主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が,控訴人の平成9年分の所得税について,平成10年5月13日付でした更正及び過少申告加算税の賦課決定をいずれも取り消す。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人主文同旨 2 被控訴人控訴棄却第2 事案の概要 1 本件は,原判決別紙1記載の旧建物(旧建物)を取り壊して新たに同別紙記載の本件建物(本件建物)を建築した控訴人が,平成9年分の所得税について,旧建物の取壊しと本件建物の建築(合わせて「本件建築」という。)が租税特別措置法(平成10年法律第23号による改正前のもの。措置法)41条に定める「改築」に当たり,同条が定める住宅の取得等をした場合の所得税額の特別控除(本件特別控除)の適用があるものと考え,その適用を前提に納付すべき税額を計算して確定申告をしたところ,被控訴人から,更正処分(本件更正処分)及び過少申告加算税の賦課決定(本件賦課決定)を受けたため,その取消を求めた事案である。(本件更正処分と本件賦課決定を合わせて「本件各処分」という。)原判決は,本件建築は措置法41条に定める「改築」に当たらないとして,控訴人の請求を棄却したので,これに対して控訴人が不服を申し立てたものである。 2 以上のほかの事案の概要は,次のとおり付加するほか,原判決の該当欄記載のとおりであるから,これを引用する。 (控訴人の当審における主張)(1)原判決は,措置法41条に定める「改築」は,建築基準法における「改築」と同一の意義に解すべきであるとしたが,これは誤りである。 税法以外の法領域で用いられている用語ないし概念が税法にそのまま用いられている場合に,これを借用概念であるとして,同一の意義に解するのは,その税法以外の法領 べきであるとしたが,これは誤りである。 税法以外の法領域で用いられている用語ないし概念が税法にそのまま用いられている場合に,これを借用概念であるとして,同一の意義に解するのは,その税法以外の法領域で用いられている用語ないし概念が他の法領域においても普遍性を持つことが前提とされなければならない。 建築基準法において「改築」は,「建築物の全部若しくは一部を除去し,又はこれらの部分が災害によって滅失した後,引き続いてこれと用途,規模,構造の著しく異ならない建築物を造ることをいい,増築,大規模修繕に該当しないもの」と解釈されている。しかし,世間一般では,「改築」とは,「建物の全部又は一部を建て替えること」と解釈されていて,建築基準法の「改築」は,普遍性を持たない一種特別の概念である。また,建築基準法の「改築」は,借地借家法における「改築」の意義概念とも異なっている。 したがって,措置法41条に定める「改築」を,普遍性を持たない建築基準法の「改築」によって解釈するのは不当である。 (2) 措置法41条に定める「改築」を建築基準法における「改築」と同一の意義に解すると,建て替えられた建物が元の建物と用途,規模,構造が著しく異なるときは「新築」に該当することになる。そして,租税特別措置法施行令(平成11年政令120号による改正前のもの。措置法施行令)26条1項が「新築」の場合には本件特別控除の適用要件として床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下という条件を規定しているため,用途,規模,構造について制限していない「増築」の場合と比べ,本件特別控除の適用について著しく不公平な結果を招来する。 措置法41条に定める「改築」は,「建物の全部又は一部を建て替えること」と解すべきである。 (3) 本件特別控除の適用要件に,「用途,規模,構造が著 除の適用について著しく不公平な結果を招来する。 措置法41条に定める「改築」は,「建物の全部又は一部を建て替えること」と解すべきである。 (3) 本件特別控除の適用要件に,「用途,規模,構造が著しく異ならない」などという比較要件を導入することは,法に規定されていない要件を解釈として追加することであって,租税法律主義の観点からいって許されない。 (4) 租税特別措置法(平成13年法律第7号による改正後のもの。改正措置法)70条の3第5項は,所定の要件を満たす個人が,平成15年12月31日までに,所定の親族から住宅増改築資金の贈与を受けた場合に,所定の条件の下に,贈与税をいわゆる5分5乗方式により算定する旨を定めている。