令和5(行ケ)10015 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年12月11日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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判決文本文50,041 文字)

令和5年12月11日判決言渡 令和5年(行ケ)第10015号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和5年9月20日判決 原告 東京窯業株式会社 同訴訟代理人弁理士 大矢正代 被告 JFEスチール株式会社 被告 品川リフラクトリーズ株式会社 被告ら訴訟代理人弁護士 近藤惠嗣 同訴訟代理人弁理士 苫米地正敏 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は、原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 特許庁が無効2021-800007号事件について令和5年1月11日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 設定登録 被告らは、平成28年2月17日、発明の名称を「ガス吹込みノズル用耐火物の製造方法」とする特許出願をし、令和元年6月14日、特許権の設定の登録を受けた(特許第6538584号、請求項の数は7、甲20。以下「本件特許」といい、その特許権を「本件特許権」と、その明細書を「本件明細書」という。その特許公報は別紙1のとおりである。)。 その特許権の特許請求の範囲の記載は別紙1の【特許請求の範囲】に記載のとおりである(その請求項1ないし請求項7に記載の各発明をそれぞれ「本件発明1」ないし「本件発明7」といい、これらを併せて「本件各発明」という。)。 ⑵ 原告による無効審判請求 原告は、令和3年2月5日、本件特許につき特許庁に無効審判(無効2021-800007号)を請求した(甲32)。 特許庁は、 せて「本件各発明」という。)。 ⑵ 原告による無効審判請求 原告は、令和3年2月5日、本件特許につき特許庁に無効審判(無効2021-800007号)を請求した(甲32)。 特許庁は、令和5年1月11日、結論を「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月19日、原告に送達された。 ⑶ 本件訴訟の提起原告は、令和5年2月16日、本件審決の取消しを求めて、本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨等⑴ 本件無効審判における請求人である原告の主張の概要は、次のとおりであ る。 ア無効理由1ないし10について(ア) 無効理由1本件発明1は、甲1(特開平11-158531号公報)に記載された発明(以下「甲1発明」という。)及び甲2(特開昭57-41309 号)に記載の技術的事項に基づいて、又は甲1発明に甲2及び甲3(耐 火物技術協会編、「耐火物手帳」改訂12版、耐火物技術協会、2015年(平成27年)8月31日発行。157ないし158頁)に記載の技術的事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたから、特許法29条2項に該当し、特許を受けることができない。 (イ) 無効理由2 本件発明1は、甲4(特開昭59-31808号公報)に記載された発明(以下「甲4発明」という。)及び甲2に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから、特許法29条2項に該当し、特許を受けることができない。 (ウ) 無効理由3 本件発明1は、甲5(特開昭58-167716号公報)に記載された発明(以下「甲5発明」という。)及び甲2に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから、特許法29条 本件発明1は、甲5(特開昭58-167716号公報)に記載された発明(以下「甲5発明」という。)及び甲2に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから、特許法29条2項に該当し、特許を受けることができない。 (エ) 無効理由4 本件発明1は、甲6(特開昭59-197513号公報)に記載された発明(以下「甲6発明」という。)及び甲2に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから、特許法29条2項に該当し、特許を受けることができない。 (オ) 無効理由5ないし10 本件発明2ないし7は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであり、甲1発明と対比すると、本件発明1と同様の相違点1及び2を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲2に記載の技術的事項、又は甲1発明、甲2及び甲3に記載の技術的事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたから、特許法29条 2項に該当し、特許を受けることができない。 (カ) 小括したがって、本件特許は、特許法123条1項2号に該当し、無効とされるべきである。 イ無効理由11及び12について(ア) 無効理由11 本件発明1は、非酸化焼成での焼成温度の温度条件に関して何ら規定されていないから、非酸化焼成での焼成温度に関する本件明細書の記載に鑑みると、そこに記載された課題を解決できる範囲を超えており、サポート要件(特許法36条6項1号)に違反し、特許を受けることができない。 (イ) 無効理由12本件発明2は、甲7(学校法人鉄鋼学園産業技術短期大学人材開発センター、「転炉製鋼法」、改訂3版、2刷、学校法人鉄鋼学園産業技術短期大学人材開発センター い。 (イ) 無効理由12本件発明2は、甲7(学校法人鉄鋼学園産業技術短期大学人材開発センター、「転炉製鋼法」、改訂3版、2刷、学校法人鉄鋼学園産業技術短期大学人材開発センター、平成24年(2012)年12月、196~197頁)の図6-11によれば、転炉は溶融金属を受けた時点で1000℃を 越え、吹錬が終了する(吹止め)までに、1600℃に達しており、本件発明2で規定している非酸化焼成の温度範囲は、実機稼働時の受熱によって耐火物組織が容易に変化してしまう温度範囲を含んでいることが明らかであるから、本件発明2は、課題を解決できる範囲を超えるものである。 (ウ) 小括したがって、本件発明1及び2の特許は、特許法123条1項4号に該当し、無効とされるべきである。 ⑵ 本件審決の理由は、別紙2審決書(写し)記載のとおりであり、原告の主張に対する判断の要旨は次のとおりである。 ア無効理由1につき 本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載の技術的事項に基づいて、又は甲1発明、甲2及び甲3に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるということはできない。 イ無効理由2につき本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載の技術的事項に基づいて、又は甲 4発明及び甲2に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるということはできない。 ウ無効理由3につき本件発明1は、甲5発明及び甲2に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるということはできない。 エ無効理由4につき本件発明1は、甲6発明及び甲2に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとい に発明することができたものであるということはできない。 エ無効理由4につき本件発明1は、甲6発明及び甲2に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるということはできない。 オ無効理由5ないし10につき本件発明2ないし7は、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び 甲2に記載の技術的事項に基づいて、又は甲1発明、甲2及び甲3に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるということはできない。 カ無効理由11及び12につき本件発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳 細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるから、特許法36条6項1号に規定される要件(サポート要件)に適合しないということはできない。 ⑶ 本件審決は、上記判断をするに当たり、甲1及び甲4発明の各内容、本件発明と甲1及び甲4との各一致点及び各相違点を、それぞれ次のとおり認定 した。 ア甲1発明[甲1発明の内容]「マグネシア・カーボン質耐火物にガス吹込み用のSUSパイプ3が複数本埋設されるとともに貰通孔4が複数形成された、N2ガスを吹き込むガス吹き込み用マグネシア・カーボン質耐火物の製 造方法において、SUSパイプ3及びメタクリル酸メチル樹脂製丸棒が埋設されたマグネシア・カーボン質耐火物杯土を、コークス粒に埋設して25℃/時間の昇温速度で750℃×5時間加熱処理して、メタクリル酸メチル樹脂製丸棒を焼失して得た貫通孔4とSUSパイプ3を備えたマグネシア・ カーボン質耐火物を得る、ガス吹き込み用マグネシア・カーボン質耐火物の製造方法。」 タクリル酸メチル樹脂製丸棒を焼失して得た貫通孔4とSUSパイプ3を備えたマグネシア・ カーボン質耐火物を得る、ガス吹き込み用マグネシア・カーボン質耐火物の製造方法。」[一致点]いずれも、「炭素含有耐火物にガス吹込み用の金属細管が複数本埋設された、撹拌ガスである不活性ガス吹き込みノズル用耐火物の製造方法 において、金属細管が埋設された炭素含有耐火物を加熱処理したガス吹き込みノズル用耐火物の製造方法。」である点。 [相違点](相違点1) 本件発明1は、「金属細管が埋設された炭素含有耐火物を非酸化焼成」するものであるのに対し、甲1発明は、SUSパイプ3及びメタクリル酸メチル樹脂製丸棒が複数本埋設されたマグネシア・カーボン質耐火物坏土を、コークス粒に埋設して25℃/時間の昇温速度で750℃×5時間加熱処理して、メタクリル酸メチル樹脂製丸棒を焼失して得た貫通 孔4とSUSパイプ3を備えたマグネシア・カーボン質耐火物を得るも のであって、非酸化焼成をするものであるかは不明である点。 (相違点2)金属細管が埋設された炭素含有耐火物を非酸化焼成(又は加熱処理)した後に、本件発明1は、「該炭素含有耐火物に、残炭率が30質量%以上の有機物を含浸させる含浸処理を施す(但し、前記非酸化焼成及び 含浸処理は1回のみ行う)」のに対し、甲1発明は、有機物の含浸処理を施すことについて不明である点。 イ甲4発明[甲4発明の内容]「化学成分がC5~30%残りはMgO、Al2O3、Cr2O3、ZrO 2の1種又は2種以上を含有する耐火物にステンレス管の細管が複数本埋設された、CO2、N2、Arを吹込ガスとする細管を多数有する一体成形さ りはMgO、Al2O3、Cr2O3、ZrO 2の1種又は2種以上を含有する耐火物にステンレス管の細管が複数本埋設された、CO2、N2、Arを吹込ガスとする細管を多数有する一体成形された耐火物の製造方法において、細管が埋設されたC5~30%残りはMgO、Al2O3、Cr2O3、 ZrO2の1種又は2種以上を含有する配合物を焼成した後、ピッチ含浸する(但し、前記焼成及びピッチ含浸は1回のみ行う)細管を多数有する一体成形された耐火物の製造方法。」[一致点]いずれも、炭素含有耐火物にガス吹込み用の金属細管が複数本埋設さ れた、撹拌ガスである不活性ガス吹き込みノズル用耐火物の製造方法において、金属細管が埋設された炭素含有耐火物を焼成した後、該炭素含有耐火物に、有機物を含浸させる含浸処理を施す(但し、前記焼成及び含浸処理は1回のみ行う)ガス吹き込みノズル用耐火物の製造方法である点。 [相違点] (相違点3)金属細管が埋設された炭素含有耐火物を、本件発明1は、「非酸化焼成」し、「非酸化焼成は1回のみ行う」のに対し、甲4発明は、焼成するとはしているものの、非酸化焼成をするものであるかは不明である点。 (相違点4) 金属細管が複数本埋設された炭素含有耐火物を非酸化焼成(又は焼成)した後に、本件発明1は、「該炭素含有耐火物に、残炭率が30質量%以上の有機物を含浸させる含浸処理を施す」のに対し、甲4発明は、ピッチ含浸はしているものの、ピッチの残炭率等は不明である点。 3 甲2の技術的事項 ⑴ 甲2(特開昭57-41309号、以下甲2に記載された発明を「甲2発明」という。)には、本件審決が認定した以下の技術的事項の記載があるこ 不明である点。 3 甲2の技術的事項 ⑴ 甲2(特開昭57-41309号、以下甲2に記載された発明を「甲2発明」という。)には、本件審決が認定した以下の技術的事項の記載があることにつき、当事者間に争いがない。 「気体吹込羽口の周囲に使用するマグネシア-カーボン煉瓦の製造方法において、マグネシア90~70%、カーボン10~30%の混合物に有機 質結合剤を加えて成形し、900~1450℃間で非酸化焼成した後、炭化収率25%以上の有機物を気孔中に含浸させて(但し、前記非酸化焼成及び含浸は1回のみ行う)、マグネシア-カーボン煉瓦を製造することで、クリープ変形を防ぎ、曲げ強さ及び耐食性を高めること。」⑵ 甲2の明細書には、以下の記載がある。 ア 「本発明は焼成したマグネシア-カーボン煉瓦あるいは前記煉瓦を焼成した後有機物を含浸処理したマグネシア-カーボン煉瓦を気体吹込み羽口の周囲に使用した精錬容器に関する。 ・・・これらの精錬容器の羽口周辺部の内張耐火物は使用条件が極めて苛酷であるため損傷が著しい。 羽口は通常二重の金属製管で構成されており、吹錬時は内管から酸素、 外管から炭化水素あるいはアルゴン窒素等の不活性ガスを溶融金属中に吹込んでいる。このように羽口周囲の内張耐火物には吹錬中は酸素と溶鋼の接触によって生じるホットスポットによる高熱と、炭化水素、不活性ガスによる冷却作用によって生じる激しい温度勾配あるいは非吹錬時の不活性ガスの吹込による熱衝撃が加えられ、亀裂の発生や剥離に よる損傷を生起する。 