平成29(行ウ)99 退去強制令書発付処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成30年10月11日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-88405.txt

判決文本文34,734 文字)

平成30年10月11日判決言渡平成29年(行ウ)第99号退去強制令書発付処分等取消請求事件主文 1 裁決行政庁が平成28年8月30日付けで原告Aに対してした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決を取り消す。 2 処分行政庁が平成28年9月9日付けで原告Aに対してした退去強制令書発付処分を取り消す。 3 裁決行政庁が平成28年9月14日付けで原告Bに対してした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決を取り消す。 4 処分行政庁が平成28年10月21日付けで原告Bに対してした退去強制令 書発付処分を取り消す。 5 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文同旨 第2 事案の概要本件は,ベトナム社会主義共和国(以下「ベトナム」という。)国籍を有する外国人である原告A(以下「原告母」という。)及びその子である原告B(以下「原告子」といい,原告母と併せて「原告ら」という。)が,原告母については出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)24条4号ロ (不法残留)に,原告子については同条7号(不法残留)にそれぞれ該当するとの各認定及びこれに誤りがない旨の各判定を受けたため,それぞれ入管法49条1項に基づく異議の申出をしたところ,法務大臣から権限の委任を受けた裁決行政庁から異議の申出は理由がない旨の各裁決(以下,原告母に対する裁決を「本件裁決1」といい,原告子に対する裁決を「本件裁決2」といい,こ れらを併せて「本件各裁決」という。)を受けるとともに,処分行政庁から, それぞれ同条6項に基づき各退去強制令書の発付処分(以下,原告母に対する処分を「本件退令処分1」といい といい,こ れらを併せて「本件各裁決」という。)を受けるとともに,処分行政庁から, それぞれ同条6項に基づき各退去強制令書の発付処分(以下,原告母に対する処分を「本件退令処分1」といい,原告子に対する処分を「本件退令処分2」といい,これらを併せて「本件各退令処分」という。)を受けたため,本件各裁決は裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものであって違法であるなどと主張して,本件各裁決及び本件各退令処分の各取消しを求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1) 原告らの身分関係等ア原告母は,1981年(昭和56年)▲月▲日,ベトナムにおいて出生したベトナム国籍を有する外国人女性であり,原告子の実母である。 原告子は,2016年(平成28年)▲月▲日,本邦において出生した ベトナム国籍を有する外国人男性である(甲29,弁論の全趣旨)。 イ原告母は,平成25年▲月▲日,本邦の「永住者」の資格を有し,神奈川県α市内に居住するベトナム国籍の外国人男性である訴外Cとベトナムにおいて婚姻したが,平成29年▲月に同人と離婚した(甲24)。 原告母は,同年▲月▲日,本邦の「永住者」の資格を有し,兵庫県内に 居住するベトナム国籍の外国人男性である訴外Dと婚姻した(甲5,22の1及び2)。Dは,同年▲月▲日,原告子を認知した(甲29)。 (2) 原告母の入国及び在留の状況並びに原告子の出生等ア原告母は,平成26年5月11日,成田空港に到着し,東京入国管理局(以下「東京入管」という。)成田空港支局入国審査官から,在留資格を 「永住者の配偶者等」,在留期間を「1年」とする上陸許可を受けて,本邦に上陸し,同月16日,神奈川県α市長に対し, 国管理局(以下「東京入管」という。)成田空港支局入国審査官から,在留資格を 「永住者の配偶者等」,在留期間を「1年」とする上陸許可を受けて,本邦に上陸し,同月16日,神奈川県α市長に対し,居住地を当時のCの居住地とする転入届を提出した(甲3,乙1の1)。 原告母は,平成27年5月8日,在留期間を「1年」とする在留期間更新許可を受けた。 イ原告母は,平成28年▲月▲日,兵庫県β市内のE病院において原告子 を出産し(甲1),同月▲日,知人を代理人として在留資格「短期滞在」への在留資格変更許可申請をした。 ウ原告母は,平成28年▲月▲日,神奈川県警α警察署において,Cとの婚姻が偽装結婚であると述べ,同年6月24日,電磁的公正証書原本不実記録・同供用の被疑事実により逮捕された。原告母は,同逮捕に引き続い て勾留されたものの,同年7月15日,処分保留で釈放され,同日,不起訴処分(嫌疑不十分)となった(甲7,乙1の1)。 また,Cも,同年6月24日に電磁的公正証書原本不実記録・同供用の被疑事実により逮捕されたが,同年7月15日に不起訴処分となった(乙41)。 エ原告母は,上記イの在留資格変更許可申請の審査結果通知のための大阪入国管理局神戸支局への出頭の求めに応じず,同申請は,入管法20条5項の特例期間の末日である平成28年7月11日の満了をもって終止処分とされ,原告母は,同月12日以降,不法残留となった(乙1の1)。 (3) 原告子の出生及び在留状況 ア原告子は,平成28年(2016年)▲月▲日,在胎週数25週4日で出生した(甲4の1)。出生体重は796グラムであり,原告子は超低出生体重児(1000グラム未満で出生した未熟児)であった。 イ原告子は,入管法22条の2 16年)▲月▲日,在胎週数25週4日で出生した(甲4の1)。出生体重は796グラムであり,原告子は超低出生体重児(1000グラム未満で出生した未熟児)であった。 イ原告子は,入管法22条の2第3項又は第4項の規定に基づく在留資格の取得許可を受けることなく,出生後60日を経過する平成28年▲月▲ 日を超えて,本邦に不法残留した。 (4) 本件各裁決及び本件各退令処分に至る経緯等ア原告母について(ア) 東京入管横浜支局主任審査官は,平成28年7月14日,原告母が入管法24条4号ロ(不法残留)に該当すると疑うに足りる相当な理由 があるとして,収容令書を発付し,同支局入国警備官は,同月15日, これを執行して,原告母を東京入管収容場に収容した上,違反調査を実施し,原告母を同号ロ該当容疑者として,東京入管入国審査官に引き渡した。 (イ) 東京入管入国審査官は,違反審査を経て,平成28年7月28日,原告母が入管法24条4号ロに該当し,かつ,出国命令対象者に該当し ない旨認定し,原告母にその旨通知したところ,原告母は,同日,東京入管特別審理官による口頭審理を請求した。 (ウ) 東京入管特別審理官は,平成28年8月25日に口頭審理を行った上,上記(イ)の認定に誤りはない旨判定し,原告母にその旨通知したところ,原告母は,同日,法務大臣に対し異議の申出をした。 (エ) 法務大臣から権限の委任を受けた裁決行政庁は,平成28年8月30日,原告母の上記(ウ)の異議の申出には理由がない旨の裁決をし(本件裁決1),処分行政庁に通知した。 (オ) 上記(エ)の通知を受けた処分行政庁は,平成28年9月9日,原告母に対し,本件裁決1を通知するとともに,原告母に係る退去強制令書 を発付し(本件退令処分1) 処分行政庁に通知した。 (オ) 上記(エ)の通知を受けた処分行政庁は,平成28年9月9日,原告母に対し,本件裁決1を通知するとともに,原告母に係る退去強制令書 を発付し(本件退令処分1),東京入管入国警備官は,同日,これを執行して,原告母を東京入管収容場に引き続き収容した。 (カ) 原告母は,平成29年9月11日に仮放免許可を受け,現在,仮放免中である(乙32,33の2枚目)。 イ原告子について (ア) 大阪入国管理局神戸支局主任審査官は,平成28年8月19日,原告子が入管法24条7号(不法残留)に該当すると疑うに足りる相当な理由があるとして,収容令書を発付し,同支局入国警備官は,同月24日,これを執行し,原告子を同号該当容疑者として同支局入国審査官に引き渡した。同支局主任審査官は,同日,原告子に対し,仮放免を許可 した。 (イ) 東京入管入国審査官は,違反審査を経て,平成28年9月7日,原告子が入管法24条7号に該当し,かつ,出国命令対象者に該当しない旨認定し,原告母にその旨通知したところ,原告母は,同日,原告子について,東京入管特別審理官による口頭審理を請求した。 (ウ) 東京入管特別審理官は,平成28年9月9日に口頭審理を行った上, 上記(イ)の認定に誤りはない旨判定し,原告母にその旨通知したところ,原告母は,同日,原告子について,法務大臣に対し異議の申出をした。 (エ) 法務大臣から権限の委任を受けた裁決行政庁は,平成28年9月14日,原告子の上記(ウ)の異議の申出には理由がない旨の裁決をし(本件裁決2),処分行政庁に通知した。 (オ) 上記(エ)の通知を受けた処分行政庁は,平成28年10月21日,原告母に対し,本件裁決2を通知するとともに,原告子に係る退去強制 裁決をし(本件裁決2),処分行政庁に通知した。 (オ) 上記(エ)の通知を受けた処分行政庁は,平成28年10月21日,原告母に対し,本件裁決2を通知するとともに,原告子に係る退去強制令書を発付し(本件退令処分2),東京入管入国警備官は,同日,これを執行した。処分行政庁は,同日,原告子に対し,仮放免を許可した。 (5) 原告らは,平成29年3月3日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 2 争点(1) 本件各裁決の適法性(在留特別許可に係る裁量権の範囲の逸脱又は濫用の有無)(2) 本件各退令処分の適法性 3 争点(1)(本件各裁決の適法性)に対する当事者の主張 (原告らの主張)(1) 本件各裁決は,いずれも法務省入国管理局が策定した「在留特別許可に係るガイドライン」(平成21年7月改訂。以下「本件ガイドライン」という。)