令和7年(わ)第35号、同第67号、同第99号詐欺被告事件令和7年8月25日宮崎地方裁判所刑事部宣告 主文 被告人Aを懲役2年8月に、被告人Bを懲役2年6月に、被告人Cを懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から、被告人Bに対し3年間、被告人Cに対し4年間、それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人Aは、宮崎県公安委員会から、合同会社D(以下、単に「D」という。)の代表者として自動車運転代行業の認定を受けていたもの、被告人Cは、ホテルの経営等を目的とする株式会社Eの取締役として、同社の業務全般を統括していたものであるが、第1(令和7年3月17日付け起訴状記載の公訴事実第1)被告人3名は、公益財団法人F協会(以下、単に「F協会」という。)が所管するGキャンペーン事業(以下「本件キャンペーン事業」という。)において、同事業に参画する宿泊施設に給付されていた宿泊助成金の申請名目で、F協会から宿泊助成金の給付業務等について業務委託を受けていたH組合(以下、単に「組合」という。)から金銭をだまし取ろうと考え、共謀の上、真実は、令和4年3月14日から同月19日の間に、被告人Cが経営する宮崎市(住所省略)ホテルI及び同市(住所省略)ホテルJに被告人A及び被告人Bが宿泊した事実はなく、宿泊助成金相当額を割り引いた宿泊代金を支払った事実もないのに、これらがあるように装い、被告人Cが、上記期間中に、被告人A及び被告人BがホテルI及びホテルJに宿泊し、宿泊助成金相当額である合計29万4000円を割り引いた宿泊代金を支払った旨虚偽の内容を記載したGキャンペーン事業補助金交付請求書等を作成し、同年4月5日、宮崎市(住所省略)組合事務所において、上記請 泊助成金相当額である合計29万4000円を割り引いた宿泊代金を支払った旨虚偽の内容を記載したGキャンペーン事業補助金交付請求書等を作成し、同年4月5日、宮崎市(住所省略)組合事務所において、上記請求書等を提出して宿泊 助成金の給付の申請を行い、同月14日頃、組合職員Kに、上記宿泊助成金の申請が支払要件を満たす正当なものである旨誤信させ、上記宿泊助成金の支払を決定させ、よって、同月18日及び同月20日、2回にわたり、株式会社L銀行M支店に開設された株式会社E名義の普通預金口座に被告人A及び被告人Bの虚偽の宿泊に係る宿泊助成金相当額である合計29万4000円を含む合計34万1300円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。 第2(訂正後の令和7年5月9日付け起訴状記載の公訴事実)被告人Aは、F協会が所管する本件キャンペーン事業において、同事業に参画する宿泊施設の宿泊客に配布されていたGクーポン(以下、単に「クーポン」という。)の換金の申請名目で、クーポンの管理業務等についてF協会から業務委託を受けていた株式会社NM支店・株式会社OM支店・P株式会社共同事業体(通称Gクーポン事務局。以下「本件事務局」という。)から金銭をだまし取ろうと考え、真実は、被告人AがDの利用客からその役務の提供に対する支払として受け取ったクーポンではないのに、そうであるかのように装い、別表1(省略)記載のとおり、令和4年3月22日から同年6月15日までの間に、6回にわたり、本件事務局からクーポンの荷受業務等について業務委託を受けていた宮崎市(住所省略)Q株式会社R郵便局に対し、被告人Aが入手したクーポン合計5070枚を、登録店舗名欄に「合同会社D」、代表者名欄に「代表社員A」等と刻したスタンプを押印し、換金枚数欄に「407」枚等と記入した各Gク 株式会社R郵便局に対し、被告人Aが入手したクーポン合計5070枚を、登録店舗名欄に「合同会社D」、代表者名欄に「代表社員A」等と刻したスタンプを押印し、換金枚数欄に「407」枚等と記入した各Gクーポン換金依頼書と共に郵送により提出してその換金を各申請し、同年3月28日から同年6月20日までの間に、R郵便局からクーポンの集計業務等について業務委託を受けていた株式会社S従業員Tらに上記クーポン5070枚の精算データ等を本件事務局事業統括責任者Uにメールで送信させ、その頃、Uに、上記クーポン5070枚の換金の申請が支払要件を満たす正当なものであると誤信させ、Dに対する上記クーポン5070枚の換金代金507万円の支払を決定させ、よって、同年4月21日から同年6月22日までの間に、6回にわたり、本件事務局から業務委託を受けた株式会社V銀行W公務 部の担当者に、X信用金庫Y支店に開設されたD名義の普通預金口座に合計507万円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。 