平成27特(わ)1463 法人税法違反,民事再生法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成29年3月15日 東京地方裁判所
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判決文本文27,028 文字)

- 1 -事件番号 被告事件名法人税法違反,民事再生法違反被告事件宣告日平成29年3月15日宣告裁判所東京地方裁判所刑事第8部主文 被告人医療法人社団A会を罰金2000万円に,被告人Bを懲役5年に,被告人Cを懲役2年10月に,被告人Dを懲役2年6月に処する。 被告人B及び同Cに対し,未決勾留日数中各80日を,それぞれその刑に算入する。 被告人Dに対し,この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 理由 【罪となるべき事実】被告人医療法人社団A会(以下「被告法人」という。)は,診療所の経営等を目的とする医療法人社団で,平成22年10月29日に東京地方裁判所により民事再生手続開始の決定を受け,同決定が同年11月26日に確定したもの,被告人Bは,被告法人の実質的経営者としてその業務全般を統括していたもの,被告人Cは,被告法人の理事兼事務局長であるとともに関与税理士としてその経理事務を掌理し,法人税の確定申告手続に関与するなどしていたもの,被告人Dは被告法人の財務関係事務を担当するなどしていたものであるが,被告人3名は,共謀の上,第1 被告法人の業務及び財産に関し,被告法人の債権者を害する目的で,別表(掲載省略)記載のとおり,平成22年12月30日から平成25年11月5日までの間,55回にわたり,東京都港区〔以下省略〕所在のE銀行F支店に開設された「A会預り口弁護士G」名義の普通預金口座又は東京都新宿区〔以下省略〕所在のH銀行I支店に開設された被告法人名義の普通預金口座から,被告人Bらの管理に係る前記E銀行F支店に開設されたJ社名義の普通預金口座に合計8億9584万9999円を振込入金し,もって債務者である被告法人の財産を隠匿し第 被告法人名義の普通預金口座から,被告人Bらの管理に係る前記E銀行F支店に開設されたJ社名義の普通預金口座に合計8億9584万9999円を振込入金し,もって債務者である被告法人の財産を隠匿し第2 被告法人の業務に関し,架空業務委託費を計上するなどの方法により所得を - 2 -秘匿した上, 1 平成23年7月1日から平成24年6月30日までの事業年度における実際所得金額が1億2046万7949円(別紙1-1の修正損益計算書参照(掲載省略))であったにもかかわらず,同年8月15日,東京都新宿区〔以下省略〕所轄K税務署において,同税務署長に対し,欠損金額が1500万4475円で,所得税額1195円の還付を受けることとなる旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,同事業年度における正規の法人税額3517万8900円と前記還付所得税額との合計3518万円(100円未満の端数切り捨て。別紙2のほ脱税額計算書参照(掲載省略))を免れ 2 平成24年7月1日から平成25年6月30日までの事業年度における実際所得金額が1億1167万0869円(別紙1-2の修正損益計算書参照(掲載省略))であったにもかかわらず,同年8月14日,前記K税務署において,同税務署長に対し,所得金額が零で,所得税額1765円の還付を受けることとなる旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,同事業年度における正規の法人税額2763万4000円と前記還付所得税額との合計2763万5700円(100円未満の端数切り捨て。別紙2のほ脱税額計算書参照(掲載省略))を免れたものである。 【争点に対する判断】第1 争点の概要 1 判示第1の事実(民事再生法違反)について 00円(100円未満の端数切り捨て。別紙2のほ脱税額計算書参照(掲載省略))を免れたものである。 【争点に対する判断】第1 争点の概要 1 判示第1の事実(民事再生法違反)について(1) 検察官は,判示の被告法人名義の預金口座ないし「A会預り口弁護士G」名義の預金口座(以下,両口座を合わせて「被告法人口座等」という。)からJ社名義の預金口座(以下「J社口座」という。)への各振込入金(以下「本件各送金」という。)は,民事再生手続開始の申立て(以下「再生申立て」と略称する。)当初から,広告宣伝費を装って被告人3名が管理するJ社口座に被告法人の財産を移動させることにより,自己らの自由にできる裏金を確保する - 3 -ために行われたものであるとして,民事再生法255条1項所定の「債権者を害する目的」による「債務者の財産を隠匿」する行為(同項1号)にほかならないと主張する。 (2) これに対し,被告法人及び被告人3名の各弁護人の主張は,概要次のとおりである。すなわち,J社は,被告法人のメディカルサービス法人(以下「MS法人」という。)で,医療に直接関係するもの以外の被告法人の業務の委託を受けていた。本件再生申立て以前は,L社が被告法人のMS法人であったが,本件再生申立て後は,J社がこれに代わり,本件各送金に係る資金が更に移転されたM社,N社と並んで,被告法人のMS法人となったものである。したがって,J社,M社,N社の必要経費は,ここから被告人3名が得ていた報酬も含め,実質的に業務委託費として被告法人の経費となるもので,本件各送金はその支弁のために行われたものである。また,本件再生計画遂行中,被告法人の業績は好調で,本件各送金により,事業の再生にも,本件再生計画に基づく弁済にも何ら支障は生じていない。このように,本件各 金はその支弁のために行われたものである。また,本件再生計画遂行中,被告法人の業績は好調で,本件各送金により,事業の再生にも,本件再生計画に基づく弁済にも何ら支障は生じていない。このように,本件各送金は財産の「隠匿」でも,「債権者を害する目的」によるものでもない。 2 判示第2の各事実(法人税法違反)について被告法人及び被告人3名の各弁護人は,いずれも被告法人の判示各事業年度について,法人税の過少申告があったこと自体は争わないものの,被告法人が関連会社(J社,M社,N社及びO社のことを指す。以下4社を併せて単に「関連会社」ともいう。)に対し広告宣伝費ないし業務委託費を架空計上した事実を争い,また,被告人B及び同Cの給与等を被告法人の経費として認定すべきであると指摘するなどして,ほ脱額を争う。そして,関連会社も含めてほ脱税額を計算すると,実質的なほ脱税額は極めて僅少あるいはマイナスであるなどとして,国家の租税債権が害された程度は軽微であると主張する。さらに,被告法人の弁護人は,上記を前提に,本件法人税法違反の起訴は公訴権の濫用であるから同事実につき公訴を棄却すべきであり,また,被告法人につき法人税法159条を適用することは憲法14条1項,31条に反するから被告法人は無罪であるとも主張している。 - 4 - 3 被告人Bの関与について被告人Bは,被告法人について再生申立てが検討された平成22年10月頃以降は,人事,営業,広告,マーケティング戦略等は担当したが,財務関係は専ら被告人C及び同Dが握っていたため,判示各罪の認識がなかった旨供述する。 第2 民事再生法違反について 1 証拠上容易に認められる事実次の事実関係は証拠上容易に認められる。 (1) 被告法人の概要,被告人3名の地位等 の認識がなかった旨供述する。 第2 民事再生法違反について 1 証拠上容易に認められる事実次の事実関係は証拠上容易に認められる。 (1) 被告法人の概要,被告人3名の地位等ア被告法人は,被告人Bが平成17年8月に設立した医療法人社団であり,東京,名古屋,大阪において,自毛植毛手術等を行うクリニックを運営していた。 