令和6年11月12日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5年(行ウ)第1号債務不存在確認請求事件(第一事件)令和5年(行ウ)第19号分担金返還請求事件(第二事件)口頭弁論終結日令和6年8月13日判決 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 第一事件原告・被告間において、別紙債権目録記載の債権に係る原告の被告に対する支払債務は存在しないことを確認する。 2 第二事件(1) 被告は、原告に対し、292万1178円及びこれに対する令和5年4月2 9日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 (2) 被告は、原告に対し、292万1161円及びこれに対する令和6年5月21日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要第一事件は、ごみ焼却場(一般廃棄物処理施設)の設置及び管理・運営を目的 とする一部事務組合である被告の構成団体である原告が、同じく被告の構成団体である被告補助参加人(以下「補助参加人」という。)が香芝市内の各自治会に対して実施した事業は被告の事務に含まれないと主張して、被告に対し、原告の被告に対する上記事業に要する費用の本件規約11条に基づく分担金支払債務が存在しないことの確認を求める公法上の当事者訴訟(行政事件訴訟法4条)の事 案である。 第二事件は、被告が令和4年度及び令和5年度の各年度末に被告から原告に返還(戻入れ)すべき余剰分担金につき、上記事業に要した費用に係る被告の原告に対する本件規約11条に基づく分担金支払請求権とを相殺してその残額を返還したところ、原告が、第一事件におけるものと同様の主張をして、 れ)すべき余剰分担金につき、上記事業に要した費用に係る被告の原告に対する本件規約11条に基づく分担金支払請求権とを相殺してその残額を返還したところ、原告が、第一事件におけるものと同様の主張をして、被告に対し、分担金返還請求権に基づき、上記相殺に係る金員相当額の分担金の返還を求める 公法上の当事者訴訟の事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 被告は、昭和51年9月に原告及び補助参加人(当時の香芝町)を構成団体として設立された地方自治法(以下「法」という。)284条2項の一部事務組 合である。 被告の一部事務組合規約(以下「本件規約」という。)の3条は、被告の共同処理事務(法287条1項3号)を「ごみ焼却施設の設置並びにこれに伴う財産の取得及び管理運営に関する事務」と規定している(甲22)。また、本件規約11条は、被告の経費の支弁について「組合の経費は、組合市町の分担金及 びその他の収入をもってこれにあてる。」と規定し、本件規約12条は、その経費の負担区分に関し、建設費(均等割・人口割)及び維持管理費(均等割・処理量割)のそれぞれの負担割合の計算方法を規定している。 (2) 原告は、昭和55年8月4日から昭和56年9月7日にかけて、被告が設置及び管理・運営する予定のごみ焼却場である美濃園(以下「本件焼却場」とい う。)に関して、王寺町内の以下の各自治会及び水利組合との間で以下のとおり協力金を支払う旨の確約書を締結した。これらの協力金の支払は、全て原告が負担した。 A自治会に対し684万6000円を支払う(甲30)。 B自治会に対し530万6000円を支払う(甲31)。 C自治会に対し1052万8000円を支払 支払は、全て原告が負担した。 A自治会に対し684万6000円を支払う(甲30)。 B自治会に対し530万6000円を支払う(甲31)。 C自治会に対し1052万8000円を支払う(甲32)。 D自治会に対し718万2000円を支払う(甲33)。 E自治会に対し921万2000円を支払う(甲34)。 F自治会に対し585万2000円を支払う(甲35)。 G自治会に対し330万4000円を支払う(甲36)。 H組合に対し620万円を支払う(甲37)。 (3) 補助参加人(当時の香芝町)は、昭和57年3月24日、香芝町内のI自治会との間で、同自治会に対し協力金として300万円を支払うこと、本件焼却場への搬入路について大和高田王寺線から都計街路尼寺関屋線を西進するルート(当該ルートはI自治会及びJ自治会、K自治会、L自治会内を経由する。)以外の搬入路を敷設するよう努めること等を内容とする覚書及び協定書、協定 書補足を締結した。また、補助参加人は、同日、香芝町内のJ自治会及びK自治会との間でも同内容の覚書及び協定書(以下、これらの3自治会との間における協定書を併せて「昭和57年協定書」という。)を締結した。(乙3(枝番号を含む。以下、特に断らない限り、他の書証についても同じ。))(4) 被告は、同年7月頃、本件焼却場の稼働を開始した(甲1)。 (5) 補助参加人は、平成6年9月27日、I自治会、J自治会及びK自治会との間で、それぞれ、昭和57年協定書に規定された搬入路の拡張への努力を継続すること、上記各自治会に対し協力金として各500万円を支払うこと、公益施設の設置に特別の配慮をすること等を内容とする覚書及び確認書を締結した(乙3)。上記協力金(合計1500万円)の支払は、平成6 すること、上記各自治会に対し協力金として各500万円を支払うこと、公益施設の設置に特別の配慮をすること等を内容とする覚書及び確認書を締結した(乙3)。上記協力金(合計1500万円)の支払は、平成6年10月頃にさ れた原告と補助参加人との合意により、補助参加人が900万円を、原告が600万円を、それぞれ負担した(乙4、7)。 (6) 補助参加人は、平成11年3月26日、I自治会、J自治会及びK自治会並びに香芝市内の自治会であるL自治会との間で、それぞれ、本件焼却場への搬入による通行量の増加に対処するために交通安全対策金として各125万円 を支払うこと等を内容とする覚書を締結した(乙3)。上記交通安全対策金の 支払は、全て補助参加人が負担した。 (7) 補助参加人は、平成14年12月4日、I自治会、J自治会、K自治会及びL自治会との間で、それぞれ、上記各自治会の公共公益事業に対する助成金として350万円を上限とする金員を支払うこと、昭和57年協定書に規定された搬入路の拡張への努力を継続すること等を内容とする覚書及び確認書を締 結した(なお、昭和57年協定書を締結していないL自治会との間においても、同協定書に準じて協議・確認がされた。以下においても同様。乙3)。上記助成金(合計1400万円)の支払は、その頃の原告と補助参加人との合意により、補助参加人が1000万円を、原告が400万円を、それぞれ負担した(乙4、7)。 (8) 補助参加人は、平成24年2月17日、I自治会、J自治会、K自治会及びL自治会との間で、それぞれ、昭和57年協定書の有効期限(30年間)を2年間暫定的に延長すること等を内容とする覚書を締結した(乙3)。 (9) 香芝市長は、平成26年1月10日、I自治会、J自治会、K自治会及びL自治 れぞれ、昭和57年協定書の有効期限(30年間)を2年間暫定的に延長すること等を内容とする覚書を締結した(乙3)。 (9) 香芝市長は、平成26年1月10日、I自治会、J自治会、K自治会及びL自治会に対し、「美濃園に係る30年間の総括について」と題する書面におい て、昭和57年協定書に規定された搬入路の拡張(道路整備)が実現されていないことについて陳謝した(乙3)。 (10) 補助参加人は、平成26年3月4日、I自治会、J自治会、K自治会及びL自治会に対して本件焼却場の整備方針(老朽化に伴う延命ではなく新設するとの方針)に関する説明会を実施した(同説明会には原告町長及び原告職員も出 席した。乙9)。そして、補助参加人は、同年5月9日、焼却場新設計画を前提として、I自治会、J自治会、K自治会及びL自治会との間で、それぞれ、昭和57年協定書の有効期限を5年間暫定的に延長すること、昭和57年協定書に規定された搬入路の拡張を実現するために王寺町美しヶ丘から美濃園進入道路までの畑分川線を新設すること等を内容とする覚書を締結した(乙3)。 (11) 補助参加人は、平成27年3月17日、L自治会との間で、地域交流センタ ー整備事業(以下「本件事業1」という。)を実施すること等を内容とする覚書を締結した(乙3の4)。また、補助参加人は、同日、I自治会との間で、香芝市(住所省略)地内に道路を新設する事業(以下「本件事業2」といい、本件事業1と併せて「本件各事業」という。)を実施すること等を内容とする覚書を締結した(乙3の1)。 (12) 平成27年3月19日開催の補助参加人の議会(定例会)において、議員から、昭和57年協定書に規定された内容の履行をするに当たっては全て補助参加人が負担することになるのかという質問がされ (12) 平成27年3月19日開催の補助参加人の議会(定例会)において、議員から、昭和57年協定書に規定された内容の履行をするに当たっては全て補助参加人が負担することになるのかという質問がされたのに対し、補助参加人の担当職員(都市創造部長)は、昭和57年協定書に係る「地元対策費」に関連し、従前から香芝市内における「地元対策費」は補助参加人が負担し、王寺町内に おけるものは原告が負担してきた経緯があり、そのような状況に変更はない旨の答弁をした(甲28)。 補助参加人は、平成31年1月31日、被告管理の会議室において、I自治会、J自治会、K自治会及びL自治会に対し、平成26年5月9日に昭和57年協定書の有効期限を5年間暫定的に延長することとしたが、その期限が迫っ ているため、その期限を新設予定の焼却場が完成するまでとすることに関する説明会を実施した。同説明会では、被告局長が上記各自治会との間で協定書等を締結した経緯及び現状について説明し、その後、上記各自治会との間で締結された協定書等に係る事業についての協議がされた。