平成23年10月24日判決言渡 平成23年(行ケ)第10022号審決取消請求事件(特許) 口頭弁論終結日平成23年10月17日判決 原告日本テトラパック株式会社 訴訟代理人弁理士清水正三 被告特許庁長官 指定代理人齋藤真由美 同中田とし子 同新海岳 同田村正明 主文 1 特許庁が不服2007-34188号事件について平成22年12月14日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文と同旨 第2 事案の概要 1 本件は,原告が名称を「積層材料,積層材料の製造方法,積層材料のヒートシール方法および包装容器」とする発明につき特許出願をし,平成19年10月23日付けで特許請求の範囲の変更等を内容とする手続補正(第1次補正,請求項の数6)をしたが,拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をし,その中で平成20年1月18日付けで特許請求の範囲の変更等を内容とする手続補正(第2次補正,請求項の数6,以下「本件補正」という。)をしたところ,特許庁が本件補正を却下した上,請求不成立の審決をしたことから,原告がその取消しを求めた事案である。 2 争点は,本件 第2次補正,請求項の数6,以下「本件補正」という。)をしたところ,特許庁が本件補正を却下した上,請求不成立の審決をしたことか- 2 -ら,原告がその取消しを求めた事案である。 2 争点は,本件補正後の請求項1に係る発明が下記引用例1及び2との間で独立特許要件(進歩性,特許法29条2項)を有するか,である。 記・引用例1:特開平11-29110号公報(発明の名称「ウェブのシール方法と装置および包装容器製造方法と包装容器製造装置」,公開日平成11年2月2日,甲1。以下,これに記載された発明を「引用発明1」という。)・引用例2:特開平9-277442号公報(発明の名称「金属蒸着ポリプロピレンフィルムおよびその用途」,公開日平成9年10月28日,甲2。以下,これに記載された発明を「引用発明2」という。)第3 当事者の主張 1 請求の原因(1) 特許庁における手続の経緯原告は,平成15年2月28日,名称を「積層材料,積層材料の製造方法,積層材料のヒートシール方法および包装容器」とする発明につき特許出願(特願2003-53806号,公開特許公報は特開2004-262048号〔甲8〕,請求項の数6)をし,平成19年10月23日付けで特許請求の範囲の変更等を内容とする手続補正(第1次補正,請求項の数6。甲11)をしたが,同年11月19日付けで拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をした。 特許庁は,上記請求を不服2007-34188号事件として審理し,その中で原告は平成20年1月18日付けで特許請求の範囲の変更等を内容とする本件補正(第2次補正,請求項の数6。甲14)をしたが,特許庁は,平成22年12月14日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求 中で原告は平成20年1月18日付けで特許請求の範囲の変更等を内容とする本件補正(第2次補正,請求項の数6。甲14)をしたが,特許庁は,平成22年12月14日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年12月27日原告に送達され- 3 -た。 (2) 発明の内容ア第1次補正時の請求項の数は前記のとおり6であるが,その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)の内容は,次のとおりである。 【請求項1】 少なくとも支持層及び熱可塑性最内層からなる包装容器用ウェブ状積層材料であって,該容器形成のために高周波誘導加熱によりヒートシールされる帯域に,該誘導加熱により発生した熱が該最内層に伝わるように該支持層と該熱可塑性最内層との間に積層された導電性層を有し,該導電性層が,前記支持層と前記熱可塑性最内層との間に積層された蒸着フィルムの基材フィルムに設けられた金属性導電材料からなる高周波誘導によって発熱する金属蒸着層であることを特徴とする積層材料。 イ本件補正(第2次補正)後の請求項の数は前記のとおり6であるが,その請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)の内容は,以下のとおりである(下線部分は補正箇所)。 【請求項1】少なくとも支持層及び熱可塑性最内層からなる包装容器用ウェブ状積層材料であって,該容器形成のために高周波誘導加熱によりヒートシールされる帯域に,該誘導加熱により発生した熱が該最内層に伝わるように該支持層と該熱可塑性最内層との間に積層された導電性層を有し,該導電性層が,前記支持層と前記熱可塑性最内層との間に積層された蒸着フィルムの基材フィルムに設けられた金属性導電材料からなり,高周波誘導によって該ヒートシールに十分な熱 された導電性層を有し,該導電性層が,前記支持層と前記熱可塑性最内層との間に積層された蒸着フィルムの基材フィルムに設けられた金属性導電材料からなり,高周波誘導によって該ヒートシールに十分な熱を発する金属蒸着層であることを特徴とする積層材料。 (3) 審決の内容- 4 -ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その要点は,①本願補正発明は引用発明1及び2に基づいて当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が容易に発明することができたから独立して特許を受けることができるものではない,②本件補正前の本願発明も引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 イなお,審決が認定した引用発明1及び2の内容,本願補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は,上記審決写しのとおりである。 (4) 審決の取消事由しかしながら,独立特許要件がないとして本件補正を却下した審決には次のような誤りがあるから,審決は違法として取り消されるべきである。 ア取消事由1(本願補正発明と引用発明1との相違点についての認定判断の誤り)(ア) 審決は,相違点に関し,「引用発明1のアルミ箔層と,刊行物2記載の上記金属蒸着フィルムとは,共に,流動性食品等の包装容器用積層体の分野において,誘導加熱による熱を発生させる導電性材料であり,そこで発生させた熱により熱可塑性樹脂層を溶融させヒートシールさせるためのものである点で共通するから,引用発明1における『アルミ箔層』に代えて,ヒートシール性に優れたものとするよう,刊行物2に記載の,金属蒸着フィルム,すなわち,基材フィルムに金属の蒸着薄膜が形成された金属蒸着層を適用すること ら,引用発明1における『アルミ箔層』に代えて,ヒートシール性に優れたものとするよう,刊行物2に記載の,金属蒸着フィルム,すなわち,基材フィルムに金属の蒸着薄膜が形成された金属蒸着層を適用することは,当業者が容易に想到し得たことと認める。」(審決10頁24~31行)と説示するが,次のとおり,誤りである。 すなわち,確かに金属蒸着層には導電性があるが,導電性は誘導加熱の必要条件であっても十分条件ではない。例えば,電磁加熱式調理器具- 5 -に用いられる電磁加熱用金属板において,導電性があるアルミニウムであっても,その表皮抵抗が非常に小さく,渦電流が発生しても誘導加熱の発熱量として出力が得られない。したがって,引用例2記載の金属蒸着フィルムに「導電性」があることをもって,誘導加熱に直ちに結びつけることはできない。 また,本願当時,包装容器材料の分野において,金属蒸着フィルムには導電性があると認識されていたことは事実であるが,その導電性は静電気障害防止のためのものであって,誘電加熱のためのものではない。 したがって,引用例2記載の金属蒸着フィルムの「導電性」は,金属蒸着フィルムの誘導加熱について何ら示唆するものではない。 以上のように,引用例2記載の金属蒸着フィルムは,包装容器の分野において誘導加熱による熱を発生させる導電性材料とはいえず,むしろ静電気障害防止材料であったことは明らかである。 したがって,引用発明1における「アルミ箔層」に代えて,引用例2に記載された金属蒸着層を誘導加熱のために適用することを,当業者は容易に想到し得なかったというべきである。 (イ) この点に関し,被告は,後記3(1) アにおいて,乙1(特開2001-55201号公報。