平成23年9月28日判決言渡 平成22年(行ケ)第10351号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成23年7月27日判決 原告 ザプロクターアンドギャンブルカンパニー 訴訟代理人弁護士 吉武賢次 宮嶋学 高田泰彦 柏延之 訴訟代理人弁理士 勝沼宏仁 中村行孝 小島一真 被告 特許庁長官 指定代理人 中川眞一 岡本昌直 黒瀬雅一 小林和男 主文 1 特許庁が不服2009-10504号事件について平成22年7月5日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求主文同旨 第2 争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成11年11月16日,発明の名称を「臭気中和化および液体吸収性廃棄物袋」とする発明 第1 請求主文同旨第2 争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯原告は,平成11年11月16日,発明の名称を「臭気中和化および液体吸収性廃棄物袋」とする発明について,特許出願(特願2000-582314。パリ条約による優先権主張1998年11月16日,米国,甲1,以下「本願」という。)をし,平成20年10月28日付けで拒絶の理由が通知され(甲5),平成21年2月2日付けで手続補正書を提出したが(甲2),同月23日付けで拒絶査定を受け(甲4),これに対し,同年6月1日付けで,不服の審判(不服2009-10504号事件)を請求した(甲14)。特許庁は,平成22年7月5日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,同年7月16日,原告代理人に送達された。 2 特許請求の範囲平成21年2月2日付け補正後の本願の特許請求の範囲における請求項1の記載は,次のとおりである(甲2,以下,この発明を「本願発明」という。以下,本願の特許請求の範囲,明細書及び図面を併せて「本願明細書」という。)。 「【請求項1】A)飲食物廃棄物の処分のための容器であって,B)飲食物廃棄物を受け入れるための開口を規定し,かつC-1)内表面および外表面を有する液体不透過性壁と,C-2)前記液体不透過性壁の前記内表面に隣接して配置された吸収材と,C-3)前記吸収材に隣接して配置された液体透過性ライナーと を備え,D)前記容器は前記吸収材上に被着された効果的な量の臭気中和組成物を持つ,飲食物廃棄物の処分のための容器。 (判決注構成要件の分説及び記号は,原告の主張に合わせて,記載した。) 3 審決の理由(1) 別紙審決書写しの れた効果的な量の臭気中和組成物を持つ,飲食物廃棄物の処分のための容器。 (判決注構成要件の分説及び記号は,原告の主張に合わせて,記載した。) 3 審決の理由(1) 別紙審決書写しのとおりである。要するに,本願発明は,本件優先日前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭62-152931号(実開平1-58507号)のマイクロフィルム(甲6。以下「刊行物1」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと判断した。 (2) 上記判断に際し,審決が認定した引用発明の内容並びに本願発明と引用発明との一致点及び相違点,容易想到性判断の概要は,以下のとおりである。 ア引用発明の内容「生ゴミを収納するためのゴミ入れ袋であって,生ゴミを受け入れるための開口を有し,かつ内面と外面を有するプラスチック袋と,前記プラスチック袋の前記内面に被覆された吸水性ポリマー層とを備え,前記ゴミ入れ袋は前記吸水性ポリマー層に練り込まれた抗菌性ゼオライトを有する,生ゴミを収納するためのゴミ入れ袋。」イ一致点「飲食物廃棄物の処分のための容器であって,飲食物廃棄物を受け入れるための開口を規定し,かつ内表面および外表面を有する液体不透過性壁と,前記液体不透過性壁の前記内表面に隣接して配置された吸収材と,前記容器は前記吸収材に保持された効果的な量の臭気中和組成物を持つ,飲食物廃棄物の処分のための容器。」の点。 ウ相違点 (ア) 相違点1本願発明は,吸収材に隣接して配置された液体透過性ライナーを備えているのに対し,引用発明は,液体透過性ライナーを備えていない点。 (イ) 点。 ウ相違点 (ア) 相違点1本願発明は,吸収材に隣接して配置された液体透過性ライナーを備えているのに対し,引用発明は,液体透過性ライナーを備えていない点。 (イ) 相違点2容器は吸収材に保持された効果的な量の臭気中和組成物を持つ点について,本願発明は,臭気中和組成物が吸収材上に被着されているのに対し,引用発明は,臭気中和組成物である抗菌性ゼオライトが,吸収材に練り込まれている点。 エ容易想到性の判断(ア) 相違点1に係る容易想到性の判断「液体不透過性壁の内表面に隣接して吸収材が配置されたシート状部材において,その吸収材に隣接して液透過性のライナーを配置することは,従来周知の事項である(例えば,周知例1:実願昭56-194196号(実開昭58-101737号)のマイクロフィルム(甲7)の第2ページ第3~9行,第4ページ第9~11行,周知例2:特開平9-315507号公報(甲8),周知例3:実願昭63-153557号(実開平2-74398号)のマイクロフィルム(甲9)の第1ページ第5~15行,第2ページ第6~9行,第3ページ第3~9行,周知例4:特開平9-295680号公報(甲10)の段落【0011】,周知例5:特開平2-57583号公報(甲11)を参照のこと。)。 してみると,引用例における吸収剤である吸水性ポリマー層に隣接して,液透過性のライナーを配置することは,当業者が容易になし得たことである。」(イ) 相違点2に係る容易想到性の判断「吸収材にゼオライト等の臭気中和組成物を保持させるのに,その組成物を吸収材上に被着させて行うことは,従来周知の事項である(例えば,周知例6:特開平9-239903号公報(甲12)の段落【0001】~【0004】,周知例7:請求人が本件明細書段 るのに,その組成物を吸収材上に被着させて行うことは,従来周知の事項である(例えば,周知例6:特開平9-239903号公報(甲12)の段落【0001】~【0004】,周知例7:請求人が本件明細書段落【0038】で提示する欧州特許出願公開第0811390号明細書(甲13。乙4はその仮訳)を参照のこと。)。 してみると,引用発明の抗菌性ゼオライトを吸収材上に被着することは,当業者が容易になし得たことである。」第3 当事者の主張 1 取消事由に係る原告の主張(1) 相違点1についての容易想到性判断の誤り(取消事由1)ア本願発明の内容について本願明細書(甲1)の記載を参酌すると,本願発明は,家庭内において生ごみ処理装置のような高価な器機を用いることなく,飲食物の廃棄物や食べ残しなどの生ごみを便利に入れて置くことのでき,消費者の家あるいはその近くに比較的長期間に渡って置いておいても廃棄物から出た液体の漏出や悪臭を放つことを効率よく抑制することができる,使い勝手のよい使い捨てごみ袋を提供することを目的としたものである。 本願明細書の段落【0008】ないし段落【0010】,段落【0022】,段落【0023】,段落【0026】,段落【0038】の記載を参酌すると,本願発明は,容器であるプラスチック等の液体不透過性壁(構成要件C-1)の内側に液状の飲食物廃棄物を吸収および保持するため吸収材の層を隣接して配置させ(構成要件C-2),その内側に効果的な量の臭気中和組成物が被着されている(構成要件D)ことにより,液状の飲食物廃棄物を吸収及び保持することができると同時に,飲食物廃棄物から生ずる悪臭を効率よく吸収するという作用効果を奏することが分かる。さらに,段落【0023】の記載により,構成要件C-3に係る液体透過性ラ 棄物を吸収及び保持することができると同時に,飲食物廃棄物から生ずる悪臭を効率よく吸収するという作用効果を奏することが分かる。さらに,段落【0023】の記載により,構成要件C-3に係る液体透過性ライナーは,人の皮膚に従順で,やわらかな触感で,刺激を与えないものであり,液体をすぐにその厚さを染み通させる性質のものであることが示されている。 そして,このような性質の液体透過性ライナーを採用することによって,家庭内において飲食物の廃棄物および食べ残しを中に入れる過程で容器の中に手を入れる消費者は,液状の廃棄物から出た廃液やそれによって飽和された吸収材との偶発的で望ましくない接触を避けることができるという利点がある。