さらには吹込気体による激しい溶鋼の摩耗作用および衝撃作用による損傷も著しい。」(1頁左下欄下3行~右下欄末行)イ 「その原因を追究したところ前記不焼成マ や剥離に よる損傷を生起する。 さらには吹込気体による激しい溶鋼の摩耗作用および衝撃作用による損傷も著しい。」(1頁左下欄下3行~右下欄末行)イ 「その原因を追究したところ前記不焼成マグネシア-カーボン煉瓦は400~700℃間の低温域でクリープ変形を示し、これが前記煉瓦の 損傷を促進することが分った。それ故前記煉瓦で容器を内張し、昇温していくと内張煉瓦の熱膨脹がクリープ変形によって吸収される。また容器の温度を高温に維持する場合には問題はないが温度が低下してくると内張煉瓦間に目地開きが生じ、目地が開くと目地溶損を惹起する。 さらに熱応力によって亀裂が発生した際には周囲の煉瓦と接触して いないため溶鋼の摩粍作用および衝撃が加えられて容器に剥離現象を呈する。 この対策として種々検討を重ねた結果マグネシア-カーボン煉瓦を900~1450℃間で焼成し、添加している有機質結合剤を炭化させることによってクリープ変形が全く起らなくなることを見出し、本発明 を完成させたのである。」(2頁左上欄7行~右上欄3行)ウ 「原料のマグネシアおよびカーボンに前記の有機結合剤を添加混合し、混練成形した後カーボンが酸化されない雰囲気中で900~1450℃間で焼成することによって結合剤を炭化させる。」(2頁左下欄13行16行) エ 「第2の発明は前記したマグネシア-カーボン煉瓦に炭化収率25% 以上の有機物を含浸処理させたところである。含浸材としてはコールタールピッチの加熱溶解物、レゾール型の液状フェノール樹脂、ノボラック型のフェノール樹脂をメタノールあるいはエチレングリコールといった溶媒に溶解したものを真空含浸装置を用いて含浸処理する。 またフラン樹脂に重合触媒としてトルエンスルホン酸エステル、 脂、ノボラック型のフェノール樹脂をメタノールあるいはエチレングリコールといった溶媒に溶解したものを真空含浸装置を用いて含浸処理する。 またフラン樹脂に重合触媒としてトルエンスルホン酸エステル、べン ゼンスルホン酸エステル、塩化アルミニウム等を添加したものを含浸した後熱処理して樹脂を硬化させることによって圧縮強さおよび曲げ強さを一段と高めて耐食性を向上させた。 以上のような含浸材の含浸処理によって焼成マグネシア-カーボン煉瓦の曲げ強さをさらに高めて耐食性を大巾に向上させ得る。 この場合に含浸材の炭化収率が低いと期待するほどの改善効果が得られないので炭化収率は少くとも25%以上と限定したのである。 このようにして得られたマグネシア-カーボン煉瓦を気体吹込み羽口の周囲に使用することによって、従来の不焼成マグネシア-カーボン煉瓦の如くクリープ変形の生起もなく、内張煉瓦間の目地溶損が少く、 従って内張煉瓦の耐食性を著しく改善し、精錬容器の連続操業期間を大巾に延長できる等の効果を奏する。」(2頁右下欄15行~3頁左上欄末行) 4 甲3の技術的事項甲3(耐火物技術協会編、「耐火物手帳」改訂12版、耐火物技術協会、2 015年(平成27年)8月31日発行。157ないし158頁)には、製鋼用耐火物として用いられる、マグネシア-カーボン質煉瓦につき、「ごく一部の大型煉瓦などは800℃から1200℃程度の還元雰囲気下で焼成し」、「焼成後に消化防止、低気孔率化のためピッチ含浸されることが多い。」との記載がある。 5 甲7の技術的事項 甲7(学校法人鉄鋼学園産業技術短期大学人材開発センター、「転炉製鋼法」、改訂3版、2刷、学校法人鉄鋼学園産業技術短期大学人材開発センター、平成 5 甲7の技術的事項 甲7(学校法人鉄鋼学園産業技術短期大学人材開発センター、「転炉製鋼法」、改訂3版、2刷、学校法人鉄鋼学園産業技術短期大学人材開発センター、平成24年(2012)年12月、196~197頁)の図6-11には、転炉は溶融金属を受けた時点で1000℃を越え、吹錬が終了する(吹止め)までに、1600℃に達していることが示されている。 6 原告の主張する本件審決の取消事由⑴ 取消事由1(甲1発明に基づく本件発明1の進歩性判断の誤り)⑵ 取消事由2(甲4発明に基づく本件発明1の進歩性判断の誤り)⑶ 取消事由3(甲1発明に基づく本件発明2ないし7の進歩性判断の誤り)⑷ 取消事由4(本件発明1についてのサポート要件の判断の誤り) ⑸ 取消事由5(本件発明2についてのサポート要件の判断の誤り)第3 当事者の主張 1 取消事由1(甲1発明に基づく本件発明1の進歩性判断の誤り)について〔原告の主張〕⑴ 甲1記載の「焼失」は「消失」と解するのが適すること 本件審決は「メタクリル酸メチル樹脂製丸棒を焼失して」と記載しているが、甲1ではメタクリル酸メチル樹脂が失われる現象について、「焼失」と「消失」の両方を混用している(「焼失」については特許請求の範囲など、「消失」については段落【0014】、【0016】等)。甲1では、樹脂を加熱することよって単量体まで熱分解させることで、耐火物中に貫通孔を形成している から、「消失」の語が適している。 ⑵ 相違点の認定の誤りア相違点1を相違点と認定したことは誤りである。 甲1の段落【0026】に記載されている成形体をコークスに埋設して行う加熱処理は、本件明細書の段落【0028】に記載されている炭素含 定の誤りア相違点1を相違点と認定したことは誤りである。 甲1の段落【0026】に記載されている成形体をコークスに埋設して行う加熱処理は、本件明細書の段落【0028】に記載されている炭素含 有耐火物の周囲にコークスなどの炭素源を入れた後、上部に蓋をかけ、外 気を遮蔽しながら行う還元焼成(熱処理)と同様であり、「非酸化焼成」であるといえるから、審決の提示する相違点1は相違点ではない。 イなお、本件明細書の段落【0028】では、非酸化焼成において「蓋をかける」ことに言及しているのに対し、甲1の段落【0026】にその記載はない点で相違するが、(ア)蓋があれば密閉系、蓋がなければ開放系とい うようなものではなく、コークス粒に埋設した上で蓋をかけた場合は、コークス粒に埋設したが蓋をかけていない場合に比べて、外気を遮蔽できるレベルがより高い、という程度に捉えるべきであるし、(イ)本件明細書の段落【0028】及び【0029】における定義においては、酸化雰囲気で行われる焼成であっても、短時間であれば「非酸化焼成」であり、炭素含 有耐火物の表面が酸化されたとしても、酸化が内部にまで及ばなければ耐火物内部については「非酸化焼成」であるから、仮に、甲1発明において、コークス粒に埋設した上で蓋がかけられていないことによって、コークス粒の表面が酸化したとしても、その酸化が成形体まで及ばなければ、或いは、万一、成形体の表面が多少は酸化したとしても、内部にまで酸化が及 ばなければ、このような場合の焼成条件も、本件明細書で定義された「非酸化焼成の条件」に含まれている。 ウ後記のとおり、相違点2に基づく容易想到性の判断に誤りがあった場合、他の相違点が存在するか否かは結論に影響するということができる。 ⑶ 相違点2の された「非酸化焼成の条件」に含まれている。 ウ後記のとおり、相違点2に基づく容易想到性の判断に誤りがあった場合、他の相違点が存在するか否かは結論に影響するということができる。 ⑶ 相違点2の容易想到性の判断の誤り ア甲2の技術的事項を甲1発明に適用する動機付け(ア) 甲1発明は、耐熱性、耐用性を高める、耐火物母材の耐食性と耐スポーリング性を高める、耐火物の損耗を軽微とする、という課題を有し、甲2発明は課題の中に「金属製管の周囲で金属管を保持している耐火物の損傷を抑制し、耐食性及び耐用性を向上させる」という課題を含んで おり、甲1発明と甲2の技術的事項は、ガス吹き込みノズル用の耐火物 の損傷を抑制し、耐食性及び耐用性を高めるという共通の課題を有している。 (イ) 甲1発明のガス吹き込みノズルの金属細管と甲2発明のガス吹き込みノズルの金属管(二重管)は、溶融金属にガスを吹き込む点で、共通の作用、機能を有する。また、甲1と甲2の耐火物は、ガス吹き込み用 金属製管を保持している点で、作用、機能は共通している。 (ウ) 以上のように、甲1発明と甲2発明とは、共通または関連する技術分野に属し、共通の課題を有しており、作用、機能において共通しているから、甲2の技術的事項を甲1発明に適用する動機付けがある。 (エ) 加えて、前記第2の4の甲3の記載にあるように、炭素含有耐火物で あるマグネシア-カーボン質煉瓦を還元雰囲気で焼成した後で、ピッチ含浸することが多いことは、技術常識であることに鑑みても、ピッチを含む有機物を非酸化焼成後の炭素含有耐火物に含浸することを開示している甲2の技術的事項を、甲1発明に適用する動機付けがある。 (オ) 被告らは、使用条件の過酷さの度合いが大きく異なることから、甲 を含む有機物を非酸化焼成後の炭素含有耐火物に含浸することを開示している甲2の技術的事項を、甲1発明に適用する動機付けがある。 (オ) 被告らは、使用条件の過酷さの度合いが大きく異なることから、甲2 の技術的事項を、あえて甲1発明のMHP(マルチプル・ホール・プラグ。その意義につき本件明細書の段落【0003】及び【0004】参照)に適用する動機づけは存在しないと主張するが、甲2では、酸素が吹き込まれていない状況下(非吹錬時)で、不活性ガスが吹き込まれる際の耐火物の損傷についても問題点として言及しており、甲2と甲1は、 共に不活性ガスの吹き込みに起因する耐火物の損傷について課題に含めているから、甲2の技術的事項を甲1発明に適用する動機付けはある。 イ 「残炭率30%以上の有機物含浸」の実現容易性(ア) 本件明細書の「残炭率」と甲2の「炭化収率」a 本件明細書において特許文献5の特開昭58-15072を引用 するに当たり、特許文献5が使用している「炭化収率」の語を使用し たからといって、そのことが直ちに、本件明細書で「残炭率」と「炭化収率」とを区別していることにはならない。 b 甲2は審査段階でも引用された文献であるところ、特許庁の審査段階では甲2の「炭化収率」は「残炭率」と同義のように扱われていたことに対して、出願人である被告らは何ら反論していない(甲12 -3)。これは、被告も、「炭化収率」を「残炭率」と同義と解釈されたことを、当業者としてごく自然に受け容れていたためである。 c 本件発明1において含浸する有機物として挙げられているピッチ、フェノール樹脂、フラン樹脂を対象に、「残炭率」と「炭化収率」の双方について、その測定方法を定義している特許文献(甲46-1~ 甲46-16) おいて含浸する有機物として挙げられているピッチ、フェノール樹脂、フラン樹脂を対象に、「残炭率」と「炭化収率」の双方について、その測定方法を定義している特許文献(甲46-1~ 甲46-16)の抽出を行ったところ、「残炭率」については、本件発明と同様に「JISK6910(フェノール樹脂試験方法)」が使用されている他、「JISK2425(クレオソート油、加工タール及びタールピッチ試験方法)」が使用され(甲46-1~甲46-15)、「炭化収率」については、「JISK2425(クレオソート油、 加工タール及びタールピッチ試験方法)」が使用されており(甲46-16)、かつ、これら二つのJISで規定している固定炭素分の測定方法は同じであると考えられる。 以上のことから、本件特許の出願時において、ピッチ、フェノール樹脂、フラン樹脂について、「残炭率」と「炭化収率」を同義とし、 かつ、同じ測定方法で測定する(同じ定義である)と、当業者が認識し得る技術的背景が存在した。 d また、JISK6910もJISK2425も「固定炭素分」の測定方法を規定しているのであり、「残炭率」の用語も「炭化収率」の用語もこれらのJISには登場しない。この「固定炭素分」のこと を、当業者は「残炭率」と称することも「炭化収率」と称することも あるということである。 e 以上のように、本件特許の出願時に、「残炭率」と「炭化収率」が同義であり、かつ、「残炭率」と「炭化収率」とが同一の方法で測定される、本件審決において「定義が同じである」と、当業者が認識し得る技術的認識も存在した。 (イ) 甲2を甲1発明に適用することにより本件発明1の「残炭率30%以上の有機物含浸」を当業者が容易に想到し得ることa 甲2には じである」と、当業者が認識し得る技術的認識も存在した。 (イ) 甲2を甲1発明に適用することにより本件発明1の「残炭率30%以上の有機物含浸」を当業者が容易に想到し得ることa 甲2には、前記第2の3⑵エのとおり、「含浸材の炭化収率が低いと期待するほどの改善効果が得られないので炭化収率は少くとも25%以上と限定したのである。」(3頁左上欄11行~13行)と記載 されているが、このように公知文献に「25%以上がよい」と開示されていた場合に、25%以上の範囲に含まれる「30%以上」と後願の請求項で規定することに意義がある場合というのは、25%以上であって30%未満の範囲が不適であることを立証した場合である。 b 本件明細書において、残炭率が25%以上、30%未満の範囲に ある実施例は一つもなく、本件発明は、25%以上30%未満を排除した結果として、30%を下限値としたのではない。本件発明1における残炭率の下限値である「30%」に、臨界的意義はない。 c したがって、甲2の技術的事項を甲1発明に適用した当業者が、残炭率(炭化収率)を30%以上とすることは、当業者が適宜設定で きることにすぎず、当業者が容易になし得ることである。 ウ本件審決が示した甲1と甲2の組み合わせの阻害要因は存在しないこと(その1)(ア) 本件審決は、甲1のマグネシア・カーボン質耐火物に、甲2に記載の有機物含浸をしたときに「貫通孔4が有機物によって閉塞され、又は 狭窄を生じ、貫通孔としての機能が損なわれ、又は機能の低下が生じ る恐れがあることは明らかである」としているが、根拠を明らかにしていない。 (イ) 有機物の含浸材は、樹脂の消失により形成された貫通孔4に比べて、かなり微小な空隙である鱗状黒鉛の層間にま る恐れがあることは明らかである」としているが、根拠を明らかにしていない。 (イ) 有機物の含浸材は、樹脂の消失により形成された貫通孔4に比べて、かなり微小な空隙である鱗状黒鉛の層間にまで浸入していくようなものであるから、貫通孔4が閉塞されないように含浸材を耐火物に含浸 させることは、当業者が通常の能力でなし得る処理である。仮に、樹脂の消失により形成された貫通孔4の内部に含浸材が浸入したとしても、貫通孔の内壁を構成しているのは、マトリックスと同じ耐火物であるから、耐火物の内壁を通過してマトリックスの内部に有機物は含浸していく。 (ウ) 通常の能力を有する当業者が通常の経験に基づき配慮しながら処理を行えば、樹脂の消失により形成された貫通孔4の内部が含浸材で閉塞されないように、耐火物のマトリックスに有機物を含浸することは可能である。 原告の実験(甲56、57)結果からも、焼成後の耐火物のマトリ ックス中に十分に有機物が含浸するように含浸処理を行っても、樹脂の消失により耐火物に直接形成された貫通孔4は、閉塞も狭窄もしないことが確認された。 (エ) 有機物含浸によって貫通孔4に狭窄を生じ(閉塞ではなく)、貫通孔としての機能の低下が生じる恐れのある(低下はしても機能自体は発 揮する)ものであるとしても、甲1に甲2の有機物含浸を適用することの阻害要因とはならない。甲1に甲2の技術的事項を適用することによって、何か有利な作用効果が生じるのであれば、別の作用効果が多少低下するとしても、甲1に甲2の技術的事項を適用することの阻害要因になるとまではいえない。 エ本件審決が示した甲1と甲2の組み合わせの阻害要因は存在しないこと (その2)(ア) 甲1に記載された発明は、従来は 用することの阻害要因になるとまではいえない。 エ本件審決が示した甲1と甲2の組み合わせの阻害要因は存在しないこと (その2)(ア) 甲1に記載された発明は、従来は金属パイプと風箱との接合、風箱と外套スリーブとの接合のための溶接作業が多く、高い組立精度が必要となるため製造工程が煩雑で熟練した作業を要していたこと(段落【0003】)や、メタルケースと耐火物との嵌着部のシール性が不十分で あり、使用時に結合が緩むなど金属と耐火物の一体化に問題があったことも(段落【0004】)、解決課題の一つとしている。 (イ) 甲1の特許請求の範囲には、請求項1と請求項2という二つの独立請求項があり、このうち請求項2の発明の内容は以下のとおりであり、「耐火物そのものに直接形成された貫通孔」は必須の要件ではない。 [甲1の請求項2の特許請求の範囲の記載]「複数の貫通孔を有するガス吹き込み用耐火物の一方の端部に金属製の風箱を有するガス吹き込み用装置の製造方法であって、ガス吹き込み用耐火物の成形時に金属係止部品を付帯させ、この金属係止部品と風箱を溶接してガス吹き込み用耐火物と風箱を結合し、さらに風箱と耐火物の接 触部に耐熱性シール剤を塗布することを特徴とするガス吹き込み用装置の製造方法」加えて、甲1には、以下の3種類の実施例がある。 • 実施例1:耐火物に金属パイプを埋設しているが焼成をしていない実施例 • 実施例2:耐火物に樹脂棒を埋設した後で非酸化焼成をすることにより、耐火物そのものに直接形成された貫通孔のみを形成している実施例• 実施例3:耐火物坏土に金属パイプ及び樹脂棒を埋設した後で非酸化焼成をすることにより、耐火物そのものに直接形成され た貫通孔と、金属パイプで構成される た貫通孔のみを形成している実施例• 実施例3:耐火物坏土に金属パイプ及び樹脂棒を埋設した後で非酸化焼成をすることにより、耐火物そのものに直接形成され た貫通孔と、金属パイプで構成される貫通孔との両方を形 成している実施例(ウ) 当業者であれば、耐火物に金属パイプを埋設した後で非酸化焼成をすることにより、金属パイプで構成される貫通孔のみを形成している実施例がないことを疑問に感じると共に、上記の実施例1と実施例3とを対比し、実施例1のように耐火物に金属管を埋設した後、実施例3と同様 に非酸化焼成する製造方法もあり得ること(そうすることに、技術的な障害がないこと)を、通常の能力で認識し得る。また、このような構成によっても、甲1が解決しようとしている上記の課題を解決することができ、このような構成は、請求項2の発明の構成に包含される。 (エ) 甲1は、従来技術の問題点として、「また金属パイプを耐火物と同時 成形することで、貫通孔を設けているが、金属パイプそのもののコストも高く、前述の煩雑な製作工程と併せて、製造コストが高い(段落【0003】)。」と記載しており、甲1の請求項1の発明において、耐火物そのものに直接形成された貫通孔と、金属パイプで構成される貫通孔の双方を備えることは、金属パイプそのもののコストが高く、製造コストが 高くなるという問題を解決するためである。耐火物そのものに直接形成された貫通孔と、金属パイプで構成される貫通孔とは、いずれも溶融金属にガスを吹き込む貫通孔であって作用・機能が同一であり、いずれか一方のみであってもガスの吹き込みを行う作用・機能に問題はないことは、当業者にとって明らかである。そのため、コストの課題よりも、甲 1の開示している他の課題である「耐用性」を高 あり、いずれか一方のみであってもガスの吹き込みを行う作用・機能に問題はないことは、当業者にとって明らかである。そのため、コストの課題よりも、甲 1の開示している他の課題である「耐用性」を高めることを重要視する当業者にとっては、甲1発明に甲2の技術的事項を適用するに当たり、耐火物そのものに直接形成された貫通孔を必ずしも採用する必要がないことは、容易に理解し得る。経済的な事情は、技術的に構成を組み合わせることの障害とはならない。 したがって、甲1の開示から当業者が把握する発明において、樹脂の 消失により耐火物そのものに直接形成された貫通孔4は、必ずしも必須ではない。 加えて、甲2には、ガスを吹き込む管を金属管のみで構成させている技術が開示されているから、成形段階で耐火材料とガス吹き込み用の金属管を一体化させた後で非酸化焼成することを開示している甲1発明 に、ガス吹き込み用の金属管を保持するための耐火物に対して、非酸化焼成後に有機物を含浸するという甲2の開示内容を適用する、という論理付けが可能である。 オ作用効果の評価(ア) 破壊エネルギーの向上による亀裂の伸展抑制効果の評価 a 本件審決は、破壊エネルギーの向上により亀裂伸展を抑制することを「予測し得ない作用効果である」とした。 しかし、本件明細書では、破壊エネルギーの向上により亀裂の伸展が抑制されるという作用効果を主張してはいるものの、破壊エネルギーの大きさと、亀裂の伸展の抑制効果との関係について、実際には何ら実証・ 確認をしていない。本来、破壊エネルギーの向上により亀裂の伸展が抑制されるという作用効果を主張しようとするなら、破壊エネルギーの大きさの異なる耐火物について、組織の顕微鏡観察をするなどにより、亀裂の伸 をしていない。本来、破壊エネルギーの向上により亀裂の伸展が抑制されるという作用効果を主張しようとするなら、破壊エネルギーの大きさの異なる耐火物について、組織の顕微鏡観察をするなどにより、亀裂の伸展具合を確認する作業が必要である。本件特許の出願である被告らによって新たに見い出されたことであるならば、その効果を確認した 結果を本件明細書で示すべきであるのに、そのような効果確認の結果は示されていない。 b 甲9(「耐火物手帳」改訂12版(2015))101頁記載の式より、熱衝撃による亀裂発生そのものは問題とせずに、亀裂の伸展を問題としたときの係数である「熱衝撃損傷抵抗」が、破壊エネルギー(γ) と比例すること、すなわち、破壊エネルギーを大きくすると熱衝撃損傷 抵抗が大きくなることは明らかである。 したがって、本件特許の出願日より前に、特許出願の明細書に「破壊エネルギー」の語が登場することがあまりなかったとしても、耐火物の破壊エネルギーに着目したことは自体は新規な視点でもなく、破壊エネルギーの向上により亀裂の伸展が抑制される作用効果も、新規な知見と はいえない。 甲54「耐火物手帳」には、ガス吹き込み用の耐火物(羽口煉瓦)の損傷に関して、急激な温度変化にさらされることによる熱衝撃が問題であること、MHP羽口の損傷として「煉瓦内に稼働面と平行な亀裂が発生しており、稼働面の近傍、煉瓦内部など複数本の亀裂が確認されてい る」と記載され、その様子が写真と共に模式図で示されており、本件発明で知見された新規な課題ではない。 c 本件明細書の段落【0014】には、「耐火物を非酸化焼成・有機物含浸する従来技術は、主に炉の内張り用耐火物の耐食性や耐熱スポーリング性の改善を目的としたものであり、本発明が狙いと 題ではない。 c 本件明細書の段落【0014】には、「耐火物を非酸化焼成・有機物含浸する従来技術は、主に炉の内張り用耐火物の耐食性や耐熱スポーリング性の改善を目的としたものであり、本発明が狙いとする破壊エネルギ ー向上による亀裂の伸展抑制効果については、全く知られていない。」と記載されている。 このことから、出願人は、「耐熱スポーリング性の改善を目的として、耐火物を非酸化焼成・有機物含浸すること(従来技術)と、熱衝撃による損傷(熱スポーリング)の抑制のために破壊エネルギーを向上させる ことを目的として、耐火物を非酸化焼成・有機物含浸すること(本件発明)とは異なる。」と考えていると理解されるが、どのように異なると考えているのかわからないし、耐熱スポーリング性の改善を目的として、耐火物を非酸化焼成・有機物含浸することは、従来技術であり、着目している目的が少し違うとしても、していること(手段)が同じであれば、 本人が着目していない作用効果であっても同様に生じていたはずであ る。破壊エネルギーの向上による亀裂の伸展抑制効果を、予測し得ない有利な効果と判断している本件審決にはこのような視点が欠けていることにより、誤った判断に至ったものである。 (イ) 甲1や甲2に破壊エネルギーに関する記載がないことの影響a 本件審決では、引用文献に破壊エネルギーについての記載がないこと は、本件発明1の進歩性を肯定する方向に働くとの判断が示されているが、引用文献に作用効果の記載がないことで、直ちに進歩性が肯定される訳ではない。 本件の場合、残炭率と炭化収率とは同義と考えることが可能であるから、残炭率(炭化収率)の下限値を25%ではなく30%としたことに よって、効果が顕著なものとなったか否かが る訳ではない。 本件の場合、残炭率と炭化収率とは同義と考えることが可能であるから、残炭率(炭化収率)の下限値を25%ではなく30%としたことに よって、効果が顕著なものとなったか否かが問題となる。 本件明細書には、残炭率が25%以上、30%未満の範囲にある実施例が一つもない。そのため、当然ながら、残炭率(炭化収率)を25%以上ではなく30%以上としたことによって、破壊エネルギーが顕著に大きくなったか否かを示すものは何もない。 したがって、甲1や甲2に破壊エネルギーに関する記載がないことをもって、本件発明1の作用効果が予測し得ない効果であるとする本件審決は誤りであり、本件発明1の作用効果が、予測し得ない顕著な効果であると認めることはできない。 b 本件発明1は、不適な比較例3(有機物含浸ができず、破壊エネルギ ーが小さい比較例)を包含しているから、そもそも本件審決が認定している作用効果(破壊エネルギー向上による亀裂伸展の抑制)は、本件発明が発揮できる作用効果ではない。 〔被告らの主張〕⑴ 相違点1の認定は、本件審決の結論に影響を及ぼしていないこと 本件審決は、相違点2の容易想到性判断において、容易想到性を否定して、 相違点1については検討することなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2、甲3に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるということはできないと判断した。すなわち、相違点1の認定は、本件審決の結論に影響を及ぼしていない。 ⑵ 相違点2の容易想到性の判断について ア甲1発明に甲2に記載の技術的事項を適用する動機付けの有無について(ア) 技術分野の関連性a 甲1発明は、本件発明と同様に、ガス吹込みノズル用耐火物(溶鋼中 到性の判断について ア甲1発明に甲2に記載の技術的事項を適用する動機付けの有無について(ア) 技術分野の関連性a 甲1発明は、本件発明と同様に、ガス吹込みノズル用耐火物(溶鋼中に撹拌用ガスである不活性ガス等が吹き込まれる)に関する発明であるが、甲2の技術事項は、二重管羽口(金属製管の内管から純酸素ガ スが、外管から冷却用ガス(炭化水素ガスなど)が各々溶鋼中に吹き込まれる)の周囲に配置される内張煉瓦に関する技術であり、両者は全く異なる種類の耐火物製品で、用途や機能も全く異なり、要求される性能・特性も異なる(本件明細書の段落【0013】及び【0014】には、従来、主に炉の内張り用耐火物の耐食性や耐熱スポーリン グ性などの改善を目的として、耐火物を非酸化焼成・有機物含浸する技術が知られているが、本発明が狙いとする破壊エネルギー向上による亀裂の進展抑制効果については、全く知られていないことが記載されている。)。したがって、耐火物製品という限度で共通するとしても、解決すべき課題が異なるから、甲1発明と甲2の技術的事項は、技術 分野の関連性はほとんどない。 b 原告は、甲2の「内張した」、「張り合せた」という文言から、煉瓦は金属製管と分離しないように固着・接合されるものであるとし、甲2に記載されているのは「ガス吹込みノズル」であると主張する。 しかし、上記文言は「内張煉瓦として金属製管(気体吹込み羽口)の 周囲などに配置した」という意味であり、原告が主張するような「金属 製管と分離しないように固着・接合される」ということではなく、甲2に「耐火物に埋設されている金属製管を備えるガス吹き込みノズル」は示されていない。 c 甲2の金属製管の周囲の内張煉瓦は、金属製管と固着・接合されない うに固着・接合される」ということではなく、甲2に「耐火物に埋設されている金属製管を備えるガス吹き込みノズル」は示されていない。 c 甲2の金属製管の周囲の内張煉瓦は、金属製管と固着・接合されないどころか、内張煉瓦どうしも固着・接合関係にないことは、甲2の次の ような記載からも明らかである。すなわち、前記第2の3⑵イのとおり、甲2(第2頁左上欄)には羽口(金属製管)周囲に用いられている内張煉瓦について、「また容器の温度・・・が低下してくると内張レンガ間に目地開きが生じ、目地が開くと目地溶損を惹起する。」と記載され、この問題に対して、前記第2の3⑵エのとおり、甲2(第3頁左上欄)に は「このようにして得られた・・・煉瓦を羽口周囲に使用することによって・・・内張煉瓦間の目地溶損が少なく・・・」と記載されており、これらの記載は、羽口周囲の内張レンガの目地も固着・接合されている訳ではないことを示している。したがって、羽口を構成する金属製管周囲の内張煉瓦が金属製管に固着・接合されているわけがない。 d なお、一般に、炉体構成部材である「内張煉瓦」は重量が20ないし30kg程度の成形体であるのに対し、「MHP」は100kg以上の成形体であり、重量・サイズともに「内張煉瓦」よりも相当大型のものである。 (イ) 課題の共通性 甲2発明において焼成-有機物含浸を行う目的は、羽口周囲に配置される不焼成の内張耐火物(煉瓦)の問題点、すなわち前記第2の3⑵イ(甲2・2頁左上欄9行~18行)に記載された、クリープ変形による損傷、内張り煉瓦間の目地開き、溶鋼の摩耗作用および衝撃が加えられて剥離する現象を抑えるために、「曲げ強度を高めて耐食性を向上させる」ことにあ る。