平成13(ワ)300 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成13年11月1日 宇都宮地方裁判所
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判決文本文6,214 文字)

主文 1 被告らは,原告Aに対し,連帯して2309万7122円及びこれに対する平成12年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは,原告Bに対し,連帯して2309万7122円及びこれに対する平成12年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,原告らに生じた費用の2分の1と被告Cに生じた費用を被告Cの負担とし,原告らに生じたその余の費用と被告Dに生じた費用を被告Dの負担とする。 事実及び理由 第1 被告Dに対する請求について 1 請求(1) 被告Dは,原告Aに対し,被告Cと連帯して3335万9047円及びこれに対する平成12年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告Dは,原告Bに対し,被告Cと連帯して3335万9047円及びこれに対する平成12年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 事案の概要等本件は,被告らの暴行等によって死亡した日系ブラジル人訴外Eの両親である原告らが,被告らに対して,不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。 (1) 争いのない事実等(認定にかかる事実については証拠を掲げる。なお,争いのない事実であっても参考のため証拠を掲げている部分がある。)ア訴外Eは,昭和55年4月5日,原告らの息子として,ブラジル連邦共和国サンパウロ州プレジデンテ・ベルナルデス市において出生し,17歳で現地の学校「プレジデンテ・ベルナルデス」を中退し,平成9年8月24日,来日した(原告B本人,甲1)。 イ訴外Eが来日した際,同人の父,姉が既に日本に来ており,同年10月には,同人の母も来日した。訴外Eの在留資格は「定住者」(出入国管理及び難民認定法別表第二 来日した(原告B本人,甲1)。 イ訴外Eが来日した際,同人の父,姉が既に日本に来ており,同年10月には,同人の母も来日した。訴外Eの在留資格は「定住者」(出入国管理及び難民認定法別表第二)であり,入国当初在留期間は1年であったが,死亡時には在留期間は3年となっていた(原告B本人,甲8)。 ウ訴外Eは,平成9年12月,栃木県黒磯市に転居し,有限会社アルファコーポレーションという人材派遣会社に勤務し,同社からブリヂストン栃木工場に派遣され,平成11年には,給与として年間395万0625円の支給を受けていた。しかし,平成12年9月初旬,前月に起こした交通事故を理由にブリヂストンを解雇された(原告B本人,甲5)。 エ被告らが,平成12年9月10日午前3時ころ,宇都宮市a町で女性を交際等に誘ういわゆる「ナンパ」をしていたところ,訴外Eを含むブラジル人6名に大声でしつこくやじられたために,被告Cがブラジル人らに対して詰め寄っていったが,逆にブラジル人らに取り囲まれて倒される暴行を受けた。 ところが,被告らの仲間が加勢に現れたために,ブラジル人らは一斉に逃げ始めたが,被告Cは,逃げ出したブラジル人らに対し,何としてでも仕返しをしようと考え,被告Dも被告Cの意図を知り被告Cに加勢しようと考えた。被告らは,逃げ遅れた訴外Eを捕まえ,共謀の上,こもごも同人の顔面や腹部等を多数回にわたり足蹴りするなどの暴行を加え,さらに,訴外Eから逃げたブラジル人らの行方を聞き出そうと考え,訴外Eを車に連れ込み,宇都宮市b町まで移動し,同所において,同人に対し,被告Cがその顔面を足蹴りし,被告Dがカッターナイフでその右太腿を切るなどの暴行を加えた。 訴外Eは,被告らのかかる暴行により脳挫傷等の傷害を負い,同月13日午後4時30分こ ,同人に対し,被告Cがその顔面を足蹴りし,被告Dがカッターナイフでその右太腿を切るなどの暴行を加えた。 訴外Eは,被告らのかかる暴行により脳挫傷等の傷害を負い,同月13日午後4時30分ころ,済生会宇都宮病院において,脳挫傷等により抵抗力及び免疫機能が低下したために発症した肺炎により死亡した(甲3,4,7,乙2)。 オ原告らは,訴外Eの両親として,同人の有した権利義務を各2分の1ずつの割合で相続した(弁論の全趣旨)。 (2) 争点本件の争点は,被告らの不法行為によって生じた損害がいくらかである。 (3) 原告らの主張本件により,訴外Eに生じた損害及び原告らに生じた損害は次のとおりである。 ア逸失利益訴外Eは,人材派遣会社である有限会社アルファコーポレーションに所属し,同社からブリヂストン栃木工場に派遣され,同工場で稼働していたが,アルファコーポレーションからは,年額(平成11年度)395万0626円の給与を受けていた。また,訴外Eは,死亡当時20歳であり,就労可能年数47年に相当するライプニッツ係数は17.981である。