イ L社も,被告人Bが植毛事業を営むため設立した会社で,被告法人のほか,被告人Bが福岡市内の自毛植毛手術等を行うクリニックを傘下に収めるために設立した医療法人社団P会に対し,自毛移植の技術,当該技術に関わる商標,資材,消耗品等を提供したり,広告宣伝業務,人事・財務の管理業務等,医療行為以外の業務全般の委託を受けたりすることにより,コンサルタント料,技術使用料等として支払を受け,被告法人及びP会の収益を吸い上げていた。 ウ被告人Bは,平成22年4月にL社の代表取締役を退任したが,その後も同社の実質的経営者の立場にあり,また,被告法人についても役職には就いていなかったが,創業者としてその経営を牛耳っており,その立場は,平成25年12月に被告人C及び同Dらの造反により被告法人の経営から追われるまで変わらなかった。 また,被告人Bは,平成22年6月頃,自己の交際相手を代表者としてM社を設立したが,同社は同年9月頃までこれといった事業活動はしていない。 なお,被告人Bは,被告法人について再生申立てが検討された同年10月頃以降は,その経営は言わば被告人C及び同Dとの共同経営で,人事,営業,広告,マーケティング戦略等は自分が担当したが,財務関係は専ら被告人C及び同Dが握っていたかのように供述する。しかし,被告法人はもとより,M社, - 5 -N社等関連会社を含め,被告人Bが収益の処分を ーケティング戦略等は自分が担当したが,財務関係は専ら被告人C及び同Dが握っていたかのように供述する。しかし,被告法人はもとより,M社, - 5 -N社等関連会社を含め,被告人Bが収益の処分を中心とする財務面も併せて万事を決定していた実質的な経営者であったことは,被告人B以外の相被告人,従業員その他関係者が一致して供述するところであり,これと異なる被告人Bの供述は採用できない。 エ被告人Cは,税理士で,被告人Bの誘いで同年7月頃L社に入社し,その後被告法人に移籍して事務局長に就任し,平成23年7月には理事に就任し,被告法人,P会及び関連会社の財務会計面を見ていた者であり,被告人Bに次ぐ地位にあった。被告人Cは,L社に入社するのに先立つ平成22年3月頃,Qと共に医療機関の広告宣伝等を営む目的でJ社を設立し,Qが代表取締役に就任したが,同社も同年9月頃まで見るべき活動がなかった。 オ被告人Dは,L社の従業員で,被告人Bの指示の下,被告法人,P会及び関連会社に関する資金の管理を行っていた。被告人Dは,いずれも被告人Bの指示で,平成23年2月にN社を設立してその代表取締役に就任したほか,同年7月にはM社の代表取締役にも就任している。 (2) 本件再生申立てに至る経緯ア被告人Bは,L社の親会社(R社)の上場を企図したが,平成22年3月頃頓挫し,同年8月頃には被告法人及びL社の資金繰りが悪化して,債権者等への支払が滞るようになった。また,上記上場のために資金提供したS社及びその実質的経営者であるTが,その回収に向けて被告法人等の連帯保証を求めるなどしてきたことから,TがL社ないし被告法人,被告人Bに対する債権の取立てを強めたり,ひいては被告法人をのっとろうとするのではないかということが懸念された。 イ被告人Bは の連帯保証を求めるなどしてきたことから,TがL社ないし被告法人,被告人Bに対する債権の取立てを強めたり,ひいては被告法人をのっとろうとするのではないかということが懸念された。 イ被告人Bは,その対策を検討する中で,被告人Cの知人のG弁護士に被告法人等の経営に関して相談をすることとし,同年10月上旬頃以降,被告人Cとともに,G弁護士と打合せをした結果,被告法人につき民事再生を申し立てることに決め,G弁護士ほか3名の弁護士(以下単に「G弁護士ら」という。)に同手続を進めるよう依頼した。 ウ被告法人は,G弁護士らを代理人として,同月25日,東京地方裁判所〔以 - 6 -下省略〕(以下「再生裁判所」という。)に再生手続開始を申し立て,併せて保全処分の申立てもした。その際,提出された申立書には,添付書類として広告宣伝費欄の年間合計欄に2億6832万7000円(月額平均約2236万円)と記載された実績資金繰表と広告宣伝費欄に月額2200万円と記載された資金繰予定表とが付されていたが,当時の被告法人の実際の広告宣伝費は月額1000万ないし1100万円程度であった。 同月29日,再生裁判所は,被告法人につき再生手続開始を決定し(以下,被告法人に対する民事再生手続を「本件再生手続」という。),同決定は,同年11月26日確定した。 (3) 本件再生手続終結までの流れア被告法人は,平成23年2月4日,再生債権者総数42名に対する確定再生債権総額9億7451万3201円(元本及び再生手続開始決定日前日までの利息・遅延損害金の合計額)のうち100万円を超える部分につき82%の免除を受けること,免除後の金額を同年9月末日から平成26年3月末日までの間に6分の1ずつ6回にわたり分割弁済することなどを内容とする再生計画案を再 計額)のうち100万円を超える部分につき82%の免除を受けること,免除後の金額を同年9月末日から平成26年3月末日までの間に6分の1ずつ6回にわたり分割弁済することなどを内容とする再生計画案を再生裁判所に提出した。 上記確定再生債権額のうち,L社が7億1845万6481円と突出して多く,同社だけで約73.7%を占めた。 同計画案は,平成23年3月29日,債権者集会において,議決権を行使した議決権者38名のうち35名が同意し,かつ議決権者の議決権の総額の75. 4%の議決権を有する者が同意したことをもって,民事再生法172条の3所定の要件を満たす法定多数により可決された。 イこの間に,再生債権者であるS社(債権額1億7246万1625円)から,同月14日付けの書面及び同月24日付けの書面等により,被告法人とJ社との間の取引は架空取引ないし水増し取引の可能性があり,詐欺再生罪に該当する疑いがあることなどが指摘され,また,再生債権者であるU社からは,同月23日付け書面で,被告法人が関与した不正行為が存在しており,再生計画案は民事再生法174条2項2号及び3号に抵触する旨の意見が述べられた。こ - 7 -れに対し,同年4月8日,G弁護士らは,被告法人はJ社に対し適正に広告宣伝業務を委託して適正な広告宣伝費を支払っているにすぎず,広告宣伝費として毎月数千万円の費用をJ社に支払っていることは何ら不自然ではないなどとする意見書を提出した。これを受けて,監督委員であるV弁護士は,同月11日付け監督委員意見書において,前記G弁護士ら作成の意見書に一見して不合理なところは見当たらず,詐欺再生罪が成立するとまではいい難いとして,同項各号の不認可事由は認められないと思料する旨述べた。 ウ同年4月18日,再生裁判所は,不認可事由 成の意見書に一見して不合理なところは見当たらず,詐欺再生罪が成立するとまではいい難いとして,同項各号の不認可事由は認められないと思料する旨述べた。 ウ同年4月18日,再生裁判所は,不認可事由は認められないとして本件再生計画を認可する旨の決定をした。 その後,被告法人は,平成25年11月14日までに本件再生計画に従い弁済を終えたことから,再生裁判所は,同月18日,本件再生手続を終結する旨の決定をした。 (4) 本件各送金と使途被告法人は,本件再生申立てを検討する中で,従前広告宣伝業務等を委託していたL社に代わり,J社に広告宣伝業務を委託したとして,平成22年10月4日以降,広告宣伝費等の名目で被告法人口座等からJ社口座に反復継続して多数の振込送金がされるようになった。なお,J社口座は,同社の設立から間もない同年4月28日に開設されているが,同年10月4日に被告法人からの振込送金を受け入れるまで何らの取引も記録されていない。 そして,本件再生手続開始決定確定後の同年12月30日から本件再生手続が終結する以前の平成25年11月5日までの間に被告法人口座等からJ社口座に振込送金されたもののうち,本件各送金に当たる別表(掲載省略)記載の合計55回,合計8億9584万9999円分については,いずれも振込送金の直後にその全部又は一部がM社又はN社名義の各預金口座に移動されるなどしている。