以下「乙1文献」という。)の記載を引用するなどし,高周波誘導加熱 想到し得なかったというべきである。 (イ) この点に関し,被告は,後記3(1) アにおいて,乙1(特開2001-55201号公報。以下「乙1文献」という。)の記載を引用するなどし,高周波誘導加熱でとりわけヒートシールされる包装容器においては,容器のヒートシールされる領域に高周波誘導加熱により発熱する発熱層(導電性層)を付設し,該容器を該高周波電界の中に入れたとき,該発熱層に近接したヒートシール部分が溶融することで密封されること,及び該発熱体となる導電性層として金属蒸着層を用いることは,金属箔を用いることと同様,乙1文献の記載を待つまでもなく,本願前に技術常識であったと主張する。 しかし,本願補正発明の技術分野は食品包装分野であるのに対し,乙- 6 -1文献に記載された容器は,レーザービームプリンタのトナーを充填するカートリッジであり,その技術分野は事務機器の部品であるから,本願補正発明の技術分野とは同じではない。 また,当業者であれば,乙1文献には発熱体の金属層として実質的に金属箔のみが記載されていると認識するものである。すなわち,乙1文献の実施の形態には,発熱体として厚さ6~100μm程度の金属層が用いられ(段落【0050】参照),その実施例1~3,5~8及び10~11では,厚さ6~200μmのアルミニウム又はステンレスが金属層として用いられている(段落【0066】表1参照)。 一方,金属箔は,アルミニウム等の金属を用途に応じて通常200μm~6μmの厚さまで圧延して作られた箔状の金属である。他方,金属蒸着膜は,通常,その厚みが0.001~0.1μm(100~1000オングストローム)の薄さである。 つまり,乙1文献で詳細に特定されている金属層については,その厚みから,当業者であればそれを金属箔と認識し, その厚みが0.001~0.1μm(100~1000オングストローム)の薄さである。 つまり,乙1文献で詳細に特定されている金属層については,その厚みから,当業者であればそれを金属箔と認識し,乙1文献記載の金属層としては実質的に金属箔が記載されていると理解するものである。 そうすると,乙1文献の記載によって,高周波誘導加熱により発熱し,近接したヒートシール部分を溶融して密封する発熱体として金属蒸着層を用いることが,本願前,技術常識であったと立証されているとはいえないというべきである。 この点に関し,被告は,さらに,乙4(特開2002-311733号公報。以下「乙4文献」という。)を引用した上,同文献の段落【0015】には,電磁誘導の発熱体となり得る金属層の厚さとして0.05~50μm程度は適用可能であると記載されているから,当業者は,引用例2記載の金属蒸着層でも電磁誘導の発熱体となり得ると理解すると主張する。 - 7 -しかし,乙4文献の記載は,複写機などに用いられる定着装置に関するものであって,その技術分野は事務機器の部品であるから,本願補正発明の技術分野と異なる。 また,被告が指摘する乙4文献の段落【0015】の記載は,金属銅層を形成する方法には種々の方法があり,得られた層の厚さの範囲が「0.05~50μm」であることを開示しているにすぎない。金属銅層を形成する方法には,肉厚の層を形成する方法も薄い層を形成する方法もある。一般的に,メッキ法が肉厚の層を形成するので,上記段落【0015】の上限の50μmはメッキ法を指していると解される。そして,液体食品用を含む包装材料・容器の技術分野において,「金属蒸着層の厚さは極めて薄い」というのが技術常識であるから,当業者であれば,厚さ50μmの金属銅層が蒸着法で 法を指していると解される。そして,液体食品用を含む包装材料・容器の技術分野において,「金属蒸着層の厚さは極めて薄い」というのが技術常識であるから,当業者であれば,厚さ50μmの金属銅層が蒸着法で形成されたとは決して理解しないというべきである。 以上のとおり,被告の上記主張はいずれも根拠がない。 (ウ) 被告は,同じく後記3(1) アにおいて,乙2(特開平1-182275号公報。以下「乙2文献」という。),及び乙3(高垣俊寿著「電子レンジ用発熱包材」(「食品の包装」Vol.18,№2〔1987年〕8頁以下。以下「乙3文献」という。)の各記載を引用した上,広く包装容器,包装材料の技術分野全般でみても,高周波誘導加熱により発熱する導電性層として金属蒸着層を用いることは,金属箔や無電解メッキ膜を用いることと同様,本願前,技術常識であったと主張する。 しかし,乙2文献には,金属蒸着膜に関する詳細な説明及び実施例等は全く記載されていないのであって,その実施例による効率的な加熱の実証から,むしろ,当業者であれば,乙2文献で記載されている金属含有層は金属箔と認識するというべきである。 したがって,乙2文献の記載によって,高周波誘導加熱により発熱す- 8 -る導電性層として金属蒸着層を用いることが,本願前に技術常識であったことが立証されているとはいえない。 また,乙3文献については,その記載を詳細に検討すれば,例えば,チルド包装される牛乳等の液体食品では,誘電損失が大きく加熱効果が期待できないことや一部分を除いて未だ研究段階の域を脱していないと説明されている。 したがって,乙3文献に記載されている金属蒸着層は実用に至っていない未熟技術であり,誘導加熱により発熱する導電性層として金属蒸着層を用いることが技術常識であったこ ていないと説明されている。 したがって,乙3文献に記載されている金属蒸着層は実用に至っていない未熟技術であり,誘導加熱により発熱する導電性層として金属蒸着層を用いることが技術常識であったことが立証されているとはいえない。 上記認識を裏付けるように,特許調査によれば,本願前10年間に公開された金属蒸着フィルムに関する全ての特許公開公報に,金属蒸着フィルムの機能として,導電性による誘導加熱(発熱)を記載するものは存在しない(甲20参照)。 以上のとおり,包装容器,包装材料の技術分野で,マイクロ波による誘導加熱により発熱する導電性層として金属蒸着層を用いることが,本願前,技術常識であったことが立証されていないのであるから,被告の上記主張は根拠がない。 イ取消事由2(本願補正発明と引用発明1との効果についての認定判断の誤り)(ア) 審決は,本願補正発明の効果(ⅰ)の「アセプチック包装とチルド包装との異なる包装システムであっても,異なる包装システムの一部を転用若しくは流用することができるので,包装システム全体の効率的な運転/運用/操業が可能になり,更には,エネルギーや資材の削減,製造コストの低減に寄与することができる。」(審決10頁末行~11頁3行)について,「そうすると,引用発明1の,その内に流動性食品などの内- 9 -容物を充填する包装容器の製造に用いる管状ウェブは,アセプチック包装用のみならずチルド食品包装用としても用いられることが,本願出願前周知事項であった以上,両包装システムの一部を転用若しくは流用することができることを,当業者であれば容易に想到し得たことと認められる。そして,両包装システムの一部を転用若しくは流用することにより,包装システムの運転,操業を効率的に行え,製造コストの削減に寄与するこ ができることを,当業者であれば容易に想到し得たことと認められる。そして,両包装システムの一部を転用若しくは流用することにより,包装システムの運転,操業を効率的に行え,製造コストの削減に寄与することは,当業者が予測し得る範囲内のことといえ,格別顕著なものとも認められない。」(審決第12頁5~12行)と判断するが,次のとおり,誤りである。 すなわち,アセプチック包装とは,常温で,例えば数か月から1年間食品の保存ができる包装であり,チルド包装とは冷蔵(10℃以下)で1から数週間の保存ができる包装である。 アセプチック包装システムでは食品が厳しい条件で処理され,厳しい条件の包装材料(アルミ箔層を含む)が用いられ,厳しい条件で充填装置において充填されるのに対し,チルド包装では緩い条件であって,従来,それぞれの包装システムはそれぞれ独立のシステムである。また,いずれの包装システムにおいても管状ウェブを包装材料として使用し,ブリック状(平行6面体)もゲーブルトップ状(屋根型)の容器も製造する。 そして,引用発明1の管状ウェブは,アルミ箔層を含み,殺菌されているので,アセプチック包装用の包装材料である。この包装材料は,アセプチック包装用の充填装置に用いられ,ブリック状容器を製造する。 一方,審決が周知例として例示する甲5(特開平2001-278330号公報。以下「甲5文献」という。)に記載の包装材料は,厳しい条件を付与するアルミ箔層を含まず,チルド食品包装用の包装材料である。