平成18(行ウ)3 違法手当金返還命令等請求事件(通称 奈良市職員特殊勤務手当返還)

裁判年月日・裁判所
平成20年3月19日 奈良地方裁判所
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判決文本文23,028 文字)

- 1 -主文 本件訴えのうち,被告に対して奈良市従業員労働組合に対する損害賠償請求を求める部分及び被告に対してaに対する賠償命令を求める部分を却下する。 被告は,b,cに対し,それぞれ金531万7750円及びこれに対する平成17年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償命令をせよ。 原告らのその余の請求を棄却する。 訴訟費用はこれを3分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告は,d,e,奈良市従業員労働組合に対し,金3086万7700円及びこれに対する平成17年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。 被告は,b,c,aに対し,金3086万7700円及びこれに対する平成17年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償命令をせよ。 第2事案の概要 本件は,奈良市(以下「市」という。)の市民である原告らが,市環境清美第一事務所(以下「第一事務所」という。)に勤務する現業職員に対して平成16年11月以降同17年3月までの間に支給された特殊勤務手当の一部(以下「本件特殊勤務手当」という。)について,これが特殊勤務手当の趣旨に反し,あるいは根拠となる規則で定められた額を超過する違法があるとして,奈良市長である被告に対し,地方自治法242条の2第1項4号本文に基づき,市長の職にあったd(以下「d元市長」という。),e(以下「e前市長」という。)及び奈良市従業員労働組合(以下「従業員労組」という。)に対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることを求め,同号ただし書に基づき,出納室長であったb(以下「b元出納室長」という。),人事課長であったc- 2 -(以下「c元人事課長」という。)及び第一事務所の所長であったaに 害賠償請求をすることを求め,同号ただし書に基づき,出納室長であったb(以下「b元出納室長」という。),人事課長であったc- 2 -(以下「c元人事課長」という。)及び第一事務所の所長であったaに対し(以下「a元所長」という。),賠償命令をすることを求めた事案である。 争いのない事実⑴当事者等ア原告らは,いずれも市の住民であり,被告は市の市長である。 イ相手方らd元市長は,平成4年9月28日から平成16年9月27日まで,e前市長は平成16年9月28日から平成17年7月13日まで市長の職にあった者であり,b元出納室長は市の出納室長として,平成16年9月28日から平成17年8月31日まで収入役職務代理者であった者,cは平成15年4月1日から平成17年3月31日まで市の人事課長であり,市職務専決規定6条に基づき特殊勤務手当の支出負担行為を決定する権限を有していた者,a元所長は平成15年4月1日から平成17年3月31日まで第一事務所の所長であった者である。 ⑵特殊勤務手当支給に関する規則の制定状況市職員に対しては,「奈良市一般職の職員の給与に関する条例」(以下「本件条例」という。)26条により特殊勤務手当が支給できるものとされており,特殊勤務手当の種類,受給者の範囲,手当の額及び支給方法については,市長が規則で定めるとされている。 第一事務所の職員に対しては,本件条例に基づいて定められた「奈良市職員の特殊勤務手当に関する規則」(以下「特殊勤務手当規則」という。)により,下記の特殊勤務手当が支給されていた。 ア廃棄物収集作業手当第一事務所に勤務し,廃棄物収集作業に従事する現業職員に対し,日額540円。 イ皆勤精励手当- 3 -第一事務所に勤務し,廃棄物収集作業に従事する現業職員で1か月内における年次休暇等の日数が以下の者 務所に勤務し,廃棄物収集作業に従事する現業職員に対し,日額540円。 イ皆勤精励手当- 3 -第一事務所に勤務し,廃棄物収集作業に従事する現業職員で1か月内における年次休暇等の日数が以下の者に対し,次の金額。 1日以内の場合月額1万円1日を超え2日以内の場合月額8000円2日を超え3日以内の場合月額5000円3日を超え4日以内の場合月額3000円ウ出勤奨励手当第一事務所に勤務し廃棄物収集作業に従事する現業職員に対し,日額500円。 エ休日出勤特別手当週休日及び国民の祝日に関する法律に規定する休日に第一事務所に勤務する職員(管理職手当の支給を受ける職員を除く)に対し,日額5000円。 オ区域外作業手当第一事務所に勤務し廃棄物収集作業に従事する現業職員で,担当区域外の作業に従事した者に対し,日額3500円(ただし,木曜に及び金曜日にあっては3000円)。 カ大型ごみ収集手当第一事務所に勤務し,廃棄物収集作業に従事する現業職員で,大型ごみ収集作業をした者に対して,勤務1回につき1500円。 ⑶手当の支給状況ア区域外作業手当については,日額3500円を超える支給が行われた。 イ大型ごみ収集手当については,勤務1回につき3000円ないし4500円が支給されていた。 ⑷監査請求原告らは,平成17年11月25日,市監査委員らに対し,地方自治法2- 4 -42条1項に基づく監査請求(以下「本件監査請求」という。)を行い,市監査委員は平成16年11月分から平成17年3月分までの特殊勤務手当の支出について,本件監査請求を棄却する旨の決定をし,その旨原告らに通知した。 争点 ⑴特殊勤務手当の違法性(争点⑴)ア区域外作業手当及び大型ごみ収集手当の違法性イ特殊勤務手当規則の違法性⑵相手方らの行為の違法性( 却する旨の決定をし,その旨原告らに通知した。 争点 ⑴特殊勤務手当の違法性(争点⑴)ア区域外作業手当及び大型ごみ収集手当の違法性イ特殊勤務手当規則の違法性⑵相手方らの行為の違法性(争点⑵) 争点に関する当事者の主張⑴争点⑴(特殊勤務手当の違法性)についてア区域外作業手当及び大型ごみ収集手当の違法性について(原告らの主張)区域外作業手当は,特殊勤務手当規則において日額3500円と定められているにもかかわらず,実際の運用上は独自の回数制で算定され,同規則において定められた額を超える手当が支給されており,その超えた部分の支出(平成16年11月から平成17年3月分までの額は325万8500円)は違法である。大型ごみ収集手当についても,特殊勤務手当規則においては勤務1回について1500円と定められているにもかかわらず,実際には勤務1回について3000円ないし4500円が支給されている。 