判決平成14年9月20日神戸地方裁判所平成14年(わ)第781号傷害被告事件 主文 被告人を懲役1年に処する。 未決勾留日数中30日をその刑に算入する。 この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成14年6月8日午後11時29分ころ,神戸市a区bc丁目d番e号先路上において,A(当時27歳)からにらみつけられたと思って腹を立て,その顔面を手拳で殴打し,友人のBが被告人に加勢するためビール瓶でAの左顔面をいきなり強打するや,Bと暗黙のうちに意思を相通じた上,さらに,転倒したAの顔面,胸部等をBとともにこもごも足蹴にするなどの暴行を加え,よって,Aに全治約1か月間を要する両側眼窩ブローアウト骨折等の傷害を負わせたものである。 (証拠の標目)(省略)(弁護人の主張に対する判断)弁護人は,被告人が被害者から暴行を加えられると誤信して,自己の権利を防衛するため,本件犯行に及んだものであるから,本件は誤想過剰防衛に該当する旨主張するが,前掲各証拠によれば,被告人は,被害者の胸倉を掴むなどしてもみ合いになった際,仰向けに倒れかかり,被害者の体が自己の上になるという不利な態勢になったことから,被害者がいまだ暴行に及ぶなどしていないのにもかかわらず,被害者に先制攻撃を加えるべく,被害者の顔面を手拳で殴打するなどしたものであることが認められるのであって,仮に,被告人が被害者から暴行を加えられると誤信していたとしても,誤信した内容自体に急迫性はなく,被告人の行為を防衛行為とみることもで を手拳で殴打するなどしたものであることが認められるのであって,仮に,被告人が被害者から暴行を加えられると誤信していたとしても,誤信した内容自体に急迫性はなく,被告人の行為を防衛行為とみることもできないから,本件が誤想過剰防衛に該当しないことは明かであり,弁護人の主張は採用できない。 (法令の適用)被告人の判示所為は刑法60条,204条に該当するところ,所定刑中懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で,被告人を懲役1年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中30日をその刑に算入し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項本文により全部これを被告人に負担させることとする。 (量刑の理由)本件は,被告人が共犯者とともに被害者に暴行を加え傷害を負わせたという事案であるが,被告人は,被害者からにらまれたと思い込んで胸倉を掴むなどしてもみ合いとなり,不利な態勢になるや,被害者にいきなり攻撃を加えたものであって,その犯行動機は短絡的というほかないこと,犯行態様は,共犯者とふたりがかりで顔面を殴るなどした危険性の高いものであること,そのため被害者に全治約1か月間を要する両側眼窩ブローアウト骨折等の傷害を負わせたものであって,その程度は軽いものではないことなどを併せ考えると,犯情はよくなく,被告人の刑事責任は軽くないといわざるを得ない。 しかしながら,被告人が現在では反省していること,被告人及び共犯者が被害者に対して被害弁償の内金としてそれぞれ50万円を支払っていること,被告人の父親が被告人の監督を約束していること,被告人の雇い主が被告人を今後も雇用していく旨述べていること,被告人にはこれまで前科がないこと,被告人が本件で2か月半以上の期間身柄拘束を受けてい と,被告人の父親が被告人の監督を約束していること,被告人の雇い主が被告人を今後も雇用していく旨述べていること,被告人にはこれまで前科がないこと,被告人が本件で2か月半以上の期間身柄拘束を受けていることなどの,被告人のために酌むべき事情も認められるから,今回は,被告人に対し,その刑の執行猶予の言渡しをして,社会内更生の機会を与えるのが相当である。 (検察官の科刑意見懲役1年2月)よって,主文のとおり判決する。 平成14年9月20日神戸地方裁判所第12刑事係甲裁判官森岡安廣
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