さらには,吸収材に被 着された臭気中和組成物は剥がれやすいのに対し,本願発明では液体透過性ライナーを内側に備えることによって臭気中和組成物を内側から保持して剥がれ落ちるのを防止し,臭気中和機能もより効率よく発揮できるという利点もある。 以上のとおり,上記各構成が,本願発明の解決課題に対する解決手段としての技術的意義を有する。 イ引用発明における解決課題について刊行物1の2頁1行~4行等の記載を参酌すると,引用発明は,主に生ゴミを収納するのに適したゴミ袋に関するものであり,腐敗臭,悪臭,汚水の発生しないゴミ入れ袋を提供することを目的としている点においては共通する。しかし,その第1図では,吸収ポリマー部分がむき出しになったゴミ袋のみが記載されており,刊行物1のどの記載部分を見ても本願発明の構成要件C-3のような液体透過性ライナーに関する示唆も言及もない。また,刊行物1には,具体的にどのような場面を想定したゴミ袋か明確な記載がなく,本願発明のように,飲食物の廃棄物や食べ残しなどの生ごみを便利に入れて置くことのでき,消費 ナーに関する示唆も言及もない。また,刊行物1には,具体的にどのような場面を想定したゴミ袋か明確な記載がなく,本願発明のように,飲食物の廃棄物や食べ残しなどの生ごみを便利に入れて置くことのでき,消費者の家あるいはその近くに比較的長期間に渡って置いておけることに関する示唆も言及もない。そのため,家庭内において飲食物の廃棄物および食べ残しを中に入れる過程で容器の中に手を入れる消費者が,廃液や液状の廃棄物で飽和された吸収材等との偶発的で望ましくない接触を避けるという本願発明の解決課題を生じることはない。以上のとおり,引用発明を起点として,その解決手段である構成要件C-3のような液体透過性ライナーを設ける動機付けは一切存在しない。 以上により,引用発明を起点として,本願発明に容易に到達することはない。 ウ引用発明に周知例を適用することの容易想到性について審決は,「液体不透過性壁の内表面に隣接して吸収材が配置されたシート状部材において,その吸収材に隣接して液透過性のライナーを配置すること」は,周知例1ないし周知例5から,周知であるとする。 しかし,周知例1ないし周知例5から,構成要件C-3が周知であるとすること はできない。のみならず,仮に引用発明に周知例記載の発明を組み合わせることを試みたとしても,以下のとおりの理由により,相違点1に係る構成に至ることが容易であるとはいえない。 (ア) 周知例1を適用することの容易想到性について周知例1には,シート状の吸湿体(3)と,この吸湿体(3)の外面を覆う第1の合成樹脂と,この吸湿体(3)の内側に多数の通気孔を備えた第2の合成樹脂膜(5)を備えた食品包装用シートに係る発明(考案)が記載されている。 しかし,周知例1の発明は「食品包装用シート」に関するものであり,そこで解決すべ )の内側に多数の通気孔を備えた第2の合成樹脂膜(5)を備えた食品包装用シートに係る発明(考案)が記載されている。 しかし,周知例1の発明は「食品包装用シート」に関するものであり,そこで解決すべき課題は,食品の保存の際に食品から蒸発した水分がその食品に浸潤し,長期にわたる保存が見込めなかったという事情に鑑み,水分を吸収して食品の鮮度を長期に渡って保つことを目的とする包装用シートを提供することにある。これに対し,本願発明は,飲食物の廃棄物や食べ残しなどの生ごみを便利に入れて置くことのできる使い勝手のよい使い捨てごみ袋を提供することを目的としたものであって,両発明は,技術分野・目的・解決課題において相違する。周知例1の発明に係る第2の合成樹脂膜(5)は,本願発明に係る液体透過性ライナーとは目的・機能において相違する。また,上記第1の合成樹脂膜(4)に関しては,そこに手を入れたときに廃液や液状の廃棄物で飽和された吸収材等との偶発的で望ましくない接触を避けるという目的についても,人の皮膚に従順で,やわらかな触感で,刺激を与えないものであり,液体をすぐにその厚さを染み通させるものであるという本願発明に係る液体透過性ライナーの性質に関して,何ら示唆も言及もない。よって,当該発明に係る第2の合成樹脂膜(5)は構成要件C-3の液体透過性ライナーには該当しない。 周知例1の明細書4頁9~11行には,食品包装用シートとして使用後は生ゴミ袋として使用することも可能である旨の記載がある。しかし,周知例1の発明は食品包装用のシートとして食品を長期保存することを目的とするものであり,ゴミ袋としての用途を意図して創作されたものではない。食品類の保存容器に関しては, 容器の内側の層は湿った状態で内部の湿度をある程度以上に保たせる必要があるため,周知例 とするものであり,ゴミ袋としての用途を意図して創作されたものではない。食品類の保存容器に関しては, 容器の内側の層は湿った状態で内部の湿度をある程度以上に保たせる必要があるため,周知例1の発明に係る第2の合成樹脂膜(5)は,上述のような本願発明に係る液体透過性ライナーの目的,構造,性質と相容れない。また,周知例1の発明は,本願発明のように生ゴミに特有の臭気を吸収する機能を備えていないため,実際のところ本願発明のように生ゴミ袋として十分な機能を発揮し得ない。よって,かかる記載は,周知例1の発明に係る第2の合成樹脂膜(5)が,構成要件C-3の液体透過性ライナーに該当しないという上記の結論を左右するものとはなり得ない。 以上により,引用発明に,周知例1の発明を適用して,本願発明に至ることはない。 (イ) 周知例2を適用することの容易想到性について周知例2の発明と本願発明は,以下のとおり,解決課題・用途において相違する。 本願発明は,家庭内において生ごみ処理装置のような高価な器機を用いることなく,飲食物の廃棄物や食べ残しなどの生ごみを便利に入れて置くことのでき,消費者の家あるいはその近くに比較的長期間に渡って置いておいても廃棄物から出た液体の漏出や悪臭を放つことを効率よく抑制することができる,使い勝手のよい使い捨てごみ袋を提供するものである。これに対し,周知例2の発明は,廃棄物処理場でのゴミの輸送に際し,厨芥などの水分の多いゴミでも水分を吸収して真空輸送設備により輸送できるようにしたものであって(段落【0001】ないし【0004】),解決課題において相違する。周知例2の発明は,水切り用孔6を設けることが望ましいとされ(4頁【図1】(b)),さらには真空輸送中にゴミ袋が破損してもよい旨記載されている等(段落【0004】), 】),解決課題において相違する。周知例2の発明は,水切り用孔6を設けることが望ましいとされ(4頁【図1】(b)),さらには真空輸送中にゴミ袋が破損してもよい旨記載されている等(段落【0004】),専ら内容物であるゴミの水分を減らすことを目的としたものであり,廃棄物から出た液体の漏出や悪臭を放つことを効率よく抑制するという作用・機能を有しない。周知例2の発明の内面材1に関しても,透過させる水分量の調節という機能を有するのみであり(段落【0007】参照),手を入れたときに液状の廃棄物で飽和された吸収材等との偶発的で望ましくない接触を避けるという目的についても,人の皮膚に従順で,やわらかな触 感で,刺激を与えないものであり,液体をすぐにその厚さを染み通させるものであるという本願発明に係る液体透過性ライナーの性質に関して,何ら示唆も言及もない。よって,周知例2の発明に係る内面材1は構成要件C-3の液体透過性ライナーには該当しない。 以上により,引用発明に,周知例2の発明を適用して,本願発明に至ることはない。 (ウ) 周知例3を適用することの容易想到性について周知例3の発明は,青果実の結露水の吸水やオムツ等に用いられる吸収シートに関する発明であり,家庭用のゴミ袋として使用することに関しては何らの示唆も言及もなく,それに必要な消臭機能も備えていない。飲食物の廃棄物や食べ残しなどの生ごみを便利に入れて置くことのできる使い勝手のよい使い捨てごみ袋を提供することを目的とする本願発明とは技術分野・目的・解決課題・作用効果・機能において相違する。 周知例3では,透水性を有する包装材に関し,紙や紙と不織布との複合体が好ましいが,透水性を有する包装材であれば特に限定されない旨の記載があり(明細書5頁8行~12行),人の皮膚に従順で,や る。 