【DRY-RUN】○ 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 ○ 事実 控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が昭和三九年六月二日建設省告示第一三 七六号をもつてなした木曾川下流改修工事に関する事業
○ 主文本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 ○ 事実控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が昭和三九年六月二日建設省告示第一三七六号をもつてなした木曾川下流改修工事に関する事業認定処分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」 との判決および終局判決前に右認定処分が違法であることの宣言を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。 当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、援用および認否は、左記のとおり附加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。 控訴代理人の陳述一、被控訴人のなした前記請求の趣旨記載の事業認定処分(以下本件事業認定処分と称する)は、起業者が提出した事業認定申請書に基づきなされたものであるが、右申請書には控訴人の意見書(土地収用法(昭和四二年法律第七四号による改正前のもの、以下単に法と称する)第一八条第二項第四号によるもの)の添付を欠いていたから、本件事業認定処分には、重大且つ明白な瑕疵があり違法であつて、取消を免れないものである。 二、法第四条は、現に公共の利益となる事業の用に供されている土地等は特別の必要がなければ他の公益事業のため収用又は使用することができない旨定めているが、右特別の必要の有無はいわゆる事業認定権者の判断に委されているので、法第一八条は右土地が起業地内に存するときは、その土地の管理者の意見書を事業認定申請書に添付することを要するものとして、右事業認定権者が右特別の必要の有無を右管理者の意見を参考にしながら独断を避け公正且つ妥当に判断すべきことを定めているのである。けだし、事業の認定があれば、起業地内にある土地は収用委員会の裁決により収用又は使用され、その結果私権の大宗である土地所有権が消滅するという重大な効果を生ずることとなるのであるから、事 いるのである。けだし、事業の認定があれば、起業地内にある土地は収用委員会の裁決により収用又は使用され、その結果私権の大宗である土地所有権が消滅するという重大な効果を生ずることとなるのであるから、事業認定権者のなす右の判断に土地管理者の意見を反映させこれを慎重になさしめることは当然であつて、かように右意見書の添付は重大な意義を有するものであるから、これを欠く事業認定申請書に基づきなされた本件事業認定処分が違法であつて、これが取消を免れないことは明らかであるといわねばならない。 三、起業者である建設大臣は、起業者と事業認定権者とが共に建設大臣であることを奇貨として、後に生ずる控訴人への補償を自己に有利に進展せしめようとする不当な意図により互に通謀して、控訴人が再三右管理者としての意見書を提出する旨申入れたのに、故意にこれを拒絶ないしは無視して前記のとおり事業認定申請書に控訴人の意見書を添付しないでこれを被控訴人に提出し、被控訴人は右瑕疵のある申請書に基づき本件事業認定処分をなしたのである。 証拠関係(省略)○ 理由一、本件起業者たる建設大臣が昭和三八年一一月二〇日法第一八条第二項第四号に基づく法第四条に規定する土地の管理者と称する控訴人の意見書を添付しないで木曾川下流改修工事に関する事業(以下本件事業という)認定申請書を被控訴人に提出して事業の認定を申請したところ、被控訴人は昭和三九年一月二〇日起業地が所在する愛知県海部郡立田村役場をして右事業認定申請書を縦覧に供せしめたうえ、同年六月二日附建設省告示第一三七六号をもつて本件事業認定処分をなしたことは当事者間に争いがない。 二、次に、土地収用法にもとづく事業認定処分が行政事件訴訟法上の取消訴訟の対象となる行政処分であること、および控訴人が本件事業認定処分の取消訴訟を提起するについて訴訟適 とは当事者間に争いがない。 二、次に、土地収用法にもとづく事業認定処分が行政事件訴訟法上の取消訴訟の対象となる行政処分であること、および控訴人が本件事業認定処分の取消訴訟を提起するについて訴訟適格ないし訴の利益を有することについては、当裁判所もこれを肯定するものであるが、その理由は、原判決理由(原判決一七枚目表一行目から二〇枚目裏四行目まで(偏注、本書三八頁六行目から四〇頁五行目まで))説示と同一であるから、ここにこれを引用する。 三、起業者たる建設大臣が本件事業認定申請書に法第一八条第二項第四号に基づく法第四条に規定する土地の管理者と称する控訴人の意見書を添付しないで、これを被控訴人に提出して事業の認定を申請したことは前記のとおりである。控訴人は「右控訴人の意見書の添付を欠いた本件事業認定申請書に基づきなされた本件事業認定処分は重大かつ明白な瑕疵のある違法な処分であつて取消を免れない」旨主張するので検討する。 そもそも、法第一八条第一項の事業認定申請書に同条第二項第四号により意見書を添付しなければならない法第四条に規定する土地の管理者とは、法第四条に規定するいわゆる法又は他の法律によつて土地等を収用し、又は使用することができる事業すなわち公益事業の用に供している土地等についての公益事業の面よりする管理者を指称するものであり、右土地等につき所有権を有し単に右所有権にもとづき管理する私法上の面よりする管理者はこれにあたらないものと解するを相当とする。 けだし、法第四条は現に公益事業の用に供している土地等を別の公益事業のために収用又は使用する必要を生じた場合の措置を定めたもので、この場合特別の必要があれば前者の土地等を後者の事業のために収用又は使用することを認めたものであるが、法にもとづく事業認定申請にかかる起業地内に既に右のような公益事業 生じた場合の措置を定めたもので、この場合特別の必要があれば前者の土地等を後者の事業のために収用又は使用することを認めたものであるが、法にもとづく事業認定申請にかかる起業地内に既に右のような公益事業の用に供されている土地等があるときは、起業者はその事業のため右の既に公益事業の用に供されている土地等を収用又は使用する必要の生ずることがあり得るのであつて、この場合これをなしうるかどうかは右のように特別の必要の有無にかかるものであるから、法第一八条第二項第四号において事業認定申請書に予め起業地内に存する法第四条に規定する土地等の管理者の意見書を添付せしめ事業認定権者が右の特別の必要の有無を判断するための資料を提供させようとしたものであり、私権保護のために右規定が設けられたものでないと解されるからである。