主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,愛知県愛知郡東郷町の町民交流拠点施設「(仮称)夢創造の森」整備事業に係る施設建設請負代金を支出してはならない。 第2 事案の概要本件は,愛知県愛知郡東郷町(以下「町」という。)の町民である原告らが,町民交流拠点施設「(仮称)夢創造の森」整備事業(以下「本件事業」という。)に係る施設建設請負契約は,これに先行した設計競技が偽装されたものであり,また,その際に見積もられた概算事業費を大幅に上回る請負代金が定められていて,地方自治法(以下「法」という。)2条14項等に違反するなどと主張して,被告に対し,法242条の2第1項1号に基づき,請負代金の支出の差止めを求めた住民訴訟である。 1 前提となる事実(1) 当事者ア原告らは,いずれも町の住民である。 イ被告は,本件事業に係る施設建設請負代金の支出命令権者である。 (2) 町による福祉関連施設用地の取得と利用方法の検討町は,平成9年11月19日,町役場の東側に隣接する同町大字春木字西羽根穴2225番4,同2228番1,同番4の一団の印刷会社跡地約1.6ヘクタール(以下「本件土地」という。)を,福祉関連施設用地とする目的で取得した。 町は,平成11年5月12日,株式会社創建(以下「創建」という。)との間で,本件土地の利用方法の検討を委託する内容の公共用地土地利用調査委託契約を代金430万5000円(消費税を含む。以下,契約代金について同じ。)で締結した(乙2)。創建は,同契約に基づき,同年9月11日,同年10月29日,同年11月26日,平成12年1月7日,同月22日及び同年2月21日の6回にわたって,公募に応じた町民参加のワーキングを開催し,その結果を平 創建は,同契約に基づき,同年9月11日,同年10月29日,同年11月26日,平成12年1月7日,同月22日及び同年2月21日の6回にわたって,公募に応じた町民参加のワーキングを開催し,その結果を平成12年3月付け町作成の「東郷町公共用地土地利用検討報告書」として取りまとめた(乙3)。 町は,これを受けて,平成12年5月29日,関係各部の次・課長級の職員8名から成る公共用地土地利用検討委員会を設置し(乙4),同年6月から11月までの間に10回にわたる会合の検討結果を踏まえて,公共用地土地利用基本構想(案)をまとめた。同案は,その後,幹部会議を経た上,議会全員協議会で了承され,平成13年3月26日,導入機能・施設,施設規模,施設配置,概算事業費等の内容を含む公共用地土地利用基本構想(以下「本件基本構想」という。)として最終的に決定された(甲1,5,16,26,乙4,6,弁論の全趣旨)。 なお,その過程で,町は,平成12年6月12日,創建との間で,上記ワーキングより提示された土地利用案を基に,町役場各部にて具体的内容を検討して土地利用構想案を策定すべく,上記公共用地土地利用検討委員会の審議を踏まえて各案の長所・短所を整理し,必要な資料を同社から同委員会に提出してもらう内容の公共用地土地利用基本構想調査委託契約を代金351万7500円で締結し,平成13年1月26日,その契約期間を延長する内容の契約変更を行っている(乙5の1及び2)。 (3) 設計競技の実施と設計業務委託等町は,本件基本構想を基本理念及び基本方針として,本件土地上に町民交流拠点施設「(仮称)夢創造の森」(以下「本件事業施設」という。)を整備すべく本件事業を立ち上げることを決定し,本件基本構想が最終的に確定する前の平成13年3月21日には,同施設の設計者を選定するための設計 設「(仮称)夢創造の森」(以下「本件事業施設」という。)を整備すべく本件事業を立ち上げることを決定し,本件基本構想が最終的に確定する前の平成13年3月21日には,同施設の設計者を選定するための設計競技(以下「本件設計競技」という。)の実施要領を定めた(甲1)。 本件設計競技は,指名設計競技の方法によるものとされた(同要領4(1))ため,同年4月2日に指名業者等選定審査会が開かれ,指名業者(本件設計競技参加者)として,株式会社アール・アイ・エー,株式会社青島設計,創建,株式会社司設計事務所,株式会社東海設計,野々山建築設計株式会社の6社が選定された(甲3)。同6社は,同月4日から11日までの間に,相次いで,被告に対し,本件設計競技に参加する旨の指名設計競技参加承諾書を提出し(乙7の1ないし6),上記実施要領において提出期限とされた同月26日午後5時までに,それぞれ設計案を提出した。 町は,同月27日,本件設計競技について,被告の諮問により,競技参加者から提出のあった提案内容等を審査するための町民交流拠点施設「(仮称)夢創造の森」整備事業指名設計競技評価審査会を設置した(乙8)。同審査会は,同年5月1日午後1時30分から開催され(以下「本件審査会」という。),業者名を伏せた審査により,応募案番号2(株式会社司設計事務所の設計案)と同6(創建の設計案)の2案を優秀作品の候補として,被告に答申した(甲2,乙9)ところ,被告は,最終的に両案「を比較・検討し評価した結果,土地利用基本構想の基本方向とコンセプトを踏まえ,屋外施設の芝生広場やビオトープなど,施設全体を交流の場として機能的に配置している点において,より優れている応募案No.6を最優秀作品と選定」し(乙10),同月22日,同案の提案者である創建との間で,町民交流拠点施設「(仮称)夢 ,施設全体を交流の場として機能的に配置している点において,より優れている応募案No.6を最優秀作品と選定」し(乙10),同月22日,同案の提案者である創建との間で,町民交流拠点施設「(仮称)夢創造の森」整備工事の設計業務を委託する内容の(仮称)町民交流拠点施設整備工事設計業務委託契約を,代金5491万5000円で締結した(乙11の1及び2。以下「本件設計契約」といい,その委託に係る設計業務を「本件設計業務」と,その業務目的物を,種類に応じて「本件基本設計」及び「本件実施設計」と,両者を併せて「本件設計」という。