一方、甲1発明の課題は、溶融金属に接する耐火物とし 張り煉瓦間の目地開き、溶鋼の摩耗作用および衝撃が加えられて剥離する現象を抑えるために、「曲げ強度を高めて耐食性を向上させる」ことにあ る。一方、甲1発明の課題は、溶融金属に接する耐火物としての耐熱性、 耐用性が確保されるとともに、ガス吹込みノズルとしてのガス流量制御性、製作容易性が確保されることであり、少なくとも、甲2発明のように「羽口周囲に配置される内張煉瓦」としての問題点に鑑み「曲げ強度を高めて耐食性を向上させる」というような課題はない。 (ウ) 作用、機能の共通性 原告は、甲1発明のガス吹き込みノズルと甲2発明のガス吹き込みノズルは、溶融金属にガスを吹き込む点で、共通の作用、機能を有すると主張する。 しかし、前記のように、甲2に示されているのは、羽口(金属製管)周囲に配置される内張煉瓦であって「ガス吹き込みノズル」ではないから、 原告の主張は甲2の記載に反するものであり、失当である。 (エ) 小括a 甲1発明と甲2発明には、原告が主張するような技術分野、課題、作用・機能の共通性、関連性はなく、したがって、そのような共通性や関連性を前提とした甲1発明に甲2の技術的事項を適用する動機付けに 関する原告の主張自体にも妥当性はない。 b 原告は、甲3に示すように、炭素含有耐火物であるマグネシア-カーボン質煉瓦を還元雰囲気で焼成した後で、ピッチ含浸することが多いことは技術常識であるとし、この技術常識を鑑みても、甲1発明に甲2の技術的事項を適用する動機付けがある、と主張する。 しかし、甲3には、マグネシア-カーボン質煉瓦はほとんどが不焼成煉瓦として製品化されるが、「ごく一部の大型煉瓦」については還元焼成して製品化される場合がある(その場合、ピッチ含浸されることが多い)と記 し、甲3には、マグネシア-カーボン質煉瓦はほとんどが不焼成煉瓦として製品化されるが、「ごく一部の大型煉瓦」については還元焼成して製品化される場合がある(その場合、ピッチ含浸されることが多い)と記載されているのであり、レアケースとしてマグネシア-カーボン質煉瓦に還元焼成・ピッチ含浸することがあると述べているにすぎず、 この記載をもって「マグネシア-カーボン質煉瓦に還元焼成・ピッチ含 浸することは技術常識である」とする原告の主張は根拠がない。 c 甲2の「内張煉瓦」と甲1発明の「MHP」とでは、使用条件の苛酷さの度合いが大きく異なり、このため耐火物として要求される特性も異なることが挙げられる点は、技術常識である。甲2の「羽口周囲に配置される内張煉瓦」は、二重管羽口から「純酸素ガス+冷却用ガス」が吹 き込まれるために使用条件が極めて苛酷であり、「純酸素ガス+冷却用ガス」の吹き込みによって生じる高熱や温度勾配により損耗が特に生じやすい一方、甲1発明の「MHP」は専ら「不活性ガス等」の底吹きに使用されるものであり、甲2や乙1に示される羽口周辺耐火物(内張煉瓦)のような著しい損耗は生じない。 イ 「残炭率30%以上の有機物含浸」の実現容易性(ア) 本件発明1の「残炭率」と甲2の「炭化収率」との関係性「残炭率」や「炭化収率」は、JISで定義された技術用語でもなければ、定義が広く認知された技術用語でもないことから、明細書において明確な定義が必要なのであり、当業者が甲2の「炭化収率」の記載を見て も、本件発明の定義による「残炭率」を示すものと理解するとはいえない、とする本件審決の判断に誤りはない。(なお、甲8-1の段落【0051】には、本件発明の「残炭率」とは全く異なる定義(残炭率の測定方法)が記 明の定義による「残炭率」を示すものと理解するとはいえない、とする本件審決の判断に誤りはない。(なお、甲8-1の段落【0051】には、本件発明の「残炭率」とは全く異なる定義(残炭率の測定方法)が記載されているところである。)(イ) 本件発明1の「残炭率30%以上の有機物含浸」の容易想到性 原告は、甲2の「炭化収率25%以上の有機物含浸」を甲1発明に適用することにより、「残炭率30%以上の有機物含浸」とすることを当業者が容易に想到し得ると主張する。 しかし、甲2の「炭化収率」と本件発明の定義による「残炭率」の関係性は前記のとおりであり、原告の主張には理由がない。 なお、原告は、本件発明1における残炭率の下限値である「30%」に は臨界的意義がないと主張するが、本件明細書には「含浸する有機物の残炭率が30質量%未満では、残炭による耐火物組織強化の効果が小さく好ましくない。」(段落【0032】)と記載され、これを裏付ける実施例が記載されているから、臨界的意義があるかどうかは措くとしても、「残炭率30%以上」には明確な技術的意義が存在する。 ウ本件審決が示した甲1と甲2の組み合わせの阻害要因は存在しないこと(その1)に対し(ア) 原告は、「有機物の含浸材は、樹脂の消失により形成された貫通孔4に比べて、かなり微小な空隙である鱗状黒鉛の層間にまで浸入していくようなものであるから、貫通孔4が閉塞されないように含浸材を耐火物に 含浸させることは、当業者が通常の能力でなし得る処理である。」と主張するが、どのようにすれば、当業者が通常の能力で貫通孔4が閉塞されないように含浸材を耐火物に含浸させることができるのか、明らかにしていない。 (イ) 原告は、粘性の低い液体が毛細管現象によって自然に「 どのようにすれば、当業者が通常の能力で貫通孔4が閉塞されないように含浸材を耐火物に含浸させることができるのか、明らかにしていない。 (イ) 原告は、粘性の低い液体が毛細管現象によって自然に「貫通孔内壁の 細孔(微細な空隙)」内に浸み込んでいくようなイメージで上記主張をしているようであるが、コールタールピッチやフェノール樹脂等のような含浸材(液体)は粘性が高く、このような粘性が高い液体は、圧力をかけなければ細孔(微細な空隙)内に浸み込ませる(含浸させる)ことはできない。すなわち、含浸材は加圧してはじめて耐火物の細孔(微細な空隙) 内に浸透していくのであり、そのことは、耐火物に有機物を含浸させる含浸処理では、加圧下で有機物を含浸させる必要があること(本件明細書の段落【0034】の記載及び表1~表3の「含浸圧力」を参照)などからも明らかである。 (ウ) 仮に原告の主張どおりであるとすれば、有機物の含浸処理でも「加圧」 は必要でなく、含浸材(液体)に耐火物を浸漬するだけでよいことになる が、それでは有機物の含浸処理を行えないことは技術常識である。また、加圧下で含浸材を均質に浸透させるため、通常、加圧前に真空引きによる減圧が行われる。 したがって、甲1発明に甲2の技術的事項を適用することが、当業者にとって容易になし得るものとはいえないとする本件審決の判断に誤り はない。 (エ) 原告の行った実験(甲56、57)は、有機物含浸にあたって、当業者が当然に想定する手順を踏んでいない。例えば、本件明細書の段落【0034】にも記載されているとおり、耐火物の有機物含浸では「減圧→加圧」が必要であるが、原告は、「真空槽内に容器を入れ密閉した状態で0. 1気圧まで減圧し、その圧力にて5時間保持するこ 【0034】にも記載されているとおり、耐火物の有機物含浸では「減圧→加圧」が必要であるが、原告は、「真空槽内に容器を入れ密閉した状態で0. 1気圧まで減圧し、その圧力にて5時間保持することによりフェノール樹脂を含浸させた。」としており、「加圧」が行われなかったことは、原告も認めている。加圧しなければ含浸されないため、貫通孔に含浸材が入らず閉塞が起こらないのは当然である。 エ本件審決が示した甲1と甲2の組み合わせの阻害要因は存在しないこと (その2)に対し甲1発明の加熱処理は、耐火物に埋め込んだ樹脂丸棒を焼失させ、耐火物に貫通孔4を直接形成するために行うものであり、甲1には耐火物に樹脂丸棒を埋設しないで加熱処理する技術的思想は存在しない。つまり、全部が金属パイプの場合、加熱処理する理由がない。よって、甲1発明は、 本件審決が認定したとおりのものであり、本件審決の認定に誤りはない。 オ本件発明の「有利な効果」(ア) 本件発明1は、「(従来の認識とは異なり、)MHPの損傷形態は、稼働面近傍の部位における急激な温度勾配に起因した熱衝撃による損傷であり、当該部位に稼働面と平行な亀裂が生じ、それが伸展することによ るものである。」(本件明細書の段落【0010】及び【0011】)とい う課題(本発明で知見された新規な課題)に対して、耐火物を非酸化条件で焼成した後、有機物を含浸する方法がMHP用の金属細管が埋設された炭素含有耐火物において破壊エネルギーの向上に有効であって、特に、残炭率が30質量%以上の有機物を含浸させることにより、金属細管の周囲を形成する耐火物の破壊エネルギーを向上させ、MHPの稼働 面付近に発生する亀裂の伸展を抑制することができ、MHPの寿命を大きく向上させることが 上の有機物を含浸させることにより、金属細管の周囲を形成する耐火物の破壊エネルギーを向上させ、MHPの稼働 面付近に発生する亀裂の伸展を抑制することができ、MHPの寿命を大きく向上させることができるという作用効果を奏するものであり、本件審決は、甲1及び甲2にはそのような作用効果について記載も示唆もないから、本件発明1は、甲1発明及び甲2発明に対し、予測し得ない効果を奏するものであると認定したものである。 (イ) 原告は、甲9の記載を根拠として、破壊エネルギーを大きくすれば亀裂の伸展が抑制されることは技術常識であり、この技術常識を追認しただけであると主張している。しかし、甲9に記載されているのは、単に「耐熱衝撃性を表す指数としては・・・熱衝撃によるクラック発生とそれに伴う強度低下はあまり問題とせずに、クラックの成長・進展による 材料の崩壊や剥離を問題とする熱衝撃損傷抵抗R´´´´・・・であり」、「破壊エネルギーγが・・・熱衝撃損傷抵抗係数R´´´´ に含まれている物性値だからである」などとして、破壊エネルギーγは熱衝撃損傷抵抗R´´´´と比例する(86頁左欄、101頁左欄)ということだけであり、①MHP稼働面の近傍部位での亀裂の伸展を抑制することでMHPの寿命 が大きく向上すること、②MHP用耐火物について特定条件で有機物含浸を行うことにより破壊エネルギーが向上し、その結果、上記部位での亀裂の伸展が抑制されること、などの作用効果が甲9から示唆されることはない。 また、原告は、甲9を根拠に「破壊エネルギーを大きくすれば亀裂の 伸展が抑制される」ことは技術常識であると主張する。しかし、甲1、 甲2や甲9には、本件審決が認定した「MHP」に関する予測し得ない効果どころか、「有機物含浸 すれば亀裂の 伸展が抑制される」ことは技術常識であると主張する。しかし、甲1、 甲2や甲9には、本件審決が認定した「MHP」に関する予測し得ない効果どころか、「有機物含浸による破壊エネルギーの増大」という作用効果すら開示も示唆もない。 (ウ) 原告は、破壊エネルギーの大きさと、亀裂の伸展の抑制効果との関係について、実際には何ら実証・確認をしていないと主張するが、本件明 細書の段落【0010】ないし【0016】には、本件発明において、MHPの損傷形態の解明とその対策について調査・検討がされたことが記載され、段落【0017】には「以上のように、MHP用の金属細管が埋設された炭素含有耐火物について、非酸化焼成・有機物含浸技術を用いて金属細管の周囲を形成する耐火物の破壊エネルギーを向上させ ることで、MHPの稼働面付近に発生する亀裂の伸展を抑制することができ、MHPの寿命を大きく向上させることができること、さらに、MHPの製造過程における金属細管へ浸炭を抑制することで、より高寿命とすることが可能となることを見出した。」と記載されており、これらの記載の趣旨は、原告が指摘するような事実を実証・確認したというこ とに他ならない。 (エ) 原告は、本件発明1は不適な比較例3(有機物含浸ができず、破壊エネルギーが小さい比較例)を包含しているので、「そもそも審決が認定している作用効果(破壊エネルギー向上による亀裂伸展の抑制)は、請求項1に記載された発明が発揮できる作用効果ではない。」と主張してい る。しかし、後記4のとおり、本件発明1が「比較例3」を包含しているという原告の主張は誤解に基づいている。 (オ) 以上のとおり、本件発明1の有利な効果に関する原告の主張には根拠がない。 2 取消事由2( 後記4のとおり、本件発明1が「比較例3」を包含しているという原告の主張は誤解に基づいている。 (オ) 以上のとおり、本件発明1の有利な効果に関する原告の主張には根拠がない。 2 取消事由2(甲4発明に基づく本件発明1の進歩性判断の誤り)について 〔原告の主張〕 ⑴ 相違点3及び4の容易想到性の判断の誤り本件審決において甲4発明からの容易想到性を否定する根拠は、①「残炭率」と甲2の「炭化収率」が同義であり、かつ、測定方法が同じ(定義が同じ)であると認められないこと、②破壊エネルギーに関する作用効果について、甲4にも甲2にも記載されていないこと、の二つに大別されるが、これ らはいずれも誤りである。 ⑵ 相違点4の容易想到性ア甲4には、金属細管が埋設された炭素含有耐火物を焼成した後で、ピッチ含浸をすることが記載されており(2頁右下欄1行ないし3行)、甲2には、前記第2の3⑵エのとおり、非酸化焼成後の炭素含有耐火物に「炭化 収率25%以上」の含浸材を含浸すること、及び、その含浸材の中にコールタールピッチが含まれることが記載されている(2頁右下欄15行ないし3頁左上欄7行)。つまり、ガス吹き込み用の炭素含有耐火物の焼成後にピッチを含浸する点で、甲4と甲2は共通している。 したがって、甲4のピッチに加えて、甲2に記載の「炭化収率(残炭率) 25%以上」の有機物を含浸させることは、当業者が容易に想到し得ることである。 イそして、前記1と同様に、甲4発明に甲2の技術的事項を適用することにより、相違点4にかかる構成を有する本件発明1を、当業者は容易に想到することができたといえる。 ⑶ 本件審決は相違点3の容易想到性について判断していないが、以下のように容易想到である。 すなわ 相違点4にかかる構成を有する本件発明1を、当業者は容易に想到することができたといえる。 ⑶ 本件審決は相違点3の容易想到性について判断していないが、以下のように容易想到である。 すなわち、甲4には、金属細管が埋設された炭素含有耐火物を「焼成する」とは記載しているものの、それが非酸化焼成であるかは不明であるところ、甲2には、前記第2の3⑵ウのとおり、金属細管が埋設された炭素含有耐火 物(内張または金属製管に張り合せた)を「カーボンが酸化されない雰囲気 中」で焼成すること(2頁左下欄13行~16行)、すなわち、非酸化焼成することが開示されている。 したがって、甲4発明に甲2の技術的事項を適用することにより、相違点3にかかる構成を有する本件発明1を、当業者は容易に想到することができた。 