平成14(わ)1212 受託収賄被告事件

裁判年月日・裁判所
平成15年11月7日 千葉地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-6179.txt

判決文本文18,150 文字)

平成15年11月7日宣告平成14年(わ)第1212号受託収賄被告事件判決 主文 被告人を懲役2年に処する。 未決勾留日数中150日をその刑に算入する。 被告人から金1000万円を追徴する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,K市長であるとともに,鎌ヶ谷市,沼南町及び白井町(当時)が組織している特別地方公共団体沼南・白井・鎌ヶ谷環境衛生組合(以下「環境衛生組合」という。)の管理者として,同組合の事務を統括掌理し,環境衛生組合が発注する工事に関し,指名競争入札の指名業者の選定,入札予定価格の決定,請負契約の締結等の職務に従事していたもの,Aは,建築工事の設計,施工等を業とする株式会社Bの代表取締役であり,環境衛生組合発注の還元施設建設(建築)工事(以下「本件建設工事」という。)を株式会社Cに受注させて同社から本件建設工事を株式会社Bにおいて下請受注することを企図していたもの,D及びEの両名は,上記Aらから本件建設工事を株式会社Cが受注できるよう環境衛生組合の関係者への働きかけ等を依頼され,これを行っていたものであるが,被告人は,平成11年7月中旬ころから同年11月中旬ころまでの間,前後数回にわたり,千葉県K市初富928番地744所在のK市役所等において,上記E及びDから,本件建設工事の指名競争入札に関し,上記株式会社Cを指名業者に選定した上,同社が落札できるようにするなどの有利かつ便宜な取り計らいをしてもらいたい旨の請託を受け,別紙一欄表記載のとおり,同12年1月13日から同年3月22日までの間,前後3回にわたり,いずれも上記K市役所において, るようにするなどの有利かつ便宜な取り計らいをしてもらいたい旨の請託を受け,別紙一欄表記載のとおり,同12年1月13日から同年3月22日までの間,前後3回にわたり,いずれも上記K市役所において,上記A,D及びEから,上記請託に関する謝礼の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら,現金合計1000万円の供与を受け,もって自己の職務に関し,請託を受けて賄賂を収受したものである。 (公訴棄却の申立てについて) 1 弁護人は,検察庁は,本件についての捜査情報を報道機関に漏洩し,これにより第1回公判期日前の段階で裁判所に予断を抱かせ,予断排除の原則を脱法しようとしたから,本件公訴提起は,刑訴法256条6項,ひいては憲法37条1項に違反し,棄却されるべきであると主張する。 2 しかしながら,確かに,本件を含む一連の贈収賄,競売入札妨害事件に関する捜査情報については,報道機関による大量の報道がなされてきているが,このことをもって裁判所に予断を抱かせる目的で検察庁によって漏洩された事実に基づくものであると断じることはできない上,そもそも捜査情報に関する報道と刑訴法256条6項が明示的に禁止する起訴状における証拠等の引用や添付とでは裁判所の心証形成に与える影響という観点からは大きな差異があるというべきであって,捜査機関が発表した情報に基づき,報道機関が報道をしたからといって,これをもって直ちに予断排除の原則に違反するということはできない。 したがって,弁護人の主張は理由がない。 (事実認定の補足説明) 1 弁護人は,被告人は,判示のような請託を承諾したことも賄賂として現金合計1000万円を受領したこともないから,無罪であると主張し,被告人も公判廷においてこれに沿う供述をするので,判示のとおり認定した理由を補足し 判示のような請託を承諾したことも賄賂として現金合計1000万円を受領したこともないから,無罪であると主張し,被告人も公判廷においてこれに沿う供述をするので,判示のとおり認定した理由を補足して説明する。 2 前提となる事実関係各証拠を総合すると,以下の事実を認定することができる。 (1) 環境衛生組合は,ごみ処理施設及びし尿処理施設に対応する周辺地域整備事業の一環として,千葉県鎌ヶ谷市軽井沢地区に還元施設を建設することとし,同施設に関する発注関係事項を審議する機関である還元施設建設委員会(以下「建設委員会」という。)等の機関を発足させ,同委員会は平成11年1月から活動を開始し,平成11年度当時,被告人はK市長であるとともに環境衛生組合の管理者を兼務しており,また,Fは同市市長公室長であるとともに建設委員会委員を兼務していた。 (2) 株式会社B代表取締役Aは,同年5月ころ,本件建設工事の情報を得,これを受注しようと考えたが,工事規模からみて,その受注については指名競争入札が行われ,その指名業者にはいわゆる大手ゼネコンが選定されることが予想されたことから,大手ゼネコンに本件建設工事を受注して貰い,それを下請受注することにより,実質的にはBが本件建設工事を施工することを目論んだ。そこで,Aは,当時G参議院議員の公設秘書を務めていたDに環境衛生組合の関係者への働きかけ等を依頼するとともに,その謝礼の支払を約束した。また,Aは,本件建設工事を受注して貰うゼネコンを以前から取引のあった株式会社Cにすることとし,同社H支店副支店長Iに協力方を依頼した。 (3) Dは,Aからの依頼を実現するため,被告人と親しい関係にあり,かつG議員の私設秘書的な役割を果たしていたEに口利きを依頼 にすることとし,同社H支店副支店長Iに協力方を依頼した。 (3) Dは,Aからの依頼を実現するため,被告人と親しい関係にあり,かつG議員の私設秘書的な役割を果たしていたEに口利きを依頼し,Eはこれを了承した。 (4) D及びEは,同年11月19日,指名業者選定に関して被告人らの協力を確実にするため,J市内の料理屋「o」に被告人及びFを招待し,酒食等を提供するなどした。 (5) 同月20日,D,A,Iらは,Cが指名業者に選定されるとともに本件建設工事を確実に落札できるようにするため,Cの意向に沿う業者のみが本件建設工事の指名業者に指名選定されるよう工作することを相談し,その数日後,Iが,Cを含む指名の望ましい業者8社くらいと指名を避けて欲しい業者4社(L株式会社,株式会社M,株式会社N,O株式会社)の名前を記したメンバー表を作成してDに手渡し,DはこれをEを通じてFに手渡した。 (6) Fは,同月24日開催の建設委員会の会議直前に,同委員会委員でもあるK市役所総務部長のP,同じく同委員でもある同市役所市民部長のQの両名に対し,K市では,従前より,直近関連工事の施工業者を受注平等の観点から指名業者に選定しない取扱いとしていたことを理由に,この取扱いを第一次下請業者にまで拡張し(以下,これを「K方式」という。),こうした業者を構成市町による指名業者の推薦段階から除外する旨を提案し,同日開催の建設委員会の会議の席上,Qがその旨を提案し,疑問の声はあったものの,その案が採用された。この結果,環境衛生組合の第1期工事の第一次下請業者であった株式会社N及び第2期工事の第一次下請業者であった株式会社Mが指名業者の推薦から外されることになった。 (7) Fは,同月下旬ころ,Eから 果,環境衛生組合の第1期工事の第一次下請業者であった株式会社N及び第2期工事の第一次下請業者であった株式会社Mが指名業者の推薦から外されることになった。 (7) Fは,同月下旬ころ,Eから受け取った前記メンバー表を環境衛生組合事務局長のRに手渡し,同人を通じてそのメンバー表はK市役所所管課に渡り,同メンバー表記載の指名が望ましい業者7社にダミー業者2社を含めた業者リストが作成され,同年12月3日のK市の指名業者選定委員会の審議を経て,ダミー業者2社を除く7社が同市の指名推薦業者として環境衛生組合に提出された。 (8) 同月10日,環境衛生組合は,K市推薦の7社に沼南町及び白井町推薦の業者を加え,合計18社を本件建設工事の指名業者として選定し,また,正式にその請負設計金額を税抜きで8億円と決定した。 (9) Iは,同日,本件建設工事の指名通知を受けると,C社員を通じ,他の指名業者にCが本件建設工事を落札できるよう協力方を依頼してその了解を取り付け,同月22日,部下に指示して,他の指名業者に応札してもらう価格を決める作業を行わせ,同月24日から他の指名業者にその価格での応札を依頼させた。 (10) 同月24日,被告人は,本件建設工事の入札予定価格の決定を求められ,かねてより入札予定価格の基礎となる請負設計金額の8億円が相当切りつめた厳しいものであり,ほとんど分切りの余地がないと聞かされていたことから,8億円をわずかに下回る7億9852万3000円を入札予定価格と決定した。 (11) 同月27日,本件建設工事の指名競争入札が行われ,Cが7億7700万円で入札し,本件建設工事を落札した。 (12) なお,Dは,本件で問題とされている3000万円のほかに,Aから,同11年7月27日に工作資 件建設工事の指名競争入札が行われ,Cが7億7700万円で入札し,本件建設工事を落札した。 (12) なお,Dは,本件で問題とされている3000万円のほかに,Aから,同11年7月27日に工作資金等の名目で500万円,同年12月中旬ころにG議員の政治団体主催のパーティー券代名下に1400万円,さらに同12年5月18日ころにCが本件建設工事を落札したことなどの謝礼として1500万円をそれぞれ受領した。 3 E供述の信用性(1) 本件請託及び賄賂金の授受についての直接証拠としては,まずEの公判供述があるが,その供述内容は,大要,以下のとおりである。 Eは,被告人が昭和58年に初めてK市長選に立候補したときに選挙の手伝いをして以来,被告人と親しくつきあっており,平成11年初め以降はK市役所に被告人を訪ねることもしばしばであった。 同年6月初旬,DからKに風呂などの設備のあるものを作るので協力して欲しいなどと言われ,自分の役割はDに頼まれたことをK市役所側に伝えたりすることであり,違法なことを頼まれていると思ったが,DからはG議員の代理で会合等に出席を依頼されるなどし,月5万円の小遣いを貰っていた上,その話を受ければ,G議員の正式な秘書として雇ってもらえるのではないかなどと考え,Dの依頼を承諾した。そこで,同月16日,K市役所の市長室で被告人と会い,「G事務所のDさんのお願いなんですけれども,軽井沢にお風呂ができるのでやらせて貰いたいと言っているんですけれど,お願いできませんでしょうか。」などとDからの依頼を伝えると,被告人は「まだよく分からないよ,約束できないよ。」などと答えたが,日ごろ被告人は比較的はっきりものを言っていたので,明確に拒絶しなかった以上,Dから か。」