平成20(わ)1689 相続税法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成23年5月25日 大阪地方裁判所
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判決文本文41,059 文字)

- 1 -主文 被告人を懲役2年6月及び罰金5億円に処する。 その罰金を完納することができないときは,金200万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 【理由目次理由目次理由目次理由目次】(罪となるべき事実)......................................................2(証拠の標目)............................................................3(争点に対する判断)......................................................3第1 争点..............................................................3 1 検察官の主張......................................................3 2 弁護人の主張......................................................4 3 本件の争点........................................................4第2 証拠上認められる事実..............................................5 1 被告人や家族の身上等..............................................5 2 被相続人の死亡及び家族の相続分.................................. ..............................................5 2 被相続人の死亡及び家族の相続分...................................7 3 相続税申告の状況..................................................7 4 本件に関する銀行の統廃合の状況...................................7 5 現金の発見状況等..................................................8 6 関係法人の経営状況,経理処理の状況等............................11 7 被相続人による仮名定期預金の開設状況等..........................14 8 平成9年の関係法人に対する税務調査..............................15 9 被告人,Bによるk 銀行の預金口座の解約状況等....................16平成11年5月中旬の約3億円の解約..............................17 11 平成12年11月の税務調査について..............................17- 2 - 12 平成11年から12年のk 銀行との交渉等..........................17 13 相続税申告の際の状況.............................................19 14 供託金について...................................................19平成10年から13年の間に ...............19 14 供託金について...................................................19平成10年から13年の間に現金化された仮名定期預金の存在........19 16 被相続人,家族名義の口座からの出金状況..........................24 17 関係法人に対する貸付金の調査,存在状況等........................25第3 当裁判所の判断...................................................25 1 発見現金の帰属について..........................................25 被相続人名義定期預金の帰属....................................25 仮名定期預金の帰属.............................................25 家族名義定期預金の帰属について................................31 発見現金の原資が被相続人名義・仮名名義・家族名義定期預金の解約金であるかについて.................................................37 結論...........................................................42 2 関係法人に対する家族名義の貸付金の帰属について..................43 3 Bとの共謀について...............................................45第4 結論. 貸付金の帰属について..................43 3 Bとの共謀について...............................................45第4 結論.............................................................46(法令の適用)...........................................................46(量刑の理由)...........................................................46(罪となるべき事実)被告人は,平成16年10月10日,実父A(以下,「被相続人」という。)の死亡により,その財産を相続人Bらと共に共同相続し,共同相続人Cほか3名からの委任等により,その相続に関する事務に従事していたものであるが,Bと共謀の上,被告人,B及びCほか4名の共同相続人の相続財産に関し,相続税を免れようと考え,全相続人の実際の相続税課税価格が合計78億8067万2000円で,このうち,被告人,B,C及び相続人Dの実際の相続税課税価格がそれぞれ12億- 3 -1241万1000円,相続税額がそれぞれ5億4012万1700円,相続人E(平成17年3月26日死亡)の実際の相続税課税価格が18億1861万7000円,相続税額が8億1018万2800円,相続人F及び同Gの実際の相続税課税価格がそれぞれ3億4640万3000円,相続税額がそれぞれ1億5432万0400円であった(別紙1修正相続財産内訳書,別紙2ほ脱課税価格の内訳明細書,別紙3ほ脱税額計算書参照【いずれも省略】)にもかかわらず,あらかじめ,被相続人が保有する定期預金を解約した現金を自宅 0400円であった(別紙1修正相続財産内訳書,別紙2ほ脱課税価格の内訳明細書,別紙3ほ脱税額計算書参照【いずれも省略】)にもかかわらず,あらかじめ,被相続人が保有する定期預金を解約した現金を自宅に隠匿するなどして秘匿した上,平成17年8月4日,大阪市a区b●丁目●番●号所在の所轄a税務署において,同税務署長に対し,全相続人の相続税課税価格が合計16億7657万円であり,そのうち被告人,B,C及びDの相続税課税価格がそれぞれ2億5793万4000円,相続税額がそれぞれ7928万4100円,F及びGの相続税課税価格がそれぞれ7369万5000円,相続税額がそれぞれ2265万2600円である旨の殊更過少な金額を記載した内容虚偽の相続税申告書を共同提出し,さらに,平成18年1月24日,同税務署において,同税務署長に対し,Eの相続税課税価格が3億8690万1000円,相続税額が1億1892万6700円である旨の殊更過少な金額を記載した内容虚偽の相続税申告書を提出し,そのまま,それぞれ法定納期限を徒過させ,もって,不正の行為により,被告人,B,C,Dの相続税各4億6083万7600円,Eの相続税6億9125万6100円,F及びGの相続税各1億3166万7800円(別紙3ほ脱税額計算書参照【省略】)を免れた。 (証拠の標目)【省略】(争点に対する判断)第1 争点 1 検察官の主張検察官は,被相続人の相続税申告において申告していなかった財産として,①被告人方及びB方から発見された現金,②後述する関係法人に対する被相続人の家族名義の貸付金が存在していたところ,ⅰ)発見現金のうち合計60億- 4 -3900万円は,被相続人に帰属していた被相続人名義・仮名名義・家族名義の定期預金の解約現金であること,ⅱ)貸付金は,関係法人の銀行からの借入 ていたところ,ⅰ)発見現金のうち合計60億- 4 -3900万円は,被相続人に帰属していた被相続人名義・仮名名義・家族名義の定期預金の解約現金であること,ⅱ)貸付金は,関係法人の銀行からの借入金を,被相続人に帰属する家族名義定期預金の解約金で返済したことにより発生したものであることから,これらの財産は全て被相続人に帰属していたものであり,相続税課税の対象とすべき財産であったにもかかわらず,被告人は,Bと共謀の上,被相続人の相続税申告において,これらの財産を除外して過少な申告を行い,相続税合計29億5386万6800万円を免れたと主張している(なお,相続税申告においては,相続人全員についての申告がなされているが,検察官は,相続人中,Hの分については,本件公訴事実から除外しており,上記ほ脱金額は,H分を除いた金額である。)。 2 弁護人の主張弁護人は,検察官が相続財産であると主張する現金や家族名義の貸付金の存在自体は争っていないが,ⅰ)検察官は,前記仮名名義定期預金(以下,単に「仮名定期預金」という。)について,被相続人に帰属すると認定するに足るだけの立証をしていない,ⅱ)前記家族名義定期預金は各名義人に帰属していたもので,その解約現金も各名義人に帰属する,ⅲ)同様に家族名義定期預金を原資とする家族名義の貸付金も各名義人に帰属する,ⅳ)検察官は,発見された現金の原資がいずれも被相続人名義・仮名名義・家族名義の定期預金に由来することについて十分な立証を行っていないとして,検察官の主張する被相続人の財産及びほ脱税額はいずれも過大である旨主張する。 更に,被告人は,公判で,Bとの共謀状況を否定する内容の供述をしている。 3 本件の争点したがって,本件の争点は,検察官が相続財産であると主張する,①現金,②家族名義の貸付金が,それぞれ る。 更に,被告人は,公判で,Bとの共謀状況を否定する内容の供述をしている。 3 本件の争点したがって,本件の争点は,検察官が相続財産であると主張する,①現金,②家族名義の貸付金が,それぞれ被相続人に帰属する相続財産であるのかという点,及び,③Bとの共謀が認められるのかという点にある。そして,①当該現金の帰属に関しては,検察官が主張する被相続人帰属の根拠事実について,- 5 -ⅰ)仮名定期預金の帰属,ⅱ)家族名義定期預金の帰属,ⅲ)発見された現金が被相続人名義・仮名名義・家族名義の定期預金の解約現金であるのかという点が主たる争点となる。 以下,まず,証拠によって認められる事実を検討した上で,争点について検討する。 第2 証拠上認められる事実 1 被告人や家族の身上等 家族関係被相続人(平成16年10月10日死亡)の家族状況は別紙4【省略】のとおりである。 