平成15(行ウ)10 行政文書不開示処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年2月13日 甲府地方裁判所
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判決文本文23,179 文字)

主文 原告の被告知事に対する本件訴え中,被告知事が,原告に対して平成13年11月8日付けでした行政文書一部開示決定及び平成15年5月29日付けでした行政文書一部開示決定処分一部変更決定のうち,別紙一覧表の第1の24及び第5の9の工作物補償額算定一覧表の原本を不開示とした部分の取消しを求める部分を却下する。 前項の各決定のうち,別紙一覧表当裁判所判断欄に開示と記載の各項目についてこれを不開示とした部分を取り消す。 原告の被告知事に対するその余の請求及び被告県に対する請求を棄却する。 訴訟費用は,被告知事及び原告に生じた費用の各2分の1を被告知事の負担とし,被告知事及び原告に生じたその余の費用並びに被告県に生じた費用を原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告知事が平成13年11月8日付けでした行政文書一部開示決定(以下「本件決定」という。)及び平成15年5月29日付けでした行政文書一部開示決定処分一部変更決定(以下「本件変更決定」という。)のうち,下記(1)の行政文書について全部不開示とした処分及び下記(2)の行政文書について一部不開示とした処分を取り消す。 (1)ア南アルプス市○○の155番のうち,東側の238.29平方メートル部分(以下,この部分の土地を「本件155番道路敷地」という。)に関する①土地売買契約書(その関連文書を含む。)②土地調書又は土地確認書③土地の補償額算定調書④交渉記録 ⑤買収の補償・設計・契約についての取扱いの経緯を記録している文書⑥工作物補償額算定一覧表の算定額の算出資料が記録されている文書⑦交換契約書(甲17の2)の原本⑧工作物補償額算定一覧表(別紙一覧表第1の24及び第5の9)の原本イ韮崎・櫛形・豊富線の道路改良事業(以下「本件事業」 算定額の算出資料が記録されている文書⑦交換契約書(甲17の2)の原本⑧工作物補償額算定一覧表(別紙一覧表第1の24及び第5の9)の原本イ韮崎・櫛形・豊富線の道路改良事業(以下「本件事業」という。)の用地とされた上記道路と広域農道の交差点付近の土地(本件155番道路敷地を除く)のうち,収用部分に関する土地調書又は土地確認書,交渉記録(以下,上記ア及びイの各文書を「本件155番道路敷地等関連文書」という。)(2)別紙一覧表記載の各文書 被告県は,原告に対し,30万円及びこれに対する平成13年11月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 事案の要旨本件は,原告が,山梨県情報公開条例7条(平成11年12月21日山梨県条例第54号。以下「本件条例」という。)に基づき,被告知事に対し,本件事業のための用地買収に関する補償・設計・契約文書,土地調書及び補償額算定調書等の行政文書の公開を請求したところ(以下この文書開示請求を「本件開示請求」という。),平成13年11月8日付けで一部を不開示とする決定(本件決定)及び平成15年5月29日付けで本件決定を一部変更する決定(本件変更決定)がされたので,その取消しを求めるとともに,本件決定は違法であり,原告はこれによって精神的,経済的損失を被ったと主張して,被告県に対し,国家賠償法に基づき,慰藉料30万円の支払を求める事案である(附帯請求は,本件決定の後の日からの民法所定年5分の割合による遅延損害金請求である。)。 前提となる事実当事者間に争いがない事実,各項末掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認める事実は,次のとおりである(末尾に証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがない。)。 (1)本件条例の定め(乙5)ア本件条例は,地方自治 実,各項末掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認める事実は,次のとおりである(末尾に証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがない。)。 (1)本件条例の定め(乙5)ア本件条例は,地方自治の本旨にのっとり,行政文書の開示を請求する県民の権利を明らかにするとともに,行政文書の開示に関し必要な事項を定めること等により,県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし県民の県政への理解と信頼を一段と深めるとともに,県民が県政に関する情報を的確に知る権利の尊重に資することにより,県民参画の開かれた県政を一層推進することを目的とし(本件条例1条),実施機関は,行政文書の開示を求める県民の権利が十分に尊重されるようにこの条例を解釈し,及び運用するものとする。この場合において,実施機関は,個人情報(山梨県個人情報保護条例(平成5年山梨県条例第1号)第2条第1号に規定する個人情報をいう。)がみだりに公にされることのないよう最大限に配慮しなければならない(本件条例3条)としたうえで,何人も,実施機関に対して当該実施機関の保有する行政文書の開示を請求することができるものとしている(本件条例5条)。 イまた,本件条例において,「実施機関」とは,次に掲げる機関をいう(本件条例2条1項)。 (ア)知事,教育委員会,選挙管理委員会,人事委員会,監査委員,公安委員会,地方労働委員会,収用委員会,内水面漁場管理委員会及び公営企業管理者(以下これらを「知事等」という。)。 (イ)知事等に置かれる機関で規則で定めるもの(ウ)議会ウ本件条例において,「行政文書」とは,実施機関の職員が職務上作成し, 又は取得した文書,図面及び電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)であって,当該実施 」とは,実施機関の職員が職務上作成し, 又は取得した文書,図面及び電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)であって,当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有しているものをいう(同条2号)。 エまた,本件条例は,「実施機関は,開示請求があったときは,開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き,開示請求者に対し,当該行政文書を開示しなければならない。」と定め(本件条例8条),その1号において以下のように規定している。 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は,特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし,次に掲げる情報を除く。 