周知例3では,透水性を有する包装材に関し,紙や紙と不織布との複合体が好ましいが,透水性を有する包装材であれば特に限定されない旨の記載があり(明細書5頁8行~12行),人の皮膚に従順で,やわらかな触感で,刺激を与えないものであり,液体をすぐにその厚さを染み通させるものであるという本願発明に係る液体透過性ライナーの性質に関し何ら示唆も言及もない。よって,周知例3の発明に係る透水性を有する包装材は構成要件C-3の液体透過性ライナーには該当しない。 以上により,引用発明に,周知例3の発明を適用して,本願発明に至ることはない。 (エ) 周知例4を適用することの容易想到性について周知例4の段落【0011】で記載されているのは,食料品の保存に関する吸収性パッド製品であり,廃棄物の効率的な保存・処理ということに関しては明細書のどの部分を参照しても記載がない。周知例4には,家庭内における飲食物の廃棄物や食べ残しなどの生ごみを便利に入れて置くことのでき,廃棄物から出た液体の漏 出や悪臭を効率よく抑制する使い勝手のよい使い捨てごみ袋を提供するという本願発明の解決課題に関し何らの示唆も言及もなく,それに必要な消臭機能も備えていない。よって,周知例4の発明は本願発明とは技術分野・目的・解決課題・作用効果・機能等において相違する。 周知例4の発明に係る液体不透過性の層に関しては,具体的にどのような部材であるか明確にされておらず,そこに手を入れたときに液状の廃棄物で飽和された吸収材等との偶発的で望ましくない接触を避けるという目的についても,人の皮膚に従順で,やわらかな触感で,刺激を与えないものであり,液体をすぐにその厚さを染み通させるものであるという本願発明に係る液体透過性ライナーの性質に関しても何ら示唆も言及もない。よって,周 ,人の皮膚に従順で,やわらかな触感で,刺激を与えないものであり,液体をすぐにその厚さを染み通させるものであるという本願発明に係る液体透過性ライナーの性質に関しても何ら示唆も言及もない。よって,周知例4の発明に係る液体不透過性の層は構成要件C-3の液体透過性ライナーには該当しない。 以上により,引用発明に,周知例4の発明を適用して,本願発明に至ることはない。 (オ) 周知例5を適用することの容易想到性について周知例5の発明における解決課題は,食品類から出るドリップなどの液体を効率よく吸収して内部の食品類の鮮度を保つことであり,廃棄物の効率的な保存・処理に関する記載はない。周知例5の発明の「液体透過性の材料よりなるシート(4)」は,容器内の湿気を適度に保つために,食品から出た液体により湿った状態に保たれることを目的とするものである(3頁目左上下から4行~右上4行)。 これに対し,本願発明における液体透過性ライナーは,人の皮膚に従順で,やわらかな触感で,刺激を与えないものであり,液体をすぐにその厚さを染み通させるものであり,消費者が手を入れたときに廃液や液状の廃棄物で飽和された吸収材等との偶発的で望ましくない接触を避けるものである。周知例5の発明に係る「液体透過性の材料よりなるシート(4)」と本願発明の「液体透過性ライナー」とは,構成・目的・作用効果において,相違する。 以上により,引用発明に,周知例5の発明を適用して,本願発明に至ることはな い。 エ小括以上の点を総合考慮すれば,周知例1ないし5に記載の液体透過性の層はいずれも本願発明に係る液体透過性ライナーに該当しない。したがって,周知例1ないし5を例示して,「吸収材に隣接して液透過性のライナーを配置することは従来周知の事項である」(審決書4頁下から 性の層はいずれも本願発明に係る液体透過性ライナーに該当しない。したがって,周知例1ないし5を例示して,「吸収材に隣接して液透過性のライナーを配置することは従来周知の事項である」(審決書4頁下から5行~下から3行)とした審決の周知技術の認定判断には,誤りがある。 (2) 相違点2についての容易想到性判断の誤り(取消事由2)ア引用発明との対比引用発明は,消臭剤である抗菌性ゼオライトを吸水性ポリマー層に練り込んでいる。引用発明に係る明細書では,「芳香消臭剤をゴミ容器周辺にスプレー噴霧しても持続性がなく解決に至っていない」旨の記載がある(明細書1頁下から3行~1行)。このように,引用発明は,ゼオライト等の消臭剤をスプレー噴霧等の方法により被着される方法によっては持続性がなく臭気除去ができないという解決課題について,ゼオライト等の消臭剤を吸水性ポリマー層に練り込むことによって,課題を解決する発明である。 これに対し,本願明細書では,臭気中和組成物は,リンス,スプレー,ディピング等の都合のよい手段により吸収材に被着されることができる旨記載されている(本願明細書段落【0038】)。本願発明は,吸収材の内側表面に消臭剤を被着させることにより内部の生ゴミの消臭がより効率よく行えるのみならず,構成要件C-3の液体透過性ライナーをその内側に設けることにより消臭剤が脱落することを防止すると共に,廃液や吸収材等と消費者との接触が妨げられるという,特有の作用効果がある。 したがって,引用発明の上記構成を,本願発明の構成要件Dのように吸収材の内側表面に被着させる構成に変更することには,阻害事由がある。 イ周知例を適用することの容易想到性について 審決は,「吸収材にゼオライト等の臭気中和組成物を保持させるのに,その組成物を吸 被着させる構成に変更することには,阻害事由がある。 イ周知例を適用することの容易想到性について 審決は,「吸収材にゼオライト等の臭気中和組成物を保持させるのに,その組成物を吸収材上に被着させて行うこと」は,周知例6,周知例7から,周知であるとする。 しかし,周知例6,周知例7から,構成要件Dが周知であるとすることはできない。のみならず,仮に引用例に周知例記載の発明を組み合わせることを試みたとしても,相違点2に係る構成に至ることが容易であるとはいえない。 (ア) 周知例6を適用することの容易想到性について周知例6には,膨潤性シートに活性炭やゼオライトなどの脱臭剤が添加されたものが記載されている。しかし,周知例における技術分野は化粧料や薬用ハップ剤の基材や新鮮食料品の保存のためにトレイと食品との間に置くシートに関するものであり,本願発明のような飲食物の廃棄物や食べ残しなどの生ごみを便利に入れて置くことのできるゴミ袋とは,技術分野・目的・解決課題・作用効果・機能等において相違する。また,周知例6の段落【0005】には,「茶抽出物やゼオライトなどの吸収性粉体を添加したり塗工する必要があるが,吸収性粉末が脱落するので,用途が制限されている」との記載がある。このような記載に鑑みれば,吸収材の上にゼオライト等の吸収材を被着させると脱落して十分な消臭機能を発揮しないため,ゴミ袋を含めた他の分野にこのような構成を用いるのを避けようと考えるのが通常である。このように,周知例6の発明は,本願発明とは技術分野・目的・解決課題・作用効果・機能等において相違するのみならず,上記のような構成を適用して本願発明に至るための阻害事由が存在する。 以上により,引用発明に,周知例6の発明を適用して,本願発明に至ることはない。 (イ) 機能等において相違するのみならず,上記のような構成を適用して本願発明に至るための阻害事由が存在する。 以上により,引用発明に,周知例6の発明を適用して,本願発明に至ることはない。 (イ) 周知例7を適用することの容易想到性について周知例7の発明は,ナプキンなどのパンティーライナーなど人が装着する吸収性物品に関する発明であり,本願発明のような飲食物の廃棄物や食べ残しなどの生ごみを便利に入れて置くことのできるゴミ袋とは,技術分野・目的・解決課題・作用 効果・機能等において相違する。よって,仮に周知例7に吸収材に消臭剤を被着させる構成が記載されていたとしても,引用発明と組み合わせて本願発明に至る動機付けは何ら存在しない。 以上により,引用発明に,周知例7の発明を適用して,本願発明に至ることはない。 ウ小括引用発明は,ゼオライトを被着させるのではなく吸水性ポリマー層に練り込むことに特徴を有する発明であり,刊行物1自体において構成要件Dに至る明白な阻害事由が存在するのであるから,周知技術との組み合わせにより構成要件Dを充足させることは不可能である。他方,周知例6,7はいずれも本願発明の技術分野とは全く異なる分野に係る発明であるのに対し,本願発明は,家庭内における飲食物の廃棄物や食べ残しなどの生ごみを便利に入れて置くことのでき,廃棄物から出た液体の漏出や悪臭を効率よく抑制する使い勝手のよい使い捨てごみ袋を提供する発明であり,両者は,解決課題・用途・作用効果・機能において相違する。 