被相続人の妻E,その長女である被告人,二男D,四女B,三男Iはいずれも韓国籍を有し,又は,有していた者であり,長男C,その妻J,二女Kの夫H,その長女G,その長男Fは,日本国籍を有する者である。 なお,二女K(昭和59年8月死亡),三女L,I(平成16年3月19日死亡)は,本件相続前に,Eは,本件相続後の平成17年3月26日に,それぞれ死亡した。  被告人の身上,生活状況等被告人は,昭和●年●月●日,被相続人及びEの長女として,大阪市c区で出生した。 その後,d大学e科を卒業し,昭和●年●月●日に結婚し,昭和●年●月●日,長男Mをもうけたが,昭和●年●月に戸籍上の離婚をした。なお,被告人は,結婚後,大阪市a区f●丁目●番●号の被告人方(以下,「被告人方」という。)に引っ越しており,以後,一時的に実家に居住していた時期があるほかは,同所に居住している。 上の離婚をした。なお,被告人は,結婚後,大阪市a区f●丁目●番●号の被告人方(以下,「被告人方」という。)に引っ越しており,以後,一時的に実家に居住していた時期があるほかは,同所に居住している。 被告人は,家事手伝いとともに,関係法人の事務(結婚前は,主に後述するg商事の持つ物件の集金事務,映画館の手伝い等)等に従事しており,自ら- 6 -ピアノ教室・華道・茶道の月謝で一定の収入を得ていたほか,「お小遣い」又は,後述のように「マンション手当」の名目で,被相続人から現金を受け取って生活費に充てていた。 被告人は,昭和46年から平成8年ころまで,家計簿をつけており,その中で,自身やMの名義の口座を記載・管理していたが,その家計簿に,後述する仮名・家族名義の定期預金や被告人方で発見された現金の記載はない。  Bの身上,生活状況等Bは,短大やその付属の研究科を卒業後,専門学校に1年通い,薬種商販売業の許可をとり,その後は,両親と同居している大阪市a区hの自宅付近で,薬種商販売業をしつつ,被相続人から,お小遣いという名目で,一定の現金(当初は月々二,三万円,その後,月々10万円程度まで増額された。)を受け取り生活していた。 なお,Bは,前記自宅で,両親の入院又は死亡前は両親と共に,死亡後は一人で居住している(以下,被相続人の死亡の前後を問わず,「B方」などという。)。  その他の家族の身上等Cは,昭和45年に医科大学,昭和49年3月に大学院を卒業し,その後,病院勤務を経て,平成7年ころ,病院勤務を辞め,i診療所を開設し,以後,同診療所を経営している。CとJは,昭和54年ころから同居を始め,その後,同61年に入籍した。 Dは,昭和49年3月に大学医学部を卒業し,同年6月に医師登録をし,以後独立して生計を立てていた。 Mは 療所を経営している。CとJは,昭和54年ころから同居を始め,その後,同61年に入籍した。 Dは,昭和49年3月に大学医学部を卒業し,同年6月に医師登録をし,以後独立して生計を立てていた。 Mは,平成4年3月に医科大学を卒業し,その後,医者として独立して生計を立てている。 Kは,昭和47年12月ないし昭和48年1月ころまで,jビルの事務所で働いていたが,同年2月に結婚した後は仕事をしておらず,前記のとおり,- 7 -昭和59年8月に亡くなった。なお,その夫Hは,Kが関係法人の取締役をしているという話を聞いたことはなかった。 2 被相続人の死亡及び家族の相続分被相続人は,平成16年10月10日に死亡した。 被相続人は,韓国籍を有することから,当時の旧法例26条の適用により,法定相続割合は,韓国民法が適用される。韓国民法では,配偶者と子1人当たりの相続割合は3対2で,子同士は均等の割合とされ,被相続人の死亡前に子が死亡していたとしても,その子に配偶者や子(被相続人の孫)がいる場合,この相続分をその配偶者とその子(孫)1人当たりが3対2,子同士は均等の割合で相続することとされている。そのため,各法定相続割合は,Eが13分の3,被告人,C,D及びBはそれぞれ13分の2,Hは91分の6,F及びGはそれぞれ91分の4になる。 3 相続税申告の状況被告人は,平成17年8月4日,所轄a税務署長に対し,全相続人の相続税課税価格が合計16億7657万円であり,そのうち被告人,B,C及びDの相続税課税価格がそれぞれ2億5793万4000円,相続税額がそれぞれ7928万4100円,F及びGの相続税課税価格がそれぞれ7369万5000円,相続税額がそれぞれ2265万2600円,Hの相続税課税価格が1億1054万3000円,相続税額が3397万8 それぞれ7928万4100円,F及びGの相続税課税価格がそれぞれ7369万5000円,相続税額がそれぞれ2265万2600円,Hの相続税課税価格が1億1054万3000円,相続税額が3397万8900円である旨の金額を記載した相続税申告書(N税理士作成)を提出した。更に,被告人は,平成18年1月24日,同税務署長に対し,Eの相続税課税価格が3億8690万1000円,相続税額が1億1892万6700円である旨の相続税申告書(N税理士作成)を提出した。 被相続人の死亡に関する相続税の申告について,E,C,D,B,G,Fは,被告人に委任していた。 4 本件に関する銀行の統廃合の状況- 8 -本件に関係する銀行の統廃合の状況は,別紙5【省略】のとおりである(なお,信用組合k銀行・信用組合k’銀行については,名称変更の前後を問わず,以下,「k銀行」という。)。 5 現金の発見状況等 平成18年11月14日に被告人方で発見された現金等ア現金の発見状況平成18年11月14日,被告人方に捜索が入り,1階応接室,台所,ガレージ倉庫から,合計60億8678万1000円(ガレージ倉庫から56億5911万8000円,1階応接室から2億8356万8000円,台所から1億4409万5000円)の現金が発見された。 これらの現金の多くは,帯封が付されたまま,あるいは輪ゴムで留め,封筒に入れられるなどした上,紙袋・ビニール袋・ラップで包み,更に,防虫剤などと同梱されるなどして,紙袋,段ボール箱等に入れられ,まとめて保管されていた。 イ帯封の状況等被告人方で発見された現金の帯封の状況等は,次のとおりである(以下,特定の銀行の帯封が付されていた現金を,「○○銀行の帯封現金」などともいう。)。  k銀行の帯封合計38億6000万円 等被告人方で発見された現金の帯封の状況等は,次のとおりである(以下,特定の銀行の帯封が付されていた現金を,「○○銀行の帯封現金」などともいう。)。  k銀行の帯封合計38億6000万円k銀行の帯封が付された現金のうち,帯封に付されていた日付の年度別の内訳は,次のとおりである。 平成10年付け1300万円平成11年付け18億9000万円平成12年付け16億6100万円平成13年付け2億6800万円平成14年付け300万円- 9 -平成15年付け200万円日付特定不可2300万円k銀行の帯封現金の中には,l支店の帯封のもの合計3700万円(平成11年11月2日付け500万円,同月4日付け1000万円,同月8日付け200万円,平成12年1月13日付け2000万円),l2支店の帯封のもの合計1400万円(平成11年11月2日付け1300万円,同月4日付け100万円),l3支店の帯封のもの合計4900万円(平成11年11月8日付け800万円,同月9日付け4000万円,平成12年1月18日付け100万円),l4支店の帯封のもの合計1億2000万円(平成11年12月7日付け1000万円,同月10日付け2000万円,同月13日付け5000万円,同月15日付け2000万円,同月16日付け1000万円,同月17日付け1000万円),l5支店の帯封のもの合計3300万円(平成11年12月8日付け300万円,同月10日付け3000万円),l6支店の帯封のもの合計1200万円(平成11年10月13日付け200万円,同月20日付け800万円,同月22日付け200万円)が含まれていた。 また,帯封の日付を特定できない現金のうち,1500万円は,平成11ないし13年付けのk銀行の帯封現金などと同 付け200万円,同月20日付け800万円,同月22日付け200万円)が含まれていた。 また,帯封の日付を特定できない現金のうち,1500万円は,平成11ないし13年付けのk銀行の帯封現金などと同一封筒又は同一紙袋内に保管されていた。 なお,平成15年付けの帯封は,日付を誤って押印したものであり,その帯封現金は,平成11年4月21日から平成12年4月20日の間に出金されたものであると認められる。  m銀行の帯封合計1億5000万円 n銀行の帯封合計13億8100万円 o銀行の帯封 2億1700万円 p銀行の帯封 3000万円- 10 - q銀行の帯封 1億1000万円 その他の金融機関の帯封(金融機関共通帯封含む) 6800万円 無地帯封 8100万円無地の帯封が付されていた現金のうち,3000万円は,k銀行の帯封付き現金と同一の包みで保管されていた。  帯封なし 1億8978万1000円 平成18年にB方から発見された現金等ア平成18年11月14日に発見された現金平成18年11月14日,B方2階中和室の押入内青色スーツケース内から,現金1億円(黒色ビニール袋入り,平成10年10月29日付けn銀行帯封付き)が発見された。 イ平成18年11月20日のBによる入金平成18年11月20日,Bは,現金1億円(いわゆるD券)を株式会社r銀行に持参し,それをB名義の普通預金口座に入金した。更に同日,同口座から,1億円を出金し,同銀行の同名義の定期預金口座に入金した。  平成20年3月11日のB方に対する調査平成20年3月11日,B方に捜索が入り,合計1億0542万8600円の現金が発見された。 そのうち,合計8900万円に帯封が付されていた。その帯封の状況等は 成20年3月11日のB方に対する調査平成20年3月11日,B方に捜索が入り,合計1億0542万8600円の現金が発見された。 そのうち,合計8900万円に帯封が付されていた。その帯封の状況等は,以下のとおりである(下記のn銀行大阪の帯封には,「81013」との印字があり,当該数字は,1998年(平成10年)10月13日を意味するものであるから,下記の日付であることが認められる。)。 平成10年10月13日付けn銀行大阪の帯封6000万円平成11年4月26日付けn銀行帯封 2000万円平成11年8月26日付けk銀行s支店の帯封900万円なお,上記n銀行帯封現金,k銀行s支店の帯封現金は,いずれも「KGI- 11 -NKOU」【仮名処理】と印刷された紙袋に入れられていた。 6 関係法人の経営状況,経理処理の状況等 関係法人の設立経緯,経営状況等ア関係法人の設立経緯等被相続人は,ミシンの払い下げの仲介等や,タクシー営業を行い資金を蓄えた。そして,その後,不動産賃貸業や貸金業を営むため,被相続人は,順次,昭和29年3月にg商事株式会社,昭和35年6月にt興業株式会社,昭和36年2月にu株式会社,昭和37年10月にj興業株式会社,昭和39年9月にv興業株式会社,昭和39年11月にw興業株式会社,昭和45年3月にx興業株式会社,昭和45年8月にy興業株式会社を,それぞれ設立した(以下,8社をまとめて「関係法人」という。なお,各社を表記するときは,「株式会社」の記載を省略する。)。 g商事とy興業はB方(もともと被相続人と妻Eが居住していた家),t興業,u興業,j興業,v興業,w興業は難波にあるjビル,x興業は被告人方を事務所としていた。 なお,被告人は,結婚前に200万円の定期預金を被相続人に もともと被相続人と妻Eが居住していた家),t興業,u興業,j興業,v興業,w興業は難波にあるjビル,x興業は被告人方を事務所としていた。 なお,被告人は,結婚前に200万円の定期預金を被相続人に預けており,被告人の結婚後,被相続人が,原資にその定期預金を用い,代表取締役を被告人,本店所在地を被告人方として,x興業を設立し,xマンションを建てたものであった。 