主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 3 被控訴人は、控訴人に対し、1628万9356円及びこれに対する平成14年5月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第一当事者の求めた裁判一控訴人主文と同旨の判決を求める。 二被控訴人 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴人の原判決の仮執行の宣言に基づく給付の返還及び損害賠償に係る申立てを棄却する。 3 控訴費用は控訴人の負担とする。 との判決を求める。 第二事案の概要本件の事案の概要、争いのない事実、争点及び当事者の主張は、当審における控訴人の主張を次のとおり付加するほかは、原判決「事実及び理由」第2及び第3に記載のとおりであるから、これを引用する。 一控訴人の主張(原判決の仮執行の宣言に基づく給付の返還及び損害賠償) 1 控訴人は、平成14年5月31日、被控訴人による原判決の仮執行によって、未払賃金及び賞与、これらに対する遅延損害金並びに仮執行手続費用として合計1628万9356円の支払を余儀なくされた。 2 よって、控訴人は、被控訴人に対し、上記仮執行の原状回復及び損害賠償として、1628万9356円及びこれに対する平成14年5月31日から同支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 二被控訴人の認否被控訴人が平成14年5月31日に原判決に基づく仮執行をしたことは認める。 第三当裁判所の判断一被控訴人が控訴人によって懲戒解雇されるに至った経緯被控訴人が控訴人によって懲戒解雇されるに至った経緯は、原判決「事実及び理由」第4に記載のとおりであり、その概要は、次のとおりである。 1(一) 被控訴人(昭和21年11月3日生まれ)は、昭 た経緯被控訴人が控訴人によって懲戒解雇されるに至った経緯は、原判決「事実及び理由」第4に記載のとおりであり、その概要は、次のとおりである。 1(一) 被控訴人(昭和21年11月3日生まれ)は、昭和46年4月1日、新聞記者として控訴人に雇用され、東京本社編集局に所属して、化学業界、繊維・紙パルプ業界、石油・電力業界、通産省、大蔵省、銀行・生命保険業界、重電機・家電業界、鉄鋼業界の取材業務等に従事した後、平成元年7月に編集局産業第三部次長に就任して編集業務に従事し、平成3年5月に論説委員会付き編集委員に、平成4年2月に同論説委員に就任した。 その一方で、被控訴人は、入社以来、いわゆるユニオンショップ協定によって加入が義務付けられていた産経労組(サンケイ労働組合)に入り、職場委員、選挙管理委員、労使協議会委員を務めるなどの組合活動にも従事したほか、平成3年6月には定期大会代議員に立候補したこともあったが、労働協約上、非組合員とされていた論説委員に就任した際、産経労組を脱退した。 (二) 控訴人は、その収支が平成4年後半から下落し、平成5年3月期に大幅な赤字に転落したため、経営の合理化に取り組み始め、同年7月、編集局国際担当及び同産業第四部を廃止し(同廃止に伴い、産業第四部次長は、浜松支局長に異動した。)、同年11月には、局の統合、総・支局の再編等による組織と要員の抜本的な見直し、交際費等の経費削減を重要項目とする中期経営計画を立てた。また、控訴人の販売局は、平成5年12月、首都圏における販売部数を引き上げるため、拠点強化対策の一つとして、千葉を関東総局から分立させて支局に昇格させ、支局長に編集経験豊かな有力人材を配置し、取材、報道活動を通じて地元産業経済界との関係を強化し、会社主催の展示会等の行事を積極的に展開して、千葉県における販売部 東総局から分立させて支局に昇格させ、支局長に編集経験豊かな有力人材を配置し、取材、報道活動を通じて地元産業経済界との関係を強化し、会社主催の展示会等の行事を積極的に展開して、千葉県における販売部数を5割増部することなどを内容とする「増紙首都圏強化3カ年計画」を策定するなどした(被控訴人自身も、平成4年3月、編集局出身のいわゆるデスククラスを支局長とする編集主導型のモデル支局を設置し、「広告取りの便宜的拠点」との従来の支局のイメージを脱却し、地道な取材活動を通じて、社の存在感を地域に植え付け、販売部数増を図る、首都圏のモデル支局の配置場所としては、千葉、横浜が考えられ、千葉は、東京湾横断道路の着工や幕張での新都心建設などいわゆるウォーターフロント経済の新しい中核としての成長が見込まれるため、現在の関東総局の一支所としての位置づけからモデル支局に昇格させ、人員の重点的な配置を行うべきとする「総・支局体制のあり方について」と題するレポートを控訴人の社長宛に提出していた。)