そこで、控訴人が右の意味における法第四条に規定する土地等の管理者に該当する者であるかどうかについて検討するに、控訴人は「起業者たる建設大臣が昭和三八年頃から築提工事を計画した愛知県海部郡立田村地内長良川福原地区内に存する原判決添付目録記載の土地(以下本件土地と称する)は控訴人の所有に属し、そのうち同目録(1)ないし(12)の土地はいわゆる輪中堤の一部として堤防の用をなしていて控訴人が管理し、又輪中堤を構成する土地には樋管およびその隣接地には用排水施設があつて共に控訴人が所有管理し、又同目録(13)ないし(16)の土地は突出部分で堤防の用をなしていて控訴人が管理しているものであるところ、右の本件土地およびその地上にある樋管ならびにそれと一体をなす用排水施設が法第三条第二号に該当するから、控訴人がそれらの管理者として法第一八条第二項第四号の管理者に該当する」旨主張する。しかし、右主張は要するに本件土地及び控訴人主張の樋管、用排水施設等が控訴人の所 設が法第三条第二号に該当するから、控訴人がそれらの管理者として法第一八条第二項第四号の管理者に該当する」旨主張する。しかし、右主張は要するに本件土地及び控訴人主張の樋管、用排水施設等が控訴人の所有に属し、控訴人において右所有権にもとづき本件土地等を管理することを主張するに過ぎず、前説示にいう控訴人が本件土地等につき公益事業の面よりする管理者(控訴人の主張によれば法第三条第二号にいう河川に関する事業を行う面よりする管理者ということになる)であることを主張(又その立証もない)するものでないこと明らかであるから、仮に、控訴人において本件土地等を所有し、右所有権にもとづき本件土地等を管理しているものとしても、これによつて、控訴人が本件土地等につき法第一八条第二項第四号に定める当該土地の管理者にあたるものとはなし難い。 してみると、起業者である建設大臣が本件事業にかかる事業認定申請書に起業地内にある法第四条に規定する土地の管理者と称する控訴人の意見書を添付しないでこれを被控訴人に提出したのは相当であつて、これについては何らの違法のかどはないものといわねばならないから、本件事業認定処分が控訴人の右意見書を欠く事業認定申請書に基づきなされた重大且つ明白な瑕疵があるものとして無効であるとする控訴人の主張は採用することができない。 四、以上によれば、本件事業認定処分が無効であることを前提とする控訴人の本訴請求はその余のことを判断するまでもなく失当であることが明らかである。 五、よつて、原判決は相当であつて、控訴人の本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。 (裁判官布谷憲治福田健次豊島利夫) 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実原 、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。 (裁判官布谷憲治福田健次豊島利夫) 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実原告は、被告が昭和三九年六月二日建設省告示一三七六号をもつてなした木曾川下流改修工事に関する事業認定処分を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。との判決、終局判決前に右認定処分が違法であることの宣言を各求め、請求の原因として一、別紙目録記載の土地はもと原告の父Aが所有していたが、その後相続(昭和二二年一二月二五日右Aの死亡により原告および原告の母Bが相続し、昭和三六年一二月二九日右Bの死亡により右Bの持分につき原告および原告の子C、Dの三名が相続)により、原告および原告の子C、Dの三名が共有するところとなつた。 二、右土地のうち別紙目録(1)ないし(12)の各土地は輪中堤の一部をなす部分であるが、右輪中堤は寛永一二年頃原告の祖先Eが洪水防止の目的で築造し(甲第七、第八号証)、爾来原告側において私財を投じて復旧工事をなし、治水の目的に供してきたものであつて、現在もなお原告らにおいて所有管理している堤防である。右輪中堤を構成する右土地上にある樋管およびその隣接地に存在する用排水施設(水門、貯水槽、ポンプアツプ施設、水路等)は明治時代に原告の父Aが治水、利水の目的で築造したものであつて、これまた原告らの所有管理に属している。 三、本件土地のうち別紙目録(13)ないし(16)の各土地は突出部分であるがこれは堤防で、原告等の所有管理に属し、右突出堤がなければ年に数回ある出水時にはその内側の宅地、耕地は上流より激流を直接受け、流亡の危険にさらされるのみならず、輪中堤に対する流水も強くなるのでその破壊を防禦する機能をも有している。すなわち水位が輪中堤と突出堤とを越 出水時にはその内側の宅地、耕地は上流より激流を直接受け、流亡の危険にさらされるのみならず、輪中堤に対する流水も強くなるのでその破壊を防禦する機能をも有している。すなわち水位が輪中堤と突出堤とを越えない程度の通常の洪水時には、突出堤は上流よりの激流が直接輪中堤北部にぶつかりこれを破壊する危険を防止し、またこの突出堤がなければ同激流が輪中堤東方の木曾、長良背割堤との狭窄部分に直接流入し、それがため水位水勢が高まつて輪中堤が破壊される危険にさらされるが、突出堤の存在により同狭窄部分へ流入する水量が制限され、さらに前記堤内地が遊水池として働き水勢もおだやかになつて同部分を通過することとなる。なお、右突出部分は異常洪水には付近の住民の避難通路としての機能をも併せ有している四、起業者たる建設大臣は昭和三八年頃から本件土地を含む愛知県海部郡<以下略>地区内において築堤工事を計画し、そのため本件土地を買収すべく同年九月頃から立入調査を治めた。 五、そのころ原告は起業者に対し本件土地およびその地上にある樋管ならびにそれと一体をなす用排水施設が土地収用法第三条第二号に該当するものであるから、同法第一八条第二項第四号、第四条の規定に従い事業認定申請書に添付するため所有者管理者として意見書を提出する用意がある旨申し入れた。 