などとDからの依頼を伝えると,被告人は「まだよく分からないよ,約束できないよ。」などと答えたが,日ごろ被告人は比較的はっきりものを言っていたので,明確に拒絶しなかった以上,Dからの依頼を承諾したものだと理解し,その1,2日後にDに「大丈夫じゃないでしょうか。」と言って被告人が了承した旨を伝えた。同年7月中旬ころ,Dから再度Kの工事をCでやりたいとして,その旨被告人に話して欲しいと言われ,その2,3日後にK市役所の市長室に被告人を訪ね,Dの依頼を伝えた。すると,被告人は「やることはやるけど。」などと言って考え込むようであったので,「G事務所のDさんからのお願いだから。」と言うと,被告人は「EちゃんとDさんの頼みだからな。」「おれも忙しいから,細かいことはやってらんないよ。」と答えたので,以後の詳細については事務方トップのFに依頼することとし,被告人の了解が得られたことをDに伝えた。同月下旬ころ,Dとともに,K市役所にFを訪ね,被告人に依頼したのと同趣旨の依頼をしたところ,Fは協力するなどと答えた。同年8月20日,Dとともに,K市役所に被告人を訪ね,Dが本件建設工事をCでやらせて欲しいなどと依頼すると,被告人が「ああ,分かった。」などと言って了承したことから,その足でFを訪ね,被告人の了承を得たので,よろしくなどとDが言うと,Fは「がんばってよ。」などと言った。 同12年1月に入って,Aからの謝礼が3000万円出るとDから聞き,これを被告人,F,自分の3人で等分しようと考え,Fに被告人とFに1000万円ずつ謝礼が出ると伝えた。被告人に渡す金については,Fとも相談の上,何回かに分けて渡すことにした。 同月中旬ころ,Dからお礼を持っていくとの連絡を しようと考え,Fに被告人とFに1000万円ずつ謝礼が出ると伝えた。被告人に渡す金については,Fとも相談の上,何回かに分けて渡すことにした。 同月中旬ころ,Dからお礼を持っていくとの連絡を受け,翌日K市役所の駐車場で待ち合わせることにした。その当日,被告人が市長室に在室していることを確認した後,駐車場で待っていると,Dが車で来たので,その車に乗った。Dが「1回目のお金を持ってきました。1000万円ありますから。」と言って手提げ付きの紙袋を渡してきたので,中に100万円の束が10個入っていることを確かめた上,「市長さんのところへお届けしますから。」と言って,自分の車に戻り,予め用意していたマチ付きの茶封筒に受け取った現金の中から500万円を入れて3つくらいに折り,これを左脇に抱えて同市役所の市長室に行き,同室で執務中の被告人に「これ,Dさんからお礼が届きましたのでお届けしますから。」と言って,その茶封筒を執務机の上に置いた。被告人は「あ,そうか。」と言って茶封筒を受取り,執務机の右側の引出しの中に入れた。残りの500万円のうち,40万円くらいを自分の財布に入れ,460万円くらいを自宅に保管した後,自分の銀行口座に入金して保管していた。 同年2月17日,それまでに3回に分けて自分の銀行口座から引き出した60万円と当日引き出した110万円に手元にあった30万円を加えて200万円とし,これを輪ゴムで留めて茶封筒に入れ,その口の部分を2,3回くらい折り曲げて左脇に抱え,K市役所の市長室に被告人を訪ね,執務中の被告人に「Dさんからお礼がまた届きましたから,お届けしました。」と言って,その茶封筒を執務机の上に置いたところ,被告人は「ああ,そうか。」と言って,その封筒を 室に被告人を訪ね,執務中の被告人に「Dさんからお礼がまた届きましたから,お届けしました。」と言って,その茶封筒を執務机の上に置いたところ,被告人は「ああ,そうか。」と言って,その封筒を受け取り,執務机右側の引出しの中に入れた。 その1週間くらい後,前回同様にDからの連絡を受けて,その翌日にK市役所の駐車場でDから現金1000万円を受け取り,これを同市役所内でFに手渡した。 同年3月22日,DからK市役所駐車場で現金1000万円を受け取り,その中の帯封の付いた100万円にそれ以前に銀行口座から引き出すなどして車のダッシュボードに入れていた輪ゴムで留めた100万円の束2束を加えた合計300万円を茶封筒に入れ,これを何回か折り曲げて左脇に抱え,同市役所の市長室で執務中の被告人に「Dさんから受け取りました,これが最後のお礼です。」と言ってその茶封筒を執務机に置くと,被告人は「ああ,そう。」と言っていたが,被告人がこれを引出しの中にしまったかどうかの確認をすることなく,すぐに退出した。残りの900万円は翌日銀行口座に入金した。 (2) 以上のE供述の信用性を検討するに,上記供述は極めて具体的かつ詳細であり,前記認定の事実経緯に照らし,特段,不自然・不合理な点は存しない上,後述のDやFの供述とも大枠で一致している。また,Eは,自己の体験した事実とその事実から自己が理解し,あるいは推測したことを明確に区別して供述しており,その供述態度は真摯なものと解される。加えて,Eは,被告人が初めてK市長選に立候補した昭和58年から選挙の応援をし,私的にも親しい間柄にあったのであるから,そのような関係にある被告人を虚偽の供述をしてまでして陥れなければならない理由は何ら存せず,当初被 K市長選に立候補した昭和58年から選挙の応援をし,私的にも親しい間柄にあったのであるから,そのような関係にある被告人を虚偽の供述をしてまでして陥れなければならない理由は何ら存せず,当初被告人がEからの依頼を明確に了承しなかったことなど,被告人に有利な供述もしているのであるから,Eがことさら被告人に不利益となるように虚偽の供述をしているとは解されない。 