イ法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報ロ人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報ハ当該個人が公務員(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員及び地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員をいう。)である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分オそして,実施機関は,開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合において,不開示情報が記録 係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分オそして,実施機関は,開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合において,不開示情報が記録されている部分を容易に区分し て除くことができるときは,開示請求者に対し,当該部分を除いた部分につき開示しなければならず(本件条例9条1項),開示請求に係る行政文書に前条第1号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されている場合において,当該情報のうち,氏名,生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより,公にしても,個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは,当該部分を除いた部分は,同号の情報に含まれないものとみなして,前項の規定を適用する(同条2項)。 (2)当事者原告は,本件開示請求をした者であり,被告知事は,本件条例2条1項の実施機関である。 (3)本件開示請求に至る経緯ア被告県は,昭和63年ころ,本件事業の用地として,本件155番道路敷地を買収する必要が生じ,上記155番の土地の所有者であるCの相続人であり,同土地の占有者でもあるA及びその子であるBと交渉することとした(弁論の全趣旨)。 イしかし,上記155番の土地の所有権登記は,C名義のままとなっており,その相続人が,同年ころ,上記A含め,40数名いたこと,そのうちの3名は所在が不明であることが判明し,被告県に対する移転登記が困難な状況にあった(甲17の1の4,弁論の全趣旨)。 他方,本件事業は,事業着手からおおむね4年以内に完成することを目標に整備すべき「特殊改良第1種事業」であり,交通事故の防止等の公共的かつ緊急性の高い事業であった(弁論の全趣旨)。 そこで,被告県は,本来ならば,売買契約締 手からおおむね4年以内に完成することを目標に整備すべき「特殊改良第1種事業」であり,交通事故の防止等の公共的かつ緊急性の高い事業であった(弁論の全趣旨)。 そこで,被告県は,本来ならば,売買契約締結時に買収土地の代金の7割を支払い,移転登記完了後,残額を支払うこととなっていたところ,本件では,上記のとおり,Cから被告県への移転登記が困難であることから,平成 3年2月4日,Aとの間で,土地の売買契約ではなく物件移転補償契約を締結し,本件155番道路敷地の代金額に見合う金額を「補償費」として支払うことによって,本件155番道路敷地の占有を取得した(甲5の4,弁論の全趣旨)。 ウ被告県の担当者は,上記Bらとの交渉の際,同人らより,住居移転先としてD(以下「D」という。)が所有する南アルプス市○番,○○番及び○○○番の各土地を取得したい旨の希望があることを告げられた。 被告県の担当者が,上記Bらの希望をDに告げたところ,Dは,155番の土地のうちの本件155番道路敷地を除く西側の土地(以下この土地を「本件155番残地」という。)を取得したい旨の希望を述べた。 そこで,Dは,平成元年1月31日,Cに対し,D所有の上記○番,○○番及び○○○番の各土地を売り,これに対し,Cは,Dに対し,本件155番残地を売る旨の契約をし,平成元年5月6日,上記○番,○○番及び○○○番の土地の所有権移転登記を経た(甲17の1ないし3及び甲17の2)。 しかし,Dは,本件155番残地の所有権移転登記を経ることができなかった。 エD及び原告は,平成9年ころ,被告県に対し,本件155番残地の所有権移転登記手続等について,責任を持って解決するよう要求した(弁論の全趣旨)。 オDは,平成13年8月24日,被告県に対し,連帯保証人としてCらが本件155番残地の売買契約に基 155番残地の所有権移転登記手続等について,責任を持って解決するよう要求した(弁論の全趣旨)。 オDは,平成13年8月24日,被告県に対し,連帯保証人としてCらが本件155番残地の売買契約に基づく同地の所有権移転登記手続義務の未履行を理由とする損害を賠償するよう求める旨の調停の申立を行った(甲14)。 しかし,同調停は,平成14年2月14日,不調となった。 (4)原告の本件開示請求原告は,平成13年10月10日,被告知事に対し,本件条例7条に基づき,下記の行政文書の開示を請求した(甲18の2)。 記白根町曲輪田新田地内の韮崎・櫛形・豊富線と広域農道の交差点付近の用地買収に係る補償・設計・契約の文書,および土地調書,補償額算定調書,交渉記録などその関連文書(5)被告知事の本件決定ア被告知事は,平成13年11月8日,本件決定において,本件開示請求の対象となった文書のうち別紙一覧表記載の「文書名」の欄の文書につき,「不開示項目」の欄の記載部分を不開示とし,その余の記載部分を公開すべきものとした。本件決定においては,上記一覧表記載の「不開示項目」の欄の記載部分に係る情報が本件条例8条1号所定の不開示情報に該当すると判断された(甲20)。 イなお,被告知事は,上記決定の中で,原告に対し,①道路建設課及び峡中地域振興局建設部では,交渉記録などその関連文書については,保存期間(1年)を過ぎたため,廃棄済みであり,②峡中地域振興局農務部では,交渉記録を作成していないため,いずれも開示すべき文書が存在しない旨通知した。 (6)これに対し,原告は,平成14年1月13日,被告知事に対し,行政不服審査法6条に基づき,異議を申し立てた(甲22)。 (7)被告知事は,平成14年5月30日,山梨県情報公開審査会に対し,上記異議申立てにつき ,原告は,平成14年1月13日,被告知事に対し,行政不服審査法6条に基づき,異議を申し立てた(甲22)。 (7)被告知事は,平成14年5月30日,山梨県情報公開審査会に対し,上記異議申立てにつき諮問した(甲25)。 (8)山梨県情報公開審査会は,平成15年3月26日,被告知事に対し,本件決定は妥当である旨答申した(甲33の2・3)。 (9)被告知事の本件変更決定被告知事は,平成15年5月29日,本件決定を次のとおり変更する旨決定した(甲35)。 ア別紙一覧表の「第1昭和63年度工事設計及び契約特殊改良一 種」のうち「図面」及び同一覧表「第3平成元年度昭和63年度韮崎櫛形豊富線特殊改良第1事業」のうち「変更対照表」は存在しないので,本件決定通知書添付別紙1(甲20)から削除する。 イ別紙一覧表の「第2昭和63年度韮崎櫛形豊富線道路改良事業」のうち「図面」は,不開示項目があるので,同項目を不開示とする。 (10)被告知事は,平成15年9月24日,上記(6)の異議申立てを棄却する旨の決定をした(甲39の2)。 (11)原告は,平成15年12月19日,甲府地方裁判所に対し,本件訴えを提起した。 争点 (1)本件決定がされた当時,本件155番道路敷地等関連文書が存在したか。 (2)被告知事が不開示とした公務員の氏名・印影等の情報は,本件条例8条1号の不開示情報に当たるか。 (3)被告知事が不開示とした地権者の氏名・住所・地番等に関する情報は,本件条例8条1号の不開示情報に当たるか。 (4)被告知事が不開示とした地権者の印影・取引金融機関名及び口座番号等の情報は,本件条例8条1号の不開示情報に当たるか。 (5)被告知事が不開示とした地権者の土地の買収価格及び地権者の建物,工作物,動産,植栽,権利等の補償価格に関す 影・取引金融機関名及び口座番号等の情報は,本件条例8条1号の不開示情報に当たるか。 (5)被告知事が不開示とした地権者の土地の買収価格及び地権者の建物,工作物,動産,植栽,権利等の補償価格に関する情報は,本件条例8条1号の不開示情報に当たるか。 (6)原告の被告県に対する損害賠償請求権の成否 争点に対する当事者の主張(1)争点(1)(本件155番道路敷地等関連文書が存在したか)について(原告の主張)ア被告県は,本件155番道路敷地等の関連文書を保有しているはずである。 イ理由は以下のとおりである。 (ア)山梨県土木部用地事務取扱要領(乙1)によれば,被告県は,本件155番道路敷地等関連文書の作成を義務づけられていたのであるから,上記各書面を作成しているはずである。 そして,文書管理規定9条の3第4項本文(乙2)によれば,「文書の保存期間は,当該文書が完結した日の属する会計年度の翌年度の4月1日から起算する。」とされており,同項本文の「当該文書が完結した日」とは,当該文書にかかる業務が完了した日と解するべきである。そうすると,本件では,補償が完了した日を指すと解されるところ,契約の締結,補償金の支払,土地の引き渡し,所有権移転登記等の一連の手続が完了した時点をいうから(内閣府情報公開審査会平成14年諮問第59号平成14. 9.20答申6頁。甲41の1),本件155番道路敷地については,未だ買収契約が完全に履行されていないし,本件155番残地と代替地との交換契約も完全に履行されておらず,したがって,公共用地の取得業務は終了しておらず,上記「当該文書が完結した日」にあたらない。よって,被告県は,上記各文書を保有しているはずである。 また,被告県は,上記各文書が永久保存を必要と認める文書及び5年保存を必要と認める文書のいずれ らず,上記「当該文書が完結した日」にあたらない。よって,被告県は,上記各文書を保有しているはずである。 また,被告県は,上記各文書が永久保存を必要と認める文書及び5年保存を必要と認める文書のいずれにもあたらず,1年保存を必要と認める文書に該当すると主張するのであれば,被告らがこれを立証すべきであるところ,かかる立証をしていない。 (イ)山梨県道路台帳図(甲49)には,本件155番道路敷地について,民有地の地番が記載されていないから,道路管理者の有権的な表示によれば,道路敷地は地方公共団体地であるが,同道路敷地の土地売買契約書及びその関連文書が存在しなければ,そのような図面を作成するはずがない。 (ウ)1989年(平成元年)版の住宅地図(甲17の3の2)によれば,本件155番道路敷地について,県道建設予定として記載し,被告がその物件移転補償契約の締結日以前に同道路敷地の占有を取得したことを示し ているが,県による同道路敷地の占有(これは,土地売買契約の存在を前提とする。)が確認されていなければ,住宅地図がそのような記載をするはずがない。被告県は,遅くとも平成元年3月から6月において,本件155番道路敷地の占有を取得しているはずであり,被告らの主張する物件移転補償契約書は平成3年2月4日付であるから,上記契約以外に本件155番道路敷地についての土地売買契約書があるはずである。 (エ)公共事業の場合,不動産仲介業者が関与しないことから,起業者である被告県は,自ら,契約締結前に,不動産の面積の確認をしたり,権利関係を確認する等して取引の安全を図るため,土地調書を作成すべきであるから,本件155番道路敷地の土地調書は,存在するはずである。 (オ)本件155番道路敷地は,買収契約が完全に履行されておらず,本件155番残地と代替地との交換 図るため,土地調書を作成すべきであるから,本件155番道路敷地の土地調書は,存在するはずである。 (オ)本件155番道路敷地は,買収契約が完全に履行されておらず,本件155番残地と代替地との交換契約も完全に履行されていないため,公共用地の取得業務は終了しておらず,紛争が生ずる恐れも消滅していないのであるから,人事異動等を考慮して交渉内容の引き継ぎや確認のために不可欠である交渉記録が破棄されていることはあり得ない。 ウ上記各文書の存否に関する立証責任は被告らにあると解するべきである。 (被告らの主張)ア原告の上記主張は,否認する。原告が存在すると主張する文書は,別紙一覧表記載の各文書を除き,存在しない。本件155番道路敷地の行政文書は開示しており,甲5の1ないし14のみである。 イ原告の主張する前記第1の1(1)ア⑧(工作物補償額算定一覧表の原本)の文書は,本件開示請求の対象となっていない。 ウ原告の主張する本件155番道路敷地等関連文書の存否に関する立証責任は原告にあると解する。 (2)争点(2)(公務員の氏名・印影の不開示情報該当性)について(被告らの主張) 公務員の氏名及び印影は,特定の個人を識別することができるとともに,公務員の私生活等に影響を及ぼすことがあり得る情報であるから,本件条例8条1号所定の不開示情報に当たるというべきである。 (原告の主張)ア公務員の氏名(印影を含む。)の記載部分に公務員個人の私事に関する情報は含まれていないから,保護に値する個人の利害にかかわる情報ではなく,本件条例8条1号にいう「個人に関する情報」にはあたらない。 イ公務員の氏名は,一般に刊行されている「山梨県職員録」に掲載されているから,本件条例8条1号ただし書イにいう「慣行として公にされている情報」である。 ウ違法に取得され る情報」にはあたらない。 イ公務員の氏名は,一般に刊行されている「山梨県職員録」に掲載されているから,本件条例8条1号ただし書イにいう「慣行として公にされている情報」である。 ウ違法に取得された道路敷地にかかわる情報であるから,本件条例8条1号ただし書ロにいう「人の財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」である。 