また,本件設計に係る本件事業施設を「本件施設」という。)。 他方,町は,同年4月27日に町議会議員5名で構成される(仮称)夢創造の森建設委員会を,同年5月10日には関係課長らで構成される(仮称)夢創造の森整備事業庁内建設委員会を,それぞれ設置し(以下,両委員会を併せて「両建設委員会」という。),本件基本設計における主要な機能及び施設の配置,面積等についての意見の取りまとめ,本件実施設計における詳細の確認と意見の取りまとめ等の任に当たらせた(甲16,乙13,14の1ないし3)。 本件設計契約は,その後,同年11月16日と平成14年3月19日の2度,納期に係る契約変更があった(甲9)ものの,創建は,同年5月15日,被告に対し,検査結果が合格のときは業務目的物を引き渡す旨の完了届を提出し,翌16日ないし17日に行われた町の企画情報課長による検査の結果,同月20日に合格であることが確認されて,本件設計業務は完了した(乙12の1及び2)。そこで,町は,創建に対し,同年6月10日,本件設計契約の代金を支払った(弁論の全趣旨)。 (4) 本件施設建設工事の入札と請負工事等町は,本件施設の建設工事を,本体工事,空調換気・給排水衛生設備工 で,町は,創建に対し,同年6月10日,本件設計契約の代金を支払った(弁論の全趣旨)。 (4) 本件施設建設工事の入札と請負工事等町は,本件施設の建設工事を,本体工事,空調換気・給排水衛生設備工事,電気設備工事,造園工事に区分した上,平成14年7月15日,本体工事と空調換気・給排水衛生設備工事については制限付き一般競争入札を,電気設備工事については指名競争入札をそれぞれ実施した結果,本体工事は清水・大井特定建設工事共同企業体が19億7925万円で,空調換気・給排水衛生設備工事は菱和・春木特定建設工事共同企業体が6億0900万円で,電気設備工事は東光電気工事株式会社が2億5725万円でそれぞれ落札したため,町は,議会の承認を得た上,同月30日,これらの企業との間で,各入札に係る内容の工事請負契約を締結した(乙15ないし17,弁論の全趣旨)。また,造園工事についても,指名競争入札が実施された結果,清水建設株式会社が9765万円で落札したため,町は,議会の承認を得た上,同年12月4日,同社との間で,同内容の造園工事請負契約を締結した(乙19,弁論の全趣旨。以下,これら4件の工事に係る入札をまとめて「本件各工事入札」と,その後の工事請負契約をまとめて「本件各請負契約」と,その代金を「本件各請負代金」という。)。なお,本件各請負工事の完了時期は平成16年1月31日とされている。 また,町は,同年7月30日,創建との間で,これら各請負工事の監理を委託する内容の本件施設建設工事監理業務委託契約を,代金1681万0500円で締結した(乙18)。 (5) 原告らの住民監査請求と本訴の提訴原告らは,平成14年10月31日,法242条1項に基づき,町監査委員に対し,本件事業への費用の支出の差止めを求めて,住民監査請求をした(甲10。以下「本件第1 原告らの住民監査請求と本訴の提訴原告らは,平成14年10月31日,法242条1項に基づき,町監査委員に対し,本件事業への費用の支出の差止めを求めて,住民監査請求をした(甲10。以下「本件第1次監査請求」という。)が,町監査委員は,同年12月25日付け東監発第34号をもって,同請求の理由として主張された内容が財務会計上の行為についてのものではなく,又は住民監査請求の範囲を超えるものであるとして,これを却下した(甲11)ため,原告らは,平成15年1月17日,これが監査委員による監査職務の放棄であるなどとして,再度,町監査委員に対し,同趣旨の住民監査請求をした(甲12。以下「本件第2次監査請求」という。)ところ,町監査委員は,同年3月18日付け東監発第10号をもって,前回と同旨の理由でこれを却下した(甲13)。 原告らは,これらの監査結果を不服として,同年4月16日,法242条の2第1項1号に基づき,本訴を提起した。 2 本件の争点とこれに関する当事者の主張本件の争点は,本件各請負代金の支出(以下「本件支出」という。)に係る違法の有無であり,これに関する当事者の主張は以下のとおりである。 (原告らの主張)(1) 本件設計競技の偽装性と違法ア本件設計競技は,指名から応募の締切りまでわずか20日余りの期間で行われたもので,明確な審査基準の事前の公表もなかったことから,これに参加した他の5社に比べ,公共用地土地利用調査委託契約や公共用地土地利用基本構想調査委託契約を経て,コンセプトを固め,イメージパースまで作成していた創建の優位は明らかであるところ,同社が加わり,審査ルールを作った監督がゲームの途中でプレーヤーに変身したことにより,その公平性は失われている。 すなわち,設計競技においては,総事業費を提示し,これを含めた審査基準を設定 ところ,同社が加わり,審査ルールを作った監督がゲームの途中でプレーヤーに変身したことにより,その公平性は失われている。 すなわち,設計競技においては,総事業費を提示し,これを含めた審査基準を設定すべきであるにもかかわらず,これが意図的に伏せられた結果,審査基準として最も重要な予定事業費という物差しが外される結果となっている。また,平成13年度に町に対して「入札参加資格審査申請書」を提出した業者は196社に上り,そのうち実績,資力,技術,信用等の総合力で創建よりも優れている社は,全国的な業者20社近くを含めて約70社に達するにもかかわらず,建築で見るべき実績のない創建と極めて規模の小さい野々山建築設計株式会社が指名業者に選定されていることからすると,だれかが恣意的に競技参加者を選定したとしか考えられない。さらに,本件審査会は,町職員と町議会議員のみで構成され,外部の専門家は含まれていなかったところ,その席上,ヒアリングもプレゼンテーションも行われずに,内輪の者である委員10名が,創建案は「評価は高い。悪い点があればお聞きしたい。」とか,他社案は「建設費が安すぎないだろうか。」