イ関係法人の経営状況等関係法人の役員には,名義上,被相続人の家族が中心になっていた。平成に入った以降は,家族(E,被告人,C,D,B,I)の他は,Cの妻Jや,監査役とされていたが実際には監査役の職務を行っていなかった被相続人の知人Oの他はいなかった。なお,名義上,Dはj興業,Cはt興業の代表取締役とされていた。 もっとも,x興業を除く関係法人の経営は,平成8年12月に被相続人が- 12 -入院するまでは,被相続人が行っていたが,被相続人入院後は,被告人が,被相続人やEに対する報告・相談をしながら,実質的に行っていた。 関係法人は,不動産賃貸業等を営んでおり,それにより収入を得ていた。 不動産賃料の支払いは,賃借人が事務所に現金を持参してなされるものが多かった。なお,振込でなされていた分もあり,振込は,その法人名義又は被相続人名義の預金口座になされていた。 x興業を除く関係法人7社の経理処理は事務員であるP(昭和54年ころから事務員になった。)が行っていた。 ウ x興業の経営状況等x興業の経営するxマンション(36戸)の集金業務等は被告人が行っていた。被告人は,前記のとおり,被相続人から毎月現金を受け取っていたが,定額でもらう「お小遣い」の他に,xマンションの集金業務を周旋屋に依頼した場合に,周旋屋に支払うことになる分と同じ程度の金額を,「マンション手当」として り,被相続人から毎月現金を受け取っていたが,定額でもらう「お小遣い」の他に,xマンションの集金業務を周旋屋に依頼した場合に,周旋屋に支払うことになる分と同じ程度の金額を,「マンション手当」として取得していた。  関係法人の経営に対する家族の関与状況ア家族での食事会の状況被相続人の家族は,家族の誕生日やクリスマス,正月などに,月1回程度,一家(被相続人,E,被告人,C,D,I,K,B及びM)が集まり,被相続人の自宅(現B方)又は中華料理店で食事をしていた(被告人は,「その際,被相続人から,関係法人の業務の状況の話や,マンション名・マンションの高さをどうするか,不動産を購入するかどうかなどについての話があり,それについて家族が意見を言うことがあった。」旨供述する。)。 ただし,Cはほとんどその食事会には参加していなかった。 なお,関係法人においては,司法書士のQやPにより,株主総会議事録や役員総会議事録が作成されていたが,この食事会のほか,関係法人の役員や株主が集う会議等は行われていなかった。 - 13 -イ家族の関係法人の業務への関与C,Dは,被相続人に言われて,不定期に,医師としての仕事の休日に,モータープールなどの仕事の手伝いをすることはあったが,それ以外に両名が,関係法人の業務に関与することはなかった。なお,仕事の手伝いをする際は,給料や交通費等は取得していなかった。 Iは,一時,関係法人の仕事を手伝っていたことがあった。その際は,被相続人に指示され,掃除,モータープールの手伝いや,被相続人の送り迎えなどをしていた。 Mは,関係法人の業務に関与したことはなく,関係法人の取締役・監査役になることについて承諾したことはなかった。 H,G,F及びJが,関係法人の業務の手伝いをしたことはなく,前記の食事会に出席 。 Mは,関係法人の業務に関与したことはなく,関係法人の取締役・監査役になることについて承諾したことはなかった。 H,G,F及びJが,関係法人の業務の手伝いをしたことはなく,前記の食事会に出席したことはなかった。  家族の被相続人との金員のやりとりと各人の口座の管理状況ア Dの被相続人との金員のやりとりについてDがz病院に勤務していた昭和56年ころ,高額の税金がDの給料にかかったことがあり,Dが,被相続人にその旨を伝えたところ,その分の補てんとして,月に60万から80万円程度を,数年にわたって現金で受け取ったことがあった。Dは,これは法人からの給料か役員報酬かと考えていた。Dは,受け取った現金を保管していたが,2000万円程度まで貯まった時点で被相続人に返したところ,同人は,そのお金はDの給料として出しているものだから預かって運用すると言った。 イ家族の口座管理状況Cは,k銀行,α銀行に預金口座を開設したことはなく,k銀行のC名義の口座は,Cが管理していたものではない。 Dは,自身の管理する預金口座の口座番号等を書面に控えており,Dが支出した預金口座は,これに記載されているもの以外にはない。 - 14 -Jは,Jの名義で,k銀行,α銀行,o銀行に口座を開設したことはないし,本件の捜査の関係で取調べを受けるまで,それらの銀行に,「J」名義の預金口座があることを知らなかった。 Kが亡くなった際の相続財産に,関係法人の株式はなく,Kがβ信用組合に口座を持っているという状況もみられなかった。 Mは,自身の預貯金口座として開設したことがあるのは,γ銀行,δ銀行,ε銀行,郵便局のみであり,それ以外の金融機関で口座を開設したことはない。k銀行,ζ銀行のM名義の口座は,Mが管理しているものではない。 7 被相続人による仮名 たことがあるのは,γ銀行,δ銀行,ε銀行,郵便局のみであり,それ以外の金融機関で口座を開設したことはない。k銀行,ζ銀行のM名義の口座は,Mが管理しているものではない。 7 被相続人による仮名定期預金の開設状況等k銀行においては,組合員でない者名義の口座でも預金口座作成に応じており,押印のある定期預金証書を持参すれば,払戻しに応じていた。  昭和56年ころのa支店での取引状況R(昭和56年ころから約1年間,k銀行a支店支店長代理を務めた。)は,同支店長代理として赴任した際,前任者から,「被相続人の場合は,主に被相続人から連絡があって,k銀行側で,仮名預金的な預金口座を作っている。」,「預金を預かれば,k銀行側で名義等を考えて作成する。以前からそういうふうにしている。」旨の申合せ・申送りがあった。 Rが同支店長代理に在任中,同支店で,被相続人から現金を預かって預金口座を開設したことがあった。その際は,ほとんどの場合は被相続人から呼ばれ,Rが,被相続人の自宅(現B方)に行き,被相続人から,現金を出され,「いつものように作成してくれ。」(少しいい金利をつけて仮名名義をk銀行側でつけてという意味)と言われて,その現金を預かり,k銀行側で,仮名預金の作成名義を考え,その名義に合う印鑑をk銀行側で調達し,その印鑑と作成した預金の定期預金証書を被相続人に届けていた。印鑑と定期預金証書を渡す際,被相続人又はRが,その印鑑で証書の裏に判を押し,その後,- 15 -Rは,被相続人に言われ,その印鑑を処分していた。 Rは,被相続人以外の人物から現金を預かったことはなく,定期証書等は,被相続人に渡していた。  平成5年から7年ころのη支店での取引状況等R(平成5年5月から平成7年10月まで,k銀行η支店支店長を務めた。)が,同支店長に を預かったことはなく,定期証書等は,被相続人に渡していた。  平成5年から7年ころのη支店での取引状況等R(平成5年5月から平成7年10月まで,k銀行η支店支店長を務めた。)が,同支店長に在任中,同様に,仮名定期預金を作成し,印鑑と定期預金証書を被相続人に届けていた。 η支店においては,証書1枚当たりの預金額は500万円を超えないようにしており,被相続人から預かった現金の金額が大きく,証書をたくさん作成しなければならない場合には,仮名名義で,η支店以外に口座を作ることもあった。 8 平成9年の関係法人に対する税務調査 平成9年11月ころ,θ税務署は,jビルの事務所を事務所とするj興業,u興業,t興業,v興業,w興業(以下,「5社」という。)に対する税務調査を行った。 当該税務調査においては,被告人に対する聞き取り調査などが行われた。 また,当時θ税務署に勤務し,当該税務調査を担当したSは,病院に入院中の被相続人に対する聞き取り調査に行ったが,被相続人が泣き出すなどしたため実際に聞き取り調査はできなかった。  Sは,仮名定期預金について,税務調査の過程で,窓口となっていたN公認会計士(同人は税理士資格も有する。Nは,平成9年に関係法人が税務調査を受けた際に,ι会の紹介で,被告人と知り合い,平成9年の税務調査の立会や被告人側の相談にのっていた。)に対し,当該税務調査で発覚した仮名定期預金を,法人の預金として受け入れ,その時点の7年前からその預金について発生した受取利息(2億7000万円程度であった。)を,果実として修正申告することを提案した。しかし,Nからこの提案を聞いた被告人- 16 -は,その受取利息について,法人帰属ではなく,個人の帰属で処理する意向を示し,θ税務署は,これらの仮名預金については,関係法人の法人 ことを提案した。しかし,Nからこの提案を聞いた被告人- 16 -は,その受取利息について,法人帰属ではなく,個人の帰属で処理する意向を示し,θ税務署は,これらの仮名預金については,関係法人の法人税調査からは区分して,法人に関係しないものとして取り扱うこととした。  当該税務調査において,Sは,5社に関して,被相続人の家族からの聞き取り状況や,jビルの事務所での被告人とPの稼働実態などを見て,家族については,法人の業務には一切参画していないと判断した(ただし,Sは,Bとは面談をしていない。)。そこで,Sらは,5社の役員報酬が架空であり,被相続人個人が取り込んでいたという考えで調査を進めた。しかし,最終的には,過大役員報酬として法人の経費性を否認するにとどめ(過大に役員個人としては報酬を受けているものとして),源泉徴収税の還付はしないという処理がなされた。 9 被告人,Bによるk銀行の預金口座の解約状況等被告人及びBは,k銀行の経営が順調とはいえないという噂があり,k銀行が経営破綻することを危惧するなどしたことから,平成10年ころから,k銀行の定期預金を,一定のペースで解約するようになった。 k銀行η支店長であったT(Tは,平成11年4月に,k銀行η支店長になり,その後,平成14年6月に退職するまで,η支店長として勤務した。)は,平成11年5月ころ,被告人に対し,仮名名義の預金を,預金者本人の名義にして欲しい旨申し入れたが,被告人はこれを拒否した。その後,被告人とBは,定期預金の解約を増やした。以後,被告人及びBは,一定期間中断する時期はあったものの,定期預金証書に印鑑がないもの・印鑑違いのものを除いて解約が終わった平成13年2月ころまで,継続的に,仮名定期預金の解約手続を行った。 解約の際,被告人及びBは,既に署名・押印の はあったものの,定期預金証書に印鑑がないもの・印鑑違いのものを除いて解約が終わった平成13年2月ころまで,継続的に,仮名定期預金の解約手続を行った。 解約の際,被告人及びBは,既に署名・押印のある定期預金証書(従前はB方に保管されており,その後,被告人方に運び込まれたもの。)をk銀行に持って行き,解約手続を行った。その後,両名は,現金と計算書の入った袋を受け- 17 -取り,それをショッピングカートに入れて,いったん事務所に運び,その後,B方に持って行き,現金をEに見せた上で,被告人方に運び,ガレージ倉庫等に保管していた。 被告人又はその他の人物が,ガレージ倉庫に持ち込んだ現金を持ち出したことはなかった。また,被告人は,解約名義や解約した金額等の記録や,区分けして保管することはしていなかった。 k銀行においては,100万円以上の単位の現金をまとめて渡す場合には,帯封がついている現金を渡すのが通例であり,その帯封は,k銀行のものの他,m銀行(合併後はδ銀行)及びn銀行の帯封の場合があった。 平成11年5月中旬の約3億円の解約被告人は,平成11年5月中旬ころ,k銀行η支店において,3億円余りの定期預金を解約した。当時のη支店長であったTら銀行員は,解約現金(1億円入りのパック3個及び端数の現金)をB方1階リビングに運び,被告人,E,Bに渡した。 11 平成12年11月の税務調査について平成12年11月初めころ,θ税務署の管轄である5社(j興業,t興業,v興業,u興業,w興業),a税務署の管轄である3社(g商事,y興業,x興業)に対する合同の税務調査が行われた。その過程で,平成9年の税務調査において発見された仮名定期預金とは異なる仮名定期預金が多数発見された。 