令和1(ワ)15836 違法行為差止請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年1月28日 東京地方裁判所
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判決文本文15,184 文字)

- 1 -令和3年1月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和元年(ワ)第15836号違法行為差止請求事件(以下「第1事件」という。)令和元年(ワ)第28730号違法行為差止請求事件(以下「第2事件」という。)口頭弁論終結日令和2年10月29日判決 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,補助参加によって生じた費用を含め,原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告B1,被告B2及び被告B3は,被告ら補助参加人を代表して,日本原子力発電株式会社に対して別紙「行為目録」記載の各行為をしてはならない。 2 被告らは,被告ら補助参加人の取締役会において,日本原子力発電株式会社に対する別紙「行為目録」記載の各行為を行う旨の議題について賛成(取締役会議事録に異議をとどめず,取締役会決議に賛成したものと推定される場合を含む。) をしてはならない。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,被告ら補助参加人の株主である原告らが,日本原子力発電株式会社(以下「日本原子力発電㈱」という。)に対してその運営に係る東海第二発電所を原 子力発電所の新規制基準(以下単に「新規制基準」という。)に適合させるための工事費用に係る資金的協力その他の経済的支援(以下「本件経済的支援」という。)を行う意向を被告ら補助参加人が表明したことについて,日本原子力発電㈱に本件経済的支援をしたとしても支援に係る金額を回収することができず,本件経済的支援を行い,又は本件経済的支援に係る取締役会の議題に賛成すること が被告ら補助参加人の執行役又は取締役としての善管注意義務(会社法(平成1 - 2 -7年法律第86号)第330条及び第402条第3 本件経済的支援に係る取締役会の議題に賛成すること が被告ら補助参加人の執行役又は取締役としての善管注意義務(会社法(平成1 - 2 -7年法律第86号)第330条及び第402条第3項によりその規定に従うとされる民法(明治29年法律第89号)第644条)及び忠実義務(会社法第355条(同法第419条第2項において準用する場合を含む。))に違反する旨を主張して,被告ら補助参加人の代表執行役である被告B1,被告B2及び被告B3に対しては同法第422条第1項の規定に基づき被告ら補助参加人を代表して 別紙「行為目録」記載の各行為(以下「本件各行為」という。)をすることの差止めを求めるとともに,上記の各被告を含む被告ら補助参加人の取締役である被告らに対しては同法第360条第3項において読み替えて適用される同条第1項の規定に基づき取締役会において本件各行為を行う旨の議題に賛成することの差止めを求めた事案である(上記第1の1の請求のうち被告B1及び被告B2 に対するものが第1事件に係る請求であり,その余の被告B3に対する請求及び同2の被告らに対する請求が第2事件に係る請求である。)。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実のほか,括弧内において掲記する証拠又は弁論の全趣旨によって容易に認めることができる事実等)⑴ 当事者等 ア原告らは,いずれも,被告ら補助参加人(以下「補助参加人」という。)の株主であり,6か月前から引き続き1単元(100株)以上の株式を有する者である。(甲1の1から2の2まで及び丙4)イ被告らは,いずれも補助参加人の取締役であり,被告らのうち被告B1,被告B2及び被告B3(以下「被告代表執行役ら」という。)は,いずれも補 助参加人の代表執行役を兼務している。(甲3及 イ被告らは,いずれも補助参加人の取締役であり,被告らのうち被告B1,被告B2及び被告B3(以下「被告代表執行役ら」という。)は,いずれも補 助参加人の代表執行役を兼務している。(甲3及び丙4)被告B8は,補助参加人の完全子会社である東京電力エナジーパートナー株式会社(以下「東京電力エナジーパートナー㈱」という。)