など,銘々が気付いた点を意見として述べたにすぎず,その結果,本件設計競技実施要領で定める留意事項に的確に対応していない創建案を最優秀作品として選定するなど,本件設計競技がコンペの体を成していないことは明らかである。 このことは,創建のホームページに,上記応募の締切日である平成13年4月26日付けで,「この度,当社が提出した計画案が採択されました。東郷町の町民交流拠点施設『(仮称)夢創造の森』です。」と掲載されていること,2度にわたって本件設計の納期が大幅に延長されたこと,後に本件施設建設費が大幅に増加したことなどからもうかがい知ることができる。 イそもそも,本 『(仮称)夢創造の森』です。」と掲載されていること,2度にわたって本件設計の納期が大幅に延長されたこと,後に本件施設建設費が大幅に増加したことなどからもうかがい知ることができる。 イそもそも,本件設計競技は,地方自治法施行令(以下「令」という。)167条に定める指名競争入札の要件を満たさず,一般競争入札を実施すべきであるのに,恣意的に6社を選んで指名競争入札としたものである。また,令167条の10の2第3項は,最低価格入札者以外の者を落札者とすることができる場合(総合評価一般競争入札)においては,落札者決定基準を定めそれを公告しなければならないと定めているにもかかわらず,本件設計競技実施要領には,審査の方法として「審査は,選定委員会により厳正に審査した後,最優秀案1点を選定する。」旨記されているだけで,本件審査会の記録からも,選定基準が存在しなかったことは明らかである。これらの点から,本件設計競技は,法234条2項に違反する。 ウさらに,本件設計競技において概算事業費が高額な案を選定したのは,法2条14項違反である。 エ被告は,本件事業施設が極めて非定型的な性格を有することを前提に,本件設計競技は随意契約の相手方を特定する前置手続にすぎず,そこに参加する業者の選定方法についても,法令等は何らの規制をしておらず,町の広範な裁量に委ねられている旨主張するが,本件設計競技においては,本件事業施設の詳細な設計条件が提示され,デザイン,構造はもとより,平面図,立面図,求積図求積表,概算事業費などが確定しており,同施設の性格が極めて非定型であるとは考えられない。本件設計競技実施要領が最優秀案応募者と設計業務委託契約を締結するとしている意味は,落札業者が,応募案に基づいて基本設計図及び実施設計図を引くという当然の作業を行うべきことが約束されてい られない。本件設計競技実施要領が最優秀案応募者と設計業務委託契約を締結するとしている意味は,落札業者が,応募案に基づいて基本設計図及び実施設計図を引くという当然の作業を行うべきことが約束されているにすぎないもので,設計内容のすべてが確定してしまった後で,デザインなどの創意工夫が求められる随意契約の必要性が残されているとは考えられないから,令167条,167条の2で認められている指名競争入札,随意契約のいずれの条件にも該当しない。本件設計契約の実際は,言い回しはどうあれ,総合評価指名競争入札方式により,町が創建案に落札を決定したものである。 (2) 本件基本設計時の概算事業費の過大性と本件各工事入札に係る違法ア設計競技以降の諸作業が応募案に拘束されることは設計業界の常識であって,(1)エ記載のように施設設計内容に大きな変更もないのに,概算事業費を大幅に増加させることは,落選した業者との公平性を保つためにも許されない。 すなわち,本件設計競技時に創建から提案された案の概算事業費は25億9900万円であったのに対して,本件基本設計後の平成14年2月に町が町議会議員全員協議会で説明した概算総事業費は34億8500万円であり,この金額はその後の入札で約31億1600万円となったものの,前二者間の8億8600万円(ただし,本件設計競技時に含まれていない設計監理費,什器備品,消費税を除くと約5億6000万円)の金額の開きは,各時点における設計のわずかな違いからは説明のできない水増しである。 イまた,地方自治体が地方債を発行して庁舎の建築を行おうとする場合,国が示している標準単価は,鉄筋コンクリート7階建て以上で1平方メートル当たり20万0500円であり,福祉施設の実績単価全国統計値も1坪当たり65万円前後であるのに対し,本件施設建設費は,本件 合,国が示している標準単価は,鉄筋コンクリート7階建て以上で1平方メートル当たり20万0500円であり,福祉施設の実績単価全国統計値も1坪当たり65万円前後であるのに対し,本件施設建設費は,本件設計競技時で1平方メートル当たり32万円であり,本件基本設計時には37万6000円に上昇しており,本件設計競技時に世間の相場より5割も高い設計案を選んだことさえ問題なのに,本件基本設計で8割高になることを許した町の公金管理者の金銭感覚が疑われる。被告は,本件基本設計時の単価が高額であることの理由として,多目的ホールの存在,浴室,運動浴室の水回りに経費がかかること,熱線吸収ガラスが高額であることなどを述べるが,これらは本件設計競技の応札時に織込み済みでなければならず,事業費が膨張した理由にはできない。 被告が面積算出のルールを変えて事業費の増加を言い繕うのは問題であるが,建築基準法上の床面積の増加分218.5平方メートルによる事業費の増加額も数千万円程度で収まるはずで,町当局と創建との間で取り交わされた設計修正協議内容も億のけたに達する金額ではなく,随所で,便乗水増しや,本件設計競技時の事業費の算定ミスの糊塗が見られるのである。被告及び町当局は,恣意的で広範な裁量権を認められているわけではなく,公正,公平を旨として定められた法その他の法令や予算,手続等に拘束されているところ,本件施設建設のための概算事業費が増額したことは,法2条14項及び234条の2第1項に違反する。 