【DRY-RUN】○ 主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求めた裁判 一 請求の趣旨 1 原告が被告に対して雇用契約(任用関係)上の権利を有することを確認する。
○ 主文原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨 1 原告が被告に対して雇用契約(任用関係)上の権利を有することを確認する。 2 被告は、原告に対し、昭和五五年二月二一日以降一か月金一四万三三〇〇円の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 二請求の趣旨に対する答弁主文と同旨。 第二当事者の主張一請求原因 1 本件失職通知に至る経緯について原告は、昭和四七年四月一日付けで被告教育委員会に臨時職員として採用され、兵庫県立図書館設立準備室に勤務し、同年九月一六日付けで事務職員として本採用され、昭和四九年一〇月一日以降は、兵庫県立図書館(以下、「県立図書館」という。)の開館にともない同図書館資料課に勤務していた。 2 本件失職通知についてところが、被告は、原告に対し、昭和五五年二月二〇日、被告教育委員会名をもつて、原告が昭和五二年五月一〇日付けで失職した旨の通知(以下、「本件失職通知」という。)書を交付し、右通知の翌日から原告の就労申し出を拒否して賃金を支払わず、原告と被告との間における雇用契約(任用関係)上の地位を争つている。 3 原告は、昭和五四年一〇月一日の給与改定により、行政職四等級八号俸、月額金一四万三三〇〇円の給与の支給を受け、昭和五五年二月二〇日まで右同額の給与の支給を受けていた。 4 よつて、原告は、被告に対し、雇用契約(任用関係)上の権利を有することの確認及び本件失職通知のされた日の翌日である昭和五五年二月二一日以降一か月金一四万三三〇〇円の割合による給与の支払いを求める。 二請求原因に対する認否請求原因第1ないし第3項の各事実は認める。 三被告の主張 1 原告は、昭和四四年当時龍谷大学文学部学生であつたが、同年九月二〇日、い 円の割合による給与の支払いを求める。 二請求原因に対する認否請求原因第1ないし第3項の各事実は認める。 三被告の主張 1 原告は、昭和四四年当時龍谷大学文学部学生であつたが、同年九月二〇日、いわゆる「京大カルチエ闘争」に参加」て往来妨害、兇器準備集合、公務執行妨害の各罪で起訴され、昭和五二年四月二五日、京都地方裁判所において懲役一〇月、執行猶予二年の判決を受け、同年五月一〇日石刑は確定し(以下、「本件失職事由」という。)、その後、昭和五四年五月一〇日、右刑の執行猶予期間が満了した。 2 原告は、右の事実に基づいて、地方公務員法(以下、「地公法」という。)二八条四項、一六条二号により、昭和五二年五月一〇日当然に失職した。そこで、被告は、原告に対し、本件失職通知をしたものである(このように、原告が失職したものとして扱つている被告の措置を以下、「本件失職措置」という。)。 3 従つて、原告の本訴請求は、いずれも理由がない。 四被告の主張に対する認否 1 被告の主張第1項の事実は認める。なお、原告が本件事件で起訴されたのは、昭和四四年一一月一日である。 2 被告の主張第2項及び第3項の各主張は争う。 五原告の反論 1 自動失職制度の違憲性について被告が本件失職措置の根拠とする地公法二八条四項、一六条二号の定める自動失職制度は、次に述べる理由により、違憲である。 (一) 自動失職制度と憲法一四条一項(1) 地会法一六条二号は、「禁こ以上の刑に処せられ、その執行を終るまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」を地方公務員の欠格事由の一つとして掲げるとともに、同法二八条四項では、地方公務貝が、同法「第一六条各号(第三号を除く。)の一に該当するに至つたときは、条例に特別の定がある場合を除く外、その職を失う。」旨規定し、禁錮以上の刑に処せられた者 とともに、同法二八条四項では、地方公務貝が、同法「第一六条各号(第三号を除く。)の一に該当するに至つたときは、条例に特別の定がある場合を除く外、その職を失う。」旨規定し、禁錮以上の刑に処せられた者に対して一律に自動失職制度を定めている。 しかし、これらの規定は、当該犯罪が非破廉恥罪かどうか、公務の信用を傷つける行為かどうかの具体的区別を行わずに一律に規定し、右形式的要件に該当する事実の存在のみによつて、本人の弁明等一切の聴問手続を経ずに生存権の基盤である職を自動的に奪うものであるから、これは、前記各条項の立法目的である公務に対する信用を危殆ならしめる者を雇用しないという正当な目的を達成する手段としては余りにも広きに失するものであり、一般の私企業労働者と比較して、雇用関係における非合理的かつ不平等な差別として憲法一四条一項に反する。そこで、以下においてその理由を詳述する。 (2) 自動失職制度の沿革について現行法の検討に先立つて、まず、こうした自動失職制度の沿革について検討し、あわせて、旧憲法下の公務員(官吏)についても考察することとする。 (イ) 旧憲法下の公務貝(官吏)について旧憲法下の官吏は、官吏服務紀律(明治二〇年七月三〇日勅令第三九号)第一条がその理念を示すように「天皇陛下及天皇陛下ノ政府二対シ忠順勤勉ヲ主トシ法律命令二従ヒ各職務ヲ尽ス可」きものとされ、こうした官吏の勤務関係は、「単なる経済上の労務給付の関係に非ずして、同時に倫理的な関係なり。官吏は私を去りて公に奉じ、一身を捧げて国家に忠実なるべき義務を負う。此の点に於て官吏関係は私法上の雇庸関係と区別せらる」(美濃部達吉、行政法概要・上・二三〇頁)と説明されていた。そして、忠実の義務とは「官吏が其の職務に関し、又は其の公の行動につき天皇の大御心に副ふべき義務である。職務に尽 法上の雇庸関係と区別せらる」(美濃部達吉、行政法概要・上・二三〇頁)と説明されていた。そして、忠実の義務とは「官吏が其の職務に関し、又は其の公の行動につき天皇の大御心に副ふべき義務である。職務に尽すの義務のように現職官吏のみが負うべき義務でなく、荀くも官吏たる身分を有する者全般の負担すべきものに属する」(杉村章三郎、官吏法・二〇頁)とし、品位保持の義務の根拠は、「官吏がその品位を汚すべき行為をなせば自己の職務の執行をなすに当り誠実を欠くに至るべきはその必然の結果なるべく、又この結果は併せて政府の威厳を損じその利益を害することになる」(同、三〇頁)と説明されている。 このように、旧憲法下の官吏は、天皇とその政府に対し、無定量の勤務に服すべき義務を負担し、人民とは身分的に不対等な関係に立ち、天皇とその政府の権威を担うべき特権者であり、給与についても、勤務に対する対価としてではなく、生活及び品位保持の費用として支給されていた。 (ロ) 自動失職制度の沿革について禁錮以上の刑に処せられた官吏の自動失職制度は、こうした特権者としての官吏の性格をふまえて設けられたものであり、その起源は、明治一三年七片一七日太政官布告第三六号「刑法」(ボアソナード刑法、以下、「旧刑法」という。)三一ないし三三条である。すなわち、同法三三条は、「禁錮ニ処セラレタル者ハ別ニ宣告ヲ用ヒス現在ノ官職ヲ失ヒ及ヒ其刑期間公権ヲ行フ事ヲ停止ス」と規定していた。その後、旧刑法が廃止された後も、刑法施行法三七条は、「他ノ法律中旧刑法第三十一条又ハ第三十三条ノ規定アル為メ人ノ資格ニ関シ別段ノ規定ヲ設ケサリシ場合ニ付テハ旧刑法第三十一条及ヒ第三十三条ノ規定ハ人ノ資格二関シ刑法施行前ト同一ノ効カヲ有ス」と規定し、右効力を維持した。そして、執行猶予を受けた者も、刑に「処セラレタル者」との解 定ヲ設ケサリシ場合ニ付テハ旧刑法第三十一条及ヒ第三十三条ノ規定ハ人ノ資格二関シ刑法施行前ト同一ノ効カヲ有ス」と規定し、右効力を維持した。そして、執行猶予を受けた者も、刑に「処セラレタル者」との解釈がとられ、前記規定が適用された(明治四二年七月一五日内閣書記官長より陸軍次官宛回答、刑の執行猶予の言渡を受けたる者の失官に関する件)。 ところで、官吏には文官、武官の別があり、天皇との親近性の近い順に親任官、それ以外の勅任官、奏任官、判任官の官等を有する官吏、官等を有せず官等に等しい待遇を受ける官吏(地方待遇職員等)及び官等も有せず官等に等し)い待遇も受けない官吏に分類されていたか、右規定はこれらの官吏すべてに適用されていた。 他方、公吏についでは、地方公共団体によつて選任されるため官吏として右規定が適用されることはなく、失職規定としては、「市町村公民に限つて担任すべき職務に在る吏員がその選挙権につき失権原因を生じ之を喪失したとき」との規定があつた。 また、雇員は、傭人と異なり俸給を得て公務に奉ずる者とされ、実質的意義における官吏に包含する解釈がとられていたが、任用、分限では官吏と異なる扱いであつた(以上、杉村章三郎、前掲書参照)。 以上の制度が戦後、一般職国家公務員及び一般職地方公務員の分限にとり入れられ、本件自動失職制度となつた。 (3) 差別の合理性判断の基準について本件自動失職制度は、前述のとおり、有罪判決を受けた公務貝について、一般の私企業労働者と比較して不利益な取扱いをするものであるから、右取扱いの合理性の有無が検討されなければならないが、その前に、こうした差別の合理性判断に関するわが国及びアメリカ合衆国(以下、「合衆国」ともいう。)の判例及び学説についで検討することとする。 (イ) 相対的平等について憲法一四条一項の平等保護条項 その前に、こうした差別の合理性判断に関するわが国及びアメリカ合衆国(以下、「合衆国」ともいう。)の判例及び学説についで検討することとする。 (イ) 相対的平等について憲法一四条一項の平等保護条項がいかなる意味での平等を要求しているかについて、講学上は、絶対的平等説、制限的絶対平等説及び相対的平等説の三説が存在するが、通説判例は、相対的平等説に立脚しているものと考えられる(たとえば、最高裁判所昭和三九年五月二七日大法廷判決、民集第一八巻第四号六七六頁は、憲法一四条一項について、「国民に対し絶対的な平等を保障したものでなく、差別すべき合理的理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、事柄の性質に即応して合理的と認められる差別的取扱をすることは、なんら」右法条の否定するところではない旨判示している。)