。 そのような中で、控訴人のA常務は、平成5年6月10日、被控訴人に対し、出版局編集部長、日工フォーラム社編集長、支局長等への異動の打診をしたが、被控訴人が難色を示したため、同年7月期の異動対象者から被控訴人を除外した。 (三) 控訴人は、平成6年1月、編集局に論説委員会を統合し、編集局の部長に論説委員を兼務させること、関東総局から千葉支局を分離させて専任の支局長を配置し(その結果、千葉支局は、支局長と支局員1名で構成されることになった。)、横浜総局を横浜支局とすることなどを内容とする組織変更を明らかにし、A常務は、同月25日、被控訴人に対し、同年2月1日付けで千葉支局長に任命する旨の内示を行ったところ、被控訴人は、同居中の実母が高齢であり、転居することができない、通勤時 する組織変更を明らかにし、A常務は、同月25日、被控訴人に対し、同年2月1日付けで千葉支局長に任命する旨の内示を行ったところ、被控訴人は、同居中の実母が高齢であり、転居することができない、通勤時間が約2時間30分かかり、通勤もできないなどとして転任を拒絶し、控訴人のB社長との面談を要請した。被控訴人は、平成6年1月28日午後4時ころ、同社長と会い、被控訴人に対する内示の撤回を求めたが、同社長がこれに応じなかったため、新しい労働組合として「反リストラ・マスコミ労働者会議・産経委員会」(反リストラ産経労)を結成し、被控訴人が代表幹事に就任したことを明らかにし、控訴人に対し、団体交渉を求める旨の意向を示した。 しかしながら、控訴人は、平成6年2月1日、内示どおり被控訴人を千葉支局長とする人事発令を行い、同日4時20分ころ、B社長が被控訴人に辞令を交付しようとしたが、被控訴人は、その受取りを拒否し、反リストラ産経労の団体交渉に応ずるように求めたが、控訴人側は、適格性のある労働組合であることの確認ができないとして、これに応ずることはなかった。その一方で、被控訴人は、同日、東京都地方労働委員会に対し、結成した労働組合の資格審査申請書を提出したが、同申請書には、組合員数が9名である旨記載されていた。 反リストラ産経労は、平成6年2月4日、東京都地方労働委員会に対し、被控訴人の千葉支局長への配転や反リストラ産経労の団体交渉を拒否したことが不当労働行為に当たるとして、救済命令の申立てを行った。 (四) A常務は、平成6年2月7日、被控訴人に対し、異動の発令の日から原則として1週間以内に着任することとされている就業規則に基づき、翌8日に本社に出頭して業務指示を受けるよう伝えたが、被控訴人は、同日朝、本社に寄らずに直接千葉支局に赴任した。被控訴人は、同日 から原則として1週間以内に着任することとされている就業規則に基づき、翌8日に本社に出頭して業務指示を受けるよう伝えたが、被控訴人は、同日朝、本社に寄らずに直接千葉支局に赴任した。被控訴人は、同日午後4時、A常務の再度の求めに応じて本社に出頭し、A常務やC販売開発局長に対し、懲戒解雇を避けるためにやむなく赴任したが、今後も労働委員会や団体交渉の場において、本件配転の撤回を求めるなどと述べたほか、赴任した以上、支局長としての職務を遂行すると答えた。C販売開発局長は、被控訴人に対し、D関東総局長兼千葉支局長との引継ぎを速やかに行い、支局長としての職務を遂行するとともに、千葉県の経済事情を取材して100行程度の原稿を2週間程度で出稿するように指示した。 一方、A常務は、平成6年2月10日ころ、被控訴人に対し、控訴人が同月14日午後7時に反リストラ産経労との話合いに応ずる、会社としては話合いのつもりであるが、組合側が正式な団体交渉と解釈することは構わない旨を伝えたが、被控訴人は、団体交渉は、会社の会議室を使用し、双方の代表者が調印する議事録を作成するものでなければならないとし、この点で控訴人との折り合いがつかなかったため、結局、控訴人と反リストラ産経労との間において、話合いないし団体交渉が行われることはなかった。 (五) 販売開発局のE次長らは、平成6年2月15日、被控訴人を本社に呼び、出稿予定表、週間予定表を渡し、千葉支局長である被控訴人と支局員であるFとの取材分野の分担、出稿計画、F支局員の原稿に対する支局長としての点検や指導等について打合せを行おうとしたが、自分は自分、FはF、当分原稿は出さないなどと述べて、これに応じようとしなかったため、C販売開発局長は、同月16日、被控訴人に対し、F支局員に対する指導管理を行い、支局の出稿体制を整え おうとしたが、自分は自分、FはF、当分原稿は出さないなどと述べて、これに応じようとしなかったため、C販売開発局長は、同月16日、被控訴人に対し、F支局員に対する指導管理を行い、支局の出稿体制を整えるように要請したが、被控訴人は、これに応じることはなかった。 被控訴人は、そのころ、控訴人が、被控訴人は、控訴人の部長職にあり、控訴人の利益代表者であるから、そのような者の参加を許す反リストラ産経労には労働組合としての適格性がないとして、反リストラ産経労が控訴人を相手方として申し立てた不当労働行為救済命令の申立てを却下するように求める答弁書を、東京都地方労働委員会に提出したことを知った。 C販売開発局長らは、平成6年2月21日、千葉支局の常備金を預け入れるための支局長名義の普通預金口座を設け、支局長として金銭出納業務を行うとともに、F支局員が作成する支払伝票の部長欄に決裁印を押すように求めたが、被控訴人は、被控訴人が結成した反リストラ産経労の労働組合としての適格性に疑いを抱かせるのが狙いである、自分は、管理職ではないなどと述べて、これにも応じようとせず、また、被控訴人は、同年3月1日、控訴人に対し、同年2月25日から増額して支給された手当の2万1212円を返却し、以後、その受取りを拒絶した。 A常務は、平成6年2月25日、被控訴人に対し、速やかに支局長としての業務を果たすように求める通告書を作成して送付したが、被控訴人は、同年3月1日、反リストラ産経労の名前で、東京都地方労働委員会に対する救済命令の申立てを妨害する不当労働行為であるとして、これに抗議する旨の抗議書を作成して控訴人に送付した。 (六) 被控訴人は、千葉支局に赴任後に年次休暇を取得する際は、その申請を当日の朝に本社に電話を掛けて行っていたため、A常務は、平成6年3月1日、控訴 議する旨の抗議書を作成して控訴人に送付した。 (六) 被控訴人は、千葉支局に赴任後に年次休暇を取得する際は、その申請を当日の朝に本社に電話を掛けて行っていたため、A常務は、平成6年3月1日、控訴人に対し、当日では支局長の代替者を充てることが困難であるとして、前日までに申請するように求めたが、従前から当日朝に申請しており、労働慣行であるとして、これに応じようとせず、その後も、当日の午前9時すぎに年次休暇の申請をした。また、A常務は、同日、被控訴人に対し、F支局員の記入する勤務表に支局長として押印するように求めたが、被控訴人は、これにも応ずることはなく、F支局員が被控訴人に対して押印を求めても、これを拒否した。 控訴人の従業員に対する人事考課は、毎年3月と10月に行われているところ、A常務は、平成6年3月7日ころ、被控訴人に対し、F支局員の考課表を作成し、本社に送付するように求めたが、控訴人は、白紙のままの考課表を本社に送付した。 (七) 被控訴人は、千葉支局に着任した際にC販売開発局長から指示されていた千葉県の経済事情に関する記事の出稿を、再三にわたり求められていたところ、平成6年3月30日、「出口見えぬ千葉経済」と題する記事原稿を出稿し、同原稿は、同年4月6日の紙面に掲載されたが、同月14日及び同年6月2日に掲載が予定されていた「列島クローズアップ」と題する特集記事については、被控訴人が執筆しなかったため、C販売開発局長は、F支局員に指示してこれを執筆させた。 C販売開発局長は、平成6年3月28日、全総・支局長に宛てて、平成6年度における各総・支局の編集方針、重点計画を明らかにして書面で回答するように求めていたところ、被控訴人は、同年4月4日の提出期限を徒過し、同月19日、「政府、大手マスコミの『景気回復』キャンペーンに組さず、マク 総・支局の編集方針、重点計画を明らかにして書面で回答するように求めていたところ、被控訴人は、同年4月4日の提出期限を徒過し、同月19日、「政府、大手マスコミの『景気回復』キャンペーンに組さず、マクロ的視点から不況の実態、非人間的リストラの進行、倒産などをウオッチして行く。会社側は不当労働行為をやめ、直ちに団交に応じたうえ、Gを原職に復帰させること」とのみ記載された文書を送付した。 (八) C販売開発局長は、平成6年6月3日、関東総局長及び横浜支局長のほか、千葉支局長の被控訴人に宛てて、同月13日に、4月から6月までの業績報告と7月から9月までの取組みについて協議する首都圏総支局長会議を開催する旨の通知を出し、事前に、報告文書を送付するように求めていたが、被控訴人は、同文書を提出せず、同会議を欠席した。 