ウそして,被告は,違法,不当に導かれた本件施設建設費を,故意に工事予定価格として事前に公表し,本件各工事入札にかけたことで,改めて重大明白な瑕疵を作った(本件各工事入札における落札率は98.32パーセントであり,本件各請負代金は,実質的には本件設計により算出された価格で決まっ 事前に公表し,本件各工事入札にかけたことで,改めて重大明白な瑕疵を作った(本件各工事入札における落札率は98.32パーセントであり,本件各請負代金は,実質的には本件設計により算出された価格で決まった。)。 (3) 町財政への圧迫町は,本件施設建設のために,約8億円の基金を取り崩すほか,約26億円の借入れを予定しており,借入金残高は130億円に達する。この結果,本件施設が完成した後12年間にわたり,毎年,約2億円の元金,約5000万円の利息の支払に加え,2,3億円の維持管理費が必要となり,合計で4,5億円の歳出増加となる。他方,不況と少子高齢化によって町税等の歳入が伸び悩み,平成15年度は前年比約1億円の減収が見込まれている。なお,ここ数年,単年度の実質収支は2,3億円の赤字となっている。 そのため,本件事業計画の推進に疑問を持った一部の町会議員と住民らは,平成14年2月,「凍結させる会」を結成し,4100名の署名を得て議会に請願するなどの反対運動を行い,更にはこの計画の是非を最大の争点とする町長選挙が行われたが,きん差で推進派の現町長が当選したという経緯がある。 現在,人口急増地域に必要な保育園,小学校の建設が遅れているが,このように,投資の優先順序を誤り,町財政を破たんに陥れる本件事業の計画は,法2条14項に違反するものである。 (4) 本件各請負代金の支出に係る違法本件事業は,計画の当初から被告の指揮監督の下に推進されてきたものであり,被告は,その予算の執行に当たっても,自ら事業を取り消したり停止することができる立場にあるところ,地方自治体の長は,法令に違反してその事務を処理してはならないのである(法2条16項)から,自らが法令に違反してはならないことはもとより,地方自治体が法令に違反しないよう,その行為の適法性を確保しなけ 方自治体の長は,法令に違反してその事務を処理してはならないのである(法2条16項)から,自らが法令に違反してはならないことはもとより,地方自治体が法令に違反しないよう,その行為の適法性を確保しなければならない。また,地方自治体の執行機関は,当該自治体の事務を,自らの判断と責任において,誠実に管理し,執行する義務を負う(法138条の2)から,この誠実執行義務からも,地方自治体の長は,法令に違反する行為に対して公金を支出してはならない。 本件の場合,町側と創建とのなれ合いによって行われた本件設計競技,本件設計契約は違法,無効であり,これを引き継いだ本件各請負契約も違法,無効であるから,これから派生した工事費の支出の差止めを求めるのは当然のことである。また,建設工事費は,設計業務委託によって算出された価格で決まるところ,(2)ウで述べたとおり,被告は,違法な本件施設建設費を工事予定価格として事前に公表し,競争入札にかけているから,本件各請負契約にも重大明白な瑕疵を作出したというべきであって,被告がこれらを正さなかったのは誠実執行義務違反である。 (被告の主張)(1) 本件支出と先行行為との無関係本件支出の直接の原因行為は,本件各請負契約であるが,これらと本件設計契約(その前提手続である本件設計競技を含む。)とは,ともに本件事業の一環として行われる行政行為ではあるものの,前者は建築物の建設工事を行い,後者が建築物の設計を行うというそれぞれ完結した目的,給付内容を有する全く別個,独立の法律行為であって,いずれか一方が他方の原因ないし前提となるような関係ではない。確かに,本件設計契約に基づく給付として提出された設計図書(本件設計)の内容が本件各請負契約に基づく工事内容となり,また,後者の競争入札においても,本件設計に記載された工事費見積額を 関係ではない。確かに,本件設計契約に基づく給付として提出された設計図書(本件設計)の内容が本件各請負契約に基づく工事内容となり,また,後者の競争入札においても,本件設計に記載された工事費見積額を基に工事予定価格が定められているが,それは,本件設計が本件事業の設計図書に採用され,これにより具体化された本件施設の建設を目的として本件各請負契約が締結されたからにすぎず,本件各請負契約と本件設計契約とは,行政計画である本件事業を介して,いわば間接的な関係を有するにすぎないのであって,本件設計契約自体が,本件各請負契約の原因となっているわけではない。本件においては,それ自体財務会計行為である本件設計契約を住民訴訟の対象とすることができ,それにより住民訴訟の趣旨は満たされるところ,全く別個の財務会計行為である本件支出に同契約の違法が承継することを認め,これを訴訟の対象とすることを許すのは,住民訴訟が地方公共団体の財務会計の公正を担保するため客観訴訟であることに照らし,余りに要件を緩め,ひいては濫訴を誘発することとなる。 仮に本件設計契約が本件支出の原因行為であるとして,違法の承継が問題となるとしても,原因行為の違法性が後行行為たる財務会計上の行為に承継されるのは,その原因行為が不存在又は重大かつ明白な瑕疵があるような場合に限定されると解すべきところ,原告らの主張する違法事由がこれに当たらないことは明白である。 さらに,本件請求は,本件支出の差止めを求めるものであるところ,町は,本件各請負契約の相手方である各請負業者に対して,これら契約に基づく債務を履行すべき義務を負っているのであるから,これら契約が私法上無効とはいえない場合には,その債務の履行として行われる支出行為自体は違法ということはできないと解すべきところ,本件設計競技及び本件設計契約 行すべき義務を負っているのであるから,これら契約が私法上無効とはいえない場合には,その債務の履行として行われる支出行為自体は違法ということはできないと解すべきところ,本件設計競技及び本件設計契約において,本件各請負契約を私法上無効ならしめるような重大かつ明白な瑕疵が存するものでないことも明らかである。 よって,本件において,原因行為の違法が承継することによって,本件支出が違法性を帯びる余地は全くない。 (2) 本件設計競技及び本件設計契約の適法性本件設計契約は,指名競争入札ではなく,指名設計競技(コンペ)による審査を経た上で随意契約の方法で締結されており,本件設計競技は,随意契約の相手方を特定する前置手続にすぎないから,本件設計競技の方法いかんが直ちに法234条2項の問題となるとは解されない。 そして,令167条の2第1項2号によれば,「その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」は随意契約によることができるとされているところ,本件事業施設の性格は極めて非定型的で,町がその設計を委託する時点では,本件基本構想によって施設の用途,規模,敷地状況等の設計条件の概略が決定していたのみであり,設計者としては,この設計条件を基に,創意工夫をもって施設の空間構成を具体化する必要があり,町としても,単に設計料の多寡により設計者を選定することは妥当ではなく,設計者の創造性,技術力,経験等を適正に審査の上,その設計業務の内容に最も適した設計者を選定することが必要で,かつ町の利益にかなうものと考えられた。したがって,被告が,以上の点を考慮するとともに,契約の公正及び価格の有利性を図ることにも配慮して,事前に複数の指名業者間での設計競技を行い,本件審査会による審査を経た上で,そこで提出された案の中から最優秀のものを選定し,当 考慮するとともに,契約の公正及び価格の有利性を図ることにも配慮して,事前に複数の指名業者間での設計競技を行い,本件審査会による審査を経た上で,そこで提出された案の中から最優秀のものを選定し,当該最優秀案提出者と随意契約の方法により契約することが適当であると判断して,本件設計契約を締結したことは,何ら法234条2項に抵触するものではない。 また,設計競技における指名業者の選定方法は,法令等によって何らの規制もされていないから,指名業者等選定審査会が,過去における町及び他の地方公共団体の設計に関する実績,業者の資力,技術,信用等を総合的に勘案して創建を含む6社を選定したことに問題はないし,公共用地土地利用検討委員会においても,施設の具体的な配置やデザイン等について検討の対象とはなっていなかったから,本件基本構想作成に携わった創建が,本件設計競技において取り分け有利になったわけではなく,指名業者間の公正,公平は,本件設計競技の審査方法によっても十分担保されていた。 さらに,建築設計においては,単に整備費の多寡のみならず,デザインや構造,機能などの創造的な要素が極めて重要であり,設計競技に当たっても,これらの諸要素を総合的に考慮していく中で価格の有利性を多少犠牲にすることはやむを得ないものと解すべきところ,本件設計競技において,結果的に比較的高額の概算事業費を提示する2案を選出することになったからといって,それが,地方自治体の能率性・効率性を要求する法2条14項に抵触するものとは到底解されない。 なお,原告らが,本件設計競技における設計案の提出期限である平成13年4月26日付けで,創建のホームページに同社の案が採択された旨のトピックスが掲載されたことを指摘して本件設計競技の偽装性を主張するのは,誤解に基づくものであり,同社がこれをホー 期限である平成13年4月26日付けで,創建のホームページに同社の案が採択された旨のトピックスが掲載されたことを指摘して本件設計競技の偽装性を主張するのは,誤解に基づくものであり,同社がこれをホームページに掲載したのは,実際には同年6月下旬である。 (3) 概算事業費増加の正当性本件設計競技時の創建案における概算事業費25億9900万円と本件基本設計の際に計上された概算事業費34億8500万円の単純な差額である8億8600万円から,本件設計競技時の創建案に計上されていなかった設計監理費,什器備品,消費税を控除して計算した差額である約5億5500万円の増額のうち,約2億9580万円は,く体,外装及び内装の各建設工事費増額によるものである。すなわち,これらについて積算の基礎となる床面積が901.2平方メートル増加したこと(両建設委員会が取りまとめた町の意見を反映させて設計案を見直したことによる建築基準法上の床面積357.2平方メートルの増加と,施工面積との算定方法の違いに基づく544平方メートルの合計面積),うち特にく体建設工事の単価の増加(町の要請による,単価の高い浴室,運動浴室,便所の各二重ピット,地下ポンプ室,地下水槽等の地下施設の設置)に基づくものである。 その他の増額分約2億5920万円については,両建設委員会との協議を重ねて町の意向を反映していく過程で,本件設計競技時の案にはなかった研修室AV設備,子ども広場及び水景施設等の設備を新規に加えるとともに,計上済みの施設の内容についても詳細を詰め,再検討していった結果,全体として増額になったことによる。 そもそも設計競技において競われるべきものは,課題に対する基本的な考え方及び構想の中身であり,その細部等ではないから,工事費の見積書についても,その段階で詳細なものを望むのは無 ったことによる。 そもそも設計競技において競われるべきものは,課題に対する基本的な考え方及び構想の中身であり,その細部等ではないから,工事費の見積書についても,その段階で詳細なものを望むのは無理な要求であって,設計競技応募案の段階と基本設計の段階とでは,精度に対する要求水準が大きく異なる以上,それを反映して,それぞれの段階で異なった算出方法が採られるのは当然である。また,設計競技は設計「案」を評価し選出するものであり,究極的には発注者である地方公共団体の企画目的を達成し,その利益の増進を図るための手段にすぎないのであるから,発注者が,その企画目的を達成させる観点から,設計者の行う設計の内容について意見を述べ,設計者と協議を行い,設計者もこれを容れて合理的な範囲で設計内容について変更を加えることは何ら禁止されているわけではなく,設計の段階において,発注者の要請を反映して案に変更を加えることも当然である。 