。 ところで、相対的平等保護の要求とは、一言にしていえば、各人の事実上の事情と法律上の処遇との間の比率の均一を要求することである。つまり、それは、平等な前提に対する平等な処遇の保障であり、前提が平等であるというのは、事実上の事情が等しいことを意味する。しかし、人間の社会生活において完全に同等な事実はほとんど存在しないのであるから、事実上の差異が法的取扱いとの関連で無視できない重要性を有するものでなければ法的差別の根拠とすることはできない。そこで、いかなる場合に法的に重要な事実上の差異が存するといいうるかが問題となるが、本件においては、禁錮以上の有罪判決を受け、かつ、その執行を猶予された者について、雇用関係上の地位に関し、他の私企業労働者に比較して、不利益な取扱いをすることが、合理的かどうかが論じられなければならない。なお、私企業労働者において、禁錮以上の有罪判決により懲戒解雇される場合や、また、就業規則上懲戒解雇事由として 働者に比較して、不利益な取扱いをすることが、合理的かどうかが論じられなければならない。なお、私企業労働者において、禁錮以上の有罪判決により懲戒解雇される場合や、また、就業規則上懲戒解雇事由として規定される場合がありうること、あるいは公務員において、懲戒解雇事由として分限の対象となる可能性を否定するものではないが、右はいずれも、その当該犯罪の具体的内容との関連、企業の規模、業種、本人の地位と職種との関連等を検討のうえ、なされるものであり、公務員の場合も同様に公務員の適格性判断における具体的関連性において、懲戒処分等の当否が具体的に検討され、法的にも合理的当否が審査されうる可能性をもつているものである。それに対し、地公法一六条二号及び二八条四項においては、一切の具体的諸事情を捨象して、また、一切の手続的保護を与える事なく、自動的に公務員たる地位を剥奪してその生活権を危殆ならしめるという苛酷な不利益が何ゆえに合理的存在理由を有するのかという問題である。 (ロ) 立法事実及び立法目的達成に「必要やむをえない手段」について相対的平等保護においてはその前提たる事実との関連においで、合理的差別かどうかが検討されなければならないが、その合理性の具体的内容は、形式的平等から配分的正義へという歴史的論理的志向性を有しているものである。 法はその立法に際して、当該法の適用対象たる事実として立法時におけるある特定の事実を前提とし、右事実に対しで、立法目的達成に必要な規制を行うものである。 地公法の前記各法条は、その淵源を旧刑法に求められる事は既に述べたとおりであるが、当時法が前提とした事実は、明治天皇制絶対主義の時代においで、天皇の官吏として、人民に対する支配者たる官吏、特に、天皇制絶対主義を支えるために必要不可欠な威厳を保持し人民に君臨する官僚機構の保持に 、当時法が前提とした事実は、明治天皇制絶対主義の時代においで、天皇の官吏として、人民に対する支配者たる官吏、特に、天皇制絶対主義を支えるために必要不可欠な威厳を保持し人民に君臨する官僚機構の保持に必要な資格要件という事実である。しかし、戦後においては、公務貝の地位が根本的に転換され、公務員は、もはや人民に優越する特権者ではなくなつた。 しかも、現在、公務は社会の全分野に広がり、公務員の職種は広範多岐にわたり、その数も膨大なものとなつている。こうした実情のもとでは、これら膨大な数の公務員全体に対し一律に規定しているところの右資格要件は、その対象となる事実との関連でその合理性が再審査されなければならない。 そして、右審査に当たつては、公務の信用性の保護という立法目的に照らし、分限規定ではなく、資格要件として規定しなければ信用性が保持でさないのかどうか、右目的のために、憲法上の平等保護条項により当該公務員が保護されなくとも合理的であつて、必要やむをえない規定であるのかどうかが審査されなければならない。 (ハ) アメリカ法において達成された成果について合衆国においては、憲法修正第一四条の平等保護条項に関し、一九六〇年までは、差別の合理性を支える事実が立法時において存在していたと推定されるとしたうえで、立法が差別的であることを主張する者は、それが合理的根拠に基づくものでないことを立証する責任があるとされていた。 ところが、一九六〇年代に至つて、立法者が絶対的平等の要請に従わないのは、必要やむをえない場合に限られるという必要性の基準が確立され、(1)法律による差別は正当な政府目的の達成にとり必要やむをえない手段でなければならず、(2)差別の実際的効果においても精密な平等を要求し、(3)裁判所は州の差別立法の正当性について厳密な審査を行い、(4)差別 る差別は正当な政府目的の達成にとり必要やむをえない手段でなければならず、(2)差別の実際的効果においても精密な平等を要求し、(3)裁判所は州の差別立法の正当性について厳密な審査を行い、(4)差別の必要性を立証する責任は州にあるとされるに至つた。そして、どのような差別的取扱いが許されるかという点については、三つの定式化が行われている。すなわち、(1) 差別(classification)は合理的(reasonable)ないし説得的(plausible)なものでなければならない。 (2) ある種の差別は疑わしき差別(suspectclassification)であることが多いが、こうした場合には、政府の側で差別を設けている強度の必要的理由(compellingreasons)を主張、立証しなければならない。 (3) 基本的権利(fundamentalinterest)、特に雇用等に関する法的利害関係(leqalinterest)が含まれている場合には、政府はその必要的理由を主張、立証しなければならない。 とされている。そして、以上のアメリカ法における前進は、次に述べるように一九七四年アイオワ州最高裁判所(以下、「アイオワ州最高裁」という。)における画期的判決を生みだした。 (ニ) アメリカ法における画期的判決について一九七四年アイオワ州最高裁は、アイオワ州法において、重罪の有罪判決を受けた者を一律に公務員の消極的資格要件に定めた規定に対し、違憲判決を下した(Buttsu.Nichols、381F.supp.573(S.D.IOWA1974))。同判決は、州が重罪で有罪宣告を受けたことをある特定の職に必要とされる職務遂行能力の欠如を示すものとして、当該有罪宣告を受けた者のその職への就任を拒むことは条理上許されているとしても、アイ 74))。同判決は、州が重罪で有罪宣告を受けたことをある特定の職に必要とされる職務遂行能力の欠如を示すものとして、当該有罪宣告を受けた者のその職への就任を拒むことは条理上許されているとしても、アイオワ州の制限は、こうした考慮を払うことなく、一律に制限を置くものであり、この規定を置かないことによつて州のいかなる利益が損われるかについての合理的な関連性が乏しいとして、「法律上達成することが望ましいとされた目的とそれを達成するに当たつて採られる手段・方法との間に明確な関連性がないとするならば、この法律は平等保護条項に違反する。」と判示した。同州法では、軽罪で有罪宣告を受けた者は公務員への就任を妨げられることはないが、軽罪でも例えばdishonesty(詐欺)の方が重罪のうち、例えばdesertion(遺棄)よりも公務の信用を損う危険性が低いとするのは極めて疑わしく、このようなことから、裁判所は、重罪か軽罪かという現在ではほとんど手続上の意味をもたない事実によつて一律に制限を設けるのではなく、個々の犯罪ごとに制限の実質的理由が必要であるとしたわけである。また、同判決は、特に公務からある一定の人々を排除するためには、明瞭な国家目的達成のための必要性とのより正確な関連性を要求し、公務一般ではなく、当該公務と有罪宣告を受けた者が犯した犯罪との具体的関連性において、公務の信用性が犯されるかどうかを審査して、州当局に対して、公務信用が犯されるという具体的立証を要求した。更に、同判決は、公務中で最高と最低(hiqhestandlowestofmunicipaljobs)については資格要件となつておらず、中間の公務員のみに制限が課せられている点の不合理性にも言及しており、日本において特別職より厳しい制限が一般職に課せられているという不合理性につい paljobs)については資格要件となつておらず、中間の公務員のみに制限が課せられている点の不合理性にも言及しており、日本において特別職より厳しい制限が一般職に課せられているという不合理性についても多くの示唆を与えるものである。なお、合衆国においては、この分野でも法の改正が進んでおり、一九七一年以降公務員の任用に関する規定が改正された州は一五にのぼり、改正を考慮中の州は一三を数えるという。そして、これらの改正された規定では、就任しようとする職との直接的関連性を有する犯罪で有罪の宣告を受けたことが必要とされている。 以上のように、公務員の資格要件及び分限についての世界的な傾向は、当該具体的公務との関連性を求め、公務に対する信頼という内容も具体的公務との関連性によつて限定しようとしているのである。そして、一九七六年-LO第二回公務合同委員会において採択された「公務の分野におけるILOの作業に関する決議(第三号)」においても、「公務員の私生活に不当な干渉を行つてはならない。公的な職務に無関係な行為によつて有罪となつた公務員は、その有罪の決定自体が、当該公務員について、公務貝としての適格性に疑問を生じさせるものでない限り懲戒責任を問われてはならない。」と規定されている。 (4) 自動失職制度の合理性の有無について前述のように、禁錮以上の刑に処せられたことを理由とする地公法の自動失職制度は、旧憲法下において官吏に対しで適用されていた制度をそのまま現行憲法下の公務員に導入したものであるが、前述したわが国及び合衆国の判例及び学説をふまえて、右制度が現行憲法下においても、なお合理性を有するかどうかについて、検討することとする。 (イ) 自動失職制度の合理的根拠に対する反論(1) 地公法一六条二号及び二八条四項の合理的根拠については、一般的に「公務に 下においても、なお合理性を有するかどうかについて、検討することとする。 (イ) 自動失職制度の合理的根拠に対する反論(1) 地公法一六条二号及び二八条四項の合理的根拠については、一般的に「公務に対する国民の信頼の確保」、「禁錮以上の刑に処せられたということ自体で、当該職員が公務部内に止まることを許すことが、公務に対する国民の信頼を損なう。」、「公務員は全体の奉仕者として公務を遂行するものであるから、それにふさわしい要件を欠く者については、職員たる資格を認めないことがむしろ合理的である。」などと説明されている。 (2) 前述した根拠は一言にしていえば、禁錮以上の刑に処せられた公務員は、全体の奉仕者たるにふさわしくないということに帰するようである。そこで、右内容につき検討する。 (イ) 全体の奉仕者性の意義について全体への奉仕とは、国民全体の利益への奉仕であつて、一部の者の利益のために尽すことを得ない意味であると通常定義され、国民の公務員選定罷免権と相まつて、旧憲法下におけるところの上から臣民に君臨する超越的統治機関としての官吏制度を根本的に転換すべき歴史的意義を有する規定である。 (ロ) 特権的身分官僚制から対等契約関係に立つ公務員制度への転換について当初の公務員法は、右憲法の趣旨に従つて官僚制の民主化という観点から、合議制官庁としての人事委員会の新設、強固な身分保障を有しない特別職の広汎な採用、公務貝の政治活動に対する一定限度の許容、不良公務員に対して一般人民の側からなされる弾劾制、公務員組合の労働権の保障等を規定し、公務員に対し、一般私企業労働者とほぼ対等な権利を保障するとともに、その人事の公正と一般人民による監視という民主化の方策を採用した。 もつとも、こうした画期的な公務員制度は、その具体的な効果もいまだ現れない段階で、人事委員 労働者とほぼ対等な権利を保障するとともに、その人事の公正と一般人民による監視という民主化の方策を採用した。 もつとも、こうした画期的な公務員制度は、その具体的な効果もいまだ現れない段階で、人事委員会が強力な権限を有する単独制の人事院に改められ、特別職が著しくその範囲を制限され、公務員の政治活動が封ぜられ、弾劾制が葬られ、公務員組合の労働権が完全に骨抜きにされ、今日に至つている。 しかし、このような変遷を経ながらも、旧憲法下における特権的身分官僚制は打破され、公務員関係については、いわば、身分から契約への転換がなされたというべきである。 (ハ) 全体の奉仕者性の今日的意義について前述した経過を前提とするならば、公務員の全体の奉仕者性も、単に、天皇の国家に対する奉仕者から国民主権国家に対する奉仕者へという奉仕の対象の転換にとどまるものではなく、超越的に上から臣民に君臨する統治機関としての官吏の地位から、一般国民との自同性の原則を前提として、その国民を代表する機関との契約関係に基づき、労務を提供することによつて一般国民に奉仕する公務員の地位への転換により、全体の奉仕者にふさわしい資格要件たる内容も転換されているとみなければならない。 今日における公務員の職務担当は個々具体的に限定され、無定量な奉仕を要求された旧憲法下の官吏とは根本的に異なつている。旧憲法下の官吏に対する人民の信頼及び天皇制国家の権威は支配者としての官吏及びその集団の身分的高潔性をその不可欠な要件とせざるを得なかつた。 それは無定量な奉仕に対応するところの無定量な法的倫理的無瑕疵性ということができる。それに対し、今日の公務員はその膨大な人員とともにその担当する職務は千差万別多岐にわたり、その職務に対する国民の信頼も個々具体的な内容と程度によつて異なつている。それにもかかわらず、 ことができる。それに対し、今日の公務員はその膨大な人員とともにその担当する職務は千差万別多岐にわたり、その職務に対する国民の信頼も個々具体的な内容と程度によつて異なつている。それにもかかわらず、一般職公務員とくてこれを一律に取扱い、画一的な資格要件を職務とは無関係に規定することは、極めて不合理といわざるを得ない。 (3) よつて、公務員が全体の奉仕者であることは、地公法一六条二号及び二八条四項を合憲とする理由たりえない。 (ロ) 消極的資格要件と条例による特例について地公法一六条各号の事由は、絶対的かつ消極的資格要件であると一般的に解され、同条三号を除くほか、同法二八条四項により、自動失職の効力が付与されている。 ところで、地公法は、こうした絶対的資格要件について条例による特例を認めているが、最低限の要件として法が規定した要件に対して例外を認めるという趣旨自体不可解である。すなわち、地公法一六条のうち、第二号を除く各号については、それぞれ、公務員の職務の遂行能力又は職務に敵対する行為と関係づけて規定されているのであるから、その特例を認める合理的な根拠を見出すことは極めて困難であり、現実に、このような各号について特例を設けている地方公共団体は皆無である。結局、右条例による特例は、すべて同条二号に関するものであり、このこともまた、同条項の不合理性を推認させるものである。 (ハ) 公務に対する信用と禁錮以上の刑について公務員が禁錮以上の刑の有罪判決を受けた場合、公務の信用を損うことがありうることは何人も否定しないであろう。しかし、公務又は特定の職務を遂行するについてその能力や適格と無関係な行為により有罪判決を受けたからといつて、常に公務の信用を害すると断ずることはできない。公務の信用を害するおそれといういわば抽象的危険を語る限り、公務員は、 遂行するについてその能力や適格と無関係な行為により有罪判決を受けたからといつて、常に公務の信用を害すると断ずることはできない。公務の信用を害するおそれといういわば抽象的危険を語る限り、公務員は、通常の市民生活を円満に送ることもできないであろう。 問題は、禁錮以上の刑に処せられたことを一律に公務員の絶対的資格要件として規定することの可否である。公務員が禁錮以上の有罪判決を受けた場合、公務の信用を害し、公務員の適格性を否定されることにより懲戒免職となりうる場合もあるが、それは、あくまでも具体的判断に基づいて行われるべきことである。そして、公務の信用の保持は、こうした判断を行いさえすれば、資格要件として規定しなくとも十分対処できる問題である。 よつて、実際に公務の信用を保持するための方策を他に有しながら、職務に関係があるかどうか、また、職務遂行にとつて関係があるかどうかの判断を抜きにしで、禁錮以上の刑に処せられたことをもつて包括的画一的な消極的資格要件とすることは、まさに官尊民卑の思想の残滓であり、公務貝にとつて、非合理的な差別というべきである。 また、仮に採用時においては被採用者の能力及び人格を知り得ないことから画一的要件を定めることが合理的であるとしても、在職中における犯罪は、職務との関連で具体的に判断をなしうることであるから職務との関連性を問題とすべきであり、地公法一六条二号及び二八条四項のような画一的要件を在職要件とすべき合理的根拠を見出すことはできない。 (ニ) 他の法律による資格制限との対比について更に、地公法一六条二号及び二八条四項の非合理性は、他の法律による資格制限と対比したときに、一層明らかなものとなる。すなわち、(1) 憲法一五条は、公務員制度と選挙制度を統一的に規定し、両者を参政権として規定している。参政権は、憲法前 非合理性は、他の法律による資格制限と対比したときに、一層明らかなものとなる。すなわち、(1) 憲法一五条は、公務員制度と選挙制度を統一的に規定し、両者を参政権として規定している。参政権は、憲法前文における「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使」するという国民主権の大原則に基づくものであつて、国民が国家機関として能動的地位に立つことを保障したものである。国民は一方で国家に相対する形で各種請求権を行使し、あるいは、国家から干渉を受けない自由権を享有しているが、これらの権利はルソーのいう市民としての権利、個人的権利であるのに対し、参政権は同しくルソーのいう公民としての権利である。そして、この国民の国政への参加の資格は、民主的な基本原理(憲法前文)の反映であり、国家の活動が国民にとつて不利益とならないように、更に、国家の活動を国民の利益幸福の方向に導くための不可侵の基本的人権である。 (2) 参政権の根幹ともいうべき公職選挙法においては、右民主政治の大原則の目的にそうよう選挙権、被選挙権の制限を必要最小限度にとどめている。禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者であつても執行猶予者は除外されているし、執行猶予中の者で右権利を有しない者は、選挙犯罪者に限つている。 右の規定の仕方は、犯罪者でも現実に参政権を行使しうる状況にある者についてはこれを保障し、ただ、公正な選挙という目的に敵対する犯罪を行つた者についてその資格を剥奪しているにすぎず、参政権を剥奪する犯罪を犯罪一般ではなく、選挙に密接不可分な関連性を有する行為に限定しているのである。これは、基本的人権に対する最小限度の制限として、妥当なものといえよう。 (3) ところが、地公法の前記規定は、同法の を犯罪一般ではなく、選挙に密接不可分な関連性を有する行為に限定しているのである。これは、基本的人権に対する最小限度の制限として、妥当なものといえよう。 (3) ところが、地公法の前記規定は、同法の目的実現のために不可欠な制限とはいいがたい。すなわち、同法は、一条において同法の目的について「地方公共団体の行政の民主的且つ能率的な運営を保障し、もつて地方自治の本旨の実現に資することを目的とする。」と規定しているが、公務員の資格制限の点について、公職選挙法と対比して特に執行猶予者を画一的に排除させるべき根拠を右目的中に見出すことはできない。 (5) むすび以上のとおり、地公法一六条二号及び二八条四項が、公務の信用を保持するためには他の手段(免職等)をもつて可能であるにもかかわらず、執行猶予者に対しても職務との関連性を限定せず、一般職地方公務員全体に画一的包括的に絶対的消極的資格要件として規定していることは、一般職地方公務員に対し、非合理的差別を課するものであつて、平等保護条項に違反し)、違憲無効である。 (二) 自動失職制度と憲法三一条について(1) 地公法一六条二号が旧刑法にその淵源を有し、天皇制絶対主義官僚制を支えたものであることは、既に述べたとおりであるが、これと同法二八条四項が一体となることによつて、従来から在職してその労働能力が確定的に認められる者についでも、また、犯罪を犯す事によつてその適格性が否定されるべき者についても、その区別を認めず一律に自動失職の効果が生している。 しかし、以下に述べるとおり、こうした自動失職制度は、実体的及び手続的デユープロセスに反し、憲法三一条に違反するものである。 (2) デユープロセスの適用範囲について(イ) デユープロセスの原則は、英米法における長い歴史的発展の経過の中で公平、適正という普遍的価 的デユープロセスに反し、憲法三一条に違反するものである。 (2) デユープロセスの適用範囲について(イ) デユープロセスの原則は、英米法における長い歴史的発展の経過の中で公平、適正という普遍的価値をいかにして法的諸関係の中で機能させるかという英知と努力の中で形成されてきたものであるから、この原則は、ある特定の国家の特殊性の中で創設されたものであるとか、また、ある歴史的偶然によつて発生したものではなく、社会の歴史的発展自体が形成した普遍的原則であり、それは絶えず、より完全な公平、適正の方向に向つて発展せざるをえない原則である。従つて、日本国憲法の解釈において、同三一条のみによつては合衆国憲法と同様の解釈が困難と解される場合にも、他の普遍的諸原則(第一三条、一四条)とオーバーラツプさせながら、アメリカ法における発展を日本国憲法の解釈に取り入れることは十分可能であり、むしろそれこそが生きた憲法の解釈というべきであろう。 (ロ) 合衆国におけるデユープロセス原則の発展について、特記されるべきことは、一九七〇年三月二三日の合衆国連邦最高裁判所(以下、「連邦最高裁」という。)における「ゴールドバーグ対ケリー」の判決である。周知のように、合衆国における裁判例において、憲法修正第一四条のデユープロセス条項が適用されるためには、liberty又はPropertyといつた確立された権利が行政行為によつて侵害される場合でなければならないとされていた。いわゆる特権は対象にならず、権利が対象になるという特権、権利の二分論である。ところが、前記ゴールドバーグ対ケリー事件において、連邦最高裁は、国家の恩恵的施与行為と考えられていた社会福祉金給付に対しても、個人の重大な利益が侵害される場合には、それに先立つて憲法上のデユープロセスが保障されなければならないと判示した において、連邦最高裁は、国家の恩恵的施与行為と考えられていた社会福祉金給付に対しても、個人の重大な利益が侵害される場合には、それに先立つて憲法上のデユープロセスが保障されなければならないと判示した。そして、連邦下級裁判所においては、これまで不干渉とされていた刑事行刑手続についてもデユープロセスの原則を適用する判決が続出している。 (ハ) ところで、憲法三一条を合衆国憲法修正第五条(又は同一四条第一節)が「何人もデユープロセス・オブ・ローによることなしに、生命、自由又は財産を奪われることはない。」としているのと同様に解釈すべきかどうかについては古くから争いがあり、最高裁判所は、行政手続における適正手続の法理を肯定(最高裁判所昭和四六年一〇月二八日第一小法廷判決、民集第二五巻第七号一〇三七頁)しているが、全問題点についてはいまだその解答を示してはいない。 学説においては、(1)刑罰だけでなく広く自由権一般の侵害に関するのか、(2)手続だけでなく実体にも関するのか、(3)司法、行政権だけでなく立法権をも制約するのか、を問題にしているが、(2)及び(3)については、合衆国憲法と同趣旨の正当もしくは適正な手続を意味し、実体的要件にもかかわるもので立法権をも拘束するものであるとする点では一致している。(1)の点については、若干のニユアンスの差をもつているが、憲法三一条が刑罰を科する場合に限らないという点では基本的に一致している。 すなわち、デユープロセス条項が刑事手続だけでなく、非刑事手続にも適用されるということは、一九七〇年代の合衆国における諸判例を受けてわが国においてもおおむね承認されているということができる。 (3) 合理的関連性の原則について(イ) 有罪判決を受けた者に対する職業禁止についての合衆国における伝統的立場は、「合理的関連性」あり わが国においてもおおむね承認されているということができる。 (3) 合理的関連性の原則について(イ) 有罪判決を受けた者に対する職業禁止についての合衆国における伝統的立場は、「合理的関連性」ありとするためには、抽象的、一般的な関連性があればよいとするものであつたが、その後、具体的関連性を要求する判例が出現してきている。 (ロ) ところで、わが国においても、企業外非行と懲戒処分との関係については、最高裁判所は、「従業員の不名誉な行為が会社の体面を著しく汚したというためには、必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが、当該行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類、態様、規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位、職種等諸般の事情から綜合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない。」(最高裁判所昭和四九年三月一五日第二小法廷判決、民集第二八巻第二号二六五頁)と判示し、具体的関連性を要求している。 (4) 反証を許さない推定の原則について(イ) この原則は、ある個人における特徴的事実をもつて、その特徴から導き出されると推定された一定の性質ないし事実が存在しない場合でも、これらが存在するものとみなす規定がデユープロセスの実体的要件に反するという原則であり、連邦最高裁において発展させられた原則である。 (ロ) 地公法一六条二号及び二八条四項は、禁錮以上の刑に処せられたという事実により、公務の信用が毀損されるとの「反証を許さない推定をしている規定としてデユープロセスに反する。前科により公務の信用が毀損され、適格性が問われるとしても、分限条項により反証の機会を与えて審査すれば足りる問題であつて、自動失職の制度は不 許さない推定をしている規定としてデユープロセスに反する。前科により公務の信用が毀損され、適格性が問われるとしても、分限条項により反証の機会を与えて審査すれば足りる問題であつて、自動失職の制度は不必要であるばかりか、著しく人権を制約するものである。 (5) 原告は、県立図書館の職員として、その労働能力は既に実証され、かつ、図書館司書の資格も有して、長年なんの支障もなく勤務を続けてきたにもかかわらず、一切の弁明、聴聞手続もなく、失職させられたものである。このように、いつたん欠格事由に該当すれば、具体的関連性を問うことも、また、反証の機会を与えることもなく、永久に現に勤務していた当該会務員たる資格が剥奪されるとする地公法の規定はデユープロセスの実体的要件である「合理的関連性」、「反証を許さない推定」の原則に違反し、かつ、手続的デユープロセスの規定を有しないものとして、デユープロセスを保障した憲法三一条に違反するものというべきである。 (三) 本件失職措置の適用違憲について仮に、地公法一六条二号及び二八条四項の規定が憲法一四条一項及び三一条に違反しないとしても、以下に述べる理由により、原告に対する右地公法の規定の適用は憲法一四条一項に違反する。 (1) 地公法二八条四項の規定を機械的に適用すれば、退職間際まで勤務していた職員が退職直前になつて数十年前の事実に基づいて失職とされ、退職金も支給されないという悲惨な結果を招来することになる。 (2) そこで、このように地公法の前記規定を機械的に適用することによつて不合理かつ苛酷な事態が生ずる場合には、各地方公共団体は、当該職員をいつたん退職させて再雇用するか、失職要件たる事実を黙殺するという方法をとつて救済していることが多い。 (3) ところで、原告の失職事由の原因となつた行為は、大学時代に自らの思想 団体は、当該職員をいつたん退職させて再雇用するか、失職要件たる事実を黙殺するという方法をとつて救済していることが多い。 (3) ところで、原告の失職事由の原因となつた行為は、大学時代に自らの思想信条に基づき、大学改革の理想に燃えて行つた行動の結果による非破廉恥罪である。しかも原告は、既に長年月にわたり県立図書館職員として勤務し、その労働能力を実証しているのである。 (4) よつて、本件のような場合には、他に懲戒事由等の特段の理由がない限り、不合理かつ苛酷な結果を回避するために任命権者において再雇用をする義務があるというべきである。 ところが、被告は、原告において本件失職通知受領後再三にわたり再雇用の申し出を行つているにもかかわらず、これを全く受け付けようとしない。 (5) よつて、被告のこうした取扱いは、適用において原告を著しく不公平に扱うとともに、適正な手続を欠くものであり、憲法一四条一項及び三一条に違反するものというべきである。 2 本件失職措置の違法性について仮に、右1の主張が認められず、地公法二八条四項、一六条二号の定める自動失職制度が合憲であり、かつ、本件における運用も合憲であるとしても、以下に述べる理由により、本件失職措置は、なお違法である。 (一) 本件失職通知当時における失職事由の不存在について(1) 公務員労働関係の性格について一般に労働契約の本質は、従属労働ないし労働の従属性としてとらえられている。 すなわち、労働契約関係は、労働力商品という身体と切り離し得ない特殊な商品売買関係であると論じられているように、労働力は貯蓄もできないし、また、いつたん使用されたならば、真の意味での原状回復はできないという特殊性から、事実関係が絶対的重要性をおびる契約関係である。