また,大型ごみ収集手当は,大型ごみ収集の依頼を受け付ける電話受付業務や,大型ごみの収集場所を地図で確認し,収集経路を選定して書き入れるなどの地図確認作業についても支給されているが,これらが特殊勤務手当の支給対象となる「著しく危険,不快,不健康又は困難な勤務その他著しく特殊な勤務」(一般職の職員の給与に関する法律13条1項)に該当しないことは明らかであり,この部分についても特殊勤務手当規則に反す- 5 -る支出である。したがって,同規則で定める額を超えた部分の大型ごみ収集手当の支出(平成16年11月から平成17年3月までの額は737万7000円)は違法である。 被告は,特殊勤務手当規則を超える部分については,市と従業員労組との間で締結した労働協約に基づく支給であるから適法であると主張するが,労働協約は書面で作成され,かつ両当事者により 円)は違法である。 被告は,特殊勤務手当規則を超える部分については,市と従業員労組との間で締結した労働協約に基づく支給であるから適法であると主張するが,労働協約は書面で作成され,かつ両当事者により署名又は記名押印されなければならず(労働組合法14条),この要件が満たされない限り,仮に,労働組合と使用者との間に労働条件その他に関する合意が成立したとしても,これに労働協約としての規範的効力を付与することはできない(最高裁判所平成13年3月13日第三小法廷判決参照)。本件において,上記手当の支給に関する労働協約は,明文化されたものがない,いわゆる紳士協定であったというのであるから,労働協約としての効力はなく,特殊勤務手当規則を超える部分の支出を正当化できるものではない。 (被告の主張)区域外作業手当及び大型ごみ収集手当は,いずれもそれぞれの収集における標準作業量を定め,それに基づいて算出している。ごみ収集作業は,その性質上その日のうちに現状の現業作業員数で回収を行わなければならないところ,ごみ収集の作業量の増加や年次休暇等による欠員の発生により,現業職員が標準作業量を超える作業回数を消化しなければならないのが実情であり,これは現業職員にとって相当な困難や疲労を伴うものであって,区域外作業や大型ごみ収集作業は,特にその困難性や過酷性が顕著である。このために設けられたのが区域外作業手当及び大型ごみ収集手当であって,これらの手当は標準作業量を超える作業に対する能率給としての手当であり,標準作業量を基準とする支給には合理性がある。 また,大型ごみ収集手当について,一定の電話受付業務や地図確認作業にもこの手当を支給していたことは認めるが,これらの作業は平成7年度- 6 -に大型ごみ収集がステーション方式から電話リクエスト方式に変更されたことに伴 について,一定の電話受付業務や地図確認作業にもこの手当を支給していたことは認めるが,これらの作業は平成7年度- 6 -に大型ごみ収集がステーション方式から電話リクエスト方式に変更されたことに伴って,大型ごみ収集という一連の作業における重要かつ不可欠な業務の一環として加わったものであり,職員の作業量や作業時間は増加したのに,職員の増員などが行われず,現業職員の相互協力と応援によってこれに対処することになった。これらの経緯と業務間の不可分性を踏まえて,市と従業員労組との労働協約によって,一定の範囲の電話受付業務と地図確認作業についても大型ごみ収集手当を支給するとしたものであり,この手当の支給にも違法性はない。 第一事務所に勤務し,廃棄物収集作業に従事する現業職員は,地方公務員法57条の「単純な労務に雇用される者」にあたり,地方公営企業等の労働関係に関する法律(以下「地公労法」という。)により,その労働関係については地方公営企業法37条ないし39条が適用されるところ,同法38条1項及び4項は給与条例主義を定めているが,地公労法7条は現業職員が賃金その他の給与について団体交渉の対象とし,これに関して労働協約を締結することができる旨定め,同法9条は労働協約が地方公共団体の機関の定める各種規則その他の規程に優先して適用されることを定めている。 区域外作業手当及び大型ごみ収集手当については,昭和59年4月の特殊勤務手当改正後に,奈良市と従業員労組との間で締結された労働協約に基づいて支給されていたのであるから,適法である。なお,当該労働協約については書面は作成されていないが,原告らの引用する最高裁判決は本件とは事案を異にするので,上記判例が存在するからといって直ちに無効になるものではない。また,仮に労働協約が書面化されていないために効力を有し 面は作成されていないが,原告らの引用する最高裁判決は本件とは事案を異にするので,上記判例が存在するからといって直ちに無効になるものではない。また,仮に労働協約が書面化されていないために効力を有しないとしても,区域外作業手当及び大型ごみ収集手当の支給が永年の慣行に従ったものであることに照らすと,特殊勤務手当規則に定める部分を超えた支給が直ちに違法であるということはできないし,慣行に効- 7 -力が認められないとしても,そのような慣行の存在があった以上,支給担当職員に損害賠償責任を負担させるべき違法性はない。 イ特殊勤務手当規則の違法性(原告らの主張)特殊勤務手当規則は,本件条例に基づいて市長が制定したものであるから,その内容については本件条例の趣旨に即したものでなければならない。 特殊勤務手当とは,著しく危険,不快,不健康又は困難な勤務その他著しく特殊な勤務で,給与上特別の考慮を必要とし,その特殊性を給料で考慮することが適当でないと認められるものに従事する職員に対して支給されるものと解すべきであり,特殊勤務手当規則において特殊勤務手当として規定されたものであっても,給付の趣旨,方法,金額等に照らして本来の特殊勤務手当が予定する内容性質に反する給付は,違法な給付であると解すべきである。 上記の観点からみると,特殊勤務手当規則に定められている特殊勤務手当のうち,皆勤精励手当,出勤奨励手当及び休日出勤特別手当は,実質上特殊勤務手当にあたらないので,その支給は違法である。すなわち,次のとおりである。 㨯皆勤精励手当上記の特殊勤務手当の意義に照らせば,特殊勤務手当は,本来対象となる業務に従事した場合ごとに支給されるべきものであるから,原則として日額又は当該職務に従事した件数当たりの額で支給すべきものであるのに,皆勤精励手当は月額支給で らせば,特殊勤務手当は,本来対象となる業務に従事した場合ごとに支給されるべきものであるから,原則として日額又は当該職務に従事した件数当たりの額で支給すべきものであるのに,皆勤精励手当は月額支給であるから,この原則に反する。 また,皆勤精励手当は,特殊勤務手当が支給される対象の具体的な職務との関連性が希薄であり,有給休暇が職員の権利として認められているにもかかわらず,それを取得しなかったために支給される手当というのは著しく合理性に欠ける。 - 8 -したがって,特殊勤務手当規則のうち,皆勤精励手当を定めた部分は違法であり,上記規則に基づいて支給された同手当の支出(平成16年11月から平成17年3月までの金額は598万6000円)は違法である。 㨯出勤奨励手当第一事務所に勤務し,廃棄物収集作業に従事する現業職員に対しては,廃棄物収集作業手当が支給されるのであるから,さらに出勤奨励手当を支給するのは特殊勤務手当の二重支給にあたり,特殊勤務手当規則のうち,出勤奨励手当を定めた部分は違法であって,これに基づく同手当の支出(平成16年11月から平成17年3月までの金額は876万7800円)も違法である。 㨯休日出勤特別手当休日出勤特別手当は,著しく危険,不快,不健康又は困難な勤務その他著しく特殊な勤務について支給されるのではなく,環境清美部等の一部職員が休日に出勤すれば支給されるというものであるから,特殊勤務手当の本来の趣旨を大きく逸脱した,著しく不合理な給付といわざるを得ない。 また,市職員には条例に基づいて休日勤務手当が支給されているため,環境清美部等の職員に限って休日勤務特別手当を上乗せして支給する根拠はなく,不公平である。 したがって,休日出勤特別手当についても,特殊勤務手当規則の規定は違法であって,これに基づく支出(平成16 環境清美部等の職員に限って休日勤務特別手当を上乗せして支給する根拠はなく,不公平である。 したがって,休日出勤特別手当についても,特殊勤務手当規則の規定は違法であって,これに基づく支出(平成16年11月から平成17年3月までの違法な支出の金額は527万3000円)も違法である。 (被告の主張)特殊勤務手当規則が本件条例に基づいて制定され,本件条例に定める趣旨を逸脱したものであってはならないことは認めるが,その適法性及び妥- 9 -当性を判断するにあたっては①各職種間の給与格差の是正の必要,②市におけるごみ収集作業の実情,③特殊勤務手当の支給額,④規則制定以前の取扱いの是正などの奈良市の実情も考慮すべきであって,これらを考慮すれば,特殊勤務手当規則は,条例に定める特殊勤務手当の趣旨や奈良市の実情に即した適法かつ妥当なものであったというべきである。 個別の手当についても,以下のとおり適法性が認められる。 㨯皆勤精励手当現業職員のごみ収集作業という作業内容の特殊性,不快性や,作業に伴う有形無形の負担を給料に反映させることが難しいことから,ごみ収集作業に対しては特殊勤務手当支給の必要性があるところ,皆勤精励手当を支給することによって,現業職員の欠員により他の現業職員が区域外作業を行うことによる区域外作業手当の支給を抑制できるという副次的効果も考慮すれば,皆勤精励手当に関する規則やその支給は,条例に定める特殊勤務手当の趣旨を逸脱しておらず,適法かつ妥当である。 㨯出勤奨励手当現業職員のごみ収集作業に対する特殊勤務手当支給の必要性は㨯において述べたとおりであり,さらに,出勤奨励手当の支給により,各作業員の休暇の消化率を減らし,各現業職員の負担の軽減あるいは均一化という効果も期待されていたことからすると,出勤奨励手当に関する規則やその支 べたとおりであり,さらに,出勤奨励手当の支給により,各作業員の休暇の消化率を減らし,各現業職員の負担の軽減あるいは均一化という効果も期待されていたことからすると,出勤奨励手当に関する規則やその支給は条例に定める特殊勤務手当の趣旨を逸脱したものではなく,適法かつ妥当である。 㨯休日出勤特別手当環境清美部の職員については,元日を除き,平日が休日であっても常に出勤を求められるという特殊性があるために休日出勤特別手当が支給されていたのであり,これに関する規則や支給は,条例に定める特殊勤務手当の趣旨を逸脱したものではなく,適法かつ妥当である。 - 10 -なお,市においては本件条例18条に基づいて休日勤務手当が支給されているが,これは休日に臨時に出勤した職員に対するものであって,休日出勤特別手当とは支給の趣旨を異にするので,二重支給にはあたらない。 ⑵争点⑵(相手方らの行為の違法性)について(原告らの主張)ア市長ら市長は,市における執行機関の最高責任者であるから,支出負担行為を含む行政の適法性については,高い見識に基づいて注意し,適法性が認められない行為については,執行を停止するよう指揮監督する義務を負う。 d元市長は,奈良市の包括外部監査人であるf公認会計士により平成14年度の奈良市包括外部監査報告書(以下「本件外部監査報告書」という。)が提出された平成15年3月26日当時の奈良市長であり,本件外部監査報告書において,区域外作業手当及び大型ごみ収集手当の適法性について疑義が提起され,皆勤精励手当,出勤奨励手当,休日出勤特別手当についても支給根拠に乏しいとの指摘がされており,それぞれの手当ごとにその理由も記載されていて,支給に合理性のないことが容易に認識でき,いずれの手当についても違法性を認識できたにもかかわらず,注意義務を怠っ 支給根拠に乏しいとの指摘がされており,それぞれの手当ごとにその理由も記載されていて,支給に合理性のないことが容易に認識でき,いずれの手当についても違法性を認識できたにもかかわらず,注意義務を怠ってその違法性を認識せず,適切な指導監督を行わなかった。その結果,違法な手当の支給が継続し,本件で特殊勤務手当の支給に至ったのであり,d元市長の義務違反行為と市の損害の間には因果関係がある。 e前市長は,平成16年9月28日に市長に就任し,上記指揮監督の義務を負っていたところ,同人は,就任後まもなくc元人事課長から本件外部監査報告書の内容及び特殊勤務手当の問題点について報告を受けたにもかかわらず,適切な指揮監督を行わず,速やかな規則の改廃等を行わなかった過失がある。 - 11 -イ従業員労組労働組合が擁護することが許される労働者の利益は適法なものである必要があり,労働者の不適法な利益を不適法なまま維持しようとすることは許されず,ことさらこれを維持しようと能動的積極的に働きかける場合には,不法行為を構成する可能性がある。 本件において,従業員労組は,本件外部監査報告書が提出され,その内容に即して市当局が交渉を行うようになった平成15年4月の段階では,㨯イで述べた特殊勤務手当支給の違法性を認識しうる状態であったにもかかわらず,特殊勤務手当の改廃に積極的に反対を続けてきたのであり,本件で違法な手当の支給が問題となる平成16年11月の時点では,従業員労組について過失が認められ,不法行為が成立するというべきである。 ウ出納室長b元出納室長は,市収入役代理者奈良市事務吏員として支出負担行為が法令又は予算に違反していないこと及び当該支出負担行為が確定していることを審査,確認する権限を有しまたその義務を負っており,本件特殊勤務手当の支給に関する支出の決 奈良市事務吏員として支出負担行為が法令又は予算に違反していないこと及び当該支出負担行為が確定していることを審査,確認する権限を有しまたその義務を負っており,本件特殊勤務手当の支給に関する支出の決定についても法令又は予算に違反していないことを確認する義務を負っていた。