原告らは,本件設計競技における落札業者は,応募案に基づいて基本設計図及び実施設計図を引くという当然の作業を行うべきことを求められているにすぎない旨主張するが,本件設計競技の法的性質について理解を誤った上での独自の見解に基づく主張といわざるを得ない。 本件設計契約の履行の結果,概算事業費が増額したことは,これらの合理的な理由に基づくものであるから,これが,地方自治体の能率性・効率性を要求する法2条14項,及び地方公共団体に契約の適正な履行の確保を要求する法234条の2第1項に抵触するものではないことは明らかである。 また,本件基本設計時の施工単価が本件設計競技応募案のそれと比べて大きく変動している事実はないし,福祉施設の実績単価と比較して若干高額であるのは,本件施設が福祉施設と生涯学習施設の併用施設で300人規模の多目的ホールを備 施工単価が本件設計競技応募案のそれと比べて大きく変動している事実はないし,福祉施設の実績単価と比較して若干高額であるのは,本件施設が福祉施設と生涯学習施設の併用施設で300人規模の多目的ホールを備えていること,一般に単価を押し上げる浴室の数が多く,水回りが複雑な運動浴室を備えていること,建築資材として比較的高額な熱線吸収ガラスや木目天井等を採用していることなどが主たる理由で,不合理なものではない。そもそも公共施設の設置は,地方公共団体の長の事務に属し,その職務の遂行に当たっては広範な裁量が認められるところ,本件においても,被告は,本件施設の規模,導入機能,設備,建築資材の選択等の判断に広範な裁量を有するものであり,結果的に施工単価が比較的高額に傾いたことの一事をもって,前記判断が裁量を逸脱したとのそしりを受けるいわれはないことは明白である。 第3 当裁判所の判断 1 本件訴えの適法性について法242条の2第1項は,「……住民は,前条第1項の規定による請求(住民監査請求)をした場合において,」住民訴訟を提起することができる旨のいわゆる監査請求前置を定めているところ,前置されるべき住民監査請求は,それ自体適法なものでなければならないと解される。もっとも,監査委員がこれを不適法であるとして却下したとしても,客観的に住民が適法な住民監査請求をしているときは,当該住民は,適法な住民監査請求を経たものとして,直ちに住民訴訟を提起することができるのみならず,当該請求の対象とされた財務会計上の行為又は怠る事実と同一の財務会計上の行為又は怠る事実を対象として再度の住民監査請求をすることも許され,かつ,この場合の出訴期間は,同条2項1号に準じ,再度なされた住民監査請求の結果の通知を受けた日から30日以内と解するのが相当である(最高裁判所平成10年1 て再度の住民監査請求をすることも許され,かつ,この場合の出訴期間は,同条2項1号に準じ,再度なされた住民監査請求の結果の通知を受けた日から30日以内と解するのが相当である(最高裁判所平成10年12月18日第三小法廷判決・民集52巻9号2039頁参照)。 これを本件についてみるに,証拠(甲10,11)によれば,本件第1次監査請求は,原告らが,本件支出を含む本件事業に係る費用の支出の全体をもって,法242条所定の財務会計上の行為として特定した上,工事費総額について,本件設計競技において採用された案を約9億円も上回る34億8500万円に膨張することを容認したのは予算管理上著しく不当であり,本件施設運営費や利用料金さえ詰められていない現状は最少の費用で最大の効果を上げることを基本原則とした法2条に違反するなどと違法,不当事由を主張して住民監査請求に及んだもので,客観的には適法な住民監査請求であるにもかかわらず,町監査委員は,財務会計行為と違法,不当事由に関する主張とを混同した上,原告らの主張は住民監査請求の範囲を超えた不適法なものであるなどと判断して,これを却下したことが認められるから,同一の財務会計上の行為を対象として原告らが所定の期間内にした本件第2次監査請求も適法であり,これが却下された後,30日以内に提起された本件訴えもまた,適法というべきである。 2 本件における判断の枠組みについて原告らは,本件支出(より具体的には,本件各請負契約に基づく請負代金の支出を命ずる支出命令(法232条の4第1項。以下「本件支出命令」という。)を指すものと解される。)の差止めを求める根拠として,当該支出命令そのものに内在する違法を主張するものではなく,専ら本件各請負契約の目的たる建設工事の指針である本件設計の形成過程において行われた本件設計競技及 と解される。)の差止めを求める根拠として,当該支出命令そのものに内在する違法を主張するものではなく,専ら本件各請負契約の目的たる建設工事の指針である本件設計の形成過程において行われた本件設計競技及び本件設計契約並びに本件各工事入札の違法等を主張するので,まず,本件支出の適否に関する判断の枠組みを検討する。 この点,法242条の2の規定に基づく住民訴訟は,普通地方公共団体の執行機関又は職員による法242条1項所定の財務会計上の行為の違法な行為又は怠る事実の予防又は是正を裁判所に請求する権能を住民に与え,もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものであり,法242条の2第1項1号の規定に基づく当該執行機関又は職員に対する差止請求訴訟は,このような住民訴訟の1類型として,財務会計上の行為を行う権限を有する当該執行機関又は職員に対し,職務上の義務に違反する財務会計上の行為の差止めを求めるものにほかならないから,同規定に基づき,当該執行機関又は職員の財務会計上の行為の差止めを求めることができるのは,たとえこれに先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても,その原因行為を前提としてする当該執行機関又は職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られると解するのが相当である(最高裁判所平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁参照)。 