(乙12)(13) これと前後して、補助参加人は、平成27年7月頃に本件事業1に着手し、 平成29年7月頃にこれを完了させたほか、平成28年1月頃に本件事業2に着手し、令和3年7月頃にこれを完了させた。本件各事業は、いずれもその頃、補助参加人の事業として監査を受けて決算を経た。本件事業1に要した費用は2億3119万4520円であり、本件事業2に要した費用は1億7431万0056円であった(甲16、乙5)。 (14) 令和3年6月、被告の新ごみ処理施設建設調査特別委員会において、委員か ら、本件事業2に係る費用を補助参加人のみが負担していることについて協議を求める意見が述べられた(甲 (14) 令和3年6月、被告の新ごみ処理施設建設調査特別委員会において、委員か ら、本件事業2に係る費用を補助参加人のみが負担していることについて協議を求める意見が述べられた(甲3)。また、同年8月、同委員会において、上記委員から、被告の事務であれば補助参加人が費用を負担するのは法的に問題があるのではないかとの意見が述べられたのに対し、当時の管理者(香芝市長)及び副管理者(王寺町長)は、いずれも、「地元対策」は基本的には原告及び補 助参加人がそれぞれ実施するものであるとの認識を示す答弁をした(甲4)。 (15) 被告は、同年10月27日、本件規約3条に定める共同処理事務について必要な事項を定めることを目的とする「香芝・王寺環境施設組合事務処理に係る条例」を制定した。同条例は、本件規約3条に定める共同処理事務は「ごみ焼却施設の設置に伴い周辺地域に対して実施するコミュニティ施設、周辺道路等 及び関連事業等の整備」に該当する場合を含むものとすると定めており(2条3号)、同条例は、令和3年11月5日に施行された。(甲2、6、7)(16) 被告は、令和4年6月22日、L自治会との間で、本件事業1を被告の事務であると認めること等を内容とする協定書を締結するとともに(甲12)、I自治会との間で、本件事業2を被告の事務であると認めること等を内容とする 協定書を締結した(甲10)。 (17) 上記各協定書は、同月29日に被告議会において承認された(甲14)。 (18) 被告は、同年10月26日、補助参加人との間で、本件各事業を被告の事業であると認めること、被告が本件各事業に関して補助参加人に償還すべき金額を定めること等を内容とする覚書を締結した(甲16。以下「本件覚書」とい い、同覚書に係る合意を「本件覚書合 を被告の事業であると認めること、被告が本件各事業に関して補助参加人に償還すべき金額を定めること等を内容とする覚書を締結した(甲16。以下「本件覚書」とい い、同覚書に係る合意を「本件覚書合意」という。)。 その上で、被告は、同日、補助参加人との間で、本件各事業について原告及び補助参加人が分担すべき金額(事業に要した費用の総額から交付金の額を控除するなどして算出された実質的な負担額。乙5)を本件事業1につき1億0762万4520円と、本件事業2につき7833万8476円と定め(本件 覚書の別表における「償還金額」)、被告が、被告が補助参加人に支払うべき償 還金から補助参加人が被告に対し支払うべき分担金を差し引いた金員を補助参加人に支払うことで補助参加人の分担義務を履行したものとみなすこと等を内容とする協議書を締結した(甲17。以下「本件協議書」という。)。本件協議書には、上記分担すべき金額を、本件規約12条1項1号、2項に基づく負担割合(前提事実(1)参照。被告の経費を建設費と維持管理費に分けたうちの 建設費につき、3割を均等割、7割を人口割とする)によって算出される金額に分割した金額が記載されている(本件事業1につき、補助参加人7380万9960円、原告3381万1560円。本件事業2につき、補助参加人5372万6799円、原告2461万1677円。いずれも原告の負担割合は約31.4%である。)。また、本件協議書では、被告が原告から上記負担額を2 0回の分割で徴収して補助参加人に支払うこととされ、初回である令和5年3月31日までに本件事業1につき169万0578円、本件事業2につき123万0600円の合計292万1178円を徴収することとされた(3項)。 (19) 原告は、被告に対して令和4年度分担 和5年3月31日までに本件事業1につき169万0578円、本件事業2につき123万0600円の合計292万1178円を徴収することとされた(3項)。 (19) 原告は、被告に対して令和4年度分担金として1億8959万3000円を支払った(甲46)。本件各事業を除けば、被告の令和4年度の歳出に応じた原 告の分担金の負担額は1億8242万2000円であったため、本件各事業についての原告負担部分がないとすれば、令和4年度の終了後(令和5年)に、上記の差額である717万1000円が分担金の清算金(戻入額)として被告から原告に返還されることとなっていた。 