六、ところが起業者は原告の意見を添付しないで昭和三八年一一月二〇日本件土地を含む地域を起業地として本件事業認定を申請し、昭和三九年一月二〇日から愛知県海部郡立田村役場で右事業認定申請書の縦覧が行われた。そこで原告は同月二七日土地収用法第二五条に基づき、愛知県知事に対し右事業認定申請書に原告の意見書の添付を欠くことを指摘し、原告として要請があればただちに意見書を提出する用意がある旨申し立てた。しかるに被告は原告に対し何んら意見書の提出を求め づき、愛知県知事に対し右事業認定申請書に原告の意見書の添付を欠くことを指摘し、原告として要請があればただちに意見書を提出する用意がある旨申し立てた。しかるに被告は原告に対し何んら意見書の提出を求めることなく同年六月二日付建設省告示第一三七六号を以つて本件事業認定処分をした。 七、原告は昭和三九年七月二日本件事業認定処分に関し異議申立をなし、さらに右異議申立に対して決定をしない不作為についても異議申立を行なつたところ、被告は昭和四〇年一〇月一四日本件土地およびその土地上にある樋管ならびにそれと一体をなす用排水施設につき原告主張の如く意見書の添付を要するものであり、従つて本件事業認定処分はこの点に瑕疵があることを認めながら原告の右各異議申立をいずれも棄却する旨の決定をなし、右決定書は同年一一月一日原告に送達された。 八、被告のなした本件事業認定処分はその事業認定申請書に原告の右意見書の添付を欠き、土地収用法第三条第二号、第一八条第二項第四号、第四条の規定に違背し、しかもその際被告が原告の意見書の添付を故意に拒否した事情がある等重大かつ明白な瑕疵を伴つた違法な処分であるから取消されるべきものである。 九、また起業者たる建設大臣は右違法な事業認定に基づきすでに収用手続を続行しているので行政事件訴訟法第三一条第二項の規定により終局判決前に右事業認定処分が違法であることの宣言を求める。と述べ、尚被告の主張事実一の(一)の点を否認し、同(二)のうち被告主張のとおり河川区域に認定された点を認め、その余の点を争い、旧河川法において河川と称するのは流水とその敷地との統合体を指すのであつて本件土地のような堤防(輪中堤)は右河川とは別個のものと考えられる。従つて本件土地に河川法の規定を適用するためにはまず本件土地につぎ河川附属物の認定が行なわれなければならず、 統合体を指すのであつて本件土地のような堤防(輪中堤)は右河川とは別個のものと考えられる。従つて本件土地に河川法の規定を適用するためにはまず本件土地につぎ河川附属物の認定が行なわれなければならず、その認定がない以上は被告主張のように河川区域の認定のみにより右土地の私権が消滅することはありえない。と述べ、同(三)のうち被告主張のような河川附属物の認定処分のあつたことを認め、その余の点を争い、原告は現在まで本件土地の相続税、固定資産税を支払つてきており、被告もこのことを認めて昭和三九年一二月一五日愛知県収用委員会へ本件土地を収用すべく裁決申請な行つている。なお、被告が私権が消滅していると主張している本件土地のうち別紙目録(6)、(11)、(12)とその物理的形状を同じくし、いずれも人為的に築造され輪中堤小段として同様の機能を有している<以下略>、<以下略>、<以下略>、<以下略>、および<以下略>の各土地(被告の主張によればこれらの土地はいずれも右河川附属物認定により私権が消滅している。)を被告はいずれも私有地として買収している(甲第一五号証の一ないし四)と述べ、同(四)のうち原告らが輪中堤を構成する土地を占有していたことを認め、その余の点を争い、なお、輪中堤については昭和一四年八月四日旧河川法第四条第二項により河川附属物に認定された後も、原告らの所有権登記は抹消されていないし、また登記用紙も閉鎖されていないので、右日時より同堤が愛知県知事の管理するところに帰したものとはいいえない。と述べ、同二の点を否認し、同三の点を争い、土地収用法第四条に規定する土地等は現に供用されている公益の目的が尊重され、特別の必要がない限り他に収用されることがないことを規定し、それが他の公益事業の特別の必要により収用できるかどうかを判断する場合にはその土地等の する土地等は現に供用されている公益の目的が尊重され、特別の必要がない限り他に収用されることがないことを規定し、それが他の公益事業の特別の必要により収用できるかどうかを判断する場合にはその土地等の管理者の意見書を求める等特別に慎重な手続を規定し、当該土地を所有管理する者の権益を保護しているのであつて、法は起業者または事業認定者が土地等の管理者に意見書の提出を求めてもその者がその権益を自ら放棄し、意見書を提出しない場合にのみその提出を強制せずにそのまま事業認定処分が行なえることを規定しているにずきないものとみるべきである。しかるに本件の場合被告は土地収用法の規定により意見書を提出したいという原告の再三の申し入れをことさら拒否し、そのため起業者が提出した一方的な資料により突出堤の有する公益的機能について全く誤つた判断の上にたつて本件事業認定を行なつたのであるから、右事業認定は同堤防を所有管理する原告の権益を全面的に侵奪した重大かつ明白な違法処分である。 と述べ、同四の点を争い、憲法第二九条の私有財産絶対の原則ならびに土地収用法の精神からみて、私権の保護もその立法理由となつているものとみるべきである。 仮に事業の公益性を比較衡量するものとしても、土地の所有管理者である原告の意見を聞く必要があり、これを欠く本件事業認定処分は重大な瑕疵がある。なお、現地の実情にくわしい原告の意見を求められるならば河川敷の土砂の浚渫、現在堤防の補強等により収用することなく被告の計画する目的を達成する方法がある。と述べ、同五のうち原告が昭和三九年七月一〇日本件土地の一部について本件事業に着工することを承諾した点を認め、その余の点を争い、原告は地元民の希望もあつて、被告が誠実に収用することを条件として一部土地の使用を認めたものに過ぎず、本件瑕疵を許容したものではなく、原 本件事業に着工することを承諾した点を認め、その余の点を争い、原告は地元民の希望もあつて、被告が誠実に収用することを条件として一部土地の使用を認めたものに過ぎず、本件瑕疵を許容したものではなく、原告は昭和三九年七月二日付で本件事業認定処分の取消を求める旨の不服申立をなしているのであるから、起業者も右処分が取消される場合のあることを覚悟で事業に着工したものである。と述べ、原告の反論として昭和一四年八月四日愛知県知事のなした旧河川法第四条第二項にもとづく河川附属物認定処分はその対象となる物件の表示の仕方が甚だ漠然としており特定されていないから法律上有効なものと認められず、従つて私権消滅の効果を生じないものである。