以上の点を総合考慮すれば,刊行物1には,周知例6,7に記載の技術を引用発明に適用して本願発明の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等が存在するとはいえない。審決の認定,判断には,誤りがある。 (3) 相違点1について には,周知例6,7に記載の技術を引用発明に適用して本願発明の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等が存在するとはいえない。審決の認定,判断には,誤りがある。 (3) 相違点1についての特許法159条2項で準用する同法50条違反(取消事由3)審査過程では,審査官は引用発明を主引例として引用し,「内表面及び外表面を有するポリエチレン袋と,前記ポリエチレン袋の前記内表面に隣接して配置された吸水性ポリマー層からなる吸収材とについて記載されている」と認定した上で,相違点2については一切触れることなく,相違点1については,周知例4,5を周知例として引用して,引用発明に液体透過性ライナーを適用することが容易であると判断し,拒絶査定をした。原告は,拒絶査定不服審判を提起し,平成21年8月20日付の手続補正書において,周知例4,5は,いずれも飲食物廃棄物の処分のた めの容器とは関係の無い技術分野に関するものであることなどを主張して拒絶査定の誤りを主張した。これに対し,審判合議体は,原告に意見書提出の機会を与えることなく,一致点と相違点1,2を認定した上で,相違点1については,周知例1ないし3を加えて引用し,相違点2については,周知例6,7を加えて引用し,本願発明は引用発明から容易想到と判断した。 上記審判手続は,原告に何らの反論の機会を与えることなくされたもので,特許法159条2項で準用する同法50条に違背する違法がある。 (4) 相違点2についての特許法159条2項で準用する同法50条違反(取消事由4)相違点2については,拒絶査定においては,何ら明示されていなかったにもかかわらず,審判段階において,相違点として明示され,周知例6,7が挙げられた。 上記審判手続は,原告に何らの反論の機会を与えることなくされたも ては,拒絶査定においては,何ら明示されていなかったにもかかわらず,審判段階において,相違点として明示され,周知例6,7が挙げられた。 上記審判手続は,原告に何らの反論の機会を与えることなくされたもので,特許法159条2項で準用する同法50条に違背する違法がある。 2 被告の反論(1) 相違点1についての容易想到性判断の誤り(取消事由1)に対してア本願発明の内容について原告は,「液体透過性ライナー」が,「人の皮膚に従順で,やわらかな触感で,刺激を与えないものであり,液体をすぐにその厚さを染み通させる性質のものである」ことを前提として主張する。 しかし,本願明細書の特許請求の範囲には,「液体透過性ライナー」に関しては「前記吸収材に隣接して配置された液体透過性ライナーとを備え」と記載されているのみである。したがって,原告の上記主張は,本願発明の特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり,失当である。 また,原告は,「家庭内において飲食物の廃棄物および食べ残しを中に入れる過程で容器の中に手を入れる消費者は,液状の廃棄物から出た廃液やそれによって飽和された吸収材との偶発的で望ましくない接触を避けることができるという利点」 (段落【0023】)があると主張する。 しかし,段落【0023】には,「ライナーを設けることによって,飲食物の廃棄物および食べ残しを中に入れる過程で容器の中に手を入れる消費者は,液状の廃棄物でほとんど,あるいは完全に飽和された吸収材との偶発的で,望ましくない接触をしないですむ。」と記載され,本願発明の「液体透過性ライナー」の効果として記載されているのは,吸収材すなわち「液状の廃棄物でほとんど,あるいは完全に飽和された吸収材」との接触の防止であって,「『液状の廃棄物から出た廃液』との偶発的で の「液体透過性ライナー」の効果として記載されているのは,吸収材すなわち「液状の廃棄物でほとんど,あるいは完全に飽和された吸収材」との接触の防止であって,「『液状の廃棄物から出た廃液』との偶発的で望ましくない接触を避けることができる」と記載されているわけではない。すなわち,本願発明は,「液体透過性ライナー」について「前記吸収材に隣接して配置された液体透過性ライナーとを備え」(構成要件C-3)と特定することにより,液状の廃棄物を吸収した吸収材との接触の防止することができることを目的としたものであり,液状の廃棄物,すなわち生ゴミから出た廃液を吸収した「吸収材」との接触の防止を目的とするものであって,生ゴミから出た廃液との接触を避けることを目的としたものではない。 したがって,原告の「液状の廃棄物から出た廃液」「との偶発的で望ましくない接触を避けることができるという利点」を前提とする主張は,本願明細書の記載に基づかないものであり,失当である。 さらに,原告は,「本願発明では液体透過性ライナー(構成要件C-3)を内側に備えることによって臭気中和組成物を内側から保持して剥がれ落ちるのを防止し,臭気中和機能もより効率よく発揮できるという利点がある旨主張する。 しかし,液体透過性ライナーを内側に備えることによって臭気中和組成物を内側から保持して剥がれ落ちるのを防止し,臭気中和機能もより効率よく発揮できることは本願明細書に記載されていない。したがって,原告の主張は,本願明細書の記載に基づかないものであり,失当である。 イ引用発明における解決課題に対して引用発明は,家庭用の飲食物の廃棄物や食べ残しなどの生ごみを便利に入れてお くことができ,消費者の家の近くに比較的長期間に渡って置いておけるゴミ入れ袋であって,生ごみからの液体 して引用発明は,家庭用の飲食物の廃棄物や食べ残しなどの生ごみを便利に入れてお くことができ,消費者の家の近くに比較的長期間に渡って置いておけるゴミ入れ袋であって,生ごみからの液体を吸収し,生ごみからの臭気を防止することを課題とする発明である。飲食物の廃棄物および食べ残しを中に入れる過程でゴミ入れ袋の中に手を入れる場合,ゴミ入れ袋の内面にある,生ごみからの液体を吸収した吸収剤と接触をしないようにすることは,衛生上の観点から求められる一般的課題であり,引用発明においても内在する自明の課題である。 引用発明において,吸収性ポリマーは基材から脱落しやすいことは技術常識である。引用発明の吸水性ポリマー層がプラスチック袋の内面から脱落すると,プラスチック袋内面において吸水の行われない箇所が存在し吸水が不均一となる。吸水性ポリマー層がプラスチック袋から脱落すれば,ゼオライトも脱落し十分な消臭機能が発揮されないことになる。吸水性ポリマー層に練り込まれた抗菌性ゼオライトを脱落させない観点からも,吸水性ポリマー層がプラスチック袋から脱落しないほうが好ましい。 以上のとおり,引用発明において,吸収性ポリマー層がプラスチック袋の内面から脱落しないようにすることも,内在する自明の課題といえる。 他方,本願発明は,飲食物の廃棄物や食べ残しの処分に用いられる容器であって,飲食物の食べ残し等(生ごみ)からの液体を吸収し,飲食物の食べ残し等(生ごみ)からの臭気を防止すること課題とする発明である。 したがって,本願発明と引用発明とは,その技術分野及び課題において,共通するといえる。 ウ引用発明に周知例を適用することの容易想到性の主張に対して(ア) 周知事項が,周知例1ないし5から導かれることについてa 周知例1ないし5は,以下の 題において,共通するといえる。 ウ引用発明に周知例を適用することの容易想到性の主張に対して(ア) 周知事項が,周知例1ないし5から導かれることについてa 周知例1ないし5は,以下のとおり「液体不透過性壁の内表面に隣接して吸収材が配置されたシート状部材において,その吸収材に隣接して液透過性のライナーを配置すること」(以下「周知事項1」という場合がある。)が周知であることを示している。 すなわち,周知例1は,生ゴミの保管の際に生ゴミから出る液体の吸収が求められる技術分野で用いられること,生ゴミの腐敗防止が求められる技術分野で用いられること,食品と生ゴミが液体の吸収の対象として認識されていることを示している。周知例2は,生ゴミの保管の際に生ゴミから出る液体の吸収が求められる技術分野で用いられること,糞尿等の汚物と生ゴミが液体の吸収の対象として認識されていることを示している。周知例3は,液体の吸収が求められる技術分野で用いられること,食品や糞尿等の汚物が液体の吸収の対象として認識されていることを示している。