被告は、令和5年3月16日、原告に対し、「令和4年度香芝・王寺町環境施 設組合分担金の清算について」と題する書面を送付した。同書面には、原告の被告に対する上記分担金返還請求権と本件各事業に係る費用の原告負担部分に当たる292万1178円(20回分割の初回分)の被告の原告に対する分担金支払請求権とを相殺する趣旨の記載があり、被告は原告に対して同書面をもって上記相殺の意思表示をした(甲46)。 被告は、同年4月28日、原告に対し、原告に対して返還すべき分担金71 7万1000円から上記292万1178円を差し引いた424万9822円を返還した。(甲48)(20) 原告は、被告に対して令和5年度分担金として1億6989万9200円を支払った。本件各事業を除けば、被告の令和5年度の歳出に応じた原告の分担金の負担額は1億6376万3000円であったため、本件各事業についての 原告負担部分がないとすれば、令和5年度の終了後(令和6年)に、上記の差額である613万6200円が分担金の清算金(戻入額)として被告から原告に返還されることとなっていた。 被告は、令和 原告負担部分がないとすれば、令和5年度の終了後(令和6年)に、上記の差額である613万6200円が分担金の清算金(戻入額)として被告から原告に返還されることとなっていた。 被告は、令和6年3月21日、原告に対し、「令和5年度香芝・王寺町環境施設組合分担金の清算について」と題する書面を送付した。同書面には、原告の 被告に対する上記分担金返還請求権と本件各事業に係る費用の原告負担部分に当たる292万1161円の被告の原告に対する分担金支払請求権とを相殺する趣旨の記載があり、被告は原告に対して同書面をもって上記相殺の意思表示をした(甲59)。 被告は、令和6年5月20日、原告に対し、原告に対し返還すべき分担金6 13万6200円から上記292万1161円を差し引いた321万5039円を返還した(甲60)。 2 争点本件における争点は、原告が本件各事業に係る費用について被告の構成団体として分担金の支払義務があるか、具体的には、① ごみ焼却場の設置及び管理・ 運営に関して地元住民からの理解を得るために実施する事業政策(以下「地元対策」という。)が被告の共同処理事務に含まれるか、② 本件各事業が本件焼却場に係る地元対策に当たるか、③ 本件覚書合意が公序良俗違反又は代表権濫用により無効であるかである。 3 争点①②についての当事者の主張 (被告及び補助参加人の主張) (1) 嫌悪施設を受け入れることになる周辺地域の住民に対して補償することなく嫌悪施設の設置及び管理・運営をすることは不可能であり、廃棄物処理を共同処理事務とする一部事務組合は、地元対策がその共同処理事務に当たることを前提としているのが一般である。 これらの事情に鑑みれば、地元対策は被告の共同処理事務に当たるものとい う 物処理を共同処理事務とする一部事務組合は、地元対策がその共同処理事務に当たることを前提としているのが一般である。 これらの事情に鑑みれば、地元対策は被告の共同処理事務に当たるものとい うべきである。 なお、過去の地元対策は各構成団体の名義及び予算、処理で実施されているが、これはあくまで事務の遂行者が各構成団体であったことを示すにすぎない。 (2) そして、本件各事業は地元対策としてされたものであるから、本件各事業は被告の共同処理事務に当たるものというべきである。 なお、地元対策は、被対策事業に対する住民の理解を得るためのものであり、政策決定として長に広範な裁量権が認められるものであるから、被対策事業に直接効用をもたらすものに限定されるわけではない。また、地元対策の対象の範囲は被対策事業との位置関係によって直ちに定まるわけではなく、本件各事業の対象とされている自治会は本件焼却場から不相当に離れているとはいえ ない。同様に、地元対策に必要な費用も被対策事業に要する費用との比較によって直ちに定まるわけではなく、本件各事業に要する費用は合計1億8595万円であって、本件焼却場の設置・建設費用と比べて少額といえる。 (原告の主張)(1) 被告設立後に実施された地元対策は全て各構成団体の名義及び予算で実施 され、各構成団体の監査及び決算を経て完了している。これまでの構成団体の議会及び被告の議会における長や部長の答弁においても、地元対策は各構成団体の事務であることを認める趣旨の発言がされている。 これらの事情に鑑みれば、被告の共同処理事務には地元対策は含まれないものというべきである。 なお、平成6年及び平成11年に実施された香芝市内の自治会に対する協力 金の交付について原告はその一部を れば、被告の共同処理事務には地元対策は含まれないものというべきである。 なお、平成6年及び平成11年に実施された香芝市内の自治会に対する協力 金の交付について原告はその一部を負担しているが、それは原告と補助参加人の合意によるものにすぎない。