仮りに右河川附属物の認定処分が右の如き表示のままで有効であるとしても、旧河川法第四条の支川、派川について区域認定がなければ私権は消滅しないのと同様に本件においても「河川に関する規定に従いて」河川附属物の区域の認定が行われなければ私権消滅の効果は生じないものとみるべきであるが、本件土地については右のような河川附属物の区域の認定は行われていない。と述べ、被告の本案前の主張に対する答弁として、事業認定処分がなければ収用委員会が土地収用の裁決をすることは起こり得ず、従つて公用徴収権の設定という結果も生じないのであるから、事業認定処分によつて収用委員会の収用の裁決にまで発展する端緒が作り出され、それによつて土地所有者は一種の法的拘束力(不利益)を受け、事実上土地の処分を著しく制限されるに至るものであつて、右のように事業認定処分が土地所有者の法律上の地位に不利益な変動を及ぼすものである以上、それは行政訴訟の対象となるというべきである。と述べた。 被告は本案前の答弁として本件訴を却下する。訴訟費用は原告の負担とする。との判決を求め、本案前の主張 地位に不利益な変動を及ぼすものである以上、それは行政訴訟の対象となるというべきである。と述べた。 被告は本案前の答弁として本件訴を却下する。訴訟費用は原告の負担とする。との判決を求め、本案前の主張として、事業認定なる行政行為は行政訴訟の対象となる行政処分ではないから本件訴は不適法である。即ち(一) 土地収用法にいう事業認定は起業者に対する関係において、事業が私有財産の収用を許すだけの公益上の価値があることを認定して起業者に爾後土地収用法に定める手続(土地細目の公告、協議および収用裁決)を経ることを条件として収用の目的物を取得しうる機能を付与する行為であるにとどまり、起業者以外の第三者たる原告に対して何らの法律上の効果をおよぼすものではないから、原告にとつては事業認定は行政訴訟の対象となる行為ではない。 (二) 事業認定が公用徴収手続の基礎となる行政行為であるといつても、それは公用徴収手続を開始することを認めたにとどまり、公用徴収の対象物は収用委員会の裁決によつて始めて確定されるのであるから、収用委員会の裁決を争う途がある以上、それ以前の手続の段階において行政訴訟を認めなければ権利救済が遅きにすぎるというわけのものでもなく、また土地細目の公告に伴い形質変更禁止の効果が生ずるにしても、それは法がその後の手続の円滑な遂行に対する障害を除去するため付与した附属的な効果であるから、これを以つて直接に特定の者に向けられた具体的処分であるとみることは相当ではない。 (三) 事業認定について異議申立、審査請求が認められるのは事業が私有財産の収用を許すだけの公益上の価値があるかどうかを再検討するためであつて、それは行政作用の正当性を維持することを目的とし、特定個人の権利救済を目的とするものではないから、事業認定について異議申立、審査請求が認められているこ 上の価値があるかどうかを再検討するためであつて、それは行政作用の正当性を維持することを目的とし、特定個人の権利救済を目的とするものではないから、事業認定について異議申立、審査請求が認められていることを以つてこれについて行政訴訟の対象たりうる適格性をも付与されているものということはできない。と述べ、本案につき原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする、との判決を求め、答弁として、請求の原因たる事実一につき本件土地のうち別表目録(1)ないし(12)の部分が原告およびその子C、Dら三名の共有に属することは否認するがその余の点は認める。同二のうち別紙目録(1)ないし(12)の各土地が輪中堤の一部であつてその土地上に樋管が存することは認めるが、右各土地が原告らの所有管理に属していること、樋管および用排水施設が原告らの管理に属していることは否認しその余は不知。同三のうち突出部分が堤防であることを否認し、その余の点を認める。堤防といいうるためには河川の機能即ち河川の流水によつて生ずる公利を増進し、または公害を除却もしくは軽減して河川をして公共の利益に適合せしめるような効用を有する施設でなければならない。(旧河川法第四条第二項、新河川法第三条第二項)(一)ところで本件長良川の水位が東京湾中等潮位二米程度の出水をみると、たとえ流水が突出部分を越えなくても、流水はその尖端部の低地沿いに堤内地(輪中堤と突出部分とにより囲繞された部分)に流入し、水位二米をこえる出水の場合には、堤内地は全部冠水するに至るのであるが、長良川の流量が平均的水位の場合で二五〇〇立方米/秒に達すれば同川の福原輪中附近の水位は東京湾中等潮位二米をこえる水位をこえるものであるから、該堤内地は必ず冠水する憂目にあうわけであつてこのような状況では突出部分は堤内地を出水より防禦するとい /秒に達すれば同川の福原輪中附近の水位は東京湾中等潮位二米をこえる水位をこえるものであるから、該堤内地は必ず冠水する憂目にあうわけであつてこのような状況では突出部分は堤内地を出水より防禦するという堤防としての効用を果たしているものとはいえない。(二)また突出堤があれば輪中堤に対する流水の勢をそぐといつても輪中堤によつて流路を狭ばめられた流水が突出部分をこえる水位(東京湾中等潮位四・五米以上)に達すれば右突出部分を越えて流水の勢に対して突出部分はもはや輪中堤防禦の効用を果たすものとはいえず、かえつて狭窄部分で水位を高められた水が輪中堤をこえて堤内に流下するときこそ最も破堤の危険が大きいものであつて、突出部分は洪水時における輪中堤防禦のためには無用の施設というべきである。同四の点は認める。同五の点は原告主張のような申入のあつたことは認める。同六の点は認める。同七のうち原告の意見書の添付を要するものであり本件事業認定処分はこの点に瑕疵があることを被告が認めたとの点を否認し、その余の点を認める。ただし、決定書の理由中に「当該私有施設について意見書の添附を要するものであり、従つて本件事業認定にはこの点に瑕疵がある。」 旨の記載があることを認める。 同八のうち本件事業認定申請書に原告の意見書が添付されていなかつた点を認め、その余の点を争う。と述べ、被告の主張として一、(一)本件土地のうち輪中堤の一部をなす部分(別紙目録(1)ないし(12)の各土地)および同地上にある樋管ならびにこれと一体をなす用水施設の管理者は原告らではなく、本件事業認定申請書に原告の意見書を添附する必要はない。 (二) 、別紙目録(1)、(4)ないし(6)の各土地の大部分は大正二年一二月二四日愛知県知事によつて河川区域に認定された土地であつて、同土地についての原告らの私権は旧河 見書を添附する必要はない。 (二) 、別紙目録(1)、(4)ないし(6)の各土地の大部分は大正二年一二月二四日愛知県知事によつて河川区域に認定された土地であつて、同土地についての原告らの私権は旧河川法第三条によつて消滅したものである。 (三) 前記各土地のうち河川区域に認定されなかつた部分と別紙目録(2)、(3)、(7)ないし(12)の各土地は昭和一四年八月四日愛知県知事により堤防として旧河川法第四条第二項にもとづく河川附属物に認定されたものである。 (乙第五号証)而して河川附属物と認定されたものは「命令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設ケタル場合ヲ除ク外総テ河川ニ関スル規定ニ従ウ」ものであるから、同法第三条によりこれらの土地についての私権は消滅したものである。 (四) 原告らは輪中堤を構成する土地のうち河川区域に認定された部分については、旧河川法第一八条による許可を得て占用していたものであり、その余の部分も河川法施行規定第一一条により従前の使用目的をもつて占用を許可されたものであるが、原告らの右占有の事実は原告らが輪中堤を管理していたことを示すものではなく、原告らに輪中堤の占用が許可(みなし占用許可を含めて)されたのは原告らの占用目的が輪中堤の管理に支障がなかつたことによるのであつて、輪中堤の維持管理のための方法として占用が許可されたものではない。而して右輪中堤については前記のように昭和一四年八月四日に旧河川法第四条第二項により河川附属物に認定されたものであるからそれ以降は河川管理者たる愛知県知事が右輪中堤を管理していたものである。(乙第二号証の一、二)また輪中堤を構成する本件土地上にある樋管の管理者は立田村である。(乙第六号証の一ないし七)二、本件土地のうち突出部分(別紙目録(13)ないし(16)の各土地)は堤防の用をなしていないもので、土地収用法 中堤を構成する本件土地上にある樋管の管理者は立田村である。(乙第六号証の一ないし七)二、本件土地のうち突出部分(別紙目録(13)ないし(16)の各土地)は堤防の用をなしていないもので、土地収用法第四条該当地ではないから原告の意見書の添附は必要ではない。 三、仮りに突出部分が堤防としての効用を有するものとしても、本件事業認定処分にはそれを違法として取消さねばならないほどの瑕疵はない。そもそも土地収用法第一八条第二項第四号が同法第四条該当地の管理者の意見書の添附を要求しているのは同条にいう「特別の必要」の有無を判断する資料とするためであつて、起業者が同法第四条該当地の管理者に対して意見を求めても意見書の提出がない場合は起業者は意見書を添附せずに事業認定申請をなすことができ(同法第一八条第三項)事業認定庁としても同法第四条該当地の管理者に対して意見を求めても意見書を提出しない場合にはその意見を待たないでただちに処分できるもので(同法第二一条第一項)、たとえ同法第四条該当地の管理者から意見書の提出があつてもその意見に拘束されるものではないから、右意見書は単に事業認定処分をなすについての一応の手続として要求されるにとどまり、これを以つて処分の有効要件としたものと解することはできない。そうだとするとこれについて原告らの意見を徴しなかつたことはその瑕疵が軽微であり、ただちに本件事業認定処分をして取消しうべき違法のものとならしめるものではない。 四、土地収用法第四条に該当する土地についてはその土地の管理者の意見書の添附を要するとされているが、これは事実の公益性を比較衡量するためのものであつて該土地の私権を保護するためのものではないから、意見書の添附のない事業認定申請であることを看過してなされた事業認定でも当該認定の内容が妥当である以上かかる手続上の 性を比較衡量するためのものであつて該土地の私権を保護するためのものではないから、意見書の添附のない事業認定申請であることを看過してなされた事業認定でも当該認定の内容が妥当である以上かかる手続上の瑕疵は事業認定処分を違法たらしめるものではない。而して本件輪中堤についてはその管理者の意見書の添附がないけれども、本事業が輪中堤の目的とする水害防禦の効果が不十分であることから計画されたものであることに鑑み、本件土地を収用する特別の必要性のあることも明白であり、その事業認定の内容が妥当であることも明らかであるから右瑕疵は本件事業認定処分自体を違法ならしめるものではない。 五、仮りに土地収用法第四条に該当する土地についても私権保護のためその土地の管理者の意見書を要するとしても、その管理者が事業認定申請にかかる事業のためにその土地が使用されることを許容するならば意見書の添附がなくてもそれによる事業認定の瑕疵は治癒されるものといわなければならず、本件について原告は昭和三九年七月一〇日起業者の懇請に応じて起業者が本件土地について事業を着工することを承諾し、現在ではほとんど工事も竣工している状況であるから、起業者の本件事業認定申請が土地収用法第一八条第二項第四号に違反していて、これを看過してなした被告の事業認定が違法であるとしても、その瑕疵はすでに治癒されたものというべきである。と述べ、これに対する原告の反論を争い一、昭和一四年八月四日愛知県告示第八九四号をもつて「河川法第四条ニ依リ河川法施行河川木曾川(下流部)、長良川及木曾、長良両河川附属物左ノ通り認定スル」として別表のとおり表示しており、これを以つて特定されたものとみるべきである。 二、そして河川附属物認定なる行為は確認行為に属し堤防たる土地について私権が消滅するのは河川附属物認定に伴う附随的な効 」として別表のとおり表示しており、これを以つて特定されたものとみるべきである。 二、そして河川附属物認定なる行為は確認行為に属し堤防たる土地について私権が消滅するのは河川附属物認定に伴う附随的な効果であつて河川附属物認定そのものの効果として発生するものではないから、堤防を河川附属物と認定するにあたつては、右堤防が何番地の土地上に築造されているものかを一々明らかにする必要はなく、どの堤防が河川附属物に認定されたかがわかるように(堤防の同一性を認識しうる程度に)表示されれば足りるものというべきである。 と述べた。 (証拠省略)○ 理由一、本件起業者たる建設大臣が土地収用法(昭和四二年法律第七四号による改正前、以下同じ)第一八条第二項第四号にもとづく同法第四条に規定する土地の管理者の意見書として原告の意見書を添附しないで昭和三八年一一月二〇日本件事業認定を申請し、昭和三九年一月二〇日から愛知県海部郡立田村役場において右事業認定申請書の縦覧がなされたうえ、被告が同年六月二日附建設省告示第一三七六号を以つて本件事業認定処分をしたことは当事者間に争いがない。 