本件外部監査報告書の提出により,本件特殊勤務手当の支給の適法性について疑義が提起されていたのであるから,わずかな注意を用いればその違法性を認識することができたにもかかわらずこれを怠り,結果として市が損害を被ったのであり,b元出納室長には重過失が認められる。よって,同人は地方自治法243条の2第1項2号後段の「確認」を行う権限を有する職員として市に対して賠償責任を負う。 エ人事課長c元人事課長は,平成15年4月1日の人事課長就任当時に既に本件外部監査報告書において本件特殊勤務手当の適法性に疑義が提起されていた- 12 -ことを知っており,また,労働協約が書面化されていないことも知っていた。これらの事情の元では,同人には本件特殊勤務手当の適法性を検討し,また労働協約の効力及び労働協約と規則との関係を再検討する必要があったにもかかわらず,同人は労働協約についてはほとんど何らの検討を行わないまま盲目的に適法であるとの結論を出して本件特殊勤務手当の支給を行い,また特殊勤務手当規則については適法性を前提に従業員労組と交渉したために,本件特殊勤務手当の支給に至ったのであり,同人には本件特殊勤務手当の支給について重過失が認められるから,地方自治法243条の2第1項1号の行為を行う権限を有する職員として損害賠償責任を負う。 オ第一事務所長a元所長は,第一事務所の最高責任者として,違法な手当が支給されないように手当の計算をさせる義務を負っていたのであり,本件外部監査報告書によって する職員として損害賠償責任を負う。 オ第一事務所長a元所長は,第一事務所の最高責任者として,違法な手当が支給されないように手当の計算をさせる義務を負っていたのであり,本件外部監査報告書によって,本件特殊勤務手当の違法性を認識し得たにもかかわらず,過失によってその認識を欠いたまま違法な手当を含んだ手当の計算を放置し,その結果,違法な手当の支給がなされ,市が損害を被ったのであるから,同人はその損害を賠償する責任を負う。 (被告の主張)ア前市長ら本件で問題となっているのは,平成16年11月から平成17年3月分までの特殊勤務手当の支給の違法性であるところ,d元市長の市長在任期間は平成16年9月27日までであるから,同人は,本件特殊勤務手当の支給には何ら関与していないのであり,その余の点につき反論するまでもなく,同人が市に対して損害賠償義務を負ういわれはない。 e前市長については,本件外部監査報告書において,本件特殊勤務手当の廃止ないし是正が指摘されてはいたが,あくまでも指摘にとどまるものであり,法的拘束力を持つものではないこと,また,本件特殊勤務手当は- 13 -いずれも適法な支給であり,同人には違法な手当の支給であるとの認識はなく,その点において故意も過失もないのであるから,同人にはc元人事課長に対して本件特殊勤務手当の支給を阻止すべき指揮監督上の義務はない。さらに,e前市長は,市長就任後に本件外部監査報告書の内容に即した指示や協議等をしており,包括外部監査の結果を漫然と放置したものではなく,この点からも同人が損害賠償責任を負ういわれはない。 イ従業員労組について従業員労組が本件特殊勤務手当支給の継続を要求したことが財務会計上の行為に該当しないことは明らかであるから,同労働組合が損害賠償責任を負ういわれはない。労働組合は,組合 い。 イ従業員労組について従業員労組が本件特殊勤務手当支給の継続を要求したことが財務会計上の行為に該当しないことは明らかであるから,同労働組合が損害賠償責任を負ういわれはない。労働組合は,組合員の経済的地位向上を図るため,適法性が確保される範囲内において最大限の要求を行い,同目的にかかわる規則や運用について意見を主張するのは当然のことであって,本件においても,従業員労組は本件特殊勤務手当の支給という組合員の経済的地位に関わる事柄に関して,特殊勤務手当規則及び労働協約に基づく適法な支給を求め,あるいは本件特殊勤務手当に関する規則及び運用の改廃について意見を主張したのであるから,従業員労組の当該行為に違法性はなく,不法行為を構成することはない。このことは,本件外部監査報告書の内容によって左右されるものではないことは上記において述べたとおりである。 ウ出納室長b元出納室長は,収入役職務代理者として,本件特殊勤務手当についての支出負担行為が法令又は予算に違反していないことを確認する権限及び支出権限を有していた。 本件外部監査報告書においては,本件特殊勤務手当の廃止ないし是正が指摘されてはいたが,それは法的拘束力を持つものではなく,同手当については特殊勤務手当規則又は労働協約に基づく適正なものであったこと,市においては特殊勤務手当のより適切な支給について検討中であったこと- 14 -から,b元出納室長は,本件特殊勤務手当の支出負担行為が法令又は予算に違反しているとの認識及び支出が違法であるとの認識はなく,かつ,その点において故意又は重過失がなく,その支払も不当とはいえないから,同人が損害賠償責任を負ういわれはない。 エ人事課長c元人事課長は,本件特殊勤務手当に関して支出負担行為及び支出命令の権限を有する者である。本件外部監査報告書 く,その支払も不当とはいえないから,同人が損害賠償責任を負ういわれはない。 エ人事課長c元人事課長は,本件特殊勤務手当に関して支出負担行為及び支出命令の権限を有する者である。本件外部監査報告書において本件特殊勤務手当の廃止ないし是正が指摘されてはいたが,それは法的拘束力を持つものではなく,同手当については特殊勤務手当規則又は労働協約に基づく適正なものであったこと,市においては特殊勤務手当のより適切な支給について検討中であったことから,c元人事課長についても,本件特殊勤務手当の支出負担行為が法令又は予算に違反しているとの認識及び支出が違法であるとの認識はなく,かつ,その点において故意又は重過失はなく,その支払も不当とはいえないから,同人が損害賠償責任を負ういわれはない。 オ第一事務所長a元所長は,地方自治法243条の2第1項後段に掲げる権限を有する者ではなく,また,同人が人事課長に対して特殊勤務手当を請求した行為は財務会計上の行為に該当するものではないから,同人が損害賠償責任を負ういわれはない。 第3当裁判所の判断 上記争いのない事実,証拠(甲1,5ないし7,9,11ないし21,A25,B1,2,4,5,乙1ないし4,7,8,13ないし20(枝番のあるものは枝番を含む),証人c,同e,同g,同h,同a)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ⑴特殊勤務手当規則の制定の経緯,内容第一事務所勤務の現業職員に対しては,昭和59年以前は,報償費という- 15 -名目で一定額の現金が支給されていたが,同年ころ,報償費を廃止するとともに,特殊勤務手当を支給することとなり,同年4月に特殊勤務手当規則が改正され,第一事務所の現業職員に対しても特殊勤務手当が支給されるようになった。 