エ現在は,開示されている情報である。 (3)争点(3)(地権者の氏名・住所・地番・小字等の情報の不開示情報該当性)について(被告らの主張)住宅地図等他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができる情報であるから,本件条例8条1号所定の不開示情報に当たるというべきである。 (原告の主張)ア登記簿,公図,道路台帳図,住宅地図,現地調査等によって容易に認識することができる情報であるから,保護に値する個人の利害に関わる情報ではなく,本件条例8条1号にいう「個人に関する情報」ではない。 イ上記理由により,本件条例8条1号ただし書イにいう「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」である。 ウ違法に取得された道路敷地にかかわる情報であるから,本件条例8条1号ただし書ロにいう「人の財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」である。 (4)争点(4)(地権者の印影・取引金融機関名及び口座番号等の情報の不開示情報該当性)について(被告らの主張)契約者が,契約書等に押印した印章の印影,契約者の取引金融機関(売買代金の振込口座)に関する情報は,これらの情報によって特定の個人を識別することができ,また,一般に,このような情報が公開されることは本来予定されておらず,これらの情報がむやみに公開された場合,プライバシーを中心とした個人の正 は,これらの情報によって特定の個人を識別することができ,また,一般に,このような情報が公開されることは本来予定されておらず,これらの情報がむやみに公開された場合,プライバシーを中心とした個人の正当な権利利益を害することは明らかであるから,本件条例8条1号の不開示情報に当たる。 (原告の主張)争う。 (5)争点(5)(土地の買収価格及び工作物・動産等の補償価格等の情報の不開示情報該当性)について(被告らの主張)特定の個人を識別することはできないが,契約金額と関係があるため,所得等個人の財産に関する情報であり,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるから,本件条例8条1号所定の不開示情報に当たる。 (原告の主張)ア契約金額(関連情報を含む。)は,公的性質を帯びており,また,公金支出の適正さの監視・参加のために,個人情報としての側面より本件条例の目的を優先させるべき情報であるから,保護に値する個人の利害に関わる情報ではなく,本件条例8条1号にいう「個人に関する情報」には当たらない。 イ個人識別性のある部分を除いて開示しても財産権その他の個人の正当な利 益を害するおそれがないから,個人の権利利益を害しない。 ウ買収土地の単価はいわゆる地権者会議で提示されており,面積は開示項目であるから,本件条例8条1号ただし書イにいう「慣行として公にされている情報」にあたる。 エ違法に取得された本件155番道路敷地にかかわる情報であるから,本件条例8条1号ただし書ロにいう「人の財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」である。 (6)争点(6)(損害賠償請求権の存否)について(原告の主張)ア本件決定は,原告の知る権利(憲法21条)を侵害するものである。 イ被告知事の故意又は過失による違法な本件決定に 情報」である。 (6)争点(6)(損害賠償請求権の存否)について(原告の主張)ア本件決定は,原告の知る権利(憲法21条)を侵害するものである。 イ被告知事の故意又は過失による違法な本件決定によって原告は精神的苦痛を受けた。また,本件文書開示請求権を実現するため,行政上の不服申立て及び訴訟の提起を余儀なくされて,多大な時間的・経済的損失を被っている。 これらの損害額は30万円を下らない。 よって,原告は被告県に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害金30万円及びこれに対する本件決定の後の日である平成13年11月13日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める。 (被告らの主張)争う。本件決定には違法はない。 第3当裁判所の判断 前記第1の1(1)ア⑧工作物補償額算定一覧表(甲1の24及び甲5の9)の原本を不開示とした処分の取消しを求める旨の原告の主張について本件条例17条1項(乙5)は,行政文書の開示は,当該文書の閲覧又は,写しの交付により行う旨を規定している。証拠(甲1の24及び甲5の9)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,上記工作物補償額算定一覧表の写しの交付により当該行政文書の開示を受けているのであるから,そもそも上記工作物補 償額算定一覧表について不開示処分がなされたということはできない。したがって,上記工作物補償額算定一覧表の原本を不開示とした処分の取消しを求める訴えは,不適法である。 争点(1)(本件155番道路敷地関連文書が存在するか)について(1)本件決定は,本件開示請求に係る本件155番道路敷地関連文書が作成されておらず不存在であることを理由としてされたものであるが,一般的に,文書の不存在を理由とする公文書の不開示決定の取消訴訟において,当該文書の存否に関する立証責任は,当該文書の存在を主張 書が作成されておらず不存在であることを理由としてされたものであるが,一般的に,文書の不存在を理由とする公文書の不開示決定の取消訴訟において,当該文書の存否に関する立証責任は,当該文書の存在を主張する原告が負うものと解するのが相当である。 これを本件条例に即してみれば,本件条例は,2条2項において,「行政文書」について,「実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図面及び電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって,当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有しているものをいう。」と規定して開示の対象となる行政文書を定義した上,5条において,「何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関の保有する行政文書の開示を請求することができる。」と規定している。上記各規定によれば,本件条例に基づく公文書の開示請求権が発生するためには,実施機関が当該行政文書を保有していることが要件となり,実施機関が当該行政文書を保有しているというためには,当該行政文書が存在することが当然の前提となるから,当該行政文書の存在は,当該行政文書に係る開示請求権が発生するための必須の要件というべきである。 