この包装材料は,チルド包装用の充填装置に用いられ,ブリック状- 10 -やゲーブルトップ状容器も製造する。 以上のとおり,審決の「発明の効果」についての判断は,従来の上記事項を述べたものにすぎない。 これに対し,本願補正発明は,アルミ箔に代え - 10 -やゲーブルトップ状容器も製造する。 以上のとおり,審決の「発明の効果」についての判断は,従来の上記事項を述べたものにすぎない。 これに対し,本願補正発明は,アルミ箔に代えて,金属蒸着フィルムを用いることによって,チルド包装用の食品の包装材料であっても,アセプチック包装用の充填装置に転用若しくは流用することが可能になるという画期的な包装材料であって,このように両包装システムの一部を転用若しくは流用することを当業者は容易に想到し得ない。 以上のとおり,発明の効果(ⅰ)についての審決の認定判断は誤りである。 (イ) 審決は,本願補正発明の効果(ⅱ)の「新規なシール方法で封止/接合を形成することが可能になり,高速に印刷中の印刷機内で,自動接合装置を利用して,正確に処理され,大規模なフレキソ印刷機,グラビア印刷機で量産レベル行うことが可能になる。」(審決11頁4~7行)について,「格別顕著な効果とも認められない」(審決12頁下3行~下4行)と判示した。 しかし,発明の効果(ⅱ)は,本願の請求項4記載の積層材料の製造方法の効果であるから,請求項1記載の発明のみを審理対象にする審決で判断することは誤りである。 (ウ) 審決は,本願補正発明の効果(ⅲ)の「金属箔層を何ら含まない安価な包装用材料に急速,確実な封止方法を適用することが可能になる。」(審決11頁8行~9行)について,「格別顕著な効果とも認められない」(審決13頁5行~6行)と判断した。 しかし,発明の効果(ⅲ)は,本願の請求項4記載の積層材料の製造方法及び請求項5記載のヒートシール方法の効果であるから,請求項1記載の発明のみを審理対象にする審決で判断することは誤りである。 - 11 - 2 請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3) 法及び請求項5記載のヒートシール方法の効果であるから,請求項1記載の発明のみを審理対象にする審決で判断することは誤りである。 - 11 - 2 請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3) の各事実は認めるが,(4)は争う。 3 被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 (1) 取消事由1に対しア原告の主張(ア) につき原告は,引用例2記載の金属蒸着フィルムは,包装容器の分野において,誘導加熱による熱を発生させる導電性材料ではなく,むしろ静電気障害防止材料であるから,引用発明1における「アルミ箔層」に代えて,引用例2に記載の金属蒸着層を誘導加熱のために適用することは,当業者が容易に想到し得ない,と主張する。 しかし,そもそも,高周波誘導加熱でとりわけヒートシールされる包装容器においては,容器のヒートシールされる領域に高周波誘導加熱により発熱する発熱層(導電性層)を付設し,該容器を該高周波電界の中に入れたとき,該発熱層に近接したヒートシール部分が溶融することで密封されること,及び該発熱体となる導電性層として金属蒸着層を用いることは,金属箔を用いることと同様,乙1文献の記載を待つまでもなく,本願前,技術常識であった。 また,広く包装容器,包装材料の技術分野全般でみても,高周波誘導加熱により発熱する導電性層として金属蒸着層を用いることは,乙2文献及び乙3文献の記載からも明らかなように,金属箔や無電解メッキ膜を用いることと同様,本願前,技術常識であった。 さらに,引用例2の段落【0048】及び【0052】の記載を参照すれば,引用例2の金属蒸着フィルムはヒートシール性が求められるものであることが明らかである。 そうすると,上記のとおり,そもそも高周波誘導加熱でとりわけ 【0048】及び【0052】の記載を参照すれば,引用例2の金属蒸着フィルムはヒートシール性が求められるものであることが明らかである。 そうすると,上記のとおり,そもそも高周波誘導加熱でとりわけヒート- 12 -シールされる包装容器において,容器のヒートシールされる領域に,高周波誘導加熱により発熱する発熱層(導電性層)を付設し,該発熱体となる導電性層として金属蒸着層を用いることは,本願前,技術常識であったことに照らせば,当業者は,引用例2記載の金属蒸着フィルムに,静電気障害防止の機能のみならず,誘導加熱による熱を発生させる導電性層としての機能も認識するものである。つまり,金属蒸着層を適用することには,当業者にとって格別な創意工夫は必要ないのである。 したがって,原告の上記主張は根拠がない。 イ原告の主張(イ) につき原告は,乙1文献で詳細に特定されている金属層については,その厚みから,当業者であればそれを金属箔と認識し,乙1文献記載の金属層としては実質的に金属箔が記載されていると理解すると主張する。 しかし,引用例2の段落【0038】によれば,金属蒸着層の厚さについて「フィルム表面に形成される金属(B1)または金属酸化物(B2)の薄膜の厚さは,通常100~1000Å,好ましくは200~700Åである」と記載されている。ここで,「100~1000Å」とは,μmオーダーに換算すると「0.01~0.1μm」である。 そして,乙4文献の段落【0015】には,電磁誘導の発熱体となり得る金属層の厚さとして0.05~50μm程度は適用可能であると記載されている。 以上のような知見に照らしても,当業者は,引用例2記載の金属蒸着層でも電磁誘導の発熱体となり得ると理解するものである。 そして,乙1文献の段落【0043】には, 可能であると記載されている。 以上のような知見に照らしても,当業者は,引用例2記載の金属蒸着層でも電磁誘導の発熱体となり得ると理解するものである。 そして,乙1文献の段落【0043】には,高周波誘導加熱可能な発熱体として金属箔のみならず金属蒸着膜という語も明記されているのであるから,それに,上記のとおり,電磁誘導の発熱体となり得る金属層の厚さとして0.05~50μm程度は適用可能という知見があることを勘案- 13 -すれば,当業者は,乙1文献に記載されている高周波誘導加熱による発熱体として,金属箔のみならず,金属蒸着層も採用できるとごく自然に認識するものである。 したがって,原告の上記主張は失当である。 (2) 取消事由2に対しア原告の主張(ア) につきそもそも,本願補正発明に係る積層材料は,アセプチック包装用やチルド包装用という用途面の技術的特徴について何ら特定がなされていないものである。そうすると,本願補正発明は,チルド食品包装用の包装材料としてのみ用いられることもあるから,本願補正発明において,アルミ箔に代えて金属蒸着層を用いることによって,チルド包装用の食品や包装材料をアセプチック包装用の充填装置に転用若しくは流用することが可能になるという効果は,本願補正発明により必ず奏される効果とはいえない。 また,技術的にみても,前記のとおり,そもそも高周波誘導加熱により発熱する発熱層(導電性層)を付設し誘導加熱でとりわけヒートシールされる包装容器において,発熱体となる導電性層として金属蒸着層を用いることは,金属箔と同様,本願前,技術常識であったのであるから,高周波誘導加熱でヒートシールされる包装容器において,発熱体となる導電性層として,金属箔に代えて,金属蒸着層を適用することは,いわば汎用手段の転用にす と同様,本願前,技術常識であったのであるから,高周波誘導加熱でヒートシールされる包装容器において,発熱体となる導電性層として,金属箔に代えて,金属蒸着層を適用することは,いわば汎用手段の転用にすぎない。しかも,このような汎用手段を転用するに際し,チルド包装用であってもアセプチック包装用への転用を妨げるような事情は見当たらない。 そうすると,金属蒸着層も,金属箔と同じく,誘導加熱の発熱体となる導電性層として適用される汎用手段の一つである以上,金属蒸着層を適用した場合の効果は,通常,金属箔を適用した場合と同じ効果を奏するもの- 14 -と考えられる。 したがって,引用発明1の高周波誘導加熱の発熱体となる導電性層として,金属箔に代えて,同じく誘導加熱の発熱体となる導電性層として適用される汎用手段の一つである金属蒸着層を転用した包装機械が,アセプチック包装用及びチルド包装用の双方に適用可能であることは,当業者であれば予測し得た事項である。 以上のとおり,この点で審決に誤りはなく,原告の上記主張に根拠はない。 