【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 理 由 本件控訴の趣意は、弁護人内野経一郎および同藤田一伯が連名で提出した控訴趣 意書に記載されたとおりであるから、これをここに
主 文 本件控訴を棄却する。 理 由 本件控訴の趣意は、弁護人内野経一郎および同藤田一伯が連名で提出した控訴趣 意書に記載されたとおりであるから、これをここに引用しこれに対し次のように判 断する。 控訴趣意一訴訟手続の法令違反の主張について 所論は原判示二の事実について、原判決がその事実認定の基礎とした本件の証拠 物たるベルギー製ブローニング自動五連散弾猟銃バッグ入り一丁(以下本件猟銃と いう)は、裁判官の捜索差押許可状に差押えるべき物として掲げられていないにも 拘らず差押えられたものであつて、かかる差押は憲法第三五条、刑事訴訟法第一〇 六条、第一〇七条に違反し、本件猟銃は違法に収集された証拠として証拠能力がな いものであり、原審において弁護人はその証拠調に対し異議を申立てたのに原審裁 判所は右異議を排斥してその取調をした。更に被告人および原審相被告人らの本件 猟銃に関する供述および供述調書は右のように本件猟銃を違法に押収した成果であ つて同様証拠能力を有しない。しかるに原審が本件猟銃およびこれに関連する関係 者の供述および供述調書の証拠調をし、かつこれらを事実認定の資料に供したのは 判決に影響を及ぼす訴訟手続の法令違反があると主張する。 よつて所論に基づき本件記録および原判決を精査して審按するに、原判決には原 判示二の事実に対応する証拠の標目として本件猟銃およびこれに関する被告人、原 審相被告人Cの原審公判廷における供述、司法警察員、検察官に対する各供述調 書、A事務官に対する各質問調書、Bの原審公判廷における供述、(原審相被告人 Cに対する関係で)司法警察員に対する供述調書、同A事務官に対する質問調書 (謄本)を掲げていること、そのうち本件猟銃についてはその捜索、差押の法律上 の根拠となるべき捜索差押許可状を請求し捜索差押 人 Cに対する関係で)司法警察員に対する供述調書、同A事務官に対する質問調書 (謄本)を掲げていること、そのうち本件猟銃についてはその捜索、差押の法律上 の根拠となるべき捜索差押許可状を請求し捜索差押許可状請求書(八八丁)に記載 された犯罪事実の要旨は被疑者(被告人)が法定の除外事由なく米国製スミスァン ドゥェッソン(S二五四八五六号)けん銃一挺を所持していたという事実であり、 また差押えすべき物としては「本件に関連するけん銃、実包およびこれに関する附 属する物件一切」と記載されてあり、これを受けた捜索差押許可状(八七丁)記載 の差押えるべき物の表示も右と同一文言であること、司法警察員巡査部長D成の昭 和四〇年五月二七日付捜索差押調書(八四丁)によれば同巡査部長は同日被告人を 立会わせ、右の捜索差押許可状を被告人に示して捜索したうえ本件猟銃、散弾銃実 包一五五発および米国人E名義の銃砲所持許可証を差押えたこと、原審第二回公判 期日において検察官は本件猟銃の証拠調の請求をなしこれに対し被告人の弁護人は 所論と同様違法に収集された証拠であるから証拠能力がないと述べたが原審はこれ を証拠として取調をしたこと、また前記の被告人、原審相被告人CおよびBの司法 警察員、検察官に対する各供述調書またはA事務官に対する各質問調書はいずれも 被告人または右Cの弁護人において証拠とすることに同意し、また格別異議を留め た形跡がなく取調がなされたものであること、しかしてこれらの証拠は前記のとお り原判示二の事実に対応する証拠の標目として掲げられていること、がそれぞれ明 らかである。 ところで、所論は違法に収集された証拠は証拠能力がないとの主張を前提として 本件猟銃等の証拠能力を否定するものの如くであるが、証拠の収集手続の適否とこ れにより得られた証拠の証拠能力の有無とは必ずしも一致しなければな は違法に収集された証拠は証拠能力がないとの主張を前提として 本件猟銃等の証拠能力を否定するものの如くであるが、証拠の収集手続の適否とこ れにより得られた証拠の証拠能力の有無とは必ずしも一致しなければならないもの ではなく、ことに証拠物についてはその収集手続の如何により物それ自体の性質、 形状に変異を来すはずがないのであるから、その収集手続の違法が当然にその物の 証拠能力を失わせるものと解すべき理由はない。しかしながら、他方において、憲 法第三五条が基本的人権として国民の住居、書類および所持品の安全を保障し逮捕 状による逮捕と現行犯による逮捕との場合を除いて正当な令状がなければ侵入、捜 索および押収を受けないことを定め、またこれを承けて刑事訴訟法上にいわゆる令 状主義の諸規定(第一〇六条、第一〇七条、第二一八条、第二一九条等)が設けら れた趣旨にかんがみれば、証拠収集手続の違法が右の憲法およびこれを承けた刑事 訴訟法上の規定の精神を没却するに至るような重大なものであるならば、その証拠 の証拠能力を否定すべきものと解されるが、その違法が右の程度に至らない瑕疵に 止まる場合においてはその証拠の証拠能力には影響がないものと解するのが相当で ある。 