そこでまず土地収用法にもとづく本件事業の認定が行政事件訴訟法上の取消訴訟の対象となる行政処分であるかどうかおよび原告が本件取消訴訟につき原告適格ないし訴の利益を有するかどうかにつき判断すると(一) およそ土地収用法第一六条以下の各規定により建設大臣または都道府県知事のする事業の認定は同法によつてなされる公用徴収手続の基礎となるものであり、当該事業認定申請にかかる事業が私有財産の収用を許すだけの公益上の価値を有するものである旨を認定することをその本質的内容とする行政行為であつて、もとより事業の認定によつて直ちに土地等の収用の範囲を確定するものではなく、起業者以外の第三者の実体法上の権利ないし の価値を有するものである旨を認定することをその本質的内容とする行政行為であつて、もとより事業の認定によつて直ちに土地等の収用の範囲を確定するものではなく、起業者以外の第三者の実体法上の権利ないし法律関係に対し確定的な影響を与えるものとはいいえないが、土地収用法にもとづく公用徴収手続は右事業の認定に続き土地細目の公告(前記改正法律による削除)、協議、収用委員会の裁決等を経た後に行われる関係にあり、いわば一連の多数の行為を経て始めてその所期の目的を達しうる性格のものであつて、かような一連の手続を組成する各個の行政行為は当然にその手続の連鎖の中でそれぞれの性質と効力とを考察しなければならず、そうすると右事業の認定は起業者のために土地収用法上のその後の各手続が行なわれることを条件とする起業地内の土地等に対する公用徴収権を創設、設定することを主たる内容とする行政処分たることをその本質とするものであると解するのが相当である。そして土地収用法第一九条、第二〇条は右事業の認定をなしうるための手続的および実体的諸要件を明定し、また同法第二六条は事業の認定がなされたときは遅滞なくその旨を起業者に文書で通知するとともに、起業者の名称、事業の種類及び起業地を告示しなければならず(第一項)事業の認定は右の告示があつた日からその効力を生ずるものとされ、さらに同法第二五条は事業の認定について利害関係を有する者は意見書を提出することができる旨規定するとともに同法第一三〇条ないし第一三一条の二の各規定は事業の認定について行政不服審査法上の不服申立ができることを認めることを前提としている規定であることもまた明白である。 そうすると以上の如き事業認定の本質と土地収用法上の右各規定等に徴すれば、関係諸法規に抵触する違法な事業の認定に対してはそれにつき法律上の利害関係を有す 提としている規定であることもまた明白である。 そうすると以上の如き事業認定の本質と土地収用法上の右各規定等に徴すれば、関係諸法規に抵触する違法な事業の認定に対してはそれにつき法律上の利害関係を有すると認められる者から直接右事業認定自体の取消を訴求しうるものとみるべきであり、そうすると本件事業の認定は原則として訴訟事項に制限を設けていない現行法規の下においては行政事件訴訟法上の取消訴訟の対象となる行政処分であると解するのが相当である。 (二) そこでつぎに本件取消訴訟において原告が原告適格ないし訴の利益を有するかどうかについてみると、原告の本訴請求は要するに、本件土地のうち別紙目録(1)ないし(12)の各土地は輪中堤の一部を構成するものであり、また本件土地のうち別紙目録(13)ないし(16)の各土地は突出状をなす堤防を構成する部分であり、さらに右輪中堤を構成する右各土地には樋管がその隣接地には水門、貯水槽、ポンプアツプ施設、水路等の用排水施設が存在するが、これらはすべて治水ないし利水の目的に供されているもので土地収用法第三条第二号に該当し、しかも右土地およびその地上にある樋管ならびにそれと一体をなす用排水施設はすべて原告らの所有管理に属しているものであるから同法第一八条第二項第四号、第四条の規定によつて本件事業認定申請書には右土地の管理者たる原告の意見書の添附を要するものであるところ、原告が起業者に対し右の意見書を提出する用意がある旨申し入れたのに拘らず、起業者は原告の意見書を求めることなく、またこれを添附することなく本件事業認定を申請し被告も右瑕疵を看過してそのまま本件事業認定処分をしたものであつて違法である。というものであることはその請求自体から明らかである。ところで土地収用法第一八条第二項第四号によると起業地内に同法第四条に規定す 瑕疵を看過してそのまま本件事業認定処分をしたものであつて違法である。というものであることはその請求自体から明らかである。ところで土地収用法第一八条第二項第四号によると起業地内に同法第四条に規定する土地があるときは事業認定申請書に当該土地の管理者の意見書を添附しなければならず、しかも同条第三項によれば右意見書は起業者が意見を求めた日から三週間を経過しても、これを得ることができなかつたとぎは添附することを要しないがこの場合には右意見書を得ることができなかつた事情を疎明する書面を添附しなければならない旨規定されておりさらに同法第二一条によれば建設大臣又は都道府県知事は事業の認定に関する処分を行おうとする場合において右第一八条第三項の規定により意見書の添附がなかつたときは右土地の管理者の意見を求めなければならないこととされている。そうすると以上の各規定に徴すれば起業地内の土地収用法第四条該当の土地の管理者は意見書を起業者に提出する権利を有するものと解すべく、従つて右土地の管理者の意見書の提出を求めることなくまた事業認定申請書にこれを添附しないでした事業認定申請に対してした事業認定処分は右土地管理者の意見書提出権を侵害したものであるといわなければならない。 してみれば原告は本訴請求につき原告適格ないし訴の利益を有するものと解するのが相当であり、結局本件訴は適法であるというべきである。 二、そこですすんで本案につき判断する。 (一) まず土地収用法第一八条第二項第四号において、起業地内に同法第四条に規定する土地があるときは事業認定申請書に当該土地の管理者の意見書を添付すべきことが要求されている趣旨についてみると、土地収用法第四条は同法または他の法律によつて土地等を収用しまたは使用することができる事業の用に供している土地等は特別の必要がなければ収用し 見書を添付すべきことが要求されている趣旨についてみると、土地収用法第四条は同法または他の法律によつて土地等を収用しまたは使用することができる事業の用に供している土地等は特別の必要がなければ収用しまたは使用することができない旨規定しており、これは現に公益事業の用に供されている土地等を別の公益事業の用に供するために収用または使用する必要が生じた場合、すなわちいわゆる収用権の衝突と称せられている場合には、原則として現在の公益事業の用途を尊重し維持するため当該土地を収用の目的物となしえないものとするとともに、現に当該土地が供せられている事業よりも一層重要な公益事業の用に供する特別の必要があるときはそれを収用の目的物たりうるものとしたものであつて、この場合における「特別の必要」とは現に当該土地等を使用している収用または使用の可能な事業の公益性と、右土地を新たに供せんとする収用または使用の認められうる事業の公益性とを比較衡量して後者の公益性が前者のそれよりも一層重要であること、換言すれば後者の事業によつて得られる公益性が前者の事業の公益性を失うことによつて蒙る損失を補つてなお余り有ることを意味するものと解せられ、さらにまたこの場合における右「特別の必要」の有無の点についての判断はもとより抽象的に事業の種類、性質のみによつて決せられうべきものではなくして、各個の場合において現に当該土地が供せられている個別、具体的事業の公益性と新たに右土地を供せんとする個別、具体的事業の公益性とを諸般の事情を綜合勘案したうえ比較して個別的、具体的に判断せられるべき事柄であるというべきである。たとえ同一の事業であつても各場合によつてある事業との比較においては公益上一層重要であるということができてもさらに他の事業との関係ではその公益性において劣後するということもその性 るというべきである。たとえ同一の事業であつても各場合によつてある事業との比較においては公益上一層重要であるということができてもさらに他の事業との関係ではその公益性において劣後するということもその性質上当然ありうるところである。而して起業地内に土地収用法第四条に該当する土地等があるときは事業認定庁たる建設大臣または都道府県知事は事業の認定の実体的、積極的要件として同法第二〇条第四号において明定する当該申請にかかる事業が「土地を収用し、又は使用する公益上の必要があるものであること」に該当するかどうかの判断の一環として前記の意味における同法第四条に規定する「特別の必要」も当然に判断されるべきであるが、同法第二〇条に規定する事業認定の積極的、実体的要件のうち第一号ないし第三号の各要件に該当するかどうかの判断は右各号の要件の性質上覊束された判断であるというべきであるも、同条第四号の公益性に関する判断のみはその本質上事業認定庁の裁量に属するものというべきである。そこで土地収用法第一八条第二項第四号は起業地内に同法第四条に規定する土地があるときは事業認定申請書にその土地に関する調書、図面および当該土地の管理者の意見書を添附しなければならない旨規定しているところ、右土地の管理者の意見書の添附を要求している理由は、前述の同法第四条の趣旨に徴すると専ら事業認定庁たる建設大臣または都道府県知事が現に当該土地が供せられている事業の有する公益性と新たに右土地を供しようとする事業の有する公益性との大小、軽重をそのそれぞれの事業につき具体的に比較衡量したうえ当該事業認定申請にかかる事業がその有する公益性の点において同条にいう収用または使用を許すだけの特別の必要があるかどうかを判断するに当つて当該土地の管理者の意見をも参酌し以つて現に当該土地が供されている事業の公 請にかかる事業がその有する公益性の点において同条にいう収用または使用を許すだけの特別の必要があるかどうかを判断するに当つて当該土地の管理者の意見をも参酌し以つて現に当該土地が供されている事業の公益性との対比において事業の認定という行政行為の内容を適正、妥当ならしめるための資料としようとの趣旨に出でたものであつて右土地の所有者の私権の保護等利害関係人の立場を保護するためのものではないものと解するのが相当であり、この理はさらに右「特別の必要性」の判断が前記のとおり同法第二〇条第四号にいう土地を収用しまたは使用する公益上の必要性の判断の一環として申請にかかる事業の公益性の判断をなす権限を有する事業認定庁の権限には属してないものと解せられること、および同法第一八条第二項第四号が当該土地の所有者等と規定しないで単に当該土地の管理者と規定していることに照らしても明らかであるということができ、而してかようにその利害関係人の立場を保護するためではなくして専ら行政行為の内容を適正、妥当ならしめるために意見の聴取を要する旨を定めている規定はこれを右行政行為の効力の有効要件とまで解すべきではないものというべきである。 (二) ところでさらに同法第一三一条第二項の規定によると、建設大臣は事業の認定または収用委員会の裁決についての異議申立または審査請求があつた場合において、事業の認定または裁決に至るまでの手続その他の行為に関して違法があつても、それが軽微なものであつて事業の認定または裁決に影響を及ぼすおそれがないと認めるときは決定または裁決を以つて当該異議申立または審査請求を棄却することができるものとされているところ、右条項の趣旨とするところは土地収用法がその公用徴収手続の公正、妥当を期するためその手続その他の行為について詳細な規定を設けているが、他面におい 査請求を棄却することができるものとされているところ、右条項の趣旨とするところは土地収用法がその公用徴収手続の公正、妥当を期するためその手続その他の行為について詳細な規定を設けているが、他面において往々にして土地収用手続を遂行するうえで右手続規定に違反する場合も生じやすくなることは否み難いところであつて、しかも前記のとおり一連の多数の行政行為を経て始めてその所期の行政目的を達成することができる土地収用手続においてはかような手続の全体過程の中ではその手続違背が結果的にみて実質上軽微なもので全体としての手続をくつがえす必要のない場合もあるところから、かような手続的瑕疵は手続の経済の見地からその違法性の治癒を認めたものであると解せられ、従つてこの理はひとり行政不服審査の場合のみならず行政事件訴訟の場面においてもまた妥当する法原理であると解するのが相当である。 (三) そこで本件についてみると、本件土地が本件事業認定にかかる起業地に含まれていること、および右土地が木曾川、長良川の二大河川にはさまれた狭窄地帯であつて右土地のうち別紙目録(1)ないし(12)の各土地が輪中堤の一部をなす土地であることならびに昭和三八年九月頃原告が起業者に対し本件土地等が土地収用法第三条第二項に該当するものであるから同法第一八条第二項第四号、第四条の各規定により事業認定申請書に添附するための所有者管理者として意見書を提出する用意がある旨申し入れ、つづいて昭和三九年一月二七日同法第二五条にもとづき愛知県知事に対し本件事業認定申請書に原告の右意見書の添附を欠くことを指摘するとともに、要請があれば直ちに右意見書を提出する用意がある旨申し立て、さらに本件事業認定処分がなされたのちの昭和三九年七月二日右事業認定処分に対し異議申立をなしたところ被告が昭和四〇年一〇月一四日右異議 もに、要請があれば直ちに右意見書を提出する用意がある旨申し立て、さらに本件事業認定処分がなされたのちの昭和三九年七月二日右事業認定処分に対し異議申立をなしたところ被告が昭和四〇年一〇月一四日右異議申立を棄却する旨の決定をなし右決定書が同年一一月一日原告に送達されたことは当事者間に争いがなく、また少くとも右輪中堤が従来から長良川の治水のため堤防としての効用を有しているものであつて、右(1)ないし(12)の各土地が土地収用法第四条にいわゆる土地等を収用しまたは使用することができる事業の用に供している土地であることは被告において明らかに争わないところである。