イ原告の主張(イ)及び(ウ) につき原告は,審決に記載された本願補正発明の効果(ⅱ)及び(ⅲ)について,本願の請求項4記載の積層材料の製造方法の効果と主張するが,該積層材料とは本願の請求項1記載の本願補正発明に他ならず,その製造方法の効果は,本願補正発明自体の効果に密接に関連する。審決は,それについて判断したものであり,誤りではない。 第4 当裁判所の判断 1 請求原因(1) (特許庁における手続の経緯),(2) (発明の内容),(3) (審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。 2 本願補正発明の容易想到性の有無(独立特許要件の有無)審決は,本願補正発明は引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に想到 の内容),(3) (審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。 2 本願補正発明の容易想到性の有無(独立特許要件の有無)審決は,本願補正発明は引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に想到できるとし,一方,原告はこれを争うので,以下検討する。 (1) 本願補正発明の意義ア本願補正明細書(特許請求の範囲及び段落【0005】及び【0024】については平成20年1月18日付け手続補正書のもの〔甲14〕,その他の記載及び図面については出願当初明細書のもの〔甲8〕)には,次の記載がある(なお,下線部分は補正箇所。)。 (ア) 特許請求の範囲- 15 -【請求項1】 前記第3,1(2)イのとおり。 (イ) 発明の詳細な説明・「【発明の属する技術分野】本発明は,積層材料,積層材料の製造方法,積層材料のヒートシール方法および包装容器に関する。」(段落【0001】)・「【従来の技術】支持層及び熱可塑性最内層からなる包装容器用ウェブ状積層材料であって,容器形成のために高周波誘導加熱によりヒートシールされる帯域に,支持層と熱可塑性最内層との間に積層されたカーボンブラック導電性層を有する積層材料は,例えば,特公昭63-222号公報に記載されたものが知られている。図1に示す積層材料では,支持層と,熱可塑性最内層と,それらの中間層のカーボンブラック導電性層とが構成されている。 また,ウェブ状積層材料のヒートシールされるべき部分に高周波誘導加熱用アルミニウム箔テープを張付ける張付け装置が配置され,ヒータの高周波コイルによって,アルミニウム箔テープを高周波誘導加熱する包装機械が,例えば,特許第2694286号に記載されている。」(段落【0002】)・【図1】(本発明の一実施の形態であるウェブ状積層材料の一部分の断面 アルミニウム箔テープを高周波誘導加熱する包装機械が,例えば,特許第2694286号に記載されている。」(段落【0002】)・【図1】(本発明の一実施の形態であるウェブ状積層材料の一部分の断面図) 1:支持層 2:最内層 3:導電層 ・「【発明が解決しようとする課題】液体食品の包装紙容器に関して,常温保存可能なアセプチック包装- 16 -と,牛乳容器の様にチルド流通されるチルド包装に分類される。それぞれの包装積層材料は,概ね,アセプチック包装とチルド包装とに別々に製造され,別々の包装充填機により,別々のシール方法で液体食品を充填包装されている。 しかしながら,アセプチック包装とチルド包装との異なる包装システムであっても,異なる包装システムの一部を転用若しくは流用すれば,包装システム全体の効率的な運転/ 運用/ 操業が可能になり,更には,エネルギーや資材の削減,製造コストの低減に寄与する。 本発明は,上記課題を解決する積層材料,積層材料の製造方法,積層材料のヒートシール方法および包装容器を提供することを目的とする。」(段落【0003】)・「【課題を解決するための手段】この課題を解決する本発明の積層材料及び包装容器は,支持層及び熱可塑性最内層からなる包装容器用ウェブ状積層材料であって,容器形成のために高周波誘導加熱によりヒートシールされる帯域に,誘導加熱により発生した熱が最内層に伝わるように支持層と熱可塑性最内層との間に積層された導電性層を有し,該導電性層が,前記支持層と前記熱可塑性最内層との間に積層された蒸着フィルムの基材フィルムに設けられた金属性導電材料からなる金属蒸着層である構成を有する。 これにより,アセプチック包装とチル ,該導電性層が,前記支持層と前記熱可塑性最内層との間に積層された蒸着フィルムの基材フィルムに設けられた金属性導電材料からなる金属蒸着層である構成を有する。 これにより,アセプチック包装とチルド包装との異なる包装システムであっても,異なる包装システムの一部を転用若しくは流用して,包装システム全体の効率的な運転/ 運用/操業が可能にし,更には,エネルギーや資材の削減,製造コストの低減に寄与する。」(段落【0004】)・「【発明の実施の形態】- 17 -本発明の請求項1に記載の積層材料の発明は,少なくとも支持層及び熱可塑性最内層からなる包装容器用ウェブ状積層材料であって,該容器形成のために高周波誘導加熱によりヒートシールされる帯域に,該誘導加熱により発生した熱が該最内層に伝わるように該支持層と該熱可塑性最内層との間に積層された導電性層を有し,該導電性層が,前記支持層と前記熱可塑性最内層との間に積層された蒸着フィルムの基材フィルムに設けられた金属性導電材料からなり,高周波誘導によって該ヒートシールに十分な熱を発する金属蒸着層であることを特徴とする。」(段落【0005】)・「(実施の形態1)図1は,この発明の一実施の形態であるウェブ状積層材料の一部分の断面図を示している。図1において,積層材料は,紙,板紙,プラスチック,それらの複合材からなる支持層1 と,低密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレンなどの熱可塑性最内層3と,高周波誘導加熱によりヒートシールされる帯域に誘導加熱により発生した熱が最内層3 に伝わるように支持層1 と熱可塑性最内層3 との間に積層された導電性層2とを有する。 その導電性層は,支持層と熱可塑性最内層との間に積層された蒸着フィルム8 の基材フィルム9外面に設けられた金属性導電材料からなる と熱可塑性最内層3 との間に積層された導電性層2とを有する。 その導電性層は,支持層と熱可塑性最内層との間に積層された蒸着フィルム8 の基材フィルム9外面に設けられた金属性導電材料からなる金属蒸着層2である。」(段落【0017】)・「【発明の効果】以上のように本発明によれば,以下の有利な効果が得られる。 アセプチック包装とチルド包装との異なる包装システムであっても,異なる包装システムの一部を転用若しくは流用することができるので,包装システム全体の効率的な運転/ 運用/ 操業が可能になり,更には,エネルギーや資材の削減,製造コストの低減に寄与する- 18 -ことができる。 本発明により,新規なシール方法で封止/ 接合を形成することが可能になり,高速に印刷中の印刷機内で,自動接合装置を利用して,正確に処理され,大規模なフレキソ印刷機,グラビア印刷機で量産レベル行うことが可能になる。 本発明による方法により,金属箔層を何ら含まない安価な包装用材料に急速,確実な封止方法を適用することが可能になる。」(段落【0024】)イ上記記載によると,本願補正発明は,液体食品の包装紙容器に関し,支持層及び熱可塑性最内層からなる包装容器用ウェブ状積層材料において,アセプチック包装とチルド包装という異なる包装システムの一部を転用若しくは流用できるようにすることによって,包装システム全体の効率的な運転,運用及び操業を可能とし,さらに,エネルギーや資材の削減,製造コストの低減を図るために,容器形成のために高周波誘導加熱によりヒートシールされる帯域に,誘導加熱により発生した熱が最内層に伝わるように支持層と熱可塑性最内層との間に積層された導電性層を有し,その導電性層が,前記支持層と前記熱可塑性最内層との間に積層された蒸着フィルムの される帯域に,誘導加熱により発生した熱が最内層に伝わるように支持層と熱可塑性最内層との間に積層された導電性層を有し,その導電性層が,前記支持層と前記熱可塑性最内層との間に積層された蒸着フィルムの基材フィルムに設けられた金属性導電材料からなり,高周波誘導によって該ヒートシールに十分な熱を発する金属蒸着層であることを特徴とする発明であると認めることができる。 (2) 引用発明1の意義ア一方,引用例1(甲1)には,次の記載がある。 ・「【発明の属する技術分野】本発明は二重のウェブの側面を押圧しながらシールする方法と装置に関し,特に板状ウェブから管状のウェブに変形し,該管状ウェブ内に流動性食品などの内容物を充填する包装容器の製造方法と装置に関する。」(段落【0001】)- 19 -・「【従来の技術】ロール状に巻き取られた板状ウェブを連続的に巻き戻しながら移動させ,徐々に管状に成形し,ウェブの長手方向に直交する方向の両端部がわずかに重なる位置でウェブを連続的に接着し,その中へ流動性食品などの充填液を充填し,充填液が満杯状態である包装容器を連続的に形成するために,充填液面下において密封してウェブ長手方向に直交する方向にシール(以下,横シールということがある。)し,その後,該横シール部の幅方向のほぼ中央部を切断するという一連の動作を繰り返すことによって液充填包装容器を形成し,最終的には平行6面体の容器を作製する。」(段落【0002】)・「ウェブ中へ流動性食品などの充填液を充填する際には,ウェブの両側からウェブを押圧して横シールするための一対の封止ジョーが2組設けられており,各々一対の封止ジョーは下方に搬送中の管状ウェブを挟持して下方に引っ張りながらウェブと共に移動し,所定距離下降した後に,前述のように横シール部分のほぼ中央部を切 対の封止ジョーが2組設けられており,各々一対の封止ジョーは下方に搬送中の管状ウェブを挟持して下方に引っ張りながらウェブと共に移動し,所定距離下降した後に,前述のように横シール部分のほぼ中央部を切断すると同時にウェブの封止状態を開放して管状ウェブの下降への搬送力を解き,互いに離間する方向に移動し,所定距離だけ上昇して再び管状ウェブの封止を行う動作を繰り返す。」(段落【0003】)・「管状ウェブは,その内側から順にポリエチレンフィルム層,接着剤層,アルミ箔層,紙層及びポリエチレンフィルム層を積層した多層構造体であり,この管状ウェブの横シールは前記一対の封止ジョーを用いてポリエチレンフィルム層を加熱溶融して行う。」(段落【0004】)・「一対の封止ジョーは例えば図2,図3に示すようにヒートシールするための熱シールジョー7aと熱シールジョー7aからの加圧力を受ける受圧ジョー7bからなり(図2には熱シールジョー7aと受圧ジョー7bの組と熱シールジョー7a’と受圧ジョー7b’の組があるが,以後熱シールジョー7aと受圧ジョー7bの組で説明する),熱シールジ- 20 -ョー7aのウェブW表面との当接部分にはインダクタ8が設けられ,受圧ジョー7bのウェブWとの当接部分には受圧バー9と横シール部の幅方向の中央を切断するカッター11が設けられている。さらに,熱シールジョー7aと受圧ジョー7bの両端にはそれぞれフック16aとフック16bが設けられており,この熱シールジョー7aのフック16aと受圧ジョー7bのフック16bを互いに係合させて,その係合力をフック16aの液体圧シリンダ18の作動油圧を調整することでインダクタ8と受圧バー9とに挟持されたウェブWの横シール時の押圧力を制御する。」(段落【0005】)・【図1】(本発明の一実施例の板状ウ ック16aの液体圧シリンダ18の作動油圧を調整することでインダクタ8と受圧バー9とに挟持されたウェブWの横シール時の押圧力を制御する。」(段落【0005】)・【図1】(本発明の一実施例の板状ウェブWから内容物が内部に充填される包装容器を製造する包装容器製造装置の概略図)・【図2】(図1の包装容器製造装置の2組からなる封止ジョー部分の側面略図)【図1】 【図2】 ・【図3】(図2のA-A矢視図と封止ジョー部分の高周波加熱システムの作動制御図)- 21 - ・「そして,一対の封止ジョー7の熱シールジョー7aと受圧ジョー7bがウェブの両側を押圧する際には熱シールジョー7aのインダクタ8によりウェブWのアルミ箔にうず電流を流すことで,誘導加熱による熱を発生させ,この熱でポリエチレンフィルム層を溶融させてウェブWを横シールする。」(段落【0006】)・「本発明は6面体形状の包装容器の製造だけでなくゲーブルトップ形状の包装容器製造にも適用できる。また,本発明は紙,プラスチック製品などのウェブのシールに用いることができる。」(段落【0021】)イ上記記載によれば,引用発明1は,二重のウェブの側面を押圧しながらシールする方法と装置,特に板状ウェブから管状のウェブに変形し,該管状ウェブ内に流動性食品などの内容物を充填する包装容器の製造方法に関し,審決が認定したとおり,「包装容器の製造に用いる管状ウェブで,その内側から順にポリエチレンフィルム層,接着剤層,アルミ箔層,紙層及びポリエチレンフィルム層を積層した多層構造体であって,この管状ウェブの横シールは,一対の封止ジョーの熱シールジョーのインダクタによりウェブ 順にポリエチレンフィルム層,接着剤層,アルミ箔層,紙層及びポリエチレンフィルム層を積層した多層構造体であって,この管状ウェブの横シールは,一対の封止ジョーの熱シールジョーのインダクタによりウェブのアルミ箔にうず電流を流すことで,誘導加熱による熱を発生させ,この熱でポリエチレンフィルム層を溶融させてウェブを横シールするものである,管状ウェブ」,という発明であると認めることができる。 (3) 引用発明2の意義- 22 -ア引用例2(甲2)には,次の記載がある。 (ア) 特許請求の範囲・「【請求項1】メルトフローレート(MFR)が2.0~15.0g/10分であり,かつ,常温n- デカン抽出量が2.5重量%以下であるポリプロピレン(A)からなるフィルム表面に,金属(B1)または金属酸化物(B2)の蒸着薄膜が形成されていることを特徴とする金属蒸着ポリプロピレンフィルム。」・「【請求項6】請求項1~5のいずれかに記載の金属蒸着ポリプロピレンフィルム,またはその金属蒸着ポリプロピレンフィルムを含む積層体からなることを特徴とする包装材料。」(イ) 発明の詳細な説明・「【発明の技術的背景】水蒸気の透湿を抑え,また酸素,窒素などのガスに対するガスバリヤー性,遮光性,導電性等を付与するため,プラスチックフィルムに金属や金属酸化物を蒸着したプラスチックフィルムが知られている。」(段落【0002】)・「【発明の目的】本発明は,上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって,低温シール性および耐ブロッキング性に優れるとともに,フィルムと蒸着金属膜との密着性に優れた金属蒸着ポリプロピレンフィルムおよびそのフィルムからなる包装材料を提供することを目的としている。」(段落【0006】)・「また,メタロセン系オレフィン重合 フィルムと蒸着金属膜との密着性に優れた金属蒸着ポリプロピレンフィルムおよびそのフィルムからなる包装材料を提供することを目的としている。」(段落【0006】)・「また,メタロセン系オレフィン重合用触媒を用いて調整されたポリプロピレン(A)は,その低分子量領域の成分含有量が少ないため,耐ブロッキング性,経時での透明性維持に優れたポリプロピレンフィルムを提供することができる。」(段落【0031】)・「この金属蒸着ポリプロピレンフィルムは,経時でのポリプロピレン(A)の低分子量域成分のブリードアウトがほとんど無いため,経時- 23 -でのポリプロピレンフィルムと金属または金属酸化物の蒸着薄膜との密着性,低温シール性,シール強度特性,透明性および耐ブロッキング性等に優れている。」(段落【0032】)・「金属(B1)および金属酸化物(B2)上記のポリプロピレンフィルム表面に蒸着される金属(B1)としては,具体的には,アルミニウム,銀,ケイ素などが挙げられる。」(段落【0036】)・「上記ポリプロピレン(A)からなるフィルム表面に形成される金属(B1)または金属酸化物(B2)の薄膜の厚さは,通常100~1000Å,好ましくは200~700Åである。」(段落【0038】)・「金属蒸着ポリプロピレンフィルムの調製ポリプロピレンフィルム表面に上記の金属(B1)または金属酸化物(B2)を蒸着して薄膜を形成する方法としては,真空蒸着法・・・などが挙げられる。」(段落【0039】)・「真空蒸着法においては,蒸着材である金属(B1)または金属酸化物(B2)を10-4~10-6Torrの圧力下で電子ビーム,高周波,抵抗,高周波電磁誘導などの方法で加熱し蒸気化し,ポリプロピレンフィルムの被蒸着面に被着させる。」(段落【004 )または金属酸化物(B2)を10-4~10-6Torrの圧力下で電子ビーム,高周波,抵抗,高周波電磁誘導などの方法で加熱し蒸気化し,ポリプロピレンフィルムの被蒸着面に被着させる。」(段落【0040】)・「【発明の効果】本発明に係る金属蒸着ポリプロピレンフィルムは,ポリプロピレン(A)からなるフィルムと金属(B1)または金属酸化物(B2)からなる蒸着薄膜との密着性,低温シール性,耐ブロッキング性および酸素バリヤー性が優れている。」