そして,これらの口座を経由した分を含めて,うち1億6859万5903円が広告宣伝費として支出されたり,約3億3700万円が被告法人のそれ以外の事業資金として説明のつく支出に充てられたりはしている。 しかし,その一方で,合計2億5000万円余りについては,被告人Bによる - 8 -現金出金のほか,同被告人やその前妻,親族及び交際 以外の事業資金として説明のつく支出に充てられたりはしている。 しかし,その一方で,合計2億5000万円余りについては,被告人Bによる - 8 -現金出金のほか,同被告人やその前妻,親族及び交際相手名義の各預金口座への入金(以上合計約7000万円)や家賃の支払(合計約2500万円),被告人Bの使用する車両の購入費やクレジットカードの支払,更には被告人Bが支配する海外法人名義の預金口座への送金(8989万円余り)などとして,同被告人の下で費消されている。同様に被告人Cの下で6400万円余り,被告人Dの下で3700万円余りが費消されているほか,約3200万円の使途が不明となっている(甲8)。 一例を挙げると,本件各送金の最初のものである別表(掲載省略)番号1の平成22年12月30日の2205万円の送金については,うち1000万円余りが広告宣伝費の支払に充てられている一方,J社口座から平成23年1月6日に被告人B名義の預金口座に400万円が送金されているほか,同月5日に400万円がM社名義のW信用金庫X支店の預金口座に送金されて更に同口座から同月13日に380万円が被告人Bの交際相手名義の預金口座に送金され,また,同月20日にも630万円がJ社口座からM社名義の上記口座に送金され,直後の同月21日に64万9346円が被告人Bの前妻名義の預金口座に送金されるなどしている。 また,同番号2の同年1月31日の2204万9999円の送金については,J社口座から,同年2月4日に1000万円がM社名義のE銀行Y支店の預金口座に送金されて更に同口座から同日に800万円が被告人D名義の証券運用口座(運用主体は被告人B)に送金され,また,同月9日にも500万円がJ社口座からM社名義の上記口座に送金され,同日620万円が被告人B名義の預金口 口座から同日に800万円が被告人D名義の証券運用口座(運用主体は被告人B)に送金され,また,同月9日にも500万円がJ社口座からM社名義の上記口座に送金され,同日620万円が被告人B名義の預金口座に送金されるなどしている。 (5) 被告法人及びJ社を含む関係会社等の預金口座の管理状況被告法人だけでなく,P会,J社,M社,N社(ただし設立後),O社(ただし設立後)等の預金通帳や届出印は,平成22年11月まではZタワー6階のL社の社長室の本立ての中のクローゼットに施錠されて保管されており,その後被告法人の事務所がaハウスb号室に移転してからは,被告人Bの机横の本立て内の施錠できるクローゼット内に保管されており,その鍵は被告人Bの - 9 -机の引き出しに保管され,さらにその引き出しの鍵は,被告人Dの机の引き出しに保管されていた。 2 関係者の供述により認められる事実以上に加え,関係証拠によれば,次のような事実関係も認められる。 (1) J社口座への送金の経緯と実情ア Qの供述Qは,検察官調書のほか,弁護側証人として出廷した当公判廷においても,概要次のような供述をする。 平成22年9月頃,被告人Cから,J社で被告法人の広告宣伝業務を行うことを提案され,同月下旬か10月上旬頃,L社の事務所で被告人Bと会い,事前に被告人Cから用意するよう言われていたJ社口座の通帳,銀行印及びキャッシュカードを被告人Bに手渡し,以後自分はこれらを管理していない。同年9月から11月にかけて開かれた数回の打合せにおいて,被告人Bから,被告人Cが同席の上で,現状の被告法人の広告宣伝費は1000万円ほどであるから同程度の金額で広告の仕事を行い,広告宣伝費を増額する必要がある場合には被告人Bにいくらで何をやるか説明す 被告人Bから,被告人Cが同席の上で,現状の被告法人の広告宣伝費は1000万円ほどであるから同程度の金額で広告の仕事を行い,広告宣伝費を増額する必要がある場合には被告人Bにいくらで何をやるか説明すること,被告法人からJ社に流す金は実際の広告宣伝費より膨らませ,広告宣伝費に使う分以外の資金はM社に流してそこから様々な支払に充てることにし,同年11月より,被告法人からは毎月2205万円,P会からは毎月420万円ずつJ社に送金するから,被告法人側から入金額と入金日の連絡を受けたら対応する請求書を作成するようにすることを指示された。J社から被告法人への請求書は,Qが実際に行っていた仕事をベースにしたり,不自然でないように請求書を分割したりして作成した。 同年11月から平成23年5月までは,被告法人口座等からJ社口座に毎月定額(2205万円。ただし,別表(掲載省略)番号2は2204万9999円,同5は2100万円。)の送金がされていたが,同年6月以降,送金が定額でなくなり,かつ,頻繁に行われるようになり,多額の送金について説明がつく請求書を作成することが困難になって,請求書を作成しないことも増えた。 - 10 -そうすると,c,被告人D及び同Cからメールで催促されることもあった。 イ被告人Cの供述また,被告人Cも,「被告人Bから,被告法人の広告宣伝業務をM社に行わせ,被告法人から広告宣伝費の名目で資金をM社名義の預金口座に入金するという計画を打ち明けられ,被告人Bが被告法人の資金をM社名義の預金口座を介して個人的な用途に使うつもりであることがわかった。しかし,被告人Bの交際相手がM社の代表取締役を務めていたことから,同社を利用して被告法人の利益を被告人B個人に移し替えていることが債権者に発覚する危険があると思い, うつもりであることがわかった。しかし,被告人Bの交際相手がM社の代表取締役を務めていたことから,同社を利用して被告法人の利益を被告人B個人に移し替えていることが債権者に発覚する危険があると思い,別の会社を使うことを考えた。そこで,平成22年10月上旬頃,知人のQに対し,J社口座の通帳等を被告人Bに差し出せば,被告法人の広告宣伝業務を行うことができると提案したところ,Qは了承した。その後,Qと一緒に被告人Bと会い,Qが被告人Bに対し,前記通帳等を手渡したところ,被告人Bはこれを受け取り,以後,同通帳等を被告法人の事務所で保管するようになった。その後,被告人Bの指示で,被告人Dらが,J社口座への入金手続や同口座からM社やN社名義の預金口座への入金手続をするようになった。」旨,捜査・公判を通じて供述している。 ウ被告人D及びcの供述そして,被告人Dも,捜査段階において,平成22年10月初め頃,被告人Bから,「被告法人とP会からJ社,J社からM社にお金を流す。J社は広告会社だから広告宣伝費で出せ。」と指示を受けたことを明言し(乙110,111),当公判廷では,被告法人やP会からJ社口座への送金は当初dがしていたとしつつ,被告人Bの指示により,同月頃から,J社口座から,被告人3名やその親族に関係する預金口座等への振込送金その他の入出金をしていたことを認めている。 また,平成23年5月頃,M社に入社し,被告法人,P会及び関連会社の入出金業務を担当していたc(被告人Cの内妻)は,同年10月頃以降,被告人Dから,被告法人名義の預金口座からJ社口座へ月2205万円を送金し,その金をN社名義の預金口座に移した上で,更にJ社口座及びM社名義の預金口 - 11 -座に移し,各口座から必要な支払をすること,必要な支払ができない場合 からJ社口座へ月2205万円を送金し,その金をN社名義の預金口座に移した上で,更にJ社口座及びM社名義の預金口 - 11 -座に移し,各口座から必要な支払をすること,必要な支払ができない場合には,基本的に1000万円以上の切りの良い額に消費税相当額を加えた額を被告法人等名義の預金口座からJ社口座に送金し,上記経路で各口座に移動させて支払に充てるよう指示されて実行したこと,M社名義の預金口座からは,c,被告人D,医師及び従業員らの人件費及び被告人Bの親族への送金等の支出が,J社口座からは,被告人Cの家賃支払等の支出が,N社名義の預金口座からは,被告人Dほか上記同様の人件費や被告人Bの交際相手の学費,被告人C及びcの生活費等の支出が,それぞれされたほか,cがN社名義の預金口座から現金を引き出して被告人Bや同Dに渡すこともあったことなどを詳細に供述している。 