の代表取締役社長を兼務している。(丙2及び3)ウ補助参加人は,福島第一原子力発電所,福島第二原子力発電所,柏崎刈羽 原子力発電所等を設置,運営し,発電事業等を営むことを目的とする昭和2 - 3 -6年5月1日に成立した指名委員会等設置会社である。補助参加人の令和2年7月22日現在における資本金の額は,1兆4009億7572万2050円であり,補助参加人は,株式会社東京証券取引所の開設する株式市場である市場第一部に上場している。(甲3及び丙4並びに弁論の全趣旨)エ日本原子力発電㈱は,大手電力会社や電源開発株式会社の出資を受け,原 子力発電の事業化を進めるために昭和32年に設立された株式会社である。 日本原子力発電㈱は,原子力発電事業を専業とする電気事業者として,東海発電所,敦賀発電所及び東海第二発電所を運営しているが,これらの原子力発電所は,いずれも現在稼働していない。日本原子力発電㈱の平成30年3月末時点における主な株主は,補助参加人(持株比率28.23%),関 西電力株式会社(持株比率18.54%),中部電力株式会社(持株比率15.12%),北陸電力株式会社(持株比率13.05%)及び東北電力株式会社(持株比率6.12%。以下「東北電力㈱」という。)である。 (甲4の1から5まで及び弁論の全趣旨)⑵ 東海第二発電所に係る新規制基準適合性審査等 ア日本原子力発電 び東北電力株式会社(持株比率6.12%。以下「東北電力㈱」という。)である。 (甲4の1から5まで及び弁論の全趣旨)⑵ 東海第二発電所に係る新規制基準適合性審査等 ア日本原子力発電㈱は,平成29年11月14日に開催された原子力発電所の新規制基準適合性に係る原子力規制委員会の審査会合(第527回)において,東海第二発電所の発電用原子炉設置変更のために必要な経理的基礎(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号)第43条の3の8第1項及び同条第2項において準用される同 法第43条の3の6第1項第2号)に関し,原子力規制委員会から,新規制基準に適合させるための工事費用として日本原子力発電㈱が説明する資金1740億円を確保する見通しについての説明を求められた。(甲6,8の1及び8の2)イこれを受けて,日本原子力発電㈱は,平成30年3月14日に,補助参加 人及び東北電力㈱に対し,日本原子力発電㈱が東海第二発電所を新規制基準 - 4 -に対応させる工事を実施するための資金調達を行う際に,電気料金前払,債務保証等によって日本原子力発電㈱に資金支援する意向を有している旨を書面で表明してほしい旨を要請した。(甲8の2及び8の3)補助参加人は,同月30日に,日本原子力発電㈱に対し,東海第二発電所の「新規制基準適合性に係る工事の所要資金のうち,貴社の自己資金を超え る分について,東京電力エナジーパートナーの受電比率相当分を上限に,今後貴社から十分な説明及び情報の提示がなされることを前提として,工事計画認可取得後に資金支援を行う意向があることを表明いたします。」と書面で回答し,東北電力㈱も同様の書面による回答を行った。東京電力エナジーパートナー㈱と東北電力㈱の東海第二発電所 前提として,工事計画認可取得後に資金支援を行う意向があることを表明いたします。」と書面で回答し,東北電力㈱も同様の書面による回答を行った。東京電力エナジーパートナー㈱と東北電力㈱の東海第二発電所からの受電比率は,東京電力エ ナジーパートナー㈱が発生電力の全量の8割で,東北電力㈱が2割である。 (甲8の2,8の3及び9の2)ウ日本原子力発電㈱は,同年4月5日に開催された原子力発電所の新規制基準適合性に係る原子力規制委員会の審査会合(第562回)において,原子力規制委員会に対し,補助参加人及び東北電力㈱が作成した上記イの回答に 係る書面を提出し,補助参加人及び東北電力㈱から確実に本件経済的支援を受けることができる旨の見通しを述べた。(甲8の1から8の3まで及び10)原子力規制委員会は,同年9月26日に,東海第二発電所について,当該書面により,発電用原子炉設置変更に係る工事に要する資金につき,借入金 による調達の見込みがあることを確認したとして,発電用原子炉設置変更のために必要な経理的基礎があることを認め,当該発電用原子炉設置変更に係る許可をした。(甲61)エその後,日本原子力発電㈱は,東海第二発電所について原子力規制委員会から,同年10月18日に工事の計画の認可を受け,同年11月7日には, 運転期間を令和20年11月27日まで延長するための運転期間延長の認 - 5 -可及びこれに伴う原子炉施設保安規定変更の認可をそれぞれ受けた。