そうするともし、輪中堤の一部をなす右(1)ないし(12)の各土地が原告らの管理に属するものであるとすれば(その管理権については争を存するが)同法第一八条第二項第四号により本件事業認定申請書には原告らの意見書を添附しなければならない筋合いであり、原告の意見書の添附を欠いている本件事業認定申請に対し被告がなした本件事業認定はこの点においてその手続規定に違背する瑕疵があるものといわなければならないけれども(原告以外に右の管理者が存するとするとその意見書の添附の有無についても同様のことが言える。)土地収用法第一八条第二項第四号が同法第四条に該当する土地の管理者の意見書の添附を要求している前記の趣旨に照らせば、本件事業の規定に右手続規定の違背があつたとしてもそれは軽微な瑕疵であるというべきである。 (四) そこでつぎに原告の右意見書の添附がなかつたことが本件事業の認定に影響をおよぼすものであるかどうかについてみると、成立に争いのない甲第一、第二号証、乙第七号証の一、第一二、第一三号証、証人伊藤滋の証言により真正に成立したものと認められる甲第一一号証と証人F、同G、同H、同Iの各証言および弁論の全 いてみると、成立に争いのない甲第一、第二号証、乙第七号証の一、第一二、第一三号証、証人伊藤滋の証言により真正に成立したものと認められる甲第一一号証と証人F、同G、同H、同Iの各証言および弁論の全趣旨を綜合すると(1)原告が本件土地収用手続において不服とするところの実質はもつぱら本件土地のうち別紙目録(1)ないし(12)の各土地は輪中堤の一部をなすもので敷地たる土地とは別個に工作物として正当に補償の対象とされるべきでありかつ右輪中堤は原告祖先が築堤し代々原告側において私財を投じて維持管理してきたもので原告としては深い愛着をもつものであるから右輪中堤の再建費相当額にいわゆる好感的価値をも加味して補償額が定められるべきであり、また本件土地のうち別紙目録(13)ないし(16)の各土地は輪中堤に接続する突出部分として十分に堤防としての効用を有し右輪中堤と同様のものであるから、これまた輪中堤と同様の補償をなすべきであると原告が主張するものに対し起業者は右原告の意向と異り堤防は土地の構成部分であるから右輪中堤も土地として補償の対象とすれば十分であり、また右突出部分を構成する右(13)ないし(16)の各土地は堤防としての効用を有するものではないから、これも同様に土地として補償すれば足りるとして本件土地の補償の方法および額につき原告の主張が容れられなかつたことにあり、本件土地を繞る右補償問題については本件事業認定申請がなされる以前において原告と起業者間とで種々の交渉、意見調整が重ねられたが、結局のところ右両者間で意見の一致をみることはできず、いわゆる任意買収というかたちで右問題の解決がなされるまでに至らなかつたため、右補償の方法およびその額については土地収用法に規定する手続に則りあつ旋あるいは収用委員会の公正、妥当なる審議裁決によつて解決することに原 いうかたちで右問題の解決がなされるまでに至らなかつたため、右補償の方法およびその額については土地収用法に規定する手続に則りあつ旋あるいは収用委員会の公正、妥当なる審議裁決によつて解決することに原告と起業者側双方の意見の一致をみて本件事業認定申請がなされ、原告がそれにもとづき本件事業の認定をしたこと、そして本件土地を除くその余の本件起業地内にある原告ら所有の土地については原告も起業者側のいわゆる任意買収に応じ、また本件事業の認定後ではあるが右補償問題については迅速に収用委員会の裁決により解決するよう努力する旨の確約のもとに原告は起業者側に対し収用委員会の裁決する収用または使用の時期以前においても本件土地のうち本件事業の内容たる新堤敷となる個所については事業の用に供することを承諾しているなど、原告自身としても本件事業の内容である長良川左岸引堤計画それ自体には反対ではなく寧ろこれを希望していたこと、(2)他方本件事業は建設大臣を起業者とする木曾川下流改修計画の一環として木曾川、長良川の両河川にはさまれた本件土地を含む狭窄地の治水を目的とするものであつて、本件土地附近の住民も本件引堤計画を従来から要望しており、原告以外の起業地内の土地所有者らは本件事業認定申請に至る前に任意買収に応じることが確実であつたことがいずれも認められる。そして以上の各事実に右各証言、各検証の結果、鑑定の結果その他乙号各証を綜合すれば今次事業の公益性は従前事業の公益性に比して著しく勝るものであることが明らかであつて原告の前記意見書の添附がなかつたことが本件事業の認定に影響をおよぼすものとは到底考えることができない。 (五) そして以上の理は前述してきたところから自から明らかな如く本件土地のうち別紙目録(13)ないし(16)の各土地が構成する突出部分が堤防としての効用を よぼすものとは到底考えることができない。 (五) そして以上の理は前述してきたところから自から明らかな如く本件土地のうち別紙目録(13)ないし(16)の各土地が構成する突出部分が堤防としての効用を有し、また本件土地のうち輪中堤を構成する部分の地上にある樋管およびその隣接地に存する用排水施設がともに原告の管理に属するものであるとしても同様であるということができる。 (六) してみればかりに本件事業認定申請書には土地収用法第一八条第二項第四号により原告の意見書の添附を要するものであり、右意見書の添附がないまま本件事業認定処分がなされた瑕疵があつたとしてもそれは本件事業認定処分を取消さなければならないほどの違法とまでいうことはできず、また他に本件事業認定処分を取消すべき違法は見出し難いから、原告の本訴請求は前記原告の管理権ないしその余の争点につき判断するまでもなく理由がないのでこれを棄却し、民事訴訟法第八九条により主文のとおり判決する。 (別紙省略)
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