一方、控訴人は、平成6年6月15日から3日間、幕張メッセにおいて、「ウィンドウズ・ワールド・エキスポ・東京」と題する展示会の主催をしたところ、千葉支局の編集、営業活動に関わるとして、被控訴人にも、千葉支局長として開会式及び懇親会に出席するように求めていたが、被控訴人は、団体交渉において話合いがつかない限り応じないとして、結局、これに出席することはなかった。 C販売開発局長は、平成6年6月20日、被控訴人に対し、同年7月7日掲載予定で、幕張副都心か、東京湾横断道路をテーマとする特集記事を執筆するように指示し、同月4日、Cの後任で販売開発局長に就任したHが改めて出稿を要請したところ、被控訴人から執筆できないとの明確な返事がなかったため、出稿されるものと判断して原稿の提出を待っていたが、被控訴人が結局その提出をしなかったため、控訴人は、同月7日の紙面において、同特集記事を休載する旨の断りを載せた。 (九) H販売開発局長は、平成6年7月4日 のと判断して原稿の提出を待っていたが、被控訴人が結局その提出をしなかったため、控訴人は、同月7日の紙面において、同特集記事を休載する旨の断りを載せた。 (九) H販売開発局長は、平成6年7月4日、各総・支局長に宛てて、同月11日に控訴人の全体会議と東京本社管轄総支局長会議を開催する旨の通知をしたが、被控訴人は、組合員資格を疑わせるような指示には応じられないとし、結局、同会議にも出席しなかった。 控訴人は、平成6年8月に全国の地域経済の回復状況について報告した特集記事の掲載を企画し、同月5日、全国の総支局長に宛てて各地の実情についての記事を執筆するように要請したが、被控訴人は、同原稿を出稿せず、同月18日及び19日に掲載された上記特集記事では、千葉県の実情が報告されることはなく、H販売開発局長は、被控訴人に対し、厳重に注意する旨の文書を送付した。 (一〇) A常務は、そのころ、被控訴人が出勤すべき日の午前10時から正午までの間に被控訴人に電話を掛けても不在であったことから、被控訴人のこうした就労状況を注意するため、平成6年8月22日、本社に出頭するように求めたが、被控訴人は、これに応じなかった。 B社長は、千葉支局長としての業務を放棄している被控訴人を注意するため、平成6年9月8日、社長付き特命担当のCらを通じて、被控訴人に対し、支局長としての業務を遂行するように求めたが、被控訴人は、これを聞き入れることはなく、翌日、Cらが再度被控訴人を説得しようと千葉支局に赴いたものの、被控訴人は、何らの連絡もないまま千葉支局に出勤しなかったため、H販売開発局長は、同月12日、被控訴人が千葉支局長としての所定の業務を遂行せず、千葉支局の運営に重大な支障を来しているとして、控訴人の賞罰委員会に対し、被控訴人に対する制裁について付議するように求める申 発局長は、同月12日、被控訴人が千葉支局長としての所定の業務を遂行せず、千葉支局の運営に重大な支障を来しているとして、控訴人の賞罰委員会に対し、被控訴人に対する制裁について付議するように求める申請を行うとともに、被控訴人に対し、弁明を希望するのであれば、同月19日午前10時に出頭されたい旨の通知をした。これに対し、被控訴人は、反リストラ産経労の名前で、被控訴人に対する懲戒処分は不当労働行為であるとして団体交渉を求めたが、控訴人は、これを拒否し、平成6年9月19日、本件賞罰委員会が開催された。本件賞罰委員会には、A常務、H販売開発局長、I常務取締役、J取締役、K営業局長、L事業局長、M編集局長が委員として出席し、A常務が委員長に就任して、被控訴人に弁明を促したところ、被控訴人は、被控訴人を千葉支局長にしたのは不当配転であり、控訴人は、被控訴人の組合資格を疑わせるための業務を押し付けた、被控訴人は、公式の業務命令を受けたことはなく、これを拒否したこともない、賞罰委員会への付議は不当労働行為である、千葉支局長の業務の具体的な在り方について協議を求めるなどと述べた。本件賞罰委員会は、C特命担当が説明した被控訴人の勤務状況を踏まえ、千葉支局赴任後の被控訴人の振舞いは、就業規則78条5号(異動命令その他業務上の必要にもとづく会社の命令を拒否したとき)に当たるとして、被控訴人を懲戒解雇に処することを議決した。 控訴人は、上記議決を受け、同日、被控訴人に対し、同月22日付けで被控訴人を懲戒解雇処分とすることを通告した。 