に違反し,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものである上,比例原則にも反しており,違法である。 本件ガイドラインは通達の一部であり,行政機関は通達に反する行為はで きないのであるから,本件ガイドラインは,裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったかどうかを判断するための重要な基準となるのであり,法務大臣に本件ガイドラインから離れた広範な裁量があるとの被告の主張は誤りである。 また,仮に法務大臣に広範な裁量があるとしても,地方入国管理局長は,管轄地域における外国人の在留状況や過去の裁量処分に関する取扱い等につい て情報を有しているにすぎないから,地方入国管理局長に法務大臣と同様の広範な裁量権を付与する実質的な根拠はない。 (2) 本件裁決2についてア本件ガイドラインは,積極要素と消極要素を個別に評価し,考慮すべき程度を勘案した上,積極要素として考慮すべき事情が 様の広範な裁量権を付与する実質的な根拠はない。 (2) 本件裁決2についてア本件ガイドラインは,積極要素と消極要素を個別に評価し,考慮すべき程度を勘案した上,積極要素として考慮すべき事情が明らかに消極要素と して考慮すべき事情を上回る場合には,在留特別許可をする方向で検討すべきとしているところ,以下の事情に照らせば,原告子について,積極要素として考慮すべき事情が明らかに消極要素として考慮すべき事情を上回る場合に当たることは明白であるから,在留特別許可を付与しなかった本件裁決2は,本件ガイドラインに違反するものであり,裁量権の範囲を逸 脱し又はこれを濫用した違法な処分である。 (ア) 原告子は,在胎週数25週4日,体重796グラムで出生した超低出生体重児であり,慢性肺疾患,うっ滞性肝障害等を有していたことに加え,出生時は自分で呼吸をすることもできない状態であったこと,本件裁決2当時,原告子はいまだ入院中であり,その前の平成28年8月 5日に行われた医療カンファレンスにおける医師の意見はベトナムへの送還に慎重なものばかりであり,医師らが相当な不安を抱いていたこと,本件裁決2の後も,原告子の肝機能は増悪もしていないが改善もしておらず,また酸素ボンベが必要な状態とされ,度重なる発熱,喘息性気管支炎による咳などが見られ,さらには胆管炎や肺炎のリスクなどが指摘 され,いったんE病院を退院した後も,入退院を繰り返していたことな どからすれば,本件裁決2の当時,原告子は著しい健康不良の状態にあったといえる。 超低出生体重児については,先進国の中で乳児死亡率が最低水準の日本においても,近年は医療技術の進歩により死亡率が減少傾向にあるものの,相当数は死亡するに至っており,また,無事に生存することがで 超低出生体重児については,先進国の中で乳児死亡率が最低水準の日本においても,近年は医療技術の進歩により死亡率が減少傾向にあるものの,相当数は死亡するに至っており,また,無事に生存することがで きたとしても,神経学的障害合併等の問題は残り,在宅医療などの支援が必要な例も増加している。日本より医療水準や食品衛生環境の劣るベトナムにおいては,超低出生体重児の相当割合が死亡するに至ると推認されるところ,原告子がベトナムに送還された場合,これまでの継続的医療が断絶するだけでなく,ベトナムの不十分な人的物的資源の下での 医療環境に置かれることとなる。原告子が原告母とともに送還された場合,生活可能な場は原告母の実家であるが,原告母の実家のある地域は,非衛生的な場所である上,医療機関の整備も十分でなく,このような地域に送還されれば,原告子の生存が脅かされることは必至である。なお,被告が原告子の治療の継続可能な医療機関があると主張するホーチミン 市等は大気汚染が酷く,重い肺疾患を有していた原告子が居住すべき地域ではない。 そうすると,原告子については,本件ガイドラインが積極要素として掲げる「当該外国人が,難病等により本邦での治療を必要としていること」に該当するといえるし,「その他人道的配慮を必要とするなど特別 な事情があること」にも該当するというべきである。 (イ) 原告子の実の父は永住資格を有するDであることころ,原告子をベトナムに退去させた場合,実の父と生き別れに近い形となるから,そのような事態を避けるという意味で,本件ガイドラインが積極要素として掲げる「その他人道的配慮を必要とするなど特別な事情があること」に 該当する。 (ウ) 原告子について,「その他在留状況に問題があること」といった消極要 ガイドラインが積極要素として掲げる「その他人道的配慮を必要とするなど特別な事情があること」に 該当する。 (ウ) 原告子について,「その他在留状況に問題があること」といった消極要素は見当たらない。確かに,原告子は出生から30日以内に在留資格の申請をしていないが,0歳児である原告子が自分で在留資格を申請・取得できなかったからといって,これを不利な要素とするべきではないし,仮に消極要素として考慮せざるを得ないとしても,不可抗力に よる申請期間の徒過であるから,過度に重視するべきではない。 イ前記アで述べた事情に照らせば,本件裁決2によって得られる利益はないというべきであり,仮にあるとしても,その検討対象となるのは原告子の不可抗力により在留資格申請期間を徒過したことにすぎない。他方で,本件裁決2によって,原告子の生命,身体の安全が損なわれ,実の父であ るDと生き別れに近い状態となるという不利益が発生し,これは,あまりに過酷といわざるを得ない。そうすると,本件裁決2により失われる利益が得られる利益を大きく凌駕することは明らかであって,本件裁決2は比例原則に違反し,違法である。 (3) 本件裁決1について ア以下の事情からすれば,原告母についても,本件ガイドラインのいう積極要素として考慮すべき事情が明らかに消極要素として考慮すべき事情を上回る場合に当たることは明白であるから,本件裁決1は,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法な処分である。 (ア) 原告母の実子である原告子は,超低出生体重児として健康に深刻な 不安を抱えており,本件ガイドラインが積極要素として掲げる「当該外国人が,難病等により本邦での治療を必要としている」者に該当するところ,このような0歳児にとって,母親による看護は 康に深刻な 不安を抱えており,本件ガイドラインが積極要素として掲げる「当該外国人が,難病等により本邦での治療を必要としている」者に該当するところ,このような0歳児にとって,母親による看護は不可欠である。そのため,原告母は,本件ガイドラインが積極要素として掲げる「このような治療を要する親族を看護することが必要と認められる者」に該当す る。 また,健康に深刻な問題を抱えた我が子を危険な環境にさらさないという原告母の利益は,人道的観点から十分に尊重されなければならないし,仮に原告母のみをベトナムへ強制退去させた場合,母子が生き別れに近い状態に陥るから,そのような事態は人道的見地から回避されなくてはならず,原告母については,本件ガイドラインが積極要素として掲 げる「その他人道的配慮を必要とするなど特別な事情」も認められる。 (イ) 原告母とDは,原告母の出産や逮捕勾留,収容等の事情もあって中長期的な同居はしていないが,原告母がDの母の家に居住し,Dは,原告母の生活するDの母の家を頻繁に訪問し,原告子が生まれた後は夜間も当該住居で生活するようになっていたこと,原告母が入国管理局に収 容された後,原告母とDは,毎日のように電話で連絡を取り合い,Dから原告母に対し仕送りや指輪等が送られ,平成29年▲月には実際に婚姻したことなどからすれば,本件裁決1当時の原告母とDの関係は,真摯なものであり,かつ,夫婦としての一体性を有し,確固たる婚姻の実質を備えていたといえるから,法的保護に値する。 (ウ) 原告母の不法残留については,本件ガイドラインの掲げる消極要素である「その他の刑罰法令違反・・・が認められること」に該当する可能性があるが,在留特別許可は,何らかの退去強制事由の存在が前提となっており 母の不法残留については,本件ガイドラインの掲げる消極要素である「その他の刑罰法令違反・・・が認められること」に該当する可能性があるが,在留特別許可は,何らかの退去強制事由の存在が前提となっており,退去強制事由の最低限ともいえる単なる不法残留を,在留特別許可を与えない理由として殊更に取り上げるのは不適当である。まし て,原告母は,CからDV被害を受けた後,無実の偽装結婚の嫌疑により逮捕勾留され,その身柄拘束期間中に在留期限を徒過してしまったのであって,相当に宥恕すべき事情があるといえるから,消極要素として考慮すべき度合いは小さい。 被告は,原告母が入管法19条の9の届出義務を怠ったとも主張する が,日本人でも外国人でも生活の本拠が変わった場合に2週間以内の届 出義務があるところ,婚姻継続中の夫婦の一方が家出した場合,届出がなされないということはよくあることであるし,特に,DV被害に遭っている妻が夫から逃げるため家出する際には,夫の追跡を危惧して転居の届出をしないことが多い。原告母も,入国管理局から逃げ隠れするために届出を怠ったのではない。この点は悪質とはいえない。 イ前記アで述べた事情に照らせば,本件裁決1により失われる利益は得られる利益を大きく上回るものであるから,本件裁決1は,比例原則に違反し,違法である。 (被告の主張)(1) 以下のとおり,本件各裁決は適法である。 (2) 在留特別許可に係る法務大臣又は法務大臣から権限の委任を受けた地方入国管理局長(以下「法務大臣等」という。)の裁量の範囲は極めて広範というべきであり,法務大臣等の判断が裁量権の範囲の逸脱又は濫用として違法となり得る場合があるとしても,それは法律上当然に退去強制されるべき外国人について,なお我が国に在留する 量の範囲は極めて広範というべきであり,法務大臣等の判断が裁量権の範囲の逸脱又は濫用として違法となり得る場合があるとしても,それは法律上当然に退去強制されるべき外国人について,なお我が国に在留することを認めなければならない積極的な 理由があったにもかかわらずこれが看過されたなど,在留特別許可の制度を設けた入管法の趣旨に明らかに反するような極めて特別な事情が認められる場合に限られるというべきである。そして,そのような特別の事情が存在することの主張立証責任は原告らにある。 