平成16年11月の時点で,特殊勤務手当 するとともに,特殊勤務手当を支給することとなり,同年4月に特殊勤務手当規則が改正され,第一事務所の現業職員に対しても特殊勤務手当が支給されるようになった。 平成16年11月の時点で,特殊勤務手当規則において,第一事務所の現業職員に対して支給されるとされていた特殊勤務手当は以下のとおりである。 ア廃棄物収集作業手当日額540円イ年末年始勤務手当日額1万1100円ウ皆勤精励手当1月における年次休暇等の日数が1日以内月額1万円1日を超え2日以内月額8000円2日を超え3日以内月額5000円3日を超え4日以内月額3000円エ出勤奨励手当日額500円オ区域外作業手当日額3500円カ休日出勤特別手当日額5000円キ大型ごみ収集手当勤務1回につき1500円⑵特殊勤務手当の給付状況ア区域外作業手当についてごみ収集にあたっては,運転手1人,作業員2人の合計3人が1組となって,決められた地区(1校区)を担当し,労使交渉を経て1日当たりの収集量を定め,これを処理するための作業量が標準作業量とされた。年次休暇等により欠員が生じた場合には,運転手1人,作業員1人の2人が1組となって収集にあたることとなり,1校区の標準作業量の半分が標準作業量とされる一方,排出されたごみはその日のうちに収集しなければなら- 16 -ないため,残りの半分を収集した現業職員に対して区域外作業手当が支給されていた。 手当の額は,ごみ排出量の多い月曜日から水曜日までは標準作業量を3500円×3人=1万0500円として,その半分(5250円)を,2人で収集した場合には1人2625円,3人で収集した場合には1人1750円が支給された。木曜日,金曜日については標準作業量を3000円×3人=9000円とし,半分(4500円)を2人で収集し を,2人で収集した場合には1人2625円,3人で収集した場合には1人1750円が支給された。木曜日,金曜日については標準作業量を3000円×3人=9000円とし,半分(4500円)を2人で収集した場合には1人2520円,3人で収集した場合には1人1500円が支給された。 これに加えて,毎週水曜日と第3週目の木曜日,金曜日については,市全域が収集区域となり,標準作業量の倍の収集作業が基本となるとして,毎週水曜日については全員に対して1人3500円,第3週目の木・金曜日については全員に対して1人3000円が区域外作業手当として支給されていた。 平成16年11月から平成17年3月までの間に支出された区域外作業手当の額は325万8500円であった。 イ大型ごみ収集手当について大型ごみ収集手当についても,標準作業量が3000円×3人=9000円(毎週水曜日と第3週目の木,金曜日は4500円×3人=1万3500円)と計算され,年次休暇等で欠員が出た場合には区域外作業手当と同様の計算方法による手当が支給されていた。 また,大型ごみ収集の電話受付業務及び収集経路選定業務についても大型ごみ収集手当の対象とされ,1日当たり3000円が支給されていた。 これは,平成7年度から,大型ごみの収集方式がステーション方式(予め年間を通じて定められた時期,回数,場所を市民に通知した上,集中して収集する方式)から電話リクエスト方式(市民から電話で収集の依頼を受けて収集に行く方式)に変更されたことに伴い,電話受付業務や収集経路- 17 -選定の業務が新たに発生した一方,職員の増員等の措置がとられなかったことから,従業員労組と市当局の協議の結果,これらの作業についても大型ごみ収集手当の対象とすることとされたものである。 平成16年11月から平成17年3月までの間に支給 の増員等の措置がとられなかったことから,従業員労組と市当局の協議の結果,これらの作業についても大型ごみ収集手当の対象とすることとされたものである。 平成16年11月から平成17年3月までの間に支給された大型ごみ収集手当の額は737万7000円であった。 ウ区域外作業手当,大型ごみ収集手当の適法性に関する職員の認識上記ア,イの手当の支給基準について,本件特殊勤務手当の支給当時,市の人事課長であったc元人事課長は,上記各手当が特殊勤務手当規則の基準を超える支出であり,労働協約は労働法上書面化される必要があることを認識しており,本件外部監査報告書の内容についても認識していたが,労働組合との協約によって適法であると理解していた。また,本件特殊勤務手当の支給当時の市長であったe前市長は,市長就任後間もなくc元人事課長から本件外部監査報告書で指摘された問題について報告を受け,問題を認識していたが,労働協約に基づく適法なものと考えて,c元人事課長に対して支給の停止や見直しを指示することはなかった。 なお,これらの手当の請求に際しては,第一事務所内部では事務処理上のメモとして作成された(ただし,その作成時期,作成者等については明らかではない。)「特殊勤務手当運用資料」が参照され,これを参考として特殊勤務手当の支給が請求された。 エその他の特殊勤務手当について平成16年11月から平成17年3月までの間,特殊勤務手当規則にしたがって,皆勤精励手当については合計598万6000円,出勤奨励手当については876万7800円,休日出勤特別手当については527万3000円が第一事務所の各職員に支払われた。 ⑶規則改正の経緯及び改正後の特殊勤務手当の給付状況ア本件外部監査報告書提出以前の経緯- 18 -平成13年10月,奈良市行財政改善推進委員会の中に 000円が第一事務所の各職員に支払われた。 ⑶規則改正の経緯及び改正後の特殊勤務手当の給付状況ア本件外部監査報告書提出以前の経緯- 18 -平成13年10月,奈良市行財政改善推進委員会の中に,環境清美事業専門部会が設置され,特殊勤務手当の見直しについて検討し,同年12月には専門部会としてのまとめを作成した。このまとめにおいては,特殊勤務手当は「著しく危険,不快,不健康又は困難な勤務,著しく特殊な勤務のみ支給できる」ことから,適正な手当として支給できるよう是正を行うとされ,具体的には,年末年始勤務手当を日額7900円に引き下げること,皆勤精励手当,区域外作業手当,休日出勤特別手当及び大型ごみ収集手当は廃止すること,出勤奨励手当については,日額540円である廃棄物収集作業手当を引き上げるのと連動して廃止することが改善案として示された。市の当局はこの専門部会のまとめにおいて示された方針の下,平成14年6月から従業員労組との間で特殊勤務手当の見直しについて協議を行った。 イ本件外部監査報告書による指摘平成15年3月26日,本件外部監査報告書が発表された。同報告書は,特殊勤務手当について「規定が形骸化しているものや実態との不整合によりその運用が歪められているものがある」として,具体的には以下のとおりの問題点を指摘した上,「早期に是正され,適正・明確な運用を図られたい」とした。 