エ被告人B作成のメモ他方,被告人Bは,捜査・公判を通じ,前記1(4)の資金移動や同(5)の預金通帳等の管理について関知していない旨供述するが,第4回公判期日において,平成22年9月3日の記載のある紙片に「D→B個人用法人設立(税ム申告なし),A会から,新法人にお金振込ませて,飲食代等そこで落としてから,B個人に入金」「e→資金f社,g,A会以外の口座に移す!」「M社至急法人に名変」と記したこと,上記「B個人用法人設立」の記載から更に線を引いて「M社→(9末から!!!)」とも記載したこと,eは当時の被告法人の経理担当者の名前であり,f社はL社,gはその親会社のR社であること,「M社,至急法人に名変」はハワイの被告人B個人名義の別荘をh 社名義にする趣旨であることについて,それぞれ認める供述をしている。 また,11月25日及び12月24日の各日付けのある平成 と,「M社,至急法人に名変」はハワイの被告人B個人名義の別荘をh 社名義にする趣旨であることについて,それぞれ認める供述をしている。 また,11月25日及び12月24日の各日付けのある平成22年に被告人Bが作成したメモには,L社,M社,J社それぞれの預金口座から,被告人3名や従業員,その他関係者の用途にいくらの金員を割り振るか指示したものとうかがわれる記載がある(乙35)ところ,被告人Dは,同Bから「これ払っておけ。」と言われて各メモを渡され,これに基づいて振込送金をしたと当公判廷(第6回)で述べている。 オ評価と認定 - 12 -前記アないしウの各供述は,相互によく符合し,また,いずれも前記1(4)(5)の資金移動の経緯や預金口座管理の実情を合理的に説明するものである。そして,前記エの被告人B作成のメモの記載も,前記1認定の事実関係に照らして被告法人やL社,被告人B個人等の財産の差押えを免れながら,被告人Bが自由に使えるようにこれらの財産や被告法人の収益をM社等に移すことを画策し,それを実現していた証跡とみるのが最も自然であり,前記被告人C及び同Dの供述の核心部分の信用性を支えるものといえる。 したがって,これら各供述はいずれも信用に値するものであり,これら各証拠を総合すれば,次の各事実が優に認められる。すなわち,被告人Bは,平成22年9月頃には,被告法人やL社から資金をM社に移して差押え等を回避しつつ,自己の自由にできる金を確保することを画策し,被告人Cにも相談した上,折から紹介されていたQの広告会社であるJ社について,その預金通帳や印鑑を提供されたことから,被告法人やP会の資金をJ社口座に移動した上でM社名義の預金口座に送金し,J社口座又はM社名義の預金口座から出金することとした。そして,そ あるJ社について,その預金通帳や印鑑を提供されたことから,被告法人やP会の資金をJ社口座に移動した上でM社名義の預金口座に送金し,J社口座又はM社名義の預金口座から出金することとした。そして,その旨被告人C及び同Dに指示し,被告法人等の資金を実際に要する広告宣伝費とは無関係にJ社口座に送金した上で,J社口座から実際に要する広告宣伝費の金額を除いてM社名義の預金口座その他に送金するようになった。他方,Qに対しては,毎月1000万円程度を上限に被告法人等の広告宣伝業務を行うよう依頼するとともに,実際に要する広告宣伝費の金額を水増しして被告法人口座等からJ社口座に送金した上で水増しした分の金額をJ社口座からM社名義の預金口座に送金して諸々の用途に使う旨説明した上で,被告法人等からJ社口座に送金した額に見合う架空請求書を作成して被告法人等に提出するよう依頼して,その提供を受けていた。 (2) 再生申立てに関する事実アまた,G弁護士の供述(被告人B関係では当公判廷における証言,被告人C及び同D関係では検察官調書)によれば,次の事実が認められる。 本件再生申立てに向けた複数回にわたる打合せの場において,被告法人側は会計面の話になると被告人Cが口を出す程度で,それ以外はほとんど被告人B - 13 -が話していた。被告法人側から当初送られてきた資金繰予定表には,売上の3割以上の月額2500万円の広告宣伝費が計上されていたため,被告人B及び同Cに対し,その旨を指摘してもっと削らないと債権者が納得しないと意見を述べたのに対し,被告人Bは,自由診療の分野では売上の三,四割を広告費に充てるのは当たり前であるなどと述べて強く反対し,結局,その後の打合せの結果,資金繰予定表の広告宣伝費を月額2200万円とすることになった。また,この頃, 自由診療の分野では売上の三,四割を広告費に充てるのは当たり前であるなどと述べて強く反対し,結局,その後の打合せの結果,資金繰予定表の広告宣伝費を月額2200万円とすることになった。また,この頃,被告人Bから,今後,被告法人の広告は,J社という広告代理店を通して外注をしていく予定であるなどと説明を受けた。 G弁護士らは,平成22年10月25日に再生裁判所に提出した再生手続開始申立書に,上記内容の資金繰予定表を添付したほか,その本文にも,被告人B及び同Cの説明等に基づき,被告法人の月次広告宣伝費は平均2000万円を超える旨を記載した。その後,同年12月10日に再生裁判所に提出した定例報告書には,被告人B,同C又は同Dから受けた説明に基づき,本件再生申立て時に複数存在していた取引広告会社をJ社のみに絞った旨を記載し,また,平成23年2月4日に再生裁判所に提出した再生計画案添付の資金繰計画表には,被告人B及び同Cの説明に基づき,広告宣伝費の支払実績や支払予定について月額2205万円と記載した。さらに,S社やU社から,被告法人とJ社との取引が架空や水増しではないかなどと指摘する意見書が提出されたのに対し,被告人B及び同CやQから受けた説明に基づき,J社に対しては,適正に広告業務を委託し適正に広告宣伝費を支払っているにすぎないなどと記載した反論の意見書を作成して再生裁判所に提出した。 G弁護士は,J社口座を被告人Bらが管理していたことや,被告法人からJ社に広告宣伝費名目で支払われていた資金の一部が広告宣伝以外のことに使われていたことは知らなかった。 イ上記認定の根拠となるG弁護士の供述は,被告法人側との間のメール等の客観的証拠や,G弁護士とともに本件再生手続の申立代理人を務めたi弁護士及びj弁護士の各供述(甲61,62 知らなかった。 イ上記認定の根拠となるG弁護士の供述は,被告法人側との間のメール等の客観的証拠や,G弁護士とともに本件再生手続の申立代理人を務めたi弁護士及びj弁護士の各供述(甲61,62)並びに被告人Cの供述(乙73,74)とよく合致している。また,被告人Bが被告法人の実質的経営者であったこと - 14 -は前記1(1)ウのとおり明らかであるところ,本件再生手続の進行にあたっても被告人Bの意思決定が最重要視されており,実際に同被告人が決定権者であり,同被告人に対して十分な説明をしたことと整合的である。 被告人Bの弁護人は,平成22年10月19日にdから送られてきた実績資金繰表の広告宣伝費の額は,前日に被告人Dから送られてきた実績資金繰表の広告宣伝費の額の約2倍であったのに,G弁護士が,その原因を尋ねず,しかも被告法人の確定申告書等との不整合を確認することもなく被告法人側の説明を信じたというのは不合理で信用できないと主張する。