12 平成11年から12年のk銀行との交渉等 被告 )に対する合同の税務調査が行われた。その過程で,平成9年の税務調査において発見された仮名定期預金とは異なる仮名定期預金が多数発見された。 12 平成11年から12年のk銀行との交渉等 被告人とWの交渉経緯k銀行は,関係法人に対して,20数億円の貸付けをなしており,関係法人名義及び仮名名義の各預金が,その担保に入れられていた。 その際,被相続人は,k銀行に対して,1994年(平成6年)12月28日付けの「担保預金差入証」(平成7年1月5日付け公証人印押印)を提出した。この書面には,「別紙添付しております預金明細の通り,合計105- 18 -枚金14(億)0204(万)2413円の定期預金は,私,A所有の預金であり,債務者,u興業(株),g商事(株),j興業(株),v興業(株),y興業(株),t興業(株)の貴組合からの借入金の担保として差入致します。」との記載があり,預金明細が添付されている。 なお,平成12年12月にk銀行は破綻した。  U弁護士による解約被告人は,Uに対し,平成13年1月20日,①担保預金と関係法人の不動産がk銀行に二重担保に取られているので,不動産担保を解除する手続をすること,②印鑑違いなどのために解約できていない預金の解約手続の交渉をすることを依頼した。 その依頼を受けて,Uは,信用組合k銀行金融整理管財人V及び理事営業本部長Wにあてて,平成13年4月4日に「定期預金解約請求書」(預金目録添付)を,同年5月11日に「担保権解除申入書」を送付した。 その後,平成13年12月6日,担保預金の解約が認められ,その解約金で,関係法人に対する借入金は返済され,その後,k銀行は,不動産担保を外した。 また,前記「定期預金解約請求書」に基づく請求については,解約が認められ,1億6504万6095円が,株 ,その解約金で,関係法人に対する借入金は返済され,その後,k銀行は,不動産担保を外した。 また,前記「定期預金解約請求書」に基づく請求については,解約が認められ,1億6504万6095円が,株式会社q2銀行(現在のq3銀行。以下,「q銀行」という。)のA(被相続人)の代理人U名義の預かり金口座に振り込み入金され,さらに,それがそのままq銀行の別のU名義の預かり金口座に振込送金された(解約する際,Uは,定期預金証書の裏面に,その定期預金の名義人の氏名の他に,「A」と記載した。)。Uは,被告人から,現金で受け取りたいとの申し入れがあったことから,平成14年1月24日,利息分941円を足した1億6504万7036円を現金で出金し,Uの報酬分1826万5000円を差し引いた残りの1億4678万2036円を現金で被告人とBに渡した。その現金には,q銀行の帯封がついていた。 - 19 - 13 相続税申告の際の状況N事務所のX税理士は,平成16年7,8月ころから,関係法人の担当となり,同年10月に被相続人死亡後,相続税の申告手続の担当となった。Xは,会社の株式評価と,被相続人に帰属する財産がないかを確認し,その過程で,現金・預金・貸付金の有無について,被告人及びBに確認した。それに対して,被告人及びBは,ないと答えた。 Nは,平成17年6月ころ,jビルの事務所に,Xとともに行き,Nが,被告人に対し,相続財産としての現金・預金の有無について確認したところ,被告人は,「ない」旨答えた。 14 供託金について関係法人の賃貸物件の賃借人が賃料を供託した供託金があったところ,Pは,平成8年12月以降,被告人に言われて,それを,n銀行大阪支店で現金化し,それを事務所に持ち帰り,被告人に渡していた。 被告人は,受け取った現金を,B方でEに見せ, した供託金があったところ,Pは,平成8年12月以降,被告人に言われて,それを,n銀行大阪支店で現金化し,それを事務所に持ち帰り,被告人に渡していた。 被告人は,受け取った現金を,B方でEに見せ,その後,被告人方に持ち帰り,その他の現金と区別することなく保管していた。 平成9年から平成14年までの間に現金化された供託金のうち,100万円以上の束ができる可能性のあるものの合計額は,7800万円であった。 平成10年から13年の間に現金化された仮名定期預金の存在平成18年11月以降に行われた本件査察調査において,仮名定期預金について下記のような調査が行われた(仮名定期預金把握の根拠によって,それぞれ,手帳記載分,同時処理分,担保預金分,弁護士解約依頼分,マネロン分,帯封分という。)。 その調査によって把握された仮名定期預金について,査察官Y1は,出金額と入金額に差が出る取引に着目し,現金化額をとりまとめた。その結果,平成10年から13年に仮名定期預金から現金化された金額の合計は61億1196万0049円となった。 - 20 -なお,Y1は,出金された現金が,関係法人において,関係法人の現金として扱っているかどうか,会社の現金出納帳を見て,出金された現金が,法人に流れていないかという点の検討はしなかった。  手帳記載分ア手帳の発見状況及び手帳の体裁等平成18年11月14日に行われたB方に対する捜索の際,B方2階から,手帳2冊(甲115,116。以下,単に「手帳」などという。)が発見,押収された。 各手帳には,いずれもk銀行の印刷等があり,また,甲115号証の手帳には,「●●」【仮名処理・イニシャルが記載】との記載がある。 各手帳の日付欄には,「2桁の数字‐7桁の数字‐1桁の数字‐6桁の数字(数字)」という規則性 行の印刷等があり,また,甲115号証の手帳には,「●●」【仮名処理・イニシャルが記載】との記載がある。 各手帳の日付欄には,「2桁の数字‐7桁の数字‐1桁の数字‐6桁の数字(数字)」という規則性を持った記載が多数みられる。 イ手帳に基づく調査等査察官Y2が,k銀行の調査を行ったところ,手帳の前記記載は,k銀行の定期預金証書の番号等であり,6口のκ銀行の預金証書の番号が記載されているのを除いては,概ね,左から,「旧k銀行の店番‐CIF番号‐証書式か通帳式かという区別‐口座番号(100万円単位での元金)」という意味で記載されていることが発覚した。なお,CIF番号(シフ番号)とは,金融機関が顧客を管理するために付けている番号であり,同一人物には同一の番号が付されるものである。 そこで,Y2及び査察官Y3が,手帳に記載された番号の定期預金について,取引履歴や解約状況を調査し,その調査結果について,①手帳に記載されている(口座)番号が,その番号のままで(継続・番号変更がなく)最終的に解約されたもの(「手帳記載分」),②手帳に記載されていた口座番号の口座が,その後継続されて,その継続された番号で解約されたもの(「手帳記載分(継続)」),③手帳に口座番号等が記載された口座が- 21 -解約され,その後,同じ名義の異なる口座番号の口座に預け入れられたもので,CIF番号が同一のもの(「手帳記載分(CIF)同一」)という類型ごとにとりまとめたところ(以下,それらの類型の口座を,それぞれ括弧内記載の名称で呼ぶ。),平成10年から平成13年の間に解約・現金化された金額の合計は,それぞれ,①32億2480万8191円,②9億8736万7008円,③8939万5954円であり,これら手帳に基づいた調査によって把握された預金の解約金の総額は,43億0 金化された金額の合計は,それぞれ,①32億2480万8191円,②9億8736万7008円,③8939万5954円であり,これら手帳に基づいた調査によって把握された預金の解約金の総額は,43億0157万1153円であった。 なお,Y2は,前記手帳の記載の筆跡と,k銀行の口座の開設届の記載や,Bの質問調査の際の署名の筆跡との対比する調査を行い,手帳の記載は,被相続人のものであると判断した。その調査においては,数字の対比を中心に行ったほか,特定の文字の対比を行った。また,Y2は筆跡鑑定の専門家ではなく,その調査の際,専門家に鑑定を依頼しなかった。  同一機会処理分(手帳記載分から同一機会処理をたどって発覚した分)(査察官の類型は,「筆跡分」)Y3は,手帳記載分の定期預金口座のうち,k銀行η支店において開設された仮名定期預金の解約伝票について,現金の払戻しや入金の際に,解約伝票や入金伝票に,現金ジャーナル機により印字される処理情報を見て,同一人が処理したものかを判別する調査を行った。 その現金ジャーナル機の印字は,上下2段に分かれており,上段が伝票を現金ジャーナル機に通した時刻,下段は,「担当者コード(各金融機関の行員に与えられた担当者の番号)-処理通番(伝票を現金ジャーナル機に通した順番に付されていき,同一人に帰属する一連の処理であれば,同一のものが付される番号)-枝番(処理通番ごとに,伝票の枚数に応じて付されていく番号)-機械番号(現金ジャーナル機の番号)」という内容になっていた。 この調査によって,- 22 -① 手帳に口座番号が記載された仮名定期預金の解約伝票と同一時間帯に,同一の処理通番による処理がなされた解約伝票が作成された仮名定期預金② 手帳に口座番号が記載された仮名定期預金の解約伝票と同一時間帯に,同 番号が記載された仮名定期預金の解約伝票と同一時間帯に,同一の処理通番による処理がなされた解約伝票が作成された仮名定期預金② 手帳に口座番号が記載された仮名定期預金の解約伝票と同一時間帯に,同一の処理通番による処理がなされた入金伝票が作成された仮名定期預金③ 上記②により判明した仮名定期預金の解約伝票と同一時間帯に,同一の処理通番による処理がなされた解約伝票が作成された仮名定期預金④ 上記①により判明した仮名定期預金の書換え継続等により開設された仮名定期預金の解約伝票と同一時間帯に,同一の処理通番による処理がなされた解約伝票が作成された仮名定期預金⑤ 上記①により判明した仮名定期預金の書換え継続等により開設された仮名定期預金の解約伝票と同一時間帯に,同一の処理通番による処理がなされた入金伝票が作成された仮名定期預金が発見された。 Y3は,そのうち,手帳記載分(継続分,CIF同一分を含む。)として既に把握されていたものを除いたものをとりまとめ,更に,Y1が,出金額と入金額に差が出る取引に着目し,現金化された金額をとりまとめたところ,その結果,前記①ないし⑤の類型の預金のうち,手帳記載分(継続分,CIF同一分を含む。)と重複しない仮名定期預金は,すべて平成10年から平成13年にかけて解約されており,現金化された金額は,合計9億1473万7272円となった。 Y3は,前記①ないし⑤の類型の仮名定期預金について,最終解約時の定期預金証書のサインと,被告人の筆跡との対差による調査を行い,Y3は,それらのサインは,被告人の筆跡に酷似していると判断した。なお,Y3は,筆跡鑑定の専門家ではないし,当該調査について,専門家に依頼することはしなかった。また,これらの預金についての入金伝票は入手していたが,そ- 23 -れに記載されて いると判断した。なお,Y3は,筆跡鑑定の専門家ではないし,当該調査について,専門家に依頼することはしなかった。また,これらの預金についての入金伝票は入手していたが,そ- 23 -れに記載されていた名義人の署名を誰がしたのかという調査はしなかった。  担保差し入れ分Y3は,前記の「担保預金差入証」(預金明細添付)に基づき,定期預金の調査を行った。 Y3が,その添付の預金明細に記載されていた預金のうち,解約・現金化された金額をとりまとめたところ,平成10年から平成13年に解約・現金化されたものの額は,合計1億6176万5972円であった。  弁護士解約依頼分Y3は,U弁護士が送付した前記「定期預金解約請求書」に基づいて預金の調査を行い,同請求書に添付された別紙定期預金目録に記載された定期預金のうち,既に手帳記載分の仮名定期預金として把握していたものを除いたものをとりまとめたところ,平成13年に現金化された金額は,合計1368万9709円であった。  