この点,弁護人は,Eは,私設秘書的な役割を果たしていたG事務所の本件への関与を否定するために,受け取ってもいない3000万円をDと口裏合わせの上,受け取ったとし,そのうち2000万円を被告人とFに渡し,あるいはEがDから3000万円を受け取ったのが事実であるとしても,その全額をEが自身で費消してしまったことを否定するために,被告人やFに1000万円ずつ渡した旨を供述していると主張する。しかし,Eが,Dから全く金銭を受け取っておらず,あるいは3000万円を受け取ったが,全額自分で費消してしまったにもかかわらず,自ら競売入札妨害罪及び贈賄罪の罪責を被ることを覚悟し,しかも,謂われのない罪に被告人やFを陥れることを厭わずに,あえて被告人やFに1000万円ずつを渡したなどと供述するとはにわかに考えがたい。加えて,Eは,本件犯行後,Fから,被告人やFが現金を受け取ったことを供述しないように口止めされ,また,被告人の友人であるSとの間で,EがDから受け取った3000万円の約半分をEが使い込み,残りはSに貸し渡したことにするなどの口裏合わせをしているのであり,自らが罪に陥れようとしている人間あるいはその側に立つ人間との間で,このような行為に出るというのはあまりに不合理である。 次に,弁護人は,K市役所企画部のT秘書課長(当時)が,当時Eは り,自らが罪に陥れようとしている人間あるいはその側に立つ人間との間で,このような行為に出るというのはあまりに不合理である。 次に,弁護人は,K市役所企画部のT秘書課長(当時)が,当時Eは頻繁に同市役所秘書課を訪れていたものの,いつも緑色様の鞄を持っており,茶封筒を丸めたものを小脇に抱えて被告人に面会に来たことは記憶していないと供述しており(第17回公判調書中の同人供述部分),これは被告人に現金を渡したとするE供述の信用性を低下させるものであるという。しかし,Eは,現金を渡したときはいずれもT課長に断って,被告人に面会したと供述する一方で,1度くらいは他の人に言ったこともあるかもしれないと述べており,また,TもEの来訪した際に常に自ら応対できていたわけではなく,他の者が応対した場合に必ずTに報告するようになっていたり,面会の記録を取っていたわけでもないというのであるから,Tが本件の現金授受の際に常に取り次ぎをしたとは認められない。また,Tは職務上,被告人を訪ねてきた者の持ち物などは明確に記憶しているはずだとも弁護人はいうが,被告人を訪ねることが稀な者であればともかく,被告人ともTとも面識のあるEの持ち物について,Tが常に注意して見るはずであるとはいえないし,Eが持っていたのは折り曲げた茶封筒であるというのであって,市長を訪ねてくる者として特に不審な持ち物を持っていたとはいえないのであるから,Tがこの点について特に記憶に残っていなくても不思議ではなく,Eが茶封筒を持って被告人を訪ねてきた記憶がないというT供述はE供述の信用性を減退させるものではない。 また,Eは,Dから現金を受け取った3回ともK市役所に向かって左側の駐車場に自動車を停め,3回目については自車の隣にDを誘導して自動車 というT供述はE供述の信用性を減退させるものではない。 また,Eは,Dから現金を受け取った3回ともK市役所に向かって左側の駐車場に自動車を停め,3回目については自車の隣にDを誘導して自動車を停めさせ,そこで金を受け取ったと供述しているところ,Dは3回目については,Dが同市役所に向かって右側の駐車場に,Eは左側の駐車場に自動車をそれぞれ停めたと供述しており,双方の供述に食い違いがみられるから,E供述の信用性は低いと弁護人は主張する。しかし,Dは,2回目か3回目かははっきりしないが,Eの自動車の脇に自ら行ったことがあると述べており,その限りにおいては両者の供述は一致しているのであり,また,自動車の駐車場所という些細な点については,EかDのいずれかの記憶が間違っている可能性もあるということを考え併せると,この点の供述の食い違いがE供述の信用性を低下させるものとはいえない。 さらに,Eは,被告人に2回目に渡した200万円は,数回に分けて銀行口座から金を下ろすなどして用意し,また,3回目に渡した300万円は,数回に渡り銀行口座から下ろした200万円にDから受け取った1000万円から100万円を加えて用意し,被告人に手渡したと供述しているが,2回目については当初から200万円を渡そうと思っていたというのであるから,200万円を1度に下ろせばよく,また,3回目については,Dから1000万円を受け取ったというのであるから,その中から帯封の付いた300万円を取り出して被告人に渡せばよいのであって,Eが供述する現金の用意の仕方は不自然であり,その前後における銀行口座からの引出状況にも照らすと,この点に関するE供述は,被告人にあたかも現金を供与したかのように説明するための数字合わせにすぎず,虚偽であると 用意の仕方は不自然であり,その前後における銀行口座からの引出状況にも照らすと,この点に関するE供述は,被告人にあたかも現金を供与したかのように説明するための数字合わせにすぎず,虚偽であると弁護人は主張する。