しかし,G弁護士は,上記金額の差異について,被告人Bから,前の実績資金繰表は誤っており,本来広告宣伝費として支出しているものが抜けていたと説明を受けた旨証言するところ,被告法人について,一刻も早く再生手続を申し立てて開始決定を受けなければS社から債権差押えをされてしまう可能性があったため,依頼を受けてから2週間足らずという短期間で準備をしたこと,本件がG弁護士にとって初めて担当する民事再生事件であったこと等の事情に鑑みれば,上記程度の説明を受けてそれ以上の確認をしなかったことが不自然であるとはいえず,その供述の信用性を減殺しない。 (3) 被告人Bの関与についてなお,被告人Bは,本件再生手続の開始決定後は,被告法人の財務及び経理は被告人C及び同Dに任せていた,本件再生手続に関 ,その供述の信用性を減殺しない。 (3) 被告人Bの関与についてなお,被告人Bは,本件再生手続の開始決定後は,被告法人の財務及び経理は被告人C及び同Dに任せていた,本件再生手続に関する書類の作成には関与しておらず,J社口座からM社名義の預金口座等への送金については,被告人Cや同DからG弁護士らや再生裁判所に対して報告されていると思っていたなどと供述する。 しかし,既に述べたとおり,信用できるG弁護士,Q及びcの供述等の関係証拠によれば,被告人Bが,被告法人の財務及び経理面を含め,業務全般につき実質的経営者として最終的な決定権限を有していたことは明らかであり,本件再生手続においてG弁護士らが作成,提出する主な書面の内容も把握,理解していたと認められる。また,被告人Bは,前記(1)エの各メモの記載をしているほか,本件が刑事事件として発覚する前の段階でG弁護士とした会話におい - 15 -ても,本件再生申立て当時から,本件各送金やその後のJ社口座からM社名義の預金口座及びN社名義の預金口座への金の流れについても十分理解していたことをうかがわせる発言をしていた(乙64,65)。これらの事実や証拠に反する被告人Bの上記供述は信用できない。 3 小括(1) 前記1及び2に認定したところによれば,次のとおり認めることができる。 すなわち,ア被告人Bは,債権者の追及を回避しつつ,被告法人の財産や収益を自己の自由にできるようにするため,被告法人とは別個独立の広告会社であるJ社に対する広告宣伝費の名目で,実際には預金通帳や印鑑の提供を受けて入出金が自在にできるJ社口座に被告法人の資金を移転させることとした。そして,その旨被告人C及び同Dと相通じた上,被告人Dないしその指示を受けた従業員らにおいて,実際に 預金通帳や印鑑の提供を受けて入出金が自在にできるJ社口座に被告法人の資金を移転させることとした。そして,その旨被告人C及び同Dと相通じた上,被告人Dないしその指示を受けた従業員らにおいて,実際に要する広告宣伝費とは無関係に本件各送金を反復累行して被告法人の資金をJ社口座に移し,その送金額に見合うJ社名義の架空請求書をQに作成させるなどすることにより,あたかもその全てが被告法人の広告宣伝の対価としてのJ社への支払であるかのように仮装したものである。 イそして,その一方で,被告法人について本件再生申立てをし,法的整理の枠組みでの再生を求めながら,申立代理人に対し,上記スキームの露見を防ぎ,あたかも再生に向けた事業活動であるかのように装うため,本件再生申立て当時の被告法人における広告宣伝費の支出実績額及び予定額がいずれも月額1000万ないし1100万円程度であったにもかかわらず,月額平均約2236万円の広告宣伝費支出があったかのように実績資金繰表に記載し,資金繰予定表には広告宣伝費を月額2200万円と記載するなどして,これを前提とした本件再生申立てや再生計画案の策定をさせるなどして,申立代理人,再生債権者,再生裁判所等,本件再生手続に関与する者の目を欺いたものである。 なお,被告人3名の各弁護人は,本件再生申立書類に含まれる実績資金繰表中の広告宣伝費の額を月額平均約2200万円などとしたのは,被告法人の会計処理では「広告宣伝費」として処理されなかった費用の一部を,上記各表に - 16 -合わせるために同科目に入れ込んだからで,虚偽を記載したものではない旨主張する。 しかし,本件再生申立て当時の被告法人における広告宣伝費の支出実績額及び予定額がいずれも月額1000万ないし1100万円程度であったこと,同時期に,被告 を記載したものではない旨主張する。 しかし,本件再生申立て当時の被告法人における広告宣伝費の支出実績額及び予定額がいずれも月額1000万ないし1100万円程度であったこと,同時期に,被告人Bにおいて,Qに対し,被告法人からJ社に送金する金額を実際の広告宣伝費よりも膨らませ,広告宣伝費以外の様々な支払に充てるなどと述べていたこと,被告人B及び同Cは,上記各表の作成に際し,G弁護士に対し,広告宣伝費として売上の三,四割を使う必要がある旨述べて広告宣伝費の削減に反対していたことなど,前示した証拠ないし事実のほか,上記各表の営業収支欄中の支出欄には「その他」欄が設けられており,弁護人のいうような費目の処理を広告宣伝費で行う必然性がないことに照らし,上記主張は採用できない。 (2) このように被告人3名が行った本件各送金は,被告法人の資金をJ社口座に移動させて,まさに被告人3名が自由に使うことができる裏金としたものにほかならないのであり,再生債務者である被告法人の財産の帰属関係の判別を不明にして,同財産の発見を困難にさせていることは明らかであるから,これが民事再生法255条1項1号にいう「隠匿」に当たることは明白である。 また,本件各送金は,被告法人の財産を裏金化して私物化するために行われているところ,それは自己の利益を図る動機に出たものというべきであるが,表裏の関係として当然に総債権者の引き当てとなる再生債務者の財産を減少させ,その権利の実現を困難とさせることになるから,そのような積極的な意図の併存も意味することは自明である。よって,これが同項にいう「債権者を害する目的」に当たることも明らかである。 (3) そして,前記(1)のとおり,そのスキームは,被告人Bにより,被告法人の本件再生申立ての準備が進められている時点か て,これが同項にいう「債権者を害する目的」に当たることも明らかである。 (3) そして,前記(1)のとおり,そのスキームは,被告人Bにより,被告法人の本件再生申立ての準備が進められている時点から,被告人C及び同DやQに告げられ,被告人3名は,申立代理人であるG弁護士に対しても,広告宣伝費の実際と予想等について虚偽の説明をして再生手続開始申立書や再生計画案にそれを反映させていたことなどからすれば,本件再生申立て当時から,実際に - 17 -必要な広告宣伝費よりも水増しした金額を反復継続して被告法人口座等からJ社口座に送金することを計画していたことが明らかである。後述のとおり,本件各送金のうち,後のものには,被告法人の業績改善により,脱税のための架空経費計上の意味合いを帯びてくるものもあり,送金額の増加とともに,広告宣伝費としての説明が難しくなって業務委託費に名目を変じた時期もあるが,そのような目的や名目の変化があっても,依然再生手続が係属中で,被告法人の財産の裏金化という意図及び実態において一貫しているのであるから,本件再生手続終結までの間に敢行された本件各送金は,いずれも債権者を害する目的に出た隠匿行為というのに妨げない。 4 弁護人の主張について(1) 被告人3名の各弁護人は,本件各送金に係る金員は,全て被告法人のための広告宣伝費その他の必要な経費として費消されたから,「債権者を害する目的」は認められず,「隠匿」にも当たらないと主張するが,本件各送金の中には広告宣伝費を含む被告法人の経費に費消された部分がそれなりにあるとしても,およそそのようには認められない被告人3名の私的用途に費消された部分も少なくなく,被告人3名は,そのように自由に使うことができる裏金を作るため,本件各送金を反復累行したものであることは既に説 ても,およそそのようには認められない被告人3名の私的用途に費消された部分も少なくなく,被告人3名は,そのように自由に使うことができる裏金を作るため,本件各送金を反復累行したものであることは既に説示したとおりである。 