また,在留特別許可を付与しなかった法務大臣等の判断の適否に対する司 法審査の在り方は,法務大臣等と同一の立場に立って在留特別許可をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断するのではなく,法務大臣等の一次的な裁量判断が既に存在することを前提として,同判断が裁量権を付与した入管法の目的を逸脱し又はこれを濫用して行われたと認められるかどうかという観点から判断すべきである。 在留特別許可は,諸般の事情を総合的に考慮した上で個別的に決定される べき恩恵的措置であって,その許否の判断を拘束する行政先例ないし一義的,固定的基準なるものは存在しない。本件ガイドラインも,在留特別許可に係る基準ではなく,当該許可の許否判断に当たり考慮する事項を例示的に示したものにすぎないのであり,本件ガイドラインを根拠に在留特別許可を付与すべきであるということにはならず,まして,在留特別許可をしなかったこ とが裁量権の範囲の逸脱又は濫用になるということもない。 また,在留特別許可の許否の判断は,比例原則が妥当する不必要な規制や過剰な規制が問題となるものではないから,比例原則の適用の余地はない。 (3) 以下の事情から 用になるということもない。 また,在留特別許可の許否の判断は,比例原則が妥当する不必要な規制や過剰な規制が問題となるものではないから,比例原則の適用の余地はない。 (3) 以下の事情からすれば,原告母の在留状況は悪質であって,出入国管理行政上看過できるものではなく,これらの事情は,原告母に対する在留特別 許可の許否判断において重大な消極要素として考慮されるべきである。 ア不法残留は,懲役刑も科し得る違法性の高い犯罪行為とされており,このような刑罰規定に該当する行為はそれ自体が重要な国家社会的な法益の侵害であるから,原告母が不法残留をしたとの事実だけをみても,原告母の在留状況は悪質というべきである。 原告母は,自身の在留期間更新許可申請に協力することを拒否したCに怒りを感じ,在留資格変更許可申請前の在留期限(平成28年▲月▲日)が迫った時期である同年▲月▲日に,偽装結婚である旨の話をすればCも原告母と強制的にベトナムに帰国させられるだろうなどという極めて身勝手な理由から,自らの意思に基づいて虚偽の事実を警察官に申告したとい うのであり,そのために身柄拘束をされたとしても酌むべき点はない上,身柄拘束期間中も,在留資格変更許可申請に関する手続は代理人によって行うことが可能であるところ,原告母は,在留期限経過前に何らかの手続を行う必要があることを認識していたにもかかわらず,これを行わなかったのであるから,原告母が入管法20条5項による特例期間の満了時に身 柄拘束されていたことをもって,宥恕すべき事情があるとはいえない。 イ原告母は,警察官に対してCとの婚姻が偽装結婚である旨の申告をしたものであるが,これが虚偽申告であるとすれば,虚偽告訴(刑法172条)に該当する可能性もある。 るとはいえない。 イ原告母は,警察官に対してCとの婚姻が偽装結婚である旨の申告をしたものであるが,これが虚偽申告であるとすれば,虚偽告訴(刑法172条)に該当する可能性もある。 原告母によれば,原告母は,前記のとおり極めて身勝手な理由から上記申告をしたものである上,これにより,Cは,電磁的公正証書原本不実記 録・同供用の被疑事実で逮捕されている。Cと原告母との婚姻関係が偽装でないというのであれば,原告母の虚偽申告によってCは理由なく逮捕勾留されたことになるのであり,原告母による虚偽申告行為は極めて悪質である。 なお,Cとの婚姻関係が偽装されたものであるとの申告は真実であった 可能性も否定し難いが,いずれにしても,原告母の本邦における在留状況が不良であったことに変わりはない。 ウ原告母は,Cと別居し兵庫県β市内に転居したにもかかわらず,入管法19条の9の届出義務を怠ったものであり,これは,在留カードによる中長期在留者の公正な在留管理を行おうとする入管法の趣旨に反し,罰則規 定である入管法71条の3の規定に抵触するものであって,悪質と評価されるべきである。 (4) 以下の事情からすれば,原告母に在留特別許可を付与すべき特別の事情は認められない。 ア原告母は,原告子と一緒に生活したことも,原告子の看護を行ったこと もない。また,原告母が仮放免許可後に原告子と面会した頻度の少なさ,原告子の病状について直接医師に説明を求めるなどといったことをしていないこと,Dには一定の収入及び所有不動産があるのに,原告母は,経済的事情などを理由に原告子の引き取りを申請していないと述べていることなどからすると,原告母が,原告子について,自ら看護する意思を有して いたか,甚だ疑問である。原告母 あるのに,原告母は,経済的事情などを理由に原告子の引き取りを申請していないと述べていることなどからすると,原告母が,原告子について,自ら看護する意思を有して いたか,甚だ疑問である。原告母が,実際に原告子の看護を行っていない ばかりか,原告子の病状を正しく把握しておらず,原告子を引き取って自ら看護しようとすらしていないなどの状況に照らせば,原告子の看護の必要性は,原告母に対する在留特別許可を付与すべき特別の事情とはならない。 また,原告子にとって原告母による看護が必要としても,後記のとおり, 本邦でなければ原告子の治療をすることができないとの状況は認められない。 イ原告母とDとの関係は,原告母に対する在留特別許可の許否の判断に当たり,しんしゃくすべき事情とはいえない。 原告母とDの婚姻は本件裁決1後の事情であるし,本件裁決1の当時は, 原告母は当時の夫であるCと法律上の婚姻関係を有しており,Dも原告母と交際を開始した頃は前妻と婚姻関係にあったのであり,原告母とDは不倫状態の上にその関係を築いたにすぎないところ,不倫は配偶者に対する不法行為をも構成し得る不安定な関係であり,実際に,原告母とDの不倫により,Dとその元配偶者の関係は悪化しており,Dの元配偶者に対する 不法行為を構成し得る結果が生じているのであるから,本件裁決1時点での原告母とDの関係は,要保護性が低い。 原告母とDの交際期間は本件裁決1時点で1年程度にすぎない上,Dは前妻と別宅で同居して生活しており,原告子の出生後,Dが原告母の下に頻繁に通うようになっていたのだとしても,その期間は本件裁決1時点で 1か月程度と極めて短期間にすぎなかったことに照らしても,本件裁決1時点において,原告母とDの間に,法的保護に値す 母の下に頻繁に通うようになっていたのだとしても,その期間は本件裁決1時点で 1か月程度と極めて短期間にすぎなかったことに照らしても,本件裁決1時点において,原告母とDの間に,法的保護に値する真摯で一体性のある夫婦関係が存在したとは認められない。 (5) 以下の事情からすれば,原告子についても,在留特別許可を付与すべき特別の事情は認められない。 ア原告子が超低出生体重児で出生し,慢性肺疾患や胆汁うっ滞性肝障害等 の疾患を有していることは,原告子の在留特別許可の許否の判断において格別しんしゃくすべき事情には当たらない。 (ア) まず,そもそも,外国人には,本邦の社会制度や医療水準を前提とした医療を受ける法的地位や利益は保障されていないのであるから,原告子が本国に送還されることによって本邦と同等の医療水準での医療が 受けられなくなったり,治療環境に変化があったりしたとしても,そのことによって直ちに本件裁決2が違法なものであることにはならない。 また,人道的配慮の見地から極めてやむを得ない例外的な場合に在留特別許可を付与すべきことがあり得るにしても,かかる場合に該当するのは,国籍国に帰国後,直ちに生命に危険が生ずるような事態に陥る可 能性がある場合,本邦から国籍国への移動を困難とするような重篤な病状である場合,本邦でなければ治療ができないような重篤な病状である場合など,その病状が生命に関わるほど重篤で,極めて高度の治療の必要性・緊急性及び病状が重症化する切迫性が認められる場合等に限られるべきであるところ,本件裁決2時点での原告子の症状は,(イ),(ウ) において述べるとおり,直ちに生命に関わるほど重篤なものとはいえず,ベトナムにおいても治療を継続していくことが可能といえるから,原告 ところ,本件裁決2時点での原告子の症状は,(イ),(ウ) において述べるとおり,直ちに生命に関わるほど重篤なものとはいえず,ベトナムにおいても治療を継続していくことが可能といえるから,原告子の具体的な症状等に照らしても,人道的配慮の見地から在留特別許可を付与すべき事情があるとは認められない。 (イ) 原告子は,出生後順調に体重が増加し,本件裁決2時点では退院可 能な体重近くまで成長しているほか,慢性肺疾患,胆汁うっ滞性肝障害等の疾患に係る症状も横ばいか状態が改善していた。これらの疾患は,超低出生体重児として肺や肝臓が未熟なまま出生したことによる機能不全であり,身体に特別な障害を有していたのではない以上,原告子の成長に伴って改善することは明白であり,また,原告子はそれを助ける適 切な医療を出生以後一貫して受けていたのであって,現に本件裁決2時 点で退院のめどがある程度立っていた状況等も併せ鑑みると,本件裁決2時点での症状はいずれも直ちに生命に関わるほど重篤なものとはいえず,本邦で特別の治療・処置を行わなければ救命の機会を失うとか,重大な障害を負うといった状態にあったということはできない。 (ウ) 原告子の担当医は,平成28年8月5日の医療カンファレンスにお いて退院後の帰国を見込んでいたし,別の担当医は,平成29年4月7日付けの回答書において,ベトナムでの治療継続のための条件として,夜間救急のある施設があること,集中治療ができる施設があること,小児外科医師がいる施設があることが望ましいと回答しているところ(以下,これらの条件をまとめて「本件3条件」という。),ベトナムの主 要都市であるホーチミン市には,本件3条件を満たす公立病院が複数存在する。 また,ベトナムでは,平成17年以降 (以下,これらの条件をまとめて「本件3条件」という。),ベトナムの主 要都市であるホーチミン市には,本件3条件を満たす公立病院が複数存在する。 また,ベトナムでは,平成17年以降,6歳未満の全ての子どもが無料で医療を受けられるようになったから,原告子がベトナム本国に帰国しても,経済的に治療を受けられないという事態は生じない。 