(段落【0048】)・「また本発明に係る包装材料は,上記のような特性に優れた金属蒸着ポリプロピレンフィルムまたはそのフィルムを含む積層体からなるので,低温シール性および耐ブロッキング性に優れている。したがって,本発明に係る包装材料は,被包装物の充填機械適性が良好であ- 24 -る。」(段落【0049】)・「本発明に係る金属蒸着ポリプロピレンフィルムの用途は,特に限定されない。本発明に係る包装材料は,たとえば・・・,飲料(酒,焼酎,ワイン,ジュース,牛乳等),・・・等の食品,・・・などの包装材料として好適である。」(段落【0050】)・「なお,実施例および比較例におけるフィルムの耐ブロッキング性,ヒートシール性,ポリプロピレンフィルムと蒸着薄膜との密着性,および酸素バリヤー性についての試験方法は,次の通りである。 (1) 耐ブロッキング性(ブロッキング力)ASTM-D-1893に準拠して,50℃で1日経過した後のブロッキング力(N/m),50℃で7日間経過した後のブロッキング力(N/m)を測定した。 (2) ヒートシール性(ヒートシール温度)ヒートシーラーを使用し,シール圧力0.2MPa,シール時間1秒,5℃間隔で2枚のフィルム同士を重ね合わせてヒートシールした後,ヒー 定した。 (2) ヒートシール性(ヒートシール温度)ヒートシーラーを使用し,シール圧力0.2MPa,シール時間1秒,5℃間隔で2枚のフィルム同士を重ね合わせてヒートシールした後,ヒートシール引張り試験機[・・・]で500mm/分でヒートシール部の引張試験を行ない,シール部が剥離せず完全シールされていることを確認し,完全シールした時の温度をヒートシール温度(℃)とした。」(段落【0052】)・「【実施例1】メタロセン系オレフィン重合用触媒を用いて調製したプロピレン・エチレン共重合体(・・・)から,Tダイ法により下記の条件下で厚さ40μmのフィルムを形成し,このフィルムの片面にコロナ放電処理を施した。このフィルムのコロナ放電処理面に,真空蒸着法によりアルミニウムを300Åの厚さに蒸着し,蒸着フィルムを得た。」(段落【0054】)・「【実施例2】実施例1において,実施例1のプロピレン・エチレン- 25 -共重合体の代わりに,メタロセン系オレフィン重合用触媒を用いて調製したプロピレン・エチレン共重合体(・・・)を用いた以外は,実施例1と同様にして,蒸着フィルムを得た。」(段落【0056】)・「【比較例2】実施例1において,メタロセン系オレフィン重合用触媒を用いて調製した実施例1のプロピレン・エチレン共重合体の代わりに,チーグラー系オレフィン重合用触媒を用いて調製したプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(・・・)を用いた以外は,実施例1と同様にして,蒸着フィルムを得た。」(段落【0062】)・ 「得られた蒸着フィルムについて,耐ブロッキング性,ヒートシール性,密着性および酸素バリヤー性について上記試験を行った。結果を第1表に示す。」(段落【0063】)・・【第1表】(段落【0064】) ついて,耐ブロッキング性,ヒートシール性,密着性および酸素バリヤー性について上記試験を行った。結果を第1表に示す。」(段落【0063】)・・【第1表】(段落【0064】) イ上記記載によれば,引用例2には,流動性食品等の内容物の充填に好適な包装材料に関し,メルトフローレート(MFR)が2.0~15.0g- 26 -/10分であり,かつ,常温n- デカン抽出量が2.5重量%以下であるポリプロピレン(A)からなるフィルム表面に,金属(B1)または金属酸化物(B2)の蒸着薄膜が形成されている金属蒸着ポリプロピレンフィルムが記載されており,この「金属蒸着ポリプロピレンフィルム」は,基材フィルムに金属の蒸着薄膜が形成された金属蒸着層であって,低温シール性及び耐ブロッキング性に優れている技術的事項が記載されていると認めることができる。 (4) 各周知例の記載内容ア乙1文献(ア) 乙1文献(特開2001-55201号公報)には,次の記載がある。 ・「【請求項11】 内容物を収容するための収容口,及び前記内容物を利用するための部分を有する本体と,前記本体の収容口を閉塞する蓋体とを備え,前記本体と前記蓋体とを,両者の接合部に,少なくとも一層の熱溶融性樹脂層を有する熱接着性フィルム,及び当該熱接着性フィルムの内部又は隣接部に配置され且つ意図的に発熱させることのできる発熱体から構成される接合手段を介在させて接着したことを特徴とする,再使用可能な容器。」(特許請求の範囲請求項11)・「【請求項12】前記接合手段の発熱体は,意図的に繰り返し発熱させることができるものであることを特徴とする,請求項11に記載の容器。」(特許請求の範囲請求項12)・「【請求項13】前記接合手段の発熱体 求項12】前記接合手段の発熱体は,意図的に繰り返し発熱させることができるものであることを特徴とする,請求項11に記載の容器。」(特許請求の範囲請求項12)・「【請求項13】前記接合手段の発熱体は,高周波誘導加熱することが可能な材料で形成されていることを特徴とする,請求項12に記載の容器。」(特許請求の範囲請求項13)・「【発明の属する技術分野】本発明は,印字装置のトナーやインク等の各種内容物を容器に詰めて市場に供給する方法に関する。」(段落【0001】)- 27 -・「高周波誘導加熱可能な材料としては,例えば,金属や磁性体を使用できる。中間層の発熱体・・・を,金属箔や金属蒸着膜等の金属層・・・により構成することにより,高周波誘導加熱可能とすることができる。金属層はアルミニウム,鉄又はステンレス等で形成できるが,特にアルミニウム,ステンレスは加工性,フレキシブル性がよく適当である。」(段落【0043】)・「上述したような材料,方法により,例えば,中間層の発熱体として厚さ6~100μm程度の金属層の両面にそれぞれ,50~2000μm程度の熱溶融性樹脂層を形成することにより,接合手段10のタイプに属する多層構造の熱接着性フィルムが得られる。」(段落【0050】)(イ) 上記記載によれば,乙1文献には,印字装置のトナーの容器等に用いる熱溶融性樹脂層を有する熱接着性フィルムに関し,その接合手段として高周波誘導加熱することが可能な材料で形成されている発熱体を使用し,その発熱体を金属箔や金属蒸着膜等の金属層で構成する技術的事項が記載されていることが認められる。 イ乙2文献(ア) 乙2文献(特開平1-182275号公報)には,次の記載がある。 ・「(1)マイクロ波により発熱可能な金属含有層から成る基材・・・を設けた・・ されていることが認められる。 イ乙2文献(ア) 乙2文献(特開平1-182275号公報)には,次の記載がある。 ・「(1)マイクロ波により発熱可能な金属含有層から成る基材・・・を設けた・・・再加熱可能な密封積層容器。」(特許請求の範囲)・「本発明における金属含有層とは,金属箔,金属蒸着膜乃至無電解メッキ膜・・などのようにマイクロ波を透過する金属含有層を意味する。 金属は・・薄い状態ではマイクロ波を透過する傾向があり,このマイクロ波が透過する際に生ずる渦電流によって発熱するため,上記形態の金属含有層がマイクロ波による発熱体となる。」(発明の詳細な説明,3頁右下欄2行~11行)- 28 -(イ) 上記記載によれば,乙2文献には,包装材料の技術分野に属する密封積層容器に関し,金属含有層として,金属箔,金属蒸着膜,無電解メッキ膜などの金属含有層を使用する技術的事項が記載されていることが認められる。 ウ乙3文献(ア) 乙3文献(高垣俊寿著「電子レンジ用発熱包材」(「食品の包装」Vol.18,№2〔1987年〕8頁以下)には,次の記載がある。 ・「2-1 発熱の原理一般に,マイクロ波による食品加熱は誘電加熱により行われるが,発熱包材は誘導加熱により発熱する。 導電体にマイクロ波を照射すると,導電体に渦電流を生ずる。この渦電流が導電体を流れるとき,導電体は抵抗となってジュール熱が発生し,導電体に接触した食品を表面から加熱することができる。」(8頁右欄下2行~9頁左欄7行)・「2-2 材質構成発熱包材の基本材質構成を図3に示す。導電層として金属蒸着を用いており,PETは蒸着時の基材であるとともに電子レンジ加熱時には食品接触層となる。紙は包装材料としての加工適性を付与している。 導電層としては適度な電気抵抗 3に示す。導電層として金属蒸着を用いており,PETは蒸着時の基材であるとともに電子レンジ加熱時には食品接触層となる。