上記のとおり,本件において,原告らが被告に対して差止めを求める財務会計上の行為は,本件各請負代金に係る本件支出命令であるところ,このように,基礎となる支出負担行為が契約である場合に,当該契約が私法上当然に無効といえないときは,普通地方公共団体は契約の相手方に対して当該契約に基づく債務を履行すべき義務を負うのであるから,仮に当該契約に無効をもたらさない 担行為が契約である場合に,当該契約が私法上当然に無効といえないときは,普通地方公共団体は契約の相手方に対して当該契約に基づく債務を履行すべき義務を負うのであるから,仮に当該契約に無効をもたらさない程度の違法が存在するとしても,同債務の履行上の手続として行われる支出命令自体は違法ということはできず,このような場合に住民が法242条の2第1項1号所定の住民訴訟の手段によって普通地方公共団体の執行機関又は職員に対し,その差止めを請求することは許されないものというべきである(最高裁判所昭和62年5月19日第三小法廷判決・民集41巻4号687頁参照)。そうすると,本件においては,原告らが主張する違法事由によって,本件支出命令に対応する支出負担行為としての本件各請負契約が私法上当然に無効を来すといえる場合に限って,本件支出命令自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものになると考えられる。 以下,この見地に立って,原告らの主張につき検討する。 3 本件設計契約締結までに係る違法の主張について原告らは,まず,本件設計競技が,被告の主張するように随意契約である本件設計契約の前置手続であることを否定した上で,一般競争入札とされるべきであるにもかかわらず,恣意的に選定された6社による指名競争入札として実施されたものであり,また最低価格入札者以外の者を落札者にする場合には,その決定基準を定め,公告すべきところ,これらが欠けている点が法234条2項に反し,さらに,そうした手続であるにもかかわらず,同競技において概算事業費の高額な案が選定された点が法2条14項に反するから,違法である旨主張する(前記原告らの主張(1))。 その趣旨は必ずしも明らかではないものの,本件事業施設の詳細な設計条件が本件設計競技実施要領により確定されている以上,その設計行為に創 反するから,違法である旨主張する(前記原告らの主張(1))。 その趣旨は必ずしも明らかではないものの,本件事業施設の詳細な設計条件が本件設計競技実施要領により確定されている以上,その設計行為に創意工夫は必要のないはずであるから,本件設計契約は一般競争入札の方法によって締結されるべきであったとの主張を前提とした上,本件設計競技を本件設計契約の相手方を確定する指名競争入札手続ととらえ,この手続によって創建を相手方として選定した本件設計契約は違法であると主張しているものと解されるところ,なるほど,一般論としては,法234条2項,令167条の要件を欠き,一般競争入札以外の方法が許されないのに,指名競争入札(あるいは被告の主張する随意契約)の方法によって締結された契約は違法であり,更に契約締結の方法に制限を加える法令の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められれば,これが私法上も無効となる場合もあり得ると解される(前掲最高裁判所昭和62年5月19日第三小法廷判決参照)。 しかしながら,本件において適否が問題とされているのは,先に指摘のとおり,本件各請負契約を支出負担行為とする本件各請負代金の支出命令(本件支出命令)であるところ,本件設計契約の内容は,委託を受けた創建が本件施設の設計を完成して設計図書を引き渡し,委託した町が委託代金を支払うものであるのに対し,本件各請負契約のそれは,請負人である建設会社等が建設等を完成して建築物等を引き渡し,注文者である町が請負代金を支払うものであって,法的には両者はそれぞれ目的,契約当事者,給付の内容を異にし,それぞれが完結した契約であるから,仮に本件設計契約に手続上の瑕疵が存したとしても,これに基づいて本件設計が完了し,その成果物である設計図書が町に引き渡されるなど,実体的に債務の本旨に従った履行がな れぞれが完結した契約であるから,仮に本件設計契約に手続上の瑕疵が存したとしても,これに基づいて本件設計が完了し,その成果物である設計図書が町に引き渡されるなど,実体的に債務の本旨に従った履行がなされたことが客観的に明らかである以上,上記設計図書で定められた本件施設の建設を目的とする本件請負契約が無効となる余地は存在しないというべきである。このことは,請負契約の相手方が設計契約の相手方と異なる場合,設計契約の無効事由を知る由もなく,それにもかかわらず請負契約まで無効とされたのでは請負契約の相手方の地位が害されることからも裏付けられる。 そうすると,原告らが,本件設計競技ないし本件設計契約の違法をもって本件支出命令の違法原因として主張するのは,それ自体失当というほかない。 4 本件設計契約後に係る違法の主張について(1) 次に,原告らは,本件施設建設のための概算事業費が,本件設計競技時に提案された案と本件基本設計とで,約5億6000万円の増加となった点を指摘した上,①国が示す標準単価や福祉施設の全国統計単価と比べて8割高となっており,②概算事業費の増加額には,床面積の計算方法の違いによるもの以外に,水増しによる増額又は本件設計競技時の算定ミスを糊塗する内容の増額が多く含まれているので,法2条14項及び234条の2第1項に違反し,更に③このように違法,不当に導かれた本件施設建設費を,故意に工事予定価格として事前に公表し,本件各工事入札にかけたことが重大明白な瑕疵である旨主張する(前記原告らの主張(2))。 (2) そこで①について判断するに,なるほど,証拠(甲18,19)によれば,平成15年1月ないし3月における福祉施設の坪当たり平均施工単価は64万6000円であること,地方債を発行して庁舎の建設を行う場合に,国が示す標準単価は,平成1 ほど,証拠(甲18,19)によれば,平成15年1月ないし3月における福祉施設の坪当たり平均施工単価は64万6000円であること,地方債を発行して庁舎の建設を行う場合に,国が示す標準単価は,平成14年度において,1平方メートル当たり20万500円(鉄筋コンクリート造7階建て以上の建物)であること,以上の事実が認められ,これに照らせば,本件基本設計における施工単価が割高感を与えるものであることは否定できない。しかしながら,庁舎と福祉施設とは,その設置目的や設備内容が大きく異なり,同列に論ずることは不適当であるし,同じ福祉施設といっても,その目的や対象者等によって大きく設備内容が異なり得るところ,証拠(乙23,24)によれば,本件施設は,福祉施設と生涯学習施設の両方の性格を有する併用施設であり,300人規模の多目的ホールを備えていること,浴室が多い上,運動浴室を備えていること,地上施設の1. 5倍の工事費を要する地下ポンプ室などを備えていること,建築資材に比較的高額な熱線吸収ガラスや木目天井などを採用していること,以上の事実が認められ,これによれば,本件基本設計における施工単価が平均施工単価を上回っているからといって,価格設定が合理性を欠くとはいえない(現に,甲18によれば,坪当たり施工単価106万円の福祉施設建設の実例が存在していることが認められる。)。 (3) 次に,②について判断するに,少なくとも床面積の計算方法の違いによる増額と,本件設計競技時の算定が適当でなかったことによる増額として主張する点については,本件基本設計における本件施設建設費用の算定自体に問題があるというよりも,本件設計競技時における本件施設建設費用の算定方法に問題があったと考えられるから,最終的な建設費(本件各請負代金)の算定を違法ならしめ,これを内容とする本件各請 の算定自体に問題があるというよりも,本件設計競技時における本件施設建設費用の算定方法に問題があったと考えられるから,最終的な建設費(本件各請負代金)の算定を違法ならしめ,これを内容とする本件各請負契約に無効をもたらすなどの結果を導く性質のものではあり得ないというべきである。 他方,水増しによる増額とは,通常の用語法からすると,存在しない設計についての建設費を積算したという趣旨に理解できるところ,仮に,このような事実があり,当該建設費がそのまま本件各請負契約の内容である本件各請負代金の一部に引き継がれているとすれば,設計の存在しない建築物についてその建設費を支払うものとして,当該契約部分につき無効と解する余地がある。 しかしながら,どの部分にいくらの水増しが存在するかについて,原告らは具体的に指摘するものではない上,前記前提となる事実(4)によれば,そもそも,本件各請負契約においては,原告らが過大であると指摘する本件基本設計時の概算事業費34億8500万円が,そのまま本件各請負代金額となったわけではなく,本件各工事入札を経て,最終的に本件各請負代金は,4つの工事の合計で29億4315万円と定められて,本件各請負契約が締結されたことが認められ,これから消費税を除けば28億0300万円であって,本件設計競技時の案における概算事業費である25億9900万円(乙26)との差額は2億円余にとどまるところ,この金額は,町民を代表する町議会議員又は町職員らから成る両建設委員会の意見を採り入れての設計変更等に基づく増額であるとして十分に説明できるものといえる(甲16,34,乙24参照。その意味では,本件設計競技時の案における概算事業費は,文字どおりの「概算」としては機能していたといえる。)から,原告らの上記主張は,それ自体失当というほかない。 ( る(甲16,34,乙24参照。その意味では,本件設計競技時の案における概算事業費は,文字どおりの「概算」としては機能していたといえる。)から,原告らの上記主張は,それ自体失当というほかない。 (4) 最後に,③について判断するに,上記のとおり,工事予定価格とされた概算での本件施設建設費が違法,不当に導かれたものであるとの前提を欠く上に,そもそも請負契約における予定価格の制限とは,これより高額な請負代金では契約を締結しないという効果を有するにすぎず,これがそのまま請負代金になるわけではないから,仮に予定価格の設定に合理性を欠く点があったとしても,直ちに請負契約自体の無効を来すものではないと解され,そうすると,いずれにせよ,原告らの上記主張は理由がない。 5 まとめ原告らによる本訴は,結局,厳しい町財政下にあって,本件設計競技において比較的高額な概算事業費を示していた創建案(甲4)を採用したこと,更には多額の費用負担を伴う本件事業を実施すること自体を違法視し,これを阻止すべく提起されたものと考えられるが,住民訴訟の判断の対象となるのは,飽くまで具体的な財務会計法規上の義務違反の有無であり,このようなものとして構成,認定することができない以上,予算の配分の問題は,基本的には住民の代表で構成される地方議会の了承を前提とした行政の裁量に属するというべきであり,当不当の問題を生ずることはあり得ても,司法審査の対象となるものではないといわざるを得ない。 6 結論よって,原告らの本訴請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法65条1項本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄 につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法65条1項本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄裁判官舟橋恭子裁判官平山馨
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