マネロン分Y3は,氏名欄に「A」などと記載されるなどし,参考情報欄にそれぞれ,定期預金の解約件数及び金額が記載された,2001年1月22日付け,1月23日付け,1月19日付けのマネーロンダリングに関する本人確認書に基づいて定期預金の調査を行い,既に手帳記載分として把握されていた定期預金を除いて(確認書類欄の名前と金額部分を四角で囲んでいる部分が,手帳記載分と重複しない分である。),その現金化された額等をとりまとめたところ,当該定期預金から平成13年に現金化された金額は,合計6820万2983円であった。  帯封分Y3は,被告人方から発見された現金の帯封に基づいて仮名定期預金の調査を行った。被告人方から発見された現金に,k銀行l支店,l2支店,l4支店,l3支店 万2983円であった。  帯封分Y3は,被告人方から発見された現金の帯封に基づいて仮名定期預金の調査を行った。被告人方から発見された現金に,k銀行l支店,l2支店,l4支店,l3支店の帯封が付されたものがあったことから,各支店を調査して,その過- 24 -程で,仮名定期預金を発見した。 この調査において,l支店については,平成7年10月5日から同月23日にかけて開設され,全て平成12年1月13日に解約されている仮名定期預金14口座,l2支店については,平成7年10月6日から同月24日にかけて開設され,平成12年1月17日にまとめて解約された仮名定期預金21口座,k銀行l4支店・l5支店・l6支店を統合した,現在のk銀行l4支店及びl7出張所については,平成7年10月4日から同月26日にかけて開設され,平成11年12月7日から同月17日にかけて解約された仮名定期預金91口座(なお,l4支店分として発見された預金口座の解約時の伝票の裏面には,同時に解約され出金された現金の合計額を表したテラー印字(現金ジャーナル機に伝票を通したときに印字されるもの)があるものがあり,テラー印字には,その伝票自体の口座からの出金額よりも大きい額が記載されている。),l3支店については,平成7年10月6日から同月20日にかけて開設され,平成11年11月9日又は平成12年1月17日から同月19日にかけて解約された仮名定期預金34口座(平成11年解約分が7口座,平成12年解約分が27口座)が発見され,とりまとめられた。 なお,Y3は,いずれの預金についても,最終解約時の定期預金証書裏面のサインの筆跡と,被告人の筆跡との対差を行っており,その結果,被告人の筆跡と異なると判断されたものは,とりまとめの対象からは外した。 Y3は,このようにして把握さ も,最終解約時の定期預金証書裏面のサインの筆跡と,被告人の筆跡との対差を行っており,その結果,被告人の筆跡と異なると判断されたものは,とりまとめの対象からは外した。 Y3は,このようにして把握された仮名定期預金の開設,解約状況等をとりまとめたところ,現金化された金額は,合計6億5199万2960円であった。 16 被相続人,家族名義の口座からの出金状況Y3は,前記手帳2冊に記載された店番(各支店を特定するコード番号)をもとに,各金融機関に対して被相続人名義,家族名義及び仮名定期預金の調査を行ったところ,被相続人名義,家族名義の定期預金から,平成10年ないし- 25 -13年に現金化された額は,合計10億7473万8444円であり,そのうち被相続人名義の定期預金からの現金化額は,合計2億7866万9790円であり,家族名義定期預金からの現金化額は,合計7億9606万8654円であった。 また,そのうち,前記手帳に口座番号等が記載されていた預金,平成6年以前に開設された預金,現金を原資として開設された預金の各類型で,E及び被告人名義の預金から現金化されたと認められる金額は,合計1億3607万4438円であり,百万円以上の帯封現金として出金された可能性のある金額は1億3300万円である(百万円の帯封現金133本分)。 17 関係法人に対する貸付金の調査,存在状況等Y2は,前記「担保権解除申入書」に記載されている家族名義の担保預金について調査したところ,家族名義の預金は,平成13年12月6日に164口座全てが解約されており,その解約金は,全て関係法人(g商事,t興業,u興業,j興業,v興業)の普通預金口座に入金され,各関係法人において家族(被告人,C,D,B,I)からの借入金(家族を貸し主とする関係法人に対する貸付金。 以下では ,全て関係法人(g商事,t興業,u興業,j興業,v興業)の普通預金口座に入金され,各関係法人において家族(被告人,C,D,B,I)からの借入金(家族を貸し主とする関係法人に対する貸付金。 以下では,貸し主の名義をもって「○○名義の貸付金」という。)として計上されていることが判明した。調査の結果,被相続人に帰属する関係法人に対する家族名義の貸付金は,21億5538万3462円であると認定された。そのうち,被告人名義の預金の解約金を原資として,被告人名義で計上された貸付金は,合計1億2286万5145円であった。 第3 当裁判所の判断 1 発見現金の帰属について 被相続人名義定期預金の帰属関係証拠によれば,被相続人名義の定期預金が,被相続人に帰属することは明らかである。  仮名定期預金の帰属- 26 -ア当事者の主張検察官は,仮名定期預金は,被相続人に帰属するものであると認定できると主張する。 これに対し,弁護人は,仮名定期預金について,被相続人に帰属すると認定するに足るだけの立証がなされていないと主張する。 以下,検討する。 イ検討 本件仮名定期預金の把握経過と検討の中心前記認定事実のとおり,本件仮名定期預金は,ⅰ前記手帳に口座番号等が記載されていたもの,ⅱ前記担保預金差入証添付の一覧表に記載されていたもの,ⅲ被告人がU弁護士に解約を依頼して解約されたもの,ⅳ解約時のマネーロンダリングに関する本人確認書に「A」と署名のあるもの,ⅴ被告人方・B方から発見された現金に付された帯封の支店名や日付といった事情や証拠を手がかりとして調査を行い把握されたもののいずれかであることが認められる。このような把握経緯に加え,その他被相続人及びその家族以外の者が本件口座を開設,管理していた状況も窺われないことからする 拠を手がかりとして調査を行い把握されたもののいずれかであることが認められる。このような把握経緯に加え,その他被相続人及びその家族以外の者が本件口座を開設,管理していた状況も窺われないことからすると,本件仮名定期預金は,被相続人,その家族(以下,被相続人の家族を指して,単に「家族」ということがある。)又は関係法人のうちいずれかに帰属する財産であることが認められる。 問題は,本件仮名定期預金が,家族又は関係法人に帰属する可能性が排斥され,被相続人に帰属すると認定できるのかという点にある。  仮名定期預金の発生原資定期預金の帰属の検討においては,その発生原資が何かという点が判断の基軸となり得る。そこで,まず,仮名定期預金の発生原資について検討する。 前記認定事実のとおり,被相続人は,関係法人の実質的経営者として- 27 -不動産賃貸業等を営んでおり,関係法人はそれによって不動産賃料収入等を得ていた。これに対し,B,E及びKは,関係法人あるいは被相続人と離れた独自の収入は得ていなかったものであり,被告人についても,習い事を教えるなどして一定の収入を独自に得ていたことは認められるものの,これらの個人としての収入あるいは被相続人からもらった金銭は,被告人の家計簿に別に記載・管理され,預金化もされているとみられ,それら以外に,高額な前記仮名定期預金の原資となり得るほどの収入があったかは疑問がある。また,医師であるC,Dは,就職後は,基本的には病院からの給料を得ていたものであって,被相続人ら他のA家の者とは経済的に独立していた。同人らについても,そのような自己の収入以外に,高額な前記仮名定期預金の原資となり得るほどの収入があったとは認められない。H,G,Fについても,同様に,他の家族と,経済的一体性はなかったものである。 このような ,そのような自己の収入以外に,高額な前記仮名定期預金の原資となり得るほどの収入があったとは認められない。H,G,Fについても,同様に,他の家族と,経済的一体性はなかったものである。 このような被相続人,その家族,関係法人の収入状況からすると,その内部において,前記仮名定期預金の原資となり得るものは,前記被相続人あるいは関係法人による不動産賃料収入以外にはなかったものといえる。 したがって,仮名定期預金の発生原資は,もともとは関係法人における不動産賃料収入等であったと認定できる。そして,関係法人における不動産賃料収入等は,第1次的には関係法人に帰属するものと考えるのが相当である。  帰属の評価以上の仮名定期預金の発生原資の検討を前提として,仮名定期預金の帰属について検討する。 前記認定事実のとおり,被相続人が,少なくとも一定期間内において,仮名定期預金を実際に継続的に開設していたこと,その際,被相続人が,- 28 -認定できる期間以外にも仮名定期預金の開設を継続的に行っていたことを窺わせる言動をしていたこと,公判廷での家族の供述状況からして被相続人以外の家族が本件仮名定期預金を開設・管理していたとは認められないことを踏まえると,前記仮名定期預金は,被相続人が開設したものと認められる(なお,定期預金の開設に際して,銀行員と現金等を授受する際に,E,被告人が関与していた状況があったことも認められるが,前記認定のとおり,被相続人が役員報酬の計上額を決めるなど関係法人等の金員を管理していたことからすると,その現金等の授受に関して,E・被告人の関与があるとしても,被相続人の意思を離れて,預金の開設がなされていたとは認められないことから,前記の認定に影響を及ぼすものではない。)。 この点,弁護人は,預金の開設経過が立証されてい ・被告人の関与があるとしても,被相続人の意思を離れて,預金の開設がなされていたとは認められないことから,前記の認定に影響を及ぼすものではない。)。 この点,弁護人は,預金の開設経過が立証されているのが一定期間に限られることをもって,開設経過が不明であると主張する。しかし,立証されている一定期間の開設の態様やその際の被相続人や被告人らの言動,その他家族の収入状況等の事情を踏まえれば,前記不動産賃料収入等を原資として,被相続人が開設したものであることについて疑いを生じさせるとまではいえず,このような弁護人の主張も,その点の推認(認定)を妨げるものとはならない。 そして,①このような開設状況(預金の管理者は被相続人とみられること),②仮名定期預金は,いずれも個人名義の口座であること,③仮名定期預金についての関係法人における経理処理の状況について,前記認定事実のとおり平成9年や平成12年の税務調査の際において初めて税務署側にその存在が発覚したものであることからすると,仮名定期預金は,関係法人において,法人税の課税対象となる所得として計上・申告されてはいなかったものと認められること,④平成9年の関係法人に対する税務調査において,仮名定期預金が会社資産であるならば,そこ- 29 -から発生した受取利息に対する税金分を支払うよう税務署側から要求された際,結局,被告人側の意向に沿って,仮名定期預金は,関係法人に帰属しないものとして税務上処理されていることなどを併せ考えると,前記仮名定期預金は,関係法人から被相続人に対する実質的な報酬を,被相続人が仮名で預金したものとみられ,仮名定期預金は被相続人に帰属するものであると認定できる。  弁護人の主張についてa. 手帳の筆跡についてこの点,弁護人は,仮名定期預金の把握の契機の一つとなった 名で預金したものとみられ,仮名定期預金は被相続人に帰属するものであると認定できる。  弁護人の主張についてa. 手帳の筆跡についてこの点,弁護人は,仮名定期預金の把握の契機の一つとなった当該手帳に関する筆跡の調査が不十分であるとし,その筆跡は,査察官が対差対象とした銀行確認書の文字と特徴に違いがあるから,当該手帳の記載は被相続人が記載したものかどうかが不明であると主張する。 