周知例4は,液体の吸収が求められる技術分野で用いられることを示している。周知例5は,液体による収納物の劣化を防ぐために,液体の吸収が求められる技術分野で用いられることを示している。 以上のとおり,周知例1,2には,その対象物として生ゴミが示されると共に,周知例1には生ゴミのほかに食品が示され,周知例2には生ゴミのほかに汚物が示され,周知例3には食品と汚物とが示されるように,当業者には,液体の吸収の対象物として幅広い対象が認識されている。 b 吸収性ポリマーのような基材から脱落しやすいものの脱落を防ぐために,液透過性のライナーを隣接して配置することは技術常識である。 周知例2,3及び5のような基材から い対象が認識されている。 b 吸収性ポリマーのような基材から脱落しやすいものの脱落を防ぐために,液透過性のライナーを隣接して配置することは技術常識である。 周知例2,3及び5のような基材から脱落しやすいもの,例えば吸収性ポリマーが用いられた場合には,周知事項1の液透過性のライナーは,液体不透過性壁の内表面に隣接して設けられた吸収材の脱落防止の機能を有する。 c 周知例1ないし3及び5に示される「液透過性のライナー」は,本願発明の本願明細書に例示される「多孔質発泡体,網状化発泡体,開孔プラスチックフィルム,または天然繊維(たとえば,木材あるいは綿繊維),合成繊維(たとえば,ポリエステルあるいはポリプロピレン繊維)もしくは天然繊維と合成繊維の組み合わせの織製もしくは不織ウェブのような広範囲の材料から製造され得る。」(段落【0024】)を含み,「人の皮膚に従順で,やわらかな触感で,刺激を与えないものであり,液体をすぐにその厚さを染み通させる」効果があるといえる。 周知例記載の「液透過性のライナー」も,本願発明と同様に吸収材に隣接して配置されるのであるから,液体が吸収された吸収材との偶発的で望ましくない接触を避けることができるとの効果がある。(なお,本願発明は,液状の廃棄物,すなわち生ゴミから出た廃液を吸収した吸収材との接触の防止を目的とするものであって,生ゴミから出た廃液との接触を避けることを目的としたものではない。)したがって,周知事項1の「液透過性のライナー」は,その機能,作用からみて,本願発明の「前記吸収材に隣接して配置された液体透過性ライナー」に相当するものであって,その構造,目的(課題),及び作用効果は,共通する。 (イ) 引用発明に周知事項1を適用することの容易想到性について引用発明は,廃液 して配置された液体透過性ライナー」に相当するものであって,その構造,目的(課題),及び作用効果は,共通する。 (イ) 引用発明に周知事項1を適用することの容易想到性について引用発明は,廃液が吸収された吸収材との偶発的で望ましくない接触を避け,また吸収材である吸収性ポリマー層がプラスチック袋の内面から脱落を防止するという課題を有するものである。また,周知事項1は,液体が吸収された吸収材との偶発的で望ましくない接触を避けることができ,吸収材として基材から脱落しやすいもの,例えば吸収性ポリマーが用いられた場合には,液体不透過性壁の内表面に隣接して設けられた吸収材の脱落防止をするものである。してみると,引用発明の上記課題を解決するために,引用発明にその解決手段である周知事項1を適用することは,当業者が容易になし得る。 原告は,周知例1,4,5は,主に食品の保存容器に関する発明であり,食品の保存容器に用いられる液体透過性の層は内容物から出た液体により湿った状態に保たれることが窺われ,そのような層を本願発明に係る家庭用のゴミ袋に用いれば,生ゴミの中に手を入れた消費者が生ゴミから出た廃液との望ましくない接触を避けるという目的を達成できないのであるから,この点において明確な組み合わせ阻害事由が存在すると主張する。 しかし,周知例1,4,5は,周知事項1が従来周知の事項であることを裏付けるために示されたものであり,液体透過性の層の状態について示したものではないから,原告の上記主張は,失当である。また,本願発明は,液状の廃棄物,すなわ ち生ゴミから出た廃液を吸収した吸収材との接触の防止することを目的とするものであって,生ゴミから出た廃液との接触を避けることを目的としたものではないから,原告の上記主張は,その前提において誤りがある ち生ゴミから出た廃液を吸収した吸収材との接触の防止することを目的とするものであって,生ゴミから出た廃液との接触を避けることを目的としたものではないから,原告の上記主張は,その前提において誤りがある。 (2) 相違点2についての容易想到性判断の誤り(取消事由2)に対してア引用発明との対比(ア) 刊行物1には,引用発明に対する従前技術に関して,「芳香消臭剤をゴミ容器周辺にスプレー噴霧しても持続性がなく解決に至っていない」(1ページ下から3行目~1行目)との記載があるが,同記載は,日常生活において市販の芳香消臭剤をゴミバケツの周辺にスプレー噴霧することを指しているにすぎないと解すべきである。したがって,刊行物1には,「スプレー噴霧等の方法により被着される方法によっては持続性がない」という解決課題が記載されているわけではない。引用発明は,そのような課題を解決するために,「ゼオライト等の消臭剤を吸水性ポリマー層に練り込む」との技術ではない。 (イ) 原告は,引用発明は,「消臭剤である抗菌性ゼオライトを吸水性ポリマー層に練り込んでいるのに対し,本願発明では効果的な量の臭気中和組成物が吸収材の内面に被着されている点(構成要件D)において相違すると主張する。 しかし,原告の上記主張は,以下のとおり理由がない。 すなわち,引用発明の「抗菌性ゼオライト」は,「吸水性ポリマー層に練り込まれた」ものであるところ,抗菌性ゼオライトを吸水性ポリマー層に練り込むことによって,抗菌性ゼオライトのすべてが,吸水性ポリマー層の内部に存在するのではなく,表面に被着しているものも存在する。引用発明の「吸水性ポリマー層に練り込まれた抗菌性ゼオライト」と,本願発明の「吸収材上に被着された効果的な量の臭気中和組成物」とは,吸収材上に臭気中和組成物が存在する点 に被着しているものも存在する。引用発明の「吸水性ポリマー層に練り込まれた抗菌性ゼオライト」と,本願発明の「吸収材上に被着された効果的な量の臭気中和組成物」とは,吸収材上に臭気中和組成物が存在する点において一致する。 また,本願明細書には,「本発明の臭気中和組成物は,ここで記述した吸収材の中にまたはその上に含有され,被着される。この組成物は,リンス,スプレー,ディピング等の都合のよい手段により吸収材に適用することができるが,これらに限 定されない。」(段落【0038】)と記載されている。一般にリンス(rinse)とは,「(織物・衣類を)染料液につける」ことを意味し,ディピング(dipping)のディプ(dip)とは,「(衣類などを)浸して染める」ことを意味するのであるから,本願発明の「吸収材上に被着された」とは,臭気中和組成物が「吸収材の中にまたはその上に含有され」ることも意味する。 イ周知例を適用することの容易想到性に係る主張に対して(ア) 周知例6及び7から導かれる周知事項について周知例6には,臭気を除去するために水分を吸収するシートにゼオライト等の脱臭剤を内添または塗工(被着)すること,従来から,吸収材に添加することも吸収材の上に被着して保持することが,臭気中和組成物の保持として技術常識であることが示されている。また,周知例7には,悪臭抑制剤を吸収製品のコア上に積層(被着)する,または吸収性コアの繊維中に混合すること,従来から,吸収材に添加することも吸収材の上に被着して保持することが,臭気中和組成物の保持として技術常識であることが示されている。 以上のとおり,周知例6及び7は,「吸収材にゼオライト等の臭気中和組成物を保持させるのに,その組成物を吸収材上に被着させて行うこと」(以下「周知事項2」という場 術常識であることが示されている。 以上のとおり,周知例6及び7は,「吸収材にゼオライト等の臭気中和組成物を保持させるのに,その組成物を吸収材上に被着させて行うこと」(以下「周知事項2」という場合がある。)が,周知の事項であることを示している。 (イ) 引用発明に周知事項2を適用することの容易想到性について引用発明の「吸水性ポリマー層に練り込まれた抗菌性ゼオライト」と,本願発明の「吸収材上に被着された効果的な量の臭気中和組成物」とは,吸収材上に臭気中和組成物が存在する点,及び臭気中和組成物が吸収材の中にまたはその上に含有される点において,実質的に相違しない。 