以上によれば,原告子の症状は,ベトナム本国においても治療を継続することが可能といえる。 (エ) なお,入管法は退去強制令書を直ちに執行することができない場合があることを想定しているところ(52条5項,6項参照),原告子については,本国への送還が将来にわたって困難であるといった事情は認 められず,むしろ,冬季が終わり,酸素吸入器等が外れた場合には送還が可能であるとの医師の意見が示されていたのであるから,本件裁決2の時点では原告子をベトナム本国へ送還することが困難な状況であったとしても,このことが原告子に対する在留特別許可の許否の判断に当たり,有利にしんしゃくすべき事情となることはない。 イ原告らは,原告子の不法残留が不可抗力であったなどと主張するが,不 法残留はそれ自体が重要な国家社会的な法益の侵害であり,理由や目的のいかんを問わず,不法残留したとの事実だけからしても,重要な消極要素として考慮されるのであり,かかる評価は帰責性の有無によって左右されるものではない。また,原告子が不法残留したことについて帰責性がないことが在留特別許可の許否判断の際の一定の考慮事項となるとしても, 入管法は,不法残留に至る帰責性の有無をもって,法務大臣等の在留特別許可をすべきか否かの判断に関する裁量権の行使に対し,法律上の制約を課しているとはいえないから,このよう 項となるとしても, 入管法は,不法残留に至る帰責性の有無をもって,法務大臣等の在留特別許可をすべきか否かの判断に関する裁量権の行使に対し,法律上の制約を課しているとはいえないから,このような事情のある外国人が当然に保護されなければならないものではない。 また,そもそも,原告子に関する保護の責任は一次的には原告母,次い で国籍国政府にあるのであり,本国への帰国により弊害が生じるのであれば,原告母が配慮すべきであったのに,原告子の出生から30日以内に原告子の在留資格取得許可申請手続を執ることに特段の支障があったとは認められないにもかかわらず,原告母は手続を執らず,原告子を不法残留の状態に置き続けたのである。本国への送還により仮に何らかの不利益が原 告子に生じ得るとしても,それは原告子を一次的に保護すべき原告母が招いた事態であって,原告子に在留特別許可を付与しなかった裁決行政庁がその裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したことにはならない。 (6) 原告母は,ベトナムで生まれ育ち,稼働能力もあり,健康状態に特段問題がないこと,ベトナムには,原告母の両親,きょうだい,息子2名(過去 に内縁関係にあった男性との間に生まれた息子)がおり,原告子の養育につき親族による援助や監護を受けることも期待できること,原告母自身,違反審査や口頭審理の際に在留が認められなければ原告子とともにベトナムに帰国すると話していたことからすれば,原告らが本国に帰国したとしても,本国での生活に特段の支障があるとは認められない。 また,Dがベトナムに帰国することは何ら禁じられるものではないし,今 日の交通手段及び通信手段の発達により,Dが定期的にベトナムを訪れたり,電話やメール等の方法により交流したりすることは可能である。 がベトナムに帰国することは何ら禁じられるものではないし,今 日の交通手段及び通信手段の発達により,Dが定期的にベトナムを訪れたり,電話やメール等の方法により交流したりすることは可能である。 4 争点(2)(本件各退令処分の適法性)について(原告らの主張)前記3(原告らの主張)のとおり本件各裁決は違法なものであるから,これ らに基づく本件各退令処分もまた違法である。 (被告の主張)退去強制手続において,法務大臣等から異議の申出は理由がないとの裁決をした旨の通知を受けた場合,主任審査官は,速やかに退去強制令書を発付しなければならないのであって,退去強制令書を発付することにつき裁量の余地は 全くないから,本件各裁決が適法である以上,本件各退令処分も適法である。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件各裁決の適法性)について(1) 判断の枠組みア法務大臣は,退去強制手続の対象となった外国人が退去強制対象者(入 管法24条各号のいずれかに該当し,かつ,出国命令対象者に該当しない外国人をいう。)に該当すると認められ,入管法49条1項の規定による異議の申出に理由がないと認める場合においても,その外国人が入管法50条1項各号のいずれかに該当するときは,その者の在留を特別に許可することができる(同項柱書き)。 また,同項に規定する法務大臣の権限は,地方入国管理局長に委任することができる(入管法69条の2,出入国管理及び難民認定法施行規則61条の2第11号)ところ,本件においては裁決行政庁がその委任を受けているため,入管法が在留特別許可に関し法務大臣の権限として述べることは,裁決行政庁にも妥当する。 前提事実1(2)エ及び(3)イによれば,原告母は入管法24条4号ロの退 委任を受けているため,入管法が在留特別許可に関し法務大臣の権限として述べることは,裁決行政庁にも妥当する。 前提事実1(2)エ及び(3)イによれば,原告母は入管法24条4号ロの退 去強制事由に,原告子は同条7号の退去強制事由に該当し,かつ,原告母が自身ないし原告子についての違反審査において,原告子とともに日本で生活していきたいなどと供述していたこと(乙7,8,18)からすれば,原告らは,出国命令対象者に該当しない外国人であると認められる。また,原告らの入国及び在留の経緯に照らすと,本件各裁決に関しては入管法5 0条1項1号ないし3号は問題とならず,専ら同項4号に基づき在留特別許可をすべきであったか否かが問題となる。そこで,同号に基づく在留特別許可に関する法務大臣等の判断の性格について,次に検討する。 イ憲法は,日本国内における居住及び移転の自由を保障する(22条1項)にとどまり,外国人が本邦に入国し又は在留することについては何ら 規定しておらず,国に対し外国人の入国又は在留を許容することを義務付ける規定も存在しない。このことは,国際慣習法上,国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく,特別の条約がない限り,外国人を自国内に受け入れるかどうか,また,これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを,当該国家が自由に決定することができるものとされていること と,その考えを同じくするものと解される。したがって,憲法上,外国人は,本邦に入国する自由を保障されているものでないことはもとより,本邦に在留する権利ないし引き続き在留することを要求し得る権利を保障されているものでもなく,入管法に基づく外国人在留制度の枠内においてのみ本邦に在留し得る地位を認められているものと解すべきである(最高裁 昭和 ないし引き続き在留することを要求し得る権利を保障されているものでもなく,入管法に基づく外国人在留制度の枠内においてのみ本邦に在留し得る地位を認められているものと解すべきである(最高裁 昭和50年(行ツ)第120号同53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁,最高裁昭和29年(あ)第3594号同32年6月19日大法廷判決・刑集11巻6号1663頁参照)。 そして,入管法50条1項4号は,「法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」と規定するだけであって,その要件を具体的 に限定しておらず,入管法上,法務大臣が考慮すべき事項を掲げるなどし てその判断をき束するような規定も存在しない。また,このような在留特別許可の判断の対象となる者は,在留期間更新許可の場合のように適法に在留する外国人とは異なり,入管法24条各号の退去強制事由に該当し,本来的には退去強制の対象となるべき地位にある外国人である。さらに,外国人の出入国管理は,国内の治安と善良な風俗の維持,保健及び衛生の 確保,労働市場の安定等の国益の保持を目的として行われるものであって,その性質上,広く情報を収集し,その分析を踏まえて,時宜に応じた専門的かつ政策的な判断を行うことが必要であり,高度な政治的判断を要する場合もあり得るところである。 以上を総合勘案すれば,入管法50条1項4号に基づき在留特別許可を するか否かの判断は,法務大臣等の極めて広範な裁量に委ねられており,その裁量権の範囲は,在留期間更新許可の場合よりも更に広範であると解するのが相当であって,法務大臣等は,前述した外国人の出入国管理の目的である国内の治安と善良な風俗の維持,保健及び衛生の確保,労働市場の安定等の国益の保持の見地に立って,当該外国人の在留の状況,特別に のが相当であって,法務大臣等は,前述した外国人の出入国管理の目的である国内の治安と善良な風俗の維持,保健及び衛生の確保,労働市場の安定等の国益の保持の見地に立って,当該外国人の在留の状況,特別に 在留を求める理由の当否のみならず,国内の政治,経済及び社会等の諸事情,国際情勢,外交関係,国際礼譲等の諸般の事情を総合的に勘案してその許否を判断する裁量権を与えられているものと解される。したがって,同号に基づき在留特別許可をするか否かについての法務大臣等の判断が違法となるのは,その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等に よりその判断が全く事実の基礎を欠き,又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等によりその判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど,法務大臣等に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した場合に限られるものというべきである(前掲最高裁昭和53年10月4日大法廷判決参照)。 ウ本件ガイドラインは,上記判断の際の積極要素又は消極要素として考慮 され得る事項を例示的かつ一般的,抽象的に示したものであり,その性質上,同判断における法務大臣等の裁量権を一義的に拘束するものでないことは明らかである。