しかし,Eは,被告人に渡した1回目の500万円やFに渡した1000万円についてはDから受け取った現金をそのまま渡したと供述しているのであり,また,後述するように,FはEから「Eが被告人に対して,500,300,200と分けて渡した。」旨聞いていることにも照らすと,Eが2回目と3回目についてあえて出金の裏付け証拠のあるようにするために事実と異なる供述をしたとはにわかに窺われない。 また,弁護人は,2回目と3回目に渡した現金には輪ゴムで留めてたものも含まれていたとEが供述していることについて,議員秘書を長年務めていたEが,市長である被告人に謝礼として渡す現金を輪ゴムで留めて渡すというのは不自然であるともいうが,Eは,被告人と個人的にも親しい間柄にあり,被告人はそのようなことにこだわらないと思っていたとも供述しているのであるから,この点が不自然不合理であって信用できないとはいえない。 してみると,E供述の信用性は極めて高いと認められる。 4 D供述の信用性(1) Dは,Eとともに被告人らに請託を行うなどしたというものであるが,その公判供述の大要は以下のとおりのものである。 すなわち,Dは,K市長である被告人に本件建設工事落札についての便宜を図ってもらうべく,被告人と比較的近い関係にあり,G事務所の私設秘書的な役割を果たしていたEに直接の交渉を依頼していたところ,平成11年6月上旬ころ,Eから何とかなりそうだという回答を得,その後,Cでお願いするということを被告人に頼む G事務所の私設秘書的な役割を果たしていたEに直接の交渉を依頼していたところ,平成11年6月上旬ころ,Eから何とかなりそうだという回答を得,その後,Cでお願いするということを被告人に頼むよう依頼していたEから,同年7月中旬ころ,Cで結構ですとの返事があった。Eから本件建設工事落札に関してFにも相談していると聞いていたので,まずはFに会ってお願いしようと考え,同月下旬ころ,EとともにK市役所にFを訪ね,本件建設工事をCが落札できるよう依頼したところ,Fは「分かりました。協力するよ。」と答え,更に被告人にも依頼しておいた方がよいと助言してくれた。Fの助言に従い,Eとともに,同年8月20日,K市役所の市長室に被告人を訪ね,本件建設工事をCが落札できるよう依頼したところ,被告人は「ああ,分かったよ。いいよ。」と答えたので,その足でFのもとへ行き,被告人の了承を得たことを伝えると,Fは「よかったね。」と言っていた。同年10月27日,DはK市の戦没者追悼式にG議員の代理として出席したが,その式の前にK市役所に行って被告人に会い,再度本件建設工事の件について依頼をしたところ,被告人は「ああ,いいよ,聞いてるよ。」と答えた。Cが本件建設工事の指名を受けた後の同年12月15日か16日ころ,Fに電話を架けて入札予定価格が分からないか尋ねたが,分からないということであった。さらに同月22日,Fに直接会って再度入札予定価格を尋ねようと思い,Fに電話を架けたところ,Fが会わなくても電話でいいと言ったものの,Fの口振りからFの周りに他の人がいることが窺えたので,自分の方から8億円と言うと,Fが「それでがんばんなよ。」と言ったので,その額をIに伝えた。 同12年1月12日ころ,B社 のの,Fの口振りからFの周りに他の人がいることが窺えたので,自分の方から8億円と言うと,Fが「それでがんばんなよ。」と言ったので,その額をIに伝えた。 同12年1月12日ころ,B社長室において,Cが本件建設工事を落札したことなどの謝礼としてAから手提げ付きの紙袋に入った現金1000万円(100万円の束が10個)を受け取り,Eに連絡して翌日にK市役所の駐車場でこれを手渡すことにした。その当日,同駐車場の自分の運転していった自動車の中で,Eに「とりあえず,これ例の1000万円ね。」と言って,Aから受け取っていた紙袋入りの現金をそのまま渡したところ,Eは「分かりました。市長の方に届けます。」と言ってこれを受け取った。同年2月21日ころ,B社長室において,Aから同様の趣旨で手提げ付きの紙袋に入った現金1000万円(100万円の束が10個)を受け取り,Eに連絡して,前と同じようにその翌日に同駐車場の自分の自動車の中で,Eにこれをそのまま渡した。このときはEは「Fさんの方に届けておきます。」と言ってこれを受け取った。 そして,同年3月21日ころ,B社長室において,Aから同様の趣旨で同じように現金1000万円を受け取り,前と同じように,その翌日,同駐車場でEにこれをそのまま渡した。 Eは「市長さんに渡してきます。」と言っていた。 (2) 上記D供述の信用性を検討するに,その供述内容は極めて具体的かつ詳細である上,前記認定事実の経緯に照らし,特段,不自然・不合理なところはみられず,概ね他の者との供述とも合致している。また,本件の発覚の端緒の一つは,DがAから受領した現金のうちの手許に残ったという2000万円を千葉地方検察庁に持参して自首したことによるが,自ら競売入札 他の者との供述とも合致している。また,本件の発覚の端緒の一つは,DがAから受領した現金のうちの手許に残ったという2000万円を千葉地方検察庁に持参して自首したことによるが,自ら競売入札妨害及び贈賄の罪責を負い,国会議員秘書の地位を失うことを十分に覚悟した上でのことであると認められるから,Dがあえて虚偽の供述をしてまでして被告人を罪に陥れるとは考えがたい。 