そして,引用発明の「吸水性ポリマー層に練り込まれた抗菌性ゼオライト」も吸収材上に臭気中和組成物が存在するものであること,また引用発明の「抗菌性ゼオライト」と周知事項2の「ゼオライト等の臭気中和組成物」とは,吸収材に備えられ,臭気を除去するという共通の構造,機能,作用を有するものであることから, 引用発明に周知事項2を適用することは,当業者において容易に想到し得る。 (3) 相違点1についての特許法159条2項で準用する同法50条違反(取消事由3)に対してア本件出願の審査過程において,平成21年2月23日付け拒絶査定(甲4)には,平成20年10月28日付け拒絶理由通知書で提示した刊行物1と共に,周知例4,5等が示され,「引用文献1(判決注:刊行物1のこと)には,液体透過性ライナー及び該液体透過性ライナーと吸収剤との関係について記載されていないが,本願の出願前において,液体不透過性の物質に隣接して配置された吸収材の他側に液体透過性の層を設けることは周知技術(…中略…)であり,引用文献1記載の発明の吸水性ポリマー層に液体透過性ライナーを設けることは,当業者 おいて,液体不透過性の物質に隣接して配置された吸収材の他側に液体透過性の層を設けることは周知技術(…中略…)であり,引用文献1記載の発明の吸水性ポリマー層に液体透過性ライナーを設けることは,当業者が適宜なしえたことである。」(1ページ下から4行目~2ページ上から4行)と記載されている。これに対し,原告は,審判請求における理由補充のための手続補正書(方式)(甲15)において,周知技術として引用された文献は,いずれも飲食物廃棄物の処分のための容器とは関係の無い技術分野に関するものである等,周知事項1についての意見を述べている。 したがって,原告は,意見を述べる機会や補正をする機会があったといえる。 イ審決で示した周知例1ないし3は,本件出願の審査過程において,既に周知の技術事項として認定されていた周知事項1について,周知の技術事項であることを裏付けるために例示した文献にすぎない。 審決において,周知の技術事項を裏付けるため,それまでの手続に現れていなかった資料の提示は許される(最高裁昭和55年1月24日第1小法廷判決・民集34巻1号80頁参照)。 したがって,審決において,周知例1ないし3を付加したことは,特許法159条2項の「異なる拒絶の理由を発見した場合」に当たるものではなく,同項において準用する同法50条の規定に反するものではない。 (4) 相違点2についての特許法159条2項で準用する同法50条違反(取消事 由4)に対してア引用発明の「吸水性ポリマー層に練り込まれた抗菌性ゼオライト」と,本願発明の「吸収材上に被着された効果的な量の臭気中和組成物」とは,吸収材上に臭気中和組成物が存在する点で何ら異なるところはなく,更に,臭気中和組成物が吸収材の中にまたはその上に含有されること,すなわち,本願発明の 材上に被着された効果的な量の臭気中和組成物」とは,吸収材上に臭気中和組成物が存在する点で何ら異なるところはなく,更に,臭気中和組成物が吸収材の中にまたはその上に含有されること,すなわち,本願発明の特定事項である「吸収材上に被着された」点でも何ら異なるところはない。審決での相違点2の認定判断は,引用発明の「練り込まれた」及び本願発明の「被着」について,より慎重に検討したものにすぎない。 また,審査及び審判の具体的経緯に照らすと,原告は,本願発明の「臭気中和組成物が被着された」点に引用発明との対比において差異がないことを認識していたのであり,実質的に弁明済みであり,原告に意見を述べる機会や補正をする機会があったといえる。 イ本願発明における相違点2に係る構成要件である「臭気中和組成物が吸収材上に被着されている」との点は,本願の出願当初の明細書に,周知例7として開示されており,既に,公知,もしくは周知の事項となっているから,本願発明において格別の技術的意義を有する特徴点とはいえない。原告は,本件出願の時点において,既に,上記の点が,公知,もしくは周知の事項であることを認識しており,審決の相違点2の認定判断で引用発明の「練り込まれた」及び本願発明の「被着」についてより慎重に検討したことは,原告にとって不利益とはいえない。 審決において,相違点2を認定した上で,周知例6,7を示しつつその容易想到性について判断したことは,特許法159条2項の「異なる拒絶の理由を発見した場合」に当たるものではなく,同項において準用する同法50条の規定に何ら反するものとはいえない。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,以下のとおり,審決は,本願発明が出願前公知の発明に基づいて容易に発明をすることができたとする理由を示しておらず,また,仮に何らかの理由 るものとはいえない。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,以下のとおり,審決は,本願発明が出願前公知の発明に基づいて容易に発明をすることができたとする理由を示しておらず,また,仮に何らかの理由 を示したと読むことができたとしても,その理由には誤りがあると判断する。 1 相違点1についての容易想到性判断の誤り(取消事由1)について審決は,周知例1ないし5を例示して,本願発明の引用発明との相違点1に係る構成(「液体不透過性壁の内表面に隣接して吸収材が配置されたシート状部材において,その吸収材に隣接して液透過性のライナーを配置すること」)は,従来周知の事項であり,容易であるとの結論を示しているが,そのような結論に至った合理的な理由を示していない。 (1) 本願明細書と刊行物1の各記載本願明細書及び刊行物1には,それぞれ,以下の記載がある。 ア本願明細書の記載本願明細書(甲1)には,以下の記載がある。 「【0008】発明の要約本発明は,飲食物の食べ残しや廃棄物の処分に用いられる容器に関する。この容器は,内表面および外表面を有する液体不透過性壁から構成され,容器の中には,吸収材が入れられている。吸収材には,効果的な量の臭気中和組成物がその上に被着されている。吸収材は,容器の壁の内表面に接着されていることが好ましい。この容器には,それ自身を閉じ,封止する手段が含まれることが好ましい。好ましい態様において,容器の壁は,薄く,柔軟なプラスチックから構成される。製造者の望みに依存して,ここに記される容器は,壁の内表面に連続した層で,あるいは断続的に接合される吸収材を有することができる。 【0009】吸収材に被着された臭気中和組成物は,シクロデキストリン,活性炭,重曹,ゼオライト,シリカ,およびそれらの混合物, 連続した層で,あるいは断続的に接合される吸収材を有することができる。 【0009】吸収材に被着された臭気中和組成物は,シクロデキストリン,活性炭,重曹,ゼオライト,シリカ,およびそれらの混合物,キラント(chelant),および抗菌剤からなる群の中から選ばれる臭気吸収成分を含むことが好ましい。 【0010】別の態様において,容器は,効果的な量の臭気中和化合物が被着された吸収材に隣接して配置される液体透過性ライナーをさらに備える。吸収材は,液体不透過性壁の内表面に隣接して配置される。液体不透過性壁は,内表面および外 表面を有し,飲食物廃棄物を受け入れる開口部を規定する。 【0022】別の態様において,容器は,効果的な量の臭気中和化合物が被着された吸収材に隣接して配置された液体透過性ライナーをさらに備える。吸収材は,液体不透過性壁の内表面に隣接して配置される。液体不透過性壁は,内表面および外表面を有し,飲食物廃棄物を受け入れるための開口を規定している。この態様では,液体不透過性壁の内表面と液体透過性ライナーは,互いに直接接合していること,および,添着手段(図示せず)によって,それらを直接吸収材に接合することにより,互いに間接的に接合していることが好ましい。好適な添着手段は後に記す。 【0023】液体透過性ライナーは,人の皮膚に従順で,やわらかな触感で,刺激を与えないものであり,液体をすぐにその厚さを染み通させるものである。ライナーを設けることによって,飲食物の廃棄物および食べ残しを中に入れる過程で容器の中に手を入れる消費者は,液状の廃棄物でほとんど,あるいは完全に飽和された吸収材との偶発的で,望ましくない接触をしないですむ。 【0024】好適な液体透過性ライナーは,多孔質発泡体,網状化発泡体,開孔プラスチックフィルム,また 廃棄物でほとんど,あるいは完全に飽和された吸収材との偶発的で,望ましくない接触をしないですむ。 