2 これに対し、被控訴人は、千葉支局に赴任してから多忙な取材活動に従事し、控訴人が一方的に日時を決めた会議や展示会に出席することは不可能であった、出稿の要請に応じなかったのは、与えられたテーマが実体にそぐわず、テーマの再検討を求め に赴任してから多忙な取材活動に従事し、控訴人が一方的に日時を決めた会議や展示会に出席することは不可能であった、出稿の要請に応じなかったのは、与えられたテーマが実体にそぐわず、テーマの再検討を求めたにもかかわらず、控訴人がこれに応じなかったためである旨を主張する。 確かに、証拠(甲第88号証の1ないし11、第90号証の1ないし3、5ないし15、第91の1ないし21、第94号証の1ないし5)によれば、被控訴人は、千葉県の企画部や総務部等の担当者、千葉商工会議所の専務理事、千葉県経済同友会事務局次長、川崎製鉄株式会社の役員や職員、千葉銀行の広報部長、京葉銀行の役員や職員、株式会社オリエンタルランドの広報室長、京成電鉄株式会社の広報課長、扇屋ジャスコ株式会社の代表取締役、京葉ガス株式会社の広報室長、シャープ株式会社の役員や東京広報室長、日本開発銀行の職員等との間で、これらの者の着任時、転任時等において、名刺交換をしたこと、被控訴人は、東京ディズニーランドを経営する株式会社オリエンタルランドが報道関係者向けに作成した同社の概要説明書、株式会社東京商工リサーチが作成した千葉県内の企業倒産状況を説明した報告書、大蔵省関東財務局が作成した景気予測調査関東管内分析結果概要と題する概要書、千葉県が構想した先端技術産業の研究開発拠点に関する関連資料、日本開発銀行が作成した千葉県の経済動向に関する資料、千葉県中小企業団体中央会が作成した千葉県内の中小企業の景気動向に関する資料、シャープ株式会社が作成した同社の幕張ビルの概要書等を入手していたことの各事実を認めることができる。これらの資料は、その内容に鑑みても、いずれも容易に入手可能な資料というべきものであって、半年以上にわたる取材活動の成果としてはあまりに乏しいものというほかなく、上記のような名刺交換や、 ができる。これらの資料は、その内容に鑑みても、いずれも容易に入手可能な資料というべきものであって、半年以上にわたる取材活動の成果としてはあまりに乏しいものというほかなく、上記のような名刺交換や、被控訴人が入手したという上記資料の存在をもってしても、被控訴人が千葉支局に赴任後、多忙な取材活動に従事していたことを窺い知ることは到底できない。また、被控訴人は、千葉支局に赴任後、控訴人に対して、自らの取材状況について報告をした形跡すらなく、記事のテーマについての再検討を要請し、本社側の局長らとこの点について協議したことを裏付ける証拠もない。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 3 前記1の事実関係によれば、控訴人は、平成5年3月期に収支が赤字に転落したのを契機として、経営を合理化し、発行する日本工業新聞の販売部数を増部させるための様々な計画に取り組み始め、その一貫として、千葉を関東総局から分立させて支局に昇格させ、支局長に編集経験の豊かな人材を配置し、取材、報道活動を通じて地元の経済界との関係を強化し、会社主催の展示会等の行事を積極的に展開する構想が立てられ、当時、控訴人の論説委員をしていた被控訴人を平成6年2月1日付けで千葉支局長に任命する旨の内示を行ったところ、被控訴人は、自宅から千葉支局までの通勤時間が片道約2時間30分も要することになる上に、千葉支局自体、部下となる支局員が1名いるにすぎなかったことから、その処遇に強い不満を抱き、同内示を撤回させるため、自らが代表幹事となって設立したという労働組合(反リストラ産経労)との団体交渉に応ずるように求めるようになり、平成6年2月1日に実際に千葉支局長に任命する旨の辞令が発令(本件配転)されるや、反リストラ産経労を申立人として東京都地方労働委員会に対し、本件配転や団体交 の団体交渉に応ずるように求めるようになり、平成6年2月1日に実際に千葉支局長に任命する旨の辞令が発令(本件配転)されるや、反リストラ産経労を申立人として東京都地方労働委員会に対し、本件配転や団体交渉を拒否したことが不当労働行為に当たるとして、救済命令の申立てを行ったが、同月8日、本件配転を拒否して懲戒解雇されることを避けるため、千葉支局に支局長として赴任した。