第3(訴因変更後の令和7年3月17日付け起訴状記載の公訴事実第2)被告人A及び被告人Bは、F協会が所管する本件キャンペーン事業において、同事業に参画する宿泊施設の宿泊客に配布されていたクーポンの換金の申請名目で、クーポンの管理業務等についてF協会から業務委託を受けていた本件事務局から金銭をだまし取ろうと考え、共謀の上、真実は、被告人AがDの利用客からその役務の提供に対する支払として受け取ったクーポンではないのに、そうであるかのように装い、令和4年5月29日及び同月31日、2回にわたり、被告人Aが、本件事務局からクーポンの荷受業務等について業務委託を受けていた前記第2のR郵便局に対し、被告人A及び被告人Bが入手したクーポン合計3000枚を、登録店舗名欄に「合同会社 2回にわたり、被告人Aが、本件事務局からクーポンの荷受業務等について業務委託を受けていた前記第2のR郵便局に対し、被告人A及び被告人Bが入手したクーポン合計3000枚を、登録店舗名欄に「合同会社D」、代表者名欄に「代表社員A」等と刻したスタンプを押印し、換金枚数欄に「1500」枚等と記入した各Gクーポン換金依頼書と共に郵送により提出してその換金を各申請し、同年6月6日、R郵便局からクーポンの集計業務等について業務委託を受けていた株式会社S従業員T及びZに上記クーポン3000枚の精算データ等を本件事務局事業統括責任者Uにメールで送信させ、その頃、Uに、上記クーポン3000枚の換金の申請が支払要件を満たす正当なものであると誤信させ、Dに対する上記クーポン3000枚の換金代金300万円の支払を決定させ、よって、同月9日、本件事務局から業務委託を受けた株式会社V銀行W公務部の担当者に、前記第2のD名義の普通預金口座に300万円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。 第4(令和7年6月25日付け起訴状記載の公訴事実)被告人3名は、F協会が所管する本件キャンペーン事業において、同事業に参画する宿泊施設に給付されていた宿泊助成金の申請名目で、F協会から宿泊助成金の給付業務等について業務委託を受けていた甲株式会社から更に業務委託を受けていた乙株式会社から金銭をだまし取ろうと考え、共謀の上、被告人Cが、別表2(省 略)記載のとおり、令和4年4月4日から同年5月31日までの間に、139回にわたり、前記第1のホテルIにおいて、インターネットに接続されたパーソナルコンピュータを使用し、乙株式会社が運用する宿泊予約情報管理アプリケーションソフト「丙」に接続し、真実は、被告人A及び被告人BがホテルI及びホテルJに宿泊した事実はなく、宿泊 に接続されたパーソナルコンピュータを使用し、乙株式会社が運用する宿泊予約情報管理アプリケーションソフト「丙」に接続し、真実は、被告人A及び被告人BがホテルI及びホテルJに宿泊した事実はなく、宿泊助成金相当額を割り引いた宿泊代金を支払った事実もないのに、これらがあるように装い、被告人A及び被告人Bが各所に宿泊し、宿泊助成金相当額である合計712万円を割り引いた宿泊代金を支払った旨の内容虚偽の電子情報を乙株式会社に送信して上記宿泊助成金の給付申請を行い、その頃、同社マネージャー丁に、上記給付申請が正当な宿泊助成金の給付申請である旨誤信させ、別表2(省略)振込金額欄記載の宿泊助成金の給付を決定させ、よって、同年5月16日から同年6月15日までの間に、4回にわたり、前記第1の株式会社E名義の普通預金口座に被告人A及び被告人Bの虚偽の宿泊に係る宿泊助成金相当額401万3808円を含む合計498万8895円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の理由) 1 本件は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により売上げが落ち込んだ観光業界への支援策として宮崎県において実施されたGキャンペーン事業を悪用し、①被告人A及び被告人Bが、被告人Cの経営するホテルに宿泊をして割引後の宿泊代金を支払ったように装って、被告人Cが、宿泊助成金の申請を行ってこれをだまし取り(判示第1、第4)、②同キャンペーンにおいて宿泊客に交付されていたクーポンを、被告人Aが経営する運転代行業の会社がその役務の提供に対する支払として受け取ったクーポンであるように装って、換金の申請を行い、換金代金 をだまし取った(判示第2、第3)という事案である。