したがって,本件訴えにおいては,本件不開示決定がされた当時,本件請求に係る本件155番道路敷地等関連文書が存在したことについて,原告が立証責任を負うものと解すべきである。 (2)本件155番道路敷地に関する①土地売買契約書の存否について ア本件155番道路敷地に関する用地買収が行われた平成3年2月4日当時の山梨県土木部用地事務取扱要領(以下,この要領を「本件要領」という。乙1の1)によれば,次のような規定がある。 (ア)公図・土地 本件155番道路敷地に関する用地買収が行われた平成3年2月4日当時の山梨県土木部用地事務取扱要領(以下,この要領を「本件要領」という。乙1の1)によれば,次のような規定がある。 (ア)公図・土地登記簿等の調査(17条)所長(山梨県行政組織規則に定める土木部に属する出先機関の長をいう。本件要領2条7及び8項)は,事業の用に供する土地(以下「用地」という。)及びその隣接地について,所轄地方法務局又は,その支局若しくは出張所(以下「登記所」という。)が保管する土地登記簿等により,次に揚げる事項を調査して,土地調査表を作成するものとする(以下,略)。 (イ)境界の調査(18条)1項所長は,巾杭の打設が完了したときは,用地及びその隣接地の所有者並びに当該土地の所有者以外の権利者のうち所長が必要と認めるものを立ち会わせたうえ,一筆毎に当該土地の境界を調査しなければならない。 2項所長は,前項の規定により立ち会った者に対し確認書により立ち会った旨の確認を求めるものとする。 (ウ)調査の確認及び潰地調書の作成(22条)所長は,用地の調査が完了したときは遅滞なく,第18条の確認書に土地所有者又は土地の占有者の確認を受け,土地調査表および確認書に基づき潰地調書を作成しなければならない。 (エ)交渉記録(53条)所長は,交渉の経過その他必要と認められる事項を第6条による用地交渉業務日誌により,交渉記録簿に記録しておくものとする。 (オ)契約の締結(62条)土地所有者及び関係人と協議が成立したときは,次の各号に掲げる書 類のうち該当するものを作成し,又は作成させるとともにこれら契約に必要な書類に署名押印を求めるとともに必要があるときは,印鑑証明書を提出させなければならない。 (1)土地売買契約書(2)権利消滅契約書(3)物件移 成し,又は作成させるとともにこれら契約に必要な書類に署名押印を求めるとともに必要があるときは,印鑑証明書を提出させなければならない。 (1)土地売買契約書(2)権利消滅契約書(3)物件移転補償契約書(4)立毛(立木)補償契約書(5)補償契約書(6)登記承諾書イこれらの規定によれば,本件のような用地買収の際には,一般的には,①土地売買契約書が作成されることが推認できる。 ウしかしながら,他方において,前記前提となる事実,証拠(甲5の1ないし14,甲14,甲17の1・2,甲52),証人E及び弁論の全趣旨によれば,本件155番道路敷地に関して,被告県は,平成3年2月4日,Bとの間で,土地の売買契約ではなく物件移転補償契約を締結し,本件155番道路敷地の代金額に見合う金額を「補償費」として支払うことによって,本件155番道路敷地の占有を取得した事実が認められ,この事実に照らして考えると,前記アの事実から原告主張の本件155番道路敷地に関して①土地売買契約が存在する事実を推認することはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 (3)本件155番道路敷地及びその他の韮崎・櫛形・豊富線と広域農道の交差点付近の土地の買収に関する②土地調書又は土地確認書,④交渉記録の存否についてアまた,山梨県文書管理規程(乙2)は,文書の保存期間として,永久保存する文書,5年間保存する文書,1年間保存する文書に分けた基準を作成し,これに沿って文書を保存すべき旨を規定している(同規程9条の3 第1項及び2項)。 そして,上記規程9条の3第2項の別表第4によれば,上記②土地調書又は土地確認書,④交渉記録が,上記別表における永久保存する文書にあたらないものと認められ,他に上記各文書が,本件決定当時,保存期間内にあった事実を認めるに足り 項の別表第4によれば,上記②土地調書又は土地確認書,④交渉記録が,上記別表における永久保存する文書にあたらないものと認められ,他に上記各文書が,本件決定当時,保存期間内にあった事実を認めるに足りる証拠はない。 イなお,原告は,本件155番道路敷地については,未だ買収契約が完全に履行されていない等として,同条4項による保存期間の起算日の未到来を主張する。しかしながら,前記のとおり,そもそも本件155番道路敷地については,売買契約は締結されず物件移転補償契約が締結されたのであるから,売買契約の締結を前提とする原告の上記主張は,採用できない。 (4)本件155番道路敷地に関する③土地の補償額算定調書,⑤買収の補償・設計・契約についての取扱いの経緯を記録している文書,⑥工作物補償額算定一覧表の算定額の算出資料が記録されている文書,⑦交換契約書の原本について上記各文書が存在することについては,これを認めるに足りる証拠がない。 (5)以上に加えて,前記第2の4(1)イ(ア)以外の原告の主張は,いずれも推測の域を超えるものではなく,本件全証拠によっても,原告の上記主張事実を認めるに足りないといわざるを得ない。 よって,本件155番道路敷地等関連文書が存在するとの原告の主張は理由がない。 争点(2)公務員の氏名・印影の不開示情報該当性(1)ア前記のとおり,本件条例8条1号は,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの,又は特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについては,同号ただ し書所定の除外事由に当たるものを除き,これが記録されている行政文書を 特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについては,同号ただ し書所定の除外事由に当たるものを除き,これが記録されている行政文書を公開しないことができる」と規定している。そして,同号にいう「個人に関する情報」については,「事業を営む個人の当該事業に関する情報」が除外されている以外には文言上何ら限定されていない。 このように,本件条例8条1号が「個人に関する情報」を不開示として定めたのは,プライバシーの保護を図ることにある。しかし,プライバシーの概念は,いまだ必ずしも明確にされているわけではなく,どのような情報がプライバシー保護のため不開示とされるべきかを一律に確定するのは困難である。そこで,不開示事由の保護の対象の識別を明確にする目的から,プライバシーに関する情報といった個人の権利利益に着目した限定をせずに,広く,個人に何らかの関わりを持つ情報を「個人に関する情報」に当たることとし,「特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」であれば原則的に不開示とし,不開示とする必要がないものは,ただし書で除外することとしたものと解するのが相当である。