弁護人は,Dの供述は,G議員又は同事務所の本件への関与を秘匿するために虚偽が含まれていると主張し,DがAらに対し,G議員の名前を出していたことなどから,G議員の関与が推認されるなどともいうが,Dは参議院議員の秘書たる資格を有していることに対する他者の信頼を利用して行ったとも考えられるのであるから,DがG議員の名前を出していたからといって真実同議員が関与していたとはいえないのであって,この点の主張は憶測の域を出ないものである。 してみると,上記のD供述は信用してよいというべきである。 5 F供述の信用性(1) Fの公判廷における供述は,大要,以下のとおりである。 平成11年夏ころ,K市役所市長公室長室で,Eとともに来たDから「今,市長の了解を取ってきたので,還元施設,Cでお願いします。」と言われ,「分かりました。」などと返答した。二人が帰った直後,市長室に行き,Dらが被告人のところに来たことを確認した上,「沼南と白井も関係してくるんで,難しいですよ。」と言うと,被告人が「Cを指名に入れて,よろしく。」と言うので,自分としてできる範囲のことはしようと思った。同年11月ころ,Eから「今度の仕事,上手くいったら,おやじに小遣い作ってやるからさ。」と聞いた。同年11月19日ころ,J市内の料理屋「o」で,被告 してできる範囲のことはしようと思った。同年11月ころ,Eから「今度の仕事,上手くいったら,おやじに小遣い作ってやるからさ。」と聞いた。同年11月19日ころ,J市内の料理屋「o」で,被告人とともにDやEから酒食の提供を受けたことがあったが,これ以前に自分がG事務所との懇親会に参加したことはなかった。その後,市長公室長室を訪ねてきたEから,Dから預かったというメンバー表を受け取った。それには,左側に×印がされ,その下に「L,M,N,O」と記載され,右側の一番上に「C」,その下に何社かの業者名が書かれていた。暫くしてから,これを「市長がCで約束しちゃったみたいだから,これ頼むよ。」と言って環境衛生組合事務局長のRに渡した。同月24日,環境衛生組合の建設委員会に出席する直前に,P総務部長とQ市民部長に対し,Cを本件建設工事の指名業者に入れることが被告人の意向であると伝えるとともに,建設委員会でもK方式が採用されるよう提案した。同年12月にK市議会が開かれている間に,被告人から「その後,うまくいっているかい。」と尋ねられ,本件建設工事の入札業者にCを指名する件について聞かれたと思い,「大丈夫です。」と答えた。同12年1月中旬ころ,Eから「おやじには(謝礼金を)一遍に渡すと全部使っちゃうから,分けて渡すからさ。」などと聞き,前年の11月ころにEが言っていた被告人に小遣いを作ってやるという話のことだと思い,「そうだね。」と答えた。 同12年3月ころに,Eから被告人に現金を渡したと聞いた。同14年4月に本件のことが週刊誌に掲載された後には,Eから「市長に1000万円渡したんだ。500,300,200と3回に分けて渡した。」と聞いたので,被告人に確かめたところ,被告人は 。同14年4月に本件のことが週刊誌に掲載された後には,Eから「市長に1000万円渡したんだ。500,300,200と3回に分けて渡した。」と聞いたので,被告人に確かめたところ,被告人は「覚えてないんだよな。」などと言っていた。また,同月25日午後7時ころ,EがF宅を訪れ,翌日に検察庁に呼ばれたので,本件建設工事に関し,被告人に1000万円を渡したという話をしなければならないが,どうしたらよいかと相談してきたため,市政への影響が心配であったので,自分が1000万円用意するから,被告人に金を渡したことは話さないようになどと言った。さらに,同月30日ころ,Eから「もう逃げ切れないから,おやじに(現金を)渡したことを話すので,おやじの了解を取ってくれ。」と言われ,その旨を被告人に伝えると,被告人はやはり「おれは覚えてないんだよ。」と言っていた。同年5月1日にU市内の居酒屋「V」で被告人らと飲食した際に,被告人が隣に座っていた自分に「Sがかぶるよ。」と言っていた。 (2) 以上のF供述の信用性を検討するに,同供述は極めて具体的かつ詳細であり,前記認定事実に照らし,特段,不自然・不合理な点は存しないところ,Fは,証言当時,自らも本件に関連する加重収賄,競売入札妨害被告事件で被告人という立場にあり,自分に対する金銭の授受やK方式の提案理由について,事実を争っていたものであるので,その供述の一部の信用性を肯定するに当たっては慎重な検討が必要であるというべきであるが,Fは,K市長であった被告人に引き立てられ,K市役所の生え抜きの職員として初めて同市の助役にまでなり,職務上だけでなく,被告人の愛人への送金の手続をするなど私生活上も忠実に仕えてきたと認められるのであるから,こ 人に引き立てられ,K市役所の生え抜きの職員として初めて同市の助役にまでなり,職務上だけでなく,被告人の愛人への送金の手続をするなど私生活上も忠実に仕えてきたと認められるのであるから,このようなFが事実を曲げてまでして被告人に不利益な供述をするとは考えがたく,また,上記供述は概ね他の者の供述とも合致しているのであるから,Fの供述は,上記に摘記した限度では,これを信用できるというべきである。 6 被告人供述の信用性(1) これに対する被告人の公判供述の概要は以下のとおりである。 