したがって,逸失利益は,当時の年収に所定のライプニッツ係数を乗じ,生活費としてその50パーセントを控除した3551万8094円となる。 イ慰謝料被告らの行為は極めて残虐であり,訴外Eに発生した慰謝料は3000万円が相当である。 ウ葬儀費用葬儀費用は120万円である。 (4) 被告Dの主張ア,イは不知。ウは認める。ただし,訴外Eは,平成12年9月初旬に交通事故を理由にブリヂストンを解雇されている。また,本件は被告Cと外国人グループとの喧嘩闘争に関連して偶発的に発生したものであり,損害額の認定に際して斟酌されたい。 3 当裁判所の判断(1) 被告らの暴行等により ストンを解雇されている。また,本件は被告Cと外国人グループとの喧嘩闘争に関連して偶発的に発生したものであり,損害額の認定に際して斟酌されたい。 3 当裁判所の判断(1) 被告らの暴行等により訴外Eが死亡したことは原告らと被告Dとの間では争いがない。本件では,訴外Eの死亡による損害額が争点である。 (2) 逸失利益について逸失利益は,事件による死亡の事実がない場合に被害者が将来得たであろう収入を根拠として算出されるものであるから,その数式は,「年収×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」となる。 本件においては,前記「争いのない事実等」によれば,訴外Eは本件事件当時はブリヂストン栃木工場を解雇され,新たな派遣先が見つからない状態であったのであるから,所属は確かに派遣会社であるとはいえ,実質的には収入がない状態にあったと解するのが相当である。また,前記「争いのない事実等」によれば,訴外Eは,17歳でブラジルの学校を中退し,来日したのであるから,その最終学歴は,学習内容等については彼我の差があることが窺われるものの,その年齢からいって,日本における高等学校に相当する教育機関を中途で退学したと解するのが相当であり,かかる点からすれば逸失利益を算出する基礎となる年収については,中卒男性労働者の平成12年の賃金センサスによるのが相当であり,その額は305万2900円である。 生活費控除率については,死亡当時,訴外Eは独身であり,原告B本人尋問の結果によれば,原告らと栃木県黒磯市で同居していたことが認められるから,0.5と解するのが相当である。 就労可能年数については,訴外Eがブラジル国籍を有する外国人であることから問題となるが,訴外Eは「定住者」の在留資格を有しており,出入国管理及び難民 認定 から,0.5と解するのが相当である。 就労可能年数については,訴外Eがブラジル国籍を有する外国人であることから問題となるが,訴外Eは「定住者」の在留資格を有しており,出入国管理及び難民認定法上,「定住者」は,「日本人の子として出生した者の実子に係るもの」(平成2年法務省告示第132号3項),「日本人の子として出生した者でかって日本国民として本邦に本籍を有したことがあるものの実子の実子」(同4項)等がこれに該当するとされ,在留活動の範囲についての制限はなく,日本においてあらゆる活動に従事することができる(同法19条参照)とされている。したがって,「定住者」については,同法別表第1に定める在留資格よりも日本との結びつきは強いということができ,早期に出国することが明らかな場合などを除いて,就労可能年数は日本人の場合と同様に解するのが相当である。本件についてみるに,証拠(原告B本人)及び弁論の全趣旨によれば,訴外Eの在留期間は死亡時には外国人の在留期間としては最長の3年となっていたこと,原告らをはじめ,家族のほとんどは日本に来ており,父親である原告Aがブリヂストンに勤務するなど,その生活の本拠は日本にあったと評価しうること,また,特に訴外Eらが早期に帰国する予定もなかったことが認められるのであるから,訴外Eの就労可能年数は日本人と同様に算出すべきである。しかしながら,我国における就労可能年数は日本人の平均寿命を前提に算出されており,我国が世界史上稀にみる高齢化社会であることからすれば,母国における平均寿命をもとに就労可能年数を計算し直すことが必要であり,そして,本件においては訴外Eの母国であるブラジル連邦共和国における男性の平均寿命は64.7歳(1997年;公知の事実)であることから,就労可能年数は,「67歳×64.7歳÷77.64歳 要であり,そして,本件においては訴外Eの母国であるブラジル連邦共和国における男性の平均寿命は64.7歳(1997年;公知の事実)であることから,就労可能年数は,「67歳×64.7歳÷77.64歳」で算出されるべきであり,55歳(小数点以下切り捨て)となる。したがって,就労可能年数に対応したライプニッツ係数は16.3741となる。 以上より,訴外Eの死亡による逸失利益は,「305万2900円×(1-0.5)×16.3741」で算出され,2499万4244円と認められる。 (3) 慰謝料について証拠(原告B本人,甲1,3,7,乙2)及び弁論の全趣旨によれば,本件においては,訴外Eが20歳という,将来に多くの夢と希望を抱いていたであろう時に,無惨にも,突如として生命を奪われていること,被告らの暴行は,訴外Eの顔面,頭部,腹部を多数回蹴りつけ,肉親でさえ見分けがつかないほどに顔が変わるまで行われており,訴外Eが血だらけとなり意識を失ってからも,カッターナイフで斬りつけるなど,激しくかつ執拗なものであったこと,その後,訴外Eは,全裸で道路上に遺棄され,3日半ほどの間死線をさまよった末,無念にもこの世を去ったことなどの諸事情が認められる。