昭和23(れ)14 窃盗、加重逃走

裁判年月日・裁判所
昭和23年5月15日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 広島高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件各上告を棄却する。          理    由  弁護人裾分正重の上告趣意書第一点は「被告人両名は原審公判の際心身耗弱の事 実上の主張をしてゐます。即ち公判調書の記載に

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判決文本文2,864 文字)

主文 本件各上告を棄却する。 理由 弁護人裾分正重の上告趣意書第一点は「被告人両名は原審公判の際心身耗弱の事実上の主張をしてゐます。即ち公判調書の記載に依ると第三丁表に於て、「被告人は頭が悪いのか」との裁判長の問に対し、被告人Aは、「はい。幼少の時脳膜炎を患つたことがあります。」と答へ、更に第四丁表には裁判長の問、「近頃頭の痛いことはないか。」答「時々頭の痛い事があります。」と述べた旨記してあります。 第九丁表には、被告人Bに対する裁判長の問、「病気したことがあるか。」答「少さい時脳膜を患つたことがありますが現在では時々痛む程度であります。」斯様に以上いづれも被告人等は嘗て脳膜炎を患ひ現在も時々痛むことを訴へてるます。被告人等が共に幼時脳膜炎に侵された為、白痴の如き状態であることは本弁護人が原審の審理の際公判廷で縷々陳弁したのみか、被告人Aが五十以下の数の計算すら出来ないことは保釈願書にも記しておいたのであります。同様のことは同人の父Cの提出した上申書にも記してあります。又原審公判調書第三丁表裁判長問「学校は何処まで行つたか。」答「高等小学校二年生の時中途退学し仕事を習ひに行きました」問、「然し、被告人は警察では高等小学校を卒業した様に述べてゐるが怎うか。」答「判りません」尚同公判調書第十丁表には被告人Aが警察吏に逮捕された時、「早く捕つて嬉しい。」などと口走つた旨を述べてあります。」以上は被告人が明瞭に白痴であることを物語るものであります。被告人等が白痴であることは本弁護人の力説するまでもなく、その挙措態度を見ただけでも充分判る筈でありました。さればこそ係の刑事が「両名とも低能だから弁護士をつけなくても執行猶予になるから安心せよ。」と同情的言辞を洩したのであります。弁護人が心身耗弱を理由とす 挙措態度を見ただけでも充分判る筈でありました。さればこそ係の刑事が「両名とも低能だから弁護士をつけなくても執行猶予になるから安心せよ。」と同情的言辞を洩したのであります。弁護人が心身耗弱を理由とする酌量減刑の弁論をしたのみか、被告人自身も前述の如く自己の精神状態につき心- 1 -身耗弱の事実を語つてゐるのであります。これを常識に照してみるに普通幼児が脳膜炎を患へば死亡する者多く、たとへ治癒しても大部分の者は白痴になるといふことを知らぬ者は殆んどありますまい。以上を以て明らかにした如く刑の加重減免の原由たる事実上の主張をなしたにも拘らず、原判決はこの点につき、刑法第三十九条二項の減軽をなさざるのみか、判断すら示してゐないのであります。これは刑事訴訟法第三百六十条二項に違背するものです。したがつて同法第四百十条第二十号に該当しますから原判決は当然破毀されて然るべく思ひます」というのである。 本件公判調書に、被告人等の頭脳の程度に関し、論旨主張のような裁判長と被告人との問答、その他の記載があることは記録上明らかであつて、原審の公判審理にあたつて、被告人等の頭脳の程度が相当問題になつたことは疑かない。しかし、原審はその審理の結果、被告人等は本件犯行の当時心神耗弱の状態にあつたものではないとの結論に達したことは、原判決か被告人等に対し、心神耗弱に因る刑の減軽をしていないところからみて明白である。が一方、原審が被告人等に対し本件の量刑をするにあたつては、たとえ心神耗弱に達していないまでも、常人には足らぬと思はれる被告人等の頭脳の状態は十分その考慮に入れたとみるのが妥当である。弁護人は原審において心身耗弱を事由とする刑の減軽の事実上の主張をしたというけれども、原審公判調書によれば、弁護人はその弁論において、両被告人の精神状態を縷述し、諸般の事情 たとみるのが妥当である。弁護人は原審において心身耗弱を事由とする刑の減軽の事実上の主張をしたというけれども、原審公判調書によれば、弁護人はその弁論において、両被告人の精神状態を縷述し、諸般の事情を斟酌の上、刑の執行猶予を求める旨述へたということは明らかであるけれども、弁護人か被告人等の精神状態について、鑑定の申請をした形跡もないし、これは畢竟執行猶予を相当とする情状論と解すべきであつて、刑事訴訟法第三百六十条にいわゆる刑の減軽の事由たる事実上の主張をしたものとはうけとれない。その他に、弁護人かその主張するような刑の減軽の主張をした事実は、公判調書上認められない。であるから原判決か、特に弁護人の主張に対する判断として、被告人等が当時心神耗弱の状況にあつたかどうかの点を判示しなかつたとし- 2 -ても、論旨のいうように、刑事訴訟法第四百十条第二十号の「判断を遺脱」したものということはできない。論旨は理由かない。 同第二点「原判決理由摘示第一の(二)によれば被告人Aはa町大字bc番地Cの所有する仮縫ミシンの頭部二台を窃取した旨記載してありますが右被害者たるCは被告人Aの父であります。この点は別紙戸籍謄本で立証致しますが、原審公判調書第三丁裏にもある通り、裁判長は、「被告人の父はCといふのか。」と確めてさえ居ります。したがつてこのミシンの頭部二台については刑法第二百四十四条の適用により、当然無罪たるべきであります。然るに原審がこれにつき有罪の判定を下してみるのは、実に不法といふの外なく、之を以てしても原判決が全く機械的になされた杜撰なものであるかゞ判ります。原判決の破毀さるべきことは疑を入れる余地のないものと断ぜざるを得ません。本来一見記録にも明瞭な如く、事件当時Aは満十五年四月なること。犯罪の所為期間が昭和二十二年六月十四、五日より二週 ゞ判ります。原判決の破毀さるべきことは疑を入れる余地のないものと断ぜざるを得ません。本来一見記録にも明瞭な如く、事件当時Aは満十五年四月なること。犯罪の所為期間が昭和二十二年六月十四、五日より二週間内の短期間に為されたものなること。それはDと云ふ有名な不良少年に誘拐された為であること。被害が全部弁償されてゐること。(保釈願書添付の被害者領収書及び上申書)。全被害者連名の寛大処置を乞ふ嘆願書。勾留期間の半ケ年に垂んたること。保護者のあること。等を斟酌すれば執行猶予の恩典は当然受け得られる筈なのに、疎漏な審理で苛酷な判決を下され、被告人は勿論のこと、家族一同甚だ遺憾に思つてゐます。上述の諸点を御考慮の上、原判決破毀の御勇断を仰ぎ度く思ふ次第であります。」しかし、被告人Aか窃取した所論ミシンの頭部二台は、同被告人の父Cの所有でないことは記録上明白であり、原判決も同人の所有であると認定した事実はないのであるから、論旨は理由かない。 以上の理由により、刑事訴訟法第四百四十六条に従ひ、主文の通り判決する。 右は全裁判官一致の意見である。 - 3 -検察官柳川真文関与昭和二十三年五月十五日最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官塚崎直義裁判官霜山精一裁判官栗山茂裁判官藤田八郎- 4 -

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