被告人は,G議員には,選挙のときなどに世話になっており,公私とも信頼関係を築いていたところ,平成11年の時期は覚えていないが,G事務所の私設秘書であると認識していたEが市長室に来て,同人から本件建設工事について使いたい業者があるからなどと言われたものの,今度の還元施設は3市町が共同でやる工事だから約束はできないという趣旨の返事をした。同年8月20日ころにDとEが市長室に来て,本件建設工事を「うちのほうでやらせていただきたい。」というようなことを言ってきたが,当時工事の発注方式も決まっていなかったので,「無理だよ。」と言って依頼を拒絶した。同年11月19日ころ,J市内の料理屋「o」でDやEと飲食をしたが,そのときはG事務所との懇親会だと思っていた。同年12月のK市定例市議会のころ,Fに「うまくいっているかい。」などと尋ねたことがあったが,それは,白井町(当時)議会において本件建設工事に関する予算が通過するかどうかについて心配だったので,そのことについて尋ねたのであって,Cが本件建設工事の指名業者に指名されたかどうかなどを尋ねたものではない。EからG事務所からとして現金200万円を受け かどうかについて心配だったので,そのことについて尋ねたのであって,Cが本件建設工事の指名業者に指名されたかどうかなどを尋ねたものではない。EからG事務所からとして現金200万円を受け取ったことはあるが,G議員からの小遣い的な金銭であると思っており,本件建設工事に関する謝礼等であるとは思っていなかった。同14年4月に本件がマスコミで報道されるようになってから,EとFとで話した際に,Eから「市長に金渡したよね。」「ちゃんと渡したじゃないか。じゃあ,忘れちゃってるのかな。」などと言われたので,「何言っているんだ。おまえ,言っていいことと悪いことがあるよ。」「持ってきてないだろう。」などと答えたが,そのときは,Eから受け取った200万円のことは念頭にはなかった。同月26日朝,Fから「Eが検察庁に呼ばれて自分のところに相談に来た。どうしたらよいか。U市でEが待っているので話をしてくれないか。」などと言われたが,自分が会う必要などないと考え,Sに電話をしてEの話を聞くよう頼んだ。 (2) 上記被告人供述の信用性を検討するに,前述のように信用することのできるE,D及びFの各供述と矛盾するものであり,とりわけ,被告人が供述するようにFに何らの指示をしていないとするならば,FがP総務部長らに建設委員会でK方式が採用されるよう持ちかけたり,環境衛生組合事務局長のRに前記のメンバー表を渡したことの説明がつかず,被告人からの指示があったからこそ,Fがこのような行動を取ったとみるのが自然である。また,被告人は,時期的にあいまいながらEから現金200万円を受領したことは認めつつ,それ以前にもG事務所から選挙の陣中見舞を受け取ったことがあったので,G事務所からの小遣いだと思ったなど た,被告人は,時期的にあいまいながらEから現金200万円を受領したことは認めつつ,それ以前にもG事務所から選挙の陣中見舞を受け取ったことがあったので,G事務所からの小遣いだと思ったなどと供述しているところ,被告人は捜査段階ではこのような供述を一切していない上,本件の金銭授受が問題となっている平成12年の1月から3月には,前年4月に市長選挙があったばかりであるから,選挙の陣中見舞ということは考えられないし,また,これまでそのように受け取った現金の額も30万円ないし50万円であるというのであるから,G事務所からの「小遣い」として現金200万円を受け取ったという供述は不自然である。また,被告人は,料理屋「o」での飲食について,それ以前にもDと飲食したことがあり,G事務所側との懇親会だと思っていたというが,被告人がDに誘われて六本木のクラブに行ったというのは,G議員のパーティーがあった帰りに誘われたというのであって,予め予約した上でのものではなく,しかも「o」にはG事務所とは関係のないFも招かれていたのであるから,「o」における飲食がG事務所側との単なる懇親会だと思ったというのも不自然である。さらに,真実被告人が本件建設工事に関連した金を受け取っていないというのであれば,被告人はその前にEに同様のことを話していたのであるから,被告人が知人のSにEの話を聞くよう頼む必要などなかったはずであって,この点も被告人の供述するところは不自然である。これに対し,被告人は,捜査段階において,当初は事実を争っていたものの,これを認める供述をしているところ,これらの供述調書は,検察官から事実を認めれば,早期の保釈,執行猶予付き判決などが認められるなどと利益誘導がなされた結果録取され は事実を争っていたものの,これを認める供述をしているところ,これらの供述調書は,検察官から事実を認めれば,早期の保釈,執行猶予付き判決などが認められるなどと利益誘導がなされた結果録取されたものであると主張するが,被告人は,その供述する利益誘導などがいつごろなされたものであるのか明確にしていない上,逮捕直後から弁護人と連日のように接見をし,事実と異なる内容の調書には署名をしてはならないなどの注意を受けていたというのに,利益誘導がなされたことなどを直ちに弁護人に訴えるなどしておらず,また,これらの供述調書にはDらの依頼に対して明確に了承していないことなど被告人が公判廷で主張するとおりの事実も録取されているのであるから,これらの供述調書が任意性を欠くものであるとは認められず,他の者の供述とも合致する内容のものであるから,その信用性は高いというべきである。 