確かに,筆跡の調査を担当したというY2査察官の供述する筆跡の検討状況は,Y2自身専門的知識を持っていないことや,数字を中心に対差したに過ぎないことなど,十分なものとは言い難く,同人が,筆跡が類似していると判断したと供述していることから,筆跡の同一又は類似性が肯定できるものではない。さらに,手帳の記載全体をみても,全て被相続人が記載した可能性はあるものの,被相続人以外の者が記載した可能性も排斥されない。 しかし,前記認定事実のとおり,前記手帳は,いずれも被相続人,E及びBらが居住していた現B方から発見されたものであること,いずれの手帳にも,k銀行の印刷等があり,内容欄には,手書きで,仮名定期預金等の口座番号等が規則的に多数記載されているものであること,その記載の体裁からすると同一人が管理していたものであると認められ,そのうちの一つには,被相続人の名前と符合する「●●」との記載があること,被相続人の家族には,当該イニシャル等の記載に- 30 -符合する名前の者は,被相続人の外にはCしかおらず,Cは,仮名定期預金等の開設・管理をしておらず,k銀行との取引もなかったこと,被相続人が仮名定期預金を継続的に開設していた状況が認められること,被相続人,その家族及び関係法人には被相続人あるいは関係法人による前記不動産賃料収入等以外に仮名定期預金の原資となり得る ったこと,被相続人が仮名定期預金を継続的に開設していた状況が認められること,被相続人,その家族及び関係法人には被相続人あるいは関係法人による前記不動産賃料収入等以外に仮名定期預金の原資となり得る収入は認められないことといった事情を踏まえると,前記手帳は,被相続人が,仮名定期預金等を管理するためのものであったものと認められ,少なくとも手帳の記載が被相続人の意思を離れて記載されたものではないと認められる。 したがって,筆跡調査が不十分であるという弁護人の主張も,前記の認定に影響を及ぼすものではない。 b. 解約時等の状況等に関する主張について弁護人は,最終解約時の定期預金証書の裏面の署名の筆跡が被告人のものであるかの調査が不十分であること,マネーロンダリングに関する本人確認書は,被相続人が記載したものではなく,その作成の際に,k銀行は被相続人に連絡を取っていないこと,預金の解約に際して被相続人の本人確認を行っていないことなど,解約時点における諸事情を指摘する。 しかし,被告人の署名に関する調査の点についてみると,最終解約時に被告人が署名したか否かという点は,被相続人,その家族及び関係法人内部での仮名定期預金の帰属の認定に関して大きな意味を持つ事実とはいえず,この点は,前記の認定に影響を及ぼさない(査察官は,被告人の筆跡と似ていないと判断したものを被相続人に帰属する財産として除外したと供述しているが,査察官が,このように処理していることによって,その事実の持つ意味が変わるわけではない。)。 また,k銀行は,前記Tがk銀行η支店長のころ(平成11年以降)- 31 -に,仮名定期預金を廃止する方向に動き出したとはいえ,それ以前は,継続的に,被相続人による仮名定期預金の作成を認容してきたという実態があること,被告人は,被相続人の (平成11年以降)- 31 -に,仮名定期預金を廃止する方向に動き出したとはいえ,それ以前は,継続的に,被相続人による仮名定期預金の作成を認容してきたという実態があること,被告人は,被相続人の長女であり,実質的に被相続人が中心となって営業していた関係法人の業務を,被相続人の入院後に,被告人が被相続人に代わって担当し,k銀行の担当者も被相続人の意向に沿った行動であると捉えていたとみられること,k銀行においては,定期預金証書及び名義人の押印があれば解約に応じていたという状況も窺われることなどからすると,k銀行において,被相続人の本人確認等をすることなく,被告人による定期預金の解約手続に応じることもあり得るものであり,弁護人の前記主張も,前記判断を覆すものとはならない。 ウ結論以上によれば,前記仮名定期預金は,全て被相続人に帰属するものであると認められる。  家族名義定期預金の帰属についてア当事者の主張検察官は,家族名義定期預金は,被相続人に帰属すると認められると主張する。 弁護人は,関係法人には,被相続人だけでなくその家族が取締役等として選任され,関係法人から家族に対し役員報酬等が支出されており,家族名義定期預金の原資は,家族が受け取るべき役員報酬等を被相続人が管理していたものであるから相続財産ではない旨主張する。そして,その根拠として,①被告人をはじめとする家族が,関係法人の仕事の一部を担ってきたこと,②被相続人と家族とは食事会を開催しており,その際に被相続人は同会について役員会であるとの説明もしていたこと,③C,D,I,Mは,自分に役員報酬が出ていることを知っていることを示す言動等をし- 32 -ていたこと,④税務署が家族に対する役員報酬の支出を認める扱いをしてきたこと,⑤k銀行の担当者も家族名義定期預 ,I,Mは,自分に役員報酬が出ていることを知っていることを示す言動等をし- 32 -ていたこと,④税務署が家族に対する役員報酬の支出を認める扱いをしてきたこと,⑤k銀行の担当者も家族名義定期預金が名義人に帰属すると認識しているような言動をとっていたこと,⑥家族名義定期預金の開設経過が不明であること,⑦Eの被相続人の家庭の資産形成への寄与度,Eの定期預金に関する言動等の事情を主張する。 以下,検討する。 イ検討 検討の要点と手法仮名定期預金の検討において論じたのと同様に,被相続人,家族又は関係法人においては,関係法人あるいは被相続人の不動産賃料収入等以外に,家族名義,被相続人名義の定期預金の原資となり得るものはないと認められることからすると,関係法人における不動産賃料収入等が,本件家族名義定期預金の大元の原資であると認められる。 そして,前記認定事実及び関係証拠によれば,①本件家族名義定期預金は,被相続人,又は被相続人の代わりに関係法人の業務を行っていた被告人により,開設・管理されていたものであること,②Cの個人の確定申告を被相続人が行っていたことがあったこと,③Dの病院の給料に多額の税金が課されたこと等があったこと,④Mの確定申告を被告人又は被相続人が行っていたことなどの事情があった可能性は否定されない。 これらの事情からすると,関係法人において,家族に対する役員報酬が計上されていた可能性はある。 もっとも,関係法人の経理処理上,各家族に対する役員報酬が計上されていたとの事情があったとしても,家族名義定期預金への入金・預け替え等が,実体的に各家族に対する役員報酬の支出として(すなわち,各家族へ当該金員を帰属させる意思で)なされたものでなければ,それ- 33 -らの預金は各家族には帰属しないと解される。そのよ 預け替え等が,実体的に各家族に対する役員報酬の支出として(すなわち,各家族へ当該金員を帰属させる意思で)なされたものでなければ,それ- 33 -らの預金は各家族には帰属しないと解される。そのような入金・預け替えが,仮名定期預金の検討で論じたのと同様に,関係法人から被相続人に対する実質的な報酬を家族の名義で入金したもの,あるいは,そのようにして関係法人から出金した預金等を預け替えたものであるとすれば,その家族名義定期預金は,被相続人に帰属するものと認められる。 家族名義定期預金が実体的に誰に帰属するかは,各家族名義定期預金の入出金状況,役員報酬を支払う側と受け取る側の言動等から推認される入金の意図等その他の事情も踏まえて,実質的に検討する必要があり,この点の判断が,当該争点の要点となる。 以上を前提に,検察官が発見現金の原資として主張する家族名義定期預金の把握状況の類型(①前記手帳に口座番号等が記載されたもの,②仮名定期預金の解約金を原資として開設されたもの,③被相続人名義の普通預金又は定期預金の解約金を原資として開設されたもの,④平成6年以前に開設されたもの(なお,同一名義で預け替え又は更新手続がなされている場合には,最初の入金をとらえて平成6年以前としている。),⑤現金を原資として開設されたもの)に応じて,本件家族名義定期預金として入金される直前の当該金員の状況(以下,「直近の原資」という。)や,当該預金の管理状況が,どのようなものであったかという観点から分類し,それらを基軸として,以下,検討する。  仮名定期預金,被相続人名義の預金を原資とするものについて前述したとおり,仮名定期預金に入金された場合,それらは被相続人に対する実質的な報酬として帰属させるために出金され,預金化されたものと評価できる。また,被相続人名義 の預金を原資とするものについて前述したとおり,仮名定期預金に入金された場合,それらは被相続人に対する実質的な報酬として帰属させるために出金され,預金化されたものと評価できる。また,被相続人名義の普通預金又は定期預金に入金された場合も,同様に評価できる。 したがって,いずれについても,仮名定期預金あるいは被相続人名義の普通預金又は定期預金に入金された時点で,当該金員は被相続人に帰- 34 -属したものと認められる。 その後,仮名定期預金あるいは被相続人名義の普通預金又は定期預金から,家族名義定期預金へ入金等されていたとしても,これを関係法人の役員報酬としての出金等とみることはできない。あくまで被相続人に帰属する預金を,家族名義で預け入れたものと認定すべきである。 したがって,仮名定期預金あるいは被相続人名義の普通預金又は定期預金を直近の原資とする家族名義定期預金は,全て被相続人に帰属するものと認められる。 弁護人は,家族名義定期預金の原資は,家族が受け取るべき役員報酬等を被相続人が管理していたものであると主張するが,このような直近の原資の状況からすると,その主張は採用できない。  手帳に口座番号等が記載されたもの,直近の原資の状況や入金経緯が把握できないものについて前記手帳に口座番号等が記載されているもの(①)や,平成6年以前に当初の開設がなされたもの(④)については,その直近の原資は証拠上不明である。 前記のとおり,それらの預金についても,不動産賃料収入が大元の原資となっていたことは認められる。しかし,それだけでは,関係法人から家族に対する役員報酬の支払いとして入金等がなされていた可能性は否定されない。 そこで,当該類型については,その他の観点も踏まえて,更に検討を要する。 a. E,被告人以外の家族名義の預 人から家族に対する役員報酬の支払いとして入金等がなされていた可能性は否定されない。 そこで,当該類型については,その他の観点も踏まえて,更に検討を要する。 a. E,被告人以外の家族名義の預金についてこれらの類型の定期預金は,前記手帳に記載されたもの又は当初の開設時期が平成6年以前であるものであることからすると,被相続人の意思に基づいて開設・管理されていたものと認められる(なお,平- 35 -成8年12月以後に更新手続等がなされているものについては,被告人が中心となってその手続を行ったものとみられるが,当初の実質的な開設・管理は被相続人がしたものであるし,それ以後の更新等は形式的なものに過ぎない。)。 そうすると,当該家族名義定期預金について,被相続人が,当該名義人との間で,当該預金口座を開設・管理することについて合意を得ていない場合は,入金された金員は,名義人には帰属しないもので,これらは,実質的にはそれを直接に管理している被相続人に帰属するものとみるべきである。 そこで検討すると,C,D,J,Hの公判供述によれば,E,被告人及びB以外の家族は,関係法人から家族名義定期預金として入金された金員を役員報酬として得るだけの業務実態はほとんどなかったものと評価してよい上,それらの家族は,関係法人からの役員報酬を受け取る意思もなかったものと認められる。 また,被相続人のC・Dら家族に対する言動をみても,被相続人が,E,被告人及びB以外の家族に対して,家族名義定期預金として出金した金員を,役員報酬として支払う意思があったともみられない。 また,Bについても,同人の公判供述によれば,Bがjビルに出勤するようになったのは,平成11年ころ以降であり,それ以前の関係法人の業務に対する関与は,B方に持ち込まれる賃料の受け付け等に過 い。 