被害額は、被告人3名の共同正犯である①の宿泊助成金の 提供に対する支払として受け取ったクーポンであるように装って、換金の申請を行い、換金代金 をだまし取った(判示第2、第3)という事案である。被害額は、被告人3名の共同正犯である①の宿泊助成金の詐欺が合計430万円余り、②のクーポン換金代金の詐欺が、被告人A及び同Bの共同正犯の分で300万円、被告人Aの単独犯の分で507万円と相当高額であるし、事業の趣旨から簡易迅速に助成金やクーポン換金代金の支給を行っていたことにつけ込んだ面もあり、悪質である。 2 被告人Aは、①の犯行において、被告人Cが経営するホテルに架空の宿泊予約を多数回にわたって行うという、犯行の実現に不可欠な役割を果たし、一定の手数料を支払うのみで多数のクーポンを得るという利益を享受するとともに、営業実態のなかった運転代行業の会社を利用して、これら多数のクーポンを不正に換金するという②の犯行を行った。被告人Aは、①の犯行では、だまし取った宿泊助成金自体からは利益を得ていないが、②の犯行は、単独で行うのみならず、被告人Bを誘い入れて犯行を主導し、こうしたクーポンの換金行為により相当の利益を得ていた。被告人Aは、違法であると考えずに犯行を繰り返していたというが、こうしたクーポンの換金行為が正規のものでないことは当然分かっていたのであるから、安易に犯行を繰り返したというべきであるし、コロナ禍という特殊な状況下であったことに関する弁護人の主張を踏まえても、経緯等に酌むべき事情があるとはいえず、その意思決定は強い非難を免れない。 そして、被告人Aが、共犯者の中で最も多い600万円余りの利益を得た一方で、今のところ全く被害弁償をしておらず、自らの利益分相当の被害回復がされていないことも考慮すると、共犯者において被害弁償がされ、その限度では被害回復がされていること、罪を認めて反省 利益を得た一方で、今のところ全く被害弁償をしておらず、自らの利益分相当の被害回復がされていないことも考慮すると、共犯者において被害弁償がされ、その限度では被害回復がされていること、罪を認めて反省の態度を示し、被害弁償について分割弁済の意向も示していること、妹が監督を約束していること、異種罰金前科1犯のほかに前科がないこと等を考慮しても、刑の執行を猶予するのは相当でなく、被告人Aに対しては、主文の刑を科すのが相当である。 3 被告人Bは、被告人Aから誘われて、被告人Aと同様に、①の犯行において不可欠な役割を果たし、クーポンを得るという利益を享受するとともに、②の犯行 に加担し、換金代金から相応の利益を得た。従属的犯行であるし、自らが得たクーポンの換金代金の一部の利益を得たにとどまるが、不正な換金行為であることは理解しながら安易に犯行に加担しており、経緯等に酌むべき事情があるとはいえず、その意思決定は強い非難を免れない。 もっとも、被告人Bは、夫やその親族の協力を得て、自らが得た利益分に相当する200万円全額をF協会に弁償した。これにより、①の犯行について共犯者が被害弁償をしたことも併せ、被告人Bが関与した事実について相当部分の被害回復がされたことになり、この点は財産犯である本件の量刑上重視すべき事情である。そのほか、罪を認めて反省の態度を示していること、夫が監督を約束していること、前科がないこと等も考慮すると、被告人Bに対しては、主文の刑を科した上、その刑の執行を猶予するのが相当である。 4 被告人Cは、①の犯行において、被告人Aらによる実態のない宿泊予約を容認しつつ、宿泊助成金を申請してその全額を得て、ホテル経営の運転資金等に充てていた。この犯行において中心的役割を果たしていたというべきであって、その安易な意思決定は強 らによる実態のない宿泊予約を容認しつつ、宿泊助成金を申請してその全額を得て、ホテル経営の運転資金等に充てていた。この犯行において中心的役割を果たしていたというべきであって、その安易な意思決定は強い非難を免れない。 もっとも、被告人Cは、①の被害額全額に相当する430万円余りをF協会に弁償しており、これにより、自身が関与した事実について被害回復がされている。この点は財産犯である本件の量刑上重視すべき事情である。そのほか、罪を認めて反省の態度を示していること、妻が監督を約束していること、前科がないこと等も考慮すると、被告人Cに対しては、主文の刑を科した上、その刑の執行を猶予するのが相当である。 (求刑被告人Aに対し懲役4年、被告人Bに対し懲役3年、被告人Cに対し懲役3年6月)令和7年8月25日宮崎地方裁判所刑事部裁判官設樂大輔
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