そうすると,同条1号ただし書ハにおいて,公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分を開示することとしている規定も,このような公務員の職務の遂行に関する情報が同条1号にいう「個人に関する情報」に当たることを前提としたものと解すべきである。 したがって,上記のような本件条例の趣旨に照らせば,本件条例8条1号の「個人に関する情報」とは,個人の思想,信条,身分,地位,所得,資産等個人の財産の状況に関する情報,健康状態その他個人に関するすべての情報を含むと解するのが相当である。そうすると,本件における公務員の氏名,印影等がこれに含まれることは 信条,身分,地位,所得,資産等個人の財産の状況に関する情報,健康状態その他個人に関するすべての情報を含むと解するのが相当である。そうすると,本件における公務員の氏名,印影等がこれに含まれることは明らかである。 イこの点,原告は,公務員の氏名(印影を含む。)の記載部分に公務員個人の私事に関する情報は含まれていないから,保護に値する個人の利害にかかわる情報ではなく,本件条例8条1号にいう「個人に関する情報」に はあたらないと主張する。 しかしながら,公務員の氏名に関する情報については,行政事務を遂行した公務員等を特定するために行政文書等に記録することが一般的ではあるが,同時に,公務員の私生活における個人識別のための基本情報としての性格をも有しているのであるから,保護に値する個人の利害にかかわる情報の側面をも有するものであることは明らかである。したがって,原告の上記主張は採用できない。 (2)また,公務員の氏名,印影等は,本件条例8条1号の「当該情報に含まれる氏名・・・により特定の個人を識別することができるもの」にあたることも明らかである。 (3)アそして,本件条例が,公務員個人を識別する情報を,職に関する情報と氏名に関する情報に分け,職に関する情報については,その8条1号ただし書ハにおいて,これを,職務遂行の内容に関する情報とともに,例外なく開示すべきことと定めているのは,職に関する情報は,当該公務員の職務遂行にかかる情報と密接不可分の関係にあるものであり,行政が県民に対し行政活動を説明する責務を全うされるようにするために,これを開示すべき意義が大きいとの考慮によるものと解される。 これに対し,公務員の氏名に関する情報については,上記のとおり,行政事務の遂行に係る行政組織の内部管理情報として担当公務員を特定するために行政文書等 すべき意義が大きいとの考慮によるものと解される。 これに対し,公務員の氏名に関する情報については,上記のとおり,行政事務の遂行に係る行政組織の内部管理情報として担当公務員を特定するために行政文書等に記録することが一般的ではあるが,同時に,公務員の私生活における個人識別のための基本的な情報としての性格をも有しており,これを開示すると公務員の私生活に影響を及ぼす可能性が少なくなく,他方で,公務員の氏名の公開は,いわゆるアカウンタビリティー(本件においては,県の有するその諸活動を県民に説明する責務が全うされることをいう。)の確保という観点からは必ずしも必要不可欠なものとはいえない。したがって,これを開示するか否かについては,同条1号ただし書イ の「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」に当たるか否かによって決すべきであると解するのが相当である。 イこれを本件についてみると,被告知事が,本件決定によって不開示としたのは,審査者,起案者,調査者及び検証者の氏名,通知文書の宛先氏名,収入印紙消印の印影,並びに支出命令者及び所属長以外の印影であるところ,まず,審査者,起案者,調査者及び検証者等の県職員の氏名については,山梨県職員録に掲載され,一般に刊行されていることが弁論の全趣旨より認められることから,「慣行として公にされている情報」に当たり,本件条例8条1号所定の不開示情報に該当しないというべきである。 しかしながら,収入印紙消印の印影,支出命令者及び所属長以外の印影については,本件決定の対象となった文書の性質等をみると,公にされ,又は公にすることが予定されているものとはいえず,したがって,上記印影についても公にされ,又は公にすることが予定されているものとはいえない。よって,収入印紙消印の印影,支出 質等をみると,公にされ,又は公にすることが予定されているものとはいえず,したがって,上記印影についても公にされ,又は公にすることが予定されているものとはいえない。よって,収入印紙消印の印影,支出命令者及び所属長以外の印影は,同条1号ただし書イにいう「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」には当たらず,また,同号ただし書ロ及びハ所定の情報にも当たらないから,同号所定の不開示情報に該当するというべきである。 なお,原告は,上記収入印紙消印の印影,支出命令者及び所属長以外の印影は,違法に取得された道路敷地に関する情報であるから,本件条例8条1号ただし書ロにいう「人の財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」に当たると主張するが,独自の見解であって採用できない。 争点(3)地権者の氏名・住所・地番・小字等の情報の不開示情報該当性前記のとおり,本件条例8条1号の「個人に関する情報」とは,個人の思想, 信条,身分,地位,所得,資産等個人の財産の状況に関する情報,健康状態その他個人に関するすべての情報を含むと解するのが相当であるから,本件のような地権者の氏名・住所・小字・地番等の個人所有の土地や建物といった不動産に関する情報も同条1号の「個人に関する情報」に当たることは明らかである。 そして,所有者の氏名はもとより,住所・小字・地番といった情報も,当該情報自体においては特定の個人を識別することはできないが,不動産登記法(平成14年12月13日法律第152号による改正前のもの。以下同じ。)21条によれば,不動産登記簿,地図もしくは建物所在図または登記簿の付属書類等の何人でも閲覧を請求することができ,その結果公になっている他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することがで )21条によれば,不動産登記簿,地図もしくは建物所在図または登記簿の付属書類等の何人でも閲覧を請求することができ,その結果公になっている他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができるのであるから,本件条例8条1号にいう「特定の個人を識別することができるもの」に当たる。 もっとも,土地所有者の氏名・住所・小字・地番といった不動産に関する情報は,上記のとおり,一般に不動産登記簿に登記されて公示されるものであり,不動産登記法21条1項により何人でも閲覧できるものである。