ところが、上記救済命令申立事件において、控訴人が、被控訴人は、使用者である控訴人の利益代表者であるから、そのような者の参加を許す反リストラ産経労には、労働組合としての適格性がないとして、同救済命令の申立てを却下するように求める答弁書を提出したことを知るや、使用者である控訴人の利益代表者であると疑われることを避けるため、千葉支局の運営や支局員の管理、本社での総支局長会議への出席等を始めとする支局長としての業務をことごとく拒否したばかりか、控訴人が経営の立直策の一貫として企画した千葉県内における展示会への参加要請にも、千葉県内の経済状況に関する記事の出稿要請にも応じなかったところ、着任から7か月を経過した同年9月8日に、控訴人の社長名で、支局長としての業務に従事するように求められたにもかかわらず、これにも耳を傾けようとしなかったため、控訴人は、被控訴人を懲戒解雇に処する旨の本件賞罰委員会の議決を経た上、被控訴人を解雇したものであるということができる。 二本件解雇と懲戒権の濫用 1 控訴人の就業規則78条5号が、従業員が異動命令その他業務上の必要に基づく会社の命令を拒否したときを、懲戒解雇事由の一つとしていることは、前記争いのない事実のとおりであるところ、被控訴人は、千葉支局に支局長として赴任してから本件解雇に至るまでの半年以上の間、支局長として行うべき支局や支局員に対する管理業務を の一つとしていることは、前記争いのない事実のとおりであるところ、被控訴人は、千葉支局に支局長として赴任してから本件解雇に至るまでの半年以上の間、支局長として行うべき支局や支局員に対する管理業務を一貫して行わなかったばかりか、新聞記者としても、80行程度の記事を1回出稿したのみで、その後は、記事の出稿要請を拒否し、記者として最低限の取材活動を行った形跡すら窺われず、控訴人が経営の立直策の一貫として主催した千葉県内における展示会への参加も拒否した上に、控訴人の社長名で支局長としての業務に従事するように求められたにもかかわらず、これにも耳を傾けようとしなかったのであるから、こうした被控訴人の姿勢は、単に、会社の利益代表者と疑われるのを避けようとしたものにとどまらず、控訴人の従業員として行うべき最低限の業務をも放棄したものというほかなく、被控訴人の一連の振舞いが就業規則78条5号の懲戒解雇事由に該当することは明らかであり、その内容や、新たに発足した千葉支局の業務を半年以上にわたって滞らせた結果も重大というべきであることに鑑みると、被控訴人が千葉支局に赴任する以前の取材活動等において控訴人に対する貢献がそれなりにあったことを十分に考慮したとしても、控訴人が被控訴人を懲戒解雇したことは、客観的にみても合理的な理由に基づくものというべきであり、本件解雇は、社会通念上相当と是認することができ、懲戒権を濫用したものということはできない。 確かに、被控訴人が千葉支局長としての業務を拒否したのは、被控訴人が反リストラ産経労を申立人として救済命令の申立てをしたことや、同事件において、被控訴人が使用者である控訴人の利益代表者である旨の主張がされたことが背景にあったものと考えられるが、被控訴人が就任した千葉支局長が労働組合法2条1号所定の「役員、雇入解雇昇進 や、同事件において、被控訴人が使用者である控訴人の利益代表者である旨の主張がされたことが背景にあったものと考えられるが、被控訴人が就任した千葉支局長が労働組合法2条1号所定の「役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者」に該当するか否か、あるいは、本件配転や、控訴人が反リストラ産経労との団体交渉に応じないことが不当労働行為に当たるか否かという点は、東京都地方労働委員会における審理、あるいはその後の訴訟の場において決せられるべきものであり、千葉支局長としての業務にとどまらず、控訴人の従業員として行うべき最低限の業務をも放棄したことを正当化し得るものでないことは明らかである。 また、証拠(甲第100号証、乙第137号証、第146号証)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人の従業員であった者の中には、かつて、新聞記者でありながら記事を出稿しなかった者や、記事を捏造したり、取材不足のため不正確な記事を書いた者がいたものの、本件解雇以前には控訴人の従業員で懲戒解雇された者は存在しなかったことが認められるが、同証拠によれば、これらの者が上記のような行為に及んだ時期は、入社歴が10年前後のものであったり、その背景に病的な要因の存在が窺われるものであったことが認められ、本件解雇の場合と一概に比較することはできないものである上、前記認定に係る被控訴人の千葉支局赴任後の一連の振舞いに鑑みると、本件解雇が不平等な処分であるということもできない。 