したがって,その主張は前提を欠いており,それぞれの送金がそれ自体において前述したような「債権者を害する目的」を帯びていたことに疑いはない。 また,被告法人並びに被告人C及び同Dの各弁護人は,仮に,経費として用いられていない水増し部分があったとしても,その部分の支出のみ「隠匿」に当たると解すべきであるとも主張する。 しかし,「債権者を害する目的」を帯びた1個の送金行為の一部について,費用に充てられた部分に限り「隠匿」該当性を否定すべき理由は一般的に見いだし難い上,本件の事実関係に即して検討しても,本件各送金を構成するそれぞれの送金は,そのうちのどの分が広告宣伝費その他の被告法人の経営に必要な経費に充てる金額かが各送金の時点で特定されていたものでもなく,事後的にも,実態と異なる架空の請求書が作成され,再生裁判所や監督委員に対して - 18 -も虚偽の説明がされていたことに照らすと,それぞれの送金額全額につき,債権者による財産の発見を事実上困難にさせたものとして「隠匿」に当たる実態があるといえる。そもそも,J社口座に送金された中から,実際に被告法人の広告宣伝費その他の経費として支出された金員があったとしても,それは裏金の処分という犯行後の事情であって,本件詐欺再生罪の成否に影響しない。 (2) また,各弁護人は,①仮に,検察官の主張どおりの事実が認定されたとしても,本件各送金は財産の仮装譲渡に当たり,民事再生法255条1項1号の「隠匿」には当たらない,②本件再生手続において,送金先,送金金額及び送金日 ,①仮に,検察官の主張どおりの事実が認定されたとしても,本件各送金は財産の仮装譲渡に当たり,民事再生法255条1項1号の「隠匿」には当たらない,②本件再生手続において,送金先,送金金額及び送金日が正確に再生裁判所に報告されていたから「隠匿」に当たらない(以上,被告人B関係),③「隠匿」とは既存の資産の隠匿と解すべきである(被告法人関係),④民事再生法255条1項の保護法益は「総債権者の財産的利益」であるところ,本件再生手続の確定再生債権総額は約9億7400万円であるから,これを超える「総債権者の財産的利益」はなく,上記金額を超える分は「隠匿」に当たらない(被告人C,同D関係),あるいは,再生計画認可決定確定により,債権者の権利は民事再生計画に定められた内容に縮減し,再生債務者は再生計画に従いこの縮減後の債権に対する弁済をすれば足りるところ,再生計画に基づく各弁済が行われる直前において,被告法人に当該弁済に必要な額をはるかに上回る現預金が確保されていたから,同確定後である別表(掲載省略)番号6以降の送金については,「債権者を害する目的」実現の可能性を欠いている(被告人B関係)などとも主張する。 しかし,①については,「債務者の財産の譲渡・・・を仮装する行為」(同法255条1項2号)とは,真実は財産譲渡の事実が存在しないのに譲渡が行われたように装う行為をいうものと解されるところ,本件では,本件各送金により被告法人の財産が被告人3名の自由にできる裏金としてJ社口座に実質的にも移転しているのであるから,仮装譲渡には当たらず,前記のとおり,被告法人の財産の発見を困難にしたものとして「隠匿」に当たるというべきである。 ②については,本件各送金の送金先,送金金額及び送金日が報告されていたとしても,被告法人とは別会社のJ社口座へ送金 告法人の財産の発見を困難にしたものとして「隠匿」に当たるというべきである。 ②については,本件各送金の送金先,送金金額及び送金日が報告されていたとしても,被告法人とは別会社のJ社口座へ送金されれば,そうでない場合に - 19 -比して発見・回収は法律上も事実上も困難になるのであるから,「隠匿」に当たることに変わりはない。 ③については,「債務者の財産」とは,再生債務者が有する一切の財産をいい(同法12条1項1号かっこ書き参照),再生手続開始後に再生債務者が取得した財産も含まれるのであり,これを破産手続のように手続開始時に存在した財産に限定すべき理由は何ら見当たらないから,失当である。 ④については,本件隠匿行為は,その隠匿額につき,そのまま再生債権者らへの支払を不能にしたり免れさせたりするなどして,その金額相当の財産的利益の侵害を再生債権者らに与えたという関係に立つものではない。しかし,民事再生法は,経済的に窮境にある債務者について,その債権者の多数の同意を得,かつ,裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により,当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し,もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする(同法1条)法的整理手続であり,債権者の法定多数の同意を条件とするとはいえ,本来その本旨に従って実現されるべき債権者の権利について,その全部又は一部の免除,弁済の猶予や分割を強いるなど,不同意の債権者も含めて,大きな犠牲を強いることが予定される手続であるから,その手続の結果においても,手続自体においても,適正かつ公正でなければならならないことはいうまでもない。本罪の保護法益は,そのような手続の適正・公正の担保にこそ本質があるというべきである。 民事再生手続においては も,手続自体においても,適正かつ公正でなければならならないことはいうまでもない。本罪の保護法益は,そのような手続の適正・公正の担保にこそ本質があるというべきである。 民事再生手続においては,再生債務者に業務遂行権や財産管理・処分権がそのまま残されるが,債権者に対し,公平かつ誠実にこれを行使し,再生手続を追行する義務が課される(同法38条2項,1項)。そしてこれに著しく反する一定の場合には,再生計画認可決定が確定した後であっても,再生計画取消事由(同法189条1項各号)として再生計画が取り消され,それにより再生計画によって変更された再生債権が原状に復する(同条7項)可能性もある。 これらに鑑みると,総債権者の再生債権全体の本旨弁済(ないしはこれと法的に等価となる残元本及び賠償義務の弁済・履行を含む)が即時可能な状態が確保され,それを害しないという特段の事情がある場合を除き,自己らの用途等 - 20 -に費消する目的で,債務者の財産を裏金化するような行為が許されるものではないことは自明というべきである。再生手続の適正・公正をゆがめ,損なう性質を有する債務者財産の隠匿行為は,その全体が詐欺再生罪を構成すると理解すべきものであって,本件再生手続における再生債権総額の範囲を超えた部分については詐欺再生罪が成立しないとか,再生計画認可決定確定により縮減された債権額の履行が確保されたり,再生計画に基づく各弁済の実現が危うくなったりするようなものでなければ,「債権者を害する目的」の実現の可能性がないとして同目的が否定されるなどという各所論は,その前提において採用できない。なお,被告法人において,本件再生手続係属中に,再生債権総額(再生計画によって変更される前のもの。ただし進行とともに弁済された分を除く。)を上回る現預金が確保されていたと 前提において採用できない。なお,被告法人において,本件再生手続係属中に,再生債権総額(再生計画によって変更される前のもの。ただし進行とともに弁済された分を除く。)を上回る現預金が確保されていたという事情は,認められない。 その他,各弁護人は本件各送金行為が「隠匿」に当たることを種々争うが,いずれも以上に認定説示したところと異なる前提に立つ立論であり,採用できない。 5 結論以上によれば,被告人3名は,共謀の上,債権者を害する目的で本件各送金を行い,被告法人の財産を隠匿したものと認められ,詐欺再生罪の共同正犯が成立し,被告法人も両罰規定により同罪で処罰されることとなる。 