【0024】好適な液体透過性ライナーは,多孔質発泡体,網状化発泡体,開孔プラスチックフィルム,または天然繊維(たとえば,木材あるいは綿繊維),合成繊維(たとえば,ポリエステルあるいはポリプロピレン繊維)もしくは天然繊維と合成繊維の組み合わせの織製もしくは不織ウェブのような広範囲の材料から製造され得る。 【0025】吸収材-本発明は,食事あるいはその他の飲食品の調製あるいは消費の間に生み出される,液状の飲食物廃棄物を吸収および含有する吸収材を含む。そのように液体を吸収することにより,それらの液体が容器から漏れ出す機会は,有意に減少する。 【0026】吸収材は,一般的に,圧縮でき,人の皮膚に刺激を与えず,液状の飲食物廃棄物を吸収および保持することができるいかなる吸収手段であってもよい。 吸収材は,一般的にエアーフェルト(airfelt)といわれる粉砕木材パルプのような吸収製品に一般的に用いられる広範な液体吸収材から製造することができ る。他の好適な吸収材の例は,紙綿,コフォーム(coform)等の溶融吹き込みポリマー,架橋セルロース繊維,ティシューラップ(tissuewraps)等のティシュー(tissue),吸収性発泡体,吸収性スポンジ,超吸収性ポリマー,ゲル化性吸収材,あるいはその同等の材料,あるいは混合材料を含む。 しかし,吸収性コアの全吸収能力は,設計負荷と容器の意図された使用に適合するべきである。」本願明細書には,【図4】として,別紙図1が記載されている。 イ刊行物1の記載刊行物1(甲6)には,以下の事項が記載されている。 「〔技術分野〕本考案は家庭用,業務用等に用いられるゴミ入れ袋で,特に生ゴミを として,別紙図1が記載されている。 イ刊行物1の記載刊行物1(甲6)には,以下の事項が記載されている。 「〔技術分野〕本考案は家庭用,業務用等に用いられるゴミ入れ袋で,特に生ゴミを収納するのに適するゴミ入れ袋に関するものである。 〔背景技術〕従来,ゴミ入れ袋周辺には悪臭,汚水が発生し,特に生ゴミを収納するゴミ入れ袋については腐敗臭,悪臭の発生があり問題となっていた。この対策として生ゴミを微粉砕して下水に流してしまうデイスポーザーがあるが,このものは最近の傾向として下水放流が禁止される方向にある。芳香消臭剤をゴミ容器周辺にスプレー噴務しても持続がなく解決には至っていない。 〔考案の目的〕本考案の目的とするところは,腐敗臭,悪臭,汚水の発生しないゴミ入れ袋を提供することにある。 〔考案の開示〕本考案は活性炭,ゼオライト等の単独,混合物,組合せ等からなる吸臭剤や吸水ポリマーをゴミ入れ袋に直接収納したり或は吸臭剤や吸水ポリマーの層をゴミ入れ袋内面に被覆したりして内蔵したことを特徴とするゴミ入れ袋で,袋の材質はポリエチレン,ポリプロピレン,ポリビニルクロライド,ポリエステル,ポリアミド等 のプラスチック袋である。使用に際しては生ゴミ等を本考案のゴミ入れ袋に入れる丈でよい。生ゴミ等から発生する水分は吸水ポリマーに吸着されるので汚水発生がなく,且つ水分による腐敗の進行を抑制することができる。更に生ゴミ等から発生する腐敗臭,悪臭は吸臭剤に吸着されるので臭気の発生を防止することができるものである。 実施例第1図は本考案の一実施例を示すゴミ入れ袋の簡略断面図である。第1図に示すように抗菌性ゼオライト(シナネンニユーセラミック製,商品名ゼオミック)1を練り込んだ吸水性ポリマー層2をポリエチレン 例第1図は本考案の一実施例を示すゴミ入れ袋の簡略断面図である。第1図に示すように抗菌性ゼオライト(シナネンニユーセラミック製,商品名ゼオミック)1を練り込んだ吸水性ポリマー層2をポリエチレン袋3の内面に被覆してゴミ入れ袋を得た。 〔考案の効果〕本考案のゴミ入れ袋によれば,生ゴミ等の汚水は吸水ポリマーで吸着され,腐敗臭,悪臭は吸臭剤で吸着されるので汚水,臭気の発生を防止することができるようになったものである。」(1ページ8行~3ページ11行)刊行物1には,第1図として,別紙図2が記載されている。 (2) 判断当事者間に争いない事実及び(1)で認定した事実に基づいて,相違点1に係る構成の容易想到性の有無について,判断する。 ア審決において,特許法29条2項が定める要件の充足性の有無,すなわち,当業者が,先行技術に基づいて,出願に係る発明を容易に想到することができたか否かを判断するに当たっては,客観的であり,かつ判断が適切であったかを事後に検証することが可能な手法でされることが求められる。そのため,通常は,先行技術たる特定の発明(主たる引用発明)から出発して,先行技術たる別の発明等(従たる引用発明ないし文献に記載された周知の技術等)を適用することによって,出願に係る発明の主たる引用発明に対する特徴点(主たる引用発明と相違する構成)に到達することが容易であったか否かを基準としてされる例が多い。 他方,審決が判断の基礎とした出願に係る発明の「特徴点」は,審決が選択,採用した特定の発明(主たる引用発明)と対比して,どのような技術的な相違があるかを検討した結果として導かれるものであって,絶対的なものではない。発明の「特徴点」は,そのような相対的な性質を有するものであるが,発明は,課題を解決するためにされ て,どのような技術的な相違があるかを検討した結果として導かれるものであって,絶対的なものではない。発明の「特徴点」は,そのような相対的な性質を有するものであるが,発明は,課題を解決するためにされるものであるから,当該発明の「特徴点」を把握するに当たっては,当該発明が目的とした解決課題及び解決方法という観点から,当該発明と主たる引用発明との相違に着目して,的確に把握することは,必要不可欠といえる。 その上で,容易想到であるか否かを判断するに当たり,「『主たる引用発明』に『従たる引用発明』や『文献に記載された周知の技術』等を適用することによって,前記相違点に係る構成に到達することが容易であった」との立証命題が成立するか否かを検証することが必要となるが,その前提として,従たる引用発明等の内容についても,適切に把握することが不可欠となる。 もっとも,「従たる引用発明等」は,出願前に公知でありさえすれば足りるのであって,周知であることまでが求められるものではない。しかし,実務上,特定の技術が周知であるとすることにより,「主たる引用発明に,特定の技術を適用して,前記相違点に係る構成に到達することが容易である」との立証命題についての検証を省く事例も散見される。特定の技術が「周知である」ということは,上記の立証命題の成否に関する判断過程において,特定の文献に記載,開示された技術内容を上位概念化したり,抽象化したりすることを許容することを意味するものではなく,また,特定の文献に開示された周知技術の示す具体的な解決課題及び解決方法を捨象して結論を導くことを,当然に許容することを意味するものでもない。 本件についてこれをみると,審決は,「主たる引用発明」に「従たる引用発明等」を適用することによって,容易想到性を判断したものではなく,「特定の引用発明」の 然に許容することを意味するものでもない。 本件についてこれをみると,審決は,「主たる引用発明」に「従たる引用発明等」を適用することによって,容易想到性を判断したものではなく,「特定の引用発明」のみを基礎として,これに特定の技術事項が周知であることによって,本願発明と引用発明との相違点に係る構成は,容易に想到することができるとの結論を導いたものである。 そこで,本件において,このような審決の理由づけをしたことの適否について,上記の観点をも踏まえた上で検討する。 イ本願明細書に関する上記記載によれば,本願発明は,飲食物の食べ残しや廃棄物の処分に用いられる容器に関するもので,内表面および外表面を有する液体不透過性壁から構成され,容器の中には,吸収材が入れられ,吸収材には,効果的な量の臭気中和組成物がその上に被着されているものである。そして,「液体透過性ライナー」を吸収剤に隣接して配置するとの構成が採用されている。また,好適な液体透過性ライナーとしては,多孔質発泡体,網状化発泡体,開孔プラスチックフィルム,または天然繊維(たとえば,木材あるいは綿繊維),合成繊維(たとえば,ポリエステルあるいはポリプロピレン繊維)もしくは天然繊維と合成繊維の組み合わせの織製もしくは不織ウェブのような広範囲の材料から製造され得るとの記載がある。上記構成を採用した目的は,飲食物の廃棄物および食べ残しを中に入れる過程で容器の中に手を入れる消費者は,液状の廃棄物でほとんど,あるいは完全に飽和された吸収材との偶発的で,望ましくない接触を回避できる旨が記載されている。 