また、一部事務組合の規約の解釈は当該一部事務組合の構成団体間の合意内容を探求して判断されるべきであり、他の一部事務組合で地元対策が共同処理事務とされていることをもって被告の規約が解釈されるべきではない。 (2) 仮に地元対策一般が被告の共同処理事務に含まれるとしても、以下の事情に鑑みれば、本件各事業は、被告管理者の合理的な裁量の範囲を超えた違法な事業であり、被告の共同処理事務に含まれない。 ア本件各事業は、補助参加人の総合戦略や総合計画として位置づけられ、補助参加人が国から社会資本整備総合交付金の国庫補助を受けて整備工事を 進めており、明らかに補助参加人の事業として位置づけられている。 イまた、本件事業1は、地域交流センター整備事業であり、本件焼却場の運営を補助する関係になく、本件事業2も、新設道路は本件焼却場への搬入路には当たらず、本件焼却場の設置及び管理、運営に直接効用をもたらすものではない。そのため、いずれも本件焼却場の設置及び管理・運営に資するも のではない。 ウ 「奈良県一般廃棄物処理施設設置に係る指導要領」(甲43)では、地元対策の対象として施設周辺500メートルに住家がある自治会までが想定されているところ、I自治会及びJ自治会、K自治会、L自治会はいずれも本件焼却場から500メートルの範囲内に住家がある自治会に当たらない。そ のため、位置関係からみて本件各事業は本件焼却場の設置及び管理、運営に必要な地元対策に当たらない。 エ本 はいずれも本件焼却場から500メートルの範囲内に住家がある自治会に当たらない。そ のため、位置関係からみて本件各事業は本件焼却場の設置及び管理、運営に必要な地元対策に当たらない。 エ本件焼却場の設計・建設費用が126億3000万円であるのに対し、本件覚書の別表に記載された香芝市内の各自治会に対する地元対策に要する費用は総額114億9650万4576円であり不相当に高額である。また、 王寺町内の各自治会に対する協力金の交付額と比較しても本件各事業に要 する費用は不相当に高額である。 4 争点③についての当事者の主張(原告の主張)(1) 本件覚書合意は、補助参加人が被告の事務として本件各事業を実施したとして、本件各事業に要した費用について事後的に被告から償還を受け、その結果、 それに反対する原告に分担金の支払を強制するものである。そのため、本件覚書合意は、本件規約に定められた支弁方法を実質的に変更するものといえるところ、経費の支弁方法を変更するためには構成団体間で協議を行い、都道府県知事に届け出をする必要があるなど厳格な手続を規定しているから(法286条2項)、本件覚書合意は公序良俗に反して無効であり、被告の原告に対する本 件各事業に係る分担金の請求は違法である。 (2) また、本件覚書合意は、以下のとおり、香芝市長でもある被告代表者が、補助参加人の利益を図る目的でしたものといえ、同合意の相手方である補助参加人は被告代表者である香芝市長の上記目的を知っていたのであるから、本件覚書合意は代表権を濫用したものであり無効であり(民法107条、113条1 項)、被告の原告に対する分担金の請求は違法である。 ア本件各事業は、いずれも本件焼却場の設置及び管理・運営を行うための法定要件ではなく、ま ものであり無効であり(民法107条、113条1 項)、被告の原告に対する分担金の請求は違法である。 ア本件各事業は、いずれも本件焼却場の設置及び管理・運営を行うための法定要件ではなく、また、I自治会及びL自治会の同意を得ることも本件各事業の法定要件でもない。また、本件焼却場の設置及び管理・運営によって本件各事業の費用相当額の損害が発生するわけでもないため、上記自治会に対 する損失補償や損害賠償としての性格を有するものでもない。そのため、本件各事業は、被告にとって必要性のない事業ということができる。 イ従前の地元対策が各構成団体の費用負担によってされていたことに鑑みれば、被告が本件各事業について事後的に補助参加人に償還することは補助参加人に利益を与える行為である。 (被告及び補助参加人の主張) (1) 本件覚書合意は、被告と補助参加人との間の合意であり、その効果が原告に及ぶわけではないのであるから、本件規約が定める経費の支弁方法を変更するものではなく、公序良俗に反しない。 (2) 本件焼却場の設置及び管理・運営が円滑にされてきたのは、地元住民が当該事業に対して理解を示したからであり、本件各事業は、地元住民の理解を得る ために被告にとって必要なものであった。また、本件各事業が被告の共同処理事務である以上、本件覚書合意は、事業費用の償還を求めるものにすぎず、被告に不要な負担を負わせるものではない。そのため、本件覚書合意は、被告代表者が補助参加人の利益を図る目的でしたものではない。 第3 争点に対する判断 1 争点①について(1) そもそも、一部事務組合の共同処理事務はその規約に定めるべき事項とされており(法287条1項3号)、一部事務組合の設立にあたっては構成団体の協議により規約を 1 争点①について(1) そもそも、一部事務組合の共同処理事務はその規約に定めるべき事項とされており(法287条1項3号)、一部事務組合の設立にあたっては構成団体の協議により規約を定めることとされていることからすれば(法284条2項)、一部事務組合の規約事項である共同処理事務の具体的内容は、一部事務組合の 構成団体間の意思の合致によって定められると解すべきである。 (2) そして、本件焼却場は、有害物質の排出、騒音、道路交通上の危険等により地元住民に生活環境の悪化という特別の負担を負わせることから、いわゆる嫌悪施設であるところ、一般的に、嫌悪施設の設置及び管理・運営にあたって地元住民からの反対活動や近隣自治会からの反対があれば、同施設の設置や稼働 を事実上断念せざるを得なくなることがあり得るし、場合によっては同施設の設置や稼働の違法性が訴訟で争われることもある。そのため、嫌悪施設の設置及び稼働にあたっては、地方公共団体が地元住民に対して必要な説明を行ったり、地元対策として上記負担に見合った便益をもたらす公共事業を実施したり、端的に協力金を地元自治会に支払うことも多々みられる。そのような実情に照 らせば、一般的に必要な地元対策は嫌悪施設の設置及び管理・運営の関連事務 といえるため、嫌悪施設の設置及び管理・運営を目的とする一部事務組合の事務に必要な地元対策のみを除外することは通常考え難い。そうだとすれば、一部事務組合が、ごみ焼却場の設置及び管理・運営並びにそれらの関連事務を含む趣旨で一般的抽象的に共同処理事務を定めた場合は、特段の事情がない限り、各構成団体は、ごみ焼却施設の設置及び管理・運営にあたって必要な地元対策 も共同処理事務に含める意思であったものとみるのが合理的である。 本件規約 理事務を定めた場合は、特段の事情がない限り、各構成団体は、ごみ焼却施設の設置及び管理・運営にあたって必要な地元対策 も共同処理事務に含める意思であったものとみるのが合理的である。 本件規約3条についてみると、「管理運営に関する」という一般的抽象的な文言に照らせば、被告の共同処理事務は本件焼却場の設置及び管理・運営それ自体に限定されず、これらに伴う関連事務も含む趣旨であると合理的に解釈することができる。そのため、原告及び補助参加人が本件規約を定めるに際して は、特段の事情がない限り、本件焼却場の設置及び管理・運営にあたって必要な地元対策を被告の共同処理事務に含める旨の意思の合致があったものというべきである。以下では上記特段の事情が存在するか否かを検討する。 (3) 確かに、前提事実(2)及び(3)のとおり、原告及び補助参加人は、それぞれの名義で各自治会等から本件焼却場に対する理解を得られるよう協力金を交付 したり事業の実施の合意を行ったりしていることが認められる。また、上記地元対策に要する費用については、原則として、王寺町内の自治会に対しては原告が、香芝市内の自治会に対しては補助参加人が負担していたものと認められる。そして、仮に、被告の設立後に実施された地元対策の全てが各構成団体の名義及び費用負担で実施されたなどの事情があれば、そのような被告設立後の 地元対策の実施状況に関する事情は、各構成団体がごみ焼却施設の設置及び管理・運営にあたって必要な地元対策を共同処理事務から除外する意思であったことを基礎づける特段の事情に当たり得る。 しかし、前提事実(5)及び(7)のとおり、原告は、平成6年9月27日及び平成14年12月4日付けの覚書に係る補助参加人の香芝市内の各自治会に対 する協力金の交付について、補助 たり得る。 しかし、前提事実(5)及び(7)のとおり、原告は、平成6年9月27日及び平成14年12月4日付けの覚書に係る補助参加人の香芝市内の各自治会に対 する協力金の交付について、補助参加人の支出の一部を負担している。そして、 前者の協力金交付に係る覚書においては、昭和57年協定書に規定された搬入路の拡張への努力を継続すること、公益施設の設置に特別の配慮をすること等を内容としており、後者の協力金は上記各自治会の公共公益事業に対する助成金であるというそれらの内容から、これらの協力金交付は、昭和57年協定から実現されていなかった香芝市内の各自治会に対する公共公益事業の実施に 関与していたことを示すものである。上記のような原告の公共事業への関与の態様や地元対策が一般的に一回的なものではなく相応の期間を費やして実施されるものであることに鑑みれば、被告設立の約18年後にされたものであって本件焼却場の設置後の事情であることを考慮しても、上記負担行為は、本件焼却場に関する事務を原告及び補助参加人の双方が分担して行うことが前提 とされていたといえ、各構成団体が被告設立時に本件焼却場に係る地元対策を被告の事務に含める意思を有していたことを相当程度推認させる。