また,Bについても,同人の公判供述によれば,Bがjビルに出勤するようになったのは,平成11年ころ以降であり,それ以前の関係法人の業務に対する関与は,B方に持ち込まれる賃料の受け付け等に過ぎなかったこと,Bが,被相続人に対し,計上されている役員報酬を全額くれないかと言ったところ断られたことがあったこと,Bは,被相続人から,B名義の定期預金証書に関して,「わしから出たお金やから,わしのもんやろう,何でお前に渡さなあかんねん。」と言われたことがあったこと,B自身も被相続人から,自身名義の定期預金として貯めているお金をもらえるという認識はなかったことといった事- 36 -情が認められる。 これらの事情を併せ考えると,被相続人が,E及び被告人以外の家族との間で,当該預金口座を開設・管理することについて合意があったとは認められない。 したがって,それらの家族名義の定期預金については,被相続人に帰属するものと認められる。 b. 被告人及びE名義の定期預金について前記認定事実によれば,被告人,E名義の定期預金についても,実質的には,被相続人に帰属する可能性はある。他方,E及び被告人については,他の家族に比して,関係法人の業務に対する関与の度合いは大きく,そのA家の財産形成に対する寄与の度合いの大きさからしても,両名については,関係法人から役員報酬を支払うだけの実態が全くなかったものとはいえない。 また,前記のとおり,当該類型の預金口座については,その具体的ないし個別的な原資や入金経緯・定期預金証書の管理状況は不明確である上,証拠上認められるE及び被告人に対する被相続人の言動は,他の家族に対するものと異なり,同人らに役員報酬として支出する意思がないといえるだけの内容でもないことなどを併せ考えると,同人ら名義の預金口座は,同人ら られるE及び被告人に対する被相続人の言動は,他の家族に対するものと異なり,同人らに役員報酬として支出する意思がないといえるだけの内容でもないことなどを併せ考えると,同人ら名義の預金口座は,同人らに対する役員報酬を被相続人において管理していたものである可能性も排斥できない。  現金を直近の原資とする預金現金が直近の原資である預金は,全てE名義のものであり,当初の開設日が平成8年12月より前のものは,被相続人が,それ以後のものは被告人が開設したものと認定できるが,それ以上の具体的な入金経緯については,前記の平成6年以前開設の類型と同様に,証拠上不明確であることからすると,その帰属についても,Eに帰属する可能性を排斥で- 37 -きないというべきである。  小括以上より,前記手帳に口座番号等が記載された預金,平成6年以前に開設された預金及び現金で入金された預金のうち,E及び被告人名義の定期預金については,同人らに対する役員報酬であるという可能性を排斥できない。 ウ結論前記手帳に口座番号等が記載された預金,平成6年以前に開設された預金及び現金で入金された預金のうち,E及び被告人名義の定期預金は,被相続人に帰属するものとは認定できない(前記認定事実のとおり,それらの定期預金から現金化されたと認められる金額は,合計1億3607万4438円であり,そのうち,百万円以上の帯封現金として出金された可能性のある金額は1億3300万円である。)。これに対し,それ以外の家族名義定期預金については,被相続人に帰属するものと認定できる。  発見現金の原資が被相続人名義・仮名名義・家族名義定期預金の解約金であるかについてア当事者の主張 検察官の主張検察官は,被告人方から発見された現金のうち,k銀行の平成10年分ないし平 発見現金の原資が被相続人名義・仮名名義・家族名義定期預金の解約金であるかについてア当事者の主張 検察官の主張検察官は,被告人方から発見された現金のうち,k銀行の平成10年分ないし平成13年分及び平成15年分の各帯封付き現金合計38億3400万円,日付が特定できないk銀行の帯封付き現金900万円,n銀行の帯封付き現金13億7200万円,旧m銀行の帯封付き現金1億5000万円,旧o銀行の帯封付き現金2億1500万円,旧p銀行の帯封付き現金3000万円,旧q銀行の帯封付き現金1億1000万円,n銀行が使用していた無地の帯封付き現金3000万円の総額57億5000万円,及び,B方から発見された平成10年10月29日付けn銀行の帯封- 38 -付き現金1億円(平成18年11月14日発見),日付のないn銀行の帯封付き現金6000万円,平成11年4月26日付けn銀行の帯封付き現金2000万円,平成11年8月26日付けk銀行s支店の帯封付き現金900万円(なお,冒頭陳述の本文部分及び論告ではn銀行の帯封付き現金とされているが,s支店の誤りとみられる。)(いずれも平成20年3月11日発見)及び平成18年11月20日にBがr銀行に入金した現金1億円(以下,Bがr銀行に入金した1億円についても,B方から発見された現金と同様に扱い,まとめて「B方から発見された現金」などという。)の総額2億8900万円は,被相続人名義・仮名名義・家族名義定期預金の解約金と認められるから,相続財産に当たると主張する(被告人方からは,60億8678万1000円の現金が発見されているが,検察官は,このうち前記の合計57億5000万円を相続財産として主張するので,以下,検察官が被相続人の相続財産として主張している現金を指して,「発見現金」と記載する。)。  発見されているが,検察官は,このうち前記の合計57億5000万円を相続財産として主張するので,以下,検察官が被相続人の相続財産として主張している現金を指して,「発見現金」と記載する。)。  弁護人の主張弁護人は,①仮名定期預金の解約現金がどれだけ被告人方及びB方に保管されていたかどうか分からないこと,②検察官は帯封等によって推測しているに過ぎないこと,③発見現金のうち,n銀行の帯封の現金には,関係法人の財産である供託金の返還金最大7800万円が含まれている可能性があることなどから,被告人方から発見された現金が定期預金の解約金に由来するものであることについての検察官の立証は十分でない旨主張する(なお,弁護人は,B方から発見された現金が,定期預金の解約金であることは争っていないとみられ,関係証拠上も,B方から発見された現金が,平成11年5月12日に解約された被相続人又は家族名義の定期預金の解約金であることは優に認定できる。)。  以下,検討する。 - 39 -イ検討被告人方の発見現金は,全て,100万円又は1000万円単位で帯封が付されたものであり,それらの単位で銀行から出金されたものと認められる。また,それらは,被告人方において,ガレージ倉庫内又は居室内に,まとめて保管されていたものであり,その金額は合計57億5000万円と極めて高額にのぼる。 このように,現金に帯封が付されていることからすると,それらの現金を個々にみても,他の現金が混入する可能性は高いものではない上,その総額が,57億5000万円と,極めて高額にのぼることからすると,その原資となり得るものは,相当に限定される。 このような状況に加えて,①検察官が,発見現金の原資として主張する定期預金は,k銀行から,平成10年ころから平成13年ころに,継続的に ことからすると,その原資となり得るものは,相当に限定される。 このような状況に加えて,①検察官が,発見現金の原資として主張する定期預金は,k銀行から,平成10年ころから平成13年ころに,継続的に解約・現金化されたものであり,その総額も,合計71億8669万8493円と発見現金の原資として矛盾のないものであること,②発見現金の帯封の状況や保管状況と検察官が発見現金の原資であると主張する各定期預金の解約状況とに矛盾もみられないこと,③被告人は,平成10年ころから平成13年2月ころまでという検察官が発見現金の原資であると主張する各定期預金の解約時期と符合する時期に,仮名・家族・被相続人名義の定期預金を解約し,平成11年5月12日に解約した3億円余りの現金を除いて,解約現金を被告人方に運び入れていたという状況が認められることを併せ考えると,他の現金が混入していることを疑わせる事情のない限り,被告人方の発見現金は,検察官主張の仮名・家族・被相続人名義の定期預金の解約金を被告人が被告人方に運び込み,同所で保管していたものと推認することができる。 ウ弁護人の主張についてそこで,そのような事情が認められるかという観点から,弁護人の各主- 40 -張について検討する。  弁護人の主張①について弁護人は,Y1査察官による定期預金から現金化された金額に関する調査について,「その調査で行われた計算は,現金化された定期預金のうち,その使途や資金移動が明らかになったものを除いたに過ぎず,それだけの現金がそのまま被告人方に保管されていたことを意味するわけではない。例えば,Y1は,この調査の際,関係法人の現金出納帳を確認するなどして関係法人に現金が移動したかどうかを調査していないのであり,関係法人が使用した現金を含めて計算されている可能性を否定 けではない。例えば,Y1は,この調査の際,関係法人の現金出納帳を確認するなどして関係法人に現金が移動したかどうかを調査していないのであり,関係法人が使用した現金を含めて計算されている可能性を否定することができない。」旨主張する。 確かに,その調査は,出入金額に差額が出る取引に着目し,最終的に出金のみなされ現金化された額を集計したものであり,直ちに,定期預金から出金された現金が,被告人方に運び込まれた金額として認定できる内容のものではない。 しかし,その調査によっても,少なくとも,当該預金からその時点で現金化された金額や時期を把握することは可能である。前記のとおり,定期預金からの現金化された金額や時期に,その他の事情を加えて検討すれば,現金化された解約金が発見現金の原資になっていることの推認は可能である。 このような弁護人の主張も,前記の推認を覆すものとはならない。  弁護人の主張②について弁護人は,被告人方からの発見現金について,「検察官は,帯封等によって原資を推測しているにとどまる。例えば,関係法人は,k銀行にも普通預金口座があったのであり,k銀行等の帯封付きの現金の中に,関係法人の口座から出金された現金が混入していた可能性を否定できないから,検察官が相続財産として主張する合計57億5000万円が被相続- 41 -人に帰属する定期預金を原資にしているとまで認定することはできない。」旨主張する。 しかし,x興業を除いては,関係法人の事務所は,jビル又はB方にあり,法人業務もそこを中心に行われていたこと,そのような中で,関係法人の現金を被告人が被告人の自宅に前記認定のような形態で保管すべき必要性は想定できないこと,x興業の賃料収入は,被告人が回収していたこと(百万円単位の帯封付きの形態になるとはみられない。)などか 法人の現金を被告人が被告人の自宅に前記認定のような形態で保管すべき必要性は想定できないこと,x興業の賃料収入は,被告人が回収していたこと(百万円単位の帯封付きの形態になるとはみられない。)などからすると,会社財産が,帯封が付された本件発見現金に混入したとも認められない。 また,被告人や家族の個人財産についてみても,被告人は,自身や息子の生活費等を自ら家計簿をつけて管理していたものであり,家計簿には発見現金や,検察官が発見現金の原資として主張する定期預金の記載はなく,被告人が日常使用する現金が,発見現金に混入しているとは認められない。また,家族の生活状況等からしてその他の家族に帰属する現金が,被告人方に持ち込まれるということも考えがたい。これらの事情に加え,前記のとおり,被告人方の発見現金には全て帯封が付されていたこと等を併せ考えると,定期預金の解約金のほかに家族に帰属する現金が発見現金に混入している可能性は認められない。 よって,弁護人の主張②も,前記認定を覆すものとはならない。  弁護人の主張③について関係証拠によれば,被告人は,関係法人の不動産賃料等の供託金の払戻金7800万円(n銀行の帯封がついていた。)