また,日本原子力発電㈱は,令和5年10月17日までに東海第二発電所に特定重大事故等対処施設を設置することが義務付けられているところ,令和2年9月24日に,原子力規制委員会に対し,当該施設の設置に係る原子炉設置変更許可申請をした。(甲12及び62並びに弁論の全趣旨) 重大事故等対処施設を設置することが義務付けられているところ,令和2年9月24日に,原子力規制委員会に対し,当該施設の設置に係る原子炉設置変更許可申請をした。(甲12及び62並びに弁論の全趣旨) ⑶ 本件訴訟に係る各訴えの提起等原告らは,令和元年6月18日に第1事件に係る訴えを提起し,同年10月25日に第2事件に係る訴えを提起した。第2事件の訴状は,同年11月6日から同月9日までの間に,被告らに送達された。(当裁判所に顕著な事実)⑷ 補助参加人の取締役会による日本原子力発電㈱に対する経済的支援の決定 令和元年10月28日に開催された補助参加人の取締役会(以下「本件取締役会」という。)において,議題6として「日本原子力発電株式会社東海第二発電所再稼働に係る資金的協力の実施」が議題とされた上で,次のアからカまでの事項が付議された。当該取締役会には,被告らを含む全ての取締役が出席していたが,日本原子力発電㈱の取締役を兼務しているために特別利害関係人 として当該事項についての決議に参加しなかった被告B1を除く各取締役からの異議もなく,当該事項を可決する決議(以下「本件取締役会決議」という。)がされた。(丙1(当該取締役会に係る議事録の写し)。なお,次のア及びイの事項中の ●●●の部分は,この書証においてマスキングがされているために不明である部分であり,当該書証のとおりに認定している。) ア日本原子力発電㈱の東海第二発電所の安全性向上対策工事に必要な資金●●●●円のうち,●●●●円について,日本原子力発電㈱に対して資金的協力を行うこと。 イこのうち,日本原子力発電㈱が ●●●までに必要になると想定している●●●●円の資金的協力について,東京電力エナジーパートナー㈱からの受 給電力料金の前払の方法に 金的協力を行うこと。 イこのうち,日本原子力発電㈱が ●●●までに必要になると想定している●●●●円の資金的協力について,東京電力エナジーパートナー㈱からの受 給電力料金の前払の方法によって行うこと。 - 6 -ウ東京電力エナジーパートナー㈱の受給電力料金の前払は,日本原子力発電㈱の資金の必要性に応じて都度実施することとし,具体的な実施時期及び金額の決定並びに前払に関する覚書の締結について,東京電力エナジーパートナー㈱に一任すること(前払の都度,東京電力エナジーパートナー㈱から状況報告を受ける。)。 エ東京電力エナジーパートナー㈱が,日本原子力発電㈱との間で,東海第二発電所からの電力受給に関する覚書を締結することを承認すること。 オ上記アからエまでについては,東北電力㈱が資金的協力実施の意思決定を行うことを条件とすること。 カ補助参加人と東京電力エナジーパートナー㈱において,継続的に状況等を 確認し,東海第二発電所の再稼働の見通しや受電に係る経済性に大きな事情変更があった場合には,資金的協力の継続について改めて補助参加人の取締役会に付議すること。 ⑸ 工事終了予定日の変更日本原子力発電㈱は,令和2年1月28日に,原子力規制委員会に対し,東 海第二発電所を新規制基準に適合させる安全性向上対策工事の終了時期を令和3年3月末から令和4年12月に延期する旨の工事計画の変更を届け出た。 (甲113) 3 争点及び当該争点に関する当事者の主張本件における主な争点は,①被告代表執行役らが本件各行為をし,又は被告ら が本件各行為に係る取締役会の議題に賛成するおそれ(原告らの請求に係る差止めの対象行為をするおそれ)が現にあるかどうか,②本件各行為をし,又は本件各行為に係る取締役会の議題 をし,又は被告ら が本件各行為に係る取締役会の議題に賛成するおそれ(原告らの請求に係る差止めの対象行為をするおそれ)が現にあるかどうか,②本件各行為をし,又は本件各行為に係る取締役会の議題に賛成することが執行役又は取締役としての善管注意義務及び忠実義務に違反するものかどうか,③本件各行為をし,又は本件各行為に係る取締役会の議題に賛成することにより,補助参加人に回復することが できない損害が生ずるおそれがあるかどうかであり,これらの争点に関する当事 - 7 -者の主張は,次のとおりである。 ⑴ 争点①(被告代表執行役らが本件各行為をし,又は被告らが本件各行為に係る取締役会の議題に賛成するおそれ(原告らの請求に係る差止めの対象行為をするおそれ)が現にあるかどうか)に関する当事者の主張ア原告らの主張 補助参加人の取締役会は,本件取締役会において,東海第二発電所を新規制基準に適合させる工事のために必要な資金「A円」のうちの一部である「B円」について経済的支援をすることを決め,その更に一部である「C円」についてのみ,東京電力エナジーパートナー㈱による受給電力料金の前払の方法によることを決めたにすぎない。「B円」から「C円」を除い た残部については,東京電力エナジーパートナー㈱へ経済的支援が委任されていないから,差止めの対象となる行為は終わっていない。上記の「B円」は,東海第二発電所を新規制基準へ適合させる工事に必要な資金のうちの一部として経済的支援を行うことが決議された金額であるから,遅くとも当該工事の終了(被告ら及び補助参加人が主張するところによれば, 延期された後の令和4年12月)までに本件各行為が予定されている。したがって,上記「B円」のうち「C円」以外の部分について,差止めの対象とな (被告ら及び補助参加人が主張するところによれば, 延期された後の令和4年12月)までに本件各行為が予定されている。したがって,上記「B円」のうち「C円」以外の部分について,差止めの対象となる行為は,存在する。 補助参加人と東京電力エナジーパートナー㈱とは,完全親子会社の関係にあるとはいえ,別の法人であるから,両社の取締役を兼ねている者が出 席する取締役会で決議が行われたからといって,直ちに東京電力エナジーパートナー㈱がそれに拘束されるものではなく,本件取締役会決議については,補助参加人の代表者である被告代表執行役らによる執行行為(完全親会社として,東京電力エナジーパートナー㈱に対する指示・命令)が予定されているはずである。したがって,差止めの対象行為は,存在する。 以上のとおり,差止めの対象行為は,現に存在する。 - 8 -なお,本件取締役会決議は,何らの説明をすることなく,少数株主らによる差止請求を妨げる行為であって,株式会社東京証券取引所が策定し,同社が定める有価証券上場規程第445条の3,コーポレートガバナンス・コード補充原則1-1③に反するものであり,許されない。 イ被告ら及び補助参加人の主張 補助参加人の取締役会は,令和元年10月28日に開催した本件取締役会において,東京電力エナジーパートナー㈱からの受給電力料金の前払の方法により一定額の本件経済的支援を行うことを決議し,本件取締役会決議に付された停止条件(東北電力㈱における取締役会決議)が成就した。 補助参加人及び被告らは,本件取締役会において東京電力エナジーパート ナー㈱からの受給電力料金の前払の方法によって行うことを決議した一定額以外の本件経済的支援については,その具体的方法や主体,時期につき何ら決定していないし 役会において東京電力エナジーパート ナー㈱からの受給電力料金の前払の方法によって行うことを決議した一定額以外の本件経済的支援については,その具体的方法や主体,時期につき何ら決定していないし,今後にそれを行うことも予定していない。 原告らは,被告代表執行役らによる本件取締役会決議の執行行為が予定されている旨を主張しているが,東京電力エナジーパートナー㈱の取締役 会においては,本件取締役会に先立ち,補助参加人の取締役会の決議の効力発生を停止条件として,受給電力料金の前払を実施することを決議しており,当該決議の停止条件が成就している。また,東京電力エナジーパートナー㈱は,その代表取締役と補助参加人の取締役とを兼務している被告B8を通じて,この事実を認識している。したがって,東京電力エナジー パートナー㈱が日本原子力発電㈱に対して受給電力料金の前払を行うに当たっては,改めて被告代表執行役らの東京電力エナジーパートナー㈱に対する指示・命令行為が必要となるものではなく,被告代表執行役らにおいてこれを行う予定もない。 以上によれば,補助参加人の代表執行役又は取締役である被告らにおい て原告の請求に係る差止めの対象となる行為をすることは現に予定され - 9 -ていない。 なお,本件取締役会決議は,違法行為差止請求を避ける目的で行ったものではなく,有価証券上場規程第445条の3,コーポレートガバナンス・コード補充原則1-1③に反するものでもない。 ⑵ 争点②(本件各行為をし,又は本件各行為に係る取締役会の議題に賛成する ことが執行役又は取締役としての善管注意義務及び忠実義務に違反するものかどうか)に関する当事者の主張ア原告らの主張次のaからdまでの事情からすれば,補助参加人が日本原子力発電㈱に る ことが執行役又は取締役としての善管注意義務及び忠実義務に違反するものかどうか)に関する当事者の主張ア原告らの主張次のaからdまでの事情からすれば,補助参加人が日本原子力発電㈱に本件経済的支援を行ったとしても,支援した金額の回収を期待することは できない。 a 日本原子力発電㈱は,東北地方太平洋沖地震津波によって保有する原子力発電所の稼働が停止し,また,多額の津波対策工事費用等が生じたことにより,破綻の危機に瀕している。 b 東海第二発電所は,平成30年11月で運転期間が40年を迎えるな ど老朽化しており,仮に再稼働が認められたとしても,最長でも令和20年11月までしか稼働することができず,特定重大事故等対処施設の設置等により再稼働が遅れることにより運転期間がさらに短くなる。また,日本原子力発電㈱が保有する他の原子力発電所の再稼働が見通せず,東海第二発電所の稼働のみでは,本件経済的支援に対する返済を行うた めの利益を上げることは困難である。 c 新規制基準に適合させるための工事費用が日本原子力発電㈱の見積額である1740億円より増加する可能性があり,東海第二発電所の再稼働までに更なる本件経済的支援を要する事態に陥りかねない。 d 日本原子力発電㈱は,東海第二発電所の30km圏内の自治体(茨城 県及び六つの市村)との間で,再稼働の前に事前の了解を得る旨の協定 - 10 -を締結しているところ,これらの自治体の中には,再稼働に反対する意見を表明するものがあるなど,再稼働についての事前の了解を得られる見通しはないから,再稼働は不可能であるか,又は再稼働までに相当の時間を要する。 東海第二発電所の再稼働が可能であるとしても,東京電力エナジーパー トナー㈱が東海第二発電所から受 を得られる見通しはないから,再稼働は不可能であるか,又は再稼働までに相当の時間を要する。 東海第二発電所の再稼働が可能であるとしても,東京電力エナジーパー トナー㈱が東海第二発電所から受給する電力の購入単価は,過去の購入単価の平均値に,補助参加人又は東京電力エナジーパートナー㈱が日本原子力発電㈱との間の料金契約に基づいて平成23年度から令和4年度までの間に日本原子力発電㈱へ支払う基本料金の単価に加え,原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(平成23年法律第94号)上の一般負担金に相当 する金額の単価をも加算したものになるため,一般社団法人日本卸売電力取引所における購入単価等よりも2倍以上高額となる。 補助参加人は,東北地方太平洋沖地震津波に伴い福島第一原子力発電所における事故を起こした当事者であり,現在においても,その損害賠償を終えておらず,除染による原状回復も果たしていない上,福島第一原子力 発電所の廃炉措置の見通しも立っておらず,これらに要する費用が平成28年当時の試算額(22兆円)を大幅に上回ることが指摘されている。そして,補助参加人は,これらの巨額の費用の大半を自ら負担することができず,国民が税金,電気料金の値上げ,国債の発行,利息の負担等によって最終的に負担している。したがって,補助参加人は,そもそも他社を支 援する体力を有しない。 以上によれば,被告代表執行役らが本件各行為をし,又は被告らが本件各行為を行う旨の取締役会の議題に賛成することは,他社への支援を行う体力を有しない補助参加人において,再稼働の見通しが立たず,再稼働が可能となったとしても経済合理性を欠く価格で電力を購入することにな る東海第二発電所のために,回収が極めて困難であることが明らかな信用 - 11 - ,再稼働の見通しが立たず,再稼働が可能となったとしても経済合理性を欠く価格で電力を購入することにな る東海第二発電所のために,回収が極めて困難であることが明らかな信用 - 11 -供与を行わせるものとして,補助参加人の利益を害するものであり,補助参加人の利益及びその株主の利益を害さないように慎重に検討し,判断すべき善管注意義務及び忠実義務に違反する。 イ被告ら及び補助参加人の主張上記⑴イのとおり,補助参加人及び被告らは,今後,本件取締役会におい て東京電力エナジーパートナー㈱からの受給電力料金の前払の方法によって行うことを決議した一定額以外の本件経済的支援を行うことは予定していないが,次のとおり,既にした本件経済的支援に相当する本件取締役会決議における被告らの判断も,善管注意義務違反及び忠実義務違反となるものではない。 