確かに、原告の上記分担行為は、それまでは原告と補助参加人がそれぞれの費用負担で各地元対策を実施していたといえることから、二度行われたにすぎない原告の上記費用負担行為は例外的な処理であり、原則的に各構成団体が費用を負担して いたという事情を重視して本件規約の解釈を行うべきであると考える余地がないではないが、上記協力金の交付が被告の共同処理事務に含まれないとすれば、原告による上記協力金の負担行為は、補助参加人の事務処理に要する費用を原告が負担したことを意味し、地方 であると考える余地がないではないが、上記協力金の交付が被告の共同処理事務に含まれないとすれば、原告による上記協力金の負担行為は、補助参加人の事務処理に要する費用を原告が負担したことを意味し、地方財政法28条の2に違反する行為となるところ、原告において地方財政法に違反してまで補助参加人の事務に要する費 用を負担する必要があると認められる事情は認められない。そうだとすれば、設立から相当程度の期間が経過していることや回数が二度にとどまることを考慮しても、原告が上記のとおり補助参加人による協力金の交付に関与していたことは、地元対策が被告の共同処理事務に該当することを前提としたものとみるべきである。また、従前の被告における地元対策が各構成団体の名義でさ れており、各構成団体の監査・決算がされているという事情や本件覚書に係る 事業について補助参加人がその政策として位置づけて国庫補助を受けているという事情も認められるが、これらの事情は、被告の事務を各構成団体が被告の構成団体としての立場で処理したものとみることもでき、上記事情をもって直ちに被告設立時に地元対策を被告の事務に含める旨の意思の合致があったとの推認を覆すことはできない。そうだとすれば、従前の地元対策の処理方法 をもって本件焼却場の設置及び管理・運営に必要な地元対策を被告の共同処理事務から除外する意思であったことを基礎づける特段の事情とみることはできない。 加えて、確かに、前提事実(12)のとおり、香芝市議会における香芝市関係職員の発言の中には、地元対策が被告の事務でないことを前提とする発言が存在 する。他方で、原告の関係者が平成26年3月4日に香芝市内の各自治会に対する説明会に出席していたこと、同様の説明会が平成31年1月31日に被告管理の会議室で実 ないことを前提とする発言が存在 する。他方で、原告の関係者が平成26年3月4日に香芝市内の各自治会に対する説明会に出席していたこと、同様の説明会が平成31年1月31日に被告管理の会議室で実施され、被告局長が同説明会において補助参加人に対する地元対策の状況について説明していること、それより前の平成29年10月にも被告による地元説明会が実施されたことが認められ、これらの事情は地元対策 が被告の事務であることを前提とした原告及び被告の組織としての行動とみることができる。 (4) したがって、本件焼却場の設置及び管理・運営に必要な地元対策は、本件規約3条に規定する被告の共同処理事務に含まれると解すべきである。 2 争点②について (1) 嫌悪施設の設置及び管理・運営に必要な地元対策は、地方公共団体がその政策として嫌悪施設の存在によって生活環境の悪化という特別の負担を強いられる地元住民の理解を得るために実施するものであり、そのような負担を軽減するもののほか、負担の見返りとして便益を供与することも不合理なものということはできない。そのため、嫌悪施設の設置及び管理・運営に必要な地元対 策が一部事務組合の共同処理事務に含まれるのであれば、当該一部事務組合が いかなる地元対策を行うかの判断には当該一部事務組合の管理者に裁量が認められ、その地元対策は当該嫌悪施設に伴う負担の軽減に直接効用をもたらすものに限定されない。そこで、地元対策として行われるある事業が、もともと特別の負担を強いられていない住民にまで多大な便益を供与するものであり、地元対策の趣旨から外れることが明らかであるなど、被告の管理者の裁量権の 逸脱濫用に当たる場合に限り、当該事業の実施は被告の共同処理事務に該当しないというべきである。 (2) 本 ものであり、地元対策の趣旨から外れることが明らかであるなど、被告の管理者の裁量権の 逸脱濫用に当たる場合に限り、当該事業の実施は被告の共同処理事務に該当しないというべきである。 (2) 本件についてみるに、まず、本件各事業については、被告並びにL自治会及びI自治会との間で締結された各協定書(前提事実(16))が被告議会において承認されており(前提事実(17))、被告は本件各事業を被告の事務として認め ているものといえる。 そして、本件各事業は、いずれも被告の管轄する地域内の事業であり、本件焼却場からの距離が1.5km以内であるところ、他に地元対策が実施された王寺町内の各自治会と本件焼却場との位置関係と比較しても不相当に離れているとはいえない。さらに、「奈良県一般廃棄物処理施設設置に係る指導要領」 は、一般廃棄物処理事業者が最低限取得すべき地元住民の同意の範囲を規定しているものにすぎず、被告の管理者の行政政策としての地元対策の範囲を限定するものではないから、本件焼却場から500メートルの範囲内に住家がないことをもって各自治会への地元対策が一律に不相当となるとはいえない。