この見地からまず本件猟銃の差押手続および本件猟銃の証拠能力を検討すると、 なるほど前記捜索差押許可状に差押えるべき物として記載された「本件(前記米国 製スミスアンドウェッソンけん銃の所持)に関連するけん銃、実包およびこれに関 する附属する物件一切」のうちに本件猟銃のような銃砲まで含まれるか否かは明ら かでなく、これを形式的に見るかぎり右捜索差押許可状に差押えるべきものとして 記載されたものであるか否<要旨>か明瞭でないものを差押えた違法があるというべ きであろうが、しかしながら、右許可状に記載された本件に</要旨>関連するけん銃 も本件 差押許可状に差押えるべきものとして 記載されたものであるか否<要旨>か明瞭でないものを差押えた違法があるというべ きであろうが、しかしながら、右許可状に記載された本件に</要旨>関連するけん銃 も本件猟銃もいずれも同一構成要件のうちの銃砲であつて両者が全く関連のないも のでなく、また前記の捜索差押の経緯に徴すれば、本件猟銃は前記米国製スミスア ンドウェッソンけん銃の所持に関する適法な捜索をしているさい偶々発見されたも のと認められ、その意味で適法な捜索差押に附随して発見され差押えられたもので あるから、これにより被告人の人権の保障上格別の弊害は認められないうえ、本件 猟銃の不法所持は前記のけん銃の不法所持に関連する事実であるに止まらず、それ 自体犯罪行為を組成しているものであり、ことに本件については被告人がその場に 立会つていたのであるから法律上被告人を本件猟銃の不法所持の現行犯人として逮 捕することも不可能ではない状況であり(本件については右捜索差押に先立ち、昭 和四〇年五月二五日付ですでに前記米国製スミスアンドウェッソンけん銃の不法所 持の疑いで被告人に対し逮捕状(一七丁)が発付ずみであり、本件の捜索差押に引 続き逮捕されていることが認められるから、本件猟銃の不法所持の疑いで独立に逮 捕する必要はなかつたものと推測される)このような状況のもとにおいて犯罪行為 を組成する本件猟銃を現認した場合これを放置することなく差押をしたことを目し て条理上不当とはいい難いこと、等を併せ考察すると、前記のように本件猟銃の差 押については捜索差押許可状に差押えるべきものとして記載されたものであるか否 か明瞭でないものを差押えた違法があるとしても、その違法の程度は左程大きいも のではなく、まして前述した憲法第三五条およびこれを承けた刑事訴訟法上の諸規 定の精神を没却するに至るような重大なも あるか否 か明瞭でないものを差押えた違法があるとしても、その違法の程度は左程大きいも のではなく、まして前述した憲法第三五条およびこれを承けた刑事訴訟法上の諸規 定の精神を没却するに至るような重大なものであるとは到底いえないから、右の違 法は本件猟銃の証拠能力には影響がなく、したがつてこれを証拠として取調べかつ これを前記のとおり事実認定の用に供した原審の措置には何ら訴訟手続の法令違反 は認められない。 次に、右に述べたとおり本件猟銃が証拠能力を有するものである以上、これが否 定せらるべきことが前提となる前記関係者の供述、供述調書ないし質問調書の証拠 能力を否定する所論は、自ら理由がないことに帰するのであるが、その点をしばら く措くとしても、違法に収集された証拠物そのものの証拠能力が否定さるべきもの としても、これに関する供述等の証拠能力が直ちに無くなるものではないと解せら れるし、ことに本件については本件猟銃の捜索差押のなされる以前においてすでに 本件猟銃に関する捜査が始められていることが認められ(Bの司法警察員に対する 昭和四〇年五月二五日付供述調書参照)、更に前述のように、関係者の各供述調書 ないし質問調書については原審において弁護人らが証拠とすることに同意し格別の 異議を留めることなく取調がなされたものであつて、いずれにしてもこれらの証拠 能力を否定し、これに基づき原審の訴訟手続の法令違反を主張する所論は採用でき ない。 なお、念のため附言すれば、仮に所論のように本件猟銃の証拠能力が否定さるべ きものであり、したがつてこれを取調べて採証の用に供したことが訴訟手続の法令 違反に当るとしても、原判示二の事実は本件猟銃を除いたその余の原判決挙示の対 応証拠(証拠能力のあることは前説示のとおり)によつても認定するに足りるか ら、右の違反は判決に影響を及ぼすことが明らかと 令 違反に当るとしても、原判示二の事実は本件猟銃を除いたその余の原判決挙示の対 応証拠(証拠能力のあることは前説示のとおり)によつても認定するに足りるか ら、右の違反は判決に影響を及ぼすことが明らかとはいえない。 (その余の判決理由は省略する。) (裁判長判事 石井文治 判事 目黒太郎 判事 渡辺達夫)
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