従つて、労働契約関係においては、労働者が支配従属関係に編入さ ないし、また、いつたん使用されたならば、真の意味での原状回復はできないという特殊性から、事実関係が絶対的重要性をおびる契約関係である。従つて、労働契約関係においては、労働者が支配従属関係に編入されたかどうかが、その成立の重要なメルクマールとなる。 そして、公務員労働関係においても、自己の労働力の処分権を相手方に継続して委ね、かつ、相手方の指揮の下で従属的労働に服し、相手方がこれに対し、給与その他の報酬を支払うものであつて、公務員の任用行為も、基本的には対等当事者間の労働契約と異ならないものである。ただ、公務員が行政を担当する者であり、一方当事者が行政主体であることから、私的労働契約と異なる特殊の取扱いが行われているにすぎない。 従つて、基本たる労動契約関係の成立という問題に関しては、一般的労働契約関係の成立と同一に論ずることができる。 ところで、原告は、昭和四七年九月から被告の職員として正式採用されて被告の支配従属関係にはいり、その後八年有余にわたつて、労働契約関係成立に不可欠な事実関係は継続して存在してきたものである。 (2) 欠格事由の消滅について(イ) そこで、右事実関係と欠格事由との関係が問題になるが、本件では、原、被告間の雇用関係、つまり、労働契約関係成立に必要な事実関係は存在しながらも、昭和五二年五月一一日から昭和五四年五月一〇日までの期間は、原告において欠格事由に該当するため労働契約関係の法的効力が発生せず、事実上の労働関係のみが存続していたものと観念される。ところで、欠格事由は労働契約関係の各当事者の意思表示や、使用従属関係とは何らかかわりのない客観的事実に対して法が与えた効力であるから、欠格事由による効力は、意思表示や使用従属関係と無関係に発生し、無関係に消滅する。 それはただ事実の存在する限りにおいて、その事実に対 は何らかかわりのない客観的事実に対して法が与えた効力であるから、欠格事由による効力は、意思表示や使用従属関係と無関係に発生し、無関係に消滅する。 それはただ事実の存在する限りにおいて、その事実に対して法が与えた効力にすぎない。本件において、原、被告間には昭和四七年九月、双方の意思表示と使用従属関係の成立により、雇用関係が成立し、かつ、欠格事由存続期間中も右意思表示及び使用従属関係は存続し、それ以降も存続してきた。ただ、欠格事由が存在した期間は、欠格事由たる事実の存在のため、その効力の発生が認められなかつたが、そのことは決して、原、被告間の雇用に関する意思表示及び使用従属関係が存在した事実までも消し去るものではない。従つて、欠格事由たる事実が消滅すれば、効力の発生を阻害する事由が消滅し、完全な効力が認められるべきである。 (ロ) 以上の解釈は、地公法一六条列記の各欠格事由を検討すれば妥当なものといえる。すなわち、同条一ないし三号は一時的欠格事由であり、同条四号、五号はいわば永久的欠格事由となつている。従つて、一時的欠格事由である同条二号が、欠格事由が消滅した後においても、過去に存在した欠格事由により現在の雇用関係を消滅させる効力までを有しているとは解しがたい。更に、刑の言渡しは、執行猶予期間の満了により、その効力を失うのであるから、昭和五二年五月一一日からの欠格事由自体、昭和五四年五月一〇日の満了によつて、消滅しているのである。また、欠格事由は、雇用関係の要素とは無関係に客観的に存在する事実に対して法が与える効力であるから、右事実が既に消滅した後に、消滅した事実に対して法が効力を与えることは、全くの背理というべきである。 (3) 従つて、本件失職措置当時一には、失職を生ずべき事実は存在しなかつた。 (三) 本件失職通知の不当労働行為性につ に、消滅した事実に対して法が効力を与えることは、全くの背理というべきである。 (3) 従つて、本件失職措置当時一には、失職を生ずべき事実は存在しなかつた。 (三) 本件失職通知の不当労働行為性について(1) 欠格事由は客観的に存在する事実であつて、欠格事由による雇用契約の無効は、何人の意思表示をも必要とするものではない。しかし、客観的事実も社会的事実であるから、何人かの行為によつて法の場に持ち出されなければならない。 (2) ところで、失職通知は、右欠格事由に該当する事実の通知、つまり観念の通知と考えられるが、失職については特別の手続は必要ないと一般に解されるものの、通知が必要であるという点については異論をみない。従つて、通知が出された時点ではじめて法的社会的事実になるものと解される。 そこで、これを本件についてみれば、本件失職通知がされた時点では既に述べたように、欠格事由たる事実は既に消滅していたものであるから、失職の効力を生ずべき事実は不存在であつて、不存在の事実の通知は何ら法的意義を有するものではない。 ところが、被告があえて、右通知を行つたのは、原告が積極的な組合活動家であることのゆえに、その排除を目的としたものであり、不当労働行為である。 (3) よつて、本件失職通知は、何らの法的効果も生じず、無効である。 (三) 新たな雇用関係の発生について(1) 原告は、昭和四九年暮ごろに既に刑事裁判の内容について、数名の同僚に明らかにし、その後も嘆願書を数名に求めたりしていたものであるから、原告の刑事裁判は、職場において知られていた事実であり、被告もこれを知り得たと考えられる。 (2) また、昭和五三年三月ころからは、須磨及び明石の各警察署の私服刑事が、執行猶予中の原告の動静をさぐるため頻繁に原告の自宅及び勤務先である県立図書館をおとづれ もこれを知り得たと考えられる。 (2) また、昭和五三年三月ころからは、須磨及び明石の各警察署の私服刑事が、執行猶予中の原告の動静をさぐるため頻繁に原告の自宅及び勤務先である県立図書館をおとづれ、同図書館の当時の副館長兼総務課長に面会し、原告の勤務態度調査を行い、原告に対する監視監督を依頼している。(3)従つて、仮に原告について有効な失職の効果が生じていたとしても、原告の任用資格は昭和五四年五月一〇日に回復しており、他方、被告は、遅くとも昭和五二年八月ころには原告の欠格事由を知つていたものであり、右事実を知つたうえで引き続き原告に対して勤務を命じていたものであるから、原告と被告との間には、原告の資格が回復した昭和五四年五月一〇日の執行猶予期間満了時点において、黙示の再雇用契約が成立し、又は無効行為の追認として同月一一日から新たな雇用関係が発生しているものというべきであり、そうでないとしても、資格回復後の失職通知により実質的解雇をすることは信義則上許されないものというべきである。3以上のとおりであるから、原告は、被告に対し、雇用契約(任用関係)上の権利を有しているものである。 六原告の反論に対する認否 1 原告の反論第1項について(一) 同項冒頭部分の主張は争う。 (二) 同項(一)について(1) 同(1)の前段は認め、同後段の主張は争う。 (2) 同(4)の(イ)のうち、(1)の事実は認め、その余の主張は争う。同(ロ)ないし(二)の各主張は争う。 (3) 同(5)の主張は争う。 (三) 同項(二)の主張は争う。 (四) 同項(三)について(1) 同冒頭部分及び同(1)の各主張は争う。 (2) 同(2)及び(3)の各事実は否認する。 (3) 同(4)の前段の主張は争う。 (4) 同(5)の主張は争う。 2 原告の反論第2項について(一) ) 同冒頭部分及び同(1)の各主張は争う。 (2) 同(2)及び(3)の各事実は否認する。 (3) 同(4)の前段の主張は争う。 (4) 同(5)の主張は争う。 2 原告の反論第2項について(一) 同項冒頭部分及び同項(一)の各主張は争う。 (二) 同項(二)の主張は争う。 (三) 同項(三)の(1)及び(2)の各事実は否認し、同(3)の主張は争う。 3 原告の反論第3項の主張は争う。 七被告の反論 1 本件失職措置の適法性について(一) 自動失職制度の合憲性について憲法一五条は、「公務員は、全体の奉仕者」であり、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」として、公務員の特殊な地位を明らかにしている。そして、これを地方公務員についてみても、このような地位の特殊性に基づき、政治的行為の制限(地公法三六条)、争議行為の禁止(同法三七条)等本来憲法で保障された基本的人権を制限する地公法の諸規定が憲法に違反しないことは、多くの最高裁判所判例の明らかにするところである。しかも、禁錮以上の刑は、強度の反社会的行為に対して科せられるものである。 従つて、地公法が、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終るまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者を公務員に採用するについての欠格条項とし、採用後においては当然の失職事由とすることは、公務員の地位の特殊性に徴し、何ら憲法一四条一項に違反するものではない。 (二) 無効行為力治癒の主張について(1) 地会法二八条四項は、地方公務員の地位の特殊性と職務の公共性とにかんがみ、同法一六条所定の欠格事由該当者を一律に失職とするために制定されたものであり、右失職の効果は、法定事由の発生により当然かつ確定的に発生する。このことは、地公法の法定失職事由に該当しない地方公務員たる教育職員の免許状失効 事由該当者を一律に失職とするために制定されたものであり、右失職の効果は、法定事由の発生により当然かつ確定的に発生する。このことは、地公法の法定失職事由に該当しない地方公務員たる教育職員の免許状失効についてすら、失職の効果が生じる旨最高裁判所が宣明しているところである(最高裁判所昭和三九年三月三日第三小法廷判決、民集第一八巻第三号四一一頁、同昭和四〇年四月二二日第一小法廷判決、昭和三八年(オ)第四一三号)。また、下級審裁判所は、公立中学校教員の懲戒処分無効確認及び取り消しの訴えは、被処分者が既に懲役刑を受けたことにより失職した場合には、訴えの利益を失なうとしている(大分地裁昭和四〇年四月一三日判決、行政事件裁判例集第一六巻第五号八五五頁)。 (2) このように、職員の身分を失なつた者を新たに採用し、身分を取得させるためには、地公法の定めるところに従い、競争試験を行い(同法一七条一項、三項)、採用者には服務の宣誓を行わしめ(同法三一条)、かつ、慣例に従い、給料表の号給を表示した辞令を交付して任用の意思表示を行つているのであり、行政処分(同法四九条一項、五一条参照)の一種である任用行為を行うことなく、いつたん消滅した公務員関係という法律関係が、時の経過とともに再び発生するというようなことはあり得ない。 また、無効行為は、取消しうべき行為と異なり、何人に対しても、何時まででも無効なのであり、そのため、行政事件訴訟法においても、取消訴訟については、出訴期間の制限があるが(同法一四条)、無効確認の訴えについては出訴期間の制限はないのである。 (3) 従つて、無効行為については、治癒ということはあり得ず、この点に関する原告の主張は、理由がない。 (三) 新たな雇用関係が発生した旨の主張について(1) 被告が原告の欠格事由を知り得たのは、昭和五四年一 て、無効行為については、治癒ということはあり得ず、この点に関する原告の主張は、理由がない。 (三) 新たな雇用関係が発生した旨の主張について(1) 被告が原告の欠格事由を知り得たのは、昭和五四年一二月下旬、一県民から県立図書館総務課に通報があり、その真偽の確認と対策とを協議した結果、同図書館次長が同図書館長の命を受け、右通報内容の調査確認のため昭和五五年一月二八日、京都地方検察庁に赴いて原告に対する判決の謄本を入手したことによるものである。 (2) ところで、任命権者が新規に職員を採用する場合においては、人権問題等により調査は行つておらず、ただ、犯罪人名簿を保管し、整備している市町村長への照会という方法があるにすぎず、一方、採用後、欠格事由に該当する刑が確定した場合においても、検察庁又は裁判所から当該職員の任命権者に対し、その旨が通知されることはない。従つて、本人の申請に待つ以外に、任命権者が右事実を知りうる制度的保障はなく、職員本人の協力がなければ、任命権者が個々の職員について、地公法一六条二号所定の欠格事由が存在するかどうかを確認するのは困難である。 そして、かえつて地公法が刑事事件に関し起訴された職員の起訴休職(同法二八条二項二号)及び禁錮以上の刑に処せられた職員の失職(同条四項、一六条二号)の規定を設けているにもかかわらず、任命権者には当該事実を知る制度的保障がないことに照らすと、信義則上、当該職員は、当該事実を任命権者に申告すべき義務があると解されるのである。 (3) 以上のとおりであるから、被告において原告に失職事由が存在することを知るまでに日時が経過したのは、前述したように任命権者が当該事実を知る制度的保障がないことによるものであつて、被告において、原告から欠格事由が発生した旨の申し出を受けたことはもちろん、原告の右欠格 知るまでに日時が経過したのは、前述したように任命権者が当該事実を知る制度的保障がないことによるものであつて、被告において、原告から欠格事由が発生した旨の申し出を受けたことはもちろん、原告の右欠格事由の発生を知りながら原告の勤務を許したという事実も存在せず、また、被告が右欠格事由の発生後原告に対して再度任命行為をしたと認めるに足りるような行為をした事実も存しないから、原告について新たな雇用関係が発生した旨及び被告の失職措置が信義則上許されない旨を主張する原告の主張は、いずれも理由がない。 2 従つて、原告の反論は、いずれも理由がない。 八被告の反論に対する認否 1 被告の反論第1項について(一) 同項(一)及び(三)の各主張は争う。 (二) 同項(三)の(1)の事実は否認する。同(2)及び(3)の各主張は争う。 2 被告の反論第2項の主張は争う。 第三証拠(省略)○ 理由一請求原因第1項ないし第3項並びに被告の主張第1項の各事実(本件失職措置当時の原告の地位、本件失職措置及び同通知の存在並びに本件失職事由の存在)は、いずれも当事者間に争いがない。 二そこで、本件失職措置の適否について検討することとする。 1 自動失職制度の合憲性について被告が地公法二八条四項、一六条二号に基づき、原告が当然に失職したものとして原告に対する本件失職措置を取つたことは、当事者間に争いがないところ、原告は、地公法の右各条項が憲法一四条一項及び三一条に違反する旨主張するので、まずこの点について検討する。 (一) 地公法一六条二号は、「禁こ以上の刑に処せられ、その執行を終るまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」は、「条例で定める場合を除く外、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。」と、また、同法二八条四項は、「職員は、第一六 行を終るまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」は、「条例で定める場合を除く外、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。」と、また、同法二八条四項は、「職員は、第一六条各号(第三号を除く。)の一に該当するに至つたときは、条例に特別の定がある場合を除く外、その職を失う。」とそれぞれ規定している。そして、これらは、いずれも禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終るまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者を地方公務員から排除するという点では共通しているものの、同法一六条が「任用」の節に、また、同法二八条四項が「分限及び懲戒」の節に、それぞれ配置されていること及びその規定内容に照らせば、同法一六条は、公務員の任用についての欠格事由を、また、同法二八条四項は、公務員の任用後在職中の欠格事由をそれぞれ規定したものであると解される。 よつて、以下、在職中の欠格事由を規定した地公法二八条四項の合憲性について検討することとする。 (二) 憲法一四条一項は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とし、国民に対して法の下の平等を保障」ている。そして、右条項において列挙された事由は例示的なものであつて、必ずしもそれに限るものではないと解するのが相当である。 しかし、右条項は、国民に対し絶対的な平等を保証したものでなく、差別すべき合理的な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、事柄の性質に即応して合理的と認められろ差別的取扱をすることは、なんら右条項の否定するところではないと解すべきである(最高裁判所昭和三九年五月二七日大法廷判決、民集第一八巻第四号六七六頁参照)。 (二) そこで、前記地公法二八条四項について 的取扱をすることは、なんら右条項の否定するところではないと解すべきである(最高裁判所昭和三九年五月二七日大法廷判決、民集第一八巻第四号六七六頁参照)。 (二) そこで、前記地公法二八条四項についてみるのに、同条項は、地方公務員が禁錮以上の刑に処せられた場合には、任命権者による何らの処分も必要とせず、法律上当然に当該職員を失職させる旨を規定したものであることは、その文言及び趣旨により明らかである。 (四) ところで、地方公務員は、地方公共団体の住民全体の奉仕者として、実質的にはこれに対して労務提供義務を負うという特殊な地位を有に、かつ、その労務の内容は、公務の遂行すなわち直接公共の利益のための活動の一環をなすという公共的性質を有するものである。このような地位の特殊性及び職務内容の公共性に照らすならば、地方公務員について、その職の信用を傷つけるような事由が存在する場合には、単にその職場規律及び秩序の維持に悪影響をもたらすことにとどまらず、その職務遂行又は公務に対する地方公共団体の住民一般の信頼をゆるがせ、ひいては地方公務員全体に対する信頼を失墜させ、住民全体の共同利益を害するおそれすらなしとしない。 そして、地方公務員が禁錮以上の刑に処せられるということは、たとえその刑の執行を猶予されている場合でも、その職の信用を傷つける事由に該当することが明らかというべきである。 (五) ところで、わが国は、刑事訴追に関して起訴便宜主義(刑事訴訟法二四八条)を採用しており、当該被疑事件について起訴するに十分な犯罪の嫌疑があり、かつ、訴訟条件が具備している場合でも、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により処罰の必要がないと認められる場合には、検察官の裁量によつて公訴を提起しない旨の起訴猶予処分が行われることになる。そして、現に 、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により処罰の必要がないと認められる場合には、検察官の裁量によつて公訴を提起しない旨の起訴猶予処分が行われることになる。そして、現に、こうした起訴猶予処分が広く行われており、また、処罰の必要があるとして起訴が行われる場合にも、現行刑罰法規がその所定刑中に罰金刑を広く定めていることもあつて、その大半は略式手続により罰金刑が科されているので、公判請求を受けて禁錮刑以上の刑に処せられる事件の占める割合は低い(以上の事実は、当裁判所に顕著な事実である。)。従つて、こうしたわが国の刑事訴追制度の運用の実状に照らすならば、公判請求を受け、禁錮刑以上の刑に処せられた者は、その刑の執行を猶予されたかどうかを問わず、強度な反社会性を有する犯罪を犯したものであり、その犯情は重いということができる。 そうすると、地方公務員が禁錮以上の刑に処せられたということは、まさに、当該地方公務員が強度な反社会性を有する犯罪を犯したことが刑事裁判によつて公権的に確定されたということができるから、これによつて、その職に対する信用が毀損されることは明らかであり、更に、その結果として、地方公務貝全体及び公務そのものに対する住民の信頼を損ない、住民全体の利益を害するおそれが生ずることも明らかというべきである。 (六) 以上に述べたような諸点に地公法二八条一項ないし三項所定のその他の分限事由及び同法二九条所定の懲戒事由の内容、趣旨を合わせ考えれば、地方公務員が禁錮以上の刑に処せられた場合には、その罪名及び罪質がどうであるか、また、実刑を受けたか刑の執行を猶予されたかどうかを問うことなく、当該公務員を失職させることとする規定を設けたとしても、これをもつて直ちに合理的根拠を欠き、地方公務員を一般私企業の労働者に比して不当に 、実刑を受けたか刑の執行を猶予されたかどうかを問うことなく、当該公務員を失職させることとする規定を設けたとしても、これをもつて直ちに合理的根拠を欠き、地方公務員を一般私企業の労働者に比して不当に差別するものであると断ずることはできない。従つて、地公法二八条四項が憲法一四条一項に違反するということはできない。 (七) 次に、原告は、禁錮以上の刑に処せられたという事実だけで、職務との関連性を問うことも、また、反証の機会を与えることもなく、公務員の資格を剥奪するものとしている地公法二八条四項の規定は、デユープロセスを保障した憲法三一条に違反する旨主張する。 しかしながら、禁錮以上の刑に処せられた地方公務員は当然に失職するものとした地公法二八条四項が憲法一四条一項に違反するものではないことは前述のとおりであり、禁錮以上の刑に処せられた地方公務員の失職措置は、このような地公法二八条四項に基づいて行われるものである以上、これをもつて、法律の定める手続によらないものであるということもできない。 (八) なお、原告は、合衆国の判例及び学説をあげたうえ、地公法二八条四項は、デユープロセスの実体的要件である「合理的関連性」及び「反証を許さない推定」の原則に違反し、かつ、手続的デユープロセスの規定を有しないから、デユープロセスを保障した憲法三一条に違反する旨主張する。 しかしながら、各国の歴史的経験と伝統はまちまちであり、国民の権利意識や自由に対する感覚にもまた差異があるから、基本的人権に対して加えられる規制の合理性についての判断基準は、およそ、その国の社会的基盤を離れて成り立つものではない。これを公務員の資格制限についてみても、どのような事由を公務員の欠格又は失職の事由とするのか、また、これを定めるに当たつても、当該事由の発生によつて当然に失職するものと 離れて成り立つものではない。これを公務員の資格制限についてみても、どのような事由を公務員の欠格又は失職の事由とするのか、また、これを定めるに当たつても、当該事由の発生によつて当然に失職するものとするのか、又は一定の審査手続を経たうえで失職させるものとするのかは、いずれも、それぞれの国の歴史的所産である社会的諸条件にかかわるところが大であるといわなければならない。そして、これを本件についていえば、その国の刑事訴追制度及び犯罪に対する国民一般の認識などが右の社会的条件に該当するということができるところ、成立に争いのない甲第三号証、第四号証(弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる同号証の二はその訳文)、第一八号証の一(弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる同号証の二ないし四はその訳文)及び第二六号証の一(弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる同号証の二はその訳文)によれば、合衆国においては、州によつて若干の差異がないでもないが、重罪及び軽罪という形式的な区分(この区分は、コモンローに由来するが、合衆国では制定法により、死刑又は州刑務所拘禁というような一定の刑が法定刑として規定されているものを重罪とする旨定めている州が多いことは、当裁判所に顕著な事実である。)に従い、単に重罪について有罪の宣告を受けたというだけで公務員たる資格の欠格又はその職からの失職を定めている例が多く、しかも、その制限は、必ずしも刑の執行の終了又は執行猶予期間の満了までに限られているわけではないこと並びに原告のかかげる判例及び学説は、このような重罪及び軽罪の区分(前掲甲第四号証の二及び第一八号証の二ないし四によれば、合衆国においてもこの区分が必ずしも合理的ではないとの学説及び判例があることがうかがわれる。)に従つた欠格条項から生じる不合理か 及び軽罪の区分(前掲甲第四号証の二及び第一八号証の二ないし四によれば、合衆国においてもこの区分が必ずしも合理的ではないとの学説及び判例があることがうかがわれる。)に従つた欠格条項から生じる不合理かつ苛酷な結果を救済するために形成されたものであることがうかがえる。これに対し、わが国における資格制限の内容は前述のとおりであり、また、わが国の刑事訴追の実情においては、禁錮以上の刑に処せられた者は、その犯情が重く、強度な反社会性を有する犯罪を犯したものということができることも、前述のとおりである。 従つて、本件訴訟において原告のるる紹介する合衆国の判例及び学説は、前科と資格の制限という問題を考えるに当たつての一つの重要な参考資料であることは否定できないが、前述した社会的諸条件の違いを無視して、これをそのままわが国についてあてはめることはできない。 (九) よつて、地公法二八条四項が、憲法三一条に違反するとの原告の主張は採用することができない。 2 適用違憲の主張について次に、原告は、仮に自動失職制度を定めた地公法二八条四項がそれ自体憲法一四条一項及び三一条に違反しないとしても、本件失職措置は、既に採用後長期間にわたり県立図書館に勤務して図書館職員としての実績があり、また、本件事件による執行猶予期間も経過している原告に対し、しかも、学生時代に自らの思想信条に基づき、大学改革の理想に従つた結果生じた非破廉恥罪につき、機械的に地公法二八条四項を適用して行われた不合理かつ苛酷な措置であるのみならず、こうした場合には、右結果を回避するため任命権者において再雇用をする義務があるのに、これを行わない被告の措置は、同条項の適用において憲法一四条一項及び三一条に違反する旨主張するので、この点について検討する。 (一) 地公法二八条四項、一六条二号は、自動失職制度 する義務があるのに、これを行わない被告の措置は、同条項の適用において憲法一四条一項及び三一条に違反する旨主張するので、この点について検討する。 (一) 地公法二八条四項、一六条二号は、自動失職制度について個々の地方公共団体が条例で地公法所定の欠格事由又は失職事由に対して特例を定めることを認めているが、前述したわが国における刑事訴追制度の運用の実際並びに自動失職規定の趣旨に照らすならば、こうした条例による特例がない場合に、単に禁錮以上の刑の対象となつた犯罪が非破廉恥罪であるというだけで、これを理由とする自動失職措置をその適用において違憲であると即断することはできない。 (二) 成立に争いのない乙第二号証及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。 (1) 原告は、昭和四四年当時龍谷大学文学部に在学中であつたが、同年九月二〇日、京都大学で行われていたいわゆる「京大カルチエ閥争」に参加し、同年一一月一日、往来妨害、兇器準備集合及び公務執行妨害の各罪で京都地方裁判所に起訴された(以上の事実は、起訴の年月日を除き、当事者間に争いがない。)。 (2) 原告は、昭和五二年四月二五日、前記各被告事件について京都地方裁判所で懲役一〇月、執行猶予二年の有罪判決を受け、右刑は、同年五月一〇日確定し、更に、昭和五四年五月一〇日には右刑の執行猶予期間も満了した(以上の事実は、当事者間に争いがない。)。 なお、右判決で認定された原告の罪となるべき事実の要旨は、「原告は、全共闘系学生(当時の全学共闘会議派学生)らと共謀のうえ、昭和四四年九月二〇日午後四時ころ(イ) 京都市<地名略>所在の京都大学本部構内北門前付近今出川通り車道上において、同車道上一帯を解放区とするため同車道の交通を閉塞する目的で、同北門前車道上東側及び西側に 九月二〇日午後四時ころ(イ) 京都市<地名略>所在の京都大学本部構内北門前付近今出川通り車道上において、同車道上一帯を解放区とするため同車道の交通を閉塞する目的で、同北門前車道上東側及び西側にそれぞれ机、椅子などを道路幅いつぱいに積み上げてバリケードを構築し、車両などの通行を不能にし、もつて、陸路を閉塞して往来の妨害を生じさせ(往来妨害罪)(ロ) 右京都大学本部構内北門及び同大学理学部構内南門付近において、右バリケードの撤去及びこれに対する妨害排除などに当たつていた京都府警察本部警備部機動隊所属の警察官多数の身体に対し、共同して危害を加える目的をもつて鉄パイプ、石塊などの兇器多数を準備して集合し(兇器準備集合罪)(ハ) 右理学部構内南門付近において、右警察官らに対しで多数の石塊、火炎びんを投げつける暴行を加え、もつて、右警察官らの職務の執行を妨害(公務執行妨害罪)した。」というものである。 右認定事実によれば、本件失職事由の原因となつた行為は、仮にそれが原告の主張するように、原告の理想とする大学改革をめざす意図の下に行われたものであつたとしても、なお、目的のためには手段を選ばない独善的な行動と評価せざるを得ず、また、これら一連の行動が当時の社会及び法秩序に及ぼした影響も決して看過することができないから、これをもつて事案軽微又は非破廉恥罪ということはできない。 (3) そうだとすれば、本件失職事由の原因となつた行為が本件失職通知の一一年前の原告の学生時代における行為であることを考慮にいれても、このような犯罪を犯した原告が地方公務員として県立図書館という公共性の高い施設に在職することによつて、被告に勤務する公務員全体及び被告の公務自体に対する一般の信用を損なうおそれがないとはいえない。 (三) 次に、原告は、こうした自動失職制度を機械 図書館という公共性の高い施設に在職することによつて、被告に勤務する公務員全体及び被告の公務自体に対する一般の信用を損なうおそれがないとはいえない。 (三) 次に、原告は、こうした自動失職制度を機械的に運用すれば、退職直前まで勤務していた職員が、数十年前の犯罪行為を理由に突然失職させられ、しかも、退職金も支給されないという悲惨な結果を生じることになるから、こうした場合の自動失職制度の適用は、それ自体、なお、憲法一四条一項及び三一条に反する旨主張する。 しかしながら、任命権者において、当該職員について禁錮以上の刑に処せられた事実を知りながら、長期間にわたつてこれを放置し、何らかの機会にいわば報復的な意図のもとに右の前科を理由として失職措置を取つた場合であつて、右措置が禁反言ないに信義則の法理又は債権その他の権利関係の取得時効が問題となるような事案の場合は別として、本件のように、本件失職措置が失職事由の発生後三年にも満たず、かつ、後記のとおり、任命権者又はその補助職員であり、当該職員を指揮監督すべき立場にある管理職が失職事由の存在を知つていたことを認めるに足りる証拠のない事案においては、こうした適用違憲の問題が生じる余地はないといわなければならない。 (四) 更に、原告は、本件における原告のように既に長年月にわたり図書館職員として勤務し、その労働能力の実証をしており、他方、地公法二八条四項の機械的な適用が不合理かつ苛酷な結果を生ずる場合には、任命権者は、当該職員から再雇用の申し出があれば、他に懲戒事由等の特段の理由がない限り、これを再雇用する義務がある旨主張する。 しかし、地公法二八条四項により失職しか元職員の欠格事由が消滅し、その後において当該職員から再雇用の申し出があつたとしても、前述した地方公務員の地位の特殊性や職務内容の公共性から、 ある旨主張する。 しかし、地公法二八条四項により失職しか元職員の欠格事由が消滅し、その後において当該職員から再雇用の申し出があつたとしても、前述した地方公務員の地位の特殊性や職務内容の公共性から、職員の任命については、地公法上、競争試験等の厳格な手続が定められていること(同法一七条以下)に照らすならば、任命権者に当該職員を再雇用(再任用)する義務があるとは到底解し得ない。 よつて、再雇用義務の存在を前提として不公平取扱いをいう原告の主張は、採用できない。 (五) 従つて、本件失職措置がその適用において、憲法一四条一項及び三一条に違反するとの原告の主張は、採用できない。 3 刑の執行猶予期間満了による任用関係の回復の有無について(一) 原告は、仮に原告に対する地公法二八条四項の適用が違憲でないとしても、本件失職事由の発生後も労働契約関係成立の要件をなす勤務関係は継続しており、このように勤務関係が継続している間に、執行猶予期間の満了により刑の言渡そのものが効力を失つて原告の失格事由は消滅しているので、本件失職通知当時、失職の効力を生ずべき事由は存在しておらず、原告と被告との間の任用関係は継続している旨主張する。 しかしながら、前述したように、地公法二八条四項の定める失職制度は、当該失職事由が発生したこと自体により、任命権者の何らの意思表示も要しないで当然に当該公務員を失職させるものであるから、失職の効力が生じたのちに失職事由が消滅するというようなことはあり得ず、執行猶予期間の満了等により当該失職事由が地公法一六条所定の欠格事由に該当しなくなつたとしても、そのことにより既に発生した失職の効力が左右されるものではない。 従つて、原告の右主張は採用できない。 (二) 次に、原告は、地公法二八条四項による失職は、任命権者による失職通知が行われた時点で も、そのことにより既に発生した失職の効力が左右されるものではない。 従つて、原告の右主張は採用できない。 (二) 次に、原告は、地公法二八条四項による失職は、任命権者による失職通知が行われた時点ではじめて法的、社会的事実となるものであるところ、本件失職通知が行われたときにはその通知の前提となる失職事由が存在しなかつたにもかかわらず、被告は、原告が積極的な組合活動家であることから、その排除を目的として同通知をしたものであるから、本件失職措置は不当労働行為として無効である旨主張する。 しかしながら、前述したとおり、地公法二八条四項所定の失職は、失職事由が発生したときに法律上当然に効力を生ずるものであるから、本件においては、原告に対する失職の効力は、本件事件の刑事裁判が確定した日である昭和五二年五月一〇日に当然発生しているのであつて、本件失職通知は、単に右失職の事実を通知する観念の通知にすぎない。 よつて、原告の右主張は、本件失職通知を行政処分又はこれと同視すべきものであるとみるという前提において既に失当であるから、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。 (三) 更に、原告は、被告において、遅くとも昭和五二年八月ころまでには原告の欠格事由の存在を知つていながら、引き続き原告に対して勤務を命していたのであるから、執行猶予期間の満了により原告の資格が回復した昭和五四年五月一一日の時点で無効行為の追認又は黙示の再雇用契約が成立し、それ以後原告は、公務員たる地位を取得しており、そうでないとしても、失職通知により実質的解雇をすることは許されない旨主張する。 しかし、無効行為の追認又は再雇用(再任用)の有無並びに信義間が問題となるためには、任命権者において原告に失職事由が存在することを知りながら、雇用関係(任用関係)を継続させていたという事情 張する。 しかし、無効行為の追認又は再雇用(再任用)の有無並びに信義間が問題となるためには、任命権者において原告に失職事由が存在することを知りながら、雇用関係(任用関係)を継続させていたという事情の存在することが前提となるところ、任命権者又はその補助職員であり、原告を指揮監督すべき立場にある県立図書館長及び同図書館課長らの管理職が後記認定の昭和五四年一二月の通報より以前に、原告に本件失職事由が発生したことを知つていたことを認めるに足りる証拠はない。 そして、かえつて、前褐乙第二号証、証人A及び同Bの各証言、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められる。 (1) 原告は、前記起訴後保釈を認められ、その後判決宣告のあつた昭和五二年四月二五日までの間、おおよそ一か月に一回の割合で京都地方裁判所に公判のため出頭していたが、原告が被告に採用された昭和四七年以降は、その都度年次休暇を取つて出頭していた。もつとも、右年次休暇を取るに際しては、その理由を上司に告げていない。 (2) 原告は、本件失職措置を受ける以前には、同じく県立図書館に勤務している妻を除き、被告の職員には、昭和四九年に同館所属の運転手に、また、昭和五〇年に同館資料課の職員にそれぞれ、自分が学生時代に学生運動をしていて逮捕、起訴され、現在は公判係属中である旨を話したことがあるだけであり、この二名の職員に対しでも、それ以上事件の内容等にわたる説明はしていない。 (3) その後、奉件事件が確定したのちである昭和五二年八月ころ、兵庫県項磨警察署の警察官二名が県立図書館を訪れ、当時の同館副館長Aに対し、原告が同館に勤務しているかどうかを尋ねたのをはじめとして、同署及び同明石警察署の警察官が数回同図書館を訪れて原告の動静を尋ねた。そして、その際、原告が以前学生運動に参加 当時の同館副館長Aに対し、原告が同館に勤務しているかどうかを尋ねたのをはじめとして、同署及び同明石警察署の警察官が数回同図書館を訪れて原告の動静を尋ねた。そして、その際、原告が以前学生運動に参加していた旨を述べ、成田空港反対の統一行動が予定されていた特定の日をあげて、原告がその日に年次休暇を取れば、通報してもらいたい旨の要請をしたこともあつた。 (4) 前記Aは、昭和五二年八月に警察官が初めて来館したのちまもなく、原告に対してその旨を告げるとともに注意を促したが、このときにも原告は、本件失職事由については何も話さなかつた。そして、県立図書館長並びに当時総務課長でもあつた右A(同人は、昭和五二年四月一日から同年七月三一日までは、総務課長を兼任していた)及び同人の後任の総務課長であるB(同年八月一日以降)らの原告の上司は、警察が原告の動静を聞きに来るのを不審に思いながらも、原告に対してその理由を尋ねたことはなかつた。 (5) その後、昭和五四年一二月末ころに至つて、原告が有罪の判決を受けている旨の電話による通報があつたので、当局において、その対応策について協議した結果、右通報の真偽を確認するため、昭和五五年一月二八日、京都地方検察庁に職員を派遣して本件失職事由となつた判決の謄本を入手し、当局(原告の任命権者)は、この時点において、原告が禁錮以上の刑に処せられていた事実、すなわち、原告の本件失職事由の存在を確知するに至つた。以上のような事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。 そして、右認定事実に特定の職員について失職事由に該当する刑が確定しても、現行法上、任命権者がこれを知りうる制度的保障のないことをも合わせ考えると、原告の失職事由の発生から本件失職通知までに三年近くの期間が経過しているという点を考慮しても、被告において原告の失職 ても、現行法上、任命権者がこれを知りうる制度的保障のないことをも合わせ考えると、原告の失職事由の発生から本件失職通知までに三年近くの期間が経過しているという点を考慮しても、被告において原告の失職を主張することが信義則上許されないということはできない。 従つて、原告の右主張も理由がない。 三以上のとおりであるから、原告は、昭和五二年五月一〇日、本件失職事由に基づいて地公法二八条四項、一六条二号により当然に失職しており、その後原告と被告との間には任用関係は存在しないものといわなければならない。 四そうすると、原告と被告との間の任用関係の存在を前提とする原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴詮費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
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