したがって,本件ガイドラインは,在留特別許可の許否の判断における検討の要素にはなるとしても,積極要素として記載された事情が認められる場合に必ず在留特別許可を付与すべきことを定めた基 準ではなく,原告らにつき本件ガイドラインの積極要素に該当する事実が一部認められたとしても,そのことのみをもって,原告らに在留特別許可を付与しなかった裁決行政庁の判断が直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるということはできない。 エそこで,以下では,前記イの判断の枠組みに従って,原告らに在留 もって,原告らに在留特別許可を付与しなかった裁決行政庁の判断が直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるということはできない。 エそこで,以下では,前記イの判断の枠組みに従って,原告らに在留特別 許可を付与しなかった裁決行政庁の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したといえるか否かを検討する。 (2) 認定事実前記前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告母の来歴等原告母は,1981年▲月▲日にベトナムにおいて出生し,中学校を中退した後は,家業である農業の手伝い等を行っていたが,Cと婚姻したことから,過去に内縁関係にあったベトナム人男性との間にもうけた子F(1999年▲月▲日生。)とともに,平成26年5月11日に成田空港 に到着し,在留資格「永住者の配偶者等」,在留期間「1年」との上陸許可を受けて本邦に上陸した(乙1の1,5,7,8)。 イ原告母の不法残留に至る経緯(ア) 本邦上陸後,原告母は,C,Fとともに神奈川県α市内で生活し,レストランや工場で働くなどし,平成27年5月8日には在留期間の更 新許可(1年)を受けたが,Cと不仲となって同年6月頃までに別居し, 兵庫県内で生活するようになった。原告母は,Cと別居した翌日には,Fをベトナムに帰国させた。(なお,被告は,原告母とCの婚姻が偽装であった可能性を指摘するが,これをうかがわせる具体的事情は証拠上認められない。)その後,原告母は,当時妻帯者であったDと出会い,同年10月頃ま でに交際を開始して性的関係を持つようになり,原告子を懐胎した。 (甲24,25,乙1の1,7,8,原告母本人)(イ) 原告母は,在留期限が迫った平成28年4月頃,Cを 0月頃ま でに交際を開始して性的関係を持つようになり,原告子を懐胎した。 (甲24,25,乙1の1,7,8,原告母本人)(イ) 原告母は,在留期限が迫った平成28年4月頃,Cを訪ね,在留期間の更新手続に協力してほしい旨依頼したものの,Cはこれを拒否した。 原告母は,これに怒り,ベトナムに退去強制させられるのであれば自分 だけでなくCも退去強制されることにしたい,Cとの婚姻が偽装結婚であったと述べればCも退去強制させられるだろうなどと考え,神奈川県警α警察署を訪れて,Cとの婚姻は偽装結婚であったなどと申告した。 (乙7,8,原告母本人)原告母は,在宅での捜査手続となったため一時的に同県γ市内の友人 宅に居住していたが,同年5月初旬頃には兵庫県内に戻った(乙7,8)。その後の同月▲日,原告母は,破水したため同県β市所在のE病院に緊急入院し,同月▲日に原告子を出産した(乙7,8)。原告母は,入院中の同月▲日,知人を代理人として在留資格変更許可申請をした(乙2,7,8)。 原告母は,同月16日,E病院を退院した(甲28の87頁)。 (ウ) 原告母は,平成28年6月24日,Cと偽装結婚をしたとの疑いに関連し,電磁的公正証書原本不実記録・同供用の被疑事実により逮捕され,同年7月15日に処分保留により釈放されるまで身柄を拘束された(甲7,24,乙1の1,7,8,31)。原告母は,上記被疑事実に つき,同日,嫌疑不十分により不起訴処分となった(乙1の1)。なお, 原告母は,勾留の際,接見等禁止決定を受けた(甲7)。 Cも,原告母と偽装結婚したとの疑いに関連し,電磁的公正証書原本不実記録・同供用の被疑事実により同年6月24日に逮捕され,同年7月15日付けで不起訴処分と 接見等禁止決定を受けた(甲7)。 Cも,原告母と偽装結婚したとの疑いに関連し,電磁的公正証書原本不実記録・同供用の被疑事実により同年6月24日に逮捕され,同年7月15日付けで不起訴処分となった(乙41,弁論の全趣旨)。 (エ) 原告母は,身柄を拘束されていたため,前記(イ)の在留資格変更許 可申請の審査結果の告知を受けるために大阪入国管理局神戸支局に自ら出頭することができず,同申請は,入管法20条5項による特例期間の末日である平成28年7月11日の満了をもって終止処分となり,同月12日以降,原告母は不法残留となった(乙1の1,7,8)。 ウ原告子の不法残留に至る経緯 原告子は,前記のとおり平成28年▲月▲日に出生し,入管法22条の2第3項又は第4項の規定に基づく在留資格の取得許可を受けることなく,出生後60日を経過する同年▲月▲日の経過を超えて本邦に在留したため,同月▲日以降,不法残留となった。 エ原告ら及びDの関係等 (ア) 原告母は,前記のとおり,平成27年10月頃までにDと交際を開始した。 原告母は,原告子を出産し,平成28年5月16日に退院してから前記のとおり同年6月24日に逮捕されるまでの間,E病院を訪れて原告子と面会しており,母子の愛着形成は良好で,原告母は毎回搾乳した母 乳を持参するなどしていた。Dも,月に1回程度原告子の面会に来ており,原告子の養育・入院費を支払う意思を示していた。(甲4の1)(イ) Dは,原告母の妊娠を機に前妻との関係が悪化し,平成28年▲月▲日頃に前妻と離婚した(甲25,乙8,13)。 (ウ) 原告母が平成28年7月15日に東京入管収容場に収容されて以降, 原告母とDはほぼ毎日電話で会話をし,Dは,毎月3万円を 28年▲月▲日頃に前妻と離婚した(甲25,乙8,13)。 (ウ) 原告母が平成28年7月15日に東京入管収容場に収容されて以降, 原告母とDはほぼ毎日電話で会話をし,Dは,毎月3万円を原告母に送 金し,本件裁決1後の同年12月には指輪を贈った(甲9,24,25)。 前提事実のとおり,原告母は,平成29年▲月にCと離婚し,同年▲月▲日にDと婚姻した。Dは,同年▲月▲日,原告子を認知した。 (エ) 原告母は平成29年9月11日に仮放免となり,その後はDと暮ら しながら,当初は月に1,2回程度,現在は,3日か4日に1回程度,忙しい時期には1週間に1回程度,原告子のいるβ乳児院に赴き,原告子と面会をしている(甲36,乙32,33の2枚目,原告母本人)。 オ原告母の家族の状況等原告母は,ベトナムにおいて10人きょうだいの末子として生まれ,過 去に内縁関係のあった男性との間にFを含む2人の息子をもうけた。原告母の両親,きょうだい及び上記息子2人は,現在ベトナムで暮らしている。 原告母は,両親,きょうだい,上記息子らと連絡を取り合い,交流を維持している。(乙8)原告母の実家はベトナムの農村地域にあり,ホーチミン市に出るために は車で5,6時間程度を要する。原告母の実家から10キロメートル程度離れたところには数名の医師がいる医療機関があるが,重病をそこで治療することは困難である。(原告母本人)カ Dの家族の状況Dには,母ときょうだい8人がおり,母ときょうだいのうち6人は日本 に,残り2人のきょうだいはアメリカに,それぞれ居住している。Dの父はすでに死亡している。Dは「永住者」の在留資格を有しており,平成22年に来日して以降,製造業の仕事に従事している。(甲25 に,残り2人のきょうだいはアメリカに,それぞれ居住している。Dの父はすでに死亡している。Dは「永住者」の在留資格を有しており,平成22年に来日して以降,製造業の仕事に従事している。(甲25)キ超低出生体重児についての一般的知見等(乙36)超低出生体重児は,単に体重が少ないだけでなく,あらゆる臓器が未熟 であり,胎外生活に適応していくためには様々な援助が必要となる。 出生直後の超低出生体重児は,生命危機の状態となり,生存していくために集中治療が必要となる。急性期を乗り越えると,成長・発達を促進させていくことが治療の中心となり,その過程で,未熟児貧血や未熟児くる病,未熟児網膜症といった問題も発生するが,生後数日の経過に伴い,特別な援助がなくても胎外生活に適応できるようになる。数か月の入院生活 ののち,修正週数(受胎後週数)が予定日近くとなり,体重も2500グラム前後になると退院が可能となるといわれている。 呼吸・循環状態など生理的な機能が安定するのは,修正週数34週頃とされている。 超低出生体重児は,呼吸窮迫症候群となりやすく,多呼吸,陥没呼吸, 呻吟,チアノーゼといった呼吸障害が見られることが多い。ほとんどの場合人工呼吸管理が必要となり,自力で規則的な呼吸ができるようになれば人工呼吸管理を中止することができるが,超低出生体重児は長期の人工呼吸管理が必要となる場合もあり,このようなケースでは慢性肺疾患に移行しやすい。そのため,人工呼吸管理が中止できても,酸素投与が必要とな ったり,呼吸器系の感染を起こすと,再度人工呼吸管理が必要となったりする場合もある。さらに,気管軟化症などのために気道切開が必要となるなど,長期にわたる呼吸管理が必要となることがある。 ク原告子の出 ,呼吸器系の感染を起こすと,再度人工呼吸管理が必要となったりする場合もある。さらに,気管軟化症などのために気道切開が必要となるなど,長期にわたる呼吸管理が必要となることがある。 ク原告子の出生後の状況等(甲4の1,11,28,35,乙30,34) (ア) 原告子は,平成28年▲月▲日,在胎週数25週4日,体重796グラムで出生した。出生直後から呼吸窮迫症候群のため重篤な呼吸障害が認められ,NICUにて人工呼吸管理を含めた全身管理となった(甲28の313頁)。 同月▲日(日齢10日,修正週数27週0日)に抜管となり,DPA P(呼気吸気変換方式気道陽圧法,甲28の388頁)管理となったが, 無呼吸が頻発したため,同月22日に再挿管となった(甲28の119頁ないし129頁)。人工呼吸管理が長期化したため,慢性肺疾患は徐々に悪化した(甲28の313頁)。