紙は包装材料としての加工適性を付与している。 導電層としては適度な電気抵抗率をもつ導電物質であればよく,金属蒸着にはこだわらない。しかしながら,安価に量産可能な物質として,現時点では金属蒸着が最適であると考えられる。」(9頁左欄9~最下行)(イ) 上記記載によれば,乙3文献には,発熱包材の場合に金属蒸着膜が最適であると考えられることが記載されていることが認められる。 エ甲5文献- 29 -(ア) 甲5文献(特開2001-278330号公報)には,次の記載がある。 ・「従来の紙包装容器製品に用いられている積層包装材料は,低密度ポリエチレン(LDPE)/印刷インキ層/紙コア層(繊維質キャリア層)/LDPE/アルミニウム箔(ガスバリア層としての)/LDPE/LDPE,LDPE/印刷インキ層/紙コア層/LDPE/LDPE,印刷インキ層/LDPE/紙コア層/LDPE/LDPE,また,LDPE/印刷インキ層/紙コア層/LDPE/アルミニウム箔/ポリエステル(PET)等が知られており,現在も実際に汎用されている。」(発明の詳細な説明,段落【0004】)・「紙または厚紙と上記の熱可塑性外側層だけから成っている積層包装材料では,しかしながら,機械的強度に欠き,容器外部からのガス,特に,酸素ガスに対する遮断性に劣る。液体食品が,例えば,柑橘類のフルーツジュースなどであり,常温・長期保存する場合,香料,風味などの保香性の他,酸素バリア性が必要となる。この液体食品は,カートンの器壁を通して酸素が貫通し,そのためにそれらの栄養学的価値を失なってしまう。カートンへの酸素の浸入を低減して,ビタミンCのような栄養素の劣化を最 酸素バリア性が必要となる。この液体食品は,カートンの器壁を通して酸素が貫通し,そのためにそれらの栄養学的価値を失なってしまう。カートンへの酸素の浸入を低減して,ビタミンCのような栄養素の劣化を最小にするため,ラミネート(積層体)材料にはガスバリア性層を追加することが通常である。」(段落【0007】)・「上述のように,中身製品の品質を維持するためには,中身製品の芳香,風味などが包装材料を透過して外部に飛散することを防止する,又はその芳香,風味などを,中身製品と接触する包装材料が吸収することを防止する,若しくは,包装材料から異臭物などが中身製品に染み出しその芳香,風味など阻害することを防止する保香性と,中身製品の品質を阻害する気体(酸素ガスなど)が包装容器の積層材料器壁- 30 -などを透過して中身製品を保護するガスバリア性が包装材料に必要になり,保香性及びガスバリア性を十分に具える包装材料が好ましい。」(段落【0008】)・「包装材料にガスバリア性を付与するガスバリア材としては,例えば,アルミニウム箔,EVOH(エチレンビニルアルコール),またはPVOH(ポリビニルアルコール),無機酸化物の蒸着層などの優れた酸素ガス遮断性を持つ材料が既知である。更に,近年の傾向からも,10~4℃程度の冷蔵条件において,品質保持期間を延長できることが望ましい。すなわち,7℃~4℃で約10~12週若しくは更に長期貯蔵後ないし,約8℃で約6~8週貯蔵後において,包装製品(内容物)中にビタミC などの内容物栄養と品質が維持されることが望ましい。」(段落【0009】)・「しかしながら,従来のガスバリア材では,ある程度の欠点から包装容器に充填された製品内容物にダメージ・損害を被る。また,環境およびリサイクルの観点から,アルミニウム箔を,他のガス 【0009】)・「しかしながら,従来のガスバリア材では,ある程度の欠点から包装容器に充填された製品内容物にダメージ・損害を被る。また,環境およびリサイクルの観点から,アルミニウム箔を,他のガスバリア材に代替させることは適切であると考えられている。アルミニウム箔はバリア材料としては有効であるが,それを使用することは環境上の懸念を誘起するとしてアルミニウム箔にかわる実際的な代替物を開発する種々の試みがなされてきた。それは,すぐれた酸素,ガスおよび芳香バリア特性を備えつつ,しかも使用後に容易に廃棄可能なものである。」(段落【0010】)・「アルミニウム箔にかわる代替として紙容器用包装材料に無機酸化物の蒸着層を用いることが従来から提案されている(JPY 05-28190,JPT 08-500068,JPA 06-93120)。このような包装材料により,ガス(酸素)遮断性を有する紙容器を提供することができる。しかしながら,上記の保香性若しくは品- 31 -質保持性に十分ではなく,無機酸化物の蒸着層自体が機械的強度持たず,蒸着基材層の機械的強度で保持され,蒸着基材層をマルチファンクションを持つ材料としない限り,余分な層構造を取る必要があり,その意味で,包装材料の材料量が増大し環境負荷を増大させ又製造コストも増大する。」(段落【0011】)(イ) 上記記載によれば,甲5文献には,紙包装容器製品に用いられている積層包装材料に関し,管状ウェブがチルド食品用の包装容器としても用いられること,アルミ箔層には,紙やポリエチレンフィルムなどの樹脂材料のような気体透過性を有する材料からなる多層構造体に,ガスバリヤ性を付与する機能のあることが記載されていることが認められる。 オ甲6(特開2000-168770号公報。以下「甲6文献」という 材料のような気体透過性を有する材料からなる多層構造体に,ガスバリヤ性を付与する機能のあることが記載されていることが認められる。 オ甲6(特開2000-168770号公報。以下「甲6文献」という。)(ア) 甲6文献には,次の記載がある。 ・「最外熱可塑性材料層,紙基材層,接着性熱可塑性材料層,バリア層,最内熱可塑性材料層の各構成層を少なくとも含み,これらの各層が上記の順序で積層されてからなる紙容器用包材であって,該最内熱可塑性材料層が,少なくともシールされる部分において,少なくとも100℃~80℃の温度範囲内いずれの温度でもシールできる広域シール特性を有し,該バリア層と該該最内熱可塑性材料層とが,エチレン-酢酸ビニル共重合体及びアイオノマーから選ばれた接着性樹脂層により接合されていることを特徴とする紙容器用包材。」(特許請求の範囲請求項1)・「液体食品が,例えば,柑橘類のフルーツジュースなどである場合,香料,風味などの保香性の他,酸素バリア性が必要となる。この液体食品は,カートンの器壁を通して酸素が貫通し,そのためにそれらの栄養学的価値を失なってしまう。カートンへの酸素の浸入を低減して,ビタミンCのような栄養素の劣化を最小にするため,ラミネート- 32 -(積層体)材料にはアルミニウムフォイル(箔)層を追加することが通常である。アルミニウムフォイルはバリア材料としては有効であるが,それを使用することは最内層熱可塑性樹脂層との接着性が必ずとも良好ではない。」(発明の詳細な説明,段落【0007】)(イ) 上記記載によれば,甲6文献には,接着性樹脂層により接合されていることを特徴とする紙容器用包材に関し,アルミ箔層は,紙やポリエチレンフィルムなどの樹脂材料のような気体透過性を有する材料からなる多層構造体に,バリヤ性を付与 献には,接着性樹脂層により接合されていることを特徴とする紙容器用包材に関し,アルミ箔層は,紙やポリエチレンフィルムなどの樹脂材料のような気体透過性を有する材料からなる多層構造体に,バリヤ性を付与する機能を持っていることが記載されていると認められる。 (5) 取消事由に対する判断ア取消事由1(本願補正発明と引用発明1との相違点についての認定判断の誤り)について本願補正発明と引用発明1との相違点が,審決が認定したとおり,「導電性層が,本願補正発明は,『高周波』誘導加熱により熱を発する『蒸着フィルムの基材フィルムに設けられた金属性導電材料からな』る『金属蒸着層』であるのに対し,引用発明1は,高周波誘導加熱によるかは明らかでない誘導加熱により熱を発する『アルミ箔層』である点」(審決9頁11行~16行)であることは,当事者間に争いがない。 この点に関し,審決は,前記第3,1(4) アにおいて原告が引用するとおり,引用発明1のアルミ箔層と,引用例2記載の上記金属蒸着フィルムとは,共に,流動性食品等の包装容器用積層体の分野において,誘導加熱による熱を発生させる導電性材料であり,そこで発生させた熱により熱可塑性樹脂層を溶融させヒートシールさせるためのものである点で共通するから,引用発明1における「アルミ箔層」に代えて,ヒートシール性に優れたものとするように,引用例2に記載の「金属蒸着フィルム」を適用することは当業者が容易に想到し得たもの,との判断を示している。