㨯区域外作業手当担当区域内外に拘わらず,収集作業員の休業等により通常に満たない人数で収集を行った場合や,回収地域が広範となる水曜日,第3週の木,金曜日に収集を行った場合に区域外作業手当が支給されているが,これらの事由による区域外作業手当の支給は,特殊勤務手当規則附則第2項に定める適用範囲を拡大して解釈していると判断される。作業量増加に対しては別途適当な手 た場合に区域外作業手当が支給されているが,これらの事由による区域外作業手当の支給は,特殊勤務手当規則附則第2項に定める適用範囲を拡大して解釈していると判断される。作業量増加に対しては別途適当な手当を定めるべきである。 また,区域外作業手当は同項により日額3500円(ただし,木曜日- 19 -と金曜日にあっては3000円)と定められているにも拘わらず,調整した日額を基に作業回数に応じた支給を行っており,規定額の約3倍の手当額が支払われている事例があった。 㨯大型ごみ収集手当大型ごみ収集手当の適用範囲は「大型ごみ収集の作業をしたもの」とされているが,実際には収集業務に付随する電話受付業務,収集経路作成業務に携わった職員に対しても支給されていた。また,特殊勤務手当規則上は,手当の金額について「勤務1回につき」と規定しているが,上記業務について収集作業の概ね2倍の時間を要するものとして2回分の手当が支給されていた。これら業務に関する「大型ごみ収集手当」の支給については,特殊勤務手当規則に定める適用範囲を明らかに拡大して解釈している。 㨯出勤奨励手当及び皆勤精励手当出勤奨励手当については,別に「清掃勤務手当」「廃棄物収集作業手当」など勤務に基づいて支給される手当があり,それらの手当に上乗せして出勤奨励手当を支給する根拠は乏しい。皆勤精励手当については,環境清美部の職員のみに支給される積極的理由もなく,有給休暇の趣旨からしても,その休暇を取らなかったために支給される手当というのは合理性に欠ける。出勤奨励手当及び皆勤精励手当については廃止を検討すべきである。 㨯休日出勤特別手当国民の祝日に関する法律の定める休日等及び年末年始の休日等の勤務については,本件条例18条に休日勤務手当の定めがあり,上乗せして手当を支給する根拠は乏しく,他職 すべきである。 㨯休日出勤特別手当国民の祝日に関する法律の定める休日等及び年末年始の休日等の勤務については,本件条例18条に休日勤務手当の定めがあり,上乗せして手当を支給する根拠は乏しく,他職員との公平にも配慮し,休日出勤特別手当の廃止を検討することが望ましい。 㨯年末年始勤務手当- 20 -年末年始勤務手当の日額については,特殊勤務手当規則附則第2項により,環境清美部などの一部の職員はその他の職員よりも高額になっているが,同手当の日額を職種により区分する根拠は乏しく,一本化することが望ましい。他市の状況を調査したところ,他部門との間に差はなく,また手当の額も漸減している。 ウ本件外部監査報告書の指摘に対する対応平成15年10月28日,d元市長は,地方自治法252条の38第6項に基づき,市監査委員宛に「包括外部監査の結果に対する措置状況について(通知)」と題する文書により,本件外部監査報告書を受けての措置状況を通知した。この中で,特殊勤務手当のうち,区域外作業手当については規則の拡大解釈による現行の支給を改めるとともに,作業量の増加に応じた適正な手当を定めることを従業員労組と協議中であること,休日出勤特別手当,出勤奨励手当,皆勤精励手当については,いずれも支給根拠に乏しいため廃止を従業員労組と協議中であること,年末年始勤務手当については日額7900円に一本化することを従業員労組と協議中であること,大型ごみ収集手当については,規則の適用範囲を拡大解釈して支給されているため,廃止することを従業員労組と協議中であることがそれぞれ報告された。 エ総務省の調査結果平成16年12月27日,総務省自治行政局公務員部給与能率推進室は「特殊勤務手当実態調査の結果について」と題する文書により都道府県及び政令指定都市における特殊勤務手当の れた。 エ総務省の調査結果平成16年12月27日,総務省自治行政局公務員部給与能率推進室は「特殊勤務手当実態調査の結果について」と題する文書により都道府県及び政令指定都市における特殊勤務手当の実態調査結果を発表した。その中では,年末年始勤務手当については,他の手当で措置される勤務内容と重複する内容の関係で検討を要するとされたほか,特殊勤務手当は本来対象となる業務に従事した場合ごとに支給されるべきであるから,原則として日額又は件数当たりの額で支給することが適当であるとの指摘がされた。 - 21 -オ規則改正後の特殊勤務手当の支給状況平成18年3月31日付で本件条例及び特殊勤務手当規則が改正され,皆勤精励手当,出勤奨励手当及び休日出勤特別手当は廃止され,年末年始勤務手当はその額が他の部局と統一された。 また,区域外作業手当については過重作業手当として,作業内容及び曜日毎に手当の金額が特殊勤務手当規則において細かく定められ,大型ごみ収集手当については大型ごみ業務手当及び動物死体収集作業手当と改められた。 争点㨯について⑴区域外作業手当及び大型ごみ収集手当の違法性について上記1において認定したとおり,区域外作業手当及び大型ごみ収集手当については,特殊勤務手当規則とは異なる基準によって,同規則の定める額を超える額が支給されていた。これについて,被告は労働協約に基づいて支給したものであるから適法である旨主張し,証人c,同e,同g,同hらはこれに沿う証言をする。 しかし,同人らの証言によっても,その労働協約なるものは書面化されておらず,これが締結されたとされる時期も明らかでない。労働協約は,書面に作成し,両当事者が署名し,又は記名押印することによってその効力を生ずるとされており(労働組合法14条),したがって,書面に作成され,かつ が締結されたとされる時期も明らかでない。労働協約は,書面に作成し,両当事者が署名し,又は記名押印することによってその効力を生ずるとされており(労働組合法14条),したがって,書面に作成され,かつ,両当事者がこれに署名し又は記名押印しない限り,仮に,労働組合と使用者との間に労働条件その他に関する合意が成立したとしても,これによって直ちに規則等に抵触する支出を適法化する効力があるものということはできない。しかも,地公労法7条は賃金その他の給与については団体交渉の対象とし,これに関して労働協約を締結することができる旨定めているが,他方で,同法9条は,当該地方公共団体の長その他の地方公共団体の機関の定める規則その他の規程(以下「規則等」という。)に抵触する内容を有する- 22 -協定が締結された場合には,地方公共団体の長その他の機関は,速やかに,その協定が規則等に抵触しなくなるために必要な規則等の改正又は廃止のための措置をとらなければならない旨定めている。