X線で一部無気肺を疑う所見はあったものの,慢性肺疾患の治療のために早期抜管が望ましいとの判断もあって,同年7月13日に抜管となり,DPAP管理となった(甲2 8の349頁,350頁)。その後,慢性肺疾患の症状が強く,呼吸状態の改善に時間がかかったため,長期間DPAPによる管理が続いたが,同年8月2日からNHF(ネーザルハイフロー)への移行が試行された(甲28の416頁,424頁)。もっとも,この頃,体重増加が緩やかとなっており,慢性肺疾患による呼吸状態の不安定さや活動量の増加 が影響していると考えられたため,E病院では,治療方針として,NHFへの移行を無理する必要はなく,体重増加が一番の目標であることが確認された(甲28の420頁)。 (イ) 肝機能については,同年7月から胆汁うっ滞が見られ,同月19日にウルソデオキシコール酸の服用 移行を無理する必要はなく,体重増加が一番の目標であることが確認された(甲28の420頁)。 (イ) 肝機能については,同年7月から胆汁うっ滞が見られ,同月19日にウルソデオキシコール酸の服用が開始された(甲4の1,28の37 1頁,1668頁)。同年8月9日には体重増加不良の原因に胆汁うっ滞が関係しているのではないかと考えられたため,脂溶性ビタミンの補充,MCTフォーミュラミルク(必須脂肪酸強化ミルク,甲4の1)の使用が開始された(甲28の445頁,1668頁,1669頁)。同月29日の時点では,胆汁うっ滞は増悪し,肝障害も見られ始めていた ことから,E病院では,その原因に関し,鑑別,検査を進めることとされた(甲28の513頁)。 (ウ) 平成28年8月5日の医療カンファレンスの内容等E病院において,医師ら病院関係者のほか,兵庫県βこども家庭センターの職員,東京入管横浜支局から原告子の違反事件移管を受けた大阪 入国管理局神戸支局の職員が同席し,平成28年8月5日に原告子の医 療カンファレンスが行われた。主治医からの説明の要旨は,以下のとおりである。(甲28の430頁,431頁,乙30)a 同日現在の体重は1644グラムで順調に成長しており,身体・脳には疾患がない。 b 超未熟児として出生したので,呼吸器・肺については十分に機能し ておらず,つい先日まで人工呼吸器を装着しており,肺が痛んでいる状態であるが,想定の範囲内といえる。 c 退院は,本来の出産予定日である平成28年▲月中旬を見込んでいるが,退院の際には酸素吸入器等を装着することとなる。酸素吸入器等の装着は半年程度であるが,毎月1度はE病院で状態を確認する必 要がある。 d ベトナムでの未熟 年▲月中旬を見込んでいるが,退院の際には酸素吸入器等を装着することとなる。酸素吸入器等の装着は半年程度であるが,毎月1度はE病院で状態を確認する必 要がある。 d ベトナムでの未熟児医療ではフォローが不十分なので,主治医として,酸素吸入器等の装着が外れるまでは,ベトナムへの送還は否定的に考える。(この点については,医師から,「ベトナムの医療情勢がはっきり分からない。在宅酸素の児を受け入れることができるかは帰 国前に確認が必要である」旨の発言があったことも認められる(甲28の430頁)。)e 原告子は,呼吸器・肺の機能が不十分なので,冬の時期に風邪を引いたり,インフルエンザにかかったりすると危険だと断言でき,退院後半年を経過した平成29年3月頃に酸素吸入器等の装着が外れた時 点でベトナムへ送還することを勧める。現時点で原告子の酸素吸入器等が外れるのに半年を超えることはないと思われる。 (エ) E病院では,原告子は,平成28年8月15日には終日NHFに切り替えができており,問題ないようであれば経鼻酸素への移行を進めることとされたが,その後の同月25日や29日の時点では,経鼻酸素へ の移行はあまり進まず,体重増加が緩慢であり,慢性肺疾患の症状も強 かったことから,経鼻酸素への移行は無理せず行っていくとの方針が確認された(甲28の468頁,502頁,511頁)。 原告子は,同年9月2日頃までの時点で,経鼻酸素への移行は進んでおらず,経鼻酸素ではSpO2低下や陥没呼吸が見られ,体重増加も緩慢で,胆汁うっ滞の原因も究明中であった(甲28の518ないし52 6頁)。医師は,同年8月31日の時点では,退院のめどが立たないとして,退院は肺や肝臓の状態を見ながらとなる旨判断した(甲28 慢で,胆汁うっ滞の原因も究明中であった(甲28の518ないし52 6頁)。医師は,同年8月31日の時点では,退院のめどが立たないとして,退院は肺や肝臓の状態を見ながらとなる旨判断した(甲28の519頁)。 同年9月7日の時点では,比較的経鼻酸素への移行が進んでおり,体重増加はまずまず良好とされ,同月中の退院を目指したいとされた(甲 28の554頁)。同月14日(本件裁決2当時)の原告子の体重は2318グラムであった(甲28の579頁)。 (オ) 原告子について,本件裁決2後の同年10月4日には肝機能が増悪傾向にあるとされ,同月5日には,哺乳良好のわりに体重増加はやはり緩慢であり,胆汁うっ滞の影響は否定できないとされた(甲28の63 9頁,643頁)。 各種検査の結果,胆汁うっ滞の原因はウイルス疾患や代謝異常症によるものではないとされ,同年10月17日の時点では,未熟性による胆汁うっ滞の遷延であろうとされ,体重増加も得られていることから,今後は改善傾向となることは期待できるとされた(甲28の699頁)。 呼吸機能については,同月3日からNHFを使用せず,完全に経鼻酸素に移行したが,同月13日の時点で,酸素は30パーセント相当必要であり,慢性肺疾患が強いものと思われるとして,酸素離脱には数か月かかるであろうとの見解が示された(甲28の668頁,681頁)。 (カ) 平成28年10月20日の医療カンファレンス 医師,看護師らのほか,兵庫県βこども家庭センターの職員が同席し て平成28年10月20日にE病院で行われた原告子の医療カンファレンスにおいては,病状と経過,今後の見通しについて,状態としては肺も肝臓も急激に悪化しそうな状態ではない,肝機能については し て平成28年10月20日にE病院で行われた原告子の医療カンファレンスにおいては,病状と経過,今後の見通しについて,状態としては肺も肝臓も急激に悪化しそうな状態ではない,肝機能については増悪していないが,改善もしていない,健診時にフォローしていく,目に見えて皮膚や眼球結膜の黄染が強くなったり,便色調がスケール1~2番にな ったりするようであれば受診が必要であるとの説明がなされた。また,緊急時の対応については,何かあれば24時間診察対応が可能であること,フォローは月に1回程度で良いが,退院して初めのうちは2週間でもいいこと,注意を要するのは感染症であること,肝機能や呼吸状態の悪化には注意が必要であることなどの説明があった。退院については, 同月27日の検査終了後,退院可能となるとの説明があった。(甲11,28の707頁ないし710頁,1714頁)(キ) 原告子は,平成28年▲月▲日,日齢175日(修正週数50週4日)でE病院を退院し,β乳児院に入所した(甲28の744頁)。なお,原告子については,同年8月5日付けで兵庫県βこども家庭センタ ーに通告があった扱いとなり,同日付けで同センターがE病院に原告子の一時保護を委託する形となっていた(甲4の1,乙30)。 退院サマリーには,慢性肺疾患のため経鼻酸素を使用している状態であり,啼泣時や啼泣後に軽度の吸気性喘鳴があるため,喉頭軟化症疑いとして経過観察中であること(なお,後の検査においては,喉頭軟化症 等喉頭の異常は認められなかった(甲28の1005頁)。),吸気性喘鳴の増強や呼吸状態の悪化があれば,E病院を受診予定であること,胆汁うっ滞性肝障害については,特記所見はなく原因は不明であること,ウルソデオキシコール酸等の薬を内服し,今後は血液 頁)。),吸気性喘鳴の増強や呼吸状態の悪化があれば,E病院を受診予定であること,胆汁うっ滞性肝障害については,特記所見はなく原因は不明であること,ウルソデオキシコール酸等の薬を内服し,今後は血液検査によりフォロー予定であること,胆汁うっ滞により体重増加が緩慢であり,MCTフ ォーミュラミルクを哺乳し,体重増加を図っていることなどが記載され ていた(甲4の1)。 (ク) 上記退院後,原告子は,複雑性尿路感染症のため,平成28年11月14日から同月25日まで,E病院に入院した(甲28の750頁ないし887頁,1670頁,1671頁)。なお,同入院中,胆汁うっ滞性肝障害につき,Alagille症候群,成人発症Ⅱ型高シトルリ ン血症等の原因が否定できないとされ,自然寛解していくこともあるが,そうならない場合には肝生検,肝移植等を考えていく必要があるとされた(甲28の820頁)。 また,原告子は,喘息性気管支炎のため,平成29年3月8日から同月16日まで(甲28の926頁ないし1034頁,1672頁ないし 1674頁),同年5月22日から同月27日まで(甲28の1046頁ないし1125頁,1675頁),同月29日から同年6月12日まで(甲28の1126頁ないし1358頁,1677頁),それぞれE病院に入院した。なお,原告子は,少なくとも同日時点では,いまだ酸素吸入器を装着していた(甲28の1355頁)。 この後も,原告子は,急性気管支炎のため,同年7月25日から同月28日まで及び同年8月10日から同月14日まで,RSウイルス気管支炎のため,同月22日から同年9月1日まで,急性気管支炎のため,同月16日から同月21日まで,それぞれE病院に入院したほか,右外鼠径ヘルニアのため同病院に入院す ら同月14日まで,RSウイルス気管支炎のため,同月22日から同年9月1日まで,急性気管支炎のため,同月16日から同月21日まで,それぞれE病院に入院したほか,右外鼠径ヘルニアのため同病院に入院することもあった(甲35)。 これ以外に,原告子は,E病院に月に1,2回程度通院している(乙34)。 (ケ) 東京入管の捜査関係事項照会に対してE病院が平成29年4月7日付けで作成した回答書には,ベトナムでの治療継続のための条件として,①夜間救急のある施設が望ましい,②集中治療ができる施設が望ましい, ③小児外科医師がいる施設が望ましいという3点が挙げられる旨の記載 がある(本件3条件)(乙34)。 ケベトナムの医療事情等(ア) 医療事情等ベトナムにおいては,都市部と地方の医療環境は大きく異なり,医療水準の地域格差が拡大している。