一方,今回の事件は,訴外Eを含めたブラジル人グループが被告Cをからかい,詰め寄った被告Cに対して暴行を加えたことが発端ともなっているとの事情も認められる。 以上のほか,本件口頭弁論に提出された一切の事情を考慮すれば,訴外Eの死亡に対する慰謝料は2000万円と換算するのが相当である。 (4) 葬儀費用弁論の全趣旨によれば,本件と因果関係のある葬儀費用は120万円が相当であり,原告らが各2分の1ずつ出損したことが認められる。 (5) 結論したがって,訴外Eの死亡により生じた損害額は4619万4244円であり よれば,本件と因果関係のある葬儀費用は120万円が相当であり,原告らが各2分の1ずつ出損したことが認められる。 (5) 結論したがって,訴外Eの死亡により生じた損害額は4619万4244円であり,逸失利益と慰謝料については,原告らが各2分の1相続し,葬儀費用については,原告らが被った損害として,結局,原告ら各自は,被告Dに対して,それぞれ2309万7122円の損害賠償請求権を有することが認められる。 第2 被告Cに対する請求について 1 原告らは,「(1)被告Cは,原告Aに対し,被告Dと連帯して3335万9047円及びこれに対する平成12年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(2)被告Cは,原告Bに対し,被告Dと連帯して3335万9047円及びこれに対する平成12年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」という判決を求め,請求原因として,別紙請求原因事実記載のとおり述べた。 2 被告Cは,適式の呼出しを受けながら本件口頭弁期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面も提出しないから,請求原因事実を明らかに争わないものと認め,これを自白したものとみなす。 3 損害額については,裁判所が口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき相当な損害額を認定することができるから,前記第1の3と同様,原告ら各自は,被告Cに対して,それぞれ2309万7122円の損害賠償請求権を有することが認められる。 第3 結語以上によれば,原告らの本訴請求は,原告ら各自が,被告らに対し,連帯して2309万7122円宛及びこれに対する不法行為日である平成12年9月10日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからその範囲で認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし 為日である平成12年9月10日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからその範囲で認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 (平成13年7月5日被告Cにつき口頭弁論終結,同年8月30日被告Dにつき口頭弁論終結)宇都宮地方裁判所第1民事部裁判長裁判官永田誠一裁判官林正宏裁判官宮田祥次(別紙)請求原因事実1.訴外Eは,平成12年9月10日午前3時20分ころ,宇都宮市a町b番c号ベビーショップe南側路上において,被告らから,顔面・頭部等を手拳で殴られる,足で蹴られる等の暴行を受け,「脳挫傷」,「脳腫脹」,肺背側硬結(肺炎)」の傷害を負い,同月13日午後4時30分,「脳挫傷による肺炎」により済生会宇都宮病院において死亡した。 2.被告らは,上記暴行の後,上記現場から自家用トラックの荷台に瀕死の訴外Eを乗せ,同人を全裸にして,JR宇都宮駅西口まで運び,同所で訴外Fらに命じて,宇都宮市a通りb丁目c番d号eハイツ東側まで運ばせ,同所の路上に同人を放り出して放置した。 3.原告らは訴外Eの両親であり,訴外Eが死亡したことにより,同人の権利義務を各2分の1ずつの割合で相続した。 4.訴外Eに発生した損害は以下のとおりである。 (1) 逸失利益3551万8094円(2) 慰謝料3000万円5.原告らには葬儀費用120万円の損害が生じており,各2分の1ずつ出捐している。 6.よって,原告ら各自は,被告らに対し,連帯して不法行為に基づく損害賠償として3335万9047円及びこれに対する不法行為日である平成12年9月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。 く損害賠償として3335万9047円及びこれに対する不法行為日である平成12年9月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

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