7 検討(1) 前記2で認定した事実に以上の証拠関係を総合すると,以下の事実を認定することができる。 ア被告人は,D及びEから本件建設工事をCが落札できるように便宜を図るように依頼されてこれを了承し,Fに対して本件建設工事の指名入札にCが指名業者となるようにするよう指示した。 イこれに従って,FはK市役所及び環境衛生組合建設委員会で働きかけ,Cを指名業者とさせ,また同社が本件建設工事を落札するに際し,都合の悪い業者が指名されないようにするなどの工作を行った。 ウこの結果,本件の指名競争入札において,Cが本件建設工事を落札した。 エ被告人は,平成12年1月13日に500万円,同年2月17日に200万円,同年3月22日に300万円を,いずれもK市役所市長室でEから受領した。 (2) 上記事実を前提として検 た。 エ被告人は,平成12年1月13日に500万円,同年2月17日に200万円,同年3月22日に300万円を,いずれもK市役所市長室でEから受領した。 (2) 上記事実を前提として検討するに,被告人は本件建設工事に関連する以外にはEから1000万円もの大金を受領する理由はないのであるから,被告人が本件建設工事をCが落札できるように便宜を図ってもらいたい趣旨の請託を受け,その謝礼として前後3回にわたり合計1000万円の現金を受け取ったことが優に認められ,判示のとおりの事実を認定することができる。なお,被告人の捜査段階の供述によれば,DやEから請託を受けたものの,これを明示的に承諾していないようにもみえるが,前記認定に係るFの行動などにかんがみると,明示であったかどうかはともかく,被告人が,Dらから請託を受けて,これを承諾していたことは明らかである。 (量刑の理由)本件は,沼南・白井・鎌ヶ谷環境衛生組合の管理者であるとともにK市長であった被告人が,環境衛生組合発注の還元施設建設工事を指名競争入札において株式会社Cに落札させて,株式会社Bに下請受注させたいと考えたDらから,本件建設工事の指名競争入札に関し,Cを指名業者に選定した上,同社が落札できるようにするなどの有利かつ便宜な取り計らいをしてもらいたい旨の請託を受け,その謝礼として現金合計1000万円の供与を受けたという事案である。 公共工事の指名競争入札においては公平・公正が要請されるのはいうまでもないところ,被告人は,環境衛生組合の管理者,K市長として誰よりも環境衛生組合を構成する地域の利益を図るべき立場にあったのに,DらからCが本件工事を落札することができるようにとの請託を受け,部下であるFにDらの依頼の趣旨に沿う事務処理を ,K市長として誰よりも環境衛生組合を構成する地域の利益を図るべき立場にあったのに,DらからCが本件工事を落札することができるようにとの請託を受け,部下であるFにDらの依頼の趣旨に沿う事務処理をするよう指示し,その謝礼として現金合計1000万円を受け取ったというのであり,動機に酌量の余地が全くない上,その態様も悪質である。 公共工事は,税金を資金源とし,住民の福祉にかなうものであることが要請されることから,可能な限り安価で良質な施設が提供されるよう自由競争の原理に基づく競争入札制度が採用されているところ,被告人らの本件行為は,競争入札制度を形骸化させ,ひいては同制度に対する国民の信頼を失墜させたにとどまらず,被告人は市長というK市政のトップに立つ身でありながら,公僕としての責任を忘れ,賄賂を受け取って公務の廉潔性を害し,行政に対する国民の不信感を増大させたのであり,結果はまことに重大である。 景気の長期低迷に伴い,国及び地方公共団体の財政再建が強く要請されるとともに,公共工事の適正な運用が求められ,行政と特定業者との癒着構造,さらには政治の金権体質に対して国民の目がこれまで以上に厳しくなっている近時の状況にかんがみると,公共工事の適正を根幹から揺るがし,公務の廉潔性を害する本件犯行を行った被告人に対しては,一般予防の観点からも厳正に対処して同種事犯の再発防止を図る必要性が高い。 してみると,被告人の刑事責任は重大であるといわざるを得ず,他方で,被告人がこれまで約20年間にわたりK市長を務め,市政に一定の功績を果たしてきたと評価ができること,被告人には前科・前歴が全く存しないこと,K市長の地位を失い,一定の社会的制裁を受けたと認められることなど,被告人のために斟酌することのできる事情も存するものの,本件の重大性にかん ができること,被告人には前科・前歴が全く存しないこと,K市長の地位を失い,一定の社会的制裁を受けたと認められることなど,被告人のために斟酌することのできる事情も存するものの,本件の重大性にかんがみると,本件は刑の執行を猶予すべき事案であるとはいえず,主文のとおり実刑に処するのが相当であると判断する。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役3年6月,追徴金1000万円)平成15年11月7日千葉地方裁判所刑事第3部裁判長裁判官下山保男裁判官宮本孝文裁判官高杉昌希別紙一覧表番号犯行日(平成12年)金額 1月13日500万円 2月17日200万円 3月22日300万円合計1000万円

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る