第3 法人税法違反について 1 当裁判所の認定関係証拠によれば,被告人3名は,被告法人の平成24年6月期の法人税確定申告に当たり,被告人Bの指示に基づき,被告人Dにおいて被告法人とJ社との間の内容虚偽の広告取引基本契約書を作成するとともに,Qに内容虚偽の架空の請求書を作成させるなどして,J社に対する架空の広告宣伝費を計上するなどして,判示第2の1のとおりの虚偽過少の法人税確定申告書を提出したこと,被告法人の平成25年6月期の法人税確定申告に当たっても,被告人Bの指示に基づき,Q及び関連会社の一部の関与税理士であるkに内容虚偽の業務委託基本契約書及び請求書を作成させるなどして,J社に対する架空の業務 - 21 -委託費を計上するなどして,判示第2の2のとおりの虚偽過少の法人税確定申告書を提出したことが疑いなく認められ,各事業年度の被告法人の所得及び税額の算定についても,取調べ済みの証拠から,判示のとおり,各訴因変更後の公訴事実どおりに認めることができる。 2 各弁護人の主張について(1) 被告人Bの弁護人は,判示第 人の所得及び税額の算定についても,取調べ済みの証拠から,判示のとおり,各訴因変更後の公訴事実どおりに認めることができる。 2 各弁護人の主張について(1) 被告人Bの弁護人は,判示第2の各事実について,被告人C及び同Dに対して脱税を指示したことはないと主張し,被告人Bも同旨の供述をする。 しかし,前記第2で認定した民事再生法違反における主導的関与の事実に加え,脱税の点についても,被告人Bは,考案中の脱税スキームを自らメモしたり(乙43末尾添付),脱税コンサルタントというべき人物から脱税スキームの説明を受ける(乙55,83)などして脱税スキームを熟知した上で,被告法人名義の預金口座からJ社口座やO社名義の預金口座を介してM社名義の預金口座及びN社名義の預金口座への送金,更には同各預金口座から海外のペーパーカンパニー名義の各預金口座への送金を主導していたことは明らかである。 よって,弁護人の主張は採用できない。 (2) 被告法人並びに被告人C及び同Dの各弁護人は,被告法人と関連会社及び被告人Dの納税状況を一体として捉えるべきであり,そうすると,実質的なほ脱税額は極めて少ないから,国家徴税権の侵害があるとはいえないと主張する(被告人Bの弁護人も,重要な情状事実として主張)。 しかし,被告法人及び関連会社が,いずれも被告人Bによって支配され実質的に経営されていたとしても,あくまで別法人であり,連結納税の適用もなく,また,被告法人の法人税と被告人Dの所得税を一体として捉える税法上の規定も存しない以上,被告法人のほ脱税額の算定に当たり,関連会社の法人税及び被告人Dの所得税の各申告,納付状況を考慮すべき理由は何ら存在しないというべきである。よって,各弁護人の主張は理由がなく,公訴権濫用ないし憲法違反をいう被告法人の 算定に当たり,関連会社の法人税及び被告人Dの所得税の各申告,納付状況を考慮すべき理由は何ら存在しないというべきである。よって,各弁護人の主張は理由がなく,公訴権濫用ないし憲法違反をいう被告法人の弁護人の主張も前提を欠いており採用できない。 (3) また,被告人C及び同Dの弁護人は,検察官が経費認容した範囲には不足があり,Qの給与,lの顧問報酬,mの税理士報酬,被告人B及び同Cの給与等 - 22 -は,被告法人の経費として認容されるべきであると主張する。 しかし,前記(2)のとおり別法人において支払われた費用が直ちに被告法人の経費となるものではない。検察官が別法人名義で支出されたもののうち被告法人の経費として認容したものがあるのは,あくまで被告法人のために支出されたことが否定できない根拠のある部分について,疑わしきは被告人の有利にとの原則に則り,その限度で経費として認容したというものであると解される。 これに対し,Qについては,被告法人がQに対し給与等を支払っていた事実も,そのような経理処理をしていた事実もない(J社から役員報酬が支払われるという経理処理になっていたようであるが,実際はJ社からも支払われていない。)から,被告法人の経費として認容する余地はない。また,被告人B及び同Cについては,被告法人の資金を個人的用途に流用していた事実が認められるが,被告法人との間に報酬を支払う旨の合意の存在は認められず,その旨の経理処理もされていないから,やはり経費として認容する根拠に欠ける。さらに,l及びmに対する報酬についても,同様の理由が当てはまる。これらも経費として認容されるべきであるとする弁護人の主張は失当であり,各事業年度の被告法人の所得算出の基礎となる経費科目につき,他に検察官提出証拠と異なる認定をすべき証拠はない。 由が当てはまる。これらも経費として認容されるべきであるとする弁護人の主張は失当であり,各事業年度の被告法人の所得算出の基礎となる経費科目につき,他に検察官提出証拠と異なる認定をすべき証拠はない。 第4 結語以上の次第で,被告法人及び被告人3名について,判示各事実を認定した。 【量刑の理由】 1 本件は,診療所を経営する被告法人の実質的経営者である被告人B並びにその部下である被告人C及び同Dが共謀の上,被告法人に対する民事再生手続開始決定確定後に,債権者を害する目的で,被告法人口座等から被告人Bらが管理する別会社名義の預金口座(J社口座)に合計8億9584万円余りを振込入金して隠匿したという民事再生法違反のほか,いずれも虚偽過少申告により被告法人の平成24年6月期及び平成25年6月期の各法人税合計6281万円余りを免れたという法人税法違反2件から成る。 2 民事再生法違反についてみると,対立する債権者に被告法人の経営権を奪わ - 23 -れることに危機感を抱いた被告人Bが,同C及び同Dと相図って民事再生手続を悪用し,債権者の追及をかわしつつ被告法人の経営の実権を握り続けるとともに,裏金として自己らが自由に使える資金を確保することを計画し,民事再生手続係属中の2年10か月余りの間に55回にもわたって,実際額と関係なく大幅に水増しした広告宣伝費の名目で,1回あたり少ないときで1000万円,多いときには3675万円にも及ぶ多額の資金を,被告法人口座等からJ社口座に送金して前記のように合計で9億円近い巨額の財産を隠匿した。容易に類を見ない大規模な倒産犯罪といえる上,被告人3名は,J社口座に移した資金を更に関連会社の預金口座に移し替えたり,Qを巻き込んで,J社名義で送金額に見合う架空の請求書を作成させたり,一部は実際の広 に類を見ない大規模な倒産犯罪といえる上,被告人3名は,J社口座に移した資金を更に関連会社の預金口座に移し替えたり,Qを巻き込んで,J社名義で送金額に見合う架空の請求書を作成させたり,一部は実際の広告宣伝費の支払に充てたりするなど,犯行が露見するのを防ぐための様々な方策を講じながら,長期間にわたり送金を反復継続したものであって,その手口の巧妙さ,計画性の高さも際立っている。そして,本件犯行は,債権者の犠牲と理解の下に成り立つ民事再生手続の趣旨を私利私欲のために踏みにじり,適正かつ公正であるはずの司法手続の信用を大きく損なった点でも強い非難に値する。 なお,各弁護人の主張に鑑み,犯情について何点か付言すると,被告人Bの支配するL社が被告法人に対する再生債権中4分の3近くを占めるため,本件の再生詐欺にかかる実際の被害額は公訴事実記載の本件隠匿金額よりも大幅に少なくなるのではないかという見方については,L社には利害関係者もおり決して被告人Bの私物ではないし,また,本件再生手続において当該債権を放棄してもいないのであるから,そのような見方は当たらず,本件の悪質性を低減させる事情とはいえない。また,本件で隠匿された財産の一部には被告法人の事業資金に充てられたものもあるが,これは裏金として簿外化した資金の処分に帰着し,民事再生手続を軽視し悪用したという評価をいささかも変えるものではない。さらに,本件再生手続では,可決・認可された再生計画が完遂されて被告法人の一般再生債権者への弁済率は18%を超えており,倒産処理としては分の悪くない事案とみることが可能かもしれない。