そして,同条6項は,増改築等とは,当該居住者が所有している家屋につき行う増築,改築その他政令で定める工事で,当該工事に要した費用の額が1000万円以上のもの(これに準ずる工事として政令で定める規模の工事を含む。),その他政令で定める要件を満たすものをいう,と規定している。これを受けて,改正措置法の施行令40条の5第9項は,上記の政令で定める規模の工事として,床面積が50平方メートル以上増加するものと規定している。 これは,改正措置法70条の3が,増改築等は,もとの住宅とその規模・内容において本質的な変動が生じるものであることを前提としていることを意味する。 また,措置法41条にいう「増改築」と改正措置法70条の3にいう「増改築」とは同じ意味に解釈されなければならない。 したがって,措置法41条の「改築」について,もとの住宅とその規模内容において本質的な変動がないものに限るとする解釈は誤りである。 (5) 仮に,措置法41条に定める「改築」を建築基準法における「改築」と同一の意義に解したとしても,本件建築は「改築」に該当 の規模内容において本質的な変動がないものに限るとする解釈は誤りである。 (5) 仮に,措置法41条に定める「改築」を建築基準法における「改築」と同一の意義に解したとしても,本件建築は「改築」に該当する。 旧建物と本件建物は,用途が同一であり,床面積もほぼ同じであり,いずれも鉄骨造である。したがって,旧建物と本件建物は用途,規模,構造において,著しく異なるものではない。 (被控訴人の当審における主張)(1) 建築基準法上の「改築」(同法2条13号)とは,「建築物の全部若しくは一部を除去し,またはこれらの部分が災害によって滅失した後,引き続いてこれと用途,規模,構造の著しく異ならない建築物を造ることをいい,増築,大規模修繕等に該当しないものをいう」と解されている。措置法41条1項,3項に規定する「改築」についても同義に解するのが相当である。 (2) 租税法の解釈にあたり,税法以外の法分野で用いられている法律用語が税法の規定中に用いられている場合には,法的安定性の見地から,両者は同一の意味内容を有するものと解すべきである。 また,租税に関する法規は私法的な法秩序に規制された経済活動を前提として,これとの調整の下にその独自の行政目的を達成することを基本的な建前として立法されているから,租税に関する法規が,一般私法において使用されているのと同一の用語を使用している場合には,特に租税に関する法規が明文をもって他の法規と異なる意義をもって使用されていることを明らかにしている場合若しくは租税法規の体系上,他の法規と異なる意義をもって使用されていることが明らかな場合,又は,特に他の法規と異なる意義をもって使用されていると解すべき実質的な理由がない限り,一般私法上使用されている概念と同一の意義を有する概念として使用されているものと解するのが相当である。 な場合,又は,特に他の法規と異なる意義をもって使用されていると解すべき実質的な理由がない限り,一般私法上使用されている概念と同一の意義を有する概念として使用されているものと解するのが相当である。 (3) 措置法施行令26条14項1号は,措置法41条3項に規定する「政令で定める工事」につき,「増築,改築,建築基準法第2条第14号に規定する大規模の修繕又は同条第15号に規定する大規模の模様替」と規定し,その条文自体に建築基準法を引用している。 また,本件特別控除の適用を受ける場合の添付書類を定めた租税特別措置法施行規則(平成11年大蔵省令35号による改正前のもの。措置法施行規則)18条の21第12項によれば,措置法施行令26条14項1号に掲げる工事については,建築基準法6条3項の規定による確認の通知書の写し若しくは同法7条3項の規定による検査済証の写し等を確定申告書に添付することが規定されている。 更に,住宅取得等特別控除の対象に一定の増改築等のための借入金等も加えられる旨の改正が行われた際の背景を解説した「国税庁・昭和63年改正税法のすべて」における用語の解説部分においても,措置法の「改築」の意義は建築基準法上のそれと一致している。 これらの点と措置法が「改築」等の用語について独自の定義規定を設けていないことを考え併せると,措置法41条に規定する「改築」とは建築基準法上のそれと同一に解するのが相当である。 (4) 「新築」と「増改築等」で本件特別控除の適用要件に違いがあるのであるから,「新築」であるか「増改築等」の一つである「改築」であるかは,明確に区別できなければならない。 建築基準法における「新築」及び「改築」の用語の意味は,規模・内容において著しく異ならない建築物を造るかどうかという基準によって明確に区別できる。 また,納 は,明確に区別できなければならない。 建築基準法における「新築」及び「改築」の用語の意味は,規模・内容において著しく異ならない建築物を造るかどうかという基準によって明確に区別できる。 また,納税者にとっても,課税庁にとっても,建築基準法上の確認通知書,検査済証等により,「新築」であるか「改築」であるかが容易に判断できるのである。 これに対して,「改築」を社会通念上の用法に従って解釈することになると,一義的に「改築」に該当するかどうかを解釈することは不可能である。そして,税務実務に大きな支障が生じ,かつ税負担の公平に反する結果をもたらすことになりかねない。 これは,「改築」の意味が,広辞苑(岩波書店)によれば「建物の全部または一部を建て替えること」とされているのに対し,日本語大辞典(講談社)によれば「面積を増やさないで,建物の一部を改造すること」と,新明解国語辞典(三省堂)では「手狭になった建物の一部を建て直すこと(広義では,全部にわたるものをも指す)」とそれぞれされており、更に日本語表記大辞典(三宝出版)では建築基準法の解釈と同様の記述となっていることからみても明らかである。 (5) 本件特別控除は,住宅政策の一環として,持家取得の促進と良質な住宅ストックの形成を図るとともに,住宅投資の活発化を通じた景気刺激策として,所得税額から一定額を控除する制度である。 昭和47年に本件特別控除が創設された際には,床面積が120平方メートル以下の「新築」のみが本件特別控除の適用の対象とされていた。また,当時の租税特別措置法は,建築基準法6条第3項の規定による通知書の写し等の添付がある場合にのみ適用すると規定していた(同法41条1項)。したがって,当時の「新築」の概念が建築基準法からの借用概念であったことは疑いがない。 昭和63年には「増改 定による通知書の写し等の添付がある場合にのみ適用すると規定していた(同法41条1項)。したがって,当時の「新築」の概念が建築基準法からの借用概念であったことは疑いがない。 昭和63年には「増改築等」も本件特別控除の適用の対象とされた。その際床面積要件の上限は設定されず,「新築」における床面積要件の上限も撤廃された。 平成3年には,「新築」及び「増改築等」の双方に120平方メートル以下に限るという床面積要件の上限が設定された。 平成5年には,「増改築等」についてのみ上記床面積要件が撤廃された。 このような経緯に照らすと,「増改築等」の概念も建築基準法からの借用概念であると解すべきであり,「改築」の場合は「新築」の場合と異なり,もとの住宅とその規模内容において本質的な変動がないことを前提としていると解すべきである。 (6)旧建物と本件建物との間には,原判決別紙1記載のとおりの差異があり,特に旧建物が2階建であるの対し,本件建物は3階建であるため,旧建物と本件建物とは構造において著しく異なっている。したがって,本件建築は「改築」に該当しないというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,控訴人の請求は理由があるものと判断する。その理由は,次のとおりである。 2 事実の経過等次の事実経過等は,当事者間に争いがない。 (1) 控訴人は,静岡市α11番に宅地(本件土地)を所有しており,同土地上に鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺2階建店舗兼居宅,床面積1階160.51平方メートル,2階149.75平方メートルの建物(旧建物)を所有し,居住していた。 控訴人は,本件土地の一部が道路拡張のために買収され,旧建物をそのまま使用できなくなったので,平成9年2月ころに旧建物を取り壊し,同年9月までに買収後の本件土地の残地に鉄骨造アルミニューム板葺3階 控訴人は,本件土地の一部が道路拡張のために買収され,旧建物をそのまま使用できなくなったので,平成9年2月ころに旧建物を取り壊し,同年9月までに買収後の本件土地の残地に鉄骨造アルミニューム板葺3階建店舗居宅,床面積1階110.56平方メートル,2階105.88平方メートル,3階99.76平方メートルの建物(本件建物)を建築し,これを居住の用に供した。 (2) 控訴人は、平成10年3月13日,旧建物の取壊しと本件建物の建築(本件建築)が措置法41条にいう「改築」に該当するので本件特別控除の適用があることを前提に納付すべき税額を計算して,平成9年分の所得税について確定申告をした。これに対し,被控訴人は,上記控除の適用がないものと判断して,同年5月13日付で本件各処分をした。 控訴人は,同年7月13日,本件各処分を不服として,被控訴人に対して異議申立をしたが,被控訴人は,同年10月13日,この異議申立を棄却する旨の決定をした。控訴人は,同年11月9日,国税不服審判所長に対して審査請求をしたが,同所長は平成12年1月27日付で前記審査請求を棄却する旨の裁決をした。 (3) 本件建築が措置法41条にいう「改築」に該当しないとすれば,本件特別控除の適用はなく,その場合には控訴人の総所得金額は178万7197円となり,納付すべき税額は5万6800円となる。 3 「改築」の意義について(1) 上記事実経過から明らかなように,本件の争点は,本件建築が措置法41条に定める「改築」に該当するか否かである。そして,その前提として,措置法41条に定める「改築」が建築基準法に定める「改築」と同義であるか否かが問題となる。 法令において用いられた用語がいかなる意味を有するかを判断するにあたっては,まず,法文自体から用語の意味が明確に解釈できるかどうかを検討するこ 準法に定める「改築」と同義であるか否かが問題となる。 法令において用いられた用語がいかなる意味を有するかを判断するにあたっては,まず,法文自体から用語の意味が明確に解釈できるかどうかを検討することが必要であり,法文から用語の意味を明確に解釈できない場合には,立法の目的及び経緯,法を適用した結果の公平性,相当性等の実質的な事情を検討のうえ,用語の意味を解釈するのが相当である。 (2) 措置法,措置法施行令及び措置法施行規則の法文上,措置法41条に定める「改築」の意義が明確であるか否かについて検討する。 被控訴人は,措置法施行令が,措置法41条に規定する「政令で定める工事」は「増築,改築,建築基準法第2条第14号に規定する大規模の修繕又は同条第15号に規定する大規模の模様替」である旨を規定し,その条文自体に建築基準法を引用していること及び措置法施行規則が,本件特別控除の適用を受ける場合の添付書類として,建築基準法6条3項の規定による確認の通知書の写し若しくは同法7条3項の規定による検査済証の写しを挙げていることからすれば,措置法41条の「改築」は,建築基準法の「改築」からの借用概念であり,これと同義に解すべきであると主張する。しかし,措置法施行令中の建築基準法の引用は「大規模の修繕」及び「大規模の模様替」についてのものであり,「改築」について同法を引用しているわけではない。したがって,被控訴人指摘の引用がされていることをもって,直ちに措置法41条の「改築」が建築基準法の「改築」と同義であると解釈することはできない。むしろ,措置法施行令が「大規模の修繕」及び「大規模の模様替」について建築基準法を引用しながら,「改築」について建築基準法を引用していないのは,「改築」については建築基準法と同義に解するものでないことを前提としているともいい得 の修繕」及び「大規模の模様替」について建築基準法を引用しながら,「改築」について建築基準法を引用していないのは,「改築」については建築基準法と同義に解するものでないことを前提としているともいい得るのである。また,本件特別控除の適用を受けるためには,納税者が床面積等において所定の条件を満たす建築をすることが必要なのである。したがって,措置法施行規則が本件特別控除の適用を受ける場合の添付書類として建築基準法上の確認通知書及び検査済証を挙げていることは,当該建築がこうした条件を満たしていることを確認するためであるとも考えられるのである。そうすると,これらの書類が添付書類とされていることをもって,措置法41条の「改築」が建築基準法の「改築」と同義であると断ずることもできないといわなければならない。 また,被控訴人は,税法以外の法分野で用いられている法律用語が税法の規定中に用いられている場合には,法的安定性の見地から,両者は同一の意味内容を有していると解すべきであり,租税に関する法規が,一般私法において使用されていると同一の用語を使用している場合には,通常,一般私法上使用されている概念と同一の意義を有する概念として使用されているものと解するのが相当であると主張する。