補助参加人は,令和元年10月18日に,日本原子力発電㈱から,東京電力エナジーパートナー㈱が再稼働後の東海第二発電所から電力を受給する際の条件の提案と共に,東海第二発電所の安全対策工事の遂行に必要な資金調達の一環として東海第二発電所の受給電力料金の前払を実施してほしい旨の依頼を受けたため,従前の日本原子力発電㈱からの説明及び 情報,資金的協力をする経済合理性,その前提としての東海第二発電所の再稼働の可能性等の様々な要素の精査検討の結果に基づき,日本原子力発電㈱からの提案内容等を総合的に勘案した結果,当該提案の内容等につき合理性が認められると判断し,本件取締役会決議を行った。 原告らは,東海第二発電所の再稼働について地元自治体の事前了解を得 られる見通しがないから,再稼働が不可能であるか,又は再稼働までに相当の時間を要する旨を主張しているが,日本原子力発電㈱は,法令に らは,東海第二発電所の再稼働について地元自治体の事前了解を得 られる見通しがないから,再稼働が不可能であるか,又は再稼働までに相当の時間を要する旨を主張しているが,日本原子力発電㈱は,法令にのっとった手続を進め,茨城県及び地元自治体の理解を得るために事前説明等を行ってきており,茨城県及び地元自治体においても実効性ある避難計画の作成に取り組んでいるところであって,これらにつき他の原子力発電所 の再稼働までの工程と比較して工程上の著しい遅延が認められるという - 12 -事情もなく,東海第二発電所の再稼働時期,運転期限までの運転についての具体的な懸念は生じていない。 補助参加人及び被告らは,東京電力エナジーパートナー㈱の電源調達に係る各電源の構成を考える中で,東海第二発電所から受電する場合と東海第二発電所から受電せずに一般社団法人日本卸売電力取引所等から調達 する場合との比較をした結果,前者について経済合理性があると見込まれると判断した。原告らは,前者が後者よりも高額となる旨を主張しているが,当該主張は,前提となる過去の単価の算出基礎が適切に措定されておらず,また,これに基本料金の単価及び一般負担金に相当する金額の単価を加算すべきとする根拠を欠くことなどから,理由がない。 ⑶ 争点③(本件各行為をし,又は本件各行為に係る取締役会の議題に賛成することにより,補助参加人に回復することができない損害が生ずるおそれがあるかどうか)に関する当事者の主張ア原告らの主張本件経済的支援に要する巨額の費用は,回収をほとんど期待することがで きず,被告らの賠償責任によって償いきれるものではないから,被告代表執行役らが本件各行為を行い,及び被告らが本件各行為を行う旨の取締役会の議題に賛成することにより,補 とんど期待することがで きず,被告らの賠償責任によって償いきれるものではないから,被告代表執行役らが本件各行為を行い,及び被告らが本件各行為を行う旨の取締役会の議題に賛成することにより,補助参加人に回復することができない損害が生ずるおそれがある。 イ被告ら及び補助参加人の主張 上記⑴イのとおり,補助参加人及び被告らは,今後,本件取締役会において東京電力エナジーパートナー㈱からの受給電力料金の前払の方法によって行うことを決議した一定額以外の本件経済的支援を行うことは予定していないが,上記⑵イのとおり,補助参加人の取締役会は,日本原子力発電㈱からの依頼を受けて,本件経済的支援につき精査検討をした結果,日本原子 力発電㈱の提案内容等に合理性が認められるとして本件経済的支援に相当 - 13 -する本件取締役会決議を行ったのであるから,これにより,補助参加人に回復することができない損害が生ずるおそれはない。 第3 争点に対する判断 1 まず,争点①(被告代表執行役らが本件各行為をし,又は被告らが本件各行為に係る取締役会の議題に賛成するおそれ(原告らの請求に係る差止めの対象行為 をするおそれ)が現にあるかどうか)について,判断する。 ⑴ 証拠(上記第2の2⑵イ及び⑷の前提事実の認定のために掲記した各証拠のほか,丙2)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 ア東京電力エナジーパートナー㈱の取締役会は,本件取締役会の開催に先立つ令和元年10月25日に,要旨としてとおりの決議を行っ た。 補助参加人の取締役会において東海第二発電所の再稼働に係る資金的協力の実施が決議され,その効力が生ずることを条件に,日本原子力発電㈱との間で電力受給に関する覚書及び初回の受給電力料金の前払に関す 補助参加人の取締役会において東海第二発電所の再稼働に係る資金的協力の実施が決議され,その効力が生ずることを条件に,日本原子力発電㈱との間で電力受給に関する覚書及び初回の受給電力料金の前払に関する覚書を締結すること。 