を被告人方に運び込んでいたことが認められ,それが,発見現金のうちn銀行の帯封が付されたものに含まれている可能性はあると認められる。 この点について,検察官は,被告人が自宅に持ち帰って保管していた関係法人の受取賃料や供託金については,このような供託金の払戻金を- 42 -相続財産たる被相続人の個人財産である定期預金の解約現金に混入させて保管したのであるから,この保管形態から,被相続人の委託に基づき,関係法人の供託金や受取賃料を被相続人の個人財産として取り込んで保管していたものと認められると主張する。 確かに,元々 に混入させて保管したのであるから,この保管形態から,被相続人の委託に基づき,関係法人の供託金や受取賃料を被相続人の個人財産として取り込んで保管していたものと認められると主張する。 確かに,元々は関係法人の財産たる現金であったとしても,その実質的経営者が,自身のものとして取り込めば,その是非は別として,その帰属主体自体は,取り込んだ実質的経営者になるものともみられる。 もっとも,本件の場合,被告人方に運び込んでいたのは,被告人であるから,かかる払戻金が,被相続人に帰属するといえるためには,被相続人のものとして取り込むために,被告人方に払戻金を運ぶことについて,被相続人からの委託等が存する必要がある。 確かに,被告人は,被相続人の業務を引き継ぎ,被相続人に代わってこれを行っていたものであるが,その払戻金を自宅に運び込み,被告人方に保管していくことについて,被相続人からの委託があった等の事情は,本件の証拠上認定することはできない。 そうすると,前記供託金の払戻金7800万円が,被相続人の帰属でない可能性も排斥できない。 エ小括以上より,n銀行の帯封現金のうち,7800万円については,定期預金の解約金ではない可能性があるが,それ以外の発見現金については,前記の他の現金が混入していることを疑わせる事情もみられず,仮名・家族・被相続人名義の定期預金の解約金であると認定できる。  結論以上検討したところによれば,検察官が相続財産として主張する現金中,n銀行の帯封付き現金のうち7800万円は,相続財産として認定できない。 また,前述したとおり,家族名義定期預金の一部は被相続人に帰属しない- 43 -可能性があり,そのうち100万円以上の単位で帯封が付されて解約・現金化された可能性のあるものは,被告人方及びB方の発見現金に混入し とおり,家族名義定期預金の一部は被相続人に帰属しない- 43 -可能性があり,そのうち100万円以上の単位で帯封が付されて解約・現金化された可能性のあるものは,被告人方及びB方の発見現金に混入している可能性がある。そして,前記認定事実のとおり,被相続人に帰属しない類型の家族名義定期預金のうち,帯封が付されて出金された可能性のある金額は,1億3300万円にのぼる。 したがって,被告人方及びB方の発見現金のうち,合計2億1100万円は,相続財産でない可能性がある。これに対し,その余の発見現金については,全て相続財産であると認定できる。 2 関係法人に対する家族名義の貸付金の帰属について 当事者の主張検察官は,家族(被告人,C,D,B,I)を貸し主とする関係法人に対する貸付金7億5622万9743円は,原始的に,被相続人に帰属するものと認められると主張する(なお,検察官の主張するこの点に関する実際額と申告額の差額は6億2874万9266円である。)。 弁護人は,家族名義の貸付金は,被相続人ではなく,各名義人に帰属すると主張する。 以下,検討する。  検討前記認定事実のとおり,本件で,検察官が,相続財産となると主張している関係法人に対する家族名義の貸付金(以下,特に断りのない限り,この意味で,「関係法人に対する家族名義の貸付金」又は単に「貸付金」などという。)は,定期預金の解約金が,関係法人の普通預金口座に入金され,関係法人に対する貸付金として計上されたものである。なお,その後,当該普通預金口座に入金された金員が関係法人のk銀行に対する借入金の返済に充てられていた。 このような貸付金の発生状況からすると,貸付金計上の原資となった定期- 44 -預金が帰属する者に,貸付金も帰属するものと認められる。そして,本件貸付 行に対する借入金の返済に充てられていた。 このような貸付金の発生状況からすると,貸付金計上の原資となった定期- 44 -預金が帰属する者に,貸付金も帰属するものと認められる。そして,本件貸付金の原資となった定期預金は,貸付金(借入金)の関係法人における計上名義である被告人,C,D,I,Bに加えて,K,Jの名義のものがある。 このように,関係法人に対する家族名義の貸付金は,家族名義の定期預金を原資としており,その定期預金の帰属については,前述の家族名義の定期預金の帰属に関する検討が同様に当てはまる。 したがって,C,D,I,B,K,J名義の定期預金は被相続人に帰属するものと認められるから,その解約金を原資として各関係法人に計上された貸付金は,計上された名義を問わず,全て,被相続人に帰属するものであると認められる。 これに対し,貸付金の原資となった定期預金のうち,もともと被告人名義のものは,本件で取り調べた証拠上,その入金経緯等も把握できないことからすると,家族名義定期預金に関する検討で述べたように,被相続人に帰属しない可能性も排斥できないといえる。 したがって,被告人名義の定期預金を原資とし,被告人名義で計上されている貸付金については,被相続人帰属でない可能性も排斥できない。 この点,検察官の主張するとおり,貸付金の一部について計上する名義を被告人の指示で変更していることは認められる。これは,被告人が主張するとおり,貸付金,ひいてはその原資となった家族名義定期預金について,被告人が,その名義人に帰属するものであると認識していたわけではないことを窺わせる事情となる。しかし,他方,被告人名義の定期預金を原資として,他の家族名義で計上されているものはないことなどからすると,必ずしも,被告人名義の定期預金及び貸付金の帰属に関する前記 ないことを窺わせる事情となる。しかし,他方,被告人名義の定期預金を原資として,他の家族名義で計上されているものはないことなどからすると,必ずしも,被告人名義の定期預金及び貸付金の帰属に関する前記認定を覆すものとはならない。  弁護人の主張についてア弁護人は,担保に入っていた家族名義定期預金が被相続人に帰属するの- 45 -であれば,同じ担保に入っていた仮名定期預金と同様に,被相続人名義の普通預金口座に入金された上,関係法人の借入金の返済に充てられるはずであると主張する。 しかし,仮に,実体的な帰属が被相続人にあったとしても,あくまで形式的な名義は家族名義になっていることなどに照らすと,仮名定期預金と同一の入金経緯をとらなければならない必然性はない。 したがって,当該事情は,前記認定を覆す事情とはならない。 イまた,弁護人は,家族名義の貸付金の原資となった家族名義定期預金について,関係法人において家族名義の役員報酬が計上されてきた実態があり,役員報酬及び家族名義定期預金の存在を税務署において長年にわたり認めてきたことからすると,各貸付金が各名義人に帰属するものであるといえると主張する。 しかし,税務署における処理が,財産の帰属の認定に直結するものでもない。 してみると,このような弁護人の主張も前記認定を覆すものとはならない。  結論以上のとおり,検察官が相続財産であると主張する関係法人に対する家族名義の貸付金のうち,被告人名義の定期預金を原資とする1億2286万5145円は相続財産とは認定できないが,その余については被相続人の相続財産と認定できる。 3 Bとの共謀について検察官は,被告人の検察官調書の供述によれば,Bとの共謀が認められると主張する。しかし,被告人の検察官調書は,弁護人が,任意性・信用性 は被相続人の相続財産と認定できる。 3 Bとの共謀について検察官は,被告人の検察官調書の供述によれば,Bとの共謀が認められると主張する。しかし,被告人の検察官調書は,弁護人が,任意性・信用性を争っている。そこで,まずは,被告人の検察官調書を除外して,その他の事情から,共謀が認められるのか検討する。 - 46 -前記認定事実によれば,①高額の定期預金を被告人・Bが解約し,被告人がその解約現金を被告人方に運び込んでおり,それをBも認識していたこと,②被告人及びBは,それらの現金の中に,被相続人名義の口座を原資とするものなど,相続財産となるものが存在していることを認識していたと認められること,③その現金の金額からすると,被告人及びBはそれらが被相続人死亡時点で残存していることも認識していたと認められること,④被告人及びBは,確定申告書を作成した税理士らと打ち合わせを行っており,被告人は,その際,Nに対し,被相続人に帰属する現金は「ない」旨話していること,⑤Bが,N事務所に家族の印鑑を持参し,その場で,確定申告書に押印がなされたことといった事情が認められる。 以上の状況からすると,被告人及びBは,相続税を免れる意図のもとに,確定申告に際し,不正な行為を行って正当な税額よりも過少な税額を申告したことの認識を持っており,両名はそれを互いに共有していたと認められるから,被告人及びBには,相続税をほ脱する点の共謀があったと認められる。 第4 結論以上の次第であるから,判示のとおり認定した(課税価格及びほ脱税額等については,別紙1修正相続財産内訳書,別紙2ほ脱課税価格の内訳明細書,別紙3ほ脱税額計算書参照【いずれも省略】)。 (法令の適用)【省略】(量刑の理由)本件は,被告人が,相続人の一人と共謀の上,あらかじめ被相続人(実父) 訳書,別紙2ほ脱課税価格の内訳明細書,別紙3ほ脱税額計算書参照【いずれも省略】)。 (法令の適用)【省略】(量刑の理由)本件は,被告人が,相続人の一人と共謀の上,あらかじめ被相続人(実父)の保有する定期預金を解約した現金を自宅に隠匿するなどして秘匿した上,過少な金額を記載した内容虚偽の相続税申告書を提出して,自己及び共同相続人の相続税を免れたという相続税法違反の事案である。 被告人らが免れた相続税は合計27億9794万円余りと極めて巨額であり,ほ脱率も8割を超える高率なものである。被告人は,被相続人に帰属する定期預金を- 47 -解約した現金を隠匿した上で,相続税の虚偽過少申告を行ったものであり,悪質である。被告人は,自ら多額の現金を自宅に隠匿するなどし,税理士との交渉等も中心となって行うなど,本件犯行において主導的な役割を果たしたものである。 被告人は,本件犯行に及んだ動機について,家族名義や仮名定期預金は,家族の役員報酬を運用していたものであるにもかかわらず,この存在を明らかにすると,この預金を解約した現金は全て被相続人に帰属するものであると言われてしまうと考えたから,被相続人に帰属する現金があると説明できなかった旨述べる。しかし,それは適正な申告をしない理由となるものではなく,犯行動機についても,酌むべき事情があるとは認められない。 以上によれば,被告人の刑事責任は重い。 他方,本件相続について,修正申告を行い,本税のほか,延滞税・重加算税等の全額(合計約50億円)を納付していること,反省の態度を示していること,被告人に前科前歴はないこと,高齢でいくつかの重篤な病気に罹患し体調も優れないことなどの事情も認められる。 しかし,それらの被告人のために斟酌すべき事情を考慮しても,前記のとおり,ほ脱金額が誠に巨額であるこ 科前歴はないこと,高齢でいくつかの重篤な病気に罹患し体調も優れないことなどの事情も認められる。 しかし,それらの被告人のために斟酌すべき事情を考慮しても,前記のとおり,ほ脱金額が誠に巨額であることなどからすると,被告人に対しては,懲役刑についても実刑は免れず,また,併せて相当額の罰金刑を科さざるを得ない。 よって,主文のとおり決する。 (求刑懲役4年6月及び罰金10億円)平成23年6月10日大阪地方裁判所第12刑事部 裁判長裁判官横田信之 - 48 -裁判官難波 宏 裁判官田郷岡正哲

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