこと(乙5の5,乙18の8),本件選挙で と(乙5の4,乙18の8),その無効投票率(当時)は,島根県を除いて全国平均を相当程度上回り,特に,地元出身の候補者のいなかった高知県は全国で最高となったこと(乙5の5,乙18の8),本件選挙でも,徳島県の投票率は全国最低の約38.59%であったほか,鳥取県及び島根県でもそれぞれ過去最低の投票率を記録したこと(乙1の2,乙19の7),無効票率についても,ともに高知県出身の自民党と野党統一候補の事実上の一騎打ちとなった徳島県では全国平均である2.53%を大きく上回る最も多い6.04%を記録したこと(乙1の3,乙19の8・9)が認められる。 (イ) このように,合区の設置に対する反対意見が強く,実際に,合区の弊害として,投票率の低下や無効票の増加が生じていること も考慮すると,平成30年改正において,合区を更に設置しなかったことが国会の裁量の範囲を超えるということもできないし,そもそも,単に合区を増加させることをもって,選挙制度の抜本的見直しとはいい難い。そして,前記第2の1⑻及び⑽のとおり,参議院の各会派の意見には隔たりがあり,全国を11の区域に分けて大選挙区制を採用するなどの新たな選挙制度を設けるためには更に慎重な検討を重ねる必要があると考えられる。以上の事情に照らすと,平成27年改正において,必ず結論を得るとした抜本的見直しが得られなかったとの一事のみで直ちに違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じているということはできない。そして,平成30年改正でも,参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会において,「今後の参議院選挙制度改革については,憲法の趣旨にのっとり,参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行うこと」 平成30年改正でも,参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会において,「今後の参議院選挙制度改革については,憲法の趣旨にのっとり,参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行うこと」についてその実現に努めるべきであること等を内容とする附帯決議がされ,引き続き選挙制度改革を進めるという立法府の意向が示されており,再び以前のような大きな較差を生じさせることのないように配慮されているものと解される。 ⑶ 以上のような事情を総合すれば,本件選挙当時,平成30年改正後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。 3 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所岡山支部第2部 裁判長裁判官塩田直也 裁判官榎本康浩 裁判官西田昌吾
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