2回目以降の前払の実施時期及び金額の決定並びに前払に関する覚書の締結について,代表取締役社長に一任すること。 イ東北電力㈱は,同月31日開催の取締役会において,日本原子力発電㈱に対して資金的協力を実施する旨を決議した。 ウ補助参加人は,令和2年9月24日に実施した本件第7回口頭弁論期日に おいて,当裁判所からの「今後,新規制基準適合性に係る工事に要する資金について」「本件取締会において決議した資金的協力以外に,経済的支援,資金的協力を行う予定」の有無についての釈明に対し,「その予定はない」と陳述し,被告らも,同一の認識である旨を陳述した。 ⑵ 上記第2の2の前提事実及び上記⑴において認定した事実に基づき,被告代 表執行役らが本件各行為をし,又は被告らが本件各行為に係る取締役会の議題 - 14 -に賛成するおそれが現にあると認めることができるかどうかについて,検討する。 ア上記第2の2⑴イ,⑵及び⑷の前提事実並びに上記⑴ア及びイの認定事実によれば,東京電力エナジーパートナー㈱においては,補助参加人の取締役会において本件経済的支援の実施が決議され,その効力が生ずることを停止 条件として,日本原子力発電㈱との間で電力受給に関する覚書及び初回の受給電力料金の前払に関する覚書を締結することを決議しており,補助参加人においては,一定額について別紙「行為目録」記載1に相当する行為を東京電力エナジーパートナー㈱に委任する旨を含む本件取締役会決議がされているところ,本件取締役会決議に付さ を決議しており,補助参加人においては,一定額について別紙「行為目録」記載1に相当する行為を東京電力エナジーパートナー㈱に委任する旨を含む本件取締役会決議がされているところ,本件取締役会決議に付された停止条件が成就していることから, 上記の東京電力エナジーパートナー㈱の取締役会決議及び本件取締役会決議は,いずれも既にその効力が生じているということになる。そして,東京電力エナジーパートナー㈱は,その代表取締役である被告B8が補助参加人の取締役を兼ねており,かつ,本件取締役会決議にも参加していること(上記第2の2⑴イ及び⑷の前提事実)から,これらの事情を当然に知悉してい ると考えられる。これらの事情によれば,本件取締役会決議により東京電力エナジーパートナー㈱による受給電力料金の前払の方法によることが決定された金額については,被告代表執行役らが本件各行為をし,又は被告らが本件各行為に係る取締役会の議題に賛成するということが改めて行われる必要性に乏しいと考えられるから,そのおそれがあると認めることはできな い。 イ原告らは,補助参加人と東京電力エナジーパートナー㈱の取締役を兼ねている者が出席する取締役会で決議が行われたからといって,直ちに東京電力エナジーパートナー㈱がそれに拘束されるものではなく,被告代表執行役らによる本件取締役会決議の執行行為が予定されているはずである旨を主張 している。しかしながら,両社が完全親子会社の関係にあり(上記第2の2 - 15 -⑴イの前提事実),補助参加人の取締役を兼ねている東京電力エナジーパートナー㈱の代表取締役社長が本件取締役会に参加し,異議なく本件取締役会決議がされていること(同⑷の前提事実)や,本件取締役会決議に先立ち,補助参加人の取締役会において本件経済的支援の 力エナジーパートナー㈱の代表取締役社長が本件取締役会に参加し,異議なく本件取締役会決議がされていること(同⑷の前提事実)や,本件取締役会決議に先立ち,補助参加人の取締役会において本件経済的支援の実施が決議され,その効力が生ずることを停止条件として,東京電力エナジーパートナー㈱において本 件経済的支援を実施する旨の取締役会決議をしていること(上記⑴アの認定事実)に鑑みると,なお補助参加人から東京電力エナジーパートナー㈱に対して指示・命令が予定されていると認めることは,困難である。 また,原告らは,本件取締役会決議の内容から,本件取締役会において本件経済的支援をすることを決めた金額のうち,東京電力エナジーパートナー ㈱による受給電力料金の前払の方法によることを決めた一定額を除く残額部分が存在する可能性を指摘している。