これは,労働協約が規則等に優先して適用されるべきではあるが,規則等が自治法規としての性質を持つことにかんがみ,労働協約に従った労働条件を有効に機能させるためには,労働協約に合わせた形で規則等を改廃する必要がある旨定めたものであって,そのような改廃がされるまでは労働協約は効力を生じないものとする趣旨と解すべきであるが,本件においては,平成16年11月から平成17年3月までの時点において,被告の主張する労働協約に整合するような規則等の改廃がされていなかったことは前記認定のとおりであるから,この意味においても,市が行った支出が適法なものということはできない。 なお,被告は,仮に労働協約の効力が認められないとしても,これらの手当は永年の慣行により支給されていたものであって適法であるとか,仮に慣 おいても,市が行った支出が適法なものということはできない。 なお,被告は,仮に労働協約の効力が認められないとしても,これらの手当は永年の慣行により支給されていたものであって適法であるとか,仮に慣行による適法性が認められないとしても,慣行の存在を考慮すれば,当該職員に損害賠償を認めるだけの違法性はないとも主張する。 しかし,上記のとおり,規則等に抵触する労働協約は,規則等の改廃によりこれとの整合性を保つ形とされて初めて効力を認められていると解されることからすれば,慣行により手当の支給に適法性が認められる余地はないと解すべきであるから,この点についての被告の主張には理由がない。 したがって,平成16年11月から同17年3月の間にされた区域外作業手当及び大型ごみ収集手当の支給は,いずれも規則に基づかないものとして,違法というべきである。 ⑵特殊勤務手当規則の違法性についてア皆勤精励手当について皆勤精励手当の趣旨について,被告は,職務の困難性,不快性が存在するため,出勤を促すために支給したもので適法であると主張する。 - 23 -しかし,被告は,皆勤精励手当とは別個に,廃棄物収集作業に従事する第一事務所勤務の現業職員全員に対して廃棄物収集作業手当として日額540円を支給しているところ,被告が皆勤精励手当支給の根拠として主張する職務の困難性,不快性なるものは,廃棄物収集作業全般に共通する特殊性とみるほかなく,そのような職務全般の特殊性を根拠とする手当としてまさに廃棄物収集作業手当が設けられているのであるから,これに重ねて皆勤精励手当を支給する合理的根拠はない。また,有給休暇が職員の権利として認められているにもかかわらず,その権利を行使しないことに対して手当を支給するというのは著しく合理性を欠く。 したがって,皆勤精励手当は,特殊勤務手当の 的根拠はない。また,有給休暇が職員の権利として認められているにもかかわらず,その権利を行使しないことに対して手当を支給するというのは著しく合理性を欠く。 したがって,皆勤精励手当は,特殊勤務手当の趣旨に沿う手当とはいえず,特殊勤務手当規則のうち,皆勤精励手当を定めた部分は違法であり,これに基づき平成16年11月から同17年3月までの間にされた同手当の支給は違法というべきである。 イ出勤奨励手当について出勤奨励手当については,勤務の日数に応じて日額で支給されるものであるが,第一事務所に勤務する現業職員に対しては,廃棄物収集作業手当が支給されており,皆勤精励手当と同様に,出勤奨励手当を重ねて支給する合理性は認められない。したがって,出勤奨励手当も特殊勤務手当の趣旨に沿う手当ではなく,特殊勤務手当規則のうち,出勤奨励手当を定めた部分は違法であり,これに基づき平成16年11月から同17年3月までの間にされた同手当の支給は違法というべきである。 ウ休日出勤特別手当について休日出勤特別手当については,休日であっても平日と同様の勤務体制の中で勤務をするという特殊性が存在するという趣旨で支給されていたと認められ,その支給につき特殊勤務手当の趣旨に反するところはないというべきである。原告は,休日勤務手当との二重支給が違法であるとも主張す- 24 -るが,休日勤務手当は休日に出勤した職員に対して支給されるという趣旨であって,休日出勤特別手当が平日と同様の勤務を求められるという特殊性に着目していることにかんがみれば,両手当はその趣旨を異にするといえるから,休日出勤特別手当の支給は合理性を欠くとまではいえず,違法とはいえない。 したがって,休日出勤特別手当を定めた部分の特殊勤務手当規則には違法性はないというべきである。 争点2について⑴相手 ,休日出勤特別手当の支給は合理性を欠くとまではいえず,違法とはいえない。 したがって,休日出勤特別手当を定めた部分の特殊勤務手当規則には違法性はないというべきである。 争点2について⑴相手方の範囲について地方自治法242条の2第1項4号にいう「当該職員」とは,当該訴訟において適否が問題とされている財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するものとされている者及びこれらの者から権限の委任を受けるなどして上記権限を有するに至った者を広く意味すると解すべきである(最高裁判所昭和62年4月10日第二小法廷判決・民集41巻3号239頁参照)。 また,補助職員に権限を委任した地方公共団体の長についても,当該財務会計行為を行う権限を法令上本来的に有するものとされている以上「当該職員」に該当するものと解すべきである(最高裁判所平成5年2月16日第三小法廷判決・民集47巻3号1687頁参照)。 本件においては,市長の職にあったd元市長,e前市長,地方自治法170条2項6号により支出負担行為に関する確認を行うこととされる会計管理者にあたる収入役の職務代理者であったb元出納室長及び市事務専決規程により定例の諸給与その他の給付に関する支出負担行為の決定について専決権限を有する人事課長であったc元人事課長は,「当該職員」にあたると解される。 これに対し,従業員労組は「当該職員」にあたらないというべきである。 本件で問題となっている「当該行為」(財務会計上の行為)は,特殊勤務手- 25 -当の支出であるところ,従業員労組は,当該行為を行う権限を有する者にも,当該行為の相手方にもあたらないことは明らかだからである。当該職員にあたらない者に対する損害賠償請求をするよう求める訴えは,地方自治法に定める訴えの形式に該当しないものであって不適法である(前記最高 当該行為の相手方にもあたらないことは明らかだからである。当該職員にあたらない者に対する損害賠償請求をするよう求める訴えは,地方自治法に定める訴えの形式に該当しないものであって不適法である(前記最高裁判所昭和62年4月10日第二小法廷判決)。したがって,本件訴えのうち,従業員労組に対する損害賠償請求を求める部分については不適法といわざるを得ない。 また,a元所長は,本件特殊勤務手当の支出に関する権限を有していたとは認められないから(乙13),「当該職員」には該当しない。