しかし,「改築」という用語は,建築基準法にのみ使用されている用語ではなく,たとえば借地借家法だおいても使用されている用語である。したがって,被控訴人の主張を前提としても,措置法41条の「改築」が建築基準法の「改築」と同義であるという結論を導き出すことはできない。むしろ,被控訴人の主張するところを前提とすると,措置法41条の「改築」は,公法である建築基準法の「改築」ではなく,一般私法の一つである借地借家法の「改築」と同義に解すべきであるということになる。 以上によれば,措置法,措 ころを前提とすると,措置法41条の「改築」は,公法である建築基準法の「改築」ではなく,一般私法の一つである借地借家法の「改築」と同義に解すべきであるということになる。 以上によれば,措置法,措置法施行令及び措置法施行規則の法文上,措置法41条に定める「改築」の意義が明確であるとはいい難く,少なくとも,措置法41条の「改築」が建築基準法の「改築」と同義であることが法文上明確であるといえないことは明らかである。 (3) 措置法41条の「改築」を建築基準法の「改築」と同義に解すべき実質的な理由があるか否かについて検討する。 建築基準法上の「改築」は,「建築物の全部若しくは一部を除去し,またはこれらの部分が災害によって滅失した後,引き続いてこれと用途,規模,構造の著しく異ならない建築物を造ることをいい,増築,大規模修繕等に該当しないものをいう」と解されている。これは,通常の言葉の意味における「改築」と比較して,「改築」という言葉を限定された意味に解釈するものである。 建築基準法は,国民の生命,健康,財産の保護や公共の福祉の増進を目的とする法律であり(同法1条),その目的を達成するため,一般的に建築の際に建築確認を必要としている(同法6条1項)。そして,その例外として,小規模な改築については建築確認が必要ないものとしている(同条2項)。これは,そのような改築が,防火,安全,衛生等の面において,新たな危険性を生ぜしめるものではないからであると解される。小規模な改築であっても,用途,規模,構造等が異なる結果,それが新たな危険性を生ぜしめるものであれば,建物の安全性その他の点について調査確認するために建築確認が必要となる。建築基準法上の「改築」が,前記のように限定された意味に解釈されるのはそのためである。 それでは,このように限定された建築基 ,建物の安全性その他の点について調査確認するために建築確認が必要となる。建築基準法上の「改築」が,前記のように限定された意味に解釈されるのはそのためである。 それでは,このように限定された建築基準法の「改築」の概念を,措置法が借用し,用途,規模,構造が著しく異なるかどうかで「改築」かどうかを判断する実質的な理由があるであろうか。 まず,用途については,措置法は,当該建物の床面積の2分の1以上に相当する部分が居住の用に供されるものであることを要件としているだけで,他の要件は定めていない。これは,措置法が,建物の主たる用途が住宅であることだけを本件特別控除適用の要件とし,他の部分の用途については問題としていないことを意味する。 次に,規模については,措置法は,床面積の上限及び下限を規定しているだけで,従前の建物との関係については何ら規定していない。これは措置法が従前の建物と建て替え後の建物の床面積の違いを問題にしていないことを意味する。 また,構造についても,措置法は,従前の建物との関係については何らの規定も設けていない。優良な住宅ストックの確保という措置法の目的からすると,建て替え後の建物がより強固な構造である場合に,措置法上,新築であるとして,より不利益な扱いを受けることは合理的ではない。 このようにみてくると,用途,規模,構造が著しく異なるかどうかで,措置法の適用の有無を区別する実質的な理由あるいは合理的な理由はなく,建築基準法の「改築」の概念を借用する実質的な根拠はないといわなければならない。むしろ,構造について先に検討したところからすると,建築基準法の概念を借用することは,優良な住宅ストックの確保という措置法の本来の目的に反する結果をもたらすとさえいえるのである。 (4) 被控訴人は,本件特別控除は,その創設時においては「 らすると,建築基準法の概念を借用することは,優良な住宅ストックの確保という措置法の本来の目的に反する結果をもたらすとさえいえるのである。 (4) 被控訴人は,本件特別控除は,その創設時においては「新築」のみを適用の対象としており,その際「新築」が建築基準法からの借用概念であったから,後に適用の対象とされた「改築」も建築基準法からの借用概念であると主張する。そして,本件特別控除の創設時において対象とされた「新築」が建築基準法からの借用概念であった理由として,建築基準法上の通知書が本件特別控除適用のための添付書類とされていたことを指摘する。しかし,建築基準法上の通知書等が添付書類とされていることが措置法41条の用語が建築基準法上の用語と同義である理由とならないことは前記のとおりである。そうすると,本件特別控除創設時において「新築」が建築基準法からの借用概念であったとする根拠はないのであって,被控訴人の主張はその前提を欠くものである。 (5) 以上に検討してきたところからすると,措置法41条の「改築」が建築基準法の「改築」と同義であることが法文上明確であるとはいえず,また,建築基準法の「改築」の概念を措置法41条が借用する実質的な理由もないということができる。 ところで,税法中に用いられた用語が法文上明確に定義されておらず,他の特定の法律からの借用概念であるともいえない場合には,その用語は,特段の事情がない限り,言葉の通常の用法に従って解釈されるべきである。なぜなら,言葉の通常の用法に反する解釈は,納税者が税法の適用の有無を判断して,正確な税務申告をすることを困難にさせる。そして,さらには,納税者に誤った税務申告をさせることになり,その結果,過少申告加算税を課せられるなどの不利益を納税者に課すことになるからである。 言葉の通常の意味から をすることを困難にさせる。そして,さらには,納税者に誤った税務申告をさせることになり,その結果,過少申告加算税を課せられるなどの不利益を納税者に課すことになるからである。 言葉の通常の意味からすると「改築」とは,「既存の建物の全部または一部を取り壊して新たに建物を建てること」であり,「改築」と異なる概念としての「新築」とは,「新たに建物を建てることで「改築」を含まないもの」であるということができる。 この解釈が,持家取得の促進と良質な住宅ストックの形成を図るとともに,住宅投資の活発化を通じた景気刺激策として,所得税額から一定額を控除するという本件特別控除の趣旨・目的に反する結果をもたらすとは考え難い。 被控訴人は,「改築」を社会通念上の用法に従って解釈することになると,一義的に「改築」に該当するかどうかを解釈することが不可能になり,税務実務に大きな支障が生じ,かつ税負担の公平に反する結果をもたらすことになりかねないと主張する。確かに,既存の建物を取り壊した後,しばらく経ってから新しい建物を建築した場合に,それが「改築」であるのか「新築」であるのかの判断が困難になることは予想されるところである。そして,被控訴人のいう「改築」概念でもそのようなことが起こりうる。しかし,それは社会通念上相当な期間を定めて「改築」か「新築」かを区別し,統一的に運用すればよいことである。そして,他に「改築」及び「新築」の意味を上記のように解釈した場合に,被控訴人主張のような問題が生じるとは考えられない。 (6) 前記事実経過によれば,控訴人は,平成9年2月ころに本件土地上の旧建物を取り壊し,同年9月までに本件土地の一部買収後の残地に本件建物を建築したのである。そうすると,これが,「改築」すなわち「既存の建物の全部または一部を取り壊して新たに建物を建てたこ 件土地上の旧建物を取り壊し,同年9月までに本件土地の一部買収後の残地に本件建物を建築したのである。そうすると,これが,「改築」すなわち「既存の建物の全部または一部を取り壊して新たに建物を建てたこと」に該当することは明らかである。 4 結論以上によれば,本件建築が措置法41条の「改築」に該当せず,本件特別控除の適用がないことを前提とした本件各処分は,措置法41条の解釈を誤ったものであって,取消を免れない。 したがって,控訴人の本件請求は,理由があり,これを棄却した原判決は失当であるから,これを取り消して,控訴人の請求を認容すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第19民事部裁判長裁判官淺生重機裁判官西島幸夫裁判官渡邉左千夫
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