公立医療機関では医療スタッフ,受容 能力,医療機器等の絶対数が不足し,地方においてより顕著である。また,ハノイやホーチミン市には近代的な医療機器を備えた病院がいくつかあるが,タイやシンガポールなどの医療水準に到達しているとはいい難い状況にある。(甲20)ベトナムの保健医療機関は,病床数やスタッフ数等に基づき,5つの レベルに区分されており,レベル5に当たるCHC(コミューンヘルスセンター)で対応できない患者はレベル4ないし3に当たる県レベルの病院,県レベルの病院で対応できない患者はレベル2に当たる省レベルの病院,省レベルの病院で対応できない患者はレベル1に当たる中核病院へとそれぞれ搬送されるという,基本的なリファラル体制は構築され ているものの,資金・人材・機材の不足等から患者の下位レベルの保健医療施設への信頼は低く,患者はより高次 ベル1に当たる中核病院へとそれぞれ搬送されるという,基本的なリファラル体制は構築され ているものの,資金・人材・機材の不足等から患者の下位レベルの保健医療施設への信頼は低く,患者はより高次レベルの施設へ直接受診するケースが散見される。そのため,高次レベルの病院では病床稼働率が100パーセントを超えることもあり,リファラル体制は有効に機能していないという課題が挙げられている。(乙37) なお,平成17年,教育・ヘルスケア・子どもの保護に対する法律が公布され,6歳未満の全ての子どもが無料で医療を受けられるようになった(乙37)。 (イ) ホーチミン市の医療機関の状況等ホーチミン市には,平成29年10月時点では,夜間救急施設及び集 中治療室が設置され,超低出生体重児を受け入れており,小児外科医が 勤務している公立病院が少なくとも3つ存在した(そのうち第1小児病院,第2小児病院は小児医療専門病院である。)(乙35)。もっとも,第1小児病院,第2小児病院は,本件裁決2後の平成29年8月1日にホーチミン市等が新しい入院治療センターの稼働を開始させるほどに,長年混雑し,パンク状態であった(乙39)。 (3) 本件裁決2についてア不法残留について原告子が,本邦に在留していた原告母とDとの間に出生し,そのまま本邦に留まることによって不法残留となったこと,不法残留が成立した当時わずか0歳であったことからすれば,不法残留となったことについて,原 告子自身には何ら責に帰すべき事由はないといえる。この点や,本件裁決2の時点における不法残留の期間が2か月余りの短期間にすぎないことも考慮すると,在留特別許可の許否の判断において,原告子の不法残留の事実自体が消極要素として評価される いといえる。この点や,本件裁決2の時点における不法残留の期間が2か月余りの短期間にすぎないことも考慮すると,在留特別許可の許否の判断において,原告子の不法残留の事実自体が消極要素として評価されることはやむを得ないものの,その程度は限定的なものにとどまるというべきである。 イ原告子をベトナムに送還した場合の支障について(ア) 前記認定のとおり,原告子は,超低出生体重児として出生し,出生直後からNICUにおいて治療を受けており,慢性肺疾患や胆汁うっ滞性肝障害といった生理的機能の障害を有し,体重増加は基本的に緩慢であったところ,本件裁決2の当時も,いまだ入院中であって,慢性肺疾 患の症状は強く,特に急変等のないその約1か月後に,酸素離脱には数か月を要するとの見方が示されていることから,本件裁決2の当時も,酸素離脱には相当期間要すると考えられる状態であったといえる。さらに,原告子は,本件裁決2の当時,胆汁うっ滞性肝障害の原因も究明中であり,体重は2500グラムにも満たなかったものである。 原告子は,出生後,E病院において,その症状に応じた極めてきめ細 やかな治療を継続して受けてきていたといえるが,平成28年▲月▲日(本件裁決2から約1か月半後)の退院時及びその直近の医療カンファレンスにおいても,肺機能及び呼吸状態の悪化や感染症等様々な危惧が示される状態にあり,実際にも原告子は同退院後に入退院を繰り返すなどしており,上記危惧が現実化していたといえることに照らすと,本件 裁決2の時点においては,原告子の肝機能や呼吸状態が悪化したり,感染症等に罹患したりする危険性は,よりいっそう高かったものと評価できる。 このような事情に加え,医師が,本件裁決2の約1か月前の平成28年8月5日の医 子の肝機能や呼吸状態が悪化したり,感染症等に罹患したりする危険性は,よりいっそう高かったものと評価できる。 このような事情に加え,医師が,本件裁決2の約1か月前の平成28年8月5日の医療カンファレンスにおいて,その時点でのベトナムへの 送還に否定的な見解を示し,また,本件裁決2から約7か月後の平成29年4月7日時点においても,本件3条件をベトナムでの治療継続のための条件として提示し,高水準の治療態勢を要求していたことを併せ考慮すれば,本件裁決2当時,原告子の予後は不透明であって,原告子は,その生命の維持,身体の発育のため,従前の治療と同様の高水準かつき め細やかな治療を継続する必要性が極めて高い状態にあったと認めるのが相当である。 なお,平成28年8月5日の医療カンファレンスにおいて,酸素吸入器等の装着が外れるまではベトナムへの送還は否定的に考えるとの発言や,ベトナムの医療情勢がはっきり分からない,在宅酸素の児を受け入 れることができるか帰国前に確認が必要である旨の発言があったことからすれば,同カンファレンスの当時,医師は,前記のとおり,その当時の時点で原告子をベトナムに送還することには相当のリスクがあると判断し,送還に否定的な考えを示していたとみるのが自然である。上記各発言や原告子の当時の発育状況に照らすと,同カンファレンスにおける 医師の「肺の状態は想定の範囲内」との発言は,超低出生体重児の発育 としてその時点で想定される範囲内に収まっているとの趣旨にすぎないものと推認され,「退院後半年を経過した平成29年3月頃に酸素吸入器等の装着が外れた時点でベトナムへ送還することを勧める」との発言も,冬季の送還が危険だと断言したのに引き続いての発言にすぎず,強制送還されるのであればという 年を経過した平成29年3月頃に酸素吸入器等の装着が外れた時点でベトナムへ送還することを勧める」との発言も,冬季の送還が危険だと断言したのに引き続いての発言にすぎず,強制送還されるのであればという前提の下での発言と推認されるのであり, いずれもベトナムへの送還を積極的に容認する発言と捉えることはできない。 (イ) 被告は,原告子の成長に伴って肺や肝臓の機能不全が改善することは明白であるし,原告子はそれを助ける適切な医療を出生後一貫して受けており,現に本件裁決2時点で退院のめどがある程度立っていたなど として,本件裁決2時点での症状はいずれも直ちに生命に関わるほど重篤なものとはいえないなどと主張する。 しかしながら,原告子の呼吸機能については,本件裁決2当時までの経過をみるに,慢性肺疾患の症状が強く,人工呼吸器の抜管や経鼻酸素への移行が順調に進んでいなかったものであるし,平成28年8月5日 の医療カンファレンスにおいて,医師は,現時点で原告子の酸素吸入器等が外れるのにかかる期間は半年程度と思われるとの趣旨の発言をしていたものの,現実には少なくとも平成29年6月12日の時点でも酸素吸入器は外れておらず,医師の上記発言は順調に生育した場合の希望的観測を述べたにすぎないものと評価される。 また,胆汁うっ滞性肝障害についても,本件裁決2時点においては原因不明であり,その後一旦は未熟性による胆汁うっ滞の遷延であろうとされたものの,さらにその後の平成28年11月18日の時点では,Alagille症候群等の可能性が指摘され,自然寛解しない場合に肝生検,肝移植等を考えていく必要があるとされていたことなどからする と,本件裁決2の当時,その予後は極めて不透明なものであったといえ る。 能性が指摘され,自然寛解しない場合に肝生検,肝移植等を考えていく必要があるとされていたことなどからする と,本件裁決2の当時,その予後は極めて不透明なものであったといえ る。 以上の事情に照らせば,少なくとも本件裁決2時点においてみれば,原告子の成長に伴って肺や肝臓の機能不全が改善することが明白であるというだけの事情は見当たらないといわざるを得ず,むしろ,これらの機能不全が順調に改善しない可能性は十分にあったというべきである。 被告は,本件裁決2当時,原告子の退院のめどはある程度立っていたとも主張するが,原告子は,平成28年8月5日の時点で,同年9月中旬頃の退院を見込んでおり,同年9月7日の時点で同月中への退院を目指したいとされていたにもかかわらず,実際には同年▲月▲日まで退院がずれ込んだという経過にも鑑みると,本件裁決2当時,流動的な状況 であり,原告子の退院のめどがある程度立っていたとはいい難い。 以上からすると,被告の前記主張は採用できない。 (ウ) そこで,以上の本件裁決2当時の原告子の健康状態を前提に,ベトナムへの送還の支障の有無について更に検討するに,前記認定のとおり,ベトナムの医療水準は高いとはいえない上,リファラル体制が必ずしも 機能しているとはいえず,本件3条件を満たす医療機関は,少なくともホーチミン市には存在するものの,その数は少なく,かつ相当に混雑しているのであって,これらの医療機関が原告子を受け入れる保障はないといわざるを得ない。 加えて,原告子が原告母とともにベトナムに送還されたとすれば,そ の生活場所として現実に想定されるのは農村地域にある原告母の実家かその近辺といえるが,前記認定に照らすと,原告母の実家のある農村地域の近辺に が原告母とともにベトナムに送還されたとすれば,そ の生活場所として現実に想定されるのは農村地域にある原告母の実家かその近辺といえるが,前記認定に照らすと,原告母の実家のある農村地域の近辺に,本件3条件を満たす医療機関は存在せず,ホーチミン市から車で5,6時間程度離れた場所にある原告母の実家のある農村地域に居住しながら,緊急時等に遠く離れたホーチミン市の病院を受診すると いうのも非現実的である。 以上からすると,原告子がベトナムに送還された場合,従前と同水準の治療を受けられなくなる可能性は非常に高かったというべきである。 本件裁決2当時の原告子の状態,今後考え得るリスクの大きさに照らすと,裁決行政庁が,本件裁決2の時点において今後ベトナムでの治療が可能であると評価したのであれば,時期尚早な極めて安易な評価とい わざるを得ない。 (エ) 以上の事情に照らせば,少なくとも本件裁決2の当時は,原告子は,その生命の維持,身体の発育のため本邦での治療を必要としており,この点で,ベトナムに送還することについては著しい支障があったというべきである。 (オ) なお,被告は,原告子について,本国への送還が将来にわたって困難であるといった事情は認められない,冬季が終わり酸素吸入器等が外れた場合には送還が可能であるとの医師の意見が示されていたなどとして,本件裁決2の時点で原告子をベトナムへ送還することが困難な状況であったとしても,原告子に有利にしんしゃくすべき事情とはならない などと主張する。 しかしながら,本件裁決2当時の原告子の健康状態,ベトナムに送還された場合の想定される原告子の状況についてはこれまで説示したとおりであって,違法性の判断基準時である本件裁決2の時点で原告子を しかしながら,本件裁決2当時の原告子の健康状態,ベトナムに送還された場合の想定される原告子の状況についてはこれまで説示したとおりであって,違法性の判断基準時である本件裁決2の時点で原告子をベトナムに送還することに著しい支障がある以上,これが在留特別許可の 許否の判断に当たり,原告子に有利な事情としてしんしゃくされるべきであることは当然である。確かに,原告子が,将来の一定の時期にベトナムへの送還が可能となる状態となる可能性はあるものの,送還することの支障の有無は,その時期ごとの原告子の健康状態,発育状況等から判断すべきであって,被告の上記主張は採用できない。 ウ小括 以上のとおり,原告子については,不法残留をしたという事情があるものの,これについての原告子の帰責性は認められず,消極要素として考慮すべき程度は限定的なものにすぎないところ,被告の主張に照らせば,裁決行政庁は,不法残留という事実自体を重大な消極要素として考慮したものと認められ,裁決行政庁は,この点についての評価を誤ったものといえ る。 また,原告子の本件裁決2当時の健康状態やベトナムの医療事情等に照らせば,原告子は,その生命の維持,身体の発育のため本邦での治療を必要としており,ベトナムに送還することにつき著しい支障があったといえるところ,被告の主張に照らせば,裁決行政庁は,原告子の治療の必要性 の程度を過小評価し,ベトナムでの治療の可能性についての評価も誤ったものと認められ,原告子の生命の維持,身体の発育という人道上極めて重視すべき事情に関して,事実の誤認又は評価の誤りがあったものといわざるを得ない。 以上によれば,裁決行政庁のした本件裁決2は,重要な事実について, 看過できない事実の誤認又は めて重視すべき事情に関して,事実の誤認又は評価の誤りがあったものといわざるを得ない。 以上によれば,裁決行政庁のした本件裁決2は,重要な事実について, 看過できない事実の誤認又は評価の誤りが存在しており,これがなければ原告子に在留特別許可を与えるべきとの判断に至った可能性が高く,本件裁決2は,社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであり,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであって違法というべきである。 (4) 本件裁決1について ア原告母の在留状況について原告母が,在留期限を徒過する前に在留資格変更許可申請をしていたことや,身体拘束を受けていたため同申請の審査結果の告知を受けるための出頭が自らはできず,このため同申請は終止処分となり,入管法20条5号の特例期間の経過により不法残留となったという経緯に照らすと,原告 母は,在留期間を遵守して適法な在留資格を得ようとする意思は有してい たといえ,在留資格制度を軽視する姿勢までは見られない。この点や,本件裁決1の時点で1か月半余りと不法残留の期間が短いことからすれば,原告母の不法残留は,強い悪質性を有するものとまではいえない。 また,原告母は,Cと別居して兵庫県内に転居した際,入管法19条の9の届出を怠っているものの,出入国管理行政に実害をもたらしたことま ではうかがわれないことからすると,この点についても,悪質性が強いとはいえない。 しかし,原告母は,前記認定のとおり,在留期間更新手続への協力を拒んだCに腹を立て,Cも強制退去されればいいなどという身勝手な動機から,Cとの婚姻が偽装結婚であると警察官に虚偽の申告をしており,これ は虚偽告訴(刑法172条)に該当する可能性のある行為である上,これ を立て,Cも強制退去されればいいなどという身勝手な動機から,Cとの婚姻が偽装結婚であると警察官に虚偽の申告をしており,これ は虚偽告訴(刑法172条)に該当する可能性のある行為である上,これによりCが逮捕勾留されるという結果が生じていることからすれば,上記虚偽申告は悪質な行為といわざるを得ないのであって,原告母の在留状況に一定の悪質性が認められることは否定し難い。 イ原告母をベトナムに送還した場合の支障等について 原告母とDとの関係についてみるに,本件裁決1当時,Dは前妻と離婚していた一方,原告母は,Cと法的婚姻関係にあったものの,別居期間が同居期間より長期にわたっており,その後,Cが離婚に応じたこと(弁論の全趣旨)をみても,原告母とCとの婚姻関係は破綻していたといえること,原告母とDは,原告母の収容前に交際を開始し,原告母が収容されて からも原告母とDの交流は続き,Dは月3万円を原告母に送金するなどしていたことからすれば,本件裁決1当時,原告母とDは婚姻を前提とした真摯な交際をしていたとは認められる。もっとも,原告らの主張や原告母の本人尋問における供述によっても本件裁決1の時点までに原告母とDが同居したことはないというのであり,実質的な婚姻関係にあったとまでは いい難い上,交際期間自体も短期間であることからすると,在留特別許可 の許否の判断に当たり,原告母とDとの関係を積極要素として殊更原告母に有利に考慮すべきものとすることはできない。 また,原告母は,ベトナムで出生,生育し,稼働能力を有する成人である上,ベトナムにいる家族との関係も維持されていることを考慮すれば,原告母自身に関しては,ベトナムで生活することに特段の支障はないとい える。 しかしながら,前記の 力を有する成人である上,ベトナムにいる家族との関係も維持されていることを考慮すれば,原告母自身に関しては,ベトナムで生活することに特段の支障はないとい える。 しかしながら,前記のとおり,原告子については,本件裁決1当時,その生命の維持,身体の発育のため本邦での治療を必要としているという事情があったと認められる。そして,本件裁決1当時,Dは,原告子を養育する意思を有していたものの,認知までには至っておらず,法的な父子関 係はまだなかったこと,原告子が当時0歳の乳児であったことなどを考慮すると,本件裁決1当時,原告子には,母である原告母の看護が必要であったというべきである。このように,原告母については,本邦での治療を要する原告子の看護をする必要があったといえ,この点において,結局原告母をベトナムに送還することには著しい支障があったというべきである。 そして,上記事情は,人道上の配慮が必要な事情として,在留特別許可の許否の判断において,重要な積極要素として考慮されるべきものといえる。 なお,被告は,原告母は原告子を看護する意思があったか疑わしいなどと主張する。しかしながら,原告母は,逮捕されるまでの間,原告子を見舞って関係性を構築し,愛着形成も良好であったとされている上,退去強 制手続中から一貫して原告子とともに生活するとの意思を表明し(乙7,8,13,15,18,20),仮放免後も定期的に乳児院に面会に行っているのであり,これらの事情からすれば,本件裁決1当時,原告母は,原告子の監護養育を行っていく意思があったものと認めるのが相当である。 また,被告は,原告母が仮放免後に原告子の引取り申請をしていないこと も指摘するが,原告母が,自身の在留特別許可を得られていない状況下に おいて, 思があったものと認めるのが相当である。 また,被告は,原告母が仮放免後に原告子の引取り申請をしていないこと も指摘するが,原告母が,自身の在留特別許可を得られていない状況下に おいて,原告子を引き取りたくても乳児院が許さないなどと考えて引取り申請をしないとしても,不自然とはいえず,この点は,上記判断を左右するものではない。 ウ小括以上のとおり,原告母については,在留状況に一定の悪質性が認められ る。 しかしながら,裁決行政庁は,原告子の生命の維持,身体の発育の観点から原告子をベトナムに送還することに著しい支障があるという事情について,事実を誤認し又は評価を誤った結果,原告母による原告子の看護の必要性という人道上極めて重視すべき事情に関して,評価を誤ったものと いえる。 以上によれば,裁決行政庁のした本件裁決1は,重要な事実について,看過できない事実の誤認又は評価の誤りが存在し,原告母による原告子の看護の必要性を正当に評価すれば,原告母の在留状況の悪質性を考慮しても,原告母に在留特別許可を与えるべきとの判断に至った可能性が高く, 本件裁決1は,社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであり,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであって違法というべきである。 (5) したがって,本件各裁決は,いずれも違法であるから,取消しを免れない。 2 争点(2)(本件各退令処分の適法性)について 以上のとおり,本件各裁決がいずれも違法である以上,これらを前提としてされた本件各退令処分もいずれも違法であって,取消しを免れない。 第4 結論よって,原告らの請求はいずれも理由があるからこれらを認容することとして,主文のとおり判決する。 東京地 件各退令処分もいずれも違法であって,取消しを免れない。 第4 結論 よって,原告らの請求はいずれも理由があるからこれらを認容することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官 林俊之 裁判官 小川弘持 裁判官 三貫納 有子(別紙省略)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る