加えて、甲3に示すまでもなく、炭素を含有する耐火物を加熱する場合に、炭素分の酸化は当然に想定される現象であり、製造工程など雰囲気を制御できる場合に、非酸化雰囲気で行うことは技術常識である。 ⑷ア被告らは、甲2は「内張煉瓦」に関するものであり、甲4のような「ガス吹き込みノズル用の耐火物」ではないという解釈と、甲4のガス吹き込み 管はMHPであるのに対し、甲2は二重管であるという点から、甲4と甲2では技術分野に関連性がないと主張する。 しかし、甲2においてガス吹き込み用の二重管の周囲に配され二重管を保持している煉瓦は、ガス吹き込みノズル用の耐火物に他ならない。加えて、甲54ではMHPを保持している耐火物も二重管を保持している耐火物も 「羽口煉瓦」と総称され、「4.2.1 底吹き用羽口用耐火物」という見出しの章で、一緒に解説されている。 したがって、甲4発明と甲2発明とは共通または関連する技術分野に属 している耐火物も 「羽口煉瓦」と総称され、「4.2.1 底吹き用羽口用耐火物」という見出しの章で、一緒に解説されている。 したがって、甲4発明と甲2発明とは共通または関連する技術分野に属している。 イまた、被告らは、「甲4発明と甲2の技術的事項とは、焼成後含浸の限度 で共通性がある。」とした上で、「この共通性の存在を前提としても、『耐火物の製造方法は通常の方法によるものとする。』という甲4の記載は、甲2の技術的事項の適用を示唆するものではなく、甲2の技術的事項を採用する動機とはならない。」と主張する。 しかし、甲4には、耐火物の組成をC5~30%残りはMgO、Al2O 3、CaO、Cr2O3、ZrO2の1種又は2種以上とすること、マルティ プルホールプラグ(MHP)の一例として「1.3mΦステンレス管を耐火物に埋め込んで一体成型すること」、「焼成後ピッチ含浸」したものを発明の対象に含めることが記載されている。そして、甲2には、二重管を囲むマグネシア-カーボン煉瓦について、焼成後に有機物含浸をすること、含浸材に「コールタールピッチ」が含まれることが記載されている。つまり、甲4と 甲2にはそれぞれ、発明を組み合わせられる程度の情報が開示されている。 したがって、甲4の「耐火物の製造方法は通常の方法によるものとする。」における「通常の方法」がどのような方法であるかを考慮する必要はなく、甲4発明に甲2の技術的事項を適用する動機付けはある。 ウ被告らは、甲4発明と甲2の技術的事項には課題の共通性もないと主張 する。 しかし、甲4には、「本発明において、ノズル耐火物の化学成分中Cを5~30%配合することの理由は、下限として5%未満では鋼、スラグの浸透が大となり溶損が大きく、また熱的スポー 主張 する。 しかし、甲4には、「本発明において、ノズル耐火物の化学成分中Cを5~30%配合することの理由は、下限として5%未満では鋼、スラグの浸透が大となり溶損が大きく、また熱的スポーリングによる損傷が大きいからであり、上限として30%を超えると強度面及び耐食性面で劣るからであ る。又、本発明において、ノズル耐火物の化学成分中MgO、Al2O3、CaO、Cr2O3、ZrO2の1種又は2種以上を含有させることの理由は耐火物の品質向上を図り、耐スポーリング性、耐摩耗性、強度等の向上のためである。」と記載されている(2頁左下欄3行ないし13行)。これらの記載から、甲4には、ノズル耐火物の溶損や熱的スポーリングによる損傷を 抑制し、強度及び耐食性を改善すべきこと、耐火物の品質向上を図り、耐スポーリング性、耐摩耗性、強度等を向上させるという課題がある。この課題は、「耐火物の耐食性を向上させる」という内容を含んでいる。一方、甲2は、課題の中に「金属管の周囲で金属管を保持している耐火物の損傷を抑制し、耐食性及び耐用性を向上させる」という点を含んでいる。 したがって、甲4発明と甲2発明は、ガス吹き込み用の金属管を保持して いる耐火物の損傷を抑制し、耐食性を高めるという課題を共通して有している。 〔被告らの主張〕⑴ 相違点4について、以下のとおり容易想到とはいえない。 ア甲4発明に甲2の技術的事項を適用する動機付けの有無について 本件審決は、「甲4発明に甲2に記載の技術的事項を適用する動機付けを有する余地はある」(本件審決42頁)とし、適用の動機付けを否定はしていない。しかし、甲4発明が「MHP」に関するものであるのに対して、甲2の技術的事項が金属製管(二重管)からなる羽口周辺の「内張 を有する余地はある」(本件審決42頁)とし、適用の動機付けを否定はしていない。しかし、甲4発明が「MHP」に関するものであるのに対して、甲2の技術的事項が金属製管(二重管)からなる羽口周辺の「内張煉瓦」に関するものである点は、甲1発明と甲2の技術的事項との関係と同じで ある。したがって、前記1で述べたのと同様に、甲4発明と甲2の技術的事項には技術分野、課題、作用・機能の共通性、関連性はなく、そのような共通性や関連性を前提とした甲4発明に甲2の技術的事項を適用する動機付けは存在しない。 もっとも、甲4には、「上記の配合物を主成分とする不焼成品又は焼成 品及び焼成後ピッチ含浸したものを本発明の対象としており、この場合の耐火物の製造方法は通常の方法によるものとする。」との記載がある。したがって、甲4発明と甲2の技術的事項とは、焼成後含浸の限度で共通性がある。 しかし、この共通性の存在を前提としても、「耐火物の製造方法は通常 の方法によるものとする。」という甲4の記載は、甲2の技術的事項の適用を示唆するものではなく、甲2の技術的事項を採用する動機とはならない。 甲4に記載された発明の目的は、従来の二重管羽口の問題点を解消することであるが、甲4の記載から推論される課題は、同じくMHPを対象とする甲1発明と同様、「溶融金属に接する耐火物としての耐熱性、耐用性が 確保されるとともに、ガス吹込みノズルとしてのガス流量制御性、製作容 易性が確保される」というものであると理解され、少なくとも、甲2発明のように「(羽口周囲に配置される)内張煉瓦」の問題点に鑑み「曲げ強度を高めて耐食性を向上させる」という課題はない。したがって、甲4発明と甲2の技術的事項には課題の共通性もない。 イ仮に甲4発明に甲2の技術的 口周囲に配置される)内張煉瓦」の問題点に鑑み「曲げ強度を高めて耐食性を向上させる」という課題はない。したがって、甲4発明と甲2の技術的事項には課題の共通性もない。 イ仮に甲4発明に甲2の技術的事項を適用する動機付けがあるとした場合 の本件発明1の容易想到性(甲4発明に甲2の技術的事項を適用すると本件発明1に到達するか)について前記1で述べたのと同様であり、甲4発明に甲2の技術的事項を適用しても、非酸化焼成した後に「炭素含有耐火物に、残炭率が30質量%以上の有機物を含浸させる含浸処理を施す」ことが、当業者にとって容易にな し得ることであるということはできない、とした本件審決の判断に誤りはない。 原告は、ガス吹き込み用の炭素含有耐火物の焼成後にピッチを含浸する点で甲4と甲2は共通しており、甲4のピッチに加えて、甲2に記載の炭化収率(残炭率)25%以上の有機物を含浸させることは当業者が容易に 想到し得る旨を主張する。 しかし、甲2に示されているのは、羽口(金属製管)周囲に配置される内張煉瓦であって「ガス吹き込み用耐火物」ではなく、原告の主張は甲2の記載に反するものであり失当である。 ウ本件発明1の「有利な効果」について 甲4には「不焼成品、又は焼成品、及び焼成後ピッチ含浸したものを発明の対象とする」という記載はあるが、ピッチ含浸に関する記載はそれのみであって、ピッチ含浸の具体的な内容はもちろんのこと、ピッチ含浸の目的や効果も全く不明である。したがって、前記1で述べたと同様の理由で、本件発明1は、甲4発明及び甲2の技術的事項に対し、予測し得ない 効果を奏するものと認められるとした本件審決の判断に誤りはない。 ⑵ 相違点3の容易想到性についての原告の主張には理由がない。 2の技術的事項に対し、予測し得ない 効果を奏するものと認められるとした本件審決の判断に誤りはない。 ⑵ 相違点3の容易想到性についての原告の主張には理由がない。 3 取消事由3(甲1発明に基づく本件発明2ないし7の進歩性判断の誤り)について〔原告の主張〕本件審決は、請求項1の従属項であることをもって、本件発明2ないし7の 進歩性を否定している。しかし、本件発明1の進歩性は否定されるから、本件審決の判断はその前提を欠くところ、この判断における誤りは、本件審決の結論に影響を及ぼす。 〔被告らの主張〕本件審決の判断に誤りはなく、原告の主張には理由がない。 4 取消事由4(本件発明1についてのサポート要件の判断の誤り)について〔原告の主張〕⑴ 本件発明1が亀裂の進展を抑制できるとの判断ア本件審決は、本件発明の課題として、【発明が解決しようとする課題】に記載された「ガス吹き込みノズルの耐用性を向上させる(段落【0008】)」 から更に踏み込んで、「破壊エネルギーの向上により亀裂の進展を抑制すること」までを課題として捉えている。 イ本件明細書の段落【0015】の記載によれば、破壊エネルギーが増大するためには、「耐火物の内部まで有機物が浸透する」ことが必要である。 また、本件明細書の段落【0025】の記載に接した当業者は、「焼成温度 400℃以上」は好ましい範囲などではなく、有機物の含浸が不十分となることなく破壊エネルギーを増大させられるために必要な条件であると理解する。 本件発明1は、焼成温度の条件について何ら規定していないから、有機物を含浸させられない範囲、すなわち、破壊エネルギーを増大させること ができない範囲を包含しているから、発明 理解する。 本件発明1は、焼成温度の条件について何ら規定していないから、有機物を含浸させられない範囲、すなわち、破壊エネルギーを増大させること ができない範囲を包含しているから、発明の詳細な説明の記載により当該 発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲を超えている。 ウ被告らは、焼成温度が400℃未満(例えば390℃)であっても十分な焼成時間(例えば15時間以上)をとれば、破壊エネルギーが120J/㎡以上になることは、当業者であれば容易に推論できることであると主張する。 しかし、被告らは審判段階において、「比較例3のように非酸化焼成温度を300℃とした場合であっても、十分な焼成時間があれば、破壊エネルギーが120J/㎡以上になることを示す証拠を提示することはできない」と回答している(甲36、2頁3行~5行)。 ⑵ 本件発明1が不適な比較例3を包含していること 本件審決は、バインダーの種類や具体的な組成を請求項で特定しないことが、サポート要件の判断においては有利に働くと判断して、ただちに、本件発明が不適な実施例を含むとまではいうことができないと判断している。 しかし、焼成温度も焼成時間も何ら特定していない本件発明1は、有機 物の含浸ができず破壊エネルギーが小さい値であった比較例3について設定された条件を包含しているから、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により当該発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲を超えている。 比較例3の耐火物であっても、有機物を含浸させる含浸処理を施した 場合に、有機物の含浸量がゼロであったはずがない。開気孔を有する耐火物に含浸処理を行えば、程度が低く非常に不十分であっても、少しは有機物が含浸する。したがって、「有機物を含浸 浸処理を施した 場合に、有機物の含浸量がゼロであったはずがない。開気孔を有する耐火物に含浸処理を行えば、程度が低く非常に不十分であっても、少しは有機物が含浸する。したがって、「有機物を含浸させる含浸処理を施す」という請求項1の文言に頼って、不適な例である比較例3が請求項1の発明の範囲から排除されていると解釈することは不可能である。 ⑶ 本件発明1の「焼成」に関する判断 ア本件審決は、辞書の「焼成」に関する「原料を高熱で焼いて性質に変化を生じさせること。粘土を窯かまで加熱して石質にするなど。」との説明を引用し、本件特許の請求項1が「焼成」という用語を使用していることをもって、加熱乾燥しただけの不焼成品は本件発明1の範囲に含まれないと判断している。 しかし、「焼成」という用語は、かなり高い温度で進行する「焼結」と同義として使用されることも(甲3、51、52)、「乾燥」を含む意味として使われること(甲50)もある語であり、かなり広い温度範囲における加熱処理を含む語であるから、「低い温度条件で加熱処理をすることや、高い温度条件での加熱処理は含まないと解される」とする本件審決の判 断は誤りである。 イ本件明細書の段落【0024】の記載を踏まえると、「不焼成品のまま」では有機物を含浸させることは困難なのであるから、本件発明1で課題を解決するためには、本件発明1の範囲に「不焼成品のまま」の耐火物が包含されていてはならないが、上記アのとおり、本件発明1の範囲には、 「不焼成品のまま」の耐火物が包含されているから、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により当該発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲を超えている。 請求項1には、耐火物がバインダーを含むとの特定はないため、「非酸 包含されているから、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により当該発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲を超えている。 請求項1には、耐火物がバインダーを含むとの特定はないため、「非酸化焼成」が耐火物に含まれるバインダーを熱分解させることを目的とし て行うとの被告らの主張は、請求項に基づく主張ではない。また、請求項の用語の解釈にあたり明細書の記載を参照するとしても、本件審決がいうように、バインダーの種類や組成が特定されていなければ(本件審決60頁)、その熱分解のための加熱条件は定まらないから、焼成の目的がバインダーを熱分解させる目的であることをもって、請求項1の発明の 範囲を解釈することはできない。 ⑷ 本件発明1の「非酸化焼成」に関する判断本件発明1の「非酸化焼成」という用語の意義について、本件明細書には、段落【0024】において「非酸化焼成では、耐火物全体を熱処理することで、バインダーなどに由来する炭素成分が結合材として均質に生成するため、実機稼働時の受熱により耐火物組織が変化する不焼成品に対し て均質な耐火物組織を得つつ、有機物を容易に含浸させることが可能となる」と説明されている。 