神戸地方裁判所平成14年11月12日判決平成14年(わ)第710号住居侵入,強姦致傷被告事件 主文 被告人を懲役3年に処する。 未決勾留日数中90日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,かねて情交関係にあったAから同女方への出入りを拒絶されたことなどに立腹し,同女方に侵入して強いて同女を姦淫しようと企て,平成14年6月10日午前3時25分ころ,神戸市D区Ea丁目b番c号所在のFマンション(鉄筋コンクリート製3階建てマンション)屋上から,外壁の樋を伝って同マンション3階西の同女方ベランダを経て開放されていた掃き出し窓から同女方に侵入し,同女(当時40歳)に対し,その背後から両手をその首に巻き付け,さらに,抵抗しようとして転倒しうつぶせになった同女の背中に馬乗りになり,付近にあった電気コードを同女の首に巻いて絞め付けるなどの暴行を加え,その反抗を抑圧して,強いて同女を姦淫し,その際,前記暴行により,同女に安静加療約1週間を要する頸部外傷,下腹部打撲の傷害を負わせたものである。 (証拠の標目)かっこ内の番号は,証拠等関係カードの検察官請求番号を示す。 省略(事実認定の補足説明) 1 弁護人は,被告人は被害者方へ侵入した直後に強姦に及んだものではなく,侵入後被害者としばらく会話を交わした後に初めて強姦の犯意を生じて本件犯行に及んだものであって,当初から被害者方へ強姦目的があって侵入したものではないと主張し,被告人も当公判廷においてこれに沿う供述をするところ,当裁判所は,関係各証拠に照らし,被告人は被害者方へ強姦目的で侵入したと判断したのであるが,その理由につき,若干補足する。 2 前掲関係各証拠によれば,被告 公判廷においてこれに沿う供述をするところ,当裁判所は,関係各証拠に照らし,被告人は被害者方へ強姦目的で侵入したと判断したのであるが,その理由につき,若干補足する。 2 前掲関係各証拠によれば,被告人が被害者の経営するスナックに客として通っていたこと,被告人がその間被害者と肉体関係を持ったこと,被告人が本件犯行の前日被害者の留守中に同女方に赴き,無施錠の玄関から同女方に侵入して内側から施錠し,判示同女方ベランダから屋上に出て帰宅したことが認められる。 被害者は,かねて被告人からしつこくつきまとわれ,肉体関係のあることを前記スナックの客らにばらすなどと脅され,あるいは,首を絞めながら一緒に死んでくれなどと言われてセックスを強要され,これに嫌々応じていた,本件犯行の直前に被告人から電話があり,その際,自宅に勝手に入ったことを指摘すると,被告人がこれに関連してまた口実を作って自宅にやってくる旨述べたので,「来て頂かなくて結構です。」と言って被告人の来訪を拒絶した,その後被告人がベランダから自室に入ってきたため,驚愕し,被告人を冷静にさせようと背を向けて居間の方に行こうとしたところ,被告人が首に腕を巻き付けて,居間に強引に座らせ,二言三言の会話の後判示強姦の被害にあった旨供述する。 この被害者の供述は具体的かつ自然で犯行直後から首尾一貫した供述であって,その内容自体にも不合理な点は全くない上,本件に特段の利害関係のない第三者の供述であり信用性の十分なB及びCの各警察官調書(検察官請求証拠番号49,50。以下,同じ)や被告人から被害者への携帯電話の電子メールの発信状況を解析した捜査復命書(44)に照らしても十分信用できる。 また,被告人は,検察官及び警察官に対する供述調書中において,かねて被害者が自分に好意を寄せていないことを認識しながら, 子メールの発信状況を解析した捜査復命書(44)に照らしても十分信用できる。 また,被告人は,検察官及び警察官に対する供述調書中において,かねて被害者が自分に好意を寄せていないことを認識しながら,強引に同女と肉体関係を持っていたが,本件犯行のころには,同女がそのような関係を継続する意思がなく,しかも,翻意する可能性も皆無であることを認識し,本件犯行当日も,被害者の部屋を訪ねても追い返されるだけであると分かっていたにもかかわらず,被害者とできればこれまで同様セックスしたいという気持ちで同女方に侵入した旨(56,58),被害者が被告人を性交渉は無論のこと全面的に明確に拒絶していることを認識していながら,他方で姦淫目的のあったことを自認する供述をしている。 これに対し,強姦目的で侵入したものではない旨の被告人の捜査段階及び当公判廷における供述は,その内容自体曖昧であって,到底信用し難いものである。 3 前認定のとおり,被告人は侵入後ほどなく強姦行為に及んでいるのであって,以上の事実によれば,被告人は,電話で被害者から来訪を明確に拒絶されるや,立腹し,強姦してでも同女と性交渉しようと考えて同女方に侵入し,本件犯行に及んだものと優に認められる。弁護人の主張は理由がない。 (法令の適用)被告人の判示所為のうち,住居侵入の点は刑法130条前段に,強姦致傷の点は同法181条,177条前段にそれぞれ該当するが,この住居侵入と強姦致傷との間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪として重い強姦致傷罪の刑で処断することとし,所定刑中有期懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中90日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこと 役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中90日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由) 1 本件は,被告人が被害者から同女方への出入りを拒絶されるなど自分の思いどおりにならないことに立腹し,強姦目的で同女方に侵入して同女を強姦し,その際,同女に判示の傷害を負わせたという住居侵入,強姦致傷の事案である。 被告人は,酒に酔った被害者と肉体関係を持ったことを契機に,商売上の風評を気にする同女の弱みにつけ込むなどして,同女と肉体関係を続けた挙げ句本件犯行に及んだものであるところ,本件犯行の動機や犯行に至る経緯は極めて自己中心的なものであって酌量の余地はない。また,犯行態様をみると,被告人は被害者の抵抗を排して暴行を継続し,電気コードを用いて同女が気絶するまで首を絞めるなどしており,著しく危険かつ悪質であり,しかも執拗な犯行である。被害者は,深夜,安全であるべきマンションの3階に所在する自室にいたにもかかわらず,屋上からベランダ伝いに侵入され,気絶するまで首を絞められた挙げ句に強姦されたものであり,同女が味わった恐怖感ははかり知れず,その肉体的苦痛や精神的苦痛も甚大であって,被害感情が厳しいのも当然である。以上のとおり,犯情は悪く,被告人の刑事責任は重いというべきである。 2 そうすると,被害者に与えた傷害の程度が幸いにも比較的軽微にとどまったこと,その目的はどうであれ被告人は犯行後現場から逃走せず,まもなく逮捕されたこと,少年のころに万引きで取り調べられたこと以外に前科前歴はないこと,被告人の義父が今後の監督を誓約し,また被告人に代わって被害者を訪問して謝罪し,かつ,被害者自身は被告人に有利に利用されないこと こと,少年のころに万引きで取り調べられたこと以外に前科前歴はないこと,被告人の義父が今後の監督を誓約し,また被告人に代わって被害者を訪問して謝罪し,かつ,被害者自身は被告人に有利に利用されないことを条件とし義父も同女にその旨約束しているものの同女に見舞金10万円を手渡したこと,被告人が今後は郷里の岐阜に戻ってまじめに仕事をし,被害者とは二度と会わないと述べて被告人なりの反省の態度を示していることなど,被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても,本件は被告人に対し刑の執行を猶予する事案でも酌量減軽をするべき事案でもないが,これらの諸事情を総合考慮し,主文のとおり量刑した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役4年)平成14年11月12日神戸地方裁判所第1刑事部 裁判長裁判官杉森研二裁判官橋本一裁判官竹村昭彦
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