したがって,本件訴えのうち,同人に対する損害賠償請求を求める部分についても不適法である。 㨯b元出納室長及びc元人事課長について前記認定のとおり,区域外作業手当及び大型ごみ収集手当については,規則に定められた基準に従った支給がなされておらず,実際の支給の基準及び額については,一応の基準が存在していたものの,労働協約として書面化されてはおらず,規則の改正も行われていなかった。b元出納室長及びc元人事課長は,平成16年11月から平成17年3月までの間,いずれもこの事実について認識していながら,上記各手当を支出したものである。 このように,区域外作業手当及び大型ごみ収集手当については,実際に支給されている手当の額及び支給基準が特殊勤務手当規則と異なっており,労働協約の存在も明確には確認できず,労働協約につき労働組合法14条で書面化及び労使の記名押印が必要とされていること,また,地公労法9条において,労使の合意が規則と抵触する場合には速やかに規則を改正すべきことを定めていること,人事課長及び出納室長は,上記の関連法規について知悉していて然るべきであったことにかんがみれば,当該状況下で,区域外作業手当及び大型ごみ収集手当を支給することが違法であることは明白であった- 26 - 課長及び出納室長は,上記の関連法規について知悉していて然るべきであったことにかんがみれば,当該状況下で,区域外作業手当及び大型ごみ収集手当を支給することが違法であることは明白であった- 26 -というべきであり,その違法性を看過したc元人事課長及びb元出納室長には重過失があるといわざるを得ない。被告は,区域外作業手当及び大型ごみ収集手当の支給に関する部分について,c元人事課長及びb元出納室長に対して賠償命令を発するべきである。その金額については,同人らの権限関係等の事情を考慮すれば,平成16年11月から平成17年3月までの間に支給された上記各手当の合計額1063万5500円の2分の1ずつ(531万7750円)とするのが相当である。 これに対して,皆勤精励手当及び出勤奨励手当については,上記2⑵ア,イに判示のとおり,特殊勤務手当規則自体が違法であるというべきであるが,支出自体は特殊勤務手当規則に従って行われていたものである。そして,規則自体の内容の合理性については,ある程度の期間にわたって議論をすることもやむを得なかったものであり,したがって,特殊勤務手当規則に基づかない支給の場合と異なり,違法性が明白であるとまでいうことはできない。 また,上記1⑶ア,イに認定のとおり,特殊勤務手当についての見直し協議も行われていたのであるから,その間に一応適法なものと考えて上記各手当の支出を行ったことについては,b元出納室長及びc元人事課長に故意又は重過失があったとはいえないというべきである。したがって,皆勤精励手当及び出勤奨励手当の支出に関する部分について,同人らに賠償命令が発せられるべきとはいえず,この点に関する原告の主張には理由がない。 㨯d元市長及びe前市長の責任について市長は,権限を委任し又は専決させた職員について,違法な財務会計上の て,同人らに賠償命令が発せられるべきとはいえず,この点に関する原告の主張には理由がない。 㨯d元市長及びe前市長の責任について市長は,権限を委任し又は専決させた職員について,違法な財務会計上の行為を行うことを阻止すべき指揮監督上の義務を負っていると解され(前記最高裁判所平成5年2月16日第三小法廷判決,最高裁判所平成3年12月20日第二小法廷判決・民集45巻9号1455頁参照),市長が上記指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失により同職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときは,自らも財務会計上の違法行為を行った- 27 -ものとして,市が被った損害についての賠償責任を負うと解すべきである。 本件において,d元市長は,遅くとも平成15年3月26日に本件外部監査報告書が提出された時点で,本件特殊勤務手当の適法性について問題があるということを知り得たものと認められる。しかし,同人は,その後本件外部監査報告書において問題点を指摘された手当について,その適正化や廃止に向けた従業員労組との協議を実施し,同年10月28日には監査委員に対して措置状況を通知するなどしていたものであり,また,同人は平成16年9月27日をもって市長の地位から離れているところ,本件特殊勤務手当の支給がされたのは,平成16年11月から同17年3月までの間である。これらのことからすると,d元市長が上記指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失によりb元出納室長及びc元人事課長が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったということはできない。 また,e前市長は,本件特殊勤務手当の支給停止を指示したことはなかったものの,同人は平成16年9月28日の市長就任当初から本件外部監査報告書の内容につき報告を受けて特殊勤務手当の問題点を認識しており,就任後は特殊勤務手当 殊勤務手当の支給停止を指示したことはなかったものの,同人は平成16年9月28日の市長就任当初から本件外部監査報告書の内容につき報告を受けて特殊勤務手当の問題点を認識しており,就任後は特殊勤務手当の廃止に向けて,従業員労組と協議するようc元人事課長等に指示し,また自らも団体交渉に出席するなどしていたのであり,以上の事実に,本件特殊勤務手当が同人の就任の約2ヶ月後ないし5ヶ月後に支給されたものであることもあわせて考慮すれば,同人が権限を委任し又は専決させた職員に対する指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失により同職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったとまでいうことはできない。 したがって,同人らについて,指揮監督上の義務を怠ったことにより市に損害を与えたとは認められないから,同人らに対する損害賠償請求の請求については理由がない。 以上のとおりであるから,原告らの訴えのうち,被告に対して従業員労組及- 28 -びa元所長に対する損害賠償請求を求める訴えは不適法であるから却下し,c元人事課長及びb元出納室長に対してそれぞれ金531万7750円の賠償命令の発令を求める請求は理由があるから認容し,その余の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 奈良地方裁判所民事部裁判長裁判官坂倉充信裁判官齋藤憲次裁判官皆川更

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