この記載に接した当業者は、実機稼働時の受熱により耐火物組織が変化するのが不焼成品で、均質な耐火物組織を有し実機稼働時の受熱により耐火物組織が変化しないのが非酸化焼成品であると、本件特許の出願人は区 別しているのだと理解する。つまり、本件発明1における非酸化焼成の意義は「実機稼働時の受熱により耐火物組織が変化する不焼成品に対して均質な耐火物組織を得られるまで行う加熱処理」であると、当業者は理解する。 しかし、請求項1に従属する請求項2で規定している焼成温度の下限値 である400℃で 組織が変化する不焼成品に対して均質な耐火物組織を得られるまで行う加熱処理」であると、当業者は理解する。 しかし、請求項1に従属する請求項2で規定している焼成温度の下限値 である400℃では、「実機稼働時の受熱により耐火物組織が変化する不焼成品に対して均質な耐火物組織を得る」ことはできず、本件審決が認定している課題(破壊エネルギーを向上させて亀裂の伸展を抑制する)を解決することができないから、それより発明の範囲が広い発明(上位概念の発明)である本件発明1が、課題を解決できないことは明らかである。 したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により当該発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲を超えている。 ⑸ 特許庁の審査実務における判断甲53-1ないし甲53-6に示すとおり、焼成条件について規定していない独立請求項に、サポート要件違反を理由とする拒絶理由が通知され、 そのうちの一部は不適な「比較例」を包含するとの指摘がされているもの であり、いずれも「好ましい」焼成温度の範囲を特定して特許されている。 本件審決の判断は、これら特許庁の審査におけるサポート要件の判断から乖離しており、妥当ではない。 〔被告らの主張〕⑴ 本件発明1が焼成温度の条件について何ら規定していない点 原告が主張の根拠として挙げる明細書の段落【0025】に記載されている焼成温度は、必須の条件としてではなく、あくまで「好ましい条件」として記載されており、焼成温度が400℃未満、1500℃超の場合の問題も、あくまで「(生じる)恐れがある」ということであり、この記載に接した当業者が何ゆえに「必要な条件」と理解するのか、その理由を原告 は明らかにしていないし、また容易に推論することもできない。 また まで「(生じる)恐れがある」ということであり、この記載に接した当業者が何ゆえに「必要な条件」と理解するのか、その理由を原告 は明らかにしていないし、また容易に推論することもできない。 また、本件明細書の段落【0026】には、「非酸化焼成の焼成時間(保持時間)は、1~20時間とすることが好ましい。」と記載されており、この焼成時間は、請求項2に記載されている。しかし、この焼成時間も、本件発明1の必須要件ではない。 非酸化焼成によって、有機物の含浸が可能な程度にバインダーの熱分解を行う条件は、過度な試行錯誤を要せずに、当業者が適宜見出すことができるものである。つまり、焼成温度が400℃未満であっても、焼成時間を適宜の長さにすることによってバインダーの熱分解を行うこともできるし、焼成時間が1時間未満であっても、焼成温度を適宜の温度にするこ とによってバインダーの熱分解を行うこともできる。したがって、請求項2に記載された焼成温度及び焼成時間の範囲は、請求項1に記載された発明の必須要件ではない。本件明細書の段落【0025】ないし【0026】の説明および実施例の結果、さらには技術常識からして、適正な焼成条件は温度と時間の相対的な関係で決まり、本件発明1において焼成温度40 0ないし1500℃が絶対的に必要な温度範囲でないことは明らかであ る。 ⑵ 比較例3について比較例3が比較例とされている理由は、本件明細書の段落【0051】に記載されているとおり、有機物の含浸ができなかったためである。請求項1には、「含浸させる含浸処理」が記載されているから、含浸処理ができない ような条件は本件発明1から除かれる。したがって、請求項1に記載された発明に含まれているにもかかわらず、課題が解決できない発明は存 「含浸させる含浸処理」が記載されているから、含浸処理ができない ような条件は本件発明1から除かれる。したがって、請求項1に記載された発明に含まれているにもかかわらず、課題が解決できない発明は存在しない。本件発明1が不適な実施例を含むという原告の主張には理由がなく、失当である。 ⑶ 本件発明1の「焼成」について 甲50(98~99頁)に記載されているのは、「焼成過程で起こる変化」の一つとして水分の蒸発や解放があるということであり、どうすれば、この記載から「焼成」という用語は「乾燥」を含む意味にも使われるという解釈になるのか不明である。 本件明細書の段落【0024】、【0025】などに記載されるように、本 件発明1の「非酸化焼成」は、耐火物の気孔率を高めて耐火物全体に有機物を含浸させるために、耐火物に含まれるバインダーを熱分解させることを目的として行うものであり、したがって、審決が認定した「焼成」の意味に誤りはなく、また、審決の判断にも誤りはない。 ⑷ 本件発明1の「非酸化焼成」に関する判断 本件明細書の段落【0024】の記載は「不焼成煉瓦」と「焼成煉瓦」との一般的な違い(これ自体は広く知られた技術事項である)を述べたものにすぎず、原告が主張するようなものではない。前述したように、本件発明1の「非酸化焼成」は、耐火物の気孔率を高めて耐火物全体に有機物を含浸させるために、耐火物に含まれるバインダーを熱分解させることを目的として 行う加熱処理であり、原告が主張するような「実機稼働時の受熱により耐火 物組織が変化する不焼成品に対して均質な耐火物組織を得られるまで行う加熱処理」などではなく、したがって、そのような誤った定義を前提とする原告の主張は全く根拠がなく、失当である。 ⑸ 物組織が変化する不焼成品に対して均質な耐火物組織を得られるまで行う加熱処理」などではなく、したがって、そのような誤った定義を前提とする原告の主張は全く根拠がなく、失当である。 ⑸ 特許庁の審査実務における判断本件と原告が挙げる例とは事案が異なり、また、それぞれの発明において 焼成の意義や他の発明特定事項との関係も異なるので、同一に論じることはできないし、特許庁の審査段階では、拒絶理由通知による審査官の判断をあえて争うことなく、補正を行って特許化を図る場合もあり、審査段階で補正がされて特許されたとしても、この点から議論することには意味がない。 5 取消事由5(本件発明2についてのサポート要件の判断の誤り)について 〔原告の主張〕⑴ 本件発明2の焼成温度に関する判断前記4のとおり、本件審決の「加熱乾燥しただけの不焼成品はそもそも本件発明に含まれない」との「焼成」という用語に頼った判断は誤りである。 本件発明2で規定している非酸化焼成の温度400ないし1500℃は、 実機稼働時の受熱(1000℃を超えている)により耐火物組織が容易に変化する温度範囲を含んでいる。 本件発明2における焼成温度は、破壊エネルギーの向上という課題解決のために必要な有機物含浸ができるという「非酸化焼成の意義」から外れているものであり、本件発明2は、発明の詳細な説明の記載により当該発明の 課題を解決できると当業者が認識できる範囲を外れており、また、発明の詳細な説明に基づき出願時の技術常識に照らし当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を外れているものである。 ⑵ 本件明細書の段落【0024】の記載被告らが主張で挙げる本件明細書の段落【0024】には、「実機稼働時 の受熱により耐火物組 を解決できると認識できる範囲を外れているものである。 ⑵ 本件明細書の段落【0024】の記載被告らが主張で挙げる本件明細書の段落【0024】には、「実機稼働時 の受熱により耐火物組織が変化する不焼成品に対して均質な耐火物組織を 得つつ、有機物を容易に含浸させることが可能となる。」と記載されている。 したがって、この段落に記載されているのは、「不焼成煉瓦」と「焼成煉瓦」との一般的な違いではなく、有機物を含浸させられるように非酸化焼成された耐火物と、不焼成煉瓦との比較である。 つまり、この段落での「均質な耐火物組織」は、有機物を含浸する前の状 態の耐火物組織のことを指している。そして、「均質な」耐火物組織とは、「実機稼働時の受熱により耐火物組織が変化する不焼成品に対して」均質な耐火物組織である。したがって、実機稼働時の受熱により耐火物組織が変化するような温度条件での焼成は、本件発明2における非酸化焼成には含まれない。 また、低い温度で焼成しても実機稼働時の受熱によって徐々に耐火物組織が均一となるから、耐火物として問題なく使用できるとの被告らの主張は、有機物の含浸について説明をしている段落【0024】の記載とは関係がない主張である。 〔被告らの主張〕 ⑴ 本件発明2の焼成温度に関する判断一般に、炭素含有耐火物は、「不焼成れんが」と呼ばれるものであり、不焼成で使用されるものである。この不焼成れんがは、バインダー(通常、バインダーとしてはフェノール樹脂が用いられる)を添加して混練した耐火物原料を成形し、この成形品を乾燥させることにより製造され、この乾燥工程で バインダーが重合硬化することによって強度を発揮する。そして、この不焼成れんがは、実機稼働時の受熱によってバインダー(フ 料を成形し、この成形品を乾燥させることにより製造され、この乾燥工程で バインダーが重合硬化することによって強度を発揮する。そして、この不焼成れんがは、実機稼働時の受熱によってバインダー(フェノール樹脂)の残炭による炭素結合が生じ、耐火物組織が強化されることになる。すなわち、「不焼成れんが」は、実機稼働時の受熱によって耐火物組織が変化することにより耐火物組織が強化されることを前提とした耐火物れんがであり、これ は技術常識である。したがって、比較的低い焼成温度を経て製造された耐火 物れんがは、焼成時にバインダーの残炭による炭素結合が十分に生じなくても、不焼成れんがほどではないにしても、実機稼働時の受熱によって耐火物組織が変化することにより耐火物組織が強化されるものであり、耐火物として問題なく使用できる。 本件明細書の段落【0024】において「さらに、非酸化焼成では、耐火 物全体を熱処理することで、バインダーなどに由来する炭素成分が結合材として均質に生成するため、実機稼働時の受熱により耐火物組織が変化する不焼成品に対して均質な耐火物組織を得つつ・・ことが可能となる。」と記載したのは、上述したように実機稼働時の受熱により耐火物組織が変化することで耐火物組織が強化される「不焼成れんが」は、受熱により実機稼働面側か ら順に耐火物組織が変化するので、その分、耐火物組織(バインダーの残炭による炭素結合により強化される耐火物組織)が不均質になりやすいのに較べて、「焼成煉瓦」は製造時に焼成することでより均質な耐火物組織が得られる、という「不焼成煉瓦」と「焼成煉瓦」との一般的な違い(これ自体は広く知られた技術的事項である)を述べたものにすぎない。したがって、本件 発明の非酸化焼成の意義が「実機稼働時の受熱 が得られる、という「不焼成煉瓦」と「焼成煉瓦」との一般的な違い(これ自体は広く知られた技術的事項である)を述べたものにすぎない。したがって、本件 発明の非酸化焼成の意義が「実機稼働時の受熱により耐火物組織が変化する不焼成品に対して均質な耐火物組織を得られるまで行う加熱処理」である、というような原告の上記主張は、何ら根拠がなく誤りである。 ⑵ 原告の主張に対する反論原告は、「本件特許の請求項2に規定している焼成温度の範囲内にある4 00℃で焼成した場合、溶融金属を受けた時点で溶融金属の温度と焼成温度との差は、600℃以上もある。これでは、耐火物の組織は、容易に、かなりの程度で変化してしまうことは、当業者であれば容易に理解する。したがって、本件特許の請求項2で規定している非酸化焼成の温度400ないし1500℃は、実機稼働時の受熱により耐火物組織が容易に変化する温度範囲 を含んでいる。」と述べているが、仮に、400℃で焼成された耐火物が稼動 時に1000℃以上の溶融金属から受熱し、その耐火物組織が変化したとしても、不焼成れんがほどではないとしても、受熱による耐火物組織の変化によって組織強化がされるだけの話であり、何の問題もない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(甲1発明に基づく本件発明1の進歩性判断の誤り)について ⑴ 本件審決の甲1発明の認定について本件審決の甲1発明の認定のうち、「貰通孔4」及び「貫通孔4」とある部分は、いずれも甲1における【符号の説明】及び【図3】との対応関係に鑑みると、それぞれ「貫通孔8」の誤記であり、甲1の明細書の段落【0014】に、樹脂の熱分解による「消失」を示唆する記載があることにも照らす と、「焼失」の語については、「消失」の誤記 関係に鑑みると、それぞれ「貫通孔8」の誤記であり、甲1の明細書の段落【0014】に、樹脂の熱分解による「消失」を示唆する記載があることにも照らす と、「焼失」の語については、「消失」の誤記であると認められる。 そうすると、本件審決が認定した甲1発明の内容について、「貰通孔4」及び「貫通孔4」とある部分はいずれも「貫通孔8」と、「焼失」とある部分は「消失」とそれぞれ読み替えるのが相当である。読み替えた後の甲1発明の内容は、以下のとおりである。 [甲1発明の内容]「マグネシア・カーボン質耐火物にガス吹込み用のSUSパイプ3が複数本埋設されるとともに貫通孔8が複数形成された、N2ガスを吹き込むガス吹き込み用マグネシア・カーボン質耐火物の製造方法において、 SUSパイプ3及びメタクリル酸メチル樹脂製丸棒が埋設されたマグネシア・カーボン質耐火物杯土を、コークス粒に埋設して25℃/時間の昇温速度で750℃×5時間加熱処理して、メタクリル酸メチル樹脂製丸棒を消失して得た貫通孔8とSUSパイプ3を備えたマグネシア・カーボン質耐火物を得る、 ガス吹き込み用マグネシア・カーボン質耐火物の製造方法。」 その上で、原告の主張する取消事由1につき判断する。 ⑵ 相違点2に係る特定事項の容易想到性についてア甲2の技術的事項本件審決は、甲2の技術的事項につき前記第2の3⑴のとおり認定したところ、この点について当事者間に争いがない。 