これに対して,審決の認定した引用発明の内容は,「生ゴミを収納するためのゴミ入れ袋であって,生ゴミを受け入れるための開口を有し,かつ内面と外面を有するプラスチック袋と,前記プラスチック袋 いる。 これに対して,審決の認定した引用発明の内容は,「生ゴミを収納するためのゴミ入れ袋であって,生ゴミを受け入れるための開口を有し,かつ内面と外面を有するプラスチック袋と,前記プラスチック袋の前記内面に被覆された吸水性ポリマー層とを備え,前記ゴミ入れ袋は前記吸水性ポリマー層に練り込まれた抗菌性ゼオライトを有する,生ゴミを収納するためのゴミ入れ袋。」である。 引用発明においては,「吸水性ポリマー層」が吸水材として用いられ,プラスチック袋の内面に「被覆」されたものであること,及び刊行物1の第1図を参照すれば,「吸水性ポリマー層」は,プラスチック袋と一体化されていることから,その被覆された形状は,安定的に維持されていると理解するのが合理的である。そして,吸収性ポリマー層には,抗菌性ゼオライトを「練り込んだ」と記載されていることに照らすならば,被覆された層は,溶剤に溶かしたり熱溶融したりするなどして,流動性を持たせた吸水ポリマーにゼオライトを練り込んだものが被覆されることに よって,プラスチック袋の基材と一体化されて,積層されていると理解される。被覆された層の一体化された形状は,「吸水性ポリマー層」が吸水した場合であってもなお,その形状が保持されるものと理解するのが合理的である。 そうであるすると,引用発明において,「消費者が,液状の廃棄物でほとんど,あるいは完全に飽和された吸収材との偶発的で,望ましくない接触をすること」を回避する目的のために,さらに「液体透過性ライナー」を「吸収剤」に隣接して配置するとの構成を採用する動機はない。 したがって,本願発明の相違点1に係る構成は,引用発明から,容易に想到することができるとした審決の判断には,誤りがある。 ウこの点について,審決は,「液体不透過性壁の内表面に隣接して吸収 い。 したがって,本願発明の相違点1に係る構成は,引用発明から,容易に想到することができるとした審決の判断には,誤りがある。 ウこの点について,審決は,「液体不透過性壁の内表面に隣接して吸収材が配置されたシート状部材において,その吸収材に隣接して液透過性のライナーを配置すること(周知事項1)」は,周知例1~5により周知事項であると認定した上で,「してみると,引用例における吸収剤である吸水性ポリマー層に隣接して,液透過性のライナーを配置することは,当業者が容易になし得たことである。」と記載するが,その理由は示されておらず,審決のこの記載には,以下のとおり理由不備ないし判断の誤りがある。 確かに,周知例1ないし5には,液透過性のライナーが,吸収材に隣接して配置された技術が記載されている。 しかし,そのような技術事項が記載されているからといって,本件において,「引用発明を起点として,上記の技術事項を適用することにより,本願発明の相違点1に係る構成に到達することが容易である」との立証命題について,引用発明の内容,本願発明の特徴,相違点の技術的意義,すなわち「液透過性のライナーが,吸収材に隣接して配置された技術」の有する機能,目的ないし解決課題,解決方法等を捨象して,「その吸収材に隣接して液透過性のライナーを配置する」技術一般について,一様に周知であるとして,当然に上記命題が成り立つとの結論を導くことは,妥当を欠く。 なお,周知例には,吸収材の材料として,吸取紙または不織布(周知例1),高吸水性高分子材料(周知例2,3,4),吸収性ポリマーを含む紙や発泡合成樹脂(周知例5)が使用されていることに照らすならば,これを吸収材として有するシート状材料において,「液体透過性のライナー」は,これら粉状,粒状の材料を基材であ ),吸収性ポリマーを含む紙や発泡合成樹脂(周知例5)が使用されていることに照らすならば,これを吸収材として有するシート状材料において,「液体透過性のライナー」は,これら粉状,粒状の材料を基材である液体不透過性シートの上に移動したり,脱落したりすることを防ぐ目的で用いられる技術としては,周知であると解することもできないではない。 しかし,仮に,そのように理解したとしても,引用発明に,上記の意味に理解した周知技術を適用して,本願発明の相違点1に係る構成に至ることの動機付けはなく,容易であるとの結論を導くことはできない。すなわち,引用発明は,「吸水性ポリマー層」が吸水材として用いられ,プラスチック袋の内面に「被覆」されたものであること,「吸水性ポリマー層」はプラスチック袋と一体化されていること等から,その被覆された形状及び態様は,安定的に維持されている(少なくとも安定的に維持されることを目的として形成されている)と解されること,引用発明の吸収材は,基材シート上に配置された吸収材の形状等をさらに維持しなければならない課題はないと解されることに照らすならば,吸収材の形状等を維持する等の目的のために,刊行物1に記載も示唆もない「液透過性のライナー」を,あえて配置する動機付けは存在しない。 結局,周知事項1を適用することが容易であるとした審決の理由は,理由不備ないし判断の誤りがある。 エそうすると,本願発明における相違点1に係る構成について,引用発明を起点として,周知事項1を適用することにより当業者が容易になし得たということはできず,相違点1に関する審決の容易想到性に関する判断は誤りである。 2 相違点2についての容易想到性判断の誤り(取消事由2)について審決は,本願発明の引用発明との相違点2に係る構成について,「吸収材にゼオライト等の臭 審決の容易想到性に関する判断は誤りである。 2 相違点2についての容易想到性判断の誤り(取消事由2)について審決は,本願発明の引用発明との相違点2に係る構成について,「吸収材にゼオライト等の臭気中和組成物を保持させるのに,その組成物を吸収材上に被着させて行うこと」は,周知例6,7により周知事項であると認定した上で,「してみると, 引用発明の抗菌性ゼオライトを吸収材上に被着することは,当業者が容易になし得たことである。」と述べるのみであって,その理由を示していない。 しかし,審決のこの点の判断には,以下のとおりの誤りがある。 (1) 本願明細書と刊行物1の各記載本願明細書と刊行物1の各記載は,1の(1)記載のとおりである。 (2) 判断2つの材料を併用して両者の機能を併せ持った複合材料とするに当たっては,様々な態様が考えられ,混合,被着のいずれも,想定される態様といえるから,「吸収材にゼオライト等の臭気中和組成物を保持させるのに,その組成物を吸収材上に被着させて行うこと」が,周知の事項であるとした審決の認定に,誤りはない。 しかし,刊行物1には,臭気中和組成物である抗菌性ゼオライトは吸収材に練り込まれていることが記載され,「練り込むこと」に解決課題があること及び「練り込むこと」に代えて,他の態様を選択することを示唆する何らの記載もない。 そこで,引用発明において,抗菌性ゼオライトを吸収性ポリマーに「練り込むこと」に代えて,吸収性ポリマー層の上に「被着」する態様を選択したことを想定すると,当業者であれば,かえって,吸収材表面から抗菌性ゼオライトの粉体が脱落するとの問題が発生するものと理解する(甲12)。そうだとすると,引用発明の「練り込むこと」に代えて,問題の生じる可能性のある態様を選択することは,特段 ,吸収材表面から抗菌性ゼオライトの粉体が脱落するとの問題が発生するものと理解する(甲12)。そうだとすると,引用発明の「練り込むこと」に代えて,問題の生じる可能性のある態様を選択することは,特段の事情のない限り,回避されるべき手段であると解するのが相当である。審決は,何らの理由を示すこともなく,当然に容易であるとの結論を導いた点において,誤りがある。 そうすると,本願発明における相違点2に係る構成について,引用発明を起点として,周知事項2を適用することにより当業者が容易になし得たものということはできず,相違点2に関する審決の容易想到性に関する判断は誤りである。 3 結論以上によれば,その余の点につき判断するまでもなく,原告主張の取消事由1及 び2は理由がある。よって,審決を取り消すこととし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官池下朗 裁判官武宮英子 別紙 図1(本願明細書の【図4】) 図2(刊行物1の第1図)
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