しかしながら,被告ら及び補助参加人は,上記第2の3⑴イのとおり,既に決定した一定額以外の資金的協力を行う予定はなく,従って補助参加人の代表執行役又は取締役である被告らにおいて原告らの請求に係る差止めの対象となる行為をすることは想定され ない旨を主張していて,上記1⑶の認定事実のとおり,本件口頭弁論期日においても,当裁判所からの釈明に対し,今後に東海第二発電所の新規制基準適合性に係る工事に要する資金について上記の一定額以外についての経済的支援や資金的協力を行う予定はないと明言しており,被告らにおいても同一の認識であることを陳述したことを考慮すれば,今後に被告代表執行役ら が本件各行為をし,又は被告らによる本件各行為に係る取締役会の議題に賛成する対象としての当該残額部分なるものを認めることも,また困難であるというほかない。 ウしたがって,原告らの主張を採用することはできず,被告代表執行役らが 各行為に係る取締役会の議題に賛成する対象としての当該残額部分なるものを認めることも,また困難であるというほかない。 ウしたがって,原告らの主張を採用することはできず,被告代表執行役らが本件各行為をし,又は被告らが本件各行為に係る取締役会の議題に賛成する おそれが現にあると認めることはできない。 - 16 -⑶ 上記⑴及び⑵において検討したとおり,原告らの請求に係る差止めの対象行為である本件各行為をし,又は本件各行為に係る取締役会の議題に賛成するということ自体について,現にそのおそれがあるということはできない。 なお,本件取締役会決議の有価証券上場規程やコーポレートガバナンス・コード補充原則違反をいう原告らの主張は,上記の判断を左右するものではない。 2 上記1において検討した争点①に対する判断によれば,その余の争点②(本件各行為をし,又は本件各行為に係る取締役会の議題に賛成することが執行役又は取締役としての善管注意義務及び忠実義務に違反するものかどうか)及び争点③(本件各行為をし,又は本件各行為に係る取締役会の議題に賛成することにより,補助参加人に回復することができない損害が生ずるおそれがあるかどうか)につ いての判断(さらには,そもそも指名委員会等設置会社における取締役がする取締役会の議題への賛否を表明する行為が差止めの対象となるものかどうかの判断)を経るまでもなく,本件において,会社法第360条第3項において読み替えて適用される同条第1項及び第422条第1項に規定する株式会社ないし指名委員会等設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する 行為をし,又はこれらの行為をするおそれがある場合に当たるということはできないから,原告らの請求は,いずれも理由がないということになる 会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する 行為をし,又はこれらの行為をするおそれがある場合に当たるということはできないから,原告らの請求は,いずれも理由がないということになる。 なお,事案に鑑み付言すると,上記1⑵イにおいて摘示した補助参加人及び被告らの主張ないし陳述にかかわらず,原告らが主張するように,本件取締役会において本件経済的支援をすることを決定した金額のうち,東京電力エナジーパー トナー㈱による受給電力料金の前払の方法によることを決めた金額を除く残額部分が存在し,当該残額部分について被告らが本件各行為をし,又は本件各行為に係る取締役会の議題に賛成するおそれがあると仮定して考えたとしても,本件全証拠によっても,それによって補助参加人に上記の会社法の各規定に規定する回復することができない損害が生ずるおそれがあると認めることは困難である から,原告らの請求は,いずれにしても,理由がない。 - 17 -第4 結論以上によれば,原告らの請求は,いずれも理由がない。 よって,当該請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第8部裁判長裁判官江原健志 裁判官高橋浩美 裁判官森 﨑 なつき - 18 -(別紙)行為目録 1 日本原子力発電株式会社に対して東海第二発電所の電気料金を前払すること。 2 日本原子力発電株式会社の債務を保証すること。 3 日本原子力発電株式会社に対して貸付けを行うこと。 4 上記1から3までを組み合わせるなどして日本原子力発電株式会社に対して経済的支援をする行為一切 社の債務を保証すること。 3 日本原子力発電株式会社に対して貸付けを行うこと。 4 上記1から3までを組み合わせるなどして日本原子力発電株式会社に対して経済的支援をする行為一切

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