しかし,隠匿の企図などない誠実な対応と再生計画の策定がされたなら,より高率の弁済がされた - 24 -はずであるから,この点も被告人らに有利に考慮することはできない。 能かもしれない。しかし,隠匿の企図などない誠実な対応と再生計画の策定がされたなら,より高率の弁済がされた - 24 -はずであるから,この点も被告人らに有利に考慮することはできない。 3 次に,法人税法違反についてみると,本件は,ほ脱所得が2期合計2億3213万8818円,ほ脱税額が2期合計6281万5700円,ほ脱率はいずれも99%と非常に高率であって,国家の徴税権を侵害した程度は高く,悪質である。被告人らは,J社に被告法人の広告宣伝費等の架空,水増しした経費を計上して,その所得を秘匿しただけでなく,振込入金先において売上として課税されることをも免れるため,業務委託費などの名目で自己が支配する複数の会社を順次経由させて国税当局の調査権が及ばない海外法人にまで移転させ,脱税と裏金の確保を図ったもので,正常な取引を装うための架空の契約書や請求書等の証票類を多数作成したり,外国語の長文の契約書を作成したりするなど周到な隠蔽工作を行っており,大がかりで計画的な脱税として,強い法的非難に値する。 なお,被告法人が納付すべき法人税等の相当部分が関係法人を通じて納税されていたという各弁護人の主張が当たらないことは,前記争点に対する判断で述べたとおりである。 4 個別の情状(1) 被告人Bについて被告人Bは,被告法人及び関連会社の実質的経営者として強大な権力を握り,本件各犯行の最終意思決定権者かつ首謀者であった。また,本件各犯行により形成された巨額の裏金の使途を自由に決定し,私的用途も含めて思いのまま費消した最大の利益帰属主体であって,本件各犯行への関与の程度は,被告人3名中最も大きい。 被告人Bの弁護人は,被告人Bは同Cを深く信頼して被告法人の財務・経理・税務に関する判断を全て委ねていたのであり,被告人Cに 主体であって,本件各犯行への関与の程度は,被告人3名中最も大きい。 被告人Bの弁護人は,被告人Bは同Cを深く信頼して被告法人の財務・経理・税務に関する判断を全て委ねていたのであり,被告人Cにおいて経費支出が不適当であることや脱税と認定されるおそれについて被告人Bへの注意喚起を怠ったことに本件の原因がある等と主張する。しかし,争点に対する判断において検討してきたとおり,被告人Bは,被告法人及び関連会社の支配者として,自ら海外送金先を見繕うなどして被告法人の資金の簿外化と脱税のスキーム - 25 -を構築したり,関連会社各社に流した資金の使途先を決定するなど,終始積極的に関与していたのだから,上記弁護人の主張は当たらない。 加えて,被告人Bは当公判廷において反省の弁を述べてはいるものの,なおも不合理な弁解に終始しており,真摯な反省は見られない。そうすると,被告人Bには特筆すべき前科がないこと,報道等により相当の社会的制裁を受けていること等の有利に酌み得る事情を最大限に考慮しても,その刑事責任は重く,主文記載のとおりの実刑を科すのが相当である。 (2) 被告人Cについて被告人Cは,被告法人のナンバー2として,本件各犯行により形成された裏金から,被告人Bに次いで多くの利益の分配を受け,費消した。被告人Cは,民事再生法違反では,被告人Bの裏金作りの企てを察しながら,J社を紹介して被告人BとQとの関係を取り持ち,本件再生手続の申立代理人となった弁護士や再生債権者が広告宣伝費への疑いの目を向けた際には,被告人Bと一緒になって水増しが露見しないように同弁護士を言いくるめるなど,重要な役割を果たした。また,法人税法違反では,民事再生開始の翌期に早くも繰越欠損金がなくなり,被告法人において多額の法人税を納めなければならないことが が露見しないように同弁護士を言いくるめるなど,重要な役割を果たした。また,法人税法違反では,民事再生開始の翌期に早くも繰越欠損金がなくなり,被告法人において多額の法人税を納めなければならないことが分かるや,納税しなくて済むようにせよという被告人Bの依頼を受けて,Q等と共に架空の業務委託契約書や請求書等の証票類を作成し,それに基づいて関与税理士として確定申告を行ったり,被告人Bの構想を基にして,発覚防止のためスキームの細目を調整したりするなど,被告法人の脱税に関し,主体的かつ相当の裁量をもって関与し,必要不可欠な役割を果たしている。このように,被告人Cは本件各犯行において,決してその遂行上従属的立場にとどまったわけではない。そして,被告人Cは,税理士として納税義務の適正な実現に尽力すべき職責を負い,脱税に関与すること自体が職業倫理に反し,特に強い非難に値するところ,平成17年6月に所得税法違反の罪で懲役1年(3年間執行猶予)及び罰金1800万円に処せられ,一時廃業せざるを得なくなるなどして厳しく戒められたはずであるにもかかわらず,本件各脱税の犯行にも及んでおり,規範意識は甚だしく鈍麻しているといわざるを得ない。 - 26 -そうすると,被告人Cが本件各犯行当時,基本的には被告人Bに使われる立場にあり,得た利益も同人に比べれば格段に少ないと推認される(争点に対する判断第2の1(4))ことを踏まえても,その刑事責任はかなり重いといわざるを得ないのであって,当初から本件各犯行に関する基本的事実関係は認めて捜査に協力してきたこと,生活の面倒を見なければならない家族がいること等,被告人Cに有利な事情を十二分に斟酌しても,主文記載の実刑を免れない。 (3) 被告人Dについて被告人Dは,銀行員であった経験を生かして被告法人及び関 を見なければならない家族がいること等,被告人Cに有利な事情を十二分に斟酌しても,主文記載の実刑を免れない。 (3) 被告人Dについて被告人Dは,銀行員であった経験を生かして被告法人及び関連会社の資金の管理を一手に引き受けて行っており,被告人B,同Cに次ぐナンバー3の立場にあった。被告人Dは,本件各犯行において被告人Bの意向を十分に理解した上で,実働部隊として,本件再生手続を同被告人が期待するように進行させるため,前記申立代理人弁護士と連絡を取り合って事務を進めさせたり,当時被告法人及び関連会社の金庫番であったcに入出金の指示や金銭管理についての監督をしたり,Qに未発行の請求書を催促したりするなど,本件各犯行に綻びが生じないよう事務処理面で確実な実行とその確認を期す立場にあったのであって,本件各犯行の遂行にあたって非常に重要な役割を果たしていたといえる。 一方,被告人Dは,本件各犯行につき,被告人Bの意向や指示に従って行動していたという面が強く,同被告人に対する従属性は被告人Cよりも顕著である。被告人Dは同Bに無断で裏金からの利得を図ったことがあるが,そのことを踏まえても,分配ないし費消の程度はトータルでは被告人3名の中で最も少ないのであり,上記評価は変わらない。そうすると,これらの点も踏まえた行為相応の責任は免れないが,被告人Dに前科前歴がないこと,妻が当公判廷において今後の監督を誓約したこと,扶養すべき家族がいること等被告人Dに有利な一般情状を斟酌すれば,主文の刑により刑責を明らかにした上,今回に限り,社会内における更生の機会を与えることが相当であるとの結論に至った。 (4) 被告法人について本件各犯行は,被告法人の実質的経営者らにより,その業務及び財産に関し - 27 -て敢行されたものであるから 機会を与えることが相当であるとの結論に至った。 (4) 被告法人について本件各犯行は,被告法人の実質的経営者らにより,その業務及び財産に関し - 27 -て敢行されたものであるから,被告法人も相応の処罰を免れないのであり,主文掲記の罰金を相当と認めた。 (求刑:被告法人につき罰金2500万円,被告人Bにつき懲役6年,被告人Cにつき懲役3年6月,被告人Dにつき懲役2年6月)平成29年3月30日東京地方裁判所刑事第8部 裁判長裁判官前田巌 裁判官寺尾亮 裁判官岸田朋美

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