2 被控訴人は、控訴人から業務に関する指示はあったが、命令はなかったとし、懲戒 、前記認定に係る被控訴人の千葉支局赴任後の一連の振舞いに鑑みると、本件解雇が不平等な処分であるということもできない。 2 被控訴人は、控訴人から業務に関する指示はあったが、命令はなかったとし、懲戒処分に付すにしても、懲戒解雇は過酷であり、懲戒休職にとどめるべきであった旨を主張する。 しかしながら、被控訴人は、本件配転に係る命令によって千葉支局に赴任したものの、半年以上にわたり、従業員としての最低限の業務すら拒否していたというほかないもので、所属長の個々の業務上の指示に従わなかったという程度にとどまらないものであり、その結果、使用者である控訴人に与えた損害も大きかったものであるから、控訴人が被控訴人を懲戒解雇としたことが社会的相当性を逸脱したものとは解されず、被控訴人の上記主張は採用することができない。 3 被控訴人は、控訴人の賞罰委員会規程14条は、委員が「事案の直接の関係者」であるときは、その審議に加わることができないとしているところ、H販売開発局長及びA常務は、被控訴人の上司であり、被控訴人が背いたという業務命令を行った者であって、事案の直接の関係者であるというべきであるから、賞罰委員会の議決には手続上の瑕疵があるというほかなく、そうである以上、これを前提とする本件解雇も違法である旨を主張する。 控訴人の就業規則71条は、懲戒処分等の制裁は、賞罰委員会の議を経て決定する旨を定め、賞罰委員会が定めた賞罰委員会規程によれば、委員会は、就業規則に定める従業員の表彰及び制裁について、公正な審議を行い、その要否、程度、方法等を決定する(2条)、委員は、役員又は局長以上の職位を有する者の中から選任し、委員は、委員会に付議された事案の審議に当る(5条)、委員会が必要と認めた場合は、審議する事案の関係者を委員会に出席させ、その意見を聴取することが は、役員又は局長以上の職位を有する者の中から選任し、委員は、委員会に付議された事案の審議に当る(5条)、委員会が必要と認めた場合は、審議する事案の関係者を委員会に出席させ、その意見を聴取することができる(10条)、委員会は、制裁の議に付された者をその希望により委員会に出席させ、弁明の機会を与えることがある(11条)、委員が事案の直接の関係者であるときは、その審議に加わることができない(14条)、所属長および幹事は、従業員の行為が表彰又は制裁に当ると認めたときは、委員会に申請しなければならない(17条)ものとされていることは、原判決認定のとおりである。 以上のような就業規則及び賞罰委員会規程の文言及び内容、殊に、賞罰委員会の委員が役員又は局長以上の職位を有する者の中から選任されるものとされていることに鑑みると、本件賞罰委員会は、労使の代表等によって構成される懲戒委員会などの例とは異なり、使用者である控訴人の懲戒権等の行使を公正ならしめるために設置された内部的な機関にすぎず、このような本件賞罰委員会の性格に照らすと、賞罰委員会規程が委員会の審議に加わることができないものとしている「事案の直接の関係者」とは、当該賞罰の議に付された本人又はこれに準ずる者及び賞罰の審議の対象とされた賞罰事由(非違行為等)そのものに直接関わった者(本人と共同して非違行為等に関わった者など)をいうと解するのが相当であり、同規程の定めは、これらの者が委員として賞罰委員会の審議に参加した場合には公正を害するおそれがあることから、これを排除する趣旨に出たものと解される。 これを本件についてみると、本件賞罰委員会には、A常務、H販売開発局長、I常務取締役、J取締役、K営業局長、L事業局長、M編集局長の7名が委員として出席し、A常務が委員長に就任して、被控訴人に対する懲戒 を本件についてみると、本件賞罰委員会には、A常務、H販売開発局長、I常務取締役、J取締役、K営業局長、L事業局長、M編集局長の7名が委員として出席し、A常務が委員長に就任して、被控訴人に対する懲戒処分が審議されたこと、委員長のA常務は管理担当の役員であり、H販売開発局長は、平成6年7月4日にC局長の後任として販売開発局長に就任して被控訴人の直接の所属長となった者であって、両名は、被控訴人に対して具体的な業務命令を出した者であること、H販売開発局長は、業務命令違反が懲戒処分に相当するとして、所属長として賞罰委員会に付議の申請した者であることは、前記のとおりであって、このように上司として業務命令を発し又は所属長として賞罰委員会に付議の申請した者が当該賞罰の議に付された本人又はこれに準ずる者や、審議の対象とされた非違行為等そのものに直接関わった者でないことは明らかであるから、両名が賞罰委員会規程14条所定の「事案の直接の関係者」に当たるものということはできない。