そして,これらの事項が登記されていないことについて特段の立証のない本件においては,上記不動産に関する情報は,本件条例8条1号ただし書イにいう「法令の規定により公にされている情報」に当たり,同号所定の不開示情報に該当しないというべきである。 なお,前記前提となる事実及び弁論の全趣旨によれば,別紙一覧表第5の各文書における債主名,請求者氏名,所有者氏名,物件所有者氏名,契約者氏名は,不動産登記簿に記載されていないものである。しかしながら,証拠(甲12の1及び甲17の3の1)によれば,これらの情報は,住宅地図等により公にされていると認められるから,本件条例8条1号ただし書イにいう「慣行として公にされている情報」に当たり,同号所定の不開示情報に該当しないというべきである。 争点(4)地権者の印影・取引金融機関名及び口座番号等の情報の不開示情報該当性本件における地権者の印影・取引金融機関名及び口座番号等の情報は,所得,資産等個人の財産の状況に関する情報であるから,本件条例8条1号の「個人に関する情報」に当たることは明らかである。 また,地権者の印影はもとより,取引金融機関名及び口座番号等の情報は,当該情報自体においては特定の個人を識別することはできないが, 本件条例8条1号の「個人に関する情報」に当たることは明らかである。 また,地権者の印影はもとより,取引金融機関名及び口座番号等の情報は,当該情報自体においては特定の個人を識別することはできないが,前記のとおり開示すべきものとされた地権者である請求者の氏名,住所等の他の情報と照合すれば,特定の個人を識別することができるのであるから,本件条例8条1号にいう「特定の個人を識別することができるもの」に当たる。 そして,これらの情報が同条1号ただし書イ,ロ,ハいずれの情報にも当たらないことは明らかである。 したがって,上記地権者の印影・取引金融機関名及び口座番号等の情報は,本件条例8条1号所定の不開示情報に該当するというべきである。 争点(5)支出負担行為決議額等の土地の買収価格に関する情報及び個人地権者の建物,工作物,動産,植栽,権利等の補償価格に関する情報の不開示情報該当性(1)個人地権者の土地の買収価格に関する情報についてア本件における支出命令書における支出負担行為決議額及び支出額,補償費支払内訳書における支出負担行為決議額,支払額及び未支払額等の土地の買収価格に関する情報は,当該支出により,特定の個人に支払われる買収価格そのものが明らかとなり,少なくとも,当該土地の売買に関する当該個人の具体的収入そのものが公開されることになる。また,場合によっては,その買収価格から当該個人の財産の保有高等が推測できることもあり得る。したがって,これらの情報は,前記の個人の所得,資産等の財産の状況に関する情報にあたり,本件条例8条1号にいう「個人に関する情 報」に当たるというべきである。 そして,これらの情報自体によっては,特定の個人を識別することはできないが,前記のとおり,不動産登記簿,地図又は建物所在図等の公になっている他の情報と照合 る情 報」に当たるというべきである。 そして,これらの情報自体によっては,特定の個人を識別することはできないが,前記のとおり,不動産登記簿,地図又は建物所在図等の公になっている他の情報と照合することにより,特定の個人の財産の保有状況が推測されうるのであるから,本件条例8条1号にいう「特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」に当たると解するのが相当である。 そうすると,このような土地の買収価格に関する情報は,一般には未だ公開されるものではないから,本件条例8条1号ただし書イにいう「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」ということはできない。 イなお,原告は,上記買収土地の単価はいわゆる地権者会議で提示されており,面積は開示項目であるから,本件条例8条1号ただし書イにいう「慣行として公にされている情報」であると主張する。しかしながら,上記原告の主張するような地権者会議があり,そこで買収土地の単価が提示されたとの事実を認めるに足りる証拠はない上,仮にそのような事実があるとしても,地権者ではない原告を含む一般人は,地権者からの伝聞による方法以外に上記買収土地の単価を知ることはできないのであるから,やはり同号ただし書イにいう「慣行として公にされている情報」に当たるとはいえない。したがって,原告の上記主張は採用できない。 ウまた,原告は,上記土地の買収価格に関する情報は,違法に取得された道路敷地に関する情報であるから,本件条例8条1号ただし書ロにいう「人の財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」に当たると主張するが,独自の見解であって採用できない。 エさらに,原告は,本件処分の対象となった上記不開示部分は,地価公示 いう「人の財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」に当たると主張するが,独自の見解であって採用できない。 エさらに,原告は,本件処分の対象となった上記不開示部分は,地価公示区域における公共用地の買収の価格であり,最高裁平成15年(行ヒ)第 250号平成17年7月15日第二小法廷判決,最高裁平成15年(行ヒ)第295号・第296号平成17年10月11日第三小法廷判決を引用し,本件においても上記買収土地価格に関する情報は,本件条例8条1号ただし書イ所定の開示されるべき情報にあたる旨主張する。 上記判例は,土地の取得価格について,いずれも公有地の拡大の推進に関する法律7条の適用があるものとされ,当該土地と地価公示法2条1項の標準地との位置,地積,環境等の土地の客観的価値に作用する諸要因について比較して,標準地の公示価格と当該土地の取得価格との間に均衡を保たせるように算出されているのに対し,本件においては,本件事業の用地の買収当時,当該地域について標準地の公示価格が存在していなかったものである。 そして,山梨県土木部用地事務取扱要領(乙1の1)では,44条において,補償額の算定について,「所長は,第2章の規定により土地及び物件,その他の物件の調査が完了したときは,山梨県公共用地の取得に伴う損失補償基準により行うものとする。」旨規定し,山梨県土木部公共用地の取得に伴う損失補償基準(甲76の3)では,8条1項において,土地の補償額算定の基本原則として,「取得する土地(土地の附加物を含む。 以下同じ。)に対しては,正常な取引価格をもって補償するものとする。」旨規定し,9条において,上記正常な取引価格について「前条の正常な取引価格は,近傍類地(近傍地及び類地を含む。以下同じ。)の取引価格を基準とし,これらの土地及び取得す をもって補償するものとする。」旨規定し,9条において,上記正常な取引価格について「前条の正常な取引価格は,近傍類地(近傍地及び類地を含む。以下同じ。)の取引価格を基準とし,これらの土地及び取得する土地について,次に掲げる土地価格形成上の諸要素(宅地であれば,形状,地積等画地の状態,街路の状態,交通施設,公共的施設,商業施設等との接近の程度,供給処理施設等の整備の状態,土地の利用に関する公法上の規制の程度,自然的環境等)を総合的に比較衡量して算定するものとする。」