そのため、本件焼却場と本件各事業の実施地域との位置関係をもって本件各事業が 不相当な地元対策であるとはいえない。 また、本件各事業に要した費用を単に本件焼却場の設置・建設費と比較することは相当でない上、本件事業1の事業費用は2億3119万4520円であり、本件事業2の事業費用は1億7431万0056円であって(前提事実(18)のとおり、交付金の額を控除するなどした実質的な負担額はより少額とな る。)、本件焼却場の設置・建設費と比較して不相当に高額であるとまではいえ ない。さらに、王寺町から本件焼却場へのごみの搬入路が専らI を控除するなどした実質的な負担額はより少額とな る。)、本件焼却場の設置・建設費と比較して不相当に高額であるとまではいえ ない。さらに、王寺町から本件焼却場へのごみの搬入路が専らI自治会やL自治会の地域内を経由するものであること(甲38、乙6)に照らせば、単純に他の自治会に交付した協力金の額と比較することはできず、本件各事業に要した費用が不相当に高額であるとはいえない。 (3) 以上より、原告が主張する本件各事業の位置関係やそれに要した事業費用に 関する事情を総合しても、本件各事業が被告の管理者の裁量権の逸脱濫用にあたるとはいえない。 3 争点③について(1) まず、本件覚書合意は、被告の補助参加人に対する償還金の支払方法を協議により定める旨合意したものである。そして、これに基づいて締結された本件 協議書は、本件規約12条に基づき原告及び補助参加人の分担額を算出し、補助参加人に対して支払うべき償還金から補助参加人が負う分担金を差し引いた額を支払うという形で償還金及び分担金の支払方法を合意したものにすぎない。 本件覚書や本件協議書による分担金の支払方法は本件規約に基づいたものであり、本件覚書合意によって本件規約11条に定める経費の支弁方法が変更(法 287条1項7号、286条2項参照)されたとはいえない。 また、本件各事業が被告の共同処理事務である以上、これらを補助参加人が実施したのであれば被告がその費用を負担すべきであり(地方財政法28条の2)、事後的に被告が補助参加人に対し上記費用相当額を償還したことをもって公序良俗に反するとはいえない。 (2) 本件覚書合意に係る事業は、王寺町内から本件焼却場への搬入路が香芝市内の各自治会のみを経由するものであったことなどから、香芝市内の各自治会の もって公序良俗に反するとはいえない。 (2) 本件覚書合意に係る事業は、王寺町内から本件焼却場への搬入路が香芝市内の各自治会のみを経由するものであったことなどから、香芝市内の各自治会の理解を得るために公共事業を実施しようと昭和57年協定書の締結時から試み、平成26年頃からその具体的な目処が立つに至ったものと認められるところ、このような経緯に鑑みれば、本件各事業によってI自治会及びL自治会の本件 焼却場に対する理解を得ることができたものとみることができ、被告にとって 不要な事業であったとはいえない。他方で、本件各事業が被告の事業である以上、補助参加人が当該事業に要する費用を負担していたのであれば、事後的であっても被告は補助参加人に対し償還金を支払うべき関係にあるから、事後的な償還金の支払をもって補助参加人への一方的な利益の供与ということもできない。そうだとすれば、本件覚書合意の内容をもって被告代表者が補助参加人 の利益を図る目的で本件覚書を締結したということはできない。 (3) 以上のとおり、本件覚書合意が無効であって被告の原告に対する分担金の請求が違法であるということはできない。 4 まとめ以上の検討によれば、本件事業1及び本件事業2に係る被告から原告に対する 別紙債権目録記載の債権が存在するといえる。また、被告によりなされた分担金支払請求権による相殺はその効力を生じているから、原告の第二事件の請求も理由がない。 第4 結論よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし、主文 のとおり判決する。 奈良地方裁判所民事部 裁判長裁判官和田健 裁判官太田雅之 文 のとおり判決する。 奈良地方裁判所民事部 裁判長裁判官和田健 裁判官太田雅之 裁判官石丸貴大 (別紙)債権目録被告の原告に対する本件規約11条に基づく分担金支払請求権5258万0898円ただし、被告及び補助参加人が令和4年10月26日に締結した覚書及び協議書に係る分担金の原告の負担部分合計5842万3237円(同覚書別表1の事業に係る被告から補助参加人に対する償還金の原告の負担部分3381万1560円及び同覚書別表2の事業に係る被告から補助参加人に対する償還金の原告の負担部分2461万1677円の合計額。支払は、令和5年から令和24年まで毎年5月31日限り292万1161円(ただし、初回は292万1178円)。)のうち、令和7年から令和24年まで毎年5月31日を支払期限とする分割金の合計。 以上
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