これを実質的にみても、前記賞罰規程では、委員は、控訴人の役員又は局長以上の管理職員の中から選任されることとされているものであるところ、こうした役員又は管理職員は、従業員に対する業務命令に多かれ少なかれ関与することは避けられず、単に業務命令を発したとか、所属長として賞罰委員会に付議の申請をしたということだけで、審議に加わることができないとすることは、本件賞罰委員会の規程上も想定されたことではないというべきである。 のみならず、本件賞罰委員会は、前記のとおり、使用者である控訴人の懲戒権等の行使を公正ならしめるために設置された内部的な自律的制限機関にすぎないのであるから、単に議事が賞罰委員会の規程に違反して行われたということだけで、直ちに当該懲戒処分の無効を来すものと解することはできず、 を公正ならしめるために設置された内部的な自律的制限機関にすぎないのであるから、単に議事が賞罰委員会の規程に違反して行われたということだけで、直ちに当該懲戒処分の無効を来すものと解することはできず、他には手続上の瑕疵というべき事由も見当たらないのであるから、本件解雇を無効とすることはできない。 三本件解雇と不当労働行為被控訴人は、本件解雇は、被控訴人の組合活動を嫌悪して、被控訴人を職場から排除するためにされた不当労働行為であり、労働組合法7条1号及び3号に違反して無効である旨を主張する。 しかしながら、前記一1で認定した事実関係によれば、被控訴人は、もともと、他の従業員と比較しても際だった組合活動をしていた者であるとはいい難く、論説委員に就任した際には、就業規則に従って従来加入していた産経労組を脱退していたものであるところ、控訴人の経営の合理化の影響を受けた本件配転に強い不満を抱き、異動に係る内示を撤回させるため、自らが代表幹事となって設立したという労働組合との団体交渉に応ずるように求めるようになったもので、その後、千葉支局に支局長として赴任したものの、千葉支局の運営や支局員の管理、本社での総支局長会議への出席等を始めとする支局長としての業務をことごとく拒否したばかりか、控訴人が経営の立直策の一貫として企画した千葉県内における展示会への参加要請にも、千葉県内の経済状況に関する記事の出稿要請にも応ずることはなく、控訴人の社長名で、支局長としての業務に従事するように求められたにもかかわらず、これにも耳を傾けようとしなかったため懲戒解雇されたのであり、同懲戒解雇に懲戒権の濫用があると認めることはできないことは前記二のとおりである。 したがって、確かに、本件解雇は、被控訴人が反リストラ産経労を申立人として、本件配転や、反リストラ産経労に であり、同懲戒解雇に懲戒権の濫用があると認めることはできないことは前記二のとおりである。 したがって、確かに、本件解雇は、被控訴人が反リストラ産経労を申立人として、本件配転や、反リストラ産経労による団体交渉の申入れを拒否したことが、不当労働行為に当たるとして申し立てた救済命令申立事件の審理中にされたものではあるものの、本件解雇には十分な合理性があるのであって、被控訴人が設立したという反リストラ産経労が、仮に、労働組合法所定の労働組合であるとしても、被控訴人が同組合を結成したこと、その組合員であること、労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、本件解雇がされたということはできないから、本件解雇が労働組合法7条1号本文前段の不利益取扱いに当たるとはいえず、そうである以上、同条3号の支配介入に当たるともいえないから、控訴人らの上記主張は採用することができない。 四結論以上の次第で、本件解雇は有効であり、被控訴人の本訴請求は理由がないから、これを棄却し、これと判断を異にする原判決を取り消すこととし、また、弁論の全趣旨によれば、控訴人は、平成14年5月31日、被控訴人による原判決の仮執行に基づいて、未払賃金及び賞与、これらに対する遅延損害金並びに仮執行手続費用として合計1628万9356円の支払を余儀なくされたことが認められ、したがって、原判決の仮執行の宣言に基づく給付の返還及び損害賠償の支払を求める控訴人の申立ては理由があるから、これを認容することとし、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第8民事部裁判長裁判官村上敬一裁判官水谷正俊裁判官永谷典雄 裁判官永谷典雄
▼ クリックして全文を表示