旨規定する。 そうすると,当該土地が県に買い取られた事実については不動産登記簿 に登記されて公示される性質のものであることに加え,上記当該土地の形状等の取得価格形成上の諸要素が一般に周知されている事項か,容易に調査することができる事項であり,これらの価格要因に基づいて上記のとおり決定される価格及びその単価は一般人であればおおよその見当をつけることができる一定の範囲内の客観的な価格であるということができる余地はある。 しかしながら,上記基準は,山梨県土木部における公共用地の取得の際の内部基準にすぎないのであって,本件条例8条1号ただし書イにおける「法令」には当たらない。そうすると,本件事業のための土地買収時において上記基準が適用されていたとしても,土地の買収価格に関する情報は,同号ただし書イにいう「法令の規定により公にされ,又は公にすることが予定されている情報」には当たらない。また,本件開示請求の対象文書には,上記土木部における土地買収に関する文書のみならず,峡中地域振興局建設部,峡中地域振興局農務部における土地買収に関する文書も含まれているところ,峡中地域振興局建設部及び農務部においても,上記土木部における公共用地の取得に伴う損失補償基準に類似した基準が作成されている ,峡中地域振興局農務部における土地買収に関する文書も含まれているところ,峡中地域振興局建設部及び農務部においても,上記土木部における公共用地の取得に伴う損失補償基準に類似した基準が作成されていることを認めるに足りる証拠はない。 さらに,本件のような土地の買収価格に関する情報を公にし,又は公にすることを予定しているとする慣行が存在すると認めるに足りる証拠もない。 したがって,原告の引用する上記判例は,本件とは事案を異にするものであって,原告の上記主張を採用することはできない。 (2)個人地権者の建物,工作物,動産,植栽,権利等の補償価格に関する情報(なお,弁論の全趣旨より,精算額関係写真及び建物等の配置図を含む。)について移転雑費補償算定書における建物移転料・工作物移転料・立竹木補償料・ 動産移転料の金額及び課税対象金額等の個人地権者の建物,工作物,動産,植栽,権利等の補償価格に関する情報(精算額関係写真及び建物等の配置図を含む。以下同じ。)は,特定の個人がどのような工作物や動産を保有しているかやその数量等が推測できるものであるのだから,個人の所得又は財産に関する情報であるといえる。したがって,これらの情報は,本件条例8条1号にいう「個人に関する情報」に当たることは明らかである。 そして,これらの情報自体によっては,特定の個人を識別することはできないが,前記のとおり,不動産登記簿,地図又は建物所在図等の公になっている他の情報と照合することにより,特定の個人の財産の保有状況が推測されうるのであるから,本件条例8条1号にいう「特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」に当たると解するのが相当である。 また,個人地権者の建物,工作物,動産,植栽,権利等の補償価格についての情報 することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」に当たると解するのが相当である。 また,個人地権者の建物,工作物,動産,植栽,権利等の補償価格についての情報も,地権者がどのような工作物,動産,植栽等を有するかについては,公示されるものではなく,また,必ずしも外部に明らかになっているものではない。そして,建物については,所有状況が不動産登記簿に登記されて公示されるものの,その価格要因のすべてが公示されるものではなく,一般人は,外部から観察することができるにとどまり,建物の内部の構造,使用資材,施工態様,損耗の状況等の詳細まで外部に明らかになっているとはいえない。したがって,上記補償価格についての情報は,一般人においておおよその見当をつけることができるものとはいえないから,公にすることがもともと予定されているものということはできず,本件条例8条1号ただし書イ所定の情報に当たらない。また,上記補償価格に関する情報は,同号ただし書ロ及びハ所定の情報にも当たらないから,同号所定の不開示情報に該当するというべきである。 なお,原告は,上記個人地権者の建物,工作物,動産,植栽,権利等の補 償価格に関する情報は,違法に取得された道路敷地に関する情報であるから,本件条例8条1号ただし書ロにいう「人の財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」に当たると主張するが,独自の見解であって採用できない。 争点(6)原告の被告県に対する損害賠償請求の成否以上3及び4の認定判断からすると,被告知事による本件各決定のうち,公務員の氏名及び地権者の氏名・住所・地番・小字(別紙一覧表当裁判所判断欄に開示と記載の各項目)の各部分については,いずれも本件条例8条1号に定める不開示事由に該当するものとは認め 件各決定のうち,公務員の氏名及び地権者の氏名・住所・地番・小字(別紙一覧表当裁判所判断欄に開示と記載の各項目)の各部分については,いずれも本件条例8条1号に定める不開示事由に該当するものとは認められず,これらの部分を不開示とした被告知事の本件処分は違法である。 しかし,証拠(甲60,66の2及び乙4)及び弁論の全趣旨によれば,上記各取消し部分の不開示事由該当性に関しては,解釈上の争いがあるところであり,同種の情報公開条例を有する地方公共団体における同種の情報開示請求についても,公開するという取扱いが一般に確立しているわけではなく,現に,実務の取扱いも,事案によって分かれていることが認められる。したがって,被告知事が本件条例の実施機関として,別紙一覧表当裁判所判断欄に開示と記載の各項目が,本件条例8条1号の定める不開示事由に該当すると判断して,本件処分を行ったことについて,故意又は過失があったと認めることはできない。 よって,原告の被告知事に対する損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 以上によれば,原告の被告知事に対する訴えについては,本件決定及び本件変更決定のうち,別紙一覧表の第1の24及び第5の9の工作物補償額算定一覧表の原本を不開示とした部分の取消しを求める部分は不適法であるから,これを却下し,別紙一覧表当裁判所判断欄に開示と記載の各項目の取消しを求める部分は理由があるからこれを認容し,その余の請求及び原告の被告県に対す る請求は,理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部裁判長裁判官新堀亮一裁判官岩井一真裁判官村上典子 所民事部裁判長裁判官新堀亮一裁判官岩井一真裁判官村上典子

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