とこ- 33 -ろで,前記(2)で認定したとおり,引用発明1の「アルミ箔層」とは,流動性食品などの内容物を充填する包装容器を形成するために使用される管状ウェブである多層構造体の一層であり,この多層構造体は内側から順にポリエチレンフィルム層,接着剤層,アルミ箔層,紙層及び とは,流動性食品などの内容物を充填する包装容器を形成するために使用される管状ウェブである多層構造体の一層であり,この多層構造体は内側から順にポリエチレンフィルム層,接着剤層,アルミ箔層,紙層及びポリエチレンフィルム層を積層したものであることから明らかなとおり,紙を構成に含むものであって,本願補正発明と同じく,アセプチック包装やチルド包装の容器にも用いられるものである。 しかし,引用発明1には,ウェブのアルミ箔に渦電流を流すことで,誘導加熱による熱を発生させ,この熱でポリエチレンフィルム層を溶融させてウェブを横シールすることは記載されているものの,ウェブのアルミ箔層に代えて,他の材料を使用することに関する記載や示唆を見出すことはできない。 一方,審決が指摘する引用例2には,前記(3) のとおり,ポリプロピレン(A)からなるフィルム表面に,金属(B1)または金属酸化物(B2)の蒸着薄膜が形成されている金属蒸着ポリプロピレンフィルムが記載されており,この「金属蒸着ポリプロピレンフィルム」は,基材フィルムに金属の蒸着薄膜が形成された金属蒸着層であって,低温シール性及び耐ブロッキング性に優れている技術的事項が記載されてはいるものの,金属蒸着ポリプロピレンフィルムを高周波誘電加熱に用いることについては何ら記載されていない。 この点に関し,審決は,「この『金属蒸着フィルム』は,基材フィルムに金属の蒸着薄膜が形成された金属蒸着層といえ,これは,従来知られていた『導電性等を付与するため』『金属・・を蒸着したプラスチックフィルム』(摘示2b)を,『低温シール性・・に優れ』(摘示2d)るようにしたもの,すなわち低温でのヒートシール性に優れるようにしたものであり,導電材料であるこの『金属蒸着フィルム』(にうず電流を流すこと)- 34 )を,『低温シール性・・に優れ』(摘示2d)るようにしたもの,すなわち低温でのヒートシール性に優れるようにしたものであり,導電材料であるこの『金属蒸着フィルム』(にうず電流を流すこと)- 34 -によって発生する熱である誘導加熱による熱でシールするもので,低温でのヒートシール性に優れたものといえる。」(審決10頁12行~19行)と判断している。 しかし,引用例2には,「金属蒸着フィルム」に渦電流を流すことや,誘導加熱による熱でシールすることは記載されていない。そして,引用例2に記載されている「低温シール性」とは,段落【0031】及び【0032】の記載からみて,基材フィルムのポリプロピレンをメタロセン系オレフィン重合用触媒を用いて調製したことによって,低分子領域の成分含有率が少なくなり,低分子領域成分のブリードアウトが低減されたことに基づく性質である。 また,引用例2の【実施例】の記載によれば,メタロセン系オレフィン重合触媒を用いて調製した基材フィルムからの金属蒸着ポリプロピレンフィルム(実施例1,2)が,従来技術であるチーグラー系オレフィン重合用触媒を用いて調製したもの(比較例2)よりも,ヒートシール温度が低い場合の引張り試験結果が優れていることが示されていることから,引用例2に記載される「低温シール性」に優れるとは,ヒートシールする温度が従来よりも「低温」であっても「シール性」に優れることであるというべきであるから,審決の上記判断は誤りである。 以上のとおり,高周波誘電加熱に用いるために,引用発明1の「アルミ箔層」に代えて,引用例2に記載された「金属蒸着層」を適用することについては,何ら動機付けが存在しないというべきである。 したがって,引用発明1に引用例2を適用することによって,高周波誘導加熱するための えて,引用例2に記載された「金属蒸着層」を適用することについては,何ら動機付けが存在しないというべきである。 したがって,引用発明1に引用例2を適用することによって,高周波誘導加熱するための高周波磁束により渦電流を発生させ発熱体となる導電性層として,「アルミ箔層」に代えて,「基材フィルムに金属の蒸着薄膜が形成された金属蒸着層」を置換することを,当業者が容易に想到し得たとする審決の判断は誤りであるといわざるを得ない。 - 35 -イ被告の主張に対する補足的説明(ア) 被告は,高周波誘導加熱でとりわけヒートシールされる包装容器においては,容器のヒートシールされる領域に高周波誘導加熱により発熱する発熱層(導電性層)を付設し,該容器を該高周波電界の中に入れたとき,該発熱層に近接したヒートシール部分が溶融することで密封されること,及び該発熱体となる導電性層として金属蒸着層を用いることは,金属箔を用いることと同様,乙1文献の記載を待つまでもなく,本願前,技術常識であったし,広く包装容器,包装材料の技術分野全般でみても,高周波誘導加熱により発熱する導電性層として金属蒸着層を用いることは,乙2及び乙3文献の記載からも明らかなように,金属箔や無電解メッキ膜を用いることと同様,本願前,技術常識であったと主張する。 しかし,本願前に,例えどのような導電性層であっても必ず高周波誘導加熱により発熱する発熱層とすることができるといった技術常識が存在していたと認めるに足りる証拠はない。 また,被告が指摘する乙1文献ないし乙3文献には,高周波誘導加熱できる材料として金属箔や金属蒸着膜があることは記載されているものの,これらの材料を紙を積層した包装材料のシールに用いることは記載されていない。すなわち,乙1及び乙2文献では,実施例において金属 できる材料として金属箔や金属蒸着膜があることは記載されているものの,これらの材料を紙を積層した包装材料のシールに用いることは記載されていない。すなわち,乙1及び乙2文献では,実施例において金属箔が採用されており,金属箔よりも金属蒸着膜を用いることを積極的に動機付ける記載はないし,乙3文献には,発熱包材の場合に金属蒸着膜が最適であると考えられることが記載されているが,包装材料のシールに関しては記載されていない。 さらに,引用発明1の多層構造体は,上記したようにポリエチレンフィルム層,接着剤層,アルミ箔層,紙層及びポリエチレンフィルム層を積層したものであり,液体食品などを包装するためのものであるところ,引用発明1と同じく紙を含む積層材料から液体食品を包装する容器- 36 -を製造することに関する文献である甲5文献の段落【0004】,【0007】~【0011】,甲6文献の【請求項1】及び段落【0007】の記載からみて,アルミ箔層は,紙やポリエチレンフィルムなどの樹脂材料のような気体透過性を有する材料からなる多層構造体に,ガスバリア性を付与する機能を持っていると認められる。 したがって,当業者が引用発明1の多層構造体に接したとき,そこに記載されている「アルミ箔層」は,誘導加熱によって熱を発生してポリエチレンフィルム層を溶融させる機能だけではなく,多層構造体にガスバリア性を付与する機能をも果たしていると理解するものと認められる。また,液体食品の包装容器において,食品の変質を防ぐためにはガスバリア性が重要であることも,当業者が理解するところである。そうすると,引用発明1において,アルミ箔層を,ガスバリア性をアルミ箔層と同じレベルで有するとはいえない他の材料に変更することには,むしろ阻害事由があるというべきである。 るところである。そうすると,引用発明1において,アルミ箔層を,ガスバリア性をアルミ箔層と同じレベルで有するとはいえない他の材料に変更することには,むしろ阻害事由があるというべきである。 したがって,乙1文献ないし乙3文献の記載を考慮しても,引用例2に記載された導電性を有する金属蒸着膜が,引用発明1のアルミ箔層と置換すべき材料であると当業者が容易に想到するとは考えられないというべきである。 (イ) 前記(ア) のとおり,乙1文献ないし乙3文献の記載を考慮しても,引用例2に記載された導電性を有する金属蒸着膜が,引用発明1のアルミ箔層と置換すべき材料であると当業者が容易に想到するとは考えられないから,前記第3,3(1) ア及びイにおけるその他の被告の主張もその前提を欠き,採用することができない。 3 結論以上によれば,原告の主張する取消事由1は理由があり,その誤りは結論に影響を及ぼすから,その余の取消事由について判断するまでもなく,独立特許- 37 -要件がないとして本件補正を却下した審決は違法として取消しを免れない。 よって,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官中野哲弘 裁判官東海林保 裁判官矢口俊哉
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