イ気体吹込羽口の意義甲2の技術的事項のうち「気体吹込羽口」については、前記第2の3⑵ア(甲2・1頁左下欄下から3行~右下欄末行)に示されるように、「吹錬時は内管から酸素、外管から炭化水素あるいはアルゴン窒素等の不活性ガスを溶融金属中に吹込」 体吹込羽口」については、前記第2の3⑵ア(甲2・1頁左下欄下から3行~右下欄末行)に示されるように、「吹錬時は内管から酸素、外管から炭化水素あるいはアルゴン窒素等の不活性ガスを溶融金属中に吹込」むとの使い方が想定されており、同記載の 「このように羽口周囲の内張耐火物には吹錬中は酸素と溶鋼の接触によって生じるホットスポットによる高熱と、炭化水素、不活性ガスによる冷却作用によって生じる激しい温度勾配あるいは非吹錬時の不活性ガスの吹込による熱衝撃が加えられ、亀裂の発生や剥離による損傷を生起する。」との、煉瓦に極めて過酷な使用条件を与えるものとなっている。 そして、前記第2の3⑵イ(甲2・2頁左上欄7行~右上欄3行)の記載から明らかなように、羽口周囲の内張耐火物は、上記のような過酷な使用条件で使用される際、昇温時の熱膨脹を吸収するようクリープ変形が起こる一方、温度が低下してくると内張煉瓦間に目地開きが生じ、目地が開くと目地溶損を惹起するとの問題があったために、上記アのと おり、非酸化焼成した後、炭化収率25%以上の有機物を気孔中に含浸させてマグネシア-カーボン煉瓦を製造するようにして、クリープ変形を防ぎ、曲げ強さ及び耐食性を高めることとした旨記載されていることが理解できる。 ウ甲1発明と甲2の技術的事項とを組み合わせる動機付けについて 前記イのとおり、甲2発明の気体吹込羽口の周囲に使用するマグネシ ア-カーボン煉瓦は、酸素吹込みによって生じるホットスポットによる高熱や不活性ガス吹込みによる冷却作用により、激しい温度勾配や熱衝撃が加えられるという過酷な環境下の内張煉瓦として使用される前提において、目地損傷原因の目地開きを生じせしめるクリープ変形を防ぐことによって、損傷防止が図られるものとな により、激しい温度勾配や熱衝撃が加えられるという過酷な環境下の内張煉瓦として使用される前提において、目地損傷原因の目地開きを生じせしめるクリープ変形を防ぐことによって、損傷防止が図られるものとなっている。 これに対し、甲1発明のN2ガスを吹き込むガス吹き込み用マグネシア・カーボン質耐火物は、前記第2の2⑶アの[甲1発明の内容]記載のとおり、それ自体が気体を吹き込む部材となっている点において、甲2発明の内張煉瓦とは態様が異なる上に、甲2発明の気体吹込羽口のようにホットスポットによる高熱を生じさせる酸素を吹き込むことは想定さ れていないものということができる。 そうすると、温度勾配や熱衝撃の点において、甲2発明の煉瓦のほうが甲1発明の耐火物よりも損傷しやすい過酷な環境にさらされる蓋然性が高いということができ、そのような甲2発明の煉瓦では目地開きを生じせしめるクリープ変形を防ぐことが特性として重要であるとしても、 それとは使用態様や使用環境の異なる甲1発明の耐火物にも、当然同じ特性が求められるものとはいえないというべきである。 そうすると、当業者であっても、甲1発明と甲2の技術的事項とを組み合わせて、相違点2に係る特定事項を得る動機付けがあるとはいえないということができる。 なお、この点につき、甲3には、前記第2の4記載のとおり、「ごく一部の大型煉瓦などは800℃から1200℃程度の還元雰囲気下で焼成し」、「焼成後に消化防止、低気孔率化のためピッチ含浸されることが多い。」と記載されているのであって、その記載内容が相違点2に係る特定事項を得る動機付けについての認定を左右しないというべきである。 エしたがって、被告が主張する阻害要因について判断するまでもなく、本 件発明1の構成は容 違点2に係る特定事項を得る動機付けについての認定を左右しないというべきである。 エしたがって、被告が主張する阻害要因について判断するまでもなく、本 件発明1の構成は容易に想到することができない。 ⑶ 効果の顕著性についてア発明の効果が予測できない顕著なものであるかについては、当該発明の特許要件判断の基準日当時、当該発明の構成が奏するものとして当業者が予測することのできなかったものか否か、当該構成から当業者が予測する ことのできた範囲の効果を超える顕著なものであるか否かという観点から検討する必要がある(最高裁判所平成30年(行ヒ)第69号令和元年8月27日第三小法廷判決・集民262号51頁参照)。もっとも、当該発明の構成のみから予測できない顕著な効果が認められるか否かを判断することは困難であるから、当該発明の構成に近い構成を有するものとして 選択された引用発明の奏する効果や技術水準において達成されていた同種の効果を参酌することは許されるというべきである。 イこれを本件について検討するに、相違点2に係る特定事項は、本件明細書に記載されたところである、「金属細管が埋設された炭素含有耐火物の破壊エネルギーが高く、ノズル稼働面付近における急激な温度勾配によっ て発生する亀裂の伸展が抑制されるガス吹き込みノズル用耐火物を製造することができ、このガス吹き込みノズル用耐火物を用いることにより、ガス吹き込みノズルの寿命を大きく向上させることができる。」(段落【0021】)との本件発明1の作用効果をもたらすものである。 そして、仮に甲1発明と甲2の技術的事項とを組み合わせる何らかの動 機付けがあったとしても、相違点2に係る特定事項によってもたらされる本件発明1の上記効果は、甲1ないし すものである。 そして、仮に甲1発明と甲2の技術的事項とを組み合わせる何らかの動 機付けがあったとしても、相違点2に係る特定事項によってもたらされる本件発明1の上記効果は、甲1ないし甲3には記載も示唆もされていないところであるから、本件発明1の出願当時、本件発明1の構成が奏するものとして当業者が予測することのできなかったものであり、かつ当該構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものであ るというべきであるから、本件発明の進歩性を肯定するに十分な顕著な効 果ということができる。 ウその他、相違点2に係る特定事項により本件発明1の上記効果がもたらされることが本件特許の出願前の当業者にとって技術常識であったと認めるに足りる証拠はない。 ⑷ 小括 そうすると、本件発明1は、甲1発明及び甲2の技術的事項、又は、甲1発明並びに甲2及び甲3の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるということはできない。 ⑸ 原告の主張に対する判断原告は、甲2では、酸素が吹き込まれていない状況下(非吹錬時)で、不 活性ガスが吹き込まれる際の耐火物の損傷についても問題点として言及しており、甲2と甲1は共に、不活性ガスの吹き込みに起因する耐火物の損傷について課題に含めているから、甲2の技術的事項を甲1発明に適用する動機付けはある旨の主張をする。 しかし、上記のとおり甲2発明のクリープ変形防止の技術的思想を甲1 発明に適用する動機は見いだせないというべきである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ⑹ 取消事由1についての結論以上のとおり、甲1発明に基づく審決の進歩性欠如の判断に誤りはなく、取消事由1には理由がない。 。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ⑹ 取消事由1についての結論以上のとおり、甲1発明に基づく審決の進歩性欠如の判断に誤りはなく、取消事由1には理由がない。 2 取消事由2(甲4発明に基づく本件発明1の進歩性判断の誤り)について⑴ 進歩性欠如との主張につきア甲4発明の内容及び本件発明1との相違点について(ア) 甲4発明の内容が、前記第2の2⑶イのとおりであることは、当事者間に争いがない。 (イ) その上で、本件発明1と甲4発明とを対比した際の相違点も、前記第 2の2⑶イのとおりに認定することができる。 イ相違点4に係る特定事項の容易想到性について前記1⑵イで検討したとおり、甲2記載の気体吹込羽口の周囲に使用するマグネシア-カーボン煉瓦は、酸素吹込みによって生じるホットスポットによる高熱や不活性ガス吹込みによる冷却作用により、激しい温度勾配 や熱衝撃が加えられるという過酷な環境下の内張煉瓦として使用される前提において、目地損傷原因の目地開きを生じせしめるクリープ変形を防ぐことによって、損傷防止が図られるものとなっている。 これに対し、甲4発明のCO2、N2、Arを吹込ガスとする細管を多数有する一体成形された耐火物は、前記第2の2⑶イの甲4発明の内容記載 のとおり、それ自体が気体を吹き込む部材となっている点において甲2記載の内張煉瓦と態様が異なる上に、甲2の気体吹込羽口のようにホットスポットによる高熱を生じさせる酸素を吹き込むことは全く想定されていないものである。 そうすると、温度勾配や熱衝撃の点において、甲2記載の煉瓦のほうが 甲4発明の耐火物よりも損傷しやすい過酷な環境にさらされる蓋然性は高いといえ、そのような甲2記載の煉瓦では目地開き である。 そうすると、温度勾配や熱衝撃の点において、甲2記載の煉瓦のほうが 甲4発明の耐火物よりも損傷しやすい過酷な環境にさらされる蓋然性は高いといえ、そのような甲2記載の煉瓦では目地開きを生じせしめるクリープ変形を防ぐことが特性として重要であるとしても、それとは使用態様や使用環境の異なる甲4発明の耐火物にも、当然同じ特性が求められるものとはいえないというべきである。 そうすると、当業者であっても、甲4発明と甲2の技術的事項とを組み合わせて、相違点4に係る特定事項を得る動機付けがあるとはいえない。 ウ効果の顕著性について相違点4に係る特定事項は、前記1⑶アと同様に、本件明細書に記載された「金属細管が埋設された炭素含有耐火物の破壊エネルギーが高く、ノ ズル稼働面付近における急激な温度勾配によって発生する亀裂の伸展が 抑制されるガス吹き込みノズル用耐火物を製造することができ、このガス吹き込みノズル用耐火物を用いることにより、ガス吹き込みノズルの寿命を大きく向上させることができる。」(段落【0021】)との本件発明1の効果をもたらすものである。 そして、仮に甲4発明と甲2の技術的事項とを組み合わせる何らかの動 機付けがあったとしても、相違点4に係る特定事項によってもたらされる本件発明1の上記効果は、甲1及び甲2には記載も示唆もされないのであって、本件発明1の出願当時、本件発明1の構成が奏するものとして当業者が予測することのできなかったものであり、かつ当該構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものであるというべき であるから、進歩性を肯定するに十分な顕著な効果ということができる。 ⑵ 取消事由2についての結論以上の検討によれば、本件発明1は、甲4発明及び甲2 効果を超える顕著なものであるというべき であるから、進歩性を肯定するに十分な顕著な効果ということができる。 ⑵ 取消事由2についての結論以上の検討によれば、本件発明1は、甲4発明及び甲2の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるということはできない。 したがって、本件審決の進歩性欠如の判断に誤りはなく、原告の主張する取消事由2には理由がない。 3 取消事由3(甲1発明に基づく本件発明2ないし7の進歩性判断の誤り)について本件発明2ないし7については、本件発明1を引用し、本件発明1の発明 特定事項を全て含むものであるから、上記1及び2で本件発明1について検討したのと同様に、甲1発明と甲2の技術的事項とを組み合わせようとする前提において、当業者が容易に発明することができたものであるということはできない。 そうすると、原告の主張する取消事由3については理由がないというべき である。 4 取消事由4(本件発明1についてのサポート要件の判断の誤り)について⑴ 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲の ものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。 ⑵ 本件明細書の発明の詳細な説明の記載は別紙1のとおりであるところ、そこには、本件発明の課題等に関し、以下の記載がある。 「以上のよう るか否かを検討して判断すべきものと解される。 ⑵ 本件明細書の発明の詳細な説明の記載は別紙1のとおりであるところ、そこには、本件発明の課題等に関し、以下の記載がある。 「以上のように、炭素含有耐火物に金属細管を埋設するタイプのガス吹きノズル(MHPなど)では、耐用性を高めるために耐火物材質や構造について種々検討がなされているが、十分な改善効果が得られていないのが現状である。 したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、 炭素含有耐火物にガス吹込み用の金属細管が1本以上埋設されたガス吹き込みノズル用耐火物の製造方法であって、ガス吹き込みノズルの耐用性を向上させることができるガス吹き込みノズル用耐火物の製造方法を提供することにある。」(段落【0008】)「本発明の製造方法によれば、金属細管が埋設された炭素含有耐火物の 破壊エネルギーが高く、ノズル稼働面付近における急激な温度勾配によって発生する亀裂の伸展が抑制されるガス吹き込みノズル用耐火物を製造することができ、このガス吹き込みノズル用耐火物を用いることにより、ガス吹き込みノズルの寿命を大きく向上させることができる。 さらに、非酸化焼成条件(焼成温度、焼成時間)、非酸化焼成後の金 属細管の炭素含有量などを最適化することにより、金属細管への浸炭を抑えることで金属細管の融点の低下を防止することができ、ガス吹き込みノズルの寿命をさらに向上させることができる。」(段落【0021】)これらの記載によれば、本件発明の課題は、稼働面近傍において亀裂の 進展を抑制できるという意味において、ガス吹き込みノズルの耐用性を向上させることができるガス吹き込みノズル用耐火物の製造方法を提供することであると理解 件発明の課題は、稼働面近傍において亀裂の 進展を抑制できるという意味において、ガス吹き込みノズルの耐用性を向上させることができるガス吹き込みノズル用耐火物の製造方法を提供することであると理解できる。 ⑶ 本件明細書の発明の詳細な説明には、課題を解決するための手段及び発明を実施するための形態に関し、以下の記載がある(表については別紙1を参 照)。 ア課題を解決するための手段「ここで、炭素含有耐火物を非酸化焼成・有機物含浸することにより破壊エネルギーが増大する理由は必ずしも明確ではないが、以下のように考えられる。 炭素含有耐火物(煉瓦)は、一般にフェノール樹脂などをバインダーとして製造される。フェノール樹脂は、高温で熱分解され、一部が残炭し、炭素含有耐火物の結合材として機能する。しかし、その結合の程度は大きくなく、亀裂が発生すると容易に伸展するため破壊エネルギーはあまり大きくない。これに対して、非酸化焼成した後に有機物を含浸さ せた場合、有機物が耐火物の内部まで均等に拡散して浸透し、耐火物内のマトリックス部分や鱗状黒鉛の層間などに有機物が入り込む。これらの有機物は、ノズル使用時に加熱されることによって分解し、炭素結合が形成される。その結果、鱗状黒鉛などの炭素材料と耐火性骨材の間に緩い結合が生じ、結合の程度が高まる。その結果、亀裂が発生しても容 易に伸展しにくくなる。加えて、緩い結合が生じたために適度な応力に よって上述した有機物由来の炭素結合が引き剥がされ、炭素長繊維を添加した場合と同様に煉瓦組織間の架橋として働く、所謂、引き抜き性の向上効果が得られ、その結果として破壊エネルギーが増大する。」(段落【0015】)イ発明を実施するための形態 「本発 加した場合と同様に煉瓦組織間の架橋として働く、所謂、引き抜き性の向上効果が得られ、その結果として破壊エネルギーが増大する。」(段落【0015】)イ発明を実施するための形態 「本発明では、炭素含有耐火物を非酸化焼成した後、有機物の含浸処理を施すが、非酸化焼成しないと有機物の含浸ができない。基本的に炭素含有耐火物(煉瓦)は焼成工程を経ないで得られる不焼成耐火物であり、バインダーの硬化に伴い耐火物の気孔率は数%と非常に低く、不焼成品のままでは有機物を耐火物全体に含浸させることは困難である。そのた め、有機物を含浸させるためには、事前に非酸化焼成が必要になる。さらに、非酸化焼成では、耐火物全体を熱処理することで、バインダーなどに由来する炭素成分が結合材として均質に生成するため、実機稼働時の受熱により耐火物組織が変化する不焼成品に対して均質な耐火物組織を得つつ、有機物を容易に含浸させることが可能となる。」(段落【0 024】)「本発明において炭素含有耐火物の焼成を非酸化焼成とするのは、炭素含有耐火物が本来有する耐熱スポーリング性や耐スラグ浸透性などの特性が損なわれないようにするためである。すなわち、炭素含有耐火物が含有する炭素が著しく減少するような焼成条件、例えば、酸化性の雰 囲気下で高温・長時間加熱するような条件で焼成すると、炭素含有耐火物中の炭素が酸化消失し、炭素含有耐火物が有する耐熱スポーリング性や耐スラグ浸透性などの特性が失われてしまう。そこで、上記特性などが失われないように、非酸化性の条件で焼成するのである。」(段落【0027】) 「以上のような非酸化焼成工程を経た炭素含有耐火物に対して、有機物 を含浸させる含浸処理を施す。 有機物の含浸処理におい るのである。」(段落【0027】) 「以上のような非酸化焼成工程を経た炭素含有耐火物に対して、有機物 を含浸させる含浸処理を施す。 有機物の含浸処理において、含浸する有機物の残炭率は30質量%以上とする。この有機物の残炭率は、JIS K6910(フェノール樹脂試験方法)に記載の固定炭素測定法に基づいて測定されるものである。 含浸する有機物の残炭率が30質量%未満では、残炭による耐火物組織 強化の効果が小さく好ましくない。この観点から、より好ましい残炭率は35質量%以上である。」(段落【0032】)これらの記載を参酌すると、本件明細書の発明の詳細な説明には、不焼成品のままでは有機物を耐火物全体に含浸させることは困難な炭素含有耐火物に対し、①耐熱スポーリング性や耐スラグ浸透性などの特性が損なわれ ないよう、炭素の酸化消失を避けるべく非酸化焼成を行うことで、バインダーが熱分解して残炭するなどの炭素成分が結合材として均質に生成し、かつ、有機物が耐火物の内部まで均等に拡散して浸透しやすい状態にしておいた上で、②残炭率が30質量%以上の有機物を含浸させる含浸処理を施すガス吹き込みノズル用耐火物の製造方法が開示されている。 そして、前記段落【0015】の説明によると、①を経て②のとおり含浸させた有機物は、ノズル使用時に加熱されることによって分解し、炭素結合が形成される結果、鱗状黒鉛などの炭素材料と耐火性骨材の間に緩い結合が生じ、結合の程度が高まることになる。そうすると、亀裂が発生しても容易に伸展しにくくなることに加えて、緩い結合が生じたために適度な応力 によって上述した有機物由来の炭素結合が引き剥がされ、炭素長繊維を添加した場合と同様に煉瓦組織間の架橋として働く、いわゆる引き抜 伸展しにくくなることに加えて、緩い結合が生じたために適度な応力 によって上述した有機物由来の炭素結合が引き剥がされ、炭素長繊維を添加した場合と同様に煉瓦組織間の架橋として働く、いわゆる引き抜き性の向上効果が得られ、その結果として破壊エネルギーが増大するために上記⑵の課題の解決を図ることができるものと理解される。 ⑷ その上で、前記①の「非酸化焼成」の「焼成」の技術的意味について検討 する。 ア本件明細書の発明の詳細な説明の記載からは、この焼成は、上記⑶のとおり、バインダーが熱分解して残炭するなどの炭素成分が結合材として均質に生成し、かつ、有機物が耐火物の内部まで均等に拡散して浸透できる状態とするために行われるものと理解される。 イそして、本件特許の出願前に発行された甲51(高橋清ほか監修、「工 業材料大辞典」、株式会社工業調査会、平成9年10月20日発行、555頁)には、以下の記載がある。 「焼成・・・目的とする材料の構成粉末を高温で焼き固めることをいう。 一般にセラミックス、窯業製品を作る際の焼結と同意味、もしくは製造の一工程の焼結処理の意味で使う。」 同じく本件特許の出願前に発行された甲52(東京理科大学理工学辞典編集委員会編、「理工学辞典」、株式会社日刊工業新聞社、平成8年3月28日発行、692頁)にも、以下の記載がある。 「焼成・・・各種セラミックス製品を製造する工程において、成形体を高温で熱処理する操作のことである。」 ウ上記のとおりの用語の説明にもあるように、「焼成」は、主にセラミックス製品を製造する際に、目的とする材料の構成粉末を高温で焼き固める意で使われることは、技術常識ともいえる。 そうすると、本件発明1の「非酸化焼成」の「焼成」とは、上記アの目的を は、主にセラミックス製品を製造する際に、目的とする材料の構成粉末を高温で焼き固める意で使われることは、技術常識ともいえる。 そうすると、本件発明1の「非酸化焼成」の「焼成」とは、上記アの目的を果たすために行われる、上記イのような耐火物組織構造を変える熱 処理を意味するものとして理解されるということができる。 ⑸ 以上によれば、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の出願時における技術常識に照らし、本件発明1は、当業者が上記⑵の課題を十分に解決できると認識できる範囲のものであり、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。 したがって、本件審決のサポート要件の判断に誤りはなく、原告の主張す る取消事由4は理由がないというべきである。 ⑹ 原告の主張についてア原告は、前記第3の4⑴のとおり、焼成温度を規定していない本件発明1は課題を解決できる範囲を超えると主張する。 しかし、本件発明1の「非酸化焼成」について、その「焼成」の技術的意 味は上記⑷で検討したとおりであり、そのような前提で「非酸化焼成」が行われる本件発明1は、焼成温度を特定せずとも、発明の課題を解決できるものと解される。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は、前記第3の4⑵のとおり、本件発明1が不適な比較例3を包含 すると主張する。 (ア) 比較例3については、本件明細書の段落【0054】の【表3】に実験結果の特性等が載っているところ、本件明細書の段落【0051】には、「比較例3は、非酸化焼成温度を300℃と低くしたものであるが、非酸化焼成によるバインダーの熱分解が十分に起こらないため有機物の含 浸ができず、破壊エネルギーは小さい値である。」との説明がされ 「比較例3は、非酸化焼成温度を300℃と低くしたものであるが、非酸化焼成によるバインダーの熱分解が十分に起こらないため有機物の含 浸ができず、破壊エネルギーは小さい値である。」との説明がされている。 (イ) 本件発明1は、含浸処理により有機物を含浸させることが前提となるものであり、前記【表3】にあるとおり非酸化焼成条件の焼成温度が300℃と低い比較例3においては、段落【0051】の記載のとおり、含浸処理を行うための十分な前提を欠き、本件発明1の上記⑵、⑶の課題解 決に十分に資するものではないとして、比較例とされているものと理解できる。前記【表3】の記載によると、金属細管が埋設された炭素含有耐火物に、非酸化焼成及び有機物含浸処理をともに行わなかった比較例1よりも、焼成温度を300℃と低くして非酸化焼成を行い、かつ、有機物の含浸処理の実施をした比較例3において、破壊エネルギーが向上する ことが示されていて、多少なりとも本件発明1の課題の解決が図られる ことを示すものとして、ともに比較例として挙げられているものと解することができる。 そうすると、本件特許の発明の詳細な説明には、当業者において、特許請求の範囲に記載された発明の技術課題が解決されるものと認識し得る程度の記載があるということができ、サポート要件に違反するもので あるとはいえない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は、前記第3の4⑶アのとおり、本件発明1は加熱乾燥しただけの不焼成品を含むからサポート要件を欠く旨を主張する。 本件発明1の「非酸化焼成」について、その「焼成」の技術的意味は前記 ⑷で検討したとおりであり、本件明細書には、そのような前提で「非酸化焼成」が行われることが記載されているという 張する。 本件発明1の「非酸化焼成」について、その「焼成」の技術的意味は前記 ⑷で検討したとおりであり、本件明細書には、そのような前提で「非酸化焼成」が行われることが記載されているということができ、加熱乾燥しただけの不焼成品を含むものとは解されない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 エ原告は、前記第3の4⑶イのとおり、本件発明1の非酸化焼成はバイ ンダーの熱分解と解釈することはできないと主張する。 本件明細書の段落【0015】には、「炭素含有耐火物(煉瓦)は、一般にフェノール樹脂などをバインダーとして製造される。」と記載されているところ、バインダーが用いられない炭素含有耐火物が本件特許の出願時に一般に知られていたといえることを示す的確な証拠は提出されて いない。そうすると、本件発明1の炭素含有耐火物がバインダーを含むとの前提において、本件発明1の「非酸化焼成」が前記⑷で述べた技術的意味を持つと解することができ、サポート要件に反するところはない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 オ原告は、前記第3の4⑷のとおり、本件発明1は、実機稼働時の受熱 により耐火物組織が変化しうる焼成温度の非酸化焼成を含むために課題 を解決できる範囲を超える旨を主張する。 しかし、前記第2の5のとおり、転炉は溶融金属を受けた時点で1000℃を越え、吹錬が終了する(吹止め)までに、1600℃に達していることが甲7の図6-11に示されていることからしても、本件発明1の「非酸化焼成」は、後の実機稼働時の受熱によってさらに耐火物組織が 変化をするような焼成温度範囲を含み得るとはいえるものの、本件発明1により破壊エネルギーが向上するとの本件発明1による効果が奏 の「非酸化焼成」は、後の実機稼働時の受熱によってさらに耐火物組織が 変化をするような焼成温度範囲を含み得るとはいえるものの、本件発明1により破壊エネルギーが向上するとの本件発明1による効果が奏され、前記⑵の課題を解決できるといえることに変わりはない。この点につき、実機稼働時の受熱によって、上記課題が解決できなくなることを示す的確な証拠も提出されていない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 カ原告は、前記第3の4⑸のとおり、本件審決の判断は特許庁の審査におけるサポート要件の判断から乖離しており妥当ではないと主張する。 しかし、特許庁における審査はそれぞれに事例に応じてされるものであるところ、原告の挙げる特許庁の審査事例は本件とは事案が異なるも のであるから、これらと同一に論じることはできないものというべきである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ⑺ 取消事由4についての結論以上の検討によれば、本件審決の本件発明1のサポート要件についての 判断に誤りはなく、原告の主張する取消事由4は理由がない。 5 取消事由5(本件発明2についてのサポート要件の判断の誤り)について原告は、取消事由5として、本件審決の「加熱乾燥しただけの不焼成品はそもそも本件発明に含まれない」とする判断は誤りである上、本件発明2は、実機稼働時の受熱により耐火物組織が変化しうる焼成温度の非酸化焼成を含 むために課題解決できる範囲を超える旨を主張する。 しかし、本件各発明における「焼成」の意義及び加熱乾燥しただけの不焼成品が本件各発明に含まれるか否かの点については、前記4⑷及び4⑹ウで既に検討したとおりである。 そして、前記4(6)オのとおり、転 かし、本件各発明における「焼成」の意義及び加熱乾燥しただけの不焼成品が本件各発明に含まれるか否かの点については、前記4⑷及び4⑹ウで既に検討したとおりである。 そして、前記4(6)オのとおり、転炉は溶融金属を受けた時点で1000℃を越え、吹錬が終了する(吹止め)までに1600℃に達していることが甲 7の図6-11に示されていることからしても、本件発明2のように、焼成温度が「400~1500℃」と特定されるような場合も含めて、本件各発明の「非酸化焼成」は、後の実機稼働時の受熱によってさらに耐火物組織が変化するような焼成温度範囲を含み得るとはいえるものの、本件各発明により破壊エネルギーが向上するとの本件各発明による効果が奏され、上記4⑵ の課題を解決できるといえることに変わりはないというべきである。実機稼働時の受熱によって上記課題が解決できなくなることを示す的確な証拠も提出されていない。 したがって、原告の主張する取消事由5についても理由がない。 6 まとめ 以上のとおりであり、原告が主張する取消事由はいずれも理由がないから、原告の請求は棄